消化器内科 発売日・バックナンバー

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特集●肝細胞癌治療のパラダイムチェンジ
企画編集/工藤正俊(近畿大学医学部 消化器内科学 主任教授)

<特集にあたって>

 今号の雑誌『消化器内科』の特集は「肝細胞癌治療のパラダイムチェンジ」とした.2009年のソラフェニブの薬事承認以来,一次治療としては現在レンバチニブ,アテゾリズマブ+ベバシズマブ,デュルバルマブ+トレメリムマブ,そしてデュルバルマブ単剤が承認されている.また二次治療としては,レゴラフェニブ,ラムシルマブ,そしてカボザンチニブの3剤が承認されており,計8レジメンが切除不能肝細胞癌に対して使用可能となっている.一次治療の第一選択は日本肝臓学会の診療ガイドラインではアテゾリズマブ+ベバシズマブとデュルバルマブ+トレメリムマブ並列で併記され,どちらも主治医の判断で選択することが推奨されている.一方,AASLDのガイドラインや欧米の肝癌のエキスパートオピニオンでは有効性,安全性の面から,アテゾリズマブ+ベバシズマブが推奨されることが多い.
 本特集においては,薬物治療によって大きく変わった肝細胞癌治療の治療戦略の変貌に焦点を当てた.また,SURF trialの結果も踏まえた根治的治療のあり方についても執筆いただいた.Intermediate stageにおいては急速に変貌するTACEと分子標的薬の使い分け,LEN-TACE sequential治療あるいはTACE不応・不適の概念,といった点を中心に原稿を書いていただいた.またアテゾリズマブ+ベバシズマブを用いると腫瘍がかなり縮小するため,その後のコンバージョン切除やアブレーション,根治的TACEが可能になりcancer free,drug freeが得られるといった点も現在大きなトピックスとなっている.
 基礎的な観点からは免疫療法の効果が比較的不良とされるWnt/βカテニン経路の活性化と免疫療法の効果についても詳しく解説いただいた.最後に,現在進行中の第Ⅲ相試験についても網羅的に執筆いただいた.結果として,本特集によって「薬物治療の進歩により急速に変貌する肝細胞癌治療」についての知識を読者がすぐに理解できる内容となり,この領域におけるバイブルのような特集になったと確信している.多くの方にぜひ,手に取って読んでいただき,明日からの肝細胞癌診療に役立てていただきたいと思う次第である.

工藤正俊
近畿大学医学部 消化器内科学 主任教授


<目次>

1. 肝細胞癌治療の最近のパラダイム:Overview/工藤正俊
2. 3cm以下3個以下の肝細胞癌に対する切除とRFAの位置付け:SURF trialの結果を踏まえて/建石良介
3. cTACEと分子標的薬先行TACEの使い分け/宮山士朗
4. LEN-TACE sequential治療の適応と成績/黒田英克,松本主之
5. TACTICS試験の解釈:Intermediate stage肝細胞癌の臨床試験のエンドポイントを考える/寺島健志
6. TACE不応・不適の概念とIntermediate stage肝細胞癌の治療戦略/小笠原定久,興梠慧輔,井上将法,叶川直哉,加藤直也
7. 進行肝癌に対するアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法/森口理久
8. アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法後の二次治療の選択/山内理海,網岡 慶,相方 浩
9. 薬物療法後のコンバージョン切除/奥野将之,多田正晴,波多野悦朗
10. Wnt/βカテニン経路活性化と肝癌免疫療法の効果/盛田真弘,青木智子,西田直生志,工藤正俊
11. 切除不能肝癌治療における肝予備能とsequential治療の重要性/大濱日出子,多田藤政,平岡 淳
12. 現在進行中の第Ⅲ相試験の概要と今後の展望/池田公史
4,400円
特集●ピロリ菌未感染胃粘膜に発生する種々の疾患
企画編集/村上和成(大分大学医学部 消化器内科学講座 教授/大分大学医学部附属病院 副病院長)

<特集にあたって>

 今回は「ピロリ菌未感染胃粘膜に発生する種々の疾患」についての特集です.2013年以降の除菌治療の普及とピロリ菌未感染者の急激な増加により,ピロリ菌現感染者の割合は減少し,いまやピロリ菌陽性者はマイノリティとなりつつあります.
 この序文は,2022年10月開催のJDDW2022福岡の直後に執筆中ですが,消化器病関連の学会においても,未感染胃癌や除菌後胃癌の主題は頻回に取り上げられ注目を浴びている分野です.特にピロリ菌未感染胃癌はこれまで胃癌全体の約1%でまれな疾患と報告されており,進行も遅いものが多く,腫瘍なのかどうかも議論されています.ただ,ピロリ菌陽性の胃癌とは形態や組織像が異なるものが多く,さらに今後間違いなく増加していくと考えられています.また,ピロリ菌未感染胃では,胃粘膜の萎縮がなく過酸傾向となり,PPIなどの酸分泌抑制薬も長期投与例が増加しています.それに伴いPPI投与による胃粘膜変化(PPI関連胃症)は最近,数多く報告されています.
 今回の内容を簡潔にご紹介します.
 第1章は大分大学の水上一弘先生に,今回のテーマにおいて重要なポイントであるピロリ菌未感染の定義について提案をお願いし,ピロリ菌未感染胃粘膜の特徴についてもお示しいただきました.第2章は川崎医科大学の鎌田智有先生に,PPI長期投与による胃粘膜変化とピロリ菌現感染や既感染との関連をご執筆いただきました.第3章はふるた内科クリニックの古田隆久先生に,最近注目されている自己免疫性胃炎(AIG)の診断基準の提案などを踏まえ,未感染例や除菌例が増加するにつれAIGは増加しているかどうかについて,疫学的観点からご執筆いただきました.第4章は宇治徳洲会病院の小寺 徹先生に,AIGの内視鏡所見について特殊光や拡大所見を含めてご執筆をお願いしました.第5章は藤枝市立総合病院の丸山保彦先生に,AIGに合併する胃癌についてピロリ菌感染の有無や発生部位や形態の違いなどをご執筆いただきました.第6章はKKR札幌医療センターの関 英幸先生に,ピロリ菌未感染胃に発生する胃底腺型胃癌について,その内視鏡像や組織所見,深達度診断やSM浸潤の場合の扱いなどをお願いしました.第7章は島根大学の柴垣広太郎先生に,ラズベリー様胃腫瘍について胃底腺ポリープとの異同や悪性度,治療方針などの解説をお願いしました.第8章はがん研有明病院の藤崎順子先生に,印環細胞癌について内視鏡的な特徴,範囲診断,治療方針など,ピロリ菌感染を伴う場合との違いを執筆いただきました.第9章は九州医療センターの吉村大輔先生に,未感染胃腫瘍に関して腫瘍発生部位の違いと特殊型の胃腫瘍について解説をお願いしました.第10章は新潟大学の高綱将史先生に,ピロリ菌未感染におけるFAP患者の胃癌について,治療方針を含めてご説明いただきました.第11章は松山赤十字病院の原 裕一先生に,ピロリ菌未感染の進行胃癌の特徴に関して特徴や進行に至った原因やその対策について執筆いただきました.第12章は国際医療福祉大学の石橋史明先生に,ピロリ菌未感染者の内視鏡フォローアップについて,現感染や既感染のフォローアップと対比してご解説いただきました.第13章は藤枝市立総合病院の寺井智宏先生に,いわゆる特発性潰瘍についてその特徴や治療,経過観察法,想定される病態に関してご執筆をお願いしました.
 これからの将来に向けて,いずれも内視鏡検査で遭遇する機会が多くなる疾患だと思われます.その分野に大変精通した先生方に執筆をお願いしました.大変充実した内容になり,明日からの診療に必ず役に立つものと思います.どうぞお手に取ってお楽しみください.

