目次
特集●食道疾患を見落とすな!―内視鏡検査時に食道疾患を見落とさないために―
企画編集/木下芳一(社会医療法人 製鉄記念広畑病院 病院長/地域医療連携推進法人 はりま姫路総合医療センター整備推進機構 理事長)
<特集にあたって>
ヘリコバクター・ピロリ感染率の急速な減少に伴い,胃十二指腸潰瘍は激減し,胃癌も減少する兆しが明確となってきた.従来,上部消化管の内視鏡検査は胃カメラ検査と呼びならわされていたように,胃や十二指腸疾患を主な対象として行われてきた.ところが,近年食道癌の増加に加えて,逆流性食道炎の増加とこれに伴うBarrett食道とBarrett食道癌の増加が明確となり,上部消化管の内視鏡検査における食道観察の重要性が高まっている.
食道には形成異常,炎症,腫瘍,機能障害に分類されるcervical inlet patch,憩室症,逆流性食道炎,好酸球性食道炎,真菌性・細菌性・ウイルス性感染症,種々の良性腫瘍,癌,肉腫,アカラシアなどの運動異常,天疱瘡などの全身性疾患に伴う異常などが起こりうる.これらの疾患は自覚症状を伴わないこともあるが,胸焼け,嚥下障害,胸痛,咽喉頭部異常感などの食道病変に起因すると考えられる症状を伴うことも多い.このため,自覚症状を有する患者の内視鏡検査時はもちろん,自覚症状がない患者でも食道病変の存在には十分な注意を払い,内視鏡検査を行うことが必要である.
従来から食道扁平上皮癌と逆流性食道炎に関しては多くの情報提供が行われ,食道内をNBIモードなどの画像強調モードでも観察したり,食道胃移行部の観察に注意をすることの重要性が内視鏡医に広く認識されている.ところが,好酸球性食道炎やアカラシアの内視鏡像の特徴はそれほどは知られてはいない.また,嚥下障害の原因となりやすいesophageal intramural pseudo-diverticulosisの内視鏡像に精通した消化器科医は少ない.天疱瘡,ベーチェット病,顆粒細胞腫,サイトメガロウイルス感染症などの特徴も広く知られているとは言い難い.
病変の特徴を知っていないと,内視鏡検査時に特徴が見えていても診断をすることができないだけではなく,病変の存在すら認識することができないこともめずらしくない.現在,私達のところでは2週間に1人程度の好酸球性食道炎の新たな患者さんが見つかるが,内視鏡担当医が好酸球性食道炎の内視鏡所見に精通するまでは,発見される好酸球性食道炎は5,000件の内視鏡検査にわずか1件であった.存在しうる病変の特徴を認識し,そのような異常が食道内に存在するかもしれないことを予見しつつ内視鏡検査を行うことが正確な診断へと結びつく.
そこで,本特集では癌や逆流性食道炎の特徴を解説していただくことに加えて,確定診断は生検組織診断で行われる好酸球性食道炎を疑う内視鏡所見,確定診断は食道内圧検査で行われるアカラシアを疑う内視鏡所見,さらに普段の診療では見る頻度が低い各種の食道疾患,全身疾患の食道病変の特徴をつぶさに解説していただいた.また,cervical inlet patchは従来臨床的意義が低いと無視されることが多かったが,咽喉頭部異常感・球症状と関連しうることが最近報告されており,内視鏡治療の対象とする報告もみられている.このため,自覚症状がある患者の内視鏡検査ではcervical inlet patchにも注意を払うことが必要であるが,これについても解説をしていただいた.
食道の内視鏡検査の安全性は高く,経鼻内視鏡検査で行えば検査に伴う苦痛も軽減すると考えられる.ところが,高齢化社会となった現在では循環器,呼吸器疾患を中心にさまざまな疾患を有しながら内視鏡検査を受検する患者が多く,その多くは多種の薬剤を常用している.このような患者に対しても安全に内視鏡検査が行えるように配慮をすることの重要性がますます大きくなっている.
本特集では食道に病変を作りうる疾患の発症高リスク患者を知り,自覚症状の特徴から存在する可能性のある病変を予測して内視鏡検査を安全に快適に行い,食道癌や逆流性食道炎に加えて,好酸球性食道炎などの最近増加の著しい疾患,臨床的意義が明確になりつつあり無視することができなくなった疾患,比較的まれであるが早期に診断すれば治療方針が変わってくる疾患の,内視鏡診断を適切に行うためのコツをまとめていただいた.
