目次
特集:『徹底理解! 鎮痛補助薬 ―基礎・臨床に裏付けられた効果とその限界―』
≪特集の目次≫
■特集にあたって(成田 年)
■座談会 鎮痛補助薬とは? その理解と意義(成田 年/井関 雅子/服部 政治)
■がんの痛みの分子理解(鈴木 雅美 ほか)
■神経障害性疼痛をはじめとした非がん性疼痛発現機序の統合的分子理解(葛巻 直子 ほか)
■鎮痛薬の作用を理解するための薬理―主要な神経伝達物質とその受容体―(髙田 朋彦 ほか)
■鎮痛補助薬に対するガイドライン活用時の留意点(尾堂 公彦 ほか)
■疼痛治療における鎮痛補助薬の有効性と限界
・抗てんかん薬:興奮性神経遮断薬(伊勢 雄也 ほか)
・抗てんかん薬:抑制性神経活性化薬(佐野 元彦 ほか)
・三環系抗うつ薬(吉澤 一巳 ほか)
・SSRI・SNRI・NaSSA(中川 貴之)
・抗精神病薬(徳山 尚吾 ほか)
■投与経路を考慮したこれからの疼痛治療:脊髄鎮痛法(服部 政治 ほか)
■これから期待される鎮痛補助薬の開発(西須 大徳 ほか)
■日本緩和医療薬学会・日本緩和医療学会が目指す“疼痛コントロール”と薬剤師の寄与(加賀谷 肇)
■Exercise
≪TOPICS≫
・アミオダロンは男性の発がんリスクを増加させる?
・経口リン酸製剤ホスリボンⓇ配合顆粒が登場した意義は大きい!
・高齢者の服薬支援におけるワンポイント!とろみ剤や服薬補助ゼリーはどれを使う!?
・ESBL産生菌の菌血症にβ-ラクタム/β-ラクタマーゼ阻害薬配合剤は有益!?
・1型糖尿病への積極的アプローチ:インターロイキン-1拮抗薬への期待
≪シリーズ≫
■徹底理解! 添付文書にある情報・ない情報
(堀 里子/三木 晶子/澤田 康文)
■目指せ感染症マスター! 抗菌薬処方支援の超実践アプローチ
急な意識障害と発熱,循環動態不全に陥った入院患者
(山田 和範/岸田 直樹)
■メディカル・アプリ情報室
添付文書は医薬品情報の宝箱 ―添付文書Pro―
(渋谷 正則)
■Pharm.D.を取り巻く 医療環境レポート
・放射性トレーサーによって検出される閉鎖式薬物移送システムからの漏出
・薬剤誘発性の高熱の診断と治療
(木村 利美 ほか)
■認定薬剤師研修の広場
指導薬剤師のためのプリセプターシップ
(野呂瀬 崇彦)
≪座談会「治療」「薬局」「Rp.レシピ」合同座談会≫
■インクレチン関連薬の登場で新たなステージを迎えた2型糖尿病の薬物治療 第2回
・経口薬使用にもかかわらずコントロール不良な患者への対策
(金森 晃/寺内 康夫/厚田 幸一郎)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
≪特集にあたって≫
がん性疼痛や非がん性疼痛などの「痛み」のコントロールは,まさに国をあげて行うべき最重要課題の医療政策である.ペインクリニシャンや緩和医療に携わる医療人の努力もあり,昨今は痛み治療に対する意識は高くなってはきているものの,いまだ痛みの医療が不十分であることは明白である.こうした背景には,「痛み」が抱える複雑な背景や,個人差,あるいは痛みを客観的かつ定量的に捉えることが難しいといった理由があげられる.
最近の基礎研究の成果により,痛みの放置や我慢は,痛みを難治化させるだけではなく,二次的な負の副産物,たとえば,炎症の増悪や免疫機能の低下,情動障害を生み,挙げ句には寿命にさえ影響を与えることが明らかにされてきている.慢性的な痛み刺激や激痛は,細胞レベル,遺伝子発現レベルに影響を与え,これがやがて「痛み細胞記憶」となり,患部の治癒とは乖離して,常に負のメッセージを個体に送り続けることになる.現代社会においては,痛みを我慢することが正義なのではなく,痛みの初期消火こそが,賢明な選択なのである.