村上和成
大分大学医学部 消化器内科学講座 教授/大分大学医学部附属病院 副病院長


<目次>

〔特集〕
1. ピロリ菌未感染の定義と未感染胃粘膜の内視鏡的特徴/水上一弘,村上和成
2. プロトンポンプ阻害薬に関連した胃粘膜変化 ―GAPの臨床的特徴―/鎌田智有,綾木麻紀,西山典子,石井克憲,村尾高久
3. 自己免疫性胃炎は増えているのか? いかに診断するのか? どう対応すべきか?/古田隆久
4. ピロリ菌未感染自己免疫性胃炎の内視鏡診断/小寺 徹
5. 自己免疫性胃炎に合併した胃癌/丸山保彦,星野弘典
6. 胃底腺型胃癌の臨床病理学的検討/関 英幸,松薗絵美,小林良充,曽我部 進,菅井 望,鈴木 昭
7. ピロリ菌未感染胃粘膜に発生する腺窩上皮型胃腫瘍/柴垣広太郎,三代 剛,岡 明彦,荒木亜寿香,石原俊治
8. 未感染粘膜の印環細胞癌/藤崎順子,東 佑香,並河 健,高松 学
9. ピロリ菌未感染胃粘膜に生じる胃腫瘍の特徴と胃底腺領域,幽門腺領域の分化型腺癌/吉村大輔,吉村理江,水谷孝弘,原田直彦
10. 家族性大腸腺腫症患者と非家族性大腸腺腫症患者におけるピロリ菌陰性胃癌の比較検討/高綱将史,高橋一也,水野研一,竹内 学,寺井崇二
11. 未感染進行胃癌の臨床病理学的特徴/原 裕一,蔵原晃一,大城由美,池上幸治
12. 未感染胃癌の早期発見のためのスクリーニング戦略/石橋史明,鈴木 翔,平澤俊明
13. 非ピロリ菌・非薬剤性胃潰瘍(特発性胃潰瘍)の要因と内視鏡像/寺井智宏,丸山保彦

〔特別記事〕腹部症状から遺伝性血管性浮腫(HAE)の早期診断を導くために/一般社団法人 遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(DISCOVERY) 監修:佐々木善浩
4,400円
特集●消化器領域の神経内分泌腫瘍の最新の知見
企画編集/千葉 勉(関西電力病院 名誉院長/京都大学 名誉教授)

<特集にあたって>

 WHO Classification of Tumors: Digestive System Tumoursの改訂版が2019年に発行され,その中で神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN)についても改訂がなされた.その結果,NENの概念はかなり整理されてきたものの,2010,2017,2019年と頻回に改訂されてきたのは,NENについてはいまだにさまざまな考え方が存在するからだと思われる.実際,NENは同じ上皮系の腫瘍の中でも,他の上皮性がんとはいろいろな点で異なっているが,そもそもNENとは何者か,という基本的な問いに対しても長く議論されてきた経緯がある.実際neuroendocrineという名称そのものも,Pearceらが「神経細胞と内分泌細胞の由来が同じである」と提唱した時代の歴史的な名残であり,今では神経細胞と内分泌細胞の由来が別であることは周知の事実となっている.私が医師になったころには,膵内分泌腫瘍はAPUD(amine precursor uptake and decarboxylation)omaと称されて,神経細胞由来か内分泌細胞由来か真剣に議論されたくらいである.現在ではNENは単に,「神経細胞と内分泌細胞それぞれの形態や分子の発現をあわせもった上皮系腫瘍」と定義されており,NETはおそらくenteroendocrine cell(EEC)由来,NEC はnon-endocrine cell(non-EEC)由来と考えられているが,一方で胃の内分泌腫瘍(ECL カルチノイド)のように明らかに内分泌細胞由来のNEN(この場合はendocrine neoplasia と呼ぶべき)も存在することから,NENという名称自体が多くの誤解を産んでおり,この病名が適切かどうかいまだに疑問の余地が残されている状態である.
 とはいえ臨床現場におけるNENの理解,診断,治療はここ数年大きく進歩してきた.特にソマトスタチンアナログによる診断,治療法の開発はNENの診療に大きく貢献しており,わが国でもその治療法が,最近臨床現場に導入されたところである.
 私は正しい診療を実践していくためには,疾患の病因,病態の理解がきわめて重要であると常々思っている.そこで本特集では,まずNENの由来も含めた基礎的な研究(オルガノイド研究,網羅的遺伝子解析,動物によるlineage tracing研究など)に焦点をおいた.さらにそのうえで,2010年以来改訂を重ねてきたWHO分類や日本のガイドラインを紹介いただき,各消化器臓器のNENについて,それぞれの特徴,その異同にも照準を当てつつ,分類,診断,治療法などについて,最新の知見も紹介いただくこととした.
 繰り返しになるが,NENの由来も含めた基礎的な知識の上にNENを系統的に理解することによって,診断,予後,さらには新しい治療法の差別化(個別化)などを考えることが重要であることを強調したい.本特集が,日常臨床の一助となることを念願している.

千葉 勉
関西電力病院 名誉院長/京都大学 名誉教授


<目次>

1. オルガノイド解析からみた消化管神経内分泌腫瘍/川﨑健太,佐藤俊朗
2. 神経内分泌腫瘍のオミックス解析/赤星径一,工藤 篤,上田浩樹,小野宏晃,田中真二,田邉 稔
3. 消化器神経内分泌腫瘍におけるWHO分類の変遷/笹野公伸,渡邊裕文,角掛純一,藤島史喜
4. 膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン2019(第2版)/伊藤鉄英,高松 悠,植田圭二郎,藤森 尚
5. 胃NENの分類と発症機序 ―自己免疫性胃炎を中心に―/春間 賢,鎌田智有,村尾高久,角 直樹,綾木麻紀,眞部紀明
6. ピロリ菌感染と胃カルチノイド/佐藤祐一
7. 直腸NETの診断・治療および治療後経過/関口正宇,関根茂樹
8. 膵神経内分泌腫瘍の網羅的ゲノム解析/垣内伸之,平野智紀,児玉裕三
9. ソマトスタチン受容体を用いた膵・消化管神経内分泌腫瘍の画像診断/三宅可奈江,中本裕士
10. NETの治療 ―外科の立場から,転移性腫瘍も含めて―/工藤 篤,田邉 稔
11. 膵・消化管神経内分泌腫瘍の内科治療 ―ゲノム解析/バイオマーカー研究を踏まえて―/肱岡 範
12. 膵内分泌腫瘍に対するソマトスタチン受容体を標的とした放射線治療(PRRT)/河本 泉,柳原一広,岡田 務,板垣 康,多代尚広
4,400円
特集●肝疾患における画像診断の進歩 ―腹部超音波,CT,MRI―
企画編集/飯島尋子(兵庫医科大学 消化器内科学(肝胆膵内科) 教授/超音波センター長,肝疾患センター長,学長補佐)

<特集にあたって>

 ウイルス肝炎は,約40年間で大きく変化し,非A非B肝炎はC型肝炎となった.近年は肝硬変であっても,ほぼ全員が治癒する時代になった.このウイルス肝炎は多くの肝発癌と関連したため,わが国では,CTをはじめとする多くの肝疾患の画像診断が進歩してきた.昭和から平成になり,肝特異性MRI造影剤gadoxetate(Gd-EOB-DTPA)が発売され,肝癌の検出に大きな貢献をした.さらに,発癌の背景などを考慮すると,肝線維化と関連していることは明らかであり,20年前にエラストグラフィが臨床応用される時期とも相まって,超音波やMRIでの肝線維化診断が発展してきた.エラストグラフィは,線維化診断にとどまらず,発癌リスクや門脈圧亢進症や食道静脈瘤破裂の予測など,患者の予後と直接関与する臨床とも直結している.近年は,疾患形態がウイルス肝炎から徐々に変化し,メタボリック症候群や糖尿病,脂肪性肝障害が増加し,肝線維化に加えて脂肪減衰法による肝脂肪化定量なども注目されている.
 画像診断は,学問として軽視されがちであるが,実は単なる絵合わせ診断をしているわけではない.もちろん診療と密接に関係するため身近に存在する診断法であるが,病理や病態に迫る学問であり,このことが,画像診断を発展させてきた.あらゆる臓器でも同様であるが,特に肝臓では,肝機能診断へも発展した.造影剤の進歩もその役目は大きく,Gd-EOB-DTPA MRIや超音波造影剤は肝細胞や肝類洞壁細胞であるKupffer細胞と深く関係し,その細胞機能や,遺伝子学的背景にまで関連している.近年は分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬との関連などが論じられるようになり,腫瘍の個別化医療において重要な学問に発展している.つまり非侵襲的に治療やその効果予測などimaging biomarkerとして確立されようとしている.重要でない学問はないが,画像診断は形態,血流,機能診断,さらには治療法や予後まで評価できる優れた学問である.
 本特集では,肝疾患診療に直結した画像診断の有用性やAIを含む最先端診断について,超音波,CT,MRIそれぞれのエキスパートの先生方にご執筆いただいた.明日からの診療に役立つ内容であるとともに,これからの学問の発展のきっかけとなると幸いである.貴重な論文を執筆いただいた先生方に心から感謝致し,「特集にあたって」とさせていただく.

