機能材料 発売日・バックナンバー

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CONTENTS 3月号

特集:材料とエマージングテクノロジーによる実装技術の新展開
 -Part2 エマージングテクノロジーによる実装技術の新展開

 実装技術に影響を与えるエマージングテクノロジーとは?・・・・・5
  Emerging Technologies affecting the Packaging Technology

                           宮代文夫

エレクトロニクス実装学会 顧問 

 21世紀に入り,実装技術を牽引するテクノロジードライバーはパソコンからケータイに
代わり,また半導体が65nm時代を迎え,搭載部品が0402時代に突入し,軽薄短小路線がい
っそう加速されている。インターネプコン,JPCAショー,CEATEC,SEMICONショーなどの
展示をみる限り,一定の路線上を歩んでいるように思える。しかし将来を眺めてみると,
数年後にはユビキタス時代が確実に到来しまたUWB の解禁・実用化も間近く,単なる「高
周波モバイル時代」が来るにとどまらない。現在注目すべきエマージングテクノロジーと
しては,ナノテクノロジー,MEMS,バイオテクノロジー(含バイオメトリクス),スピン
トロニクス,オプトエレクトロニクス,ロボットテクノロジー(RT)と目白押しであり,
これらが取り込まれると,実装技術のコンセプトそのものを根本的に考え直す必要がある
ほどの変革を覚悟しなくてはならない。本特集ではこれらのうち主なものを取り上げ,第
一線の専門家からの最新のメッセージをお伝えし,ご参考に供したい。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.ユビキタス時代の到来と実装技術
 3.UWB時代の到来と実装技術
 4.エマージングテクノロジーズ
  4.1 ナノテクノロジー
  4.2 MEMS
  4.3 バイオテクノロジー
  4.4 マイクロケモメカトロニクス
  4.5 スピンエレクトロニクス
  4.6 オプトエレクトロニクス
  4.7 ロボットテクノロジー(RT)
 5.おわりに


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 ナノテクノロジーと実装技術・・・・・・・・・17
 Nanotechnology for Electronics Packaging

                          菅沼克昭

大阪大学 産業科学研究所 教授 

 ナノテクノロジーは,実装の世界にも新たな可能性を広げている。金属ナノ粒子を用い
たナノペーストは,インクジェット,詳細スクリーン,オフセットなどの新しい印刷によ
る多層ファインピッチ配線の可能性をみせている。本稿では,ナノペーストを用いた配線
技術の現状を紹介し,克服すべき技術課題を明確にする。

 ~目次~
 1.ナノテクノロジーの背景
 2.日本のナノテクノロジー戦略と実装技術
 3.金属ナノ粒子の合成
 4.ナノペーストの利用
 5.新たな電子実装技術へ至るための克服すべき課題


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 MEMSと実装技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
 MEMS Packaging

                         伊藤寿浩

東京大学大学院 工学系研究科 精密機械工学専攻 助教授 

 MEMS実装技術の低コスト化は,MEMS実用化加速の鍵を握るといわれ,内外でも関連する
研究開発が活発化している。その中でもウェハーレベル封止接合技術は,実装技術の標準
化,LSI実装技術の有効活用などの観点からも特に重要である。本稿では,MEMS実装技術
の課題について概観するとともに,その解決に向けた実装コンセプトを議論した。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.MEMS実装の課題
 3.MEMS封止実装
  3.1 封止接合ポイント
  3.2 MEMS封止に使われる接合法 
 4.標準封止構造と常温接合の適用可能性
 5.おわりに


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 Soft-MEMS技術を駆使したバイオメディカルセンサー・・・・34
  Biomedical Sensors by Soft-MEMS Techniques

                          三林浩二

東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 計測分野 教授 

 半導体プロセス技術を機能性高分子膜に適用することで,柔軟性に富み,生体への応用
が可能な各種ウェアラブル化学センサー(Soft-MEMS)を開発し,経皮ガス計測などの生体
計測に応用した。また肝臓などの代謝酵素を活用することで,ヒトの嗅覚メカニズムとは
異なるガスセンサー(バイオスニファー)を作製し,センサー応用として呼気による体内
の代謝機能の評価を行った。本稿では,これら各種ウェアラブル化学センサーやバイオス
ニファーの特徴について述べるとともに,その生体応用について紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.ウェラブル化学センサー
  2.1 ウェアラブル酸素センサー
  2.2 ウェアラブル導電率センサー
 3.生体材料を使ったガスセンサー
  3.1 酵素を用いたバイオスニファー
  3.2 薬物代謝酵素を用いたバイオスニファー
  3.3 光ファイバー型バイオスニファー
  3.4 スティック型バイオスニファーによる呼気計測
 4.おわりに


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 金属スピントロニクスの新たな展開とまだ見えぬ実装技術・・・・・・・・42
 Metal based Spin Electronics and New Packaging Technology emerged in Future

                          佐橋政司

東北大学大学院 工学研究科 電子工学専攻 超微細電子工学講座 教授 

 進化を続けるデジタル・情報エレクトロニクスにおいては,大容量・高密度ストレー
ジ/メモリーへの期待がますます高まっている。加えて電子スピン物理の分野では,新た
な革新技術の芽ともなりうる,将来に夢を抱かせる基礎研究成果が続けざまに報告され
ている。本稿では,スピンナノエレクトロニクスへの新たな挑戦とスマートアパレルの
ような新概念・新市場の創生にもつながる可能性があるマイクロ波ナノスピントロニク
スについて,その概要を述べる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.スピンストレージ/メモリーの進展
 3.マイクロ波スピンエレクトロニクスの創生と期待
 4.スピン流とマイクロ波の発生および検出の原理
  4.1 スピントランスファーによるマイクロ波発信原理
  4.2 スピンポンピングを用いたマイクロ波受信原理
  4.3 マイクロ波発生の高出力化と検出の高感度化
 5.おわりに


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 ユビキタス時代の電子実装技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
 Electronic Packaging Technology in Ubiquitous Network Age

                          青柳昌宏

(独)産業技術総合研究所 エレクトロニクス研究部門 高密度SI グループ
 研究グループ長 ;光・電子SI 連携研究体 研究体長 

 ユビキタス時代の電子機器内における実装技術は高密度集積と高速信号処理を兼ね備え
た技術になる必要があり,そのためには高密度微細配線と高速信号伝送がキーテクノロジ
ーと考えられる。産業技術総合研究所では半導体LSI 素子の高密度3次元実装を実現するた
め,LSIチップを多数積層して接続するための高密度微細配線インターポーザーを用いたL
SIチップ3次元実装技術の開発に取り組んでいる。このインターポーザーは積層されたLSI
チップの層間に配置し,高密度・高速のシステムを実現可能にするものである。ここでは
本インターポーザー技術の紹介と,今後の展望について述べる。

 ~目次~
 1.開発の背景
 2.高密度微細配線インターポーザーによるLSIチップの3次元実装
 3.感光性ポリイミドによる微細配線インターポーザーの作製技術
 4.経緯と今後の展開


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 UWB時代の実装技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・58
 Electronics Packaging Technology in UWB-era

                        大塚寛治

明星大学 情報学部 教授;学部長 

 UWB時代には,周波数がGHzでしかも広帯域を取り扱う実装技術が求められる。すでに実
装系では伝送線路を広く採用していて広帯域の配線を持ち合わせているが,これに対する
電磁気学的考察が不充分なまま実用化されていて,混乱があるようにみえる。ここでは電
磁波とは何か,それを配線の中にうまく閉じ込めるにはどうすればよいかを解説する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.広帯域の構造的要件
 3.広帯域の実装技術
 4.おわりに


Material Report
R&D
 紫外レーザー用光ファイバーの開発・・・・・・68
 Development of Optical Fiber for UV Laser

                          大登正敬

昭和電線電纜(株) 技術開発部 ファイバG  主任

 フッ素ドープシリカ(モディファイドシリカ)を用いて深紫外レーザー伝送用の光ファ
イバーを開発した。このファイバーは,従来の紫外用ファイバーに比べ,(1)深紫外可視
近赤外域で高い透過率を示す,(2)紫外レーザー照射に対し優れた耐久性を示す,(3)
エッチングにより容易に先鋭化するなどの特徴をもち,すでに製品化され各種装置に実装
されている。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.フッ素ドープシリカファイバーの構造と透過特性
 3.紫外レーザー照射に対する耐久性
 4.フッ素ドープシリカファイバーの透過率改善
 5.エッチングによるファイバー端の先鋭化
 6.おわりに


機能材料連載講座:因果化学からみる材料の機能性(13)
 ハイブリッドおよびデュアルUV硬化技術・・・・・・・・・・・・・74
 Hybrid and Dual UV Curing

                         市村國宏

東邦大学 理学部 先進フォトポリマー研究部門 特任教授 

 UV硬化技術はますます裾野が拡大している。その一方で,素材やフォーミュレーション
だけでなく,UV硬化原理に立ち入った技術開発が求められている。こうした背景にあって,
ハイブリッドあるいはデュアルUV硬化系に関心が高まっている。これらは複数の素過程か
らなるので,ここでは因果化学の立場から整理分類を試みる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.硬化反応のいろいろ
 3.ハイブリッドUV硬化とデュアルUV硬化
 4.ハイブリッドUV硬化系
  4.1 ラジカル重合-ラジカル架橋系(Ha型)
  4.2 ラジカル重合-カチオン重合系(Hb型)
 5.デュアルUV硬化系
 6.増殖的なUV硬化反応系
 7.おわりに


連載:高分子材料の実用性(8)
 難燃・接着・帯電防止・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・85

                      鴨川昭夫

元理化学研究所 研究員/元工学院大学 電子工学科 ;化学工学科 

 ポリマーの化学構造式をみると,ほとんどが有機化学因子(C,H,O)で結合され,複雑
な構造を示す。筆者はもちろんのこと,加工技術者として,この構造式を観察して加工性
を判断することは難解とされている。

 ~目次~
 -難燃化のプロセス
 -接着のメカニズム
 -フィルターの効用

4,400円
CONTENTS 2月号

特集:材料とエマージングテクノロジーによる実装技術の新展開
-Part1 実装材料の展開と展望

 実装技術と実装材料の変遷と展望・・・・・・・・・・・・・5
  Transition and Trend of Jisso Technology and Jisso Material

                           銅谷明裕

山一電機(株) 取締役(技術統括)R&D センター長 

 電子情報機器には3つの大きな技術トレンドがある。第1はダウンサイジングであり,こ
れは過去20年間にわたって進展してきた。第2のデジタル化はデジタル家電に代表されるよ
うに今まさに進展しつつあり,第3のユビキタス化はこれから始まる技術である。これらの
技術トレンドを支える実装技術と実装材料の変遷と展望について述べる。

 ~目次~
 1.実装技術の分類と産業規模
 2.電子機器と実装技術の変遷
  2.1 ダウンサイジング化
  2.2 デジタル化
  2.3 ユビキタス化
 3.ボード実装とLSIパッケージ技術の変遷
  3.1 スルーホール実装
  3.2 SMT実装(周辺接続)
  3.3 リードレスSMT実装
  3.4 3次元実装


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 実装技術にトリガーを与えたテクノロジー・・・・・・・・・13
 Key Trigger Technologies for Packaging Technology

                          宮代文夫

(社)エレクトロニクス実装学会 顧問 

 実装といえばその中心はいうまでもなく半導体実装である。半導体は「産業のコメ」であ
るから,ユーザーたる産業機器・システム,家電機器など各時代ごとの「テクノロジードラ
イバー」の動向に沿って変遷してきた。ここでは,今まで実装技術に大きく影響してきた主
なテクノロジードライバーとその影響を受けた実装技術をトピックス的に取り上げて紹介し,
今後の見通しについて展望する。そしてもう一つの大きな潮流である「環境問題」について
も言及する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.実装技術にとって重要なテクノロジードライバー
  2.1 IT(情報通信)関連
  2.2 情報家電関連
  2.3 産業機器関連
 3.地球環境保全からみた実装技術へのインパクト
  3.1 ハロゲンフリー材料
  3.2 鉛フリーハンダ
  3.3 分解容易性設計
 4.時で大実装技術とそれを実現するキーテクノロジーの展望
 5.おわりに


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 基板と構成材料の変遷と展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
 Transition and Prospect for Printed Circuit Board and its Materials

                                越後文雄

松下電子部品(株) 開発技術センター 材料プロセス研究所 主任技師 

 半導体を中心とした実装技術に対応して,プリント配線基板もスルーホール多層基板から
ビルドアップ基板へと進化を遂げている。基板を構成する材料も,基板プロセスと要求性能
に合わせて多くの提案がなされている。将来的にも微細化や複合化などが進み,電子部品や
実装技術との密な連携が重要となってくる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.多層配線基板に使用される材料
 3.ビルドアップ配線基板に使用される材料
 4.ALIVH基板
 5.ALIVH基板の材料進化
 6.基板材料の将来展望
 7.おわりに


Material Report
R&D
 自然共生型有機合成反応を指向した金属固定化層状粘土触媒の開発・・・33
 Development of Layered Clay-immobilized Metal Catalysts for Green Organic Synthesis

             金田清臣 *1   満留敬人 *2   本倉 健 *3

*1 大阪大学大学院 基礎工学研究科 物質創成専攻 教授
*2 大阪大学大学院 基礎工学研究科 物質創成専攻 博士後期課程2 年
*3 大阪大学大学院 基礎工学研究科 物質創成専攻 博士後期課程2 年

