目次
特集:脱水症 -体液管理の基礎と実践総まとめ-
≪特集の目次≫
■特集にあたって(谷口 英喜)
■体液生理と体液異常の基礎知識(服部 益治)
■脱水への気づきと身体・検査所見の診かた・考え方(三宅 康史)
■経口補水液・電解質輸液の特徴と補液戦略
・ 経口補水療法(谷口 英喜)
・ 輸液療法(谷口 英喜)
■徹底解説! 体液管理と薬物療法の実践ポイントQ&A
・ 熱中症に注意すべき患者背景・リスク因子は?(神田 潤)
・ 脱水症を栄養面からどう予防する? 脱水症を予防する食生活とは?(上島 順子)
・ 在宅高齢者における体液管理はどう行えばよい?(林 良典 ほか)
・ 術前の経口補水療法と輸液療法はどう行う?(佐々木 俊郎)
・ 糖尿病患者の体液管理で留意すべきことは?
ケトアシドーシス・乳酸アシドーシスが起きたらどうすればよい?(川名 秀俊)
・ 統合失調症患者の体液管理で留意すべきことは?(花澤 朋樹 ほか)
・ がん化学療法中の体液管理で注意する点は? -嘔吐・下痢による脱水-(二村 昭彦)
■血管内脱水に留意すべき疾患の薬物療法と体液管理
・ うっ血性心不全(味岡 正純)
・ ネフローゼ症候群(濱田 千江子)
・ 肝性腹水・肝性脳症(中野 茂)
■Exercise
≪シリーズ≫
■フォーミュラリー道場 -医薬品の適正使用を目指して- 最終回
地域フォーミュラリーの展望と課題
(赤瀬 朋秀)
■薬剤師が三ツ星シェフ -業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ-
経静脈栄養に用いる輸液製剤 -ビタミン剤,微量元素製剤-
(東 敬一朗)
■毒舌妻と統計家 -臨床試験論文を読んでみる- 第9回
クラスターランダム化
(今井 匠/井出 和希)
■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
せん妄予防に対する薬学的介入について考える
(祖川 倫太郎)
■臨床薬物動態のPITFALL -その常識,ウソ? ホント?-
バンコマイシンのトラフ値が9.0mg/Lと低かったので,1日投与量2.0gは変えずに,
1日2回投与から1日4回投与にしてトラフ値上昇を提案した
(西 圭史/花井 雄貴/馬淵 匠)
≪巻頭言≫
地球温暖化および社会の高齢化に伴い,私たちは社会環境を変化させ対応を重ねてきた.その一方,私たちの体は容易に変化させることはできないために,さまざまな弊害が生じている.特に,本誌特集で取り上げた「脱水症」は,病気療養中に限らず,運動や暑熱環境下,さらには日常生活のなかにおいても私たちがなりうる病態の一つである.
脱水症とは,体液の不足により起こる身体の不調と定義される.体液には,体温調節,体内に酸素と栄養素を運び込む,体内で生じた老廃物を運び出す,という3つのはたらきがある.これら3つの体液のはたらきにより人体のホメオスタシス(恒常性)が維持される.その結果として,私たちは体を正常に機能させ,運動や学習のパフォーマンスを維持することができる.体液が不足した脱水症では,ホメオスタシスが維持できなくなり,体調が崩れる.
おそらく,読者のみなさんのうち,自分が脱水症にかかった自覚がある人は少ないであろう.ところが,私たちは,日常生活のなかで脱水症に近い状態あるいは脱水症になっていることがある.例えば,睡眠中は水分が失われ続け飲水もしないので寝起きは脱水状態である.入浴中は汗をかいたり皮膚から水分が奪われたりするので脱水状態である.前夜にアルコールを多飲した翌朝も,アルコールにより水分が奪われた脱水状態である.これだけ,日常生活のなかで脱水症と相対しているにもかかわらず,脱水症を自覚せず,治療のために受診することも少ないのはなぜであろう.その理由は,脱水症科を称する医療従事者がいないことにあると筆者は考えている.脱水症科があれば,患者も脱水症になったから脱水症科を受診しようと考えるであろう.医療従事者が脱水症科を称しない理由は,すべての治療時に,初期治療として当たり前に脱水症に対する輸液療法が実施されているためと考えられる.一方で脱水症の概念を医療従事者以外において浸透させることで,さまざまな病気発病の予防につながると考える.