本書を内視鏡室に永く置いていただき,何度も読み返していただければ幸いである.
木下芳一
社会医療法人 製鉄記念広畑病院 病院長/地域医療連携推進法人 はりま姫路総合医療センター整備推進機構 理事長
<目次>
特集にあたって/木下芳一
1. 内視鏡検査を始める前に ―内視鏡検査だってリスクはある―/大内佐智子
2. 経鼻内視鏡を行う場合 ―鼻腔,咽頭,食道―/駒澤慶憲,結城美佳
3. 逆流性食道炎 ―軽症逆流性食道炎を見逃すな―/山口 隼,河合 隆,内田久美子,福澤誠克,糸井隆夫
4. 逆流性食道炎の裏に隠れた疾患 ―逆流性食道炎はこの疾患のサイン―/竹田 努,浅岡大介,永原章仁
5. 頸部食道inlet patch ―咽喉頭部不快感,球症状の隠れた原因?―/石村典久,柴垣広太郎
6. Barrett食道,食道癌 ―発癌リスクの高いBarrett食道の見分け方―/小泉重仁,飯島克則
7. 好酸球性食道炎 ―意外に多い疾患.ここに注意をすればよい―/足立経一,野津 巧,三代知子
8. アカラシア ―内視鏡検査時にここに注意すれば軽症を見逃さない―/星川吉正,星野慎太朗,川見典之,岩切勝彦
9. 食道憩室症 ―憩室だって見逃されている―/相見正史
10. 食道扁平上皮癌 ―高リスクグループの判定から微細診断まで―/有馬美和子,都宮美華,剛崎有加
11. 食道感染症 ―食道の感染症はここに注目すればわかる―/林 克平,永見康明,丸山紘嗣,藤原靖弘
12. 食道のまれな腫瘍性疾患 ―食道にできる腫瘍にはこんな特徴がある―/吉田 亮,藤井政至,池淵雄一郎,村脇義之,河口剛一郎,八島一夫,磯本 一
13. 全身性疾患の現れとしての食道疾患 ―こんな異常を見たらこの全身性疾患を疑う―/小笠原尚高,春日井邦夫
企画編集/木下芳一(社会医療法人 製鉄記念広畑病院 病院長/地域医療連携推進法人 はりま姫路総合医療センター整備推進機構 理事長)
<特集にあたって>
ヘリコバクター・ピロリ感染率の急速な減少に伴い,胃十二指腸潰瘍は激減し,胃癌も減少する兆しが明確となってきた.従来,上部消化管の内視鏡検査は胃カメラ検査と呼びならわされていたように,胃や十二指腸疾患を主な対象として行われてきた.ところが,近年食道癌の増加に加えて,逆流性食道炎の増加とこれに伴うBarrett食道とBarrett食道癌の増加が明確となり,上部消化管の内視鏡検査における食道観察の重要性が高まっている.
食道には形成異常,炎症,腫瘍,機能障害に分類されるcervical inlet patch,憩室症,逆流性食道炎,好酸球性食道炎,真菌性・細菌性・ウイルス性感染症,種々の良性腫瘍,癌,肉腫,アカラシアなどの運動異常,天疱瘡などの全身性疾患に伴う異常などが起こりうる.これらの疾患は自覚症状を伴わないこともあるが,胸焼け,嚥下障害,胸痛,咽喉頭部異常感などの食道病変に起因すると考えられる症状を伴うことも多い.このため,自覚症状を有する患者の内視鏡検査時はもちろん,自覚症状がない患者でも食道病変の存在には十分な注意を払い,内視鏡検査を行うことが必要である.
従来から食道扁平上皮癌と逆流性食道炎に関しては多くの情報提供が行われ,食道内をNBIモードなどの画像強調モードでも観察したり,食道胃移行部の観察に注意をすることの重要性が内視鏡医に広く認識されている.ところが,好酸球性食道炎やアカラシアの内視鏡像の特徴はそれほどは知られてはいない.また,嚥下障害の原因となりやすいesophageal intramural pseudo-diverticulosisの内視鏡像に精通した消化器科医は少ない.天疱瘡,ベーチェット病,顆粒細胞腫,サイトメガロウイルス感染症などの特徴も広く知られているとは言い難い.
