目次
特集:ポリファーマシー -できること,難しいこと,多職種からの視点-
≪今月の視点≫
実際のポリファーマシーの対処はうまくいかないことが多い
ポリファーマシーという言葉が医療関係者の間に広く浸透してきた.多くの解説書が出版され,ポリファーマシー対策への啓発が活発に行われるようになり,関心はずいぶん高まってきている.これから徐々にポリファーマシー問題は解決に向かっていくのだろう,と思いきや,実際の診察室での状況を振り返ってみると一抹の不安を覚えざるを得ない.
多くの場合,これまでの啓発活動や解説書は,危険な薬,薬の相互作用,減薬する際の一般的な手順など,医学的に正しく,誰が考えても妥当な内容に終始しているように思われる.しかし,実際にポリファーマシーのケースに対処してみると,いわゆる教科書的なアプローチではうまくいかないことが多いことを,現場の医療専門職者はたびたび経験している.“処方は,処方医,患者,環境の機能である”といわれ,それぞれの要素が複雑に絡み合っている.これらを含めたさまざまな状況,文脈を考慮して対処しなければ,ポリファーマシー対策はうまくいかないのである.
とくに患者の置かれている状況や価値観を抜きにして,その対応を講じるのは有用ではない.イギリスのNHS(National Health Service)ではポリファーマシー対策に関する活発な活動を展開しており,“患者中心のポリファーマシー対策の7つのステップ”という1つの有用な方法を次のように提案している.① 患者ニーズを評価する,②患者の置かれている状況と全体的なゴールを明確化する,③リスクのある薬を同定する,④ 個々の患者のコンテクストのなかでリスクと利益を評価する,⑤薬の中止,開始について患者や介護者と合意形成する,⑥合意事項をほかの医療者に伝え共有する,⑦介入後の状態を定期的にモニターする.
この方法のなかでとくに重要なのは,患者とその介護者と医療専門職者が十分に話し合って,皆で合意形成することである.しかし,実際にはこれはなかなか難しく,価値観をベースにしたコミュニケーションのあり方を身につける必要がある.
本特集では,さまざまな医療現場,さまざまな立場の医療専門職が経験してきた,教科書的ではない,現実のポリファーマシーの課題とその対応の実際を紹介してもらった.患者中心にポリファーマシー対策に取り組む最前線の多職種の医療専門職は,どのような困難に遭遇し,それにどのように対応してきたのか,さまざまな貴重な経験からは多くの実用的なヒントが得られるであろう.
[編集幹事] 愛知医科大学医学部 地域医療教育学寄附講座/医学教育センター 宮田靖志
≪特集の目次≫
■医師の視点
総合病院にて ─総合内科での実態とアプローチ─(小林裕幸)
都市部診療所にて ─弱い立場の強みを活かせるか─(五十嵐 博,他)
地域中核病院にて ─医師と患者の生き方とポリファーマシー問題への取り組み─(古屋 聡)
地域診療所にて ─患者家族との距離,多職種との距離が近いからこそ「できること」,「難しいこと」─(中川貴史)
在宅医療にて ─信頼関係が鍵─(太田 敦,他)
病院総合診療医として ─視座を変えて「処方の物語」を想像する─(山本 祐)
家庭医として ─患者中心の医療の方法を使ってポリファーマシーに取り組む─(西村真紀,他)
精神科医として─おどしではなく,「やさしくていねいで,かつしつこく」のポリファーマシー対策─(今村弥生)
後期研修医の視点から ─一方的に減薬していませんか?─(小澤 労)
薬のエビデンス ─患者にどう伝える?─(南郷栄秀)
■薬剤師の視点
入院前持参薬鑑別を薬剤師によるポリファーマシーへのかかわりの糸口に(別府紀子,他)
病院薬剤師からみたポリファーマシー対策の難しさ ─高齢患者に合わせた処方の適正化を目指して─(平井みどり)
診療所薬剤師として ─継続的に臨床判断に関与─(八田重雄)
訪問診療同行薬剤師として ─病診連携,薬薬連携の重要性─(大須賀悠子)
患者・医師にエビデンスを伝える(青島周一)
■看護師の視点
訪問看護師として ─薬剤管理は薬剤のみの管理にとどまらない─(藤田 愛)
訪問看護師として ─医療従事者との顔の見える関係の必要性─(髙橋直美)
急性・重症患者看護専門看護師として ─患者を取り巻くストーリーのなかで考える─(井上 潤)
■介護関連職の視点
介護支援専門員の立場より ─お薬大好き,あるだけで安心─(永野裕子)
居宅介護事業者の立場より ─服薬支援のバトンをつなげるために介護ができること─(上村久美子)
訪問介護員の立場より ─ホームヘルパーからみた日常生活における薬─(森 二三子)
≪連載≫
今月のお薬ランキング(9)
解熱鎮痛薬(浜田康次)
在宅医療をはじめよう! 在宅医療の質=理念×システム×制度の知識(24)
【制度の知識編】終末期のがん患者に手厚い在宅ケアを ─在宅がん医療総合診療料と看取りに関する制度─(永井康徳,他)
楽しく臨床(8)
介護のジェンダーとスピリチュアルペイン(宮森 正)
ゼロからわかる遠隔医療(6)
遠隔医療の現況(竹村昌敏)〈監修〉exMedio
「 治療」「薬局」合同連載 ポリファーマシー“ 処方整理力”を鍛える! Dトレ(9)
Lower is better ?!(矢吹 拓)
≪今月の視点≫
実際のポリファーマシーの対処はうまくいかないことが多い
ポリファーマシーという言葉が医療関係者の間に広く浸透してきた.多くの解説書が出版され,ポリファーマシー対策への啓発が活発に行われるようになり,関心はずいぶん高まってきている.これから徐々にポリファーマシー問題は解決に向かっていくのだろう,と思いきや,実際の診察室での状況を振り返ってみると一抹の不安を覚えざるを得ない.
