目次
特集:β遮断薬 -これまで集積されたノウハウと薬物治療の最前線-
≪特集の目次≫
■特集にあたって(伊藤 浩)
■β遮断薬の基礎知識-剤形ごとにみた薬剤特性と使い分け-
・β遮断薬:経口剤(筒井 裕之)
・β遮断薬:注射剤(山下 武志)
・β遮断薬:貼付剤(髙橋 尚彦)
■β遮断薬の日米欧ガイドラインにおける位置づけとエビデンス
・高血圧(楽木 宏実)
・HFrEF(清水 渉)
・HFpEF(山本 一博)
・心筋梗塞(石原 正治)
・不整脈(池田 隆德)
・周術期(非心臓手術・心臓手術)(坂本 篤裕)
・抗がん薬による心毒性(大谷 規彰)
・敗血症(岡田 基)
■β遮断薬を使いこなす“ワザ”と“知恵”
・β遮断薬の投与量の考え方(小室 一成)
・β遮断薬の増減量と休止・再開の実践ポイント(樋口 義治)
・β遮断薬の剤形変更における投与設計と留意点(木原 康樹)
■小児・妊婦におけるβ遮断薬-いつ・どの患者に・どう使う?留意点は?-
・小児におけるβ遮断薬の考え方と使い方(堀米 仁志)
・妊婦におけるβ遮断薬の考え方と使い方(池田 智明)
■合併症を有する心不全におけるβ遮断薬のエビデンス
・COPD合併心不全とβ遮断薬(大西 勝也)
・糖尿病合併心不全とβ遮断薬(野出 孝一)
・CKD合併心不全とβ遮断薬(吉原 史樹)
■慢性心不全標準治療の次の一手“イバブラジン”を使いこなす(猪又 孝元)
≪シリーズ≫
■フォーミュラリー道場医薬品の適正使用を目指して 新連載
フォーミュラリーとは?
(安藤 正純/金井 紀仁)
■薬剤師が三ツ星シェフ 〜業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ〜
経静脈栄養組成の立案に必要な情報
-糖質(グルコース)その①-
(東 敬一朗)
■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
外来がん薬物療法のマネジメント実践
~副作用評価からメディカルレコードの書き方まで~
(川上 和宜)
■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
「Withコロナ」の時代を迎えて
~「オンライン会議」におけるコミュニケーションについて~
(中野 重行)
■薬剤師にもできる! 将来幸せに働くための投資講座 最終回
儲けるためじゃなく,豊かな気持ちで仕事をするために必要なこと
(桑原 秀徳)
≪Report≫
■がん化学療法誘発悪心・嘔吐の予防と治療②(内田 まやこ)
≪巻頭言≫
β遮断薬の歴史は古い。プロプラノロールが発売されたのは1966年である。最初の臨床応用は狭心症、頻脈性不整脈である。その後、高血圧、心筋梗塞、心不全、心臓突然死などに拡大されてきた。残念なことに、降圧薬としてはあまり降圧効果が強くないことと、インスリン抵抗性の悪化、徐脈や呼吸器系の副作用への懸念から、ガイドラインでは降圧薬の第一選択薬からは外されてしまった。β遮断薬の副作用が強調されたあまり、β遮断薬を恐れてほとんど使用しなくなったかかりつけ医も少なくない。そのような意味で、降圧薬の中で最も誤解されているものがβ遮断薬と言える。
しかし、循環器内科医になるとβ遮断薬のへの考えがまったく異なる。低心機能の心筋梗塞患者、収縮不全患者の生命予後を改善し、心臓突然死の予防にも有効であることから、“命を救う薬”そして循環器系の各種ガイドラインでは積極的な使用を推奨している。循環器診療の中で最もよく用いられる薬の一つと言える。近年増加している心房細動のレートコントロールにもβ遮断薬が推奨されている。