 バイオマスは生物体由来であり,多量の水を含んでいる。このため熱分解でガス化する際
は多量のエネルギーを必要とし,バイオマス中に含まれるH元素がH2Oとして回収される割合
が高い。ここで,減圧下で流通させたガスにマイクロ波を照射しプラズマ場を形成すると電
子の放出やラジカル種などの発生に伴う熱および反応効果により,バイオマスと水分の両者
に含まれるH元素を効率的に水素として生成させることが期待できる。本稿では,水分含有リ
グニンをマイクロ波プラズマ法によりガス化するとリグニン転化率および気体状生成物収率
が高まり,さらに含有水分からも水素製造が可能であることを述べた。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.ハイドロタルサイト固定化金属触媒を用いた有機合成反応
  2.1 Ru固定化HTを用いた分子酸素を酸化剤とするアルコールの酸化反応
  2.2 Ru/HTを多機能触媒として用いるone-pot反応系の開発
 3.モンモリロナイト層間固定化金属触媒を用いた炭素-炭素結合形成反応
  3.1 Ti4+-montのプレンステッド酸点を用いる炭素-炭素結合形成反応
  3.2 Sc3+-montおよびCu2+-montのルイス酸点を用いる炭素-炭素結合形成反応
 4.おわりに


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 新しい発光素子用基板としての酸化ガリウム単結晶の開発・・・42
 Growth of β-Ga2O3 Single Crystals as Substrates for GaN

      島村清史 *1  E. G. V llora *2  青木和夫 *3  一ノ瀬昇 *4

*1 早稲田大学 各務記念材料技術研究所 助教授 
*2 早稲田大学 各務記念材料技術研究所 研究員
*3 (株)光波 執行取締役 
*4 早稲田大学 各務記念材料技術研究所 教授 

 透明導電性酸化物(TCO)の一つである酸化ガリウム(β-Ga2O3)に着目し,その単結晶育
成を行った。多くのTCO は単結晶化が困難であるが,β-Ga2O3 は単結晶化ができる可能性があ
る。また得られた単結晶の応用を考えるうえで,GaN 用の基板としての応用が期待されるの
で,これらについても検討を行った。

~目次~
 1.はじめに
 2.酸化ガリウム
 3.結晶育成
 4.GaN系薄膜の結晶成長
 5.おわりに

機能材料連載講座:因果化学からみる材料の機能性(12)
 キラリティーおよび生命の起源・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
 The Origin of Chirality and Life

                             市村國宏

東邦大学 理学部 先進フォトポリマー研究部門 特任教授 

 生命の誕生には,生体を構成する分子は高純度な光学活性体でなければならない。どのよ
うにして地球上にキラリティーが発生したかについて,1世紀以上にわたって論議されてい
る。宇宙起源説であれ原始地球起源説であれ,いずれも複雑な現象の因果科学的な積み重ね
を経たものである。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.キラリティーの起源をめぐるさまざまな仮説
 3.パリティー非保存によってキラリティーは発現したか
 4.円偏光による絶対不斉反応
 5.宇宙空間でのキラリティー起源説
 6.光配向におけるキラリティー発現の可能性
 7.おわりに


周辺技術
家電製品にかかわる抗菌・防カビ性能の評価・・・・・33
 Evaluation of Antimicrobial and Antifungal Activity on Household Appliances

                 奥田舜治*1 菊野理津子*2 嶋崎典子*3

*1  北里環境科学センター 微生物部 
*2  北里環境科学センター 微生物部 
*3  北里環境科学センター 微生物部 

 家電製品にかかわる抗菌・防カビ性能の評価として,(1)家電製品の「抗菌・防カビ加
工」を施された材料の性能評価と,(2)家電製品に組み込まれた「除菌」装置の性能評価
について,現状の評価方法(JIS等)と課題,そして筆者らが所属する北里環境科学センター
で実施している改良法などを紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.抗菌・防カビ加工材料の評価
  2.1 家電製品に使われる材料
  2.2 家電製品の抗菌評価方法
 3.今後の課題
  3.1 家電製品使用環境下における抗菌・防カビ加工素材の耐久性(耐水,耐光)
  3.2 家電製品における除菌性能評価
 4.おわりに

4,400円
CONTENTS 1月号

新春特集:ロボットテクノロジーの最新動向
Current Status of Robot Technology
 特集にあたって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
  Overview-White LED Lighting

                          浅田 稔

大阪大学 大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻 教授 


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 ロボカップにおけるRTの進化と深化・・・・・・・・・・7
 RT Evolution and Penetration in RoboCup

                          浅田 稔

大阪大学 大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻 教授 

 ロボカップは,複数の自律ロボットがサッカーの試合を実現することを目的とするロボ
ティクスと人工知能の研究分野の新たな標準問題を設定することで,それらの分野の研究
を促進させる試みである。本稿では,1997年から始まったロボカップの活動について,そ
の目的,意義,実績を紹介し,各リーグでの深化と進化の度合いを探り,今後の課題を述
べてまとめる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.現在のロボカップ戦略構想
 3.リーグ構成
  3.1 シミュレーションリーグ
  3.2 小型ロボットリーグ
  3.3 中型ロボットリーグ
  3.4 4足ロボットリーグ
  3.5 ヒューマノイドリーグ
  3.6 ロボカップジュニア
  3.7 ロボカップレスキュー
 4.ロボカップにおける基本研究課題
  4.1 視覚
  4.2 その他のセンシング
  4.3 メカと制御
  4.4 認識/判断/立案
  4.5 コミュニケーション
 5.おわりに


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 ロボットとユビキタスセンサーが融合するネットワークロボット・・・・17
 Network Robots Integrating Robots and Ubiquitous Sensors

                       萩田紀博 *1  石黒 浩 *2

*1 (株)国際電気通信 基礎技術研究所 知能ロボティクス研究所 所長 
*2 (株)国際電気通信 基礎技術研究所 知能ロボティクス研究所 客員室長;
 大阪大学 大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻 教授 

 ~目次~
 1.はじめに
 2.ユビキタスからロボットへ
 3.ネットワークロボットとは
 4.ネットワークロボットに必要な機能
 5.ネットワークロボットの利活用
 6.おわりに


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 ロボットエンターテインメントの可能性・・・・・・・24
 Potentiality of Robot Entertainment

                               藤田雅博
ソニー(株) 情報技術研究所 知的システム研究部 統括部長 

 ロボット産業を立ち上げる目的でエンターテインメント応用から始めよう,という提案を
している。エンターテインメント応用のロボットに関する活動をロボットエンターテインメ
ントと呼び,具体的に家庭用の自律型ロボットをペット型ロボットのような形から導入する,
という新しいアプローチをしている。この活動の波及として,単純に家庭用のエンターテイ
ンメント応用だけでなく,教育あるいは医療応用に対する活動も立ち上がってきた。ここで
は,このような活動を紹介しながら,今後の方向としてどのようなことが考えられるかに関
して述べる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.エンターテインメントロボットの実用例
 3.マーケットの反応
 4.波及効果
  4.1 教育利用
  4.2 医療利用
 5.今後の方向
 6.おわりに


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 都心型ラボを中核とするRT産業クラスター創出・・・・30
 RT Industry Cluster Generation with City Center Laboratory as the Core Role

                                 石黒 周

 Shu Ishiguro   The RoboCup Federation チーフビジネスオフィサー  

 ロボットテクノロジーをベースとした産業クラスター化の代表事例として,大阪市の次世
代RT産業創出構想を紹介する。ダイヤモンドモデルや連携推進機能などに対応する施策展開
の中で,国際的な研究者ネットワークであるRoboCup と施策間の連携推進機能を果たす都心
型ラボ「ロボットラボラトリー」が重要な役割を担っている。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.産業クラスターの成功要因
  (1)要素条件
  (2)需要条件
  (3)関連産業・支援産業
  (4)企業戦略および競争環境
 3.大阪市次世代RT産業創出構想におけるクラスター化に向けたアプローチ
  3.1 クラスタードメインの設定
  3.2 NPO型分散研究システムとの連携
  3.3 ダイヤモンドモデル4要因の導入
  3.4 連携推進機能
 4.都心型ラボ「ロボットラボラトリー」の役割
  4.1 コラボレーションシステムデザインの場
  4.2 ネットワーク形成とネットワークジェネレーター育成の場
  4.3 実証実験とリーディングベンチャー創出の場
 5.おわりに


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 RT産業の創出に向けて-現状と課題を踏まえて-・・・・・・・39
 Lead to the Creation of RT Industry -based on the Current Situation
and Foremost Tasks-

                               美濃地研一

大阪市都市型産業振興センター 大阪産業創造館新産業創造推進室 シニアプランナー 
;(株)UFJ 総合研究所主任研究員 

 RT産業は今後大きく飛躍し,将来には巨大な市場が生まれると見込まれている。しかし,
現状のRT産業は「研究開発」段階にあり,産業と呼べる状況ではない。これを打破するに
は,RT産業を受け入れる社会的コンセンサスが必要である。また,個々の企業の努力によ
って産業化の萌芽は出てきており,今後の発展が期待される。

 ~目次~
 1.RT産業の見通し
 2.RT産業の現状
 3.RT産業の発展に向けての課題
 4.RT産業発展のシナリオ


Material Report
Review
 ワイドギャップ半導体シリコンカーバイドSiCの結晶成長とデバイス開発の現状・・・46
 Crystal Growth and Device Development of Wide Bandgap Semiconductor
SiC-Present Status and Future

                              木本恒暢

京都大学 大学院工学研究科 電子工学専攻助 教授 

 シリコンカーバイド(SiC)は優れた物性を有するワイドギャップ(広禁制帯幅)半導体
である。近年,結晶成長技術の進展により単結晶ウェハーが市販されるようになり,高品
質エピタキシャル成長技術も確立されつつある。特に電力変換用の高耐圧・高効率パワー
デバイスに適していると考えられ,300~1200V級のショットキーダイオードが市販される
に至り,パワートランジスタの研究も進められている。本稿では,SiC結晶成長とデバイス
開発の現状について概説する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.SiC結晶成長
  2.1 SiCのバルク結晶成長
  2.2 SiCのエピタキシャル成長
 3.SiCパワーデバイスの特徴
 4.SiCパワーデバイスの開発状況
  4.1 ショットキーダイオード
  4.2 PiNダイオード
  4.3 MOSFET
  4.4 その他のスイッチングデバイス
 5.まとめと今後の課題


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R&D
 ・マイクロ波プラズマ法を用いた水分含有バイオマスリグニンからの水素生成技術・・56
 Hydrogen Production from Wet Biomass (Lignin )using Microwave Plasma Technique

               今野克哉 *1 岡村紘充 *2  小林基樹 *3
                       尾上 薫 *4  山口達明 *5

*1  千葉工業大学 大学院工学研究科 工学専攻 博士後期課程1年
*2  千葉工業大学 大学院工学研究科 生命環境科学専攻 博士前期課程1年
*3  千葉工業大学 工学部生命環境科学科 講師
*4  千葉工業大学 工学部生命環境科学科 教授
*5  千葉工業大学 工学部生命環境科学科 教授 

 バイオマスは生物体由来であり,多量の水を含んでいる。このため熱分解でガス化する際
は多量のエネルギーを必要とし,バイオマス中に含まれるH元素がH2Oとして回収される割合が
高い。ここで,減圧下で流通させたガスにマイクロ波を照射しプラズマ場を形成すると電子の
放出やラジカル種などの発生に伴う熱および反応効果により,バイオマスと水分の両者に含ま
れるH元素を効率的に水素として生成させることが期待できる。本稿では,水分含有リグニン
をマイクロ波プラズマ法によりガス化するとリグニン転化率および気体状生成物収率が高ま
り,さらに含有水分からも水素製造が可能であることを述べた。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.rリグニンのガス化
  2.1 リグニンの特徴とガス化指標
  2.2 リグニンの化学原料または熱エネルギーとしての利用
  2.3 不活性雰囲気下でのリグニンのガス化
 3.マイクロ波プラズマ法によるリグニンのガス化
  3.1 マイクロ波プラズマ法とは
  3.2 マイクロ波プラズマ法による実験方法
  3.3 照射時間と転化率,生成物収率の相関
 4.リグニンに対する水野添加効果
  4.1 水素の生成量を高めるアイデアとは
  4.2 水の添加がリグニンのガス化特性に及ぼす影響
 5.おわりに


機能材料連載講座:因果化学からみる材料の機能性(11)
 フィードバック化学の実践・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
 Practical Feedback chemistry

                             市村國宏

東邦大学 理学部 先進フォトポリマー研究部門 特任教授 

 フィードバック過程を含む酸あるいは塩基増殖反応は,酸や塩基分子の拡散移動に敏感
に影響されるので,酸や塩基による触媒反応を固体高分子膜内で行う際には,酸や塩基分
子の拡散挙動を十分に把握することが必要となる。こうしたフィードバック型の反応を組
み込んだ例として酸増殖型フォトレジストを述べ,次いで自発的なカチオン重合からなる
デュアルUV硬化材料に言及する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.触媒増幅と自己触媒増幅
 3.高分子膜中での触媒反応
 4.反応圏とは
 5.高分子膜内での酸増殖反応
 6.酸増殖型フォトレジスト
 7.自発的なデュアルUV硬化反応
 8.おわりに


連載:高分子材料の実用性(7)
 吸水性高分子材料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73

                               鴨川昭夫

元・理化学研究所 研究員/元・工学院大学 電子工学科;化学工学科 

 ナイロンのように結晶構造をもつポリマーは吸水性を示し,温度が上昇すると湿気を帯び
たように水分が生成される現象を示す。このような特性から,高分子材料は紙オムツをはじ
め,湿度を調節するスポーツウェアなど,さまざまな製品に応用されている。


4,400円
CONTENTS 12月号

特集:白色LED照明の最新技術動向
Formation and Characterization of Nanofibers
 総論-白色LED 照明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
  Overview-White LED Lighting