薬物治療における脱水症の存在は治療継続コンプライアンスおよび薬剤効果に不利に働く.脱水症においては,薬剤の血中濃度が高まり,副作用が強く出やすい状態となる(文献1).同様に,薬剤の毒性による腎障害のリスクが高まる(文献2).そして,薬物治療中に脱水症が起きると,食欲低下,悪心・嘔吐,下痢, 便秘, 倦怠感,および発熱などを生じて治療を中断せざるを得ない場合がある.さらには,これらの脱水症状が薬物の副作用とも類似しているために,治療現場に混乱を招くことになる(文献3).つまり治療中の体液動向をモニタリングし,変動が生じた場合にすぐに適切な対応をとることで,薬物治療のコンプライアンスが維持され,治療効果が高まり,副作用発現の頻度を低下させることができる.
本特集における執筆陣は,いずれも体液管理のエキスパートで,さまざまな分野を専門としている.本特集を読むことで,脱水症を身近に感じ,予防・治療および対応をしっかりと理解できるものと確信する.脱水症は病気治療中ばかりでなく日常生活のなかにもみられ,適切な対策で防ぐことができる病気でもある.本特集を読み終わり,薬剤師からも,脱水症対策の重要性を発信していただけることを期待したい.
引用文献
1)日本リウマチ学会編:関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2016年改訂版,羊土社,2016.
2)日本腎臓学会ほか編:がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016,ライフサイエンス出版,2016.
3)郷 真貴子ほか:医療薬学,44 : 280-287,2018.
済生会横浜市東部病院 患者支援センター センター長
谷口 英喜
≪特集の目次≫
■特集にあたって(谷口 英喜)
■体液生理と体液異常の基礎知識(服部 益治)
■脱水への気づきと身体・検査所見の診かた・考え方(三宅 康史)
■経口補水液・電解質輸液の特徴と補液戦略
・ 経口補水療法(谷口 英喜)
・ 輸液療法(谷口 英喜)
■徹底解説! 体液管理と薬物療法の実践ポイントQ&A
・ 熱中症に注意すべき患者背景・リスク因子は?(神田 潤)
・ 脱水症を栄養面からどう予防する? 脱水症を予防する食生活とは?(上島 順子)
・ 在宅高齢者における体液管理はどう行えばよい?(林 良典 ほか)
・ 術前の経口補水療法と輸液療法はどう行う?(佐々木 俊郎)
・ 糖尿病患者の体液管理で留意すべきことは?
ケトアシドーシス・乳酸アシドーシスが起きたらどうすればよい?(川名 秀俊)
・ 統合失調症患者の体液管理で留意すべきことは?(花澤 朋樹 ほか)
・ がん化学療法中の体液管理で注意する点は? -嘔吐・下痢による脱水-(二村 昭彦)
■血管内脱水に留意すべき疾患の薬物療法と体液管理
・ うっ血性心不全(味岡 正純)
・ ネフローゼ症候群(濱田 千江子)
・ 肝性腹水・肝性脳症(中野 茂)
■Exercise
≪シリーズ≫
■フォーミュラリー道場 -医薬品の適正使用を目指して- 最終回
地域フォーミュラリーの展望と課題
(赤瀬 朋秀)
■薬剤師が三ツ星シェフ -業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ-
経静脈栄養に用いる輸液製剤 -ビタミン剤,微量元素製剤-
(東 敬一朗)
■毒舌妻と統計家 -臨床試験論文を読んでみる- 第9回
クラスターランダム化
(今井 匠/井出 和希)
■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
せん妄予防に対する薬学的介入について考える
(祖川 倫太郎)
■臨床薬物動態のPITFALL -その常識,ウソ? ホント?-
バンコマイシンのトラフ値が9.0mg/Lと低かったので,1日投与量2.0gは変えずに,
1日2回投与から1日4回投与にしてトラフ値上昇を提案した
(西 圭史/花井 雄貴/馬淵 匠)
≪巻頭言≫
地球温暖化および社会の高齢化に伴い,私たちは社会環境を変化させ対応を重ねてきた.その一方,私たちの体は容易に変化させることはできないために,さまざまな弊害が生じている.特に,本誌特集で取り上げた「脱水症」は,病気療養中に限らず,運動や暑熱環境下,さらには日常生活のなかにおいても私たちがなりうる病態の一つである.