ただし、β遮断薬であれば何でもよいというわけではない。推奨されるβ遮断薬は2つである。β1選択性(心臓選択性)の最も強いビソプロロールとαβ遮断作用のあるカルベジロールである。この2剤はインスリン抵抗性を悪化したり、HbA1cを増加させることがない。さらに慢性閉塞性肺疾患(COPD)合併例にも安全に使用できることが知られている。意外に思うかもしれないが、β遮断薬はCOPDや気管支喘息に禁忌になったのは症例報告によるものであり1, 2)、それ以上の臨床的エビデンスはない。最近では、COPDを合併する心筋梗塞患者にβ遮断薬を投与すると生命予後が改善すること3)、β遮断薬がCOPDの急性増悪を予防することも報告されている4)。β遮断薬の副作用である徐脈に関しても誤解を解いておく必要がある。β遮断薬は交感刺激をブロックするものであり、洞結節や房室結節の本来の機能を抑制するものではない。したがって、β遮断薬で極端な徐脈になる症例は、もともと洞結節や房室結節が傷害されており、今後の臨床経過でペースメーカーが必要になる患者と考えた方がよい。
β遮断薬の剤形も経口剤だけではなく、β1選択性が高く作用時間が短い静注剤のランジオロール、貼付剤で血中濃度が安定しやすいビソノテープが出てきて用途に応じて使いやすくなった。本特集は今まで集積したβ遮断薬のノウハウと新しい剤形を含めて疾患ごとにβ遮断薬をどう使うかに関してエキスパートに解説していただくのが目的である。
引用文献
1.McNeill RS: Lancet, 2: 1101-1102, 1964. (PMID: 14207902)
2.Zaid G, et al: N Engl J Med, 275: 580-584, 1966. (PMID: 5920412)
3.Gottlieb SS, et al: N Engl J Med, 339: 489-497, 1998. (PMID: 9709041)
4. Farland MZ, et al: Ann Pharmacother, 47: 651-656, 2013. (PMID: 23585645)
岡山大学大学院医歯薬総合研究科 循環器内科学 教授
伊藤 浩
≪特集の目次≫
■特集にあたって(伊藤 浩)
■β遮断薬の基礎知識-剤形ごとにみた薬剤特性と使い分け-
・β遮断薬:経口剤(筒井 裕之)
・β遮断薬:注射剤(山下 武志)
・β遮断薬:貼付剤(髙橋 尚彦)
■β遮断薬の日米欧ガイドラインにおける位置づけとエビデンス
・高血圧(楽木 宏実)
・HFrEF(清水 渉)
・HFpEF(山本 一博)
・心筋梗塞(石原 正治)
・不整脈(池田 隆德)
・周術期(非心臓手術・心臓手術)(坂本 篤裕)
・抗がん薬による心毒性(大谷 規彰)
・敗血症(岡田 基)
■β遮断薬を使いこなす“ワザ”と“知恵”
・β遮断薬の投与量の考え方(小室 一成)
・β遮断薬の増減量と休止・再開の実践ポイント(樋口 義治)
・β遮断薬の剤形変更における投与設計と留意点(木原 康樹)
■小児・妊婦におけるβ遮断薬-いつ・どの患者に・どう使う?留意点は?-
・小児におけるβ遮断薬の考え方と使い方(堀米 仁志)
・妊婦におけるβ遮断薬の考え方と使い方(池田 智明)
■合併症を有する心不全におけるβ遮断薬のエビデンス
・COPD合併心不全とβ遮断薬(大西 勝也)
・糖尿病合併心不全とβ遮断薬(野出 孝一)
・CKD合併心不全とβ遮断薬(吉原 史樹)
■慢性心不全標準治療の次の一手“イバブラジン”を使いこなす(猪又 孝元)
≪シリーズ≫
■フォーミュラリー道場医薬品の適正使用を目指して 新連載
フォーミュラリーとは?