                           田口常正

 Tsunemasa Taguchi   山口大学 工学部 電気電子工学科 教授 


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 白色LED 照明技術の展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
 The Prospects of White LED Lighting Technologies

                      只友一行 *1  田口常正 *2

*1山口大学 工学部 電気電子工学科 教授 
*2山口大学 工学部 電気電子工学科 教授 

 表示用光源として開発され発展してきたLED(白色LED)が,エジソン電球以来使われてき
た真空管式照明光源に代わる新しい照明光源として注目を集めている。多くの特徴を有して
いる白色LEDであるが,その特徴ごとに現状と白色LED照明技術としての目標を整理し,今後
の開発課題について解説した。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.白色LED照明の原理と構造
  2.1 照明光源に要求される光の質
  2.2 白色LEDの構造
  2.3 白色LEDの構造
  2.4 蛍光体と励起LED
 3.白色LED照明の現状と課題
  3.1 半導体デバイス
  3.2 長期信頼性
  3.3 発光効率
  3.4 光束
  3.5 特性分布
 4.白色LED照明技術の展望
  4.1 ロードマップ
  4.2 市場展望
 5.おわりに


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 照明機器メーカーの取り組みと白色LED・・・・・・・・・・19
 High Purity Synthesis of Ionic Liquids

                            上田 修

山田照明(株) 商品企画本部 顧問 

 白色LEDは,光量の増大,コストの低減,製品の規準化など市場での採用のしやすさと国際
的な共通仕様が求められている。特に高ワット化の加速(1W/3W/5W ),ルーメン当たりのコ
スト低下(15¥/ルーメン),さらには規格化の推進(日本電球工業会にて推進)にめざまし
いものがあり,照明光源として認知されつつある。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.現況のLEDの市場実力
  2.1 カタログ上の実力
  2.2 製造上の実力
  2.3 他の照明光源との比較
 3.現況LED照明機器の動向
 4.LED照明用途への可能性
  4.1 LEDの特徴
  4.2 光特性
  4.3 温度特性
  4.4 寿命特性
 5.白色LEDによる新時代照明の展望
 6.今後の白色LED光源の拡張性
 7.おわりに


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 白色LED 照明の車載応用・・・・・・・・・・・・25
 Applications of White LED Lighting to Automobile Onboard Devices

                               佐々木 勝
  
 Masaru Sasaki   (株)小糸製作所 システム商品企画室 主管 

 自動車への白色LED応用は,すでにメーターパネルや各種インジケーター類などの小光量
の表示用途で多数の採用実績がある。一方,ヘッドランプに代表される大光量の用途では依
然ハロゲン電球やHID電球が使用されているが,白色LEDのめざましい高輝度化の進展により,
近い将来LEDヘッドランプ実現の可能性がみえてきた。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.自動車照明のLED化の概要
  2.1 内装照明
  2.2 外装照明
 3.ヘッドランプの概要
  3.1 ヘッドランプの変遷
  3.2 配光性能
  3.3 次世代ヘッドランプへの期待
 4.ヘッドランプ用白色LED
  4.1 光束
  4.2 輝度
  4.3 寿命
  4.4 発光色
 5.プロトタイプヘッドランプ
 6.LEDヘッドランプの法規
 7.おわりに


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 白色LED 照明用蛍光体の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
 Development of Phosphor for White LED Lighting

                               小田喜 勉

(株)ファインラバー研究所 研究員 

 低消費電力,長寿命,有害物質を含まないといった特徴を生かし,白色LEDは将来の照明用
光源として注目されている。蛍光体を用いた白色LEDは小型液晶のバックライトをはじめ多く
の分野で利用されているが,利用できる蛍光体は少ない。ここでは蛍光体の発光原理,求め
られる特性を示したうえで,最近の報告をもとにLED用蛍光体を紹介する。また,筆者らのLE
D用蛍光体の研究について解説する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.蛍光体の発光原理
 3.LED用蛍光体に求められる特性
 4.LED照明用蛍光体
  4.1 白色LED
  4.2 市販蛍光体
  4.3 LiEuW2O2
  4.4 LiTbW2O8
  4.5 報告されているLED用蛍光体
 5.おわりに


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 白色LED 照明の医療応用・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
 Application (of Ionic Liquids )to Energy Storage Devices

                小橋克哉 *1  田口常正 *2  柳井秀雄 *3

*1 山口大学 工学部 電気電子工学科 技術職員 
*2 山口大学 工学部 電気電子工学科 教授 
*3 国立病院機構 関門医療センター 消化器科 医長 

 電気・光変換効率が高い白色LEDは,新光源として産業界から期待されている。本論文では,
自然光に近いスペクトルの白色光を用いて診断することが重要である医療用高演色性白色LED
光源の開発・評価を行った。開発した白色LEDが最も優れていることがわかった。また,白色
LED光源による内視鏡撮影画像においても,従来光源と遜色ない画像を得ることができた。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.医療用白色LED光源の特徴と照明光源の作製
 3.高速イメージング撮像装置による評価
 4.動物実験
 5.おわりに


Material Report
 フォトニックネットワーク用光半導体デバイスの最新動向・・・・・47
 Recent Advances in Photonic Semiconductor Devices for Photonic Networks

                              八坂 洋

日本電信電話(株) NTTフォトニクス研究所 フォトニクスデバイス研究部 主幹研究員 

 相急増する通信トラフィックに対応するためには,大容量・高機能なフォトニックネット
ワークの実現が必要不可欠である。ここでは次世代フォトニックネットワークの実現に欠か
せない半導体可変波長光源,および複数の光半導体デバイスを集積化し複雑な高機能光回路
をワンチップ素子化した光集積素子の研究・開発動向を紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.フォトニックネックワーク
 3.波長可変半導体レーザー
  3.1 波長選択型波長可変光源
  3.2 モードホップフリーDBRレーザー
 4.モノリシック集積型高機能半導体光素子
  4.1 WDM波長セレクター
  4.2 WDM変調器
  4.3 WDM受信素子(AEG-PD)
 5.おわりに


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 フォトニックフラクタルの電磁波特性・・・・・・・・・・・・・・・・・57
 Electromagnetic Properties of Photonic Fractals

             宮本欽生 *  1桐原聡秀 *2 武田三男 *3
             本田勝也 *4  迫田和彰 *5

*1 大阪大学 接合科学研究所 附属スマートプロセス研究センター 教授
*2 大阪大学 接合科学研究所 附属スマートプロセス研究センター 助手
*3 信州大学 理学部 物理科学科 教授
*4 信州大学 理学部 数理・自然情報科学科 教授
*5(独)物質・材料研究機構 ナノマテリアル研究所 主席研究員 

 フォトニックフラクタルは電磁波や光を局在させる新たな機能材料として,情報通信,
エネルギー,計測,医療などへの広範な応用が期待できる。本稿ではフォトニックフラク
タルの構造設計と作製法,さまざまな誘電体フラクタル構造の電磁波特性と局在周波数の
予測法についてこれまでに得られた知見を紹介し,実用化への可能性を展望する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.周期構造と自己相似構造
 3.フォトニックフラクタルの構造設計と作製
 4.フォトニックフラクタルの電磁波特性
 5.フォトニックフラクタルの構造制御と電磁波特性
 6.周在周波数の予測
 7.フォトニックフラクタルの応用への展望
 8.おわりに


機能材料マーケットデータ
 分散電源の将来展望・・・・・・・・・・・・・・・・・66
 Distributed Power Generation and its Future Perspective

                            金田武司

(株)三菱総合研究所 エネルギー技術研究部 先進エネルギー研究チームリーダー
 兼 次世代エネルギー事業推進室長 主任研究員 

 分散型エネルギーシステムの社会的な役割に関して,新たな視点を提示した。たとえば
「9.11」以降,議論になりつつある都市のエネルギーセキュリティーや地域のエネルギー
自立,関連産業振興などを通じての地域振興政策など,分散型エネルギーシステムの定着
により,地域再生やエネルギー自給に対して新たな方策が開ける可能性がある。分散型エ
ネルギーシステムの位置づけも含めた新たな政策の必要性について言及した。

 ~目次~
 1.分散電源の新たな役割
 2.普及のインセンティブ
 3.経済性の考え方
 4.普及の展望
 5.政策としての位置づけ
 6.おわりに


機能材料連載講座:因果化学からみる材料の機能性(10)
 触媒分子が増殖する化学反応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72
 Chemical Reactions Exhibiting Proliferation of Catalytic Molecules

                             市村國宏

東邦大学 理学部 先進フォトポリマー研究部門 特任教授 

 酸や塩基などの触媒は,反応前後で濃度が変わることなく反応を加速するが,失活あるい
は系外への漏洩などによる制約がある。もし,触媒みずから触媒を新たに生成することがで
きれば,その触媒が関与する化学反応の速度は急激に増大する。このようなフィードバック
がかかる反応が酸あるいは塩基触媒増殖反応であり,自己触媒増幅への道を開く。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.触媒増殖反応の速度論
 3.酸増殖剤に求められる諸条件
 4.スルホン酸への分解反応
 5.酸増殖反応と酸増殖剤
 6.塩基増殖反応と塩基増殖剤
 7.触媒増殖反応の特徴
 8.おわりに


連載:高分子材料の実用性(6)
 形状記憶プラスチックほか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83

                            鴨川昭夫

元・理化学研究所 研究員/元・工学院大学 電子工学科;化学工学科 

 ポリウレタンのバルーンカテーテルを使用して,心機能の回復促進を図る。整形外科領域
では形状記憶プラスチックが補装具として使用され,効果をあげている。形状記憶現象の著
しい樹脂は,塩化ビニル樹脂である。

-シートベルトの欠陥とは?
-形状記憶プラスチックスギブス


4,400円
CONTENTS 11月号

特集:ナノファイバーの評価法
Formation and Characterization of Nanofibers
 ●多彩な展開が期待されるイオン液体・・・・・・・・・・・・・・5
 Ionic Liquids with Variety of Applications

                           大野弘幸

東京農工大学大学院 共生科学技術研究部 ナノ未来科学研究拠点 教授 


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Ⅰ 基礎開発編
 新規イオン液体の設計と特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
 Design and Properties of Some Novel Fluorohydrogenate Ionic Liquids

                          萩原理加

京都大学大学院 エネルギー科学研究科 助教授 

 本稿はフルオロハイドロジェネート系のイオン液体について,その粘性率や導電率,電気
化学窓などの諸物性に対してカチオンのアルキル側鎖や芳香族性,フルオロハイドロジェネ
ートアニオン中のHF 組成などがどのような影響を与えるか系統的に検討したものである。
電気化学的応用の際に要求される,導電率が高く,電気化学窓の広いイオン液体の開発のた
めの参考になれば幸いである。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.イオン液体1,3-ジアルキルイミダゾリウムフルオロハイドロジェネート
 3.イオン液体N,N-ジアルキルピロリジニウムフルオロハイドロジェネート
 4.イオン液体合成原料としてのフルオロハイドロジェネート塩
 5.おわりに


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 イオン性液体の高純度合成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
 High Purity Synthesis of Ionic Liquids

                        小島邦彦 *1  石井信治 *2

*1東洋合成工業(株) 感光材事業本部 エネルギー部 部長 
*2東洋合成工業(株) 感光材事業本部 エネルギー部 研究グループ 主任 

 イオン性液体を使用した応用研究が,電子部品の分野具体的にはキャパシター,コンデン
サー,リチウムイオン二次電池,燃料電池,色素増感太陽電池で多く検討されている。イオ
ン性液体の高純度化は,合成方法,精製方法および分析方法ともに,ますます重要になると
思われる。今回,イオン性液体の高純度化の観点から検討した内容について紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.イオン制液体の合成法
  2.1 第4級アンモニウム系イオン性液体の合成
  2.2 原料由来の不純物
  2.3 金属,金属塩,微粒子などの不純物
 3.イオン性液体の精製
  3.1 疎水性のイオン性液体
  3.2 親水性のイオン性液体
  3.3 着色成分の除去
 4.水分の除去
  4.1 真空乾燥
  4.2 吸着剤使用
 5.不純物の分析方法および分析感度
  5.1 イオンクロマトグラフィー
  5.2 クロマトグラフィー分析
  5.3 水分分析
  5.4 ガスクロマトグラフィー分析
  5.5 サイクリックボルタモグラム
  5.6 その他の分析
 6.イオン性液体の安定性
 7.おわりに


--------------------------------------------------------------------------------
 イオン性液体を用いた有機電解合成・・・・・・・・・・・・20
 Organic Electrosynthesis using Ionic Liquids

                                   淵上寿雄

東京工業大学大学院 総合理工学研究科 教授 

 イオンのみから構成されているにもかかわらず,常温で液体であるイオン性液体は,不揮
発性・不燃性・化学的安定性・高イオン導電性などの優れた特徴をもち,有機・高分子合成
用の溶媒や電気化学的デバイスなどへの応用が期待されている。本稿では機能材料を指向し
た種々の有機化合物や導電性高分子の電解合成について,筆者らの研究を中心に解説する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.イオン性液体中での有機電解合成
  2.1 α-アミノ酸の電解合成
  2.2 環状カーボナート類の電解合成
  2.3 ベンゾイルギ酸からマンデル酸の電解合成
  2.4 金属錯体触媒による電解還元的カップリング
  2.5 ニトロキシルラジカル固定イミダゾール塩をメディエーターとするアルコール
      の間接電解酸化
 3.イオン性液体中での有機化合物の選択的電解フッ素化
 4.イオン性液体中での電解重合
  4.1 高密度平滑導電性高分子膜の創成
  4.2 耐久性/多機能導電性高分子の電解合成
  4.3 ポリ[3-(4-フルオロフェニル)チオフェン](PFPT)およびポリ(3,4-エチレンジ
      オキシチオフェン)(PEDOT)の電解合成
 5.おわりに


