<特集>
経済外交のニューウェーブ
戦後復興を経て、世界経済を牽引してきた日本。その裏には「経済外交」が存在した。日本は、2008年サミット議長国に続き、2010年にはAPECの議長国に就任する。
グローバリゼーションにともなう世界経済の様相は急速に変化し、特に東アジア経済は、「東アジアの奇跡」と呼ばれるほど急速に発展した。
昨今の東アジアでは中国の台頭がみられ、自由貿易協定や経済連携協定が活発化し、またAPEC内では自由貿易圏構想まで提案されるに至っている。
世界経済と東アジア経済の環境は、どのように変化しているのか。
そしてその変化に対応するため、いま日本の「経済外交」に求められることとは
日本経済外交の展望
――北海道洞爺湖サミット 二〇一〇年日本APECに向けて
/小田部陽一
世界経済の姿は大きく急速に変化している。その変化に的確に対応すべく、外務省の知見と特徴を活かして推し進める「経済外交」。政府だけでなく民間企業などとも力を合わせ、国際的ルールを作り、重点国・地域と対話と協力などを通じて、日本の経済上の国益の確保を追求していく
グローバリゼーションと経済外交
――世界経済はどう変化し、日本の経済外交はどう対応してきたか
/井上淳
「WTOの発足を契機に世界経済は急速なグローバル化を経験してきたが、日本はそれ以前から工程間分業の構築という形で、東アジアと事実上の経済統合を進展させてきた。東アジアとの工程間分業を前提とすれば、EPAによって、WTOを超える範囲についても対応していく必要がある。加えて、グローバル化によって再燃した資源の安定供給源確保という古くて新しい課題にも対応しなければならない。ここでは、経済外交の現状について理解を深めるために、経済情勢の変化に即して経済外交を概観する
日本の将来像から経済連携協定(EPA)政策を考える
――大市場、米・EUとの締結の意義とは
/浦田秀次郎
日米、日欧EPA締結に向けたフィージビリティ・スタディが重ねられている。世界経済が新たな秩序で動きつつある中、日本は大市場米欧とEPAを締結することにどのような意義をもつのか。日本の将来を見据えた経済外交のあり方とは
日米経済協力
――アジア経済における安全保障の必要性
/ケヴィン・G・ニーラー
本年初頭に提出されたアーミテージ第二報告書では、アジア地域全体の中で日米関係を位置づけている。アジア全体の多岐にわたる経済問題に対応するために、日・米はいかなる協力関係を模索するべきか
日欧経済連携強化に向けて
――経済界の立場
/金原主幸
「摩擦と対立」の時代から「協調と連携」の時代に入って久しい日欧経済関係。さらなる関係強化を目指し、日本経団連では二つの提言がまとめられた。日本経済界の欧州統合認識、日EU間に残る課題、そして経団連が欧州側に働きかけている内容とは
対談
インド、オーストラリア、湾岸諸国とのEPAの新しさ
/木村福成/神保謙
新しい意味づけのEPAの第二幕が始まった。今年6月署名の日ブルネイ、8月署名の日インドネシアEPAの新しさとは。そしてそれにつづくオーストラリア、インド、湾岸諸国とのEPAがもつ意味合いを考える際の留意点とは
国際貿易体制の「正直な仲介者」として
――WTO交渉の現場から
/渡邊頼順
風光明媚な景勝地、レマン湖畔。しかし、そこは知的所有権や関税率の設定などで、各国がしのぎを削る場でもある。この地に居を構えるWTO事務局は規模こそ小さいものの、有能な「黒子」としてこれまで無視しがたい役割を果たしてきた。各国の交易活動がいっそう緊密化するなか、ますます同機関の役割が問われている
アフリカ円借款の再構築
――二〇〇八年TICADⅣに向けて
/築野元則
昨今アフリカでも経済成長が見られ、これを持続的なものにするために同地域への支援が強化されている。これら支援検討にあたり、日本のアジアに対する円借款事業の成功経験を生かしたい。来年五月にはTICAD(アフリカ開発会議)Ⅳが開催される。日本は改めてこの分野で指導力が発揮できるのか