(安藤 正純/金井 紀仁)
■薬剤師が三ツ星シェフ 〜業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ〜
経静脈栄養組成の立案に必要な情報
-糖質(グルコース)その①-
(東 敬一朗)
■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
外来がん薬物療法のマネジメント実践
~副作用評価からメディカルレコードの書き方まで~
(川上 和宜)
■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
「Withコロナ」の時代を迎えて
~「オンライン会議」におけるコミュニケーションについて~
(中野 重行)
■薬剤師にもできる! 将来幸せに働くための投資講座 最終回
儲けるためじゃなく,豊かな気持ちで仕事をするために必要なこと
(桑原 秀徳)
≪Report≫
■がん化学療法誘発悪心・嘔吐の予防と治療②(内田 まやこ)
≪巻頭言≫
β遮断薬の歴史は古い。プロプラノロールが発売されたのは1966年である。最初の臨床応用は狭心症、頻脈性不整脈である。その後、高血圧、心筋梗塞、心不全、心臓突然死などに拡大されてきた。残念なことに、降圧薬としてはあまり降圧効果が強くないことと、インスリン抵抗性の悪化、徐脈や呼吸器系の副作用への懸念から、ガイドラインでは降圧薬の第一選択薬からは外されてしまった。β遮断薬の副作用が強調されたあまり、β遮断薬を恐れてほとんど使用しなくなったかかりつけ医も少なくない。そのような意味で、降圧薬の中で最も誤解されているものがβ遮断薬と言える。
しかし、循環器内科医になるとβ遮断薬のへの考えがまったく異なる。低心機能の心筋梗塞患者、収縮不全患者の生命予後を改善し、心臓突然死の予防にも有効であることから、“命を救う薬”そして循環器系の各種ガイドラインでは積極的な使用を推奨している。循環器診療の中で最もよく用いられる薬の一つと言える。近年増加している心房細動のレートコントロールにもβ遮断薬が推奨されている。
ただし、β遮断薬であれば何でもよいというわけではない。推奨されるβ遮断薬は2つである。β1選択性(心臓選択性)の最も強いビソプロロールとαβ遮断作用のあるカルベジロールである。この2剤はインスリン抵抗性を悪化したり、HbA1cを増加させることがない。さらに慢性閉塞性肺疾患(COPD)合併例にも安全に使用できることが知られている。意外に思うかもしれないが、β遮断薬はCOPDや気管支喘息に禁忌になったのは症例報告によるものであり1, 2)、それ以上の臨床的エビデンスはない。最近では、COPDを合併する心筋梗塞患者にβ遮断薬を投与すると生命予後が改善すること3)、β遮断薬がCOPDの急性増悪を予防することも報告されている4)。β遮断薬の副作用である徐脈に関しても誤解を解いておく必要がある。β遮断薬は交感刺激をブロックするものであり、洞結節や房室結節の本来の機能を抑制するものではない。したがって、β遮断薬で極端な徐脈になる症例は、もともと洞結節や房室結節が傷害されており、今後の臨床経過でペースメーカーが必要になる患者と考えた方がよい。
β遮断薬の剤形も経口剤だけではなく、β1選択性が高く作用時間が短い静注剤のランジオロール、貼付剤で血中濃度が安定しやすいビソノテープが出てきて用途に応じて使いやすくなった。本特集は今まで集積したβ遮断薬のノウハウと新しい剤形を含めて疾患ごとにβ遮断薬をどう使うかに関してエキスパートに解説していただくのが目的である。
引用文献
1.McNeill RS: Lancet, 2: 1101-1102, 1964. (PMID: 14207902)
2.Zaid G, et al: N Engl J Med, 275: 580-584, 1966. (PMID: 5920412)
3.Gottlieb SS, et al: N Engl J Med, 339: 489-497, 1998. (PMID: 9709041)
4. Farland MZ, et al: Ann Pharmacother, 47: 651-656, 2013. (PMID: 23585645)
岡山大学大学院医歯薬総合研究科 循環器内科学 教授
伊藤 浩
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