目次
企画編集/赤司朋之
〈特集にあたって〉
糖尿病診療は,個々の患者の遺伝的・環境的な背景や年齢などを考慮した適切な検査や治療が求められている.また,健診で発見された境界型糖尿病や発症したばかりの患者に医療機関への受診を促すことも重要であり,糖尿病に関わる合併症の発症・重症化を防ぐこと,さらには重症化した合併症発症患者への治療を継続することなど,病期にあった糖尿病診療を行う必要がある.合併症も三大合併症と動脈硬化性疾患,さらには歯周病や肝疾患など多岐にわたるため,多くの分野の職種が,さまざまな医療機関で,その診療に関わることになる.
糖尿病治療を1つの大きな医療機関で完結する体制を整えることは,集学的な治療を要する患者にとっては非常に重要なことであるが,すべての患者がその完結した体制の下で診療を継続すると,患者受け入れ数の限界という問題に直面する.地区全体という大きな括りのなかで糖尿病治療を円滑に行うためには,地域に存在している個々の機能を持ったさまざまな医療機関を活用して,地域全体で包括的な医療を行うことが必要とされる.
個々の医療機関が適切な役割を果たすことができるようになるためには,医療機関同士での情報共有を円滑に行うことが重要になる.しかし,それぞれの医療機関のメディカルスタッフが正しい知識と技術を持たないことには連携は成立せず,連携を行う際にはメディカルスタッフの「疾患の理解」を高めることが前提となる.このように,地域包括的な連携構築には,多職種の医療スタッフの参加とその情報共有,さらには個々のスタッフの教育など,多くのことが必要とされる.
さまざまなことが要求される多職種連携を円滑に行うために,すでに骨粗鬆症学会では,リエゾンサービスという概念が導入されている.リエゾンとは「連絡係」と訳され,診療におけるコーディネーター役を意味する.その目的は,最初の骨折への対応および骨折リスク評価と,新たな骨折の防止,また最初の脆弱性骨折の予防である.多職種連携を円滑に行うためにコーディネーターが活動し,多職種連携でハイリスク者の骨折抑制を推進することによって骨折発生率が低下し,医療費を削減することが狙いである(1).
近年,糖尿病診療においても,各地でコーディネーターの機能を果たす新たな役割が登場した.さまざまなシステムを活用して,地域全体としてより多くの患者をより高い診療の質を持って診療できる体制が各地で構築され,実施されている.
今回の特集では,地域医療を担う医療スタッフの教育や共有すべき情報について概説していただいた後,患者抽出とその後のトリアージ,地方型と都会型のリエゾンサービス,地方自治体を巻き込んだ取り組みについて,それぞれの実践例をもとに概説していただく.さらには,リエゾンサービスを実践する際に必要な共通のツールの紹介,そしてこれらの取り組みのアウトカムとその評価はどのようにすればよいのかも概説していただく.この特集を機会に,より多くの医療関係者がリエゾンサービスの概念を理解していただき,新たなチーム医療の未来図を描いていただくことができれば幸いである.
赤司朋之
(医療法人社団シマダ 嶋田病院 内科部長,佐賀大学 医学部 臨床教授)
(1)日本骨粗鬆症学会,骨粗鬆症マネージャー(リエゾンサービス)の取組について.http://www.josteo.com/ja/liaison/doc/0_1.pdf(2018年5月閲覧)
〈目次〉
〔総論〕
1. 「疾患の理解」を広めるためのチーム医療の底上げ~糖尿病療養指導士への期待~
2. 糖尿病患者の重症化予防,とくに腎症重症化予防に必要な層別抽出の項目とその意義
〔各論〕
3. 特定健診,国保データベース(KDB)システムを活用した糖尿病性腎症重症化予防の多職種連携
4. 多職種連携のリエゾンサービス実践例~地方型:コーディネートナースの医療機関訪問~
5. 多職種連携のリエゾンサービス実践例~地方型:地域全体の医療関係者の底上げを狙ったITネットワーク活用型リエゾンサービス~
6. 多職種連携のリエゾンサービス実践例~糖尿病地域医療における都会型リエゾンサービス~
7. 糖尿病専門医不在の地区での糖尿病性腎症重症化予防対策
8. 多職種協働で地域の糖尿病診療を支える~八幡浜市糖尿病サポーター制度~
9. 県市町村を巻き込んだリエゾンサービス実践例~県主導でのリエゾンサービス育成事業~
10. 生涯を通じた住民の生活を支えるためのリエゾンサービス~地域包括ケアシステム幸手モデルと地域糖尿病センターの取り組み~
〔まとめ〕
11. 疾患の理解の底上げに有効なツールや活動
12. チーム医療・地域連携のアウトカム評価
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