--------------------------------------------------------------------------------
 イオン性液体中の酵素反応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
 Enzymatic Reactions in the Ionic Liquids Solvent System

                                 伊藤敏幸

鳥取大学 工学部 物質工学科 精密合成化学講座 教授 

 高濃度の塩溶液中では酵素反応は不可能と考えられてきたが,室温で液体状態をとるイオ
ン性液体を反応溶媒としてリパーゼ触媒反応が進行し,イオン性液体の特徴を生かした酵素
再利用システムが構築できた。リパーゼのみならず抗体酵素などの反応も起こり,イオン性
液体を生体触媒反応の溶媒として利用できることがわかった。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.イオン性液体と生体触媒
 3.イオン性液体溶媒中の酵素不斉触媒反応
 4.イオン液体による酵素の安定化と活性化
 5.イオン性液体の溶媒による生体触媒反応
 6.おわりに


--------------------------------------------------------------------------------
Ⅱ 応用開発編
 イオン性液体のエネルギー貯蔵デバイスへの展開・・・・・・34
 Application (of Ionic Liquids )to Energy Storage Devices

                                 宇恵 誠

(株)三菱化学科学技術研究センター 電池材料研究所 所長 

 近年,イオン性液体の不揮発・耐熱性および難燃・不燃性を生かして,電気化学デバイス
用の電解質として応用することに関心が高まっている。本稿では,最もポピュラーな1エチ
ル3 メチルイミダゾリウム(EMI)塩系のイオン性液体を,電気二重層キャパシターやリチ
ウムイオン電池に電解質として応用する技術について概説する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.イオン性液体の電解質としての歴史
 3.イオン性液体の基本物性
  3.1 電気伝導率
  3.2 電位窓
 4.イオン性液体のエネルギー貯蔵デバイスへの応用
  4.1 電気二重層キャパシター
  4.2 リチウムイオン電池
 5.おわりに


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 電解質としてイオン性液体を用いた電気二重層キャパシター・・・43
 An EDLC using Ionic Liquids

                                   佐藤貴哉

日清紡績(株) 研究開発本部 事業推進部(現・鶴岡工業高等専門学校物質工学科教授) 

 分子内にメトキシエチル基を有する脂肪族4 級アンモニウムタイプの新しいイオン性液体
の物理化学特性と,そのイオン性液体を電解質として用いた電気二重層キャパシターの諸性
能について報告する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.新しいイオン性液体の特徴
 3.イオン性液体を電解質とした電気二重層キャパシター
  3.1 高温安定性に優れる電気二重層キャパシター
  3.2 低温充放電性能に優れる電気二重層キャパシター
 4.おわりに


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 リチウムイオン二次電池への展開・・・・・・・・・・・・・・・・・50
 Application of Ionic Liquids to Lithium ion Rechargeable Batteries

                                   中川裕江

(株)ジーエス・ユアサコーポレーション 研究開発センター 第六開発部 リーダー 

 分子内にメトキシエチル基を有する脂肪族4 級アンモニウムタイプの新しいイオン性液体
の物理化学特性と,そのイオン性液体を電解質として用いた電気二重層キャパシターの諸性
能について報告する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.イオン性液体のリチウムイオン二次電池への応用に際して予想される課題
 3.イオン性液体の電解質としての基礎特性
  3.1 液体状のイオン性液体の電解質としての基礎特性
  3.2 イオン性液体の電解質としての基本特性
 4.イオン性液体を電解質として用いたリチウムイオン二次電池の特性
  4.1 LiBF4-EMIBF4を電解質として用いたリチウムイオン(ポリマー)二次電池の作製
  4.2 LiBF4-EMIBF4を電解質として用いたリチウムイオン(ポリマー)二次電池の特性  5.イオン性液体の今後の課題
 6.おわりに


--------------------------------------------------------------------------------
 色素増感太陽電池への展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
 An EDLC using Ionic Liquids

                                   小野三千夫

富士写真フイルム(株) R&D 統括本部 材料研究本部 デジタル&フォトイメージング材料
研究 所 主任研究員 

 色素増感太陽電池(DSC)の研究において,イオン性液体電解質(ILE)は,揮発性の有機
溶媒電解液(OLE)に起因する電池性能の劣化を改良する目的で研究されている。ILE を用い
たDSCの変換効率は,OLEを用いたDSCにはいまだ及ばない。非効率要因の改良を目的としたILE
の検討,および擬固体化に関する筆者らの研究を中心に述べる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.DSCの原理とILEの構成
 3.光電変換効率にかかわる電解質要因
 4.イオン性液体の分子設計
  4.1 イオン性液体の構造とイオン拡散性
  4.2 イミダゾリウム塩の機能化
 5.ILEの擬固体化
  (1)高分子ゲル化剤
  (2)低分子ゲル化剤
  (3)無機なの粒子ゲル化剤
 6.おわりに


--------------------------------------------------------------------------------
 イオン液体のトライボロジーへの展開・・・・・・・・・・・・・・・・63
 Application of Ionic Liquids to Tribology

              上村秀人 *1  南 一郎 *2  森 誠之 *3

*1 出光興産(株) 営業研究所 設備油グループ 主任 
*2 岩手大学 工学部 応用化学科 助教授
*3 岩手大学 工学部 応用化学科 教授 

 トライボロジーは摩擦や摩耗など,潤滑にかかわる技術と科学を扱う分野である。トライ
ボロジーを取り巻く環境は,近年の機械技術の進歩,社会環境の変化とともに大きく変わろ
うとしている。新しい機構,過酷な使用環境,多様化する要求特性これらに応えるには,従
来技術の延長上にある潤滑システムだけでは限界がある。将来的な選択肢の一つとして,ま
ったく新しい物質をトライボシステムに適用することも必要である。今回,その試みの一つ
として,液状の塩であるイオン液体を潤滑に適用した例を,最近の研究成果を交えながら紹
介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.潤滑油とイオン液体
 3.潤滑油としてのイオン液体
  3.1 粘度特性
  3.2 耐熱性
  3.3 摩擦特性
  3.4 イオン液体の摩擦化学反応(トライボ化学反応)
 4.その他の性能
 5.おわりに


Material Report
 相変化メモリーの現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69
 Current Status of Phase Change Memory (PRAM )

         中山和也 *1  高田雅史 *2  泉 貴富 *3  北川章夫 *4

*1 金沢大学 医学部保健学科助手 
*2 金沢大学 大学院 自然科学研究科 博士後期課程1年生
*3 金沢大学 大学院 自然科学研究科 博士前期課程1年生 
*3 金沢大学 大学院 自然科学研究科 助教授 

 相変化型メモリー(PRAM)は,カルコゲナイド半導体薄膜の結晶非晶質相変化を利用した
不揮発性メモリーである。結晶状態と非晶質状態では抵抗値が異なり,電気パルスにより上
書き可能である。素子構造は単純であり,相変化膜はスパッターで製膜可能であるなど,大
容量不揮発メモリーやSoC向きのメモリーといえる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.原理
  2.1 記録材料
  2.2 電気伝導度の温度依存性
  2.3 書き込み消去(セット動作,リセット動作)
 3.研究開発動向
  3.1 リセット電池削減の試み
  3.2 大容量化
  3.3 高速化
 4.おわりに


機能材料連載講座:因果化学からみる材料の機能性(9)
 フィードバック化学反応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78
 Chemical Reactions including Positive Feedback Processes

                             市村國宏

東邦大学 理学部 先進フォトポリマー研究部門 特任教授 

 非線形な効果を示す化学反応として,フィードバックがかかる化学反応系を取り上げる。
自己触媒反応や自己複製反応はわかりやすい反応例だが,反応活性種を生成させてから二次
的に反応を加速する考え方もある。具体的な例をあげて紹介するが,これらは触媒増幅系と
しての意義をもつ。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.酵素と自己触媒的な反応
 3.非線形な有機化学反応
 4.2段階露光型フォトポリマー
 5.光および熱による酸の増殖反応
 6.酸増殖による光発色
 7.おわりに


連載:高分子材料の実用性(5)
 FRP,透明樹脂,抗菌樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88

                               鴨川昭夫

元・理化学研究所 研究員/元・工学院大学 電子工学科;化学工学科 

 防災のためのFRP(繊維強化プラスチック)と,赤ちょうちんの屋形船,半透明で溶ける
ポリエステルと溶けないポリエステル。現在,清潔上,人が変わるたびに水平に動く抗菌
性のプラスチックの便座が作られている。熱可塑性樹脂であるポリプロピレンの切削が行
われている。金属の代わりにできたプラスチックの弾丸などもある。

 ~目次~
-スキー板素材の進化
-発泡スチロールのリサイクル
-ぬれても透けない白の水着
-透明樹脂の防音壁


4,400円
CONTENTS 10月号

特集:ナノファイバーの評価法
Formation and Characterization of Nanofibers
 ●特集号によせて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

                           谷岡明彦

 Akihiko Tanioka   東京工業大学大学院 理工学研究科 有機・高分子物質専攻 教授 


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 散乱法によるナノファイバーの解析・・・・・・・・・・・・7
 Analysis of Nanofibers by means of Scattering Methods

                          梶 慶輔

 Keisuke Kaji   京都大学 名誉教授 

 ナノファイバーの形状(太さと長さ)とその分率,および内部構造の散乱法による解析を説明す
る。散乱法としては,小角X 線散乱(SAXS),小角中性子散乱(SANS,広角X線回折(WAXD),レ
ーザーラマン散乱などを取り上げた。これらの散乱実験結果の解釈には信頼できるモデルが不可欠
であることを強調した。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.ナノファイバーの構造と散乱法
 3.小角散乱によるナノファイバーの形状の測定
  3.1 棒状粒子の散乱理論
  3.2 小角X線散乱によるミクロフィブリルの太さの決定
  3.3 小角中性子散乱によるシシの太さの決定
 4.広角X線回析による結晶サイズの決定
  4.1 シェラー(Scherrer)の方法
  4.2 ホーゼマン(Hosemann)の方法
  4.3 実験法と実際例
 5.ラマン散乱による結晶サイズの決定
  5.1 ポリエチレン(PE)
  5.2 その他のポリマー
 6.シシの分率の決定
 7.おわりに


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 複屈折近接場光学顕微鏡の開発と応力イメージングへの応用・・・・17
 Development of Birefringence Scanning Near-field Optical Microscope and its
Application to Stress Imaging

                                梅田倫弘

 Norihiro Umeda   東京農工大学大学院 共生科学技術研究部 教授 

 ナノテクノロジーによる構造・機能材料分野の進展に伴い,応力や異方性分布を非接触・高分解
能に観測評価できる分析手法として,複屈折を高速に評価できる計測法を近接場光学顕微鏡に導入
した新規な計測システムを開発した。開発装置の構成および光磁気ディスクやナノインデンテーシ
ョン圧痕の応力分布の観測結果について紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.複屈折近接場測定の条件
 3.複屈折近接場の顕微鏡の装置と計測特性
  3.1 装置構成
  3.2 計測特性
 4.光ディスク基板の観測
 5.ナノインデント圧痕の応力分布
 6.おわりに


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 AFMによる高分子一本鎖のナノ力学測定・・・・・・・・・・24
 Nano-mechanical Measurement of a Single Polymer Chain by AFM

              中嶋 健 *1 酒井康博 *2 伊藤耕三 *3 西 敏夫 *4

*1  Ken Nakajima   東京工業大学大学院 理工学研究科 有機・高分子物質専攻 助手 
*2  Yasuhiro Sakai  東京大学大学院 新領域創成科学研究科 物質系専攻 博士課程3年 
*3  Kohzo Ito     東京大学大学院 新領域創成科学研究科 物質系専攻 教授 
*4  Toshio Nishi   東京工業大学大学院 理工学研究科 有機・高分子物質専攻 教授

 通常表面の凹凸情報を取得するための「顕微鏡」として利用されるAFMを高分子表面のナノ力学
物性を測定するための手段と位置づけ,高分子に特化した形で筆者らが開発してきた測定法・評価
法について述べる。高分子表面のナノスケールでの力学物性測定に始まり,ナノブリッジ,高分子
一本鎖とその研究の道筋をたどっていく中でナノレオロジーAFMと名づけたこの方法がいかに有効
であるかを示す。

 ~目次~
 1.はじめに
 (1)ナノレオロジーAFM
 (2)ナノトライボロジーAFM
 2.高分子表面のナノレオロジー
 3.ナノブリッジ
 4.ナノフィッシング(単一高分子鎖伸張)
 5.高分子一本鎖のナノレオロジー
 6.おわりに


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 3次元電子顕微鏡の概要と高分子ナノ構造の観察・・・・・・・・・・・33
 Introduction of Three-dimensional TEM and Application for Polymeric Materials

                 古河弘光 *1  陣内浩司 *2  清水美代子 *3

*1  Hiromitsu Furukawa  日本電子システムテクノロジー(株) 第5技術部 部長 
*2  Hiroshi Jinnai    京都工芸繊維大学 繊維学部 助教授 
*3  Miyoko Shimizu    日本電子システムテクノロジー(株) 第5技術部 

 ナノテクノロジーをキーワードに,微細領域の研究が盛んである。これを背景に,ナノレベルの3
次元構造を観察したいという要求が高まってきた。現在,この要求に応えられる唯一の装置が3次元
電子顕微鏡である。本稿では3次元電子顕微鏡の原理および概要と,高分子ナノ構造の観察事例を紹
介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.透過型電子顕微鏡
 3.3次元再構成の原理
 4.3次元電子顕微鏡
 5.高分子分野への応用
 6.おわりに


