目次
特集:精神科治療薬の多剤・大量・長期処方を整理する
≪特集の目次≫
■特集にあたって(石郷岡 純)
■わが国の精神科治療薬の多剤・大量・長期処方の現状と課題(河野 敬明 ほか)
■多剤・大量・長期処方の要因と処方整理の実践ポイント
・統合失調症(小澤 千紗 ほか)
・双極性障害(寺尾 岳)
・うつ病/大うつ病性障害(村尾 朋彦 ほか)
・不安症群(山本 円香 ほか)
・強迫症(松永 寿人)
・身体表現性障害(身体症状症)(仙波 純一)
・睡眠障害(山寺 亘)
・神経認知障害(野本 宏 ほか)
・自閉スペクトラム症(岡田 俊)
・注意欠如・多動症(赤間 史明 ほか)
■精神科治療薬の処方整理における薬学的アプローチ
・抗精神病薬・気分安定薬(宇野 準二)
・抗うつ薬(桑原 秀徳 ほか)
・睡眠薬・抗不安薬(髙橋 結花)
≪シリーズ≫
■薬立つブレイクスルー! メディカル・レコード書き方講座
病棟薬剤業務の記録
(寺沢 匡史/大西 莉加)
■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
臨床試験に被験者として参加した患者に対する感謝の気持ちの表明のしかた
~「思いやり」ある行為に対しては,「思いやり」の気持ちを持って社会からお返しを!~
(中野 重行)
■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
双極性障害の治療を考える!
(橋本 保彦)
■Dr. ヤンデルの言葉のネタ帳 ~“病院ことば”の,じっくり,例えば,結局は~
袁術のお兄さんのことですか?
~Note 17. 「炎症」を言い換える~
(市原 真)
≪Report≫
■第二世代抗てんかん薬の副作用①
(小野寺 憲治/武者 利樹/若林 広行/神田 循吉/小島 奈穂美/海野 美千代/大槻 泰介/曽我 孝志)
≪巻頭言≫
精神科薬物療法における多剤・大量・長期使用に関する議論が盛んになってから久しい.おそらくわが国では非定型抗精神病薬の導入が始まった1990年代あたりからであったと思われるが,当初は単純に副作用の問題として扱う素朴な議論であり,それはそれでわかりやすさもあって盛んになっていった.しかし,その頃はまだエビデンスに基づいて議論するという風土も根付いておらず,有効性も含めた有用性で科学的・総合的に判断する必要があることの重要性まで考慮する姿勢は,近年になってようやく一般的になってきたところである.一方,過剰投与を問題視するあまり,過小治療も依然として大きい問題であることは,今日もあまり変わっていない.過剰でもない,過小でもない,真に適正な薬物療法のあり方は何かという問いに,ようやく冷静な目を向けられるようになってきたのも,この数年のことである.
適切な薬物療法を実施していくための処方行動の変化がなかなか進まない理由についても,これまでいろいろ議論されてきた.エビデンスを活用して処方を決定していく態度は,徐々に医療現場に浸透してきているので,経験だけによらない処方文化は今後改善していくであろう.しかし,精神疾患の治療に特有の要因もあり,それが改善の遅延の背景にあると考えられる.例えば,操作的診断が現場にも浸透したことにより,患者を症状の集合体のようにみなす傾向が強まり,さらに薬物療法は対症療法であるという考え方が加わると,症状の数だけ薬剤が必要という圧力が生じ,結果として多剤・大量処方に歯止めをかける動機づけが弱まることになる.同じく,近年は多彩な薬理学的プロファイルをもつ薬剤が増えて,各受容体機能の科学的解明も進み情報も豊富なので,症状の多彩さに合わせた薬理特性を得るため,“科学的・理論的”に多剤を組み合わせるという現象まで生じている.いずれも疾病観,薬物療法観の歪みから生じており,このような診断学・治療学の背景に存在している思考法の問題まで十分に検討し,変容させる方法論はあまり議論されてこなかった.
本特集を読むにあたっては,処方の問題点の指摘や改善の技術論にとどまらず,処方行動の裏に潜む治療哲学の問題まで意識しながら読み込んでいただければ幸いである.