がん性疼痛治療の首座に位置するのは医療用麻薬であるが,それだけではおさまらない痛みも多く,一方,非がん性疼痛治療では,医療用麻薬の選択はそれほど積極的には行なわれていない.そうした難治性の痛みには「鎮痛補助薬」が使われるケースが多い.「鎮痛補助薬」とは,本来個々に別途の承認適応があり,痛みへの使用は承認適応外となるケースが多い.鎮痛補助薬は鎮痛薬には分類されておらず,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や医療用麻薬に抵抗性を示す痛みに効果がある.一般に,鎮痛補助薬として,コルチコステロイド薬,抗うつ薬,抗てんかん薬,NMDA受容体拮抗薬,平滑筋弛緩薬,骨格筋弛緩薬,ビスホスホネート薬などがあげられるが,これらは鎮痛薬と一緒に使用した際にのみ効果があるということではなく,多くの状況下において,それぞれ単独で鎮痛作用を示し,他薬の副作用を軽減できる能力を持ち合わせる.鎮痛補助薬の作用メカニズムとしては,カテコールアミン活性化作用,ナトリウムチャネル阻害作用,カルシウムチャネル阻害作用,GABA神経賦活作用,NMDA受容体阻害作用などがあげられる.こうした薬物の治療アルゴリズムは比較的固定化されつつあるが,いまだ十分に痛みが取れない患者も多くみられ,グリア細胞修飾阻害薬を含め,新規の作用機序をもった新薬の開発が待たれている.
さて,本特集にあたっては,まず,臨床現場において鎮痛補助薬の統合的理解を得るために,フランクな座談会を行ったので,その様子を巻頭に掲載させていただいた.議論していくなかで共通認識があったが,そのあたりも鎮痛補助薬を理解するうえで参考にしていただきたい.また,痛みの分子理解を促すために,精通した先生方に痛み発現のメカニズムを丁寧に解説していただいた.本論である鎮痛補助薬については,機序別に薬物群を括り,それぞれの特徴を,新進気鋭の医師,薬剤師,基礎研究者の先生方に詳細に解説していただいた.さらには,緩和医療の実態について,日本緩和医療薬学会代表理事である加賀谷先生に言及していただいた.これまでの“柔らかい”鎮痛補助薬についての書籍などとは少しアングルが違う特集となったが,より現実的にこれらの薬物群の実態を掌握するために,本特集がその一助となることを,執筆者一同,心より望んでいる次第である.
成田 年 星薬科大学薬理学教室 教授
≪特集の目次≫
■特集にあたって(成田 年)
■座談会 鎮痛補助薬とは? その理解と意義(成田 年/井関 雅子/服部 政治)
■がんの痛みの分子理解(鈴木 雅美 ほか)
■神経障害性疼痛をはじめとした非がん性疼痛発現機序の統合的分子理解(葛巻 直子 ほか)
■鎮痛薬の作用を理解するための薬理―主要な神経伝達物質とその受容体―(髙田 朋彦 ほか)
■鎮痛補助薬に対するガイドライン活用時の留意点(尾堂 公彦 ほか)
■疼痛治療における鎮痛補助薬の有効性と限界
・抗てんかん薬:興奮性神経遮断薬(伊勢 雄也 ほか)
・抗てんかん薬:抑制性神経活性化薬(佐野 元彦 ほか)
・三環系抗うつ薬(吉澤 一巳 ほか)
・SSRI・SNRI・NaSSA(中川 貴之)
・抗精神病薬(徳山 尚吾 ほか)
■投与経路を考慮したこれからの疼痛治療:脊髄鎮痛法(服部 政治 ほか)
■これから期待される鎮痛補助薬の開発(西須 大徳 ほか)
■日本緩和医療薬学会・日本緩和医療学会が目指す“疼痛コントロール”と薬剤師の寄与(加賀谷 肇)
■Exercise
≪TOPICS≫
・アミオダロンは男性の発がんリスクを増加させる?
・経口リン酸製剤ホスリボンⓇ配合顆粒が登場した意義は大きい!
・高齢者の服薬支援におけるワンポイント!とろみ剤や服薬補助ゼリーはどれを使う!?
・ESBL産生菌の菌血症にβ-ラクタム/β-ラクタマーゼ阻害薬配合剤は有益!?