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 陽電子消滅試験および微小領域応力測定による材料評価技術・・・・43
 Material Evaluation Technology by Positron Annihilation Measurement and Micro/
Nano-scopic Stress Measurement

                        藤城泰文 *1  溝尾 律 *2

*1  Yasufumi Fujishiro  住友金属テクノロジー(株) 関西事業部 試験・調査部 部長 
*2  Osamu Mizoo      住友金属テクノロジー(株) 関西事業部 試験・調査部

 半導体素子のようなナノテクノロジーを活用した微細構造物の品質評価技術は,従来の評価方法
では難しく,新しい評価技術およびその適用が研究されている。陽電子消滅試験は各種材質の微細
構造変化(析出現象,疲労破壊ほか)を定量的に評価することが可能であり,また光や電子線を用
いた微小領域応力測定技術は,0.1μm程度の微小部の残留応力や作用応力を測定することができる。
本稿ではこれらの技術と適用例について紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.陽電子消滅試験
  2.1 陽電子消滅法
  2.2 ナノ構造を陽電子で探る
  2.3 陽電子消滅寿命の測定例
  2.4 陽電子消滅寿命の今後
 3.微小領域応力測定
  3.1 微小領域応力測定の原理
  3.2 微小領域応力測定の測定例
  3.3 微小領域応力測定の今後
 4.おわりに


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 ナノテク材料評価における振動分光法の活用・・・・・・・・54
 Application of Vibrational Spectroscopy to Materials in Nano-technology

                     幾田信生 *1  西尾悦雄 *2

*1  Nobuo Ikuta   湘南工科大学 工学部 マテリアル工学科 教授 
*2  Etsuo Nishio  (株)パーキンエルマージャパン 代表取締役社長 

 赤外吸収とラマン発光による振動分光法は一般的な分析であるが,ナノテクノロジー分野でも構
造解析法として用いられている。ここでは,ナノ構築表面あるいは局所空間の評価技法として振動
分光を紹介するとともに,ナノカーボンチューブの特性解析として用いられる共鳴ラマン分析を取
り上げる。末尾には振動分光法を用いた当該分野の最近の研究動向を記した。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.赤外分光による表面状態分析
  2.1 各種反射法によるLB膜評価
  2.2 誘起電磁波による高感度赤外分析
 3.最近の表面界面分析:和周波発生(SFG)
 4.顕微赤外分光法
 5.カーボンナノチューブの共鳴ラマン
 6.最近の研究動向と今後の展望


Material Report
R&D
 フェノキシイミン錯体触媒の開発と応用・・・・・・・・・・・・60
 Development of Highly-Active Olefin Polymerization Catalysts "FI Catalysts"
and their Applications to New Polymers

                     中山 康 *1 三谷 誠 *2 藤田照典 *3

*1  Yasushi Nakayama  三井化学(株) 触媒科学研究所 研究員 
*2   Makoto Mitani   三井化学(株) 触媒科学研究所 主任研究員 
*3  Terunori Fujita  三井化学(株) 触媒科学研究所 研究主幹 

 FI触媒の大きな特徴は,配位子構造の変換により,従来のオレフィン重合触媒では合成困難であっ
たユニークなポリオレフィンが合成できることにある。本稿では,FI触媒を用いた分子量制御ポリマ
ー(極低~超高分子量)の合成や,リビング重合技術を利用したブロックポリマーの合成について紹
介する。また,工業プロセス上重要な担持型FI触媒の開発についても述べる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.オレフィン重合触媒発展の歴史
  2.1 Ziegler触媒の発見と高活性Mg系担持型チタン触媒
  2.2 ポストメタロセン触媒の研究の進展
 3.FI触媒の現状と機能性ポリオレフィンへの展開
  3.1 分子量制御ポリマー
  3.2 ブロックポリマーへの展開
  3.3 塩化マグネシウム助触媒系への展開
 4.おわりに


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 音力発電の現状とこれから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68
 An Overview of Research and Development of Sound-generated Electricity

                     速水浩平 *1 武藤佳恭 *2

*1  Kohei Hayamizu    慶應義塾大学 環境情報学部 
*2  Yoshiyasu Takefuji  慶應義塾大学 環境情報学部 教授;政策メディア研究科委員 

 「音力発電」とは,音のエネルギーを電気エネルギーに変換する発電方法である。この発電では特
に騒音や雑音・振動などこれまで捨てられていた音を有効に使う(再利用する)ことを目的としてい
る。音力発電の研究領域は,「波動や振動のエネルギー」を使って発電する「振動力発電」の研究領
域と重なる。その意味で,音力発電は振動力発電の技術の一部を応用したものともいえる。音と振動
の2つの発電方法を組み合わせた「音力・振動力発電」は,新しいエネルギーとして将来さまざまな
分野において利用することが可能である。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.音力発電の紹介
  2.1 音力発電とは
  2.2 振動力発電とは
  2.3 目的
 3.技術的特徴
  3.1 2種類の発電方法の比較
  3.2 音力発電の技術的特徴
 4.長所と課題
 5.他技術との比較
 6.音力・振動力発電が可能にすること
 7.共同研究について
  7.1 注目される音力・振動力発電
  7.2 JR東日本との共同研究
  7.3 音力発電のMOT-ジュールプロダクト
 8.音力・振動力発電の普及
 9.応用展開
  (1)ユビキタス発電とは
 10.音力・振動力発電を生かすべき
  10.1 音や振動で駆動する低消費電力機器
  10.2 複合リソースとして
 11.おわりに

機能材料連載講座:因果化学からみる材料の機能性(8)
 材料展開を複眼視する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
 Multiple Viewpoints of Materials

                             市村國宏

 Kunihiro Ichimura   東邦大学 理学部 特任教授 

 材料は科学と産業技術の接点で深化しているが,材料の研究開発が進めば進むほど専門以外の材料
分野を理解することが難しくなっている。実際には,多種多様な素材を組み合わせて実用的な性能や
機能を創造しているので,異種の材料技術間での横断的な見方が重要となっている。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.材料技術の展開
 3.相互作用と相互依存
 4.超分子系と分子協調系
 5.分子協調系における因果化学的な機能発現
 6.材料技術を複眼視する
 7.おわりに


連載:高分子材料の実用性(4)
 医療機器への応用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87

                               鴨川昭夫

 Akio Kamogawa   元・理化学研究所 研究員/元・工学院大学 電子工学科;化学工学科 

 プラスチックを使用して,コンピューター制御で頭部模型を塑性変形で作り,それを用いた医学の
発達のための研究が始まっている。また,プラスチックは加工されると弱電を帯びるために,これを
防ぐためにスプレーでアンモニアを吹き付けるが,時計バンドのような帯状のプラスチックでは静電
気除去用のプラスチックが開発されている。

 ~目次~
-感光性樹脂製の実物大頭部模型
-ポリエステル製抗菌白衣
-人工筋力で人間並みの反応速度を達成
4,400円
CONTENTS 9月号

Material Report
Review
 極限CMOS開発の現状と将来展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
 Present Status and Prospect of Ultimate CMOS

                           平本俊郎

 Toshiro Hiramoto   東京大学 生産技術研究所 教授 

 VLSIを構成するMOSトランジスタのサイズは急速に微細化している。ゲート長が10nm以下にまで
微細化された極限CMOSは,将来の高度情報通信化社会を根底で支える基盤デバイスである。本稿で
は,MOSトランジスタの微細化の現状と,極限CMOSの将来について紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.トランジスタの微細化とスケーリング則
 3.半導体技術ロードマップにみるMOSトランジスタの微細化
 4.サブ10nmトランジスタ
 5.トランジスタの微細化限界
 6.極限CMOSの重要性
 7.極限CMOS開発の課題と解決策
 8.おわりに


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R&D
 カーボンナノコイルの合成と特性・・・・・・・・・・・・14
 Synthesis and Properties of Carbon Nanocoils

                          中山喜萬

 Yoshikazu Nakayama   大阪府立大学大学院 工学研究科 電子物理工学分野 教授 

 ナノコイルは特異な形態から,電磁波吸収材や電子源,微小領域の磁場発生・検出素子,ナノの
バネ,さらに電気や熱の伝導性,機械的強度,伸縮性などに優れた高機能性ナノコンポジット素材
として期待される。本稿ではこういったナノコイルの合成法,成長機構,大量合成に向けた取り組
みについて,また機械的特性および電界放出特性についても概説する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.合成法
 3.Fe/ITO触媒を利用したコイル合成9,10)
 4.触媒の機能
 5.コイル径制御
  5.1 流量による制御
  5.2 鉄・インジウム・スズ合金酸化膜による制御
 6.微粒子触媒の開発
 7.ナノコイルの特性
  7.1 機械的特性
  7.2 電界放出特性
 8.おわりに


--------------------------------------------------------------------------------
 カーボンナノコイル・ナノツイストの合成・・・・・・・・・・・・23
 Syntheses of Carbon Nanocoils and Nanotwists

                     滝川浩史

 Hirofumi Takikawa   豊橋技術科学大学 電気・電子工学系 助教授 

 らせん形状を呈したカーボンナノファイバーは,カーボンナノチューブの合成法と同じ触媒CVD法
によって合成できる。その形状は,触媒やプロセス条件などによって変化する。本稿では,コイル形
状を呈したカーボンナノコイルの量産的合成,およびねじれ形状を呈したカーボンナノツイストの膜
状合成について概説する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.ヘリカルカーボンナノファイバー
  2.1 合成方法
  2.2 合成物
 3.カーボンナノコイル(CNC)の量産
 4.カーボンナノツイスト(CNTw)膜の合成
 5.おわりに


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 制振合金M2052製据え付けマウントによる研削加工性能の向上・・・・29
 Improvement of the Quality in a Surface Grinding Machine by using a Mount made of the Damping Alloy ,M2052

                     細谷武司

 Takeshi Hosoya   (株)セイシン 常務取締役 

 研削加工は,平滑で高精度な仕上げ面を得るための加工法であるが,その精度を左右する因子は
工作物砥石間の相対振動変位である。本研究は今までのアプローチである剛性と重量による共振周
波数対策ではなく,高強度で加工性の良い制振合金M2052を据え付けマウントと砥石フランジに利
用して,簡便で効果的な性能向上を実現した。

 ~目次~
 1.背景
 2.据え付けマウントと砥石フランジ部へのM2052の応用
 3.実験方法
 4.評価結果
 5.おわりに


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 カラー舗装用着色バインダー・・・・・・・・・・・・・・・・・38
 Color Binder for Color Pavement

                     博多俊之

 Toshiyuki Hakata   戸田工業(株) 創造本部 課長 

 カラー舗装道路を施工する場合に,従来はアスファルトプラントで別々に添加し,混合されていた
アスファルトと顔料をプレミックスし,2~30mm程度の固形状としたことにより,作業性に優れ,かつ
特性面においても優れたバインダーとした。今後さまざまな応用が期待されるカラー舗装用着色バイ
ンダー(当社製,品名:CSファルト)について紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.CSファルトの特長-作業面での特長-
 3.アスファルト特性
  3.1 バインダー特性
  3.2 アスファルト混合物特性
  3.3 低温カンタブロ試験
  3.4 舗装面の退色性
 4.おわりに


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 反応性プラズマ蒸着法によるGa添加酸化亜鉛透明導電膜・・・・44
 Transparent Conductive Ga doped ZnO Thin Films Prepared by Reactive Plasma Deposition Method

  山本哲也 *1  岸本誠一 *2  池田圭吾 *3  酒見俊之 *4  粟井 清 *5
  白方 祥 *6  碇 哲雄 *7  中田時夫 *8  仁木 栄 *9  矢野哲夫 *10

*1 Tetsuya Yamamoto 高知工科大学 総合研究所マテリアル・デザイン研究センター センター長・教授
*2 Seiichi Kishimoto 高知工科大学 総合研究所マテリアル・デザイン研究センター 助教授 
*3 Keigo Ikeda    高知工科大学 総合研究所マテリアル・デザイン研究センター
*4 Toshiyuki Sakemi 住友重機械工業(株) 
*5 Kiyoshi Awai   住重試験検査(株) 
*6 Sho Shirakata  愛媛大学 工学部 電気電子工学科 
*7 Tetsuo Ikari   宮崎大学 工学部 電気電子工学科 
*8 Tokio Nakata   青山学院大学 理工学部 電気電子工学科 
*9 Shigeru Niki  (独)産業技術総合研究所 光技術研究部門 光エレクトロニクス材料グループ
*10 Tetsuo Yano  (独)産業技術総合研究所 海洋資源環境研究部門 海洋環境材料開発研究グループ 

 Gaドーピングした酸化亜鉛薄膜(GZO)を反応性プラズマ蒸着法によって成膜した。基板温度は
200℃であり,Gaの含有量は3wt%である。本成膜条件での成膜速度は170nm/minであった。
抵抗率2×10-4Ω・cm ,キャリア濃度は8×1020cm-3,最大ホール移動度は29cm2/V ・secである。
可視光領域で透過率90%以上のものが得られた。反応性プラズマ蒸着法は酸化亜鉛薄膜の大面積製膜
も可能であり,1m角の大きさのGZO製膜に成功した。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.反応性プラズマ蒸着法(RPD法)
 3.実験結果と考察
  3.1 SEM像
  3.2 X線回析測定
  3.3 透過率
 4.大面積製膜
 5.おわりに

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機能材料連載講座:因果化学からみる材料の機能性(7)
 能動的な表面で液体を動かす・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
 Displacement of Fluids by Active Surfaces