石郷岡 純
CNS薬理研究所 主幹
≪特集の目次≫
■特集にあたって(石郷岡 純)
■わが国の精神科治療薬の多剤・大量・長期処方の現状と課題(河野 敬明 ほか)
■多剤・大量・長期処方の要因と処方整理の実践ポイント
・統合失調症(小澤 千紗 ほか)
・双極性障害(寺尾 岳)
・うつ病/大うつ病性障害(村尾 朋彦 ほか)
・不安症群(山本 円香 ほか)
・強迫症(松永 寿人)
・身体表現性障害(身体症状症)(仙波 純一)
・睡眠障害(山寺 亘)
・神経認知障害(野本 宏 ほか)
・自閉スペクトラム症(岡田 俊)
・注意欠如・多動症(赤間 史明 ほか)
■精神科治療薬の処方整理における薬学的アプローチ
・抗精神病薬・気分安定薬(宇野 準二)
・抗うつ薬(桑原 秀徳 ほか)
・睡眠薬・抗不安薬(髙橋 結花)
≪シリーズ≫
■薬立つブレイクスルー! メディカル・レコード書き方講座
病棟薬剤業務の記録
(寺沢 匡史/大西 莉加)
■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
臨床試験に被験者として参加した患者に対する感謝の気持ちの表明のしかた
~「思いやり」ある行為に対しては,「思いやり」の気持ちを持って社会からお返しを!~
(中野 重行)
■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
双極性障害の治療を考える!
(橋本 保彦)
■Dr. ヤンデルの言葉のネタ帳 ~“病院ことば”の,じっくり,例えば,結局は~
袁術のお兄さんのことですか?
~Note 17. 「炎症」を言い換える~
(市原 真)
≪Report≫
■第二世代抗てんかん薬の副作用①
(小野寺 憲治/武者 利樹/若林 広行/神田 循吉/小島 奈穂美/海野 美千代/大槻 泰介/曽我 孝志)
≪巻頭言≫
精神科薬物療法における多剤・大量・長期使用に関する議論が盛んになってから久しい.おそらくわが国では非定型抗精神病薬の導入が始まった1990年代あたりからであったと思われるが,当初は単純に副作用の問題として扱う素朴な議論であり,それはそれでわかりやすさもあって盛んになっていった.しかし,その頃はまだエビデンスに基づいて議論するという風土も根付いておらず,有効性も含めた有用性で科学的・総合的に判断する必要があることの重要性まで考慮する姿勢は,近年になってようやく一般的になってきたところである.一方,過剰投与を問題視するあまり,過小治療も依然として大きい問題であることは,今日もあまり変わっていない.過剰でもない,過小でもない,真に適正な薬物療法のあり方は何かという問いに,ようやく冷静な目を向けられるようになってきたのも,この数年のことである.
適切な薬物療法を実施していくための処方行動の変化がなかなか進まない理由についても,これまでいろいろ議論されてきた.エビデンスを活用して処方を決定していく態度は,徐々に医療現場に浸透してきているので,経験だけによらない処方文化は今後改善していくであろう.しかし,精神疾患の治療に特有の要因もあり,それが改善の遅延の背景にあると考えられる.例えば,操作的診断が現場にも浸透したことにより,患者を症状の集合体のようにみなす傾向が強まり,さらに薬物療法は対症療法であるという考え方が加わると,症状の数だけ薬剤が必要という圧力が生じ,結果として多剤・大量処方に歯止めをかける動機づけが弱まることになる.同じく,近年は多彩な薬理学的プロファイルをもつ薬剤が増えて,各受容体機能の科学的解明も進み情報も豊富なので,症状の多彩さに合わせた薬理特性を得るため,“科学的・理論的”に多剤を組み合わせるという現象まで生じている.いずれも疾病観,薬物療法観の歪みから生じており,このような診断学・治療学の背景に存在している思考法の問題まで十分に検討し,変容させる方法論はあまり議論されてこなかった.
本特集を読むにあたっては,処方の問題点の指摘や改善の技術論にとどまらず,処方行動の裏に潜む治療哲学の問題まで意識しながら読み込んでいただければ幸いである.
石郷岡 純
CNS薬理研究所 主幹
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