目次
特集:『うつ状態を理解する』
≪今月の視点≫
厚生労働省によると,近年うつ病をはじめとする気分障害の患者数が100万人を超えたとされているが,未受診の者も含めその実数はさらに多いと推測される.うつ病は気分の憂うつさや意欲の低下が中核的な症状であるが,それらの精神症状よりも不安に基づく身体的な症状が本人に自覚され,内科などのプライマリ・ケア医のところへ受診することが多い.みられる身体症状は動悸,息切れや呼吸苦,発汗,便秘や下痢,頭痛や腹痛を含めた疼痛,めまいや耳鳴り,吐気や嘔吐,食欲低下や過食などあらゆる身体的な愁訴である.このような身体症状で訪れる患者に検査を行ってもその多くで身体的原因がみつからない.
患者がプライマリ・ケア医の診察に訪れる際には身体的愁訴が主訴なので,通常は精神症状を積極的には訴えない.したがって,医師からあえて質問をしないと精神症状は見いだせないことになる.また,検査で明確な所見が見いだせないときに使われる「ストレス性」あるいは「自律神経失調(症)」も便利なようであるが,医学的にはわかったようでわからない診断名である.
われわれ精神科医の診断は,問診とそのときの患者の様子や態度などから得られる情報で行われる.精神科の診断は通常1回の面接だけでは決められない.したがって,われわれは症状を確認して症状の集まりを状態として捉えている.それを状態像というが,「うつ状態」というのは状態像を診断したものである.「うつ状態」には抑うつ気分や意欲の低下などの精神症状のほかに,不安症状とその表れとしての身体症状も含まれる.そして,このうつ状態を呈する疾患はさまざまあるので,その鑑別診断をその後の診察で行っていく.
状態像診断を行う目的の1つに,状態像が決まると薬物の選択ができるということがある.精神科医はうつ病と診断してから抗うつ薬を開始するのではなく,うつ状態と診断して抗うつ薬を処方する.これは案外,精神科医以外はあまり使わない治療方法かもしれない.その状態像にあった薬物を選び,投与してどのような効果が出ているかという経過を追い,症状の変化をみて,さらにいろいろな情報を得て最終診断へと進んでいく.
今回の企画は「うつ状態」を取りあげ,さまざまな視点からその領域の専門家の先生に執筆をお願いした.プライマリ・ケア医の座右の書になれば望外の幸せである.
五十嵐良雄 メディカルケア虎ノ門 院長
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今月の視点(五十嵐良雄)
■座談会
うつ状態をどのように理解するか(五十嵐良雄,他)
■総 論
うつ状態を呈する疾患(渡辺 登)
現代的なうつ(上瀬大樹,他)
職場結合性気分障害― 職場結合性うつ病・双極性障害―(加藤 敏)
うつ状態を呈する疾患の薬物療(櫻井 準,他)
■タイプ別にみるうつ状態
高機能発達障害のうつ状(山田貴志,他)
パーソナリティ障害のうつ状態― 境界性パーソナリティ障害について―(田中 聡,他)
神経症のうつ状態― 神経症性うつ病から適応障害へ―(牛島定信)
高齢期のうつ状態(中野祥行,他)
産業領域におけるうつ状態(中村 純,他)
■トピックス
若年性認知症とうつ状態(下田健吾,他)
PTSD のうつ状態(飛鳥井 望)
女性のうつ状態(内出容子,他)
うつ状態に対する認知療法・認知行動療法(大野 裕)
うつ状態に対する対人関係療法(水島広子)
うつ状態に対する運動療法(内田 直)
うつ状態に対する入院治療(徳永雄一郎)
うつ状態とNIRS(里村嘉弘,他)
企業におけるうつ状態― 主治医と経営者はなぜ手を結べないのか―(白波瀬丈一郎)
リワークプログラムにおけるうつ患者のリハビリテーション(横山太範)
労災とうつ状態(黒木宣夫)
自殺とうつ状態(稲垣正俊,他)
発達障害のリハビリテーションと自立過程におけるうつ状態(大嶋正浩)
うつ病の社会的コスト(佐渡充洋)
≪Series≫
医療を適切に受けるためのポライトネス・ストラテジー(10)
紹介先の医師に患者の「人となり」を伝える「吹き出し」の効用(矢吹清人)
よりよい医院経営(77)
トヨタ流の病院経営(福岡藤乃)
何が正解? 循環器治療 EBM で検証(56)
拡張期心不全の診断と治療(上村大輔 他)
≪今月の視点≫
厚生労働省によると,近年うつ病をはじめとする気分障害の患者数が100万人を超えたとされているが,未受診の者も含めその実数はさらに多いと推測される.うつ病は気分の憂うつさや意欲の低下が中核的な症状であるが,それらの精神症状よりも不安に基づく身体的な症状が本人に自覚され,内科などのプライマリ・ケア医のところへ受診することが多い.みられる身体症状は動悸,息切れや呼吸苦,発汗,便秘や下痢,頭痛や腹痛を含めた疼痛,めまいや耳鳴り,吐気や嘔吐,食欲低下や過食などあらゆる身体的な愁訴である.このような身体症状で訪れる患者に検査を行ってもその多くで身体的原因がみつからない.