                             市村國宏

 Kunihiro Ichimura   東邦大学 理学部 特任教授 

 固体表面の構造変化は濡れ性を変える。熱,化学吸着,光,電場などによって誘起される表面の
構造変化が,濡れ性の変化として増幅されているとみなすことができる。固体の表面エネルギーに
これらの外部刺激によって勾配を設けることができれば,マランゴニ効果に基づいて液滴が動く。
これらについて,最近の研究動向を紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.マランゴニ効果
 3.温度変化で濡れ性を変える
 4.電場印加で濡れ性を変える
 5.表面吸着反応により液滴を動かす
 6.光照射で濡れ性を制御する
 7.デバイス化への道
 8.おわりに

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連載:高分子材料の実用性(3)
衣料,レンズ,医療分野-その3・・・・・・・・・・・・・・・・・66
 Foreign Clothes of Polyester,Lens of Plastics,Plastic of Medical Science

                               鴨川昭夫

 Akio Kamogawa   元・理化学研究所 研究員/元・工学院大学 電子工学科;化学工学科 

 ~目次~
 実用例-3
・引っ張っても切れない人工毛髪,台所用スポンジ…
-しわにならないワイシャツ
-生体になじむアクリル樹脂
-カードも紙も再利用時代に
-形状記憶樹脂の点滴針

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機能材料マーケットデータ 
電池用構成材料ケミカルスの現状・・・・・・・・・・・・・・・・・74

 ~目次~
 1.概要
 2.各種電池における開発・材料動向
  2.1 一次電池
  2.2 リチウムイオン電池
  2.3 ニッケル水素電池
  2.4 リチウムポリマー電池
 3.二次電池の市場動向
 4.二次電池メーカーの動向
 5.二次電池材料メーカー
4,400円
CONTENTS 8月号

創刊23周年特集:UWB技術の最新動向
超広帯域(UWB )無線技術の現状と展望・・・・・・・・・5
 Current Status and Trend of UWB Wireless Technology
                            河野隆二

   Ryuji Kohno   横浜国立大学大学院 工学研究院 知的構造の創生部門 教授  

 モバイル情報通信システムにおいて,機能材料・デバイス研究とシステム設計が実を結びつつある
超広帯域(UWB:Ultra Wideband)無線技術に関して,本特集では,独特の特性を有する機能材料の
応用領域として注目されるUWB無線の基礎から最新動向を中心に解説する。

~目次~
 1.はじめに
 2.UWB無線技術の要点
  2.1 UWB無線技術とは
  2.2 UWB無線技術の特徴
  2.3 UWB無線技術の主な応用
 3.UWB無線システムの研究開発
  3.1 NICTおよびUWBコンソーシアムによる産学官連携による研究開発
 4.UWBシステムの法規制化
 5.UWBシステムの標準化
 6.おわりに


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 UWB信号伝送方式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
 UWB Signal Transmission Systems
                       原 晋介

 Shinsuke Hara   大阪大学大学院 工学研究科 電子情報エネルギー工学専攻 助教授  

 UWBは従来の無線システムにはないさまざまな特徴をもっているため,その特徴を生かした
種々の信号伝送方式がこれまで提案されてきている。ここでは,UWBの生い立ちから無線パーソ
ナルエリアネットワークへの応用を中心にして,UWB信号伝送方式を解説する。

~目次~
 1.はじめに
 2.UWBの定義
 3.インパルス無線タイプのUWB信号
  3.1 メリット
  3.2 デメリット
 4.マルチバンドタイプのUWB信号
  4.1 MB-OFDM
  4.2 Two Band DS-CDMA
 5.おわりに
 6.
 7.おわりに


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UWBシステム装置化およびデバイス化の現状と課題 ・・・・・・19
  Current Issues on UWB System and Device Implementation
                             笠松章史

Akifumi Kasamatsu(独)情報通信研究機構 無線通信部門 ミリ波デバイスグループ 研究員 

 UWBシステムの装置化をめざす立場から,技術動向の概要と,具体的に想定される技術課題の
いくつかを取り上げ,現状と今後の可能性について述べる。さらに,独立行政法人情報通信研究
機構を中心に結成されたUWBコンソーシアムでの活動を紹介し,UWBシステムの装置化検討の一端
を示す。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.UWBシステム装置化の動向と課題
  2.1 DS-SS方式
  2.2 MB-OFDM方式
  2.3 その他の方式
 3.NICT UWBコンソーシアムでの取り組み
  3.1 CMOS-MMIC試作
  3.2 SAWデバイス試作
  3.3 受動部品特性評価
  3.4 UWBアンテナ特性評価
 4.回路技術および半導体デバイス技術からみた課題
 5.おわりに


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UWBマイクロ波応用領域・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
 Application for Systems using Microwave UWB
                           坂根敏朗
   Toshiaki Sakane    富士通㈱ モバイルシステム事業本部 担当部長 

 2002年2月14日に,米国FCC(連邦通信委員会)が,Ultra Wideband(UWB)無線技術を用いた
製品の販売と利用を許可すると報道された。元来,UWB技術は軍用に研究開発されていたものであ
るが,技術基準を発表し,UWBの民生機器への応用を認可したのである。しかし,量産・商用化す
るにはさらなる研究開発,標準化ならびに法制化など検討すべき課題が多いのが現状である。UWB
無線技術は,一般に普及している通信技術と比較してきわめて低い送信電力でしかも超広帯域
(比帯域が25%を超える)を利用する通信技術である。超高速伝送のみならず,高分解能な測距
測位も同時に行うことができる。今後は通信領域ばかりではなく,センサーやレーダー領域への応
用も期待されるユビキタスネットワーク時代に向けたワイヤレス技術である。ここでは,UWBの基
本的な伝送技術とマイクロ波における応用分野ならびに標準化動向について紹介する。

~目次~
 1.UWB伝送技術
  1.1 変調方式
  1.2 多元接続
  1.3 復調の原理
 2.WPANとUWB
  2.1 米国FCCの動向
  2.2 WPAN(Wireless Personal Area Network)
 3.マイクロ波応用領域
  3.1 屋内通信の応用例
  3.2 屋外通信の応用例
  3.3 地中探査・壁内部探査・医療システムおよび透過映像・監視システムの応用例
  3.4 医療分野のイメージシステムの応用例
 4.標準化の動向
  4.1 IEEE802.15 TG3aの状況
  4.2 IEEE802.15 TG3aの物理層通信方式
 5.日本の標準化の動向
 6.今後の動向


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24GHz UWB 短距離車載レーダー・・・・・・・・・・・・38
 24GHz UWB Short Range Radars for Vehicular Applications
                           廣瀬敏之
   Toshiaki Sakane    シーメンス㈱ 移動通信技術推進部 担当部長 

 24GHz帯を用いる超広帯域短距離車載レーダー(SRR)の開発と,周波数の世界的な割り当てを
求める動きが並行的に進められている。この論文は,欧米における周波数割り当ての状況,SRRの
機能と性能,およびヨーロッパで開発されているSRDの変調方式について概要を記載している。

~目次~
 1.はじめに
 2.欧米における周波数割り当ての状況
 3.24GHz SRRの機能と性能・定格
  3.1 24GHz SRRの機能
  3.2 24GHz SRRの性能・定格
 4.ヨーロッパで開発されているSRDの変調方式
  4.1 パルス周波数ホッピング方式
  4.2 直接拡散方式PN-BPSK


Material Report
Review
微生物分解性樹脂の進歩・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
 Biodegradable Plastics ?Recent Progress
                         田中紀男

 Norio Tanaka   田中高分子技術研究所 代表 

 ナノ粒子を用いた複合化技術は,新物質の創製を比較的容易に実現できるため,ナノパーティ
クルテクノロジーを新たにブレークスルーする手法の一つとして期待されている。本稿では当社が
最近開発を行った機械的複合化装置ノビルタと気相化学反応装置ナノクリエータの2つの複合化技
術を取り上げて,それぞれの技術的なデータを具体的に紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.微生物分解性ポリマーの合成
 3.将来の展望


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R&D
フラーレン誘導体ナノウィスカー・・・・・・・・・・・・49
 C60 Derivative Nanowhisker
                     増野匡彦 *1  宮澤薫一 *2

*1 Tadahiko Mashino  共立薬科大学 薬学部 教授 
*2 Kun ichi Miyazawa (独)物質・材料研究機構物質研究所 エコデバイスグループ 主幹研究員 

 フラーレンナノウィスカーは,ナノチューブに匹敵する新規素材として期待されている。本稿では
置換基を有するフラーレンナノウィスカーを紹介するとともに,これの作製および応用を考える際の
基礎となるフラーレン誘導体について解説する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.フラーレン・ナノチューブ研究の動向
 3.ナノウィスカー
 4.フラーレン誘導体
  4.1 フラーレンの化学反応性
  4.2 フラーレン誘導体の物性
 5.フラーレン誘導体ナノウィスカー
  5.1 フラーレン誘導体ナノウィスカーの作製
  5.2 フラーレン誘導体ナノウィスカーの特性
 6.フラーレン誘導体ナノウィスカーの展望


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機能材料連載講座:因果化学からみる材料の機能性(6)
液晶光配向の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56
 Extensive Techniques of Liquid Crystal Photoalignment
                             市村國宏

 Kunihiro Ichimura   東邦大学 理学部 特任教授 

 高分子薄膜の光配向状態がさまざまな液晶層へ転写,伝達される例を説明し,トリガー増幅の
多様性を示す。配向転写が可能な液晶として,通常の低分子系ネマチック液晶のみならず,コレス
テリック液晶,ディスコチック液晶,さらにはリオトロピック液晶がある。熱アニール処理によっ
て光配向状態を増強させてから液晶層の配向制御をする手法は,2段階のトリガー増幅に属するこ
とについても述べる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.水平的な展開
 3.ディスコチック液晶
 4.コレステリック液晶
 5.リオトロピック液晶
 6.2段階トリガー増幅
 7.まとめ

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連載:高分子材料の実用性(2)
衣料,レンズ,医療分野-その2・・・・・・・・・・・・・・・・・67
 Foreign Clothes of Polyester,Lens of Plastics,Plastic of Medical Science
                               鴨川昭夫

 Akio Kamogawa   元・理化学研究所 研究員/元・工学院大学 電子工学科;化学工学科 

 ~目次~
 実用例-2
 記録の出る陸上トラック,空中に浮かぶ魚・・・・
 -プラスチックゴミと水鳥の受難
 -グニャグニャ感覚を遊ぶ

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INFORMATION CORNER ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74
4,400円
CONTENTS 7月号

特集:自動車材料の最新技術動向
序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

㈱本田技術研究所 栃木研究所 主任研究員     佐藤 登
 

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貴金属が自己再生するインテリジェント触媒・・・・・・・・・7

ダイハツ工業㈱ 材料技術部 主査         田中裕久

 持続性社会のために, 車はどうあればいいのだろうか。 従来の工業材料は劣化による性能低下
が避けられなかった。 われわれは世界で初めて, 触媒が排ガスを浄化しながらみずからをリフレ
ッシュし, いつまでも高性能を維持する 「インテリジェント触媒」 を開発した。 この技術を熟
成し, 走れば走るほど街の空気をきれいにするクリーン自動車の実現をめざしていきたい。

~目次~
 1.はじめに
 2.インテリジェント触媒
 3.研究の背景
 4.インテリジェント触媒の特性
 5.湖西性メカニズムの解明
  5.1 ラボ分析装置による解析
  5.2 シンクロトロン放射光によるX線回析ならびにX線異常散乱分析
  5.3 シンクロトロン放射光によるX線微細構造解析
 6.実用化とこれからの発展

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プラスチック材料と軽量化技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・17

三井化学㈱研究開発部門石化研究所新製品開発グループリーダー 植野光平

 自動車にプラスチック材料が採用されて久しい。 プラスチック材料はデザインフリーで, 成形
加工が容易であるため, 自動車での使用比率が増大している。 また, 地球環境問題から自動車の
軽量化が注目されており, 軽量素材としてのプラスチック材料の位置づけがますます重要になりつ
つある。 本報では, プラスチック材料を使用した軽量化技術の最近の動向について述べ, 今後を
展望した。

~目次~
 1.はじめに
 2.軽量化へのアプローチ
 3.ポリプロピレンの開発動向
  3.1 ポリプロピレン
  3.2 PPコンパウンド
 4.各種部品の軽量化
  4.1 内装部品
  4.2 外装部品
  4.3 エンジン部品
  4.4 車体部品など
 5.モジュール化による軽量化
 6.今後の材料開発
  6.1 植物由来のプラスチック
  6.2 ナノコンポジット
  6.3 窓材
 7.おわりに


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自動車用高機能表面処理鋼板 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・30

JFE スチール㈱ スチール研究所 表面処理研究部部長 加藤千昭
JFE スチール㈱ スチール研究所 副所長       山下正明 

 自動車車体に用いられる鋼板は, 耐久性, 環境負荷削減などの観点で革新が求められている。
本報告では, 車体防錆を目的にした高機能表面処理鋼板の開発で, 特に高強度鋼板下地の溶融系
メッキ鋼板, 潤滑処理鋼板, 塗装鋼板について最近の開発状況, 今後の開発課題を述べる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.自動車用高機能表面処理鋼板の開発の動向
 3.Zn系表面処理鋼板の防錆性
 4.各種高機能表面処理鋼板の開発経緯
  4.1 合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(GA)
  4.2 自動車用亜鉛メッキ鋼板(GI)
  4.3 自動車用塗装鋼板
 5.今後の課題


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エネルギー貯蔵システムと機能材料・・・・・・・・・・・・40
 (株)本田技術研究所 栃木研究所 主任研究員    佐藤 登
 

