目次
特集:『 新しい酸塩基平衡の考え方 ―Stewart approachを活用した患者病態の理解― 』
≪特集の目次≫
■特集にあたって(森松 博史)
■酸塩基平衡に関する歴史的変遷:過去・現在・未来(森松 博史)
■酸塩基平衡の体内調節
・緩衝系による酸塩基平衡の調節機構(森松 博史)
・臓器による酸塩基平衡の調節機構(松崎 孝)
■Henderson-Hasselbalchの式に基づいた酸塩基平衡の理解
・代謝性アシドーシス(武藤 典子)
・代謝性アルカローシス(塩崎 恭子)
・呼吸性アシドーシス(杉本 健太郎)
・呼吸性アルカローシス(金澤 伴幸)
■新しい酸塩基平衡の考え方:Stewart approach
・3つのindependent variables(岡原 修司)
・Strong ion difference(石井 南穗子)
・Total weak acid(川出 健嗣)
・Stewart approachを理解するための4症例(名原 功)
■酸塩基平衡障害に対するStewart approachの臨床応用例
・生理食塩液でのアシドーシス(日笠 友起子)
・急性腎障害(柴田 麻理)
・敗血症(荒川 恭佑)
≪TOPICS≫
・健康科学論文でWikipediaの引用が増加傾向!
・世界保健機関のDefined Daily Doseは妥当!?
・イマチニブの服薬コンプライアンスと不快な自覚症状の発現時期を関連づけて考える
・エトレチナート(チガソン®)で国内2例目の先天異常が報告!
≪シリーズ≫
■子どもの皮膚トラブル -薬局・薬店でのアドバイスのコツ-
(山本 一哉)
■「治療」「薬局」合同企画 データで読むクスリ
最近ARB配合薬の処方が増えているのはなぜか?!
(浜田 康次)
■徹底理解! 添付文書にある情報・ない情報
(堀 里子/三木 晶子/澤田 康文)
■目指せ感染症マスター! 抗菌薬処方支援の超実践アプローチ
サッカー練習中の外傷と3日後の発熱と皮膚発赤
(山田 和範/岸田 直樹)
■認定薬剤師研修の広場
皮膚真菌症の診断 up-to-date ―変遷する皮膚真菌症とその治療―
(望月 隆)
■Pharm.D.を取り巻く医療環境レポート
感染症薬物療法に関する重要な刊行物(2012年)
(木村 利美 ほか)
■メディカル・アプリ情報室
自己管理が基本の糖尿病アプリ 其の1
(渋谷 正則)
■精神科薬剤師の事例でみつけた薬学管理Tips -観察・監査・対応の着眼点-
向精神薬のその他の副作用
(齋藤 百枝美 ほか)
■FDA新薬情報 最近の新薬承認から
画期的治療指定計画(ガジバ/イムブルビカ/ソバルディ)
(石居 昭夫)
≪Report≫
葉酸は二分脊椎の発生を予防する -医療職の認知率はどのように変化したか?
(戸田 康裕 ほか)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
≪特集にあたって≫
酸塩基平衡とは複雑怪奇なものである.麻酔科医を志した21年前に私はそう考えていた.水素イオンなどと考えるよりは重炭酸イオンとbase excessを見た方がいいとさえ思っていた.医学教育では国家試験問題を解くための酸塩基平衡の理解が推奨され,pHとCO2による分類が提唱されていた.麻酔科医となって4~5年が過ぎ,麻酔はできるようになったと誤解していた時ですら,酸塩基平衡はよく分からない分野であり,「まっ,いいか」で済ませている分野であった.救急外来で心停止患者に出会うと「これはpHが6.9台だから,きっと心停止後時間が経過しているだろう」などとまことしやかな発想を持ち,偉そうにしていたかもしれない.
私がStewart approachに出会ったのは2001年のオーストラリア留学中である.当時,横の机で一緒に仕事をしていた日本人の同僚から「Stewartって知ってる?」と質問された.当時の私には“Stuart Little”という映画に出てくる白いネズミの名前しか頭に浮かばず,「???」であったことを鮮明に覚えている.オーストラリアのボスであるProf. Rinaldo Bellomoから“Major Paper”と直筆のメモの入った論文のコピーを頂いたのは2001年の9月か10月だろうか.最初の印象は「さっぱり解らない???」であった.同時に,John Kellumの総説やFencl and Figgeの論文なども読んで,少し分かりかけてきたところでもう一度Major Paperに取り組んだ.おそらく20回以上精読することで,やっと分かってきたような気がしてきていた.この間おおよそ1ヵ月.私は留学中であったおかげで1ヵ月間Stewartのことだけに没頭することができた.これはこの上ない貴重な体験である.近年,留学したがらない若者が多いと聞く.留学によって失うものも多い.私は主にお金と父としての威厳を失った.しかし,それにもまして,何かに完全に没頭する時間が持てたことはこの上ない幸せであり,貴重な体験である.ぜひ,これからの若い先生方には留学をしていただきたい.
オーストラリア留学中に,おそらくは日本において初めてとなるStewart approachに関する総説を投稿した.出版は帰国後の2003年であったと思う.その後もいくつかの総説や研究報告を行ってきたが,10年たった今でも日本国内ではStewart approachはまだまだ知られていないと感じる.ひとえに私たちの努力不足によるものである.今回のStewart approachの特集で,より多くの方々にこの考え方を知っていただき,少しでも理解の助けになれればと思う.
