目次
企画編集/森 豊
<特集にあたって>
2014年に我が国で7系統目の2型糖尿病治療薬としてSGLT2阻害薬6剤が上市された.発売当初に発刊された本剤の特集号の大部分は,作用機序や臨床治験の結果が中心で,SGLT2阻害薬の血糖低下に関する有効性とともに,臨床治験段階で観察された尿路感染症,性器感染や低血糖,想定される脱水やケトアシドーシスといった有害事象や安全性,適正使用に関するものが主体であった.それから5年が経過し,実臨床に関するエビデンスが国内外で蓄積されつつある.とくに,本剤の評価を一気に押し上げたのが,2型糖尿病患者を対象に心血管イベントを主要評価項目として行われた大規模臨床試験,EMPA-REG OUTCOMEである.それまでのDPP-4阻害薬による大規模臨床試験の結果から,糖尿病治療薬で心血管イベントを抑えるのは不可能なのではないかという考えが大半を占めるなか,EMPA-REG OUTCOMEはこの考えを一気に打破し,さらにそれに続いたCANVAS Programはその評価を確固たるものにした.両試験では,二次エンドポイントである腎複合エンドポイントにおいても有意な成績が報告され,本年4月には顕性アルブミン尿を伴う2型糖尿病患者を対象に腎関連エンドポイントを主要評価項目としたCREDENCE試験が発表され,SGLT2阻害薬による腎アウトカムの改善が示された.現在,糖尿病非合併の顕性アルブミン尿例,腎機能低例についても検討されているDAPA-CKD試験,EMPA-KIDNEY試験が進行中である.さらに,9月には,左室駆出率が低下した心不全患者を対象に心不全関連エンドポイントを主要評価項目にしたDAPA-HF試験が発表され,SGLT2阻害薬は糖尿病合併の有無を問わず心不全例の転帰を改善する成績が示された.本剤の腎臓・心臓関連に関するエビデンスは,今までの他の糖尿病治療薬によるエビデンスをはるかに上回るものと期待できる.また,今まであまり取り上げられていないテーマとして下肢切断リスク,DECLARE-TIMIの解釈があり,本特集ではこの点についてもご解説いただいた.
一方,海外では本剤とメトホルミンとの配合剤が主流であるが,本邦では2017年に本剤とDPP-4阻害薬の配合剤が上市され,現在では3つの配合剤が臨床で広く使用されている.さらに,2018年12月にはSGLT2阻害薬として初めてイプラグリフロジンが,続いてダパグリフロジンが1型糖尿病に適応拡大となり,今後さらにエンパグリフロジンがこれに続く予定である.このホットな話題についてもご解説いただいた.
このように,SGLT2阻害薬に関するエビデンスは,ここにきて爆発的に集積されつつあり,本剤ほど発売当初の評価と現在の評価が一変した薬剤はないのではなかろうか.このような現状を踏まえ,最近の本剤に関するトピックスでありながら他誌ではまだ取り上げられていない魅力的なテーマについて,糖尿病の専門医だけでなく,循環器内科,腎臓内科の専門医の先生方にもご執筆いただいた.
最後に,大変ご多忙のなかご執筆いただいた先生方に感謝申し上げるとともに,本特集が明日からの臨床に少しでもご活用いただけることを願うものである.
<目次>
1. SGLT2阻害薬とグルカゴン分泌/北村忠弘
2. SGLT2阻害薬による糖毒性解除/高橋 紘,森 豊
3. SGLT2阻害薬と血糖日内変動/鳥本桂一,岡田洋右
4. 1型糖尿病におけるSGLT2阻害薬/二里哲朗,阿比留教生
5. SGLT2阻害薬との併用療法:BG薬/堀川 剛,川浪大治
6. SGLT2阻害薬との併用療法:DPP-4阻害薬/森 豊,大西哲郎
7. SGLT2阻害薬との併用療法:GLP-1受容体作動薬/澤野祥子,森 豊
8. SGLT2阻害薬との併用療法:インスリン/五十嵐弘之,内野 泰,弘世貴久
9. SGLT2阻害薬と交感神経活性/佐野元昭
10. SGLT2阻害薬による心血管イベント抑制/豊田 茂,井上晃男,野出孝一
11. SGLT2阻害薬による糖尿病性腎症の進展抑制/阿部雅紀
12. SGLT2阻害薬による下肢切断のリスク/渥美義仁
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