 自動車のエネルギー形態として従来の内燃機関だけでなく, 電気自動車, ハイブリッド自動車
および燃料電池自動車などの, いわゆる電気駆動システムが組み込まれた新たな開発が世界的に
進んでいる。 このようななか, 電池やキャパシターはこれらの先進駆動車両の進化そのものに直
結するキーコンポーネントであるが, なかでもそれを構成する機能材料がさまざまな特性を決定
づけているだけではなく, 新しいブレークスルー機能を提供する要素となっている。

~目次~
 1.はじめに
 2.電動車両システムの開発動向
  2.1 ハイブリッド電気自動車の開発動向
  2.2 電気自動車の開発動向
  2.3 燃料電池自動車の開発動向
 3.エネルギー貯蔵システムの開発動向
  3.1 現状と今後の展望
  3.2 大容量エネルギー貯蔵システムと機能材料
 4.おわりに


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固体高分子形燃料電池と機能材料・・・・・・・・・・・・・57

横浜国立大学大学院工学研究院 教授        太田健一郎
横浜国立大学大学院工学研究院 博士課程後期 2 年 鈴木裕一

 自動車用として注目されている固体高分子形燃料電池は,内燃機関と比べ,多くのメリットをもつ。
しかし大量普及に向けていくつかの課題があり,このためには高温作動化,ないしは使用している白
金量の削減が必要となる。 本稿ではこれを達成するための電解質,電極,セパレーターを材料面から
見直し,今後の展望について示した。

~目次~
 1.はじめに
 2.燃料電池発電
  2.1 理論効率
  2.2 燃料電池の種類
 3.自動車用燃料電池システム
  3.1 燃料電池自動車用燃料
  3.2 PEFCスタックの特性
 4.PEFCの課題
  4.1 反応抵抗Rc’ RA
  4.2 電解質抵抗 Rs
  4.3 クロスオーバーによる電位降下Vc
  4.4 物質移動に伴う電圧降下VM
  4.5 今後の課題
 5.電極材料の研究・開発動向
  5.1 Pt触媒における酸素還元反応
  5.2 高活性カソード触媒の開発
  5.3 三相界面の形成技術
  5.4 非白金系触媒の探索
  5.5 メタノール酸化触媒
 6.電解質膜の研究・開発動向
  6.1 高温作動メリット
  6.2 常温溶融塩のPEFCへの適用
 7.セパレーター材料の開発動向
  7.1 カーボンセパレーター
  7.2 金属セパレーター
 8.おわりに


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燃料電池用フッ素系固体高分子膜材料・・・・・・・・・・・・・・68
 旭化成㈱PEM プロジェクト事業開発部長         小谷貴彦
 
 燃料電池用フッ素系固体高分子膜材料について, 旭化成における開発状況を述べる。 化学構造
を新たに設計したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーからなる Aciplex SF702 x は, 耐
熱性が従来に比べて約 30 ℃高く, 大きなイオン交換容量 1.4 meq/g によって低加湿条件での
プロトン伝導性に優れている。 このフッ素系膜材料は燃料電池の高温低加湿作動への適合性が期
待される。

~目次~
 1.はじめに
 2.固体高分子膜の役割と必要特性
  2.1 基本的な役割
  2.2 要求特性
 3.パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜の特性
  3.1 開発の歴史
  3.2 構造と特性
 4.実用化に向けた課題
 5.フッ素系固体高分子膜の開発動向
  5.1 機械特性の改善
  5.2 高温低加湿作動用の耐熱性材料の開発
  5.3 長期耐久性
 6.おわりに

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Material Report
R&D
最近のナノ粒子複合化技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77

㈱ホソカワ粉体技術研究所 粉体工学研究所 所長    猪木雅裕

 ナノ粒子を用いた複合化技術は, 新物質の創製を比較的容易に実現できるため, ナノパーティ
クルテクノロジーを新たにブレークスルーする手法の一つとして期待されている。 本稿では当社が
最近開発を行った機械的複合化装置ノビルタと気相化学反応装置ナノクリエータの 2 つの複合化
技術を取り上げて, それぞれの技術的なデータを具体的に紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.ナノ粒子複合化とは
 3.機械的複合化装置ノビルタ
  3.1 構造
  3.2 実施例
  3.3 特長
 4.気相化学反応装置ナノクリエータ
  4.1 原理と特徴
  4.2 実施例
  4.3 応用例
 5.おわりに


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超高速動画対応液晶ディスプレイの開発・・・・・・・・・・・・87

三菱電機㈱ 液晶事業統括部 設計部 部長      小林和弘 
三菱電機㈱ 液晶事業統括部 設計部 専任       中西邦文

 液晶ディスプレイにおいて, 動画ボケを最小にした良好な動画表示を実現することが重要な課題
となっている。 われわれはまず Feed Forward Driving (FFD ) を開発し, 中間調を含めた液
晶の応答速度を改善した。 次いで, この技術をベースに OCB 液晶モードと最適化した黒挿入技術
を組み合わせ, 超高速動画対応液晶ディスプレイを開発した。 本論文ではこれらの技術内容につい
て概説する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.FFD技術
 3.クロ挿入手法
 4.OCBモードを用いた高速応答化
 5.超高速応答AMLCDの特性
 6.おわりに

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INFORMATION CORNER・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95
4,400円
CONTENTS 6月号

特集:LTCCの最新技術動向
LTCCの最新技術動向-序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・5
                               
防衛大学校 通信工学科 教授  山本 孝 

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LTCCとLFC材料の歴史・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
-自動車用LTCC-ECU誕生の歴史とその応用-

Robert Bosch GmbH AE/ETS1 技術顧問  西垣 進  

 低温焼成多層基板を使用したECU(電子制御回路系)が,世界で初めてドイツBosch社により大量
生産規模で,自動車用エンジンなどに直載可能な電装部品として実用化に成功した。これは日本企業
とグローバルな共生的取り組みの成果で,以下に誕生の歴史,LFC材料,LTCC-ECUの特徴,応用など
につき総括する。

~目次~
 1.はじめに
 2.類似技術LTCCの歴史(1975~90)
  2.1 スーパーコンピューター用LTCCによる低温焼成化,多層化,高密度化技術
  2.2 日の目を見なかった次世代ハイブリッドIC応用LTCC(ドイツBosch社では開花)(1980~90)
  2.3 LTCCによる高周波小型部品の日本的ビジネスの台頭(携帯電話等無線通信用)(1989~95)
 3.自動車用”マイクロハイブリッドLTCC-ECU”の誕生の歴史(1985~2002)
  3.1 Boschは厚膜ハイブリッドを大量に内製していた(1985~90)
  3.2 Boschとの接点はISHMでの発表が縁(1987)
  3.3 Bosch-鳴海製陶のグローバルな提携が実現(技術移転,共同開発,材料供給, 
      Boschでの本格生産開始)(1990~95)
 4.LFC材料(Ag多層同時焼成用ガラスセラミックス)の開発(1983~90)
  4.1 幸運を呼んだLFCの初期目標の先見性
  4.2 Ag多層同時焼成基板とは
  4.3 LFCガラスセラミックスの焼成挙動について
  4.4 LFCの同時焼成時の焼成収縮と信頼性
  4.5 同時焼成基板へのPost-fire(Ag-Pd,RuO2抵抗,Cu導体)信頼性,製法,最終基 板特性
 5.自動車用LTCC-ECU”Microhybrid"の革新的技術,特徴ならびにその応用(1990~95)
  5.1 新プロセス技術,新材料技術
  5.2 自動車用ECUに使用されるLTCCの利点,特徴と応用
 6.おわりに


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LTCC基板の実用化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

(株)大垣村田製作所 製造部 担当部長  福田順三  
(株)村田製作所 第3コンポーネント事業部 機能基板商品部 係長 仲 勝彦   

 近年,高周波用通信モジュールに用いられる実装用基板として,LTCC基板が注目を集めている。
そこで,LTCC基板の無収縮焼成を中心とする最新技術動向と,その実用化例としてCao-Al2O3-
SiO2-B2O3系ガラスとAl2O3よりなるLFCシステムを,実用化製品としての通信用 Blue Tooth用基板や
自動車用TCM(Transmission Control Module)用基板などを用い説明した。

~目次~
 1.はじめに
 2.LTCC基板動向
 3.無収縮焼成
 4.LTCC基板実用例
  4.1 LFCシステムの特徴
  4.2 製品化例
 5.おわりに

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高周波素子内蔵LTCC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

京セラ(株) 機能部品事業部 技術開発部 部責任者    小田 勉 
京セラ(株) 機能部品事業部 技術開発部 機能部品企画課 齋藤利之 

 携帯電話をはじめとして,近距離無線通信技術は多くの情報通信機器に採用されている。また,
これらの情報通信機器においては小型・高性能・高品質化が進んでいる。このユビキタス時代にお
いて,情報通信機器に使用される高周波モジュールの小型化,低背化高機能化は必要不可欠となる。
本論文では,これらの実現を可能とするLTCCの材料技術と高周波素子内蔵技術について述べる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.高周波素子内蔵基板への要求
 3.高周波素子内蔵基板に必要な材料特性
  3.1 小型化
  3.2 高性能化
  3.3 特性安定化
  3.4 二次実装信頼性
 4.高周波素子内蔵基板の製品設計
  4.1 誘導特性の設計
  4.2 内蔵素子の設計
 5.今後の展開

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マイクロ波通信用LTCCの開発・・・・・・・・・・・・38
                           
双信電機(株) 技術本部 本部長付  小田切正 

 携帯電話,無線LANなどの無線通信はマイクロ波帯を使っており,端末器にはLTCCである積層誘
導体セラミックス部品が多数使われている。それらの部品の使用状況を説明し,積層誘導体セラミ
ックスに要求される特性,誘導体セラミックスの実例,部品の製品特性,さらに異種材料接合によ
り単機能部品から多機能部品へ集積した製品などについて解説した。

~目次~
 1.はじめに
 2.積層誘導体セラミックスフィルター
 3.誘導体セラミックスの誘導特性
  3.1 高誘導率と低誘導率
  3.2 低損失化
  3.3 温度安定性
 4.誘導体セラミックスの開発
  4.1 導体の選定
  4.2 誘導体セラミックス
  4.3 異種材料接合
  4.4 プロセス
 5.製品構成
  5.1 フィルター
  5.2 バランスフィルター
  5.3 マッチングフリーアンテナ
 6.おわりに

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ポストLTCCとしてのエアロゾルデポジション・・・・・・・・・・・・・47
                   
(株)富士通研究所 材料・環境技術研究所 
   マイクロエレクトロニクス材料研究部 主任研究員  今中佳彦 
(独)産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門
          集積加工研究グループ グループ長  明渡 純 

 エアロゾルデポジション(AD)は,ナノレベルのセラミック粒子を基板上に高速噴射させることに
より成膜する手法で,(1)常温で膜形成が可能,(2)複雑組成のコントロールが容易などのユニーク
な特徴を有している。このために,特性の異なる種々のセラミック材料を組み合わせた多層膜構造の
形成が可能であり,各種受動部品を内蔵化した高周波小型機能基板の開発のためのポストLTCC技術と
して期待されている。本稿では,将来に向けてのLTCC技術開発内容と,将来求められている受動部品
内蔵基板を提示したうえで,エアロゾルデポジションの技術的ポテンシャルの高さについて解説する。

~目次~
 1.はじめに
 2.将来へ向けてのLTCCの技術開発
  2.1 材料技術開発
  2.2 プロセス技術
 3.ポストLTCCの背景
 4.ポストLTCCとしてのADプロセス
 5.ADセラミックス膜の開発現状
 6.おわりに

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高周波用LTCC材料技術の進歩とその応用展開・・・・・・・・57

太陽誘電(株) 総合研究所 材料開発部   川村敬三 
太陽誘電(株) M.W.グループ 高周波開発部 井上 真 

 高周波機器の小型化のためのキーテクノロジーとして,LTCC(Low Temperature Cofired
Caramics)技術が注目を集めている。ここでは高周波の分野に焦点を絞り,最近のLTCC材料技術の
進歩とその応用製品について述べたい。

~目次~
 1.はじめに
 2.LTCC技術の歴史的背景と高周波への対応
  2.1 LTCC技術の黎明期
  2.2 樹脂系高密度配線基板の普及
  2.3 高周波製品への展開
 3.高周波用LTCC材料に求められる材料特性
  3.1 誘電率とその温度係数
  3.2 材料Q
  3.3 5GHz2段階積層BPFの材料Qと挿入損失
  3.4 高周波回路モジュール基板
 4.高周波積層部品用のLTCC材料
  4.1 ガラスコンポジット材料
  4.2 結晶化ガラス材料
  4.3 セラミック系低温焼成材料
 5.高周波デバイスへの適用例
  5.1 分布安定型積層フィルターへの適用
  5.2 集中定数型積層フィルターへの適用
 6.今後の展開

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機能材料連載講座 因果化学からみる材料の機能性(第5回)
何故、液晶光配向は起こるのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
                         
東邦大学 理学部 特任教授  市村國宏 

 トリガー増幅の例として,表面分子の光化学反応による液晶の配光制御を取り上げる。この系は
基板表面上の光化学反応による構造や配光の変化と,それによって引き起こされる液晶分子の配光
変化という2つの素課程から成り立つ。両者間での因果関係をもたらす界面で何かが起こっている
かを詳しく述べる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.トリガー増幅としての分子配光の転写
 3.界面分子モデルの調整方法
 4.ホメオトロピック配光の液晶界面モデル
 5.動的な液晶界面モデル
 6.表面エネルギーからの考察
 7.おわりに

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連載:高分子材料の実用性(1)
衣料,レンズ,医療分野-その1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
                                