資料篇
ひと目でわかるEPA
<小特集>
中南米の再発見
日本と中南米の新たな出会い
/恒川惠一
一九八〇年代の中南米経済大不況による日本・中南米関係の「失われた一五年」を経て、昨今、再活性化の時機が到来している。その背景には下火の時代にも見られた双方の努力があった。今後、日本はこの親日大陸である中南米といかに付き合っていくべきか
歴史に翻弄されたパナマ運河の過去と未来
/小林志郎
大西洋と太平洋をつなぐパナマ運河完成から約一世紀。近年の世界貿易の急増と船舶の大型化に伴い対応するべく「第三閘門運河」建設準備が進められている。パナマ運河の歴史を振り返り、「第三関門運河」計画の疑問点にも触れる
パナマ運河、なぜ拡張工事が必要なのか
/並木芳治
パナマの安定と世界の海運時流にかなう新たな計画が進んでいる
海を渡った日本の民家
――日本文化を紹介する場をブエノスアイレスへ
/永井槇也
ブエノスアイレスにたたずむ日本の民家。あるアルゼンチン人夫妻が「地球の裏側の国ニッポン」を紹介するために、それは運ばれた
資料篇
日・中南米関係
グラビア
中南米にみる日本
<カントリー・イン・フォーカス>
ガーナ
日本とガーナ、これまでとこれから
/浅井和子
今年は日本・ガーナ国交樹立五〇周年にあたる。当初は両国とも順調な経済発展を進めてきたが、ガーナは時代の流れに巻き込まれ悲劇を再度経験する。しかし昨今のガーナの経済成長は著しい。今後、多くの共通点を持つ両国が平和に貢献することを期待する
意志あるところ、道は通じる
――ガーナに賭けた思い、故武邊寛則氏の足跡をたどる
ガーナ共和国の首都アクラから西へ一二〇キロのところにあるアチュワ村。一九八六年、村落開発を目的に青年海外協力隊の三代目として武邊寛則氏が派遣された。彼は村人たちに安定した収入源を確保するため、通常二年間の人気を一年延長し、養鶏とパイナップル栽培プロジェクトを実施した。しかし、そのプロジェクトの成功をみることなく、自動車事故で帰らぬ人となった。彼はガーナに、そしてアチュア村にどんな思いを抱いたのだろう
グラビア
ガーナの魅力
<特集外>
平和構築外交の試金石
――ミンダナオ紛争影響地域における日本の協力
/永石雅史
すでに三〇年以上にわたりフィリピン政府とイスラム武装勢力との間で紛争が続いているミンダナオ。昨秋、復興・開発支援に携わるため一人の日本人が同島に降り立った。現場で感じる日本の支援のあり方とは
<連載>
悲観・楽観・世界観
/千野境子
巻頭随筆
青い空の下の墓標
/斉藤由香
現代社会科学における宗教の復活
/猪口孝
談話室
日中ビジネスの橋渡しをして
/山本晃
映画から見る世界の今 第11回
中国に行って思ったこと
/朴木浩美
中国には、急速に発展しても、その勢いに飲み込まれないだけの力を感じる・・・・・・
日本の読み方・読まれ方 第2回
MITI and the Japanese Miracle
by Chalmers Johnson
/徳川家広
1980年代後半、日本経済の奇跡が世界中でささやかれ、日本経営に学ぶビジネス書が英語圏で次々とベストセラーになった。30年近く経ったいま、日本経済はどのようにかたられているのか
書評フォーラム 選評・細谷雄一
『グローバル・ガヴァナンスの歴史的変容』
『国連の政治力学』
『平和政策』
INFORMATION&読者投稿
外交フォーラムの内容
- 出版社:都市出版
- 発行間隔:月刊
- サイズ:B5判
日本で唯一の外交問題・国際関係論専門のオピニオン誌
国際社会の中で、日本の外交はどうあるできか。内外の著名な筆者が問題の核心を鋭く分析、世界の動きがリアルにつかめる情報を満載。研究者・ビジネスマン・官界・学生をはじめ国際問題に関心ある人々の必読誌として1988年の創刊以来、高い評価を得る。
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