患者がプライマリ・ケア医の診察に訪れる際には身体的愁訴が主訴なので,通常は精神症状を積極的には訴えない.したがって,医師からあえて質問をしないと精神症状は見いだせないことになる.また,検査で明確な所見が見いだせないときに使われる「ストレス性」あるいは「自律神経失調(症)」も便利なようであるが,医学的にはわかったようでわからない診断名である.
われわれ精神科医の診断は,問診とそのときの患者の様子や態度などから得られる情報で行われる.精神科の診断は通常1回の面接だけでは決められない.したがって,われわれは症状を確認して症状の集まりを状態として捉えている.それを状態像というが,「うつ状態」というのは状態像を診断したものである.「うつ状態」には抑うつ気分や意欲の低下などの精神症状のほかに,不安症状とその表れとしての身体症状も含まれる.そして,このうつ状態を呈する疾患はさまざまあるので,その鑑別診断をその後の診察で行っていく.
状態像診断を行う目的の1つに,状態像が決まると薬物の選択ができるということがある.精神科医はうつ病と診断してから抗うつ薬を開始するのではなく,うつ状態と診断して抗うつ薬を処方する.これは案外,精神科医以外はあまり使わない治療方法かもしれない.その状態像にあった薬物を選び,投与してどのような効果が出ているかという経過を追い,症状の変化をみて,さらにいろいろな情報を得て最終診断へと進んでいく.
今回の企画は「うつ状態」を取りあげ,さまざまな視点からその領域の専門家の先生に執筆をお願いした.プライマリ・ケア医の座右の書になれば望外の幸せである.
五十嵐良雄 メディカルケア虎ノ門 院長
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今月の視点(五十嵐良雄)
■座談会
うつ状態をどのように理解するか(五十嵐良雄,他)
■総 論
うつ状態を呈する疾患(渡辺 登)
現代的なうつ(上瀬大樹,他)
職場結合性気分障害― 職場結合性うつ病・双極性障害―(加藤 敏)
うつ状態を呈する疾患の薬物療(櫻井 準,他)
■タイプ別にみるうつ状態
高機能発達障害のうつ状(山田貴志,他)
パーソナリティ障害のうつ状態― 境界性パーソナリティ障害について―(田中 聡,他)
神経症のうつ状態― 神経症性うつ病から適応障害へ―(牛島定信)
高齢期のうつ状態(中野祥行,他)
産業領域におけるうつ状態(中村 純,他)
■トピックス
若年性認知症とうつ状態(下田健吾,他)
PTSD のうつ状態(飛鳥井 望)
女性のうつ状態(内出容子,他)
うつ状態に対する認知療法・認知行動療法(大野 裕)
うつ状態に対する対人関係療法(水島広子)
うつ状態に対する運動療法(内田 直)
うつ状態に対する入院治療(徳永雄一郎)
うつ状態とNIRS(里村嘉弘,他)
企業におけるうつ状態― 主治医と経営者はなぜ手を結べないのか―(白波瀬丈一郎)
リワークプログラムにおけるうつ患者のリハビリテーション(横山太範)
労災とうつ状態(黒木宣夫)
自殺とうつ状態(稲垣正俊,他)
発達障害のリハビリテーションと自立過程におけるうつ状態(大嶋正浩)
うつ病の社会的コスト(佐渡充洋)
≪Series≫
医療を適切に受けるためのポライトネス・ストラテジー(10)
紹介先の医師に患者の「人となり」を伝える「吹き出し」の効用(矢吹清人)
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商品情報・内容
- 出版社:南山堂
- 発行間隔:月刊
- 発売日:毎月1日
- サイズ:B5判
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