CONTENTS
特集
世論は外交をリードするか
対外政策の決定がいまや私たちの生活すべてに即座に直接影響を与える時代。常に世論を通して対外政策を監視し、建設的提言を行なっていくことは、日本の外交能力を高める上でもきわめて重要なことだ。昔と違い、国民世論を無視した外交はもはや成り立ちえない。しかし、外交が歴史的な継続性や一貫性が求められるのに対し、世論は「しばしば短期的で移ろいやすく、遠い将来に対する配慮を欠き、首尾一貫しない見解を示す」。あまりにも世論に迎合した外交は危険だ。世論と外交の関係はどうあるべきなのか。
座談会
世論と外交の関係はいかにあるべきか
/田所昌幸/橋本五郎/山崎正和/川田司
世論とはさまざまな国民の層・メディアによって形成されるものであり、世論対策は外交当局の重要な政策であるが、冷戦終結後、世論が多様化・国際化するにつれ、外交はますます複雑化している。世論におもねる外交は危険を伴うが、最終的に世論を信じる態度も必要である。また、軍事力を持たない日本にとって、外交によって他国の世論に働きかけていく努力はきわめて重要である。
古くて新しいジレンマ
―民主政治と外交
/中西寛
民主体制は外交を強化し、国際平和をもたらす反面、愛国心を強め、国家間対立を増幅させる危険性をもつ。20世紀初頭、ファシズムの台頭とウィルソン外交の失敗により、外交に対する世論の影響は悲観的に捉えられていた。以降、民主体制の国々は世論への「説得」を試みるようになる。この方法は最終的に世論に信頼を置くという点で、世論操作とは区別される。今日、メディアによる世論操作が容易に行ない得る時代において指導者に求められるのは、世論に対する信頼をおきつつ、自国・相手国の世論に対し外交を自分の言葉で誠実に説得する努力である。
メディアは何を伝えているか
/高島肇久
2004年の川口外務大臣による中央アジアとモンゴルへの訪問は、その戦略的重要性にもかかわらず、日本での報道はごく限られたものであった。その一方で、北朝鮮関連の報道にはマスコミの取材が殺到する。しかも、そこでなされる報道はもっぱら拉致問題に集中し、核問題やミサイル問題といった世界レベルでの話題は隅に追いやられている。今後日本が世界で生き抜くためには、マスコミを通じて流通する情報の質の向上が求められている。
注目すべき米国の二つの選挙戦
―「ブッシュ対ケリー」と「外交エリート対ポピュリズム」と
/久保文明
アメリカ外交が伝統的に理想主義・道義的であった背景には、外交政策に対する強い世論の影響があった。9・11以降、外交問題に対する世論の関心は高まってきており、とくにイラク戦争と対テロ戦争をめぐる世論の行方は、大統領選挙でも大きな焦点となっている。今後、ベトナム戦争同様、米軍のイラク撤退を求める世論が沸き起こる可能性は否定できない。こうした「ポピュリスト的反戦世論」と「外交エリート」の間に立たされている民主党のケリー候補は、たとえ当選しても、難しい問題に直面することになるだろう。
フランスはソンダージュ漬け
/倉田保雄
世論調査大国と言われるフランスでは、マスコミ・メディアの依頼を受けて民間企業がアンケート調査を行なう。政治から恋愛まで、なんでも調査対象になる仏世論の今昔物語
中国における世論と外交
/中居良文
法輪功事件は、中国政府のたくみな世論操作によって鎮静化した。その一方、SARS事件のように、政府の世論操作が及ばないケースも出ている。その背景には、携帯電話やインターネットの爆発的普及という情報革命の進展があった。こうした事態に対処する中国政府の方法はいかにも前時代的である。今後、胡錦濤政権が政治の透明化についてどのような政策をとるのかが注目される。
日本世論の動きをつかむ
―二大外交課題に対する世論調査を通して
/浅海伸夫
