Blue.(ブルー)の編集長インタビュー

編集長プロフィール

ネコ・パブリッシング
「Blue.(ブルー)」編集長  林芳史さん

はやしよしふみ 1970年生まれ。サーフィンが内包する圧倒的な世界観に憧れ、大学時代に上京。以来、22年間仕事もプライベートもサーフィン一色。広告代理店、出版社の広告部で約10年勤務し、その後編集に。サーフィンが人生のすべて。

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第71回 Blue.(ブルー) 編集長 林芳史さん

24時間海を感じていたい人に…

―独特の世界観をもった雑誌ですが、いつ創刊されたのですか。

2006の創刊号
2006の創刊号
編集部は整然としている
編集部は整然としている

2006年です。現在副編集長の戸井田と2人で立ち上げました。彼はネコ・パブリッシングの社員でサーフィン好き、僕は以前の会社をやめてフリーになったばかりの頃でした。その戸井田と出会い創刊したわけですが、その後5年間ずっと2人でやってます。2人編集部(笑)。

もちろん外部のスタッフに手伝ってもらってはいますが、まぁ隔月ですし、なんとかやれてるというところでしょうか。

―「24時間海を感じていられるライフスタイル・マガジン」とあります。

はい。そんな気分が好きで、またそんな気分を伝えたいと思いまして。当時サーフィンを扱った媒体って、ショートボードかロングボードの2種類しかなかったんです。僕としては、18歳からいろんなボードに乗ってきて22年、いまでもいろんな種類のボードに乗りたいと思っているのに、ショートかロングかって制約のなかでつくることには抵抗があったんです。だからもっと自由になれる媒体をつくろうと思いました。海を感じる・・・というのは、そういった気分でいたい人が多いと思うからです。

サーフィンってスポーツという側面で捉える人が多いけど、もっとライフスタイル寄りで見てもいいんじゃないかって思うんですよ。いくらサーフィンが好きでも普段は学校や仕事があるわけで、せいぜい土日しか海には入れませんよね。でもそんな土日以外でもサーファーでありたい、海を感じていたいって、そう思っている人って多いはずなんですよ。

僕はそんな人たちに素敵なライフスタイルを提案したいと思ったんです。それがコンセプトになっています。

―それで、ライフスタイルやファッションの要素もしっかり入っているわけですね。

ええ、サーフィン雑誌ではなく、ライフスタイル誌です。構成要素が、ファッション、ライフスタイル、サーフィンの3つということです。

―林さんは毎日海を感じてますか。

はい、僕は湘南に住んでいますから(笑)。いまでも波があるときは朝海に入ってから出勤します。

僕は岡山県の出身でサーフィンができる環境ではなかったのですが、映画「ビッグウエンズデー」を見て衝撃を受け、“サーフィンしたい!”と思い上京してきたんです(笑)。大学に入学した当日にサーフィン部に入り、あとは本当にサーフィンべったりの人生ですね。仕事もサーフィン中心に考えてきたし、ずっと波のことばかり考えているような人間なんです。

―私の知り合いの編集者でもサーフィンのあるライフスタイルを楽しんでいる人が多いです。

そうですね、編集者多いです。編集者って凝り性な人が多いから、一度はまると抜けられないんでしょうね。サーフィンから離れていった人でも戻ってくる人も結構いますしね。

サーフィンってサーフィンでしか代替するものがなくって、波なども2つと同じものがない。僕たちはそれを一期一会といっていますが、まさに、そんな自然との一体感、2度と起こり得ない奇跡のような高揚感を求めて、日々生活を送っているという感じなんです。

―自然との一体感を一度体験してしまうと、確かにその感覚から逃れるのは難しいでしょうね。

そう思います。もっと平たく言えば、自然と遊ばせてもらってる感じですね。これを大事にしたい。サーフィンってもともとカウンター・カルチャーの側面も強いですから、いまでもその要素がいっぱいあって、たとえば人と同じことをしない(笑)。でも、そんな生き方に憧れる人にとっても、はまりやすい世界かもしれませんね。

―でも皆が好き勝手に海に入っていると、いろいろ問題が起きそうです。

そうなんです。サーフィンの悪しき慣習のひとつに“ローカリズム”という排他的な考えがあります。例えば、湘南ナンバーで茨城には行きにくいとか(笑)。ローカルがいるからこそ、サーフィンできる環境が整えられ、海の秩序が守られているというリスペクトすべきものなんですが・・・。世界のトッププロですら排除するという空気があります。

―そうなると若い人や新しい人が参入しにくいですね。

女性版の「ブルー」を目指した企画も進行中だ
女性版の「ブルー」を目指した企画も進行中だ

そこが問題だと思っています。むかしは海の近くには必ずショップがあって、そこのオーナーがちゃんと指導してくれてたんです。だから初心者でもマナーをわきまえた上で海に入っていくことができた。でもいまはネットでボードを買えるじゃないですか。ルールも分からないで海にきて、いざ波に乗ろうとするとうるさいオッサンたちから怒られる(笑)。

このパターンだと若い人は参入しませんよね。オジサン・スポーツになってしまう。

でも、いま希望は、女性が増えていることなんですよ。「ブルー」でも女の子の特集をしたり、投げ込み付録をつくったりしたのですが、これからもっと増えてくると思っています。オジサンたちは女性に優しいから(笑)。

―この「ブルー」って名前の由来はなんですか。

いや、大した意味はないんです。単純に海のブルーです。みんなが分かりやすいイメージにしたかったんです。サーフィンという名前は使いたくなかった。ドットをつけたのも商品登録上の問題だけです。デジタル・マーケット対応もにらんで。でも、基本、写真はやはり紙の雑誌でしか表現できないと思っていて、デジタル対応は遅れています。紙の雑誌のほうがやはり自然に近いから、イメージしたいものが表現できると思うんです。