・1型糖尿病への積極的アプローチ:インターロイキン-1拮抗薬への期待
≪シリーズ≫
■徹底理解! 添付文書にある情報・ない情報
(堀 里子/三木 晶子/澤田 康文)
■目指せ感染症マスター! 抗菌薬処方支援の超実践アプローチ
急な意識障害と発熱,循環動態不全に陥った入院患者
(山田 和範/岸田 直樹)
■メディカル・アプリ情報室
添付文書は医薬品情報の宝箱 ―添付文書Pro―
(渋谷 正則)
■Pharm.D.を取り巻く 医療環境レポート
・放射性トレーサーによって検出される閉鎖式薬物移送システムからの漏出
・薬剤誘発性の高熱の診断と治療
(木村 利美 ほか)
■認定薬剤師研修の広場
指導薬剤師のためのプリセプターシップ
(野呂瀬 崇彦)
≪座談会「治療」「薬局」「Rp.レシピ」合同座談会≫
■インクレチン関連薬の登場で新たなステージを迎えた2型糖尿病の薬物治療 第2回
・経口薬使用にもかかわらずコントロール不良な患者への対策
(金森 晃/寺内 康夫/厚田 幸一郎)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
≪特集にあたって≫
がん性疼痛や非がん性疼痛などの「痛み」のコントロールは,まさに国をあげて行うべき最重要課題の医療政策である.ペインクリニシャンや緩和医療に携わる医療人の努力もあり,昨今は痛み治療に対する意識は高くなってはきているものの,いまだ痛みの医療が不十分であることは明白である.こうした背景には,「痛み」が抱える複雑な背景や,個人差,あるいは痛みを客観的かつ定量的に捉えることが難しいといった理由があげられる.
最近の基礎研究の成果により,痛みの放置や我慢は,痛みを難治化させるだけではなく,二次的な負の副産物,たとえば,炎症の増悪や免疫機能の低下,情動障害を生み,挙げ句には寿命にさえ影響を与えることが明らかにされてきている.慢性的な痛み刺激や激痛は,細胞レベル,遺伝子発現レベルに影響を与え,これがやがて「痛み細胞記憶」となり,患部の治癒とは乖離して,常に負のメッセージを個体に送り続けることになる.現代社会においては,痛みを我慢することが正義なのではなく,痛みの初期消火こそが,賢明な選択なのである.
がん性疼痛治療の首座に位置するのは医療用麻薬であるが,それだけではおさまらない痛みも多く,一方,非がん性疼痛治療では,医療用麻薬の選択はそれほど積極的には行なわれていない.そうした難治性の痛みには「鎮痛補助薬」が使われるケースが多い.「鎮痛補助薬」とは,本来個々に別途の承認適応があり,痛みへの使用は承認適応外となるケースが多い.鎮痛補助薬は鎮痛薬には分類されておらず,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や医療用麻薬に抵抗性を示す痛みに効果がある.一般に,鎮痛補助薬として,コルチコステロイド薬,抗うつ薬,抗てんかん薬,NMDA受容体拮抗薬,平滑筋弛緩薬,骨格筋弛緩薬,ビスホスホネート薬などがあげられるが,これらは鎮痛薬と一緒に使用した際にのみ効果があるということではなく,多くの状況下において,それぞれ単独で鎮痛作用を示し,他薬の副作用を軽減できる能力を持ち合わせる.鎮痛補助薬の作用メカニズムとしては,カテコールアミン活性化作用,ナトリウムチャネル阻害作用,カルシウムチャネル阻害作用,GABA神経賦活作用,NMDA受容体阻害作用などがあげられる.こうした薬物の治療アルゴリズムは比較的固定化されつつあるが,いまだ十分に痛みが取れない患者も多くみられ,グリア細胞修飾阻害薬を含め,新規の作用機序をもった新薬の開発が待たれている.
さて,本特集にあたっては,まず,臨床現場において鎮痛補助薬の統合的理解を得るために,フランクな座談会を行ったので,その様子を巻頭に掲載させていただいた.議論していくなかで共通認識があったが,そのあたりも鎮痛補助薬を理解するうえで参考にしていただきたい.また,痛みの分子理解を促すために,精通した先生方に痛み発現のメカニズムを丁寧に解説していただいた.本論である鎮痛補助薬については,機序別に薬物群を括り,それぞれの特徴を,新進気鋭の医師,薬剤師,基礎研究者の先生方に詳細に解説していただいた.さらには,緩和医療の実態について,日本緩和医療薬学会代表理事である加賀谷先生に言及していただいた.これまでの“柔らかい”鎮痛補助薬についての書籍などとは少しアングルが違う特集となったが,より現実的にこれらの薬物群の実態を掌握するために,本特集がその一助となることを,執筆者一同,心より望んでいる次第である.
成田 年 星薬科大学薬理学教室 教授
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