脱水症とは,体液の不足により起こる身体の不調と定義される.体液には,体温調節,体内に酸素と栄養素を運び込む,体内で生じた老廃物を運び出す,という3つのはたらきがある.これら3つの体液のはたらきにより人体のホメオスタシス(恒常性)が維持される.その結果として,私たちは体を正常に機能させ,運動や学習のパフォーマンスを維持することができる.体液が不足した脱水症では,ホメオスタシスが維持できなくなり,体調が崩れる.
おそらく,読者のみなさんのうち,自分が脱水症にかかった自覚がある人は少ないであろう.ところが,私たちは,日常生活のなかで脱水症に近い状態あるいは脱水症になっていることがある.例えば,睡眠中は水分が失われ続け飲水もしないので寝起きは脱水状態である.入浴中は汗をかいたり皮膚から水分が奪われたりするので脱水状態である.前夜にアルコールを多飲した翌朝も,アルコールにより水分が奪われた脱水状態である.これだけ,日常生活のなかで脱水症と相対しているにもかかわらず,脱水症を自覚せず,治療のために受診することも少ないのはなぜであろう.その理由は,脱水症科を称する医療従事者がいないことにあると筆者は考えている.脱水症科があれば,患者も脱水症になったから脱水症科を受診しようと考えるであろう.医療従事者が脱水症科を称しない理由は,すべての治療時に,初期治療として当たり前に脱水症に対する輸液療法が実施されているためと考えられる.一方で脱水症の概念を医療従事者以外において浸透させることで,さまざまな病気発病の予防につながると考える.
薬物治療における脱水症の存在は治療継続コンプライアンスおよび薬剤効果に不利に働く.脱水症においては,薬剤の血中濃度が高まり,副作用が強く出やすい状態となる(文献1).同様に,薬剤の毒性による腎障害のリスクが高まる(文献2).そして,薬物治療中に脱水症が起きると,食欲低下,悪心・嘔吐,下痢, 便秘, 倦怠感,および発熱などを生じて治療を中断せざるを得ない場合がある.さらには,これらの脱水症状が薬物の副作用とも類似しているために,治療現場に混乱を招くことになる(文献3).つまり治療中の体液動向をモニタリングし,変動が生じた場合にすぐに適切な対応をとることで,薬物治療のコンプライアンスが維持され,治療効果が高まり,副作用発現の頻度を低下させることができる.
本特集における執筆陣は,いずれも体液管理のエキスパートで,さまざまな分野を専門としている.本特集を読むことで,脱水症を身近に感じ,予防・治療および対応をしっかりと理解できるものと確信する.脱水症は病気治療中ばかりでなく日常生活のなかにもみられ,適切な対策で防ぐことができる病気でもある.本特集を読み終わり,薬剤師からも,脱水症対策の重要性を発信していただけることを期待したい.
引用文献
1)日本リウマチ学会編:関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2016年改訂版,羊土社,2016.
2)日本腎臓学会ほか編:がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016,ライフサイエンス出版,2016.
3)郷 真貴子ほか:医療薬学,44 : 280-287,2018.
済生会横浜市東部病院 患者支援センター センター長
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