特集:身近な素材で理科授業-理科の楽しさや学びを引き出す工夫-
理科の楽しさや本質に迫る授業づくりに向けて
理科の学習では、観察や実験を通して自然の事物・現象を直接的に捉え、科学的に考察する活動が欠かせません。しかし、実験器具や材料の準備には多くの時間や費用がかかり、学校現場では十分な環境を整えるこ とが難しい場合もあります。その結果、実験が演示にとどまったり、個々の子どもが主体的に操作・観察する機会が限られたりすることがないでしょうか。
身の回りの日用品には、理科の原理や法則を体験的に理解する手がかりとなるものが数多く存在します。 例えば、ペットボトルやストロー、アルミホイル、輪ゴム、紙コップなどは、空気や水、力、光、電気などの性質を探る実験に活用できます。これらの素材は容易に手に入り、安全で、子どもが家庭でも再現可能であるという利点をもちます。そのため、学校と生活の垣根を越えた科学的な学びの広がりも期待できます。理科は「特別な場所で行う難しい学問」ではなく、「自分たちの生活の中にある科学」であるという認識にもつながるでしょう。
また、日用品を使った授業では、子どもが自分の経験や発想を生かして「こうしてみたい」「これも試してみよう」と主体的に学びを深めやすいというよさもあります。実験がうまくいかないことも含めて、現象を自分の手で確かめる過程が科学的な思考の育成につながります。
日常生活の中で見慣れたものを使うことで、科学的な捉え方を育む活動の工夫、子どもが自ら材料を選び、試行錯誤しながら現象を調べる過程の重視、家庭や地域での学びへとつながる理科学習の推進など、様々な展開が考えられます。
例えば、小学校3年生の昆虫の観察ではモンシロチョウ等の幼虫を育てますが、虫かごではなく、「ふた付きカップ」に穴をあけ、1人1つずつMy幼虫として卵から観察していくという事例が広く知られています。また、中・高においては、100円で複数個購入できる 発泡スチロール球を天体模型として活用する事例があります。
そこで本特集では、「身近な素材で理科授業」というテーマの下、高価な器具や特別な環境がなくても、子どもが自然の事物・現象への興味を高め、科学的に考えることができる理科授業の在り方を探ります。教師の発想と工夫によって、理科の楽しさや学びを十分に引き出す実践を紹介します。
本特集を通して、身近な素材を活用した理科授業を充実させる工夫を共有し、理科の楽しさや本質に迫る授業づくりについて考えたいです。
(『理科の教育』編集委員会)
(以下、目次)------------------------------------
理科の教育
令和8年11月号
通巻892号
2026/Vol.75
【特集】
身近な素材で理科授業
-理科の楽しさや学びを引き出す工夫-
■身近な素材を活用して学びを深める工夫
●現代の学びに応える授業者の工夫
-身近な素材でひらく探究の入口- 荒尾 真一5
●理科室にある身近な素材を活用した教材づくり
-豆電球・発光ダイオードで何ができるか- 平島 由美子9
■身近な素材や安価な道具を活用した授業実践(小学校)
●食材を理科的な認識枠組みで捉え直す教材研究と実践
-諸感覚で探る「やさい」のからだのつくり- 野村 優成13
●生活素材を活用した教材づくり-子どもがより身近に感じることができる教材の提案- 河野 亮汰・福岡 亮治・亀田 直記16
●身近な素材を活用したメダカの飼育,観察の工夫
-小学校第5学年「動物の誕生」の実践から- 近藤 新樹19
●理解を深めるための主体的活動を引き出す教材の工夫-第5学年「メダカのたんじょう」・第6学年「私たちの生活と電気」の実践例- 松本 健吾22
●身近な素材で「児童の気付きと実感」を促す観察・実験の工夫-100円ショップや日用品を活用した小学校第5・6学年の授業実践- 雨宮 正倫25
■身近な素材や安価な道具を活用した授業実践(中学校)
●日常の「ズレ」から科学的な探究を深める理科授業の展開
-身近な素材を「科学の目」で捉え直す工夫- 結解 武宏28
●「地球と宇宙」の単元における時間的・空間的な見方を高める工夫-1人1台「地球くん」の実践を通して- 森 泰一31
●水に溶けない粘土と半分ずつ塗られたボールなど-様々な用途に使える浴室用
パテとHigh-Bounce Ball など- 田村 響太郎34
●誰でも作れる,みんなでできる凸レンズの働き実験器
-安価な材料と3Dプリンタを活用して- 佐藤 雄紀37
■身近な素材や安価な道具を活用した授業実践(高等学校)
●身近な道具で目に見えない光の波長を測定する 山村 寿彦40
●授業のワンポイントで活用できる地学基礎のミニ実験集-1コマの授業の中に,多くの実験・実習を取り入れるために- 佐藤 誠43
連載講座
●『理科教育学研究』を授業に生かす
デジタル教材と博物館を活用したこれからの地学学習
-デジタルと体験との連動から探究的な学びを目指して- 丹羽 美春 46
これからの学校教育における火山活動取り扱い―GNSS火山観測システムの理解を目指した授業の提案― 佐藤 真太郎 48
●教材研究一直線
ふしぎ! 砂鉄すごろく 田中 千尋 50
●概念構築を目指した探究型授業
~プロンプターの見え方を複数の光線で説明~「光⑥」
目に入る光の延長上に物体が見えるという概念を使って 荒尾 真一 52
●理科Manabiコネクション
「モーターはどうして回るの?」 小野寺 貴子・萓野 大樹 54
●先生はサイエンスマジシャンNEXT
錦江湾のうんまか深海魚 辻本 昭彦 56
●理科とわたしの仕事
花火の色と,わたしの仕事の原点 竹本 江里子 58
学会通信 59
オンライン
全国大会案内 62
次号予告 64
目次
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