さきの参院選で大きな争点となった、北朝鮮およびイラク問題に対する有権者の反応は興味深いものがあった。世論調査の数字から世論の動きを正しく把握する秘訣とは何か
データ
海外における対日世論調査結果
特集外
インタビュー
現代英国外交の世界観
―ブレア政権の外交政策をめぐる対話
/ジョン・ソーアズ/細谷雄一
イラク戦争をめぐり困難な決断を下してきたブレア政権。米国と欧州、倫理と国益のあいだで微妙な舵取りが続くなか、その外交政策を根底から規定している伝統、世界観、そして哲学とはなにか。イラク戦争にも深くコミットしてきた現役の英国外交官に問う
日中相互認識の誤作動
―日中比較の視点から
/王敏
中国における反日デモの勃発、領土をめぐる問題、小泉首相の靖国参拝、そしてアジアカップにおける「ブーイング」等々……最近の日中間の問題を挙げればきりがない。日本と中国は、なぜこれほどまでに、わかり合えないのか。両国の相互理解を妨げている根本的原因を探る
進化するTICAD(アフリカ開発会議)プロセス
―TICADIII から一年
/河野雅治
1993年に始まった日本のTICADプロセスは、アフリカ連合(AU)の成立やアフリカ各国首脳のG8サミットへの参加などと相まって、冷戦後低下したアフリカに対する国際社会の関心を再喚起することに成功した。TICADプロセス成功の原因は、アフリカとその開発パートナーである各国・機関の代表者が、対等な立場から交渉し、政策論議を交わす場を提供した点にある。日本はそこにおいて、「市場」としてのTICADを管理する特別な役割を担っている。今後日本は、TICADの制度化を進めるとともに、アフリカ自体の努力に基づく実体面での成果を上げることにより、国際社会におけるTICADのプレゼンスをさらに高めていくことが必要であろう。
日本で働く外国人労働者たちの声
/スウェンドリニ・カクチ
高齢化社会が進むなか、外国人労働者の受け入れ拡大は避けられない状況となっている。その一方、不法就労者や犯罪の増加といった「負」の側面を指摘する声も多い。すでに日本にいる多くの移民労働者たちは、何を思い、何を感じているのだろうか
連載
新連載 戦後経済外交の軌跡 第1回
外交再建の基本構想
/井上寿一
敗戦の翌年、戦後日本の再建に燃える専門家たちによって報告書『日本経済再建の基本問題』がまとめられた。同書は世界経済のネットワークが本格化する中でアメリカを排除しないアジア地域主義を目指すものであり、経済再建だけでなく戦後日本外交の指針となるものでもあった。社会的混乱と経済的困窮の中から出発した、敗戦国日本の苦渋に満ちた軌跡を追う。
カラー・グラビア 大学ゼミ訪問 第71回
横浜国立大学 山崎圭一ゼミ
悲観・楽観・世界観
/千野境子
巻頭随筆
/池内恵/脇祐三
談話室 第78回
サッカーがなぜ国際問題になったのか
/阮蔚
WTOからみる国際社会との付き合い方 第5回
ナマズをめぐる問題
/鈴木庸一
よみがえる絵、追いかける言葉 第2回
おばちゃんたちのブルース
/藤原章生
書評フォーラム 選評 添谷芳秀
『砂漠の戦争』
『帝国とその限界』
『拡大ヨーロッパの挑戦』
INFORMATION&読者投稿
外交フォーラムの内容
- 出版社:都市出版
- 発行間隔:月刊
- サイズ:B5判
日本で唯一の外交問題・国際関係論専門のオピニオン誌
国際社会の中で、日本の外交はどうあるできか。内外の著名な筆者が問題の核心を鋭く分析、世界の動きがリアルにつかめる情報を満載。研究者・ビジネスマン・官界・学生をはじめ国際問題に関心ある人々の必読誌として1988年の創刊以来、高い評価を得る。
この雑誌の読者はこちらの雑誌も買っています!
外交フォーラムの所属カテゴリ一覧
Fujisanとは?
日本最大級雑誌の定期購読サービスを提供
デジタル雑誌をご利用なら
最新号〜バックナンバーまで7000冊以上の雑誌
(電子書籍)が無料で読み放題!
タダ読みサービスを楽しもう!