病変の特徴を知っていないと,内視鏡検査時に特徴が見えていても診断をすることができないだけではなく,病変の存在すら認識することができないこともめずらしくない.現在,私達のところでは2週間に1人程度の好酸球性食道炎の新たな患者さんが見つかるが,内視鏡担当医が好酸球性食道炎の内視鏡所見に精通するまでは,発見される好酸球性食道炎は5,000件の内視鏡検査にわずか1件であった.存在しうる病変の特徴を認識し,そのような異常が食道内に存在するかもしれないことを予見しつつ内視鏡検査を行うことが正確な診断へと結びつく.
そこで,本特集では癌や逆流性食道炎の特徴を解説していただくことに加えて,確定診断は生検組織診断で行われる好酸球性食道炎を疑う内視鏡所見,確定診断は食道内圧検査で行われるアカラシアを疑う内視鏡所見,さらに普段の診療では見る頻度が低い各種の食道疾患,全身疾患の食道病変の特徴をつぶさに解説していただいた.また,cervical inlet patchは従来臨床的意義が低いと無視されることが多かったが,咽喉頭部異常感・球症状と関連しうることが最近報告されており,内視鏡治療の対象とする報告もみられている.このため,自覚症状がある患者の内視鏡検査ではcervical inlet patchにも注意を払うことが必要であるが,これについても解説をしていただいた.
食道の内視鏡検査の安全性は高く,経鼻内視鏡検査で行えば検査に伴う苦痛も軽減すると考えられる.ところが,高齢化社会となった現在では循環器,呼吸器疾患を中心にさまざまな疾患を有しながら内視鏡検査を受検する患者が多く,その多くは多種の薬剤を常用している.このような患者に対しても安全に内視鏡検査が行えるように配慮をすることの重要性がますます大きくなっている.
本特集では食道に病変を作りうる疾患の発症高リスク患者を知り,自覚症状の特徴から存在する可能性のある病変を予測して内視鏡検査を安全に快適に行い,食道癌や逆流性食道炎に加えて,好酸球性食道炎などの最近増加の著しい疾患,臨床的意義が明確になりつつあり無視することができなくなった疾患,比較的まれであるが早期に診断すれば治療方針が変わってくる疾患の,内視鏡診断を適切に行うためのコツをまとめていただいた.
本書を内視鏡室に永く置いていただき,何度も読み返していただければ幸いである.
木下芳一
社会医療法人 製鉄記念広畑病院 病院長/地域医療連携推進法人 はりま姫路総合医療センター整備推進機構 理事長
<目次>
特集にあたって/木下芳一
1. 内視鏡検査を始める前に ―内視鏡検査だってリスクはある―/大内佐智子
2. 経鼻内視鏡を行う場合 ―鼻腔,咽頭,食道―/駒澤慶憲,結城美佳
3. 逆流性食道炎 ―軽症逆流性食道炎を見逃すな―/山口 隼,河合 隆,内田久美子,福澤誠克,糸井隆夫
4. 逆流性食道炎の裏に隠れた疾患 ―逆流性食道炎はこの疾患のサイン―/竹田 努,浅岡大介,永原章仁
5. 頸部食道inlet patch ―咽喉頭部不快感,球症状の隠れた原因?―/石村典久,柴垣広太郎
6. Barrett食道,食道癌 ―発癌リスクの高いBarrett食道の見分け方―/小泉重仁,飯島克則
7. 好酸球性食道炎 ―意外に多い疾患.ここに注意をすればよい―/足立経一,野津 巧,三代知子
8. アカラシア ―内視鏡検査時にここに注意すれば軽症を見逃さない―/星川吉正,星野慎太朗,川見典之,岩切勝彦
9. 食道憩室症 ―憩室だって見逃されている―/相見正史
10. 食道扁平上皮癌 ―高リスクグループの判定から微細診断まで―/有馬美和子,都宮美華,剛崎有加
11. 食道感染症 ―食道の感染症はここに注目すればわかる―/林 克平,永見康明,丸山紘嗣,藤原靖弘
12. 食道のまれな腫瘍性疾患 ―食道にできる腫瘍にはこんな特徴がある―/吉田 亮,藤井政至,池淵雄一郎,村脇義之,河口剛一郎,八島一夫,磯本 一
13. 全身性疾患の現れとしての食道疾患 ―こんな異常を見たらこの全身性疾患を疑う―/小笠原尚高,春日井邦夫
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