森松 博史
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 麻酔・蘇生学講座 教授
≪特集の目次≫
■特集にあたって(森松 博史)
■酸塩基平衡に関する歴史的変遷:過去・現在・未来(森松 博史)
■酸塩基平衡の体内調節
・緩衝系による酸塩基平衡の調節機構(森松 博史)
・臓器による酸塩基平衡の調節機構(松崎 孝)
■Henderson-Hasselbalchの式に基づいた酸塩基平衡の理解
・代謝性アシドーシス(武藤 典子)
・代謝性アルカローシス(塩崎 恭子)
・呼吸性アシドーシス(杉本 健太郎)
・呼吸性アルカローシス(金澤 伴幸)
■新しい酸塩基平衡の考え方:Stewart approach
・3つのindependent variables(岡原 修司)
・Strong ion difference(石井 南穗子)
・Total weak acid(川出 健嗣)
・Stewart approachを理解するための4症例(名原 功)
■酸塩基平衡障害に対するStewart approachの臨床応用例
・生理食塩液でのアシドーシス(日笠 友起子)
・急性腎障害(柴田 麻理)
・敗血症(荒川 恭佑)
≪TOPICS≫
・健康科学論文でWikipediaの引用が増加傾向!
・世界保健機関のDefined Daily Doseは妥当!?
・イマチニブの服薬コンプライアンスと不快な自覚症状の発現時期を関連づけて考える
・エトレチナート(チガソン®)で国内2例目の先天異常が報告!
≪シリーズ≫
■子どもの皮膚トラブル -薬局・薬店でのアドバイスのコツ-
(山本 一哉)
■「治療」「薬局」合同企画 データで読むクスリ
最近ARB配合薬の処方が増えているのはなぜか?!
(浜田 康次)
■徹底理解! 添付文書にある情報・ない情報
(堀 里子/三木 晶子/澤田 康文)
■目指せ感染症マスター! 抗菌薬処方支援の超実践アプローチ
サッカー練習中の外傷と3日後の発熱と皮膚発赤
(山田 和範/岸田 直樹)
■認定薬剤師研修の広場
皮膚真菌症の診断 up-to-date ―変遷する皮膚真菌症とその治療―
(望月 隆)
■Pharm.D.を取り巻く医療環境レポート
感染症薬物療法に関する重要な刊行物(2012年)
(木村 利美 ほか)
■メディカル・アプリ情報室
自己管理が基本の糖尿病アプリ 其の1
(渋谷 正則)
■精神科薬剤師の事例でみつけた薬学管理Tips -観察・監査・対応の着眼点-
向精神薬のその他の副作用
(齋藤 百枝美 ほか)
■FDA新薬情報 最近の新薬承認から
画期的治療指定計画(ガジバ/イムブルビカ/ソバルディ)
(石居 昭夫)
≪Report≫
葉酸は二分脊椎の発生を予防する -医療職の認知率はどのように変化したか?
(戸田 康裕 ほか)
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≪特集にあたって≫
酸塩基平衡とは複雑怪奇なものである.麻酔科医を志した21年前に私はそう考えていた.水素イオンなどと考えるよりは重炭酸イオンとbase excessを見た方がいいとさえ思っていた.医学教育では国家試験問題を解くための酸塩基平衡の理解が推奨され,pHとCO2による分類が提唱されていた.麻酔科医となって4~5年が過ぎ,麻酔はできるようになったと誤解していた時ですら,酸塩基平衡はよく分からない分野であり,「まっ,いいか」で済ませている分野であった.救急外来で心停止患者に出会うと「これはpHが6.9台だから,きっと心停止後時間が経過しているだろう」などとまことしやかな発想を持ち,偉そうにしていたかもしれない.
私がStewart approachに出会ったのは2001年のオーストラリア留学中である.当時,横の机で一緒に仕事をしていた日本人の同僚から「Stewartって知ってる?」と質問された.当時の私には“Stuart Little”という映画に出てくる白いネズミの名前しか頭に浮かばず,「???」であったことを鮮明に覚えている.オーストラリアのボスであるProf. Rinaldo Bellomoから“Major Paper”と直筆のメモの入った論文のコピーを頂いたのは2001年の9月か10月だろうか.最初の印象は「さっぱり解らない???」であった.同時に,John Kellumの総説やFencl and Figgeの論文なども読んで,少し分かりかけてきたところでもう一度Major Paperに取り組んだ.おそらく20回以上精読することで,やっと分かってきたような気がしてきていた.この間おおよそ1ヵ月.私は留学中であったおかげで1ヵ月間Stewartのことだけに没頭することができた.これはこの上ない貴重な体験である.近年,留学したがらない若者が多いと聞く.留学によって失うものも多い.私は主にお金と父としての威厳を失った.しかし,それにもまして,何かに完全に没頭する時間が持てたことはこの上ない幸せであり,貴重な体験である.ぜひ,これからの若い先生方には留学をしていただきたい.
オーストラリア留学中に,おそらくは日本において初めてとなるStewart approachに関する総説を投稿した.出版は帰国後の2003年であったと思う.その後もいくつかの総説や研究報告を行ってきたが,10年たった今でも日本国内ではStewart approachはまだまだ知られていないと感じる.ひとえに私たちの努力不足によるものである.今回のStewart approachの特集で,より多くの方々にこの考え方を知っていただき,少しでも理解の助けになれればと思う.
森松 博史
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 麻酔・蘇生学講座 教授
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