―コアな読者は何歳くらいですか。

36歳がいまのところコア・ターゲットになっています。もちろんその前後の読者に向けてのメッセージも出していますが、若干年齢は高めだと思います。

若い読者にも参入してもらいたいですが、この雑誌ではできていないと思います。むしろそこのところは、若い人たち向けの雑誌に頑張ってもらいたい(笑)。そこで成長した読者がうちにきてくれる、というのが理想です。

―60年代とか70年代の特集も多いですね。

そうなんですよ(笑)。あのころのカルチャーの特徴でもあるのでしょうが、泥臭いというか、土臭い感じ、それがナチュラルでシンプルな生活だと思っているんです。その部分をベースにおいて編集していますから、音楽もジミ・ヘンやジャクソン・ブラウン、ニール・ヤングとかが出てくる(笑)。

セレブじゃないんですよ。普通の人で素敵な生き方をしている人。そんな人を対象にしたいです。ベースは土臭いけど、でもお洒落な生き方をしている人ですね。

―そのへんって、好きな人にはたまらない世界なんでしょうね。

3・11の後の被災地応援号ではメーカー協賛の付録も
3・11の後の被災地応援号ではメーカー協賛の付録も

はい。そう言ってくださるクライアントもいくつかあって、例えばカリフォルニアのハイエンド・ショップ、ロン・ハーマンさんなどは、この世界観に共鳴してくれ、よいお付き合いをさせてもらっています。3年連続で付録のカレンダーもつくっていますよ。やはり僕たちが表現したい世界観であったり、写真のこだわり、クオリティなどですね、そこに共鳴してくださる方々はすべて、われわれの読者ということだと思うんです。

直近の号ではシンプルライフ(http://www.fujisan.co.jp/product/1281683783/b/691596/)を取り上げました。これは理屈じゃないんです。シングル・フィンのボードに乗ってシンプルなライフスタイルを送るオージー(オーストラリア人)を取材しています。こんな生活をしている人から読者は何かを感じてもらえたらいいと思っているんです。

―競合誌、併読誌というと何になりますか。

「NALU(ナルー)」さん(エイ出版)、「Glide(グライド)」さん(マリン企画)なんかは併読されているようです。「ブルー」はロングでもショートでもない“オルタナティブ”とカテゴライズしていますから、そこを理解してくださる方には、親しんでいただきやすい雑誌だと思います。

とにかくサーフィンをライフスタイルとして取り込んでいる人は増えていますから。

―ファッション・ページで取り上げた商品の反応などはいかがですか。

うちは高いものは扱っていません。ほんと、普通の人が買えるカジュアルばかりです。だから雑誌で取り上げると、すぐに反応は出ます。ただ、ファッション雑誌ではないので、あまり反応重視のページつくりにはしていません。ボリュームも限られていますし、毎回せいぜい2つくらいしか企画が出来ませんし、またタイアップも入ってきますしね。

―人気のある特集にはどんなものがありますか。

相棒の戸井田副編集長と最終チェック
相棒の戸井田副編集長と最終チェック

やはりヒストリーものです。この雑誌の世界観がよく分かるんでしょうね。僕も古いクルマに乗り、60~70年代の音楽ばかり聴いていますし。

それとキーワードでいえば、「カリフォルニア」でしょうか。やはりそこには憧れの世界があるんですね。

あまりミーハーにする気はないので、そのへんは気をつけています。

―相棒の副編集長と2人でつくっておられるとのことでしたが、大変ではないですか。

いや、むしろ2人のほうがやりやすいですね。コンセプトもぶれないですし。そりゃ作業は大変ですが、そこは外部の人たちに手伝ってもらいます。バイトの女の子くらいはいてくれたほうがいいかな(笑)。

相棒の戸井田も湘南に住んでいるサーファーですから、四六時中サーフィンをテーマに話をしています。ですから自然とそこから次の企画が生まれてくるんです。

―理想的ですね。では、次は「ブルー」女性版をどうつくるかですね。

はい。「ブルー」の世界観をもつレディス版は来年必ず出します。ハワイ、トロピカル、アロハ~じゃなくカリフォルニアなノリで(笑)。モノに寄らない成熟した女性のライフスタイル誌にしたいです。そんな雑誌はアメリカにもありませんが、日本発でやってみたいです。その時代は来ていると思っています。

編集長の愛読誌

(2011年11月)

取材後記
雑誌「POPEYE」が創刊されたころ、もう30年以上前ですが、当時高校生だった私も流行の波に乗らねばとばかりサーフィンを始めました。大学生になっても、友人のクルマに乗せてもらいながら何度も海に通いましたが、どういうわけか長続きすることなく、そのうちサーフボードも人手に渡り、それ以来ボードに乗ることもなくなりました。
今回じっくり「Blue.」を読んでみて、70年代後半の頃の自分の生活がおぼろげながらも浮かび上がってきて、ちょっと照れくさくなってしまいました。そんなセピア色の青春の1ページのような内容が、いまも古びることなく誌面の底流に流れている。
「雑誌は情報ではなく、その世界観を伝えるものだ」とは諸先輩たちから多く聞かされてきたことですが、「Blue.」に掲載されている写真の1枚1枚から、林さんの言う「感じて欲しい世界観」が少し分かったような気になりました。これは青春の雑誌、あの甘酸っぱい時代の共犯者にして、生涯の友人ともなりうる雑誌なのかもしれません。

インタビュアー:小西克博

大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で「GQ」日本版の創刊に参画。 「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に「遊覧の極地」など。

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