飯島尋子
兵庫医科大学 消化器内科学(肝胆膵内科) 教授/超音波センター長,肝疾患センター長,学長補佐


<目次>

Ⅰ 超音波
1-1. びまん性肝疾患の超音波診断/杉本勝俊
1-2. 脂肪性肝障害の超音波診断/多田俊史,飯島尋子,小川定信,後藤竜也,熊田 卓
1-3. 肝細胞癌の超音波定量診断 ―組織学的分化度診断と分子標的治療薬の効果予測―/黒田英克,阿部珠美,松本主之
1-4. 肝内胆管癌・転移性肝癌の超音波診断/惠莊裕嗣
1-5. 良性肝腫瘍の超音波診断/西村貴士,飯島尋子
1-6. 人工知能を応用した超音波画像診断/西田直生志,工藤正俊

Ⅱ CT
2-1. 原発性肝細胞癌診断における肝造影CT ―低管電圧撮影・Dual-energy CTの有用性―/中村優子,檜垣 徹,近藤翔太,成田圭吾,粟井和夫
2-2. 肝細胞癌における治療前後のCT画像の役割 ―分化度診断と効果判定について―/鶴﨑正勝
2-3. CTを用いたびまん性肝疾患の診断と定量評価の可能性/祖父江慶太郎,村上卓道

Ⅲ MRI
3-1. 腫瘍描出と診断/市川新太郎,五島 聡
3-2. Gd-EOB-DTPA造影MRIによる肝細胞癌の分化度診断とそのイメージングバイオマーカーとしての可能性/米田憲秀,北尾 梓,松井 修,蒲田敏文
3-3. びまん性肝疾患の機能評価 ―PDFFやMR elastography―/鈴木雄一朗,榎本信幸

Ⅳ CT/MRI
4. 人工知能を応用した肝画像診断/八坂耕一郎
4,400円
特集●膵癌の早期発見と治療方針
企画編集/花田敬士(大阪医科薬科大学 第二内科 専門教授)

<特集にあたって>

 今回の特集では,膵癌の早期発見と治療方針に関する最近の動向を取り上げます.膵癌は依然として早期診断が困難であり,5年生存率は10%未満とされ,特に切除ができない膵癌の患者の予後は非常に厳しいのが現状です.一方で,日本膵臓学会の膵癌登録のデータおよび国内多施設の症例集積の報告からは,腫瘍径が1cm未満では5年生存率が80%,さらに早期の上皮内癌に相当するステージ0では95%と非常に良好な成績が報告されています.しかしながら診断件数は現在でも非常に少数であり,予後改善には集学的治療の発展とともに,切除可能な状況での早期診断例を1例でも増やすことが必要不可欠です.
 膵癌早期診断の成果をあげるためには,大半が無症状である患者への検査介入が必要になりますが,私の所属する広島県尾道市医師会では,2007年から『膵癌早期診断プロジェクト(尾道方式)』が発足し,過去13年間に『膵癌疑い』で受診された患者延べ18,507件のうち,CT,MRI(MRCP),超音波内視鏡(EUS)で精査の後,EUSガイド下穿刺吸引法(EUS-FNA)や内視鏡的逆行性膵胆道造影(ERCP)併用の膵液細胞診などを用いて610例を膵癌と確定診断しました.うち,ステージ0,Ⅰがそれぞれ5.2%であり,多くのサバイバーを得ることができています.これを受けて広島県医師会では,広島大学,県医師会,国指定のがん診療連携拠点病院を中心に,全県下で尾道方式を展開するためのワーキンググループが発足しており,2022年度中の稼動を目指して調整が進んでいます.尾道地区以外でも国内の一部の地域では,尾道方式と同様のコンセプトで中核施設と医師会が協働で,危険因子を有する患者へ非侵襲的な一次検査の介入を行い,軽微な異常所見を有する場合でも中核施設で侵襲の少ない二次検査を積極的に行うことで,早期診断例の増加,外科的切除率,生存率の改善がみられています.
 最近,各地区から多くの早期診断症例が得られたことで,今まで明らかでなかったCT,MRI,EUSなどの画像所見や病理所見上の特徴,5年以上経過しての術後残膵再発の問題などが報告されており,国内外の消化器病,消化器内視鏡,膵臓病関連の学会でも『膵癌の早期診断』をいろいろな角度から議論するセッションが多くなり,演題応募も非常に多く,座長席から若手先生方の熱い議論を拝聴する機会が増えたように思います.多くの先生方に興味をもっていただくテーマになっていることは非常に喜ばしい限りです.
 今後,臨床現場で診療に従事する検診部門,消化器内科,内視鏡科,消化器外科,臨床腫瘍科,放射線科,病理部門,内視鏡外科などの連携のみならず,基礎研究の分野から臨床に応用可能な非侵襲的バイオマーカーの開発研究,一般市民への危険因子などの啓発やスクリーニング体制の充実に関する医師会や行政の協力など,まさに国の総力をあげた取り組みが求められています.
 今回の企画では,現在膵癌早期診断および治療に注力していただいている国内のトップランナーの先生方や関係者の方に,膵癌の早期発見と治療方針の立案のために知っておきたい最新の知見について執筆をお願いしました.この号の内容が,今後の膵癌早期診断ならびに治療の発展に繋がることを心から期待しています.

花田敬士
JA尾道総合病院 副院長/内視鏡センター長


<目次>
1. 早期の膵癌の疫学/高山敬子
2. 早期の膵癌に関する病理学的知見最前線/大森優子,伊藤泰斗,古川 徹
3. 膵癌の早期診断を目指したバイオマーカーの今/光永修一
4. 膵癌早期発見を目指した家族歴・ゲノム異常を考慮したサーベイランス/肱岡 範,森實千種,奥坂拓志
5. 早期診断された膵癌の臨床徴候・画像所見/池本珠莉,芹川正浩,石井康隆,壷井智史,中村真也
6. 膵癌の早期診断における超音波検査の役割/岡庭信司
7. 膵癌早期診断のために知っておくべき画像所見と画像検査の役割/井上 大,戸島史仁,小森隆弘,蒲田敏文
8. 膵癌の早期診断におけるEUS/EUS-FNAの役割/蘆田玲子,北野雅之
9. 膵癌の早期診断におけるERCPの役割/栗原啓介,花田敬士,清水晃典
10. 早期膵癌が疑われる症例に対する外科治療/奥野正隆,清水泰博,夏目誠治,細田和貴,原 和生
11. 膵癌早期診断例の術後経過観察/蔵原 弘,大塚隆生
12. 膵癌の早期診断を目指した病診連携/清水晃典,津島 健,花田敬士
13. 米国の膵癌早期発見イニシアチブ(EDI)の現況と日本の早期診断に関連する患者会の啓発活動/眞島喜幸
4,400円
特集●潰瘍性大腸炎 内科診療の即戦力を身につける!―急増する患者の日常診療に求められる必須アップデート―
企画編集/中村志郎(大阪医科薬科大学 第二内科 専門教授)

