特集:夏休みだからこそできる理科の学び
夏休みの効果的な指導や支援とは
「子どもたちの主体性を育てるために、夏休みの宿題を廃止する」
そのような決断を下した学校が全国的に増えてきています。夏休みに宿題が出ることが当たり前だった世代からは様々な声が噴出し、世間を賑わせているようです。「宿題がないと困る」という声もあれば、「宿題がない分、充実した時間を過ごせた」という声も聞かれます。
夏休みの宿題の是非についてはさておき、「夏休み中の学び」についての課題を認識し、どのように向き合っているのかを語れる理科教師であってほしいと思います。
夏休みの恒例であった「自由研究」は、学校で出される夏休みの宿題であるとともに、文字通り、子どもが自分の興味や関心に基づいて自由に主体性を発揮させながら、探究活動を進めることをねらいとしています。しかしながら実際は、自身が子どもの頃の経験をもつ保護者も参加し、子育て世代の家庭にとっての一大イベントとなっているようです。このような夏休みの理科の学びに対し、理科教師は何をしたらよいのでしょうか。「宿題を出して終わり」となってはいけないはずです。
さて、宿題廃止の理由にも挙げられている「主体性」ですが、「主体性」が勝手に育つことはないでしょう。宿題を出す場合も、その宿題を主体的に行う機会をとったり、夏休み明けには、宿題への取り組みを振り返る形成的な評価の場面を設定したりする必要があるのではないでしょうか。
夏休み中の理科の学びはもちろん「自由研究」だけではありません。子どもたちに付けたい力も「主体性」だけではないでしょう。調べ学習やワークなどを通して、知識の習 得や学習の習慣性・計画性の育成を目指すためには、「指導→支援→評価」の一連の指導計画が不可欠です。しかし、夏休み中は、教師が直接子どもたちを指導する機会は減るため、その指導方法や指導過程には工夫が必要です。コロナ禍を経て、1人1台端末を用 いた情報活用能力の育成も進んできています。夏休み中に限らず、授業外で取り組む宿題に関しても、遠隔教育システムを用いて家庭学習を支援する事例を日常的に目にするようになってきました。そんな学校の変革期において、夏休み中の宿題やその取り組み方、子どもたちを支援する方法も進化すべきなのではないでしょうか。
そこで本特集では、子ども任せ、保護者任せではなく、学校(教師)が力強い指導と評価を行う夏休み中の理科の学習及び子どもへの支援の事例を紹介します。明日から夏休みを迎える子どもたちに向けた学期最後の授業で、理科教師は何を語るべきでしょうか。そ して、休み明けの子どもたちの成長にどのような評価ができるでしょうか。
前述した通り、昨今様々な理由から夏休み中の宿題の減少傾向が見られますが、宿題を出す責任だけでなく、出さない責任ももちろんあります。夏休みだからこそできる「過ごし方」を子どもたちに示すことができれば、夏休みでしか得られない成長した姿を見ることができるでしょう。
(『理科の教育』編集委員会)
(以下、目次)-------------------------------------------------
理科の教育
令和8年6月号
通巻887号
2026/Vol.75
【特集】
夏休みだからこそできる理科の学び
■夏休み中の学びに対する効果的なサポート例(小学校)
●「自然に親しみ」から始まる夏休みの理科の学び
-夏休みの学びの問題点をチャンスに変えて- 舘 英樹5
●自由研究って,こんなに楽しい!-佐賀大学探究お助け隊による「自由研究お助け隊2025」- 後藤 大二郎8
●動物園で目いっぱい楽しんで学ぼう
-遊んでいたら動物博士に!?- 金尾 由恵11
●自由研究を「自由」にしないために
-夏休み中の学びを支える事前指導- 大﨑 雄平14
●児童が主体的に取り組むための自由研究の指導法
-夏休みに小さな科学者になろう- 古川 祐子17
■夏休み中の学びに対する効果的なサポート例(中学校)
●子どもが主体的に学ぶことのできる「自由研究」に取り組ませる意義-「中学校教師の立場」と「小学生の保護者の立場」としての意義- 吉田 はるか20
●自由研究のテーマ設定を支える授業実践
-探究の長期性に着目した課題設定支援- 杉本 覚23
●夏休み課題を通した段階的な探究力の育成
-中学校での実践例を基にした考察- 小坂 那緒子・落丸 武彦26
●スライド5枚で「検証チャレンジ」 芝 直輝29
●生徒が日常生活について自由研究するための指導と支援-これまでの取り組みとGIGA スクール構想下における今後の展望- 窪田 和久32
●家の近くでマイフィールド観察-「学校内の学び」から「日常生活での学び」への転換を目指して- 河野 晃35
■夏休み中の学びに対する効果的なサポート例(高等学校)
●「SSH 地球科学」における探究活動支援と教材研究のサイクル-生徒エージェンシーの特性から考える持続可能な指導の在り方- 齊藤 洋輔38
●主体的な探究活動を支える夏休みの取り組み-研究指導・発表会参加・相互助言で研究を深める実践事例- 矢崎 貴紀41
●探究プログラム「サイエンスツアー」の実践-夏休みを活用して「実物に触れ,調査する」経験として- 相馬 朱里44
連載講座
●『理科教育学研究』を授業に生かす
相互評価活動と定型化指導を取り入れた考察指導-定型化フレームの効果の検討
山内 慎也・郡司 賀透・飯田 寛志・後藤 顕一 48
●教材研究一直線
全自動天体写真儀を使った天体写真① 田中 千尋 50
●概念構築を目指した探究型授業
~季節によって見える星座がなぜ変わるのか~
地球の公転の学習で身に付けた知識・技能を基に 荒尾 真一 52
●先生はサイエンスマジシャンNEXT
だまされるな! 不思議な三角形の面積 辻本 昭彦 54
学会通信 56
全国大会案内 58
次号予告 64
目次
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