◆座談会 養育費と履行の確保
棚村 政行(早稲田大学法学学術院教授)【司会】
中山 直子(千葉家庭裁判所部総括判事)
榊原富士子(弁護士)
佐野みゆき(弁護士・家事調停委員)
村山由希子(明石市政策局政策法務担当課長・弁護士)
長谷川哲也(養育費相談支援センター副センター長)
◆法務省「養育費不払い解消に向けた検討会議」中間取りまとめの概要 法務省民事局付
高橋あゆみ
◆論 説
・東京家庭裁判所における子の引渡しの強制執行事件の運用について
村井壯太郎(東京家庭裁判所判事)
・手続代理人から見た面会交流調停
福市 航介(弁護士)
◆最高裁判例(1件)
民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」の意義
(最二小判令和元年8月9日 執行文付与に対する異議事件)
(参考)原 審 大阪高等裁判所平成30年6月15日判決
謔P審 大阪地方裁判所平成29年10月18日判決
◆家事関係裁判(8件)
・性同一性障害と診断された戸籍上の性別が男性である申立人が,男性名から女性名への名の変更許可を申し立てた事案において,原審は,申立人が変更を求める女性名が,通称として永年使用され社会的に定着しているとは認められず,申立人がホルモン治療等を行わなかったなどの通院治療の状況等を併せて考慮し,名を変更することにつき正当な事由があるとは認められないとして申立てを却下したのに対し,抗告審は,申立人が心療内科・精神科に約1年半通院して,医師2名から性同一性障害の診断ガイドラインに沿った診断の結果,性同一性障害であることの診断を得ていることなどから,正当な事由があると認められると判断し,原審を取り消して申立てを許可した事例
(大阪高決令和元年9月18日 名の変更許可申立却下審判に対する抗告事件)
(参考)原 審 大阪家庭裁判所令和元年7月22日審判
・本人の長男が後見開始の申立てをした事案において,原審は,本人につき,後見開始相当との診断書があるものの,同診断書は一方で発語不能としながら,他方で言語による意思疎通が可能ともしており,明らかな矛盾があることなどから,その信用性に疑義があり,後見開始相当の常況にあるか否かを判断するためには鑑定を実施する必要があるが,本人から鑑定に対する協力が得られる見込みがないとして申立てを却下したのに対し,抗告審は,上記診断書の矛盾した記載は単なる誤記にすぎず,同診断書やHDS─Rの結果等によれば,本人が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあると認められるとして原審を取り消した上,成年後見人の選任につき,更に審理を尽くさせる必要があるとして,審理を差し戻した事例
(大阪高決令和元年9月4日 後見開始の申立却下審判に対する抗告事件)
(参考)原 審 京都家庭裁判所令和元年7月4日審判
・実母による虐待を受けていた児童につき,児童相談所長が家庭裁判所に対して児童を里親若しくは小規模住居型児童養育事業を行う者に委託し又は児童養護施設に入所させることの承認を求めたところ,児童と養子縁組をした実母の母による監護養育をさせても著しく児童の福祉を害するということはできないとして申立てを却下した審判に対し,児童を養母に引き渡した場合,実母が再び児童に対し不適切な監護をすることを養母が阻止したり是正したりすることが期待できず,児童の福祉を害するといえるとして,原審判を取り消し,児童相談所長の申立てを認容した事例
(大阪高決令和元年6月26日 児童福祉施設入所承認申立却下審判に対する抗告事件)
(参考)原 審 和歌山家庭裁判所平成31年3月20日審判
・性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づき戸籍の性別を男から女に変更する審判を求めた事案で,抗告人は,「現に婚姻をしていないこと」を性同一性障害者の性別変更の要件とする上記特例法3条1項2号が憲法13条及び14条1項に違反すると主張したが,本件規定の目的,制約の態様,現在の社会的状況等を総合的に比較衡量すると,本件規定は不合理なものとはいえず,憲法13条,14条1項に違反するものではないとして,申立てを却下した審判に対する抗告を棄却した事例