<特集にあたって>

 日本において炎症性腸疾患(IBD)の患者数は年々増加の一途をたどり,難病研究班で実施された近年の疫学調査で,潰瘍性大腸炎(UC)は約22万人,クローン病(CD)が約7万人と報告され,IBD 30万人時代が到来しています.特にUCは患者数の増加が著しく,以前に比べ高齢者における発症もめずらしくなくなってきています.かつては希少疾患とされていましたが,通常の内科診療の場においても日常的に遭遇する疾患となってきており,消化器内科医や総合内科医にとっても,本疾患に対する初期の的確な診断や治療的対応は,プライマリーケアの観点からもニーズの高い時代がやってきています.
 IBD領域では2002年に,初めての生物学的製剤,すなわちTNF-αに対するモノクロナール抗体のインフリキシマブが保険承認され,それを皮切りとして,内科治療が急速に進歩しています.特にUCではベースライン治療の強化とともに,従来にはなかったステロイドに代わる有効な代替療法が数多く登場し,難治例においてもステロイドからの離脱とその後の長期の寛解維持が可能となり,内科治療の成績は飛躍的に改善されつつあります.このような内科治療の進歩に伴い,治療目標も患者さんの症状のコントロールから,より長期予後の改善に関連する病変治癒へと高度化され,それを達成する具体的な方略としてIBD領域においてもTreat to Target戦略が推奨され,世界的に普及してきています.しかし,このような内科治療成績の改善は,一方で長期経過例とそれに付随した炎症由来の大腸癌合併例の増加という新たな課題を臨床現場にもたらしている側面もあります.
 そこで今回の特集号では,実際に潰瘍性大腸炎の患者を診療する現場において遭遇するさまざまな臨床的局面で,求められる最適な診療対応について,日本を代表する炎症性腸疾患の専門医から最新情報にもとづいたエッセンスを解説いただき,明日からの診療にすぐ役立つ即戦力を獲得してもらえる内容を念頭に企画を行わせていただきました.この号のタイトルに目がとまり,立ち読みから購入してくださった先生方の日々の診療に役立つことを期待しております.
 診療,研究ならびに学会活動などで大変お忙しい中,企画をご理解いただき,快く原稿の作成をお引き受けいただいた全国の著名な先生方,また,このように有意義な企画の機会を与えて下さり,完成にまで尽力を下さいました月刊消化器内科編集部の皆様に,心から厚く御礼申し上げます.

中村志郎
大阪医科薬科大学 第二内科 専門教授


<目次>

1. 潰瘍性大腸炎の病態と治療薬―多様な内科治療の作用機序を知る―/仲瀬裕志
2. 内科診療に必要な最新の治療戦略―Treat to Target戦略とバイオマーカーを理解する―/新﨑信一郎
3. 潰瘍性大腸炎の内視鏡診断と鑑別疾患―正確な診断と状況判断に必要な所見を逃さない―/向坂秀人,久能宣昭,阿部光市,船越禎広,石橋英樹,平井郁仁
4. 潰瘍性大腸炎 治療指針とガイドライン―最新版の改訂ポイントを押さえる―/長沼 誠
5. COVID-19流行下の内科診療とワクチン接種における注意点―今一番必要な情報を学ぶ―/松浦 稔,久松理一
6-1. 基準治療① 5-ASA製剤と局所製剤の最適化―熟知し使いこなす!―/安富絵里子,井口俊博,平岡佐規子
6-2. 基準治療② 副腎皮質ステロイドとチオプリンの最適化―有効性と安全性の面から副腎皮質ステロイドとチオプリンによる治療をBrush upする―/松岡克善
7-1. Option治療① 難治例に対する抗TNF-α抗体製剤とJAK阻害剤のベストユース/北條 紋,小林 拓
7-2. Option治療② 難治例に対するカルシニューリン阻害剤/血球成分除去療法のベストユース/柿本一城,木下直彦,小柴良司,宮嵜孝子,中村志郎
7-3. Option治療③ 難治例に対するIL-12/23阻害薬/α4β7インテグリン阻害薬のベストユース/杉本 健
8-1. 潰瘍性大腸炎のspecial situation① 妊娠・出産・高齢/渡辺知佳子
8-2. 潰瘍性大腸炎のSpecial situation② 腸管外合併症/猿田雅之
9. 潰瘍性大腸炎の総合的な診療におけるサーベイランス内視鏡の最適化/渡辺憲治
10. 潰瘍性大腸炎 外科治療の適応とタイミング/小金井一隆,辰巳健志,黒木博介,小原 尚,杉田 昭
4,400円
特集●好酸球性消化管疾患
企画編集/木下芳一(兵庫県立はりま姫路総合医療センター 院長)

<特集にあたって>

 世界の多くの地域で,衛生環境の改善に伴ってアレルギー疾患が増加している.アレルギー疾患では,本来体を守るべき免疫機構が環境内に存在するそれほど害のない物質に過剰に反応して,体に対して不利益な炎症反応を引き起こす.その結果,さまざまな症状が出現するとともに臓器機能が傷害され,生命予後にかかわる場合も少なくない.本来,消化管にアレルギーは起こりにくく,経口摂取された物質に対しては免疫トレランスが誘導されると認識されていた.実際,3 大アレルギー疾患といえば気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎をさしており,消化管疾患は含まれていなかった.ただ,近年これらの気道系のアレルギー疾患に続いて,食物アレルギー,アレルギー性の消化管疾患が増加していることが注目されている.
 食物に対するアレルギー性疾患では,IgE 依存性の一般的な食物アレルギーに加えて,IgE 依存度が低く慢性的な経過を取りやすい消化管のアレルギー疾患として,好酸球性消化管疾患が注目されている.これには,好酸球性消化管疾患の1 つである好酸球性食道炎患者が世界中で急増していることが関係していると考えられる.好酸球性食道炎は,欧米では有病率が人口10 万人当たり50 人に達している.日本においても好酸球性消化管疾患,特に好酸球性食道炎が増加しており,好酸球性消化管疾患と包括して厚生労働省が難病に指定している.
 厚生労働省の指定難病に関するホームページには,好酸球性消化管疾患の概略と診断,治療の基本が記載されており,さらに厚生労働省の研究班が中心となって診療ガイドラインも作成された.また,関連学会の教育講演会でも好酸球性消化管疾患についての解説が行われる機会が増えてきている.
 このような中で,今回,『消化器内科』の特集として好酸球性消化管疾患を取り上げさせていただいた.まず石原俊治先生には消化管の免疫機構の解説をしていただいた.消化管の免疫の特徴を他の臓器の免疫機構と比較して解説いただき理解していただきやすい内容となっていると考えている.次いで松本健治先生にはアレルギーの基礎的な解説をしていただいている.アレルギー疾患が増加している理由に関しても理解していただけると思う.千貫祐子先生には好酸球性消化管疾患の近縁疾患ともいえるIgE 依存性の食物アレルギーに関して解説をいただいた.野村伊知郎先生,大塚宜一先生,山田佳之先生にはそれぞれ好酸球性消化管疾患の概念と分類,新生児・乳幼児のガイドラインと幼児・成人のガイドラインの解説をいただいた.さらに,好酸球性食道炎に関しては,藤原靖弘先生,岩切勝彦先生,石村典久先生に疫学,病態,診断,治療,予後に関して分担して解説していただき,好酸球性胃腸炎に関しては今枝博之先生,松本主之先生と私,木下で分担して解説をさせていただいた.
 本特集を通読していただければ,現在の好酸球性消化管疾患に関する研究と診療の現状がかなり詳しく理解していただける構成となっている.アレルギー疾患を有する患者が消化器系症状を訴え,内視鏡検査を実施したときに,病理組織検査で消化管粘膜に好酸球が多数浸潤しているとする報告を受け取った場合には,本特集を参考としていただければ診療を行っていくうえで大きな助けとなると確信している.本特集を手にした先生方を,外来で,病棟で,たくさん見かけることを楽しみにしている.

木下芳一
兵庫県立はりま姫路総合医療センター 院長


<目次>

1. 消化管免疫の基礎知識/岸本健一,岡 明彦,石原俊治
2. アレルギーの基礎知識/松本健治
3. 食物アレルギーの基礎知識/千貫祐子
4. 好酸球性消化管疾患の概念と分類/永嶋早織,野村伊知郎
5. 新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症診療ガイドライン/大塚宜一
6. 幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン/山田佳之
7. 好酸球性食道炎の疫学・病態・発症機序/田中史生,金森厚志,沢田明也,藤原靖弘
8. 好酸球性食道炎の診断と鑑別診断/川見典之,岩切勝彦
9. 好酸球性食道炎の治療と予後/石村典久
10. 好酸球性胃腸炎の疫学・病態・発症機序/今枝博之,小林威仁,都築義和,大庫秀樹,中元秀友
11. 好酸球性胃腸炎の診断と鑑別疾患/木下芳一,佐貫 毅,八幡晋輔,大内佐智子
12. 好酸球性胃腸炎の治療と予後/松本主之,鳥谷洋右,梁井俊一
4,400円
特集●ピロリ菌感染症治療の問題点
企画編集/古田隆久(浜松医科大学医学部附属病院 臨床研究センター 病院教授)