多くの場合,これまでの啓発活動や解説書は,危険な薬,薬の相互作用,減薬する際の一般的な手順など,医学的に正しく,誰が考えても妥当な内容に終始しているように思われる.しかし,実際にポリファーマシーのケースに対処してみると,いわゆる教科書的なアプローチではうまくいかないことが多いことを,現場の医療専門職者はたびたび経験している.“処方は,処方医,患者,環境の機能である”といわれ,それぞれの要素が複雑に絡み合っている.これらを含めたさまざまな状況,文脈を考慮して対処しなければ,ポリファーマシー対策はうまくいかないのである.
とくに患者の置かれている状況や価値観を抜きにして,その対応を講じるのは有用ではない.イギリスのNHS(National Health Service)ではポリファーマシー対策に関する活発な活動を展開しており,“患者中心のポリファーマシー対策の7つのステップ”という1つの有用な方法を次のように提案している.① 患者ニーズを評価する,②患者の置かれている状況と全体的なゴールを明確化する,③リスクのある薬を同定する,④ 個々の患者のコンテクストのなかでリスクと利益を評価する,⑤薬の中止,開始について患者や介護者と合意形成する,⑥合意事項をほかの医療者に伝え共有する,⑦介入後の状態を定期的にモニターする.
この方法のなかでとくに重要なのは,患者とその介護者と医療専門職者が十分に話し合って,皆で合意形成することである.しかし,実際にはこれはなかなか難しく,価値観をベースにしたコミュニケーションのあり方を身につける必要がある.
本特集では,さまざまな医療現場,さまざまな立場の医療専門職が経験してきた,教科書的ではない,現実のポリファーマシーの課題とその対応の実際を紹介してもらった.患者中心にポリファーマシー対策に取り組む最前線の多職種の医療専門職は,どのような困難に遭遇し,それにどのように対応してきたのか,さまざまな貴重な経験からは多くの実用的なヒントが得られるであろう.
[編集幹事] 愛知医科大学医学部 地域医療教育学寄附講座/医学教育センター 宮田靖志
≪特集の目次≫
■医師の視点
総合病院にて ─総合内科での実態とアプローチ─(小林裕幸)
都市部診療所にて ─弱い立場の強みを活かせるか─(五十嵐 博,他)
地域中核病院にて ─医師と患者の生き方とポリファーマシー問題への取り組み─(古屋 聡)
地域診療所にて ─患者家族との距離,多職種との距離が近いからこそ「できること」,「難しいこと」─(中川貴史)
在宅医療にて ─信頼関係が鍵─(太田 敦,他)
病院総合診療医として ─視座を変えて「処方の物語」を想像する─(山本 祐)
家庭医として ─患者中心の医療の方法を使ってポリファーマシーに取り組む─(西村真紀,他)
精神科医として─おどしではなく,「やさしくていねいで,かつしつこく」のポリファーマシー対策─(今村弥生)
後期研修医の視点から ─一方的に減薬していませんか?─(小澤 労)
薬のエビデンス ─患者にどう伝える?─(南郷栄秀)
■薬剤師の視点
入院前持参薬鑑別を薬剤師によるポリファーマシーへのかかわりの糸口に(別府紀子,他)
病院薬剤師からみたポリファーマシー対策の難しさ ─高齢患者に合わせた処方の適正化を目指して─(平井みどり)
診療所薬剤師として ─継続的に臨床判断に関与─(八田重雄)
訪問診療同行薬剤師として ─病診連携,薬薬連携の重要性─(大須賀悠子)
患者・医師にエビデンスを伝える(青島周一)
■看護師の視点
訪問看護師として ─薬剤管理は薬剤のみの管理にとどまらない─(藤田 愛)
訪問看護師として ─医療従事者との顔の見える関係の必要性─(髙橋直美)
急性・重症患者看護専門看護師として ─患者を取り巻くストーリーのなかで考える─(井上 潤)
■介護関連職の視点
介護支援専門員の立場より ─お薬大好き,あるだけで安心─(永野裕子)
居宅介護事業者の立場より ─服薬支援のバトンをつなげるために介護ができること─(上村久美子)
訪問介護員の立場より ─ホームヘルパーからみた日常生活における薬─(森 二三子)
≪連載≫
今月のお薬ランキング(9)
解熱鎮痛薬(浜田康次)
在宅医療をはじめよう! 在宅医療の質=理念×システム×制度の知識(24)
【制度の知識編】終末期のがん患者に手厚い在宅ケアを ─在宅がん医療総合診療料と看取りに関する制度─(永井康徳,他)
楽しく臨床(8)
介護のジェンダーとスピリチュアルペイン(宮森 正)
ゼロからわかる遠隔医療(6)
遠隔医療の現況(竹村昌敏)〈監修〉exMedio
「 治療」「薬局」合同連載 ポリファーマシー“ 処方整理力”を鍛える! Dトレ(9)
Lower is better ?!(矢吹 拓)
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