元理化学研究所 研究員 ・元工学院大学 電子工学科;化学工学科  鴨川昭夫 

 プラスチックは,日常生活で数多く使用されている。そのいくつかを例示すると,洋服としては
熱硬化性樹脂のポリエステル,しわにならないワイシャツ,防弾チョッキ,医用方面では血液バッグ
やチューブ,注射針など,その他レンズ,玩具類,マウスピース,口紅,文房具,運動具などが開発
されている。

 ~目次~
 はじめに
 実用例-1  形状記憶ワイシャツ,防弾チョッキ,卵パックのリサイクル…
          -コンタクトレンズの歴史

4,400円
CONTENTS 4月号

特集:強相関ソフトマテリアルの動的制御-Part1
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 特集にあたって ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
                                 
 東京工業大学大学院 理工学研究科 有機・高分子物質専攻 教授
 東京大学 名誉教授                  
                            西 敏夫

-------------------------------------------------------------
第1編 動的制御のための非共有結合性相互作用の探索
 極限環境下における生体分子間疎水性相互作用と
  その強相関ソフトマテリアルへの応用 ・・・・・・・・・・・・7

 東京工業大学大学院 生命理工学研究科 生物プロセス専攻 教授 中村 聡

 
 極限環境微生物が生産するタンパク質は,極限環境においても機能する
ことから,21世紀材料としての応用が期待される。本稿では,極限環境
微生物タンパク質の構造と機能に関するこれまでの研究を概説し,基のい
ざ医療への応用展開について述べる。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.好熱性微生物に由来するアミノ酸生合成系酵素
 3.好アルカリ性微生物に由来する多糖加水分解酵素
  3.1 キシラナーゼ
  3.2 キチナーゼ
 4.好塩性微生物に由来する電子伝達タンパク質
 5.おわりに


-------------------------------------------------------------
 疎水ポリフィリン組織体の構築と酸素の促進輸送・・・・・・・・14

               早稲田大学 理工学部 教授 西出宏之

 
 空気から酸素分子を選択的に取り組み運搬するヘモグロビンは,鉄ポル
フィリンを酸素結合席として含むタンパク質である。分子設計されたポル
フィリンの疎水相互作用に着目して組織体を構成すれば,ヘモグロビンと
は異なる条件下でも酸素運搬できる新しい材料系が可能となる。

~目次~
 1.はじめに
 2.合成ポルフィリンと耐熱性タンパク質の疎水組織体
 3.ポルフィリンキャップの構築とリサイクラビリティー
 4.疎水ポルフィリン薄膜での酸素促進輸送
 5.おわりに


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 強相関ソフトマテリアルのバイオリサイクル制御 ・・・・・・・18

                  青井啓悟 *1  西 敏夫 *2

*1 名古屋大学大学院 生命農学研究科 応用分子生命化学専攻 助教授  
*2 東京工業大学大学院 有機・高分子物質専攻 教授;東京大学名誉教授  

 生分解性を有するポリ乳酸とポリ(コハク酸ブチレン)/ポリ(炭酸ブ
チレン)共重合体とのブレンド系で,相互侵入球晶の形成状態により生分
解の速度を調節できることを明らかにし,材料のバイオリサイクルの時間
制御の新たな方法論を示した。
 また,バイオポリマーハイブリッドとして,キチン/ポリサルコシング
ラフト共重合体をポリビニルアルコールに添加することで,その生分解性
の制御を行った。ポリマーブレンドによる生分解性の制御について議論し
た。

~目次~
 1.はじめに
 2.バイオリサイクルとポリマーブレンド
 3.生体高分子を生かしたバイオポリマーハイブリッド
 4.結晶性高分子ブレンド
 5.PECとポリ乳酸とのブレンドの球晶構造と
   バイオリサイクル速度依存性
 6.偏光顕微鏡による相互侵入球晶近傍の分解挙動の観察
 7.おわりに


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 ピリジニウム基を集積したレドックス共役組織体 ・・・・・・・24
                             
      東京工業大学大学院 資源化学研究所 教授  彌田智一


 われわれは,光や電気によって電子構造を可逆的に変換できる機能ユニ
ットを強く相関させながら組織化し,電子的な相互作用に基づいた組織体
機能の設計と制御に取り組んでいる。本稿では,可逆な色変化と電荷や不
対電子の生成・消滅を伴うレドックス過程を示すピリジニウム基を機能ユ
ニットとするレドックス共役組織体について紹介する。

 ~目次~
 1.はじめに-共役組織化
 2.レドックス機能ユニット-ピリジニウムとビオローゲン
 3.ビオローゲンπ共役2量体-電子的な構造異性体
 4.ピリジニウム共役組織化へのアプローチ
 5.レドックス活性配位子ピリジルピリジニウムによる配位組織体
 6.ピリジニウムβジケトン配位子と金属錯体
 7.おわりに


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 疎水性コア構造変換による
  電子伝達タンパク質シトクロムc機能調節 ・・・・・・・・・31

                 山本泰彦 *1  三本木至宏 *2

 *1 筑波大学 化学系 教授 
 *2 広島大学大学院 生物圏化学研究科 助教授

 バイオエレクトロニクス素子としての利用が期待される電子伝達タンパ
ク質シトクロムcの酸化還元電位は,タンパク質の立体構造の安定化に寄
与する分子内部の疎水性コアの構造化学的性質により調節されることが明
らかとなった。熱安定性が系統的に異なる一連のシトクロムcの還元反応
の熱力学的解析から,疎水性コアの構造化学的性質による酸化還元電位の
調節は,還元エンタルピーの変化を通して行われることが示された。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.シトクロムcにおける構造と機能の関係
 3.好熱性水素細菌 H.themophilus と
   緑膿菌 P.aeruginosa のシトクロムc
 4.シトクロムcの熱安定性
 5.シトクロムcの熱安定性と酸化還元電位との関係
 6.おわりに


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第2編 水素結合を利用した階層構造の構築と機能化
 水素結合の動的制御による
  刺激・環境応答性強相関ソフトマテリアルの構築・・・・・・・38

 東京大学大学院 工学系工学系研究科 化学生命工学専攻 教授 加藤隆史


 水素結合のような相互作用(非共有結合)を活用して分子を組織化し構
築される新しい動的な機能を示すソフトマテリアルについて解説する。具
体的には,多様の分子の集合により,(1)キラルなカラムナー相を示す液晶
材料,(2)異方的(1次元・2次元)にイオンを高速に伝導する材料,(3)
電場に高速に応答したり,光記録可能な液晶ゲルについて述べる。

~目次~
 1.有機トランジスタ実用化への課題
 2.キラルカラムナーおよびキラルキュービック組織体
 3.異方的イオン伝導体:ナノ相分離構造の形成と機能化
 4.電場・光応答性液晶ゲル
  4.1 高速電場応答性液晶ゲル
  4.2 光散乱型電場応答性液晶ゲル
  4.3 光応答性液晶ゲル
 5.おわりに


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 DNA四本鎖構造を利用したカリウムイオンの検出・・・・・・・・・42
                        
                  野島高彦 *1  竹中繁織 *2

 *1 九州大学大学院 工学研究院 応用化学部門 助手 
 *2 九州大学大学院 工学研究院 応用化学部門 助教授 

 核酸の水素結合ネットワークは,あるトリガーによって核酸構造自体を
大きく変化させることができる。これを利用したK+イオンの蛍光センシ
ング試薬PSOを開発した。PSOは,テロメア配列を有するDNAの両末端にFR
ET可能な2種の蛍光色素を導入したもので,K+をトリガーとする四本鎖
DNA形成により過剰のNa+存在下K+を選択的に蛍光定量出来る。

~目次~
 1.はじめに
  1.1 強相関ソフトマテリアルとしてのDNA
  1.2 生体中におけるカリウムイオンの重要性
 2.カリウムイオンセンサーPSOの設計
  2.1 テロメアDNAの特異構造
  2.2 テロメアDNA配列をカリウムイオン検出に応用する
 3.種々の金属イオン存在下におけるPSOの蛍光挙動
  3.1 金属イオン選択性の検討
  3.2 PSO-2の開発
  3.3 蛍光バイオイメージングへの応用の可能性
 4.おわりに


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 酸-塩基および水素結合相互作用を用いた
  動的らせん高分子創製と機能・・・・・・・・・・・・・・・・・47

 名古屋大学大学院 工学研究科 物質制御工学専攻 教授  
(独)科学技術振興機構 ERATO 超構造らせん高分子 研究総括 八島栄次

 らせん構造は高分子特有の高次構造であり,その合成法と制御技術の確立
は新規な物性・機能を有するソフトマテリアルの開発につながる。本稿では,
非共有結合を利用したらせん高分子の創製と機能を中心に述べる。

~目次~
 1.はじめに
 2.人工らせん高分子
 3.動的認識プロセスを用いたらせん高分子の創製
 4.おわりに


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 水素結合による集合体の強相関構造形成の理論構築・・・・・・・・53

    京都大学大学院 工学研究科 高分子化学専攻 教授 田中文彦

 
 水素結合には連鎖性があり,ジッパー型の架橋領域を有する高分子ゲルの
生成や,高分子鎖上へのヘリックス誘起など特徴的な会合構造を形成する要
因になる。本稿では,水素結合の1次元的な伝播によって生じるゲルや左右
競合するヘリックスを統計力学的理論により解析した結果を紹介する。

~目次~
 1.はじめに
 2.水素結合ヘリックス(ジッパー型)架橋ゲルの再帰ゾル・ゲル転移
 3.キラル分子による水素結合誘起ヘリックス高分子


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 金属錯体をビルディングブロックとする
  水素結合により集積されたケモセンサーの構築・・・・・・・・・59

 大阪大学大学院 理学研究科 化学専攻 無機化学講座 助教授 川田 知
  

 最近,集積型金属錯体を用いた機能性物質探索がさまざまな分野で展開さ
れている。有機配位子と金属イオンがナノメートルオーダーで集積した集積
型金属錯体は,複合化された秩序構造と単独の金属錯体にはない多面的な化
学的特性を有するため,さまざまな物性が複雑に絡み合った新しい機能の発
現が期待されている。本稿では,構造の柔軟性と特異的な水素結合能をもつ
1次元鎖状の集積型金属錯体を用いた筆者らのセンサー機能発現へのアプロ
ーチを紹介する。

~目次~
 1.はじめに
 2.ヒンジ様配位子を用いたセンサー機能の発現
 3.水素結合を用いた不斉認識に向けて
 4.おわりに

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Material Report
 R&D
 電子機器用のケナフ添加ポリ乳酸の開発・・・・・・・・・・・・・66

           位地正年 *1  芹澤 慎 *2  井上和彦 *3

 *1 日本電気(株)基礎・環境研究所 研究部長 
 *2 日本電気(株)基礎・環境研究所 主任
 *3 日本電気(株)基礎・環境研究所 主任研究員 

 地球温暖化の要因とされているCO2の固定化や石油資源枯渇対策のため,
植物原料のバイオプラスチックが重要となっているが,電子機器筐体に利用
するためには耐熱性などの特性の向上が課題であった。そこで,高い温暖化
防止効果をもつケナフの繊維を添加することで,耐熱性や剛性などに優れた
バイオプラスチックを開発した。ケナフ繊維をトウモロコシなどの植物資源
を利用したポリ乳酸に添加すると,耐熱性(熱変形温度)と剛性を現在使用
している石油系プラスチックより向上でき,さらに成形性も改良(結晶化促
進)できた。今後,早期に製品化し,電子機器に適用していく予定である。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.電子機器へのバイオプラスチック利用の可能性と課題
 3.ケナフセインに添加ポリ乳酸の開発
 4.まとめと今後


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 ショットコーティング技術の開発・・・・・・・・・・・・・・・・71

           伊藤義康 *1  須山章子 *2  布施俊明 *3

 *1 (株)東芝電力・社会システム技術開発センター 主幹 
 *2 (株)東芝電力・社会システム技術開発センター 主務
 *3 (株)東芝電力・社会システム技術開発センター 主務
 
 セラミックス表面のメタライズ処理を目的に,新しくショットコーティン
グプロセス(衝撃皮膜形成法)を開発した。常温大気中で金属粉末を高速で
セラミックス基材表面に吹き付けることで,数マイクロメートルから数十マ
イクロメートルの導電皮膜を容易に形成しることができる。
 本稿では,酸化亜鉛,ジルコニア,窒化ケイ素,炭化ケイ素などのセラミ
ック表面にショットコーティングでアルミニウム皮膜を形成するために実施
した基礎検討結果を示す。また,アルミニウム皮膜の組織と残留応力特性に
着目し,ショットコーティングによる皮膜形成のメカニズムについて紹介す
る。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.ショットコーティングの基礎的検討
 3.ショットコーティングに及ぼす基材の影響
 4.ショットコーティング皮膜の残留応力特性
 5.ショットコーティングによる皮膜形成のメカニズム
 6.ショットコーティングの用途展開について

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機能材料連載講座 因果化学からみる材料の機能性(第3回)
 コマンド増幅系 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79

           東京理科大学 総合研究所 教授 市村國弘

  
 光などの刺激が分子の構造や配向状態を変化されることを原因として,さ
まざまな化学的変化が二次的に誘起される結果として,多彩な機能性が発現
される。この分子レベルでの因果関係を総括的に把握するために,コマンダ
ー・ソルジャー概念について説明し,分子レベルでの増幅にはトリガー増幅
と触媒増幅があることを指摘する。

 ~目次~
 1.はじめに
 2.コマンダー分子とソルジャー分子
 3.トリガー増幅の例示
 4.分子集合体の状態変化とコマンド効果
 5.分子因果則
 6.分子因果則の意義
 7.おわりに
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