<特集にあたって>

 Helicobacter pylori(ピロリ菌)の発見から約40年以上が経過し,上部消化管疾患の概念は大変革を遂げた.この細菌を除菌することで再発を繰り返してきた消化性潰瘍の自然史が大きく変わり,胃癌の発生を減少させることも可能になってきた.除菌療法もボノプラザンの出現により,日本の除菌療法は現在の世界のトップといえる.最近では,ピロリ菌感染の診療体系はある程度完成されたようにもみえ,学会の興味は,ポストピロリとよくいわれるように,ピロリ菌陰性疾患に移行しつつある.
 しかし,実臨床に目を向けた場合には,ピロリ菌感染例は多数おり,除菌後も含めて関連する諸問題も十分に解決されたとは言いがたい.そこで,今回は,ピロリ菌感染の現状の課題を思い浮かべるままに列挙しそのまま章立てとし,役得とばかりに私が最も意見を伺いたい先生方に執筆をお願いした.
 まず,胃がん対策としてのピロリ菌対策について淳風会健康管理センターの間部克裕先生にお願いした.間部先生は,若年者対策から,成人に至るまで胃癌撲滅に対する取り組みの最前線に立つ方であり適任である.
 次に感染診断の問題点を青森県総合検診センターの下山 克先生にお願いした.下山先生はいくつかの診断法の開発に関わってもおり,豊富なデータと経験を有している.現在の感染診断のピットフォールをわかりやすく解説していただくこととした.
 胃炎の血清診断とピロリ菌の関連については広島大学総合内科・総合診療科の伊藤公訓先生にお願いした.日本で最も多くのデータを有している研究グループであり,最新の情報をお願いすることとした.
 一次除菌,二次除菌に関しては,現在の保険診療の問題点を訴えたく,私が担当することとした.
 救済療法に関しては,横浜市立大学の須江聡一郎先生にお願いした.多くの前向きの試験を実施している新進気鋭の研究者である.三次除菌や薬剤アレルギーや基礎疾患を有する場合の除菌について最新のトピックスも交えての執筆をお願いした.
 ピロリ菌除菌後の良性疾患に関して秋田大学の飯島克則先生にお願いした.除菌前後の胃酸分泌動態に関して多くの業績があり,除菌後の疾患構造の変化について食道から十二指腸までの執筆をお願いした.
 除菌後の胃悪性疾患,特に胃癌について新潟大学地域医療教育センターの八木一芳先生にお願いした.RACの提唱者であり,現在のIEEの発展に大きく寄与した方である.最新の診断学について,誌面の許す範囲でお願いした.
 薬剤による胃粘膜傷害は永遠の課題である.そこでこの分野で多くの経験を有する大阪医科大学の竹内利寿先生にピロリ菌との関連についてお願いした.
 ピロリ菌感染が減ってきて注目を浴びてきているのが自己免疫性胃炎である.ここは藤枝市立総合病院の丸山保彦先生にお願いした.ピロリ菌感染胃炎との鑑別も含めて解説してもらうこととしている.
 ピロリ菌やその除菌の腸内細菌への影響と機能性胃腸疾患との関わりについては東京医科大学の杉本光繁先生にお願いすることとした.そして,酸分泌抑制薬との関連も含めて解説してもらうこととした.
 ピロリ菌感染は全身免疫にも影響を及ぼし,特発性血小板減少性紫斑病や慢性蕁麻疹との関連はよく知られているが,それ以外についての最近の進歩はあまり聞かれてない.この分野でも多くの業績のある川崎医科大学の塩谷昭子先生にご執筆をお願いした.
 そしてピロリ菌以外のヘリコバクター属(NHPH)に関しては,この分野の第一人者の中村正彦先生にお願いした.NHPHの最新の情報を解説していただくこととした.

 以上,ピロリ菌の最先端の情報が得られる章立てとなっている.執筆者も,日本を代表するピロリ菌研究者にお願いしており,本特集を一読することで,ピロリ菌感染症の現在の問題点が理解でき,明日からのピロリ菌関連疾患の診療に大きく役立つと確信している.

古田隆久
浜松医科大学医学部附属病院 臨床研究センター 病院教授


<目次>

1. ピロリ菌感染への年代別対策/間部克裕,奥田真珠美,菊地正悟,加藤元嗣,浅香正博
2. ピロリ菌感染診断Up date/下山 克
3. ピロリ菌感染症と血清ペプシノゲン,ガストリン/伊藤公訓
4. ピロリ菌の一次除菌療法,二次除菌療法の現状と問題点/古田隆久
5. ピロリ菌救済療法の現状と問題点/須江聡一郎,前田 愼
6. ピロリ菌除菌後の良性疾患/渡邊健太,飯島克則
7. 除菌後発見胃癌について/八木一芳,星 隆洋,阿部聡司,森田慎一,須田剛士,寺井崇二
8. 薬剤性胃十二指腸粘膜傷害とピロリ菌感染/竹内利寿
9. 自己免疫性胃炎とピロリ菌感染の関わりについて/丸山保彦
10. ピロリ菌感染と胃内細菌叢・腸内細菌叢/杉本光繁,新倉量太,永田尚義,河合 隆
11. 胃疾患以外のピロリ菌関連疾患の現状と理解/半田有紀子,半田 修,松本啓志,梅垣英次,塩谷昭子
12. NHPHの現状の理解/中村正彦,高橋信一,鈴木秀和
4,400円
特集●体外式超音波による消化管疾患の診断
企画編集/畠 二郎(川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)教室 教授)

<特集にあたって>

 日本において超音波というモダリティはCTやMRIの陰に隠れた地味な存在であり,場合によってはあってもなくてもいいものと見なされているように感じることがある.特に救急の現場において,何はともあれまずCTという風潮がそれを物語っている.しかしながら近年救急の現場などでの超音波の有用性が高く評価されるようになり,point-of-care超音波として国際的に注目され,数多くの論文が報告されている.現在はその有用性を議論する時期は過ぎ,いかに医師や学生に超音波を教育するかに関心が移りつつある.本来超音波はその非侵襲性,簡便性,リアルタイム性,さらに広い普及度などから診療における第一選択的検査ともいえ,この国際的な動向は何ら不思議ではない.
 一方,消化管疾患の診療を専門とする医師にとって,超音波はさほど馴染み深いものではない.壁が薄い,ガスが邪魔,オリエンテーションがつかないなど,一般的に消化管の超音波診断に対してネガティブなイメージがあるが,実際には腫瘍性,炎症性疾患の多くが体外式超音波により描出され,その診断すら可能である.特に急性腹症など,消化器内科医の伝家の宝刀である内視鏡が施行困難な状況においても,超音波は多大な威力を発揮する.さらに近年では炎症性腸疾患(IBD)における局所活動性モニタリングとしても注目を集めるようになり,海外ではすでに臨床応用されている.簡単に言えば,粘膜の微細な変化をみるには内視鏡,貫壁性の情報を得るには超音波が適しており,両者は対極に存在するのではなく相補的な関係である.この両者のバランスが偏っているということは,日常診療が偏った情報に基づいている,あるいは過剰な侵襲を患者に与えているなどの可能性も危惧される.
 本特集では,どのように消化管をスクリーニングするか,画像解析はどう進めていくかという消化管超音波診断の総論的事項とともに,各論では胃や小腸,大腸など各領域における腫瘍性・非腫瘍性疾患の診断,また近年話題となっているIBDの超音波診断ならびに活動性モニタリング,さらには一般的に診断が容易でないとされている腸管虚血の診断などについても解説する.執筆陣は,実際に消化管超音波診断を自らが第一線で行っておられる医師・技師の方々を厳選しており,退屈な一般論ではなく臨床的で説得力のある内容となっている.どの章においても,超音波は単なるスクリーニング法ではなく,診断すら可能な精密画像診断法であることがご理解いただけるであろう.
 以前から,企画者は消化管超音波診断が消化管疾患のより効率的かつ効果的な診療において不可欠であると訴えてきたが,その普及を妨げている要因に消化管専門医の認識不足もあげられる.是非本特集をご一読いただき,消化管疾患にはまずエコー,というパラダイムシフトが生まれれば望外の喜びである.

畠 二郎
川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)教室 教授


<目次>

1-1. 消化管の基本走査法と各部位の正常像/長谷川雄一,万代恭史
1-2. 消化管の異常像と解析の手順/畠 二郎,今村祐志,中藤流以,眞部紀明
2-1. 上部消化管の腫瘍性病変に対する体外式超音波検査/豊田英樹
2-2. 胃・十二指腸の非腫瘍性病変/長谷川雄一,万代恭史
2-3. 小腸の腫瘍性病変/高田珠子,畠 二郎,中藤流以,今村祐志
2-4. 小腸の非腫瘍性病変/西田 睦
2-5. 大腸の腫瘍性病変/岩崎信広,鄭 浩柄,猪熊哲朗
2-6. 大腸・虫垂の非腫瘍性病変/多田明良,畠 二郎
2-7. 潰瘍性大腸炎の診断と活動性評価/木下賢治,桂田武彦,西田 睦
2-8. クローン病に対する体外式超音波検査,診断,活動性評価/西田大恭,国崎玲子,谷口勝城,佐藤 翔,沼田和司
2-9. 腸閉塞の超音波診断/畠 二郎,今村祐志,中藤流以,眞部紀明
2-10. 腸管虚血の超音波診断 ―SMA塞栓症,NOMIなど―/今村祐志
4,400円
特集●非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)―臨床の現状と課題―
企画編集/岡上 武(大阪府済生会吹田病院 名誉院長/消化器内科)

<特集にあたって>

 優れた治療薬の開発でウイルス肝炎患者は激減し,最近の肝臓の主役は肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧などいわゆる生活習慣病をベースとした非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)となっている.NAFLD患者は世界に10億人と言われ,慢性肝疾患では最大で,わが国の罹患者は2,000万人前後と言われている.予後不良型NAFLDである非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は全体の20%未満と思われるが,その確定診断は肝生検がgold standardである.しかし,肝生検は侵襲的でsampling error,病理医間のinterobserver’s differenceなど問題点が多く,しかも極めて多数の患者に肝生検を実施することは現実的ではない.30年程前からNAFLDのscreening,NAFL,NASHの鑑別診断,NASH線維化診断に血液生化学検査を用いた非侵襲的診断法(NITs)や画像診断法の開発が精力的に行われ,NITや画像診断の進歩にわが国の研究者が大きく貢献した.しかし,肝生検を代替できるまでには至っておらず,このことがNASH治療薬の開発の大きなハードルの1つとなっている.
 肝線維化の程度(stage)は予後を規定する重要な因子で,肝硬変に進展すると肝移植しか治療法がなく,またNASH肝がんでは腫瘍マーカーAFP陰性例が多く,ウイルス肝炎起因の肝がんの臨床とは大きく異なる.NAFLD/NASHは生活習慣病合併を含む患者背景,遺伝的素因など,個々の症例で大きな差があり,病因・病態はかなりheterogeneousで,どのようなNAFLがNASHに進展し,またどのようなNASHが予後不良なのか,十分明らかにされていない.
 従来肥満・糖尿病・高血圧などから脂肪肝が発症すると言われてきたが,最近の研究から脂肪肝が糖尿病や高血圧発症の原因となることが明らかになり,糖尿病や高血圧などは動脈硬化や認知症をきたし,またNAFLD患者では肝のみならず食道,胃,すい臓,大腸,前立腺など種々の臓器の発がん率が高いことが明らかになっており,NAFLD/NASHの臨床の重要性が増しており,有効な治療法の確立が喫緊の課題である.
 このような背景から,本企画では長年NAFLD/NASHの臨床・研究に従事し,現在も第一線で活躍している先生方に,これらの問題点につき執筆していただいた.本書を一読していただければ,NAFLD/NASHの臨床に関する種々の問題点も含め,明日の臨床・研究に役立つ最新の情報が得られるものと確信している.コロナ禍の中,貴重な論文を執筆していただいた先生方に感謝し,「特集にあたって」とする.

岡上 武
大阪府済生会吹田病院 名誉院長/消化器内科


<目次>

1. NAFLD/NASHの疫学/建石良介
2. NAFLD/NASHの病理診断のポイントと問題点/原田憲一,吉村かおり
3. NAFLD/NASHの病因 ―脂質代謝異常を中心に―/中牟田 誠
4. 糖尿病とNAFLD/NASH/細川友誠,小川 渉
5. 心血管疾患とNAFLD/小関正博
6. NAFLD/NASHの自然経過と予後/川中美和
7. NAFLD/NASHの画像検査/中島 淳,米田正人,今城健人,小林 貴,本多 靖,斎藤 聡
8. NAFLD/NASHの非侵襲的診断法(NIT)/島 俊英,片山貴之,光本保英,岡上 武
9. AIを用いたNAFLD/NASH診断/岡上 武,島 俊英,水野雅之,光本保英,片山貴之
10. NAFLD/NASHと遺伝的背景/伊藤義人,山口寛二,瀬古裕也
11. NASH治療と今後の展望/角田圭雄,中島 淳,岡上 武
12. 日本と欧米のNAFLD/NASH診療ガイドラインの特徴/徳重克年
4,400円
特集●早期胃癌診断2022 ―明日から役立つ実践ガイド―
企画編集/平澤俊明(がん研有明病院 上部消化管内科 胃担当部長)

<特集にあたって>

 まだ戦後の混乱が収まらない昭和25年,東京大学医学部附属病院分院の薄暗い手術室で,人の胃の内部の撮影実験が行われていました.胃癌の早期診断を目指して,胃カメラが開発されていたのです.そこには,人々の命を救いたいという一心から数々の困難に立ち向かった若き医師と技術者の執念がありました.その執念が実り,当時,欧米でも不可能と言われていた直径わずか12mmの中にカメラのすべての機能を収めることに成功しました.世界初の胃カメラの誕生です.
 あれから70年の年月が流れ,年号も昭和,平成,令和と変わりました.しかし,「胃癌を早期に発見して治癒させる」という熱意は,医師と機器開発技術者に脈々と受け継がれていったのです.そして,胃カメラからファイバースコープ,電子内視鏡と機器は進化し,拡大内視鏡,NBIなどの新しいモダリティーも開発されました.機器の進化と内視鏡医の技術の向上により,胃癌は早期に発見されるようになり,早期胃癌の治療は外科手術から低侵襲のESDが主流となりました.
 このように胃癌の診断は格段に進歩しましたが,まだ改善の余地が残されていると私は考えます.胃炎に類似している胃癌の診断は手ごわく,臨床現場では存在診断,範囲診断で悩む症例もまだまだ多いです.手技,診断のレベルは均一化されているとは言い難く,除菌後胃癌,ピロリ菌未感染胃癌という新しい課題にも直面しました.そのような状況の中,早期胃癌の診断などに悩みながら内視鏡検査を続けている医師も多いと思います.
 今回,「早期胃癌診断2022 ―明日から役立つ実践ガイド―」というテーマで特集号を組ませてもらいました.今回の特集号の目的は,「臨床現場の早期胃癌内視鏡診断の困りごとの解決」です.まず,何が明日からの診療に役立つかということを知るために,私が主催する内視鏡医向けのメールマガジン「内視鏡アトラス」の読者1,500名に,早期胃癌の内視鏡診断に関して困っていること,悩んでいること,知りたいことを尋ねてみました.そこで,以下のclinical questionを抽出しました.
 「胃癌のリスクの最新エビデンスは?」,「鎮静剤・鎮痛剤はどうすればよいの?」,「胃癌を見逃さないコツは?」,「癌と非癌の鑑別の根拠は?」,「NBI/BLI・LCIはどうやって使いこなすの?」,「範囲診断,深達度診断のポイントは?」,「除菌後胃癌と未感染胃癌を診断する注意点は?」,「生検は何個必要?」,「フォローアップの間隔は?」,「病理でGroup2と診断された,どうすればよいの?」……いずれも皆さんも疑問に思ったことがある内容だと思います.
 これらの臨床的疑問を解説してもらう執筆者は,いずれも第一線の臨床現場で活躍されている先生方です.そして,私が尊敬する医師でもあります.2022年時点での早期胃癌の診断についてのエビデンスを整理して,明日から役立つ実践的な内容で,わかりやすく記述していただきました.「この特集号を読めば,早期胃癌の内視鏡診療が変わる!」,そのようなインパクトがある特集号に仕上がっています.熟読して,知識をブラッシュアップさせ,明日からの臨床に役立ててください.

平澤俊明
がん研有明病院 上部消化管内科 胃担当部長


<目次>

1. 癌のリスク層別化 ―検査前にリスクは層別できるか―/吉永繁高
2. 早期胃癌を発見するための準備 ―検査前の準備が大切!―/間部克裕,笹井貴子,井上和彦,加藤元嗣,春間 賢
3. 早期胃癌を発見するコツ ―白色光での胃癌の拾い上げのポイント―/北沢尚子,中島寛隆
4. 早期胃癌を発見するための画像強調観察 ―BLI,LCI,NBIで胃癌を拾い上げる!―/土肥 統,石田紹敬,吉田拓馬,安田剛士,伊藤義人
5. 癌と非癌の鑑別診断 ―根拠を持って癌と診断する!―/森田周子
6. 早期胃癌の深達度診断 ―術前にどこまで診断できる?―/菊池大輔,鈴木悠悟,野村浩介,田中匡実,松井 啓,布袋屋 修
7. 早期胃癌の範囲診断 ―わかりにくい範囲が見えてくる!―/北村陽子
8. 除菌後胃癌 ―苦手な除菌後胃癌を克服する!―/赤澤直樹
9. ピロリ菌未感染胃癌 ―内視鏡所見のポイントを解説!―/泉 敦子,堀内裕介,藤崎順子
10. 胃癌を診断するための生検 ―差がでる生検手技―/吉田尚弘,土山寿志
11. 早期胃癌を発見するためのサーベイランス ―誰に,どのぐらいの間隔で検査するの?―/大久保佑樹,上堂文也
12. 早期胃癌の病理診断 ―臨床医に知ってほしい病理のこと―/中野 薫,河内 洋
4,400円
特集●小腸疾患に対する内視鏡の役割
企画編集/山本博徳(自治医科大学内科学講座 消化器内科学部門 主任教授)

<特集にあたって>

 今回の月刊『消化器内科』では「小腸疾患に対する内視鏡の役割」というテーマで特集を企画させていただきました.
 2000年代に入り,バルーン内視鏡,カプセル内視鏡が登場し,小腸疾患の診断治療においても内視鏡の果たす役割が大きくなり,小腸疾患の診療に大きな変革をもたらしました.これらのモダリティが開発されてすでに約20年が経過し,実診療の中での位置づけも徐々に定まってきたように感じています.
 今回の特集では,小腸内視鏡が大きくその診断・治療に影響をもたらした病態として,クローン病,小腸出血,Peutz-Jeghers症候群,家族性大腸腺腫症,小腸異物,小腸腫瘍に的を絞り,それぞれの専門の先生方にご解説いただきました.クローン病に対する治療法はさまざまな生物学的製剤の登場などもあり,大きく進歩してきてはいますが,いまだに原因不明で寛解導入・維持を治療目標としています.クローン病の小腸病変は狭窄などの合併症を生じやすく,予後に大きく影響を与えています.小腸病変の評価,狭窄の治療において内視鏡の果たす役割は大きく,小腸内視鏡の役割をよく理解しておくことが重要です.小腸出血に関してもその診断,治療にカプセル内視鏡,バルーン内視鏡は革命をもたらしたと言っても過言ではありません.その診断・治療に関する最新の知見を解説していただきました.Peutz Jeghers症候群は,小腸に多発する過誤腫性のポリープが多発する疾患ですが,ポリープを先進部とした腸重積によって腸閉塞,開腹手術を繰り返すことを余儀なくされてきました.しかし,近年ではバルーン内視鏡によって十分管理が可能となり,開腹手術を避けることができるようになっています.家族性大腸腺腫症は,主に大腸に多発する腺腫性ポリープ,癌を生じる疾患ですが,十二指腸を中心とした小腸にも腺腫性ポリープが多発します.近年では,多発する平坦型腺腫性ポリープに対してもcold snare polypectomyなどの使用で安全かつ効率的に内視鏡的治療が可能となっています.以前は小腸異物は内視鏡的除去ができず,開腹手術による回収を必要としていましたが,近年ではカプセル内視鏡の滞留を含む小腸異物に対しても内視鏡的除去が可能となっています.癌を始めとする小腸腫瘍に関しても,以前は内視鏡的アプローチはできず,予後不良の場合が多かったのですが,カプセル内視鏡,バルーン内視鏡により比較的早期での診断,治療が可能となり,予後の改善が見られています.
 このようにかつては,小腸は暗黒大陸ともよばれ,内視鏡の到達できない診断の困難な領域とされておりましたが,今やカプセル内視鏡,バルーン内視鏡を活用することで,小腸疾患の効率的な診断や低侵襲で効果的な治療が可能な時代となっています.これらを活用できないことで小腸疾患に苦しむ患者さんの不利益となってしまわないためにも,実際に小腸内視鏡を施行される先生方だけではなく,消化器疾患を診療される先生方に広く知っておいていただきたい知識だと考えています.
 特集の最後には,煩雑なカプセル内視鏡読影に革命的な改革をもたらすであろうAI診断に関して解説していただき,将来展望とさせていただきました.
 今回の特集が,読者の先生方の日常診療に大きく役立つものとなることを期待しております.

山本博徳
自治医科大学内科学講座 消化器内科学部門 主任教授


<目次>

1-1. クローン病小腸病変に対するカプセル内視鏡による評価/細江直樹
1-2. クローン病小腸病変に対するバルーン内視鏡による評価/大塚和朗
1-3. クローン病小腸狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術/矢野智則
2-1. 小腸出血診断におけるカプセル内視鏡の役割/藤森俊二,田中 周,岩切勝彦
2-2. 小腸出血診断におけるバルーン内視鏡の役割/大宮直木
2-3. 小腸出血に対する内視鏡的止血術/壷井章克,岡 志郎,隅岡昭彦,飯尾澄夫,田中信治
3. Peutz-Jeghers症候群に対する内視鏡的マネージメント/坂本博次,小黒邦彦,矢野智則,山本博徳
4. 家族性大腸腺腫症における小腸ポリープの内視鏡的治療/坂本博次,関谷万理子,矢野智則,山本博徳
5. 小腸における異物回収-カプセル内視鏡の回収を中心に-/田中 周,大森 順,西本崇良,辰口篤志,藤森俊二
6. カプセル内視鏡による小腸腫瘍診断の留意点/河合幹夫,渡辺憲治
7. バルーン内視鏡による小腸腫瘍の診断と治療/阿部光市,久能宣昭,石橋英樹,濱田義浩,濵﨑 慎,平井郁仁
8. カプセル内視鏡読影におけるAI診断/山田篤生
4,400円
特集●膵癌の診断と治療 ―最新の話題―
企画編集/海野倫明(東北大学大学院医学系研究科 外科病態学消化器外科学分野 教授)

<特集にあたって>

 膵癌は固形癌の中で最も予後不良な「最凶の癌」と呼ばれる.好発患者の絞り込みが難しく,また自覚症状が少ないため発見時には進行癌であることが多い.解剖学的にも後腹膜に存在する臓器で,十二指腸や胃,胆管,脾臓などの臓器と接し,また腹部大動脈や下大静脈,門脈,上腸間膜動脈などの重要血管と近接していることから,手術は難易度が高く,浸潤のため手術が不可能となる症例も多い.その一方で,治癒切除ができた症例であっても術後早期に再発することもまれではなく,外科医が無力感を抱えることもしばしばであった.このように暗黒時代が長く続いたのであるが,中世にルネッサンスが訪れたように,ついに膵癌も暗黒時代が終わり,新しい時代が訪れようとしている.このような観点から,内科・外科・放射線科の12名のエキスパートによる「膵癌の診断と治療 ―最新の話題―」の特集を企画した.
 近年,膵臓癌の早期診断が可能になりつつある.これは疫学研究,遺伝子解析,実験動物モデル,病理学的検討などによる膵癌発生機序の解明が寄与しているものと思われる.膵癌研究を先導する3名の先生からこれらを概説していただいた.
 各種画像診断の発展も,膵癌の治療成績向上に大きく貢献している.EUS/US,MRI/CTについてそれぞれのスペシャリストに解説していただいた.また,EUS-FNAにより従来困難であった組織生検が可能となり,手術や化学療法に大きく貢献している.膵癌のEUS-FNAによる組織生検の重要性についても別途解説していただいた.
 早期診断が可能となり化学療法の発展も著しいが,現在においても治療の中心は外科手術である.近年,切除可能性分類に従った治療方針を立てることが一般的になり,内科医にも手術関連の基本的知識が必須となったと考える.この点を踏まえ,切除可能性分類,膵癌の標準手術,周術期補助化学療法,コンバージョン手術について,外科手術のエキスパートから内科医向けにわかりやすく解説していただいた.最後に,切除不能膵癌に対する化学療法と,重粒子線治療を含めた放射線治療について最新のトピックスを取り上げた.
 本特集により,膵癌に対する最新の話題を提供することで,社会に広く浸透し,さらに治療成績が向上することを期待している.「最凶の癌」から脱し,「治る癌」への新たな時代の訪れを読者とともに迎えたいと考えている.

海野倫明
東北大学大学院医学系研究科 外科病態学消化器外科学分野 教授


<目次>

1. 膵癌の疫学とリスクファクター/滝川哲也,菊田和宏,正宗 淳
2. 膵癌の病態 ―遺伝子異常―/佐藤賢一
3. 膵癌の病理学的トピックス/古川 徹
4-1. 膵癌診療における超音波・超音波内視鏡の最新の話題/岡庭信司,比佐岳史
4-2. 画像診断 ―MRIとCT―/戸島史仁,蒲田敏文
5. EUS-FNAによる膵癌の病理診断/菅野 敦
6. 膵癌取扱い規約と切除可能性分類/石田晶玄,水間正道,海野倫明
7. 膵癌手術/五十嵐隆通,渋谷和人,山峯直樹,吉岡伊作,藤井 努
8. 膵癌の術前・術後補助療法/水間正道,海野倫明
9. コンバージョン手術/山本智久,里井壯平,山木 壮,橋本大輔,関本貢嗣
10. 切除不能膵癌に対する薬物療法/小林 智,上野 誠
11. 切除不能膵癌に対する放射線治療 ―重粒子線治療―/篠藤 誠,瀧山博年,山田 滋
4,400円
特集●消化器内視鏡医に必要な病理の基礎知識
企画編集/八尾隆史(順天堂大学大学院医学研究科 人体病理病態学 教授)

<特集にあたって>

 消化管には,種々の腫瘍性疾患に加えて,感染症(H. pylori,ウイルス,真菌,梅毒,腸管スピロヘータ症,アメーバ赤痢,細菌感染性腸炎,結核など),薬剤・化学物質による傷害(NSAIDs,PPI,抗癌剤,胆汁逆流など),虚血性腸炎,炎症性疾患(好酸球性胃腸炎,A型胃炎,セリアック病,Lymphocytic enteritis,collagenous colitis,潰瘍性大腸炎,クローン病など),沈着症(アミロイドーシス,ランタン沈着症など),粘膜脱症候群,腫瘍様病変(過形成性,過誤腫性,迷入組織など)などさまざまな非腫瘍性疾患がある.
 消化管を専門としていない病理医がすべての消化管疾患を確実に診断することは現実的には困難であり,誤診の防止と確定診断には,消化管を専門としている内視鏡医が臨床情報や鑑別診断を病理医へ伝えることに加え,病理と討論するための病理学的知識を身につける必要がある.
 確定診断には生検の有効活用が重要であるが,それぞれの疾患における生検の有用性を理解した上で,適切な部位から適切な個数の生検採取を行う必要がある.そして,生検は病変の一部しか採取されないため,生検のみでは確定診断できない病変の存在も知っておく必要がある.また,異型を示す非腫瘍性病変(逆流性食道炎,好酸球性食道炎,粘膜脱症候群,Lymphomatoid gastropathyなど)は悪性と誤診される危険性があり,逆に低異型度の悪性腫瘍(低異型度の癌やリンパ腫など)は非腫瘍性あるいは良性腫瘍と誤診される危険性があり,誤診防止にはこのような病変の病理組織像の理解が必要であり,それに対応した内視鏡像を把握しておくことが重要である.
 本特集では,内視鏡医に病理学的知識を習得していただくことを目指して,まずは基本的事項(総論)として,生検病理診断に必要な臨床情報について藤原先生に,病理診断に適した検体について二村先生に執筆していただいた.そして,重要な非腫瘍性疾患の病理学的特徴の理解として食道疾患について森永先生に,胃疾患について九嶋先生に,IBD以外の炎症性腸疾患について伴先生に,IBDについて林先生に執筆していただいた.生検のみでは確定診断が困難な病変が存在することも知っておく必要があり,それらのうち内視鏡的粘膜切除が診断に有用である疾患について八尾が執筆した.さらに,病理診断と臨床診断の乖離を生じる危険性のある病変(とくに良悪性の鑑別が問題となる病変)の存在とそれらの組織像の理解のために,食道病変について根本先生に,胃病変について牛久先生に,腸病変について下田先生に執筆していただいた.また,病理診断に用いられる特殊染色の知識は病理報告書の理解も必要であり,非腫瘍性病変に関しては海崎先生に,腫瘍性病変を新井先生に執筆していただいた.
 内視鏡医自身で病理診断することはなくとも,病理学的知識の理解を深めることで組織像と内視鏡像との対応を念頭に置いて病変の観察を行うよう心がけ,生検組織診断の有効活用に役立てていただきたい.

八尾隆史
順天堂大学大学院医学研究科 人体病理病態学 教授


<目次>

1. 生検病理診断に必要な臨床情報/藤原美奈子
2. 病理診断に適した検体とは/二村 聡
3-1. 生検が確定診断に有用な非腫瘍性食道疾患の病理学的特徴/森永友紀子,岸本光夫
3-2. 生検が確定診断に有用な非腫瘍性胃疾患(胃炎・胃症)の病理学的特徴/九嶋亮治
3-3. 生検が確定診断に有用なIBD以外の非腫瘍性腸疾患の病理組織学的特徴/伴 慎一
4. IBDの病理学的特徴と生検組織診断の有用性/林 宏行
5. 内視鏡的粘膜切除が確定診断に有用な消化管疾患の病理学的特徴/八尾隆史,和田 了,岡野 荘
6-1. 良悪性の鑑別が問題となる食道病変の病理学的特徴/根本哲生
6-2. 良悪性の鑑別が問題となる胃病変の病理学的特徴/牛久哲男
6-3. 良悪性の鑑別が問題となる腸病変の病理学的特徴/会澤大介,岩男 泰,下田将之
7. 消化管非腫瘍性病変の病理診断における特殊染色の有用性/海崎泰治
8. 消化管腫瘍性病変の病理診断における特殊染色の有用性/新井冨生
4,400円
特集●広義の炎症性腸疾患(IBD)―重要疾患の最新知見と罹患部位による鑑別診断―
企画編集/大川清孝(大阪市立十三市民病院 消化器内科/淀川キリスト教病院 消化器内科)

<特集にあたって>

 炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)とは,通常は潰瘍性大腸炎とクローン病をさし,元々の呼び方は特発性IBDであった.今回のテーマで使用している「IBD」は,腸に潰瘍などの病変を有するすべての炎症性疾患を含む広義のIBDとしている.「IBD」には感染性腸炎,虚血性腸炎,薬剤性腸炎,膠原病・血管炎の腸病変などの多くの疾患が含まれている.消化器内科医は聞き慣れているが,一般の内科医にはあまりなじみのない分類である.なぜなら,一般的には,感染性腸炎は感染症に分類され,アミロイドーシスや血管炎のなどの全身性疾患に合併する消化管病変は,炎症性疾患とは考えないからである.しかし,内視鏡医にとっては有用な分類であり,腸病変がある場合はこれらの疾患を鑑別すればよく,狭義のIBDである潰瘍性大腸炎やクローン病との鑑別が重要であることも,その名称から示してくれている.「IBD」には多種多様な疾患が含まれており,これらすべてを把握していないと的確な鑑別ができないため,専門でない医師には苦手な領域である.しかし,専門外の医師にとっても重要な疾患が多く含まれている.第1部では,その中で重要と思われる疾患を取り上げたので,最新の知見をupdateしていただきたい.
 急性細菌性腸炎の内視鏡像は,カンピロバクター腸炎やサルモネラ腸炎では潰瘍性大腸炎との,エルシニア腸炎ではクローン病との鑑別が問題になる.アメーバ性大腸炎とクラミジア直腸炎は代表的な性行為感染症(STD)であり,他のSTDを合併しやすいため,それらの検索が必要である.また,特殊な確定診断方法についても理解しておきたい.
 Clostridioides difficile感染症は,2019年に日本のガイドラインが発表され,腸管ベーチェット病は,2020年に出されたベーチェット病診療ガイドラインの中