(大阪高決令和元年6月20日 性別の取扱いの変更申立却下審判に対する抗告事件)
(参考)原 審 京都家庭裁判所平成31年3月27日審判
・別居親である抗告人(父)が,同居親である相手方(母)に対し,未成年者(10歳)との面会交流を求めた事案において,未成年者の調査結果を踏まえて面会交流を認めることは子の福祉に反する特段の事情があると判断して,直接交流のみならず間接交流も認めなかった審判に対する抗告を棄却した事例
(大阪高決平成30年10月11日 子の監護に関する処分(面会交流)申立却下審判に対する抗告事件)
(参考)原 審 大阪家庭裁判所平成30年6月20日審判
・相手方が抗告人に対し,未成年者らの監護者を相手方と定めるとともに,未成年者らの引渡しを求めた事案において,抗告人による現在の監護状態に特段の問題はないものの,その監護状態が将来的には不安定なものであること,相手方に未成年者らの監護実績があり,監護態勢も安定していること,相手方においては従前と同程度の内容のある宿泊付面会交流が実現される可能性が極めて高いのに対し,抗告人においては面会交流が円滑に実現されるか疑問があること等の事情から,相手方の申立てを認容した原審判を相当と判断して抗告を棄却した事例
(大阪高決平成30年8月2日 子の監護に関する処分(監護者指定,子の引渡)審判に対する抗告事件)
(参考)原 審 京都家庭裁判所平成30年3月28日審判
・養親となるべき者及び養子となるべき者のいずれもが日本に住所を有していない場合の特別養子縁組申立事件につき,我が国の国際裁判管轄を認めた事例
(東京家審令和元年5月27日 特別養子縁組申立事件)
・児童相談所長である申立人が,児童福祉法28条1項1号に基づき,同法27条1項3号の措置として,児童を障害児入所施設に入所させること又は里親に委託することの承認を求めた事案において,児童の親権者父母に監護養育を委ねることは,児童の意向に反し,安定した日常生活の下で学校教育を受ける機会を奪うことになり,児童の福祉を著しく害することになると判断して,申立てを認容した事例
(名古屋家審令和元年5月15日 児童福祉法28条1項1号に基づく承認審判の申立事件)
◆少年関係裁判(2件)
・少年が店舗で医薬品等を2回にわたり万引きしたという窃盗保護事件において,立件されていない大麻使用に関する事情を非行事実とほぼ並列的に掲げて要保護性を検討した上で少年を第1種少年院送致とした原決定につき,非行事実ではないが処分に実質的に大きな影響を与える可能性のある大麻使用に関する事情を,要保護性の判断として許容される限度を超えて,あたかも非行事実であるかのように扱ったものであり,法令違反があるとしつつ,その法令違反は決定に影響を及ぼすものとまではいえないとした事例
(大阪高決令和元年9月12日 第1種少年院送致決定に対する抗告申立事件)
・13歳の少年が,覚せい剤及び大麻を友人と共に密売人から譲り受け,これを単独で所持したという触法(覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反)保護事件において,少年の薬物への依存性の深刻さ等を指摘し,少年を第1種少年院送致とした事例
(東京家決令和元年9月12日 触法(覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反)保護事件)
◆連 載
・外国少年司法事情 第22回
北欧 スウェーデンの少年保護法制─保護観察所の実情
廣瀬 健二(立教大学大学院法務研究科特任教授)
・更生保護の現場から 第16回
地方更生保護委員会における少年院からの仮退院審理等について
篠﨑 暁人(近畿地方更生保護委員会事務局調整指導官)
・公証家事実務Q&A 第12回
財産分与
角 隆博(本町公証役場公証人)
・子どもの話を聴くための手法と実践例─司法面接の技法をいかして 第5回
面接の計画(続)
仲 真紀子(立命館大学総合心理学部教授)