目次
企画編集/雨宮 伸
〈特集にあたって〉
糖尿病学の進歩にあわせ,小児・思春期糖尿病治療はここ10年ほどで大きく変貌している.特に1型糖尿病についてはインスリンアナログ薬の導入とカーボカウント(Carb-count)の導入によって,生活にあわせたインスリン治療が可能となり,基礎-追加インスリン治療を基盤とした頻回注射法や持続皮下インスリン注入療法(CSII)がより年少児へも浸透した.今後はさらに持続皮下ブドウ糖濃度測定(CGM)がリアルタイムに観測できると,あわせて3Cとして糖尿病合併症の進展抑制とともに,生活の質の向上につながると期待される.
小児・思春期糖尿病の臨床診療ガイドラインで国際的に最新のものはISPAD Clinical Practice Consensus Guidelines 2014である.本特集ではこれを踏まえた幾つかの項目について日本での小児・思春期糖尿病コンセンサスガイドライン(2015,南江堂2015)と併せ検討している.糖尿病コントロールのゴールドスタンダードとなるHbA1cはその治療介入の目標が従来ISPADガイドラインで示され,ADAもこれに準じて年齢層別の目標値は除かれ,臨床指標も含めた日常生活のリスクを考慮して指導することが勧められている.その中で,小児1型糖尿病ではHbA1c 7.5 %未満を適切な目標とする共通認識が得られている.この目標は国内の多施設共同研究(小児インスリン治療研究会)ではほぼ3割が達成しており,海外の諸コホート研究での達成率より高くなっている.特に思春期患者,特に女子における血糖コントロールの悪化が報告されてきたが,治療の進歩はこれを解消しつつあるようである.しかし,糖尿病治療の精神的・経済的負担は決して解消したわけではなく,今後なお改善すべき課題である.
2型糖尿病での新規治療薬導入は成人では糖尿病コントロールに大きな変化をもたらしているが,小児・思春期での導入は治験が進まない現状にある.一方,思春期2型糖尿病患者の血糖コントロールは1型糖尿病より悪いことも少なくなく,予後も不良なことが報告されている.米国では小児2型糖尿病に対する大規模な介入研究(TODAY)が計画され,メトホルミンを中核とした血糖コントロール(HbA1c 8 %未満)維持効果が検討された.しかし,現状での介入法ではほぼ5年未満で半数以上が維持できなかった.新規治療薬適応の検討は喫緊の課題と考えられる.
その他の糖尿病については,特に単一遺伝子による糖尿病の診断が進み,ある種の新生児糖尿病などへのスルホニル尿素薬の効果など,成因・病態に応じた特異な治療法の検討も進んでいる.
最後に2015年から進んでいる難病指定と糖尿病との関連である.小児慢性疾患全般においても成人医療への移行が課題となっている.小児・思春期糖尿病患児は現在20歳までが公的援助の適応となっているが,小児科での診療体制と成人での体制ではギャップが大きいこともしばしばである.若年成人期での学校,就職,結婚などの社会的に不安定となる時期での糖尿病コントロール悪化を防ぐ支援体制の充実が必要である.特に1型糖尿病では前述の3C充実による合併症予防が進んでも,経済的負担からこれを中断せざるを得ない状況が想定されている.社会的自立が可能な小児期発症1型糖尿病患者での治療の質の担保には経済負担軽減の検討は必須である.
雨宮 伸
(埼玉医科大学病院 小児科 客員教授)
〈目次〉
1. 小児・思春期患者への3Cの適応
2. カーボカウントと栄養管理
3. シックデイへの対応
4. 小児・思春期の血糖管理目標
5. 糖尿病キャンプ
6. 思春期糖尿病と精神心理的課題
7. 小児・思春期糖尿病における薬物療法
8. 単一遺伝子糖尿病
9. 小児医療から成人医療への移行
10. 小児・思春期糖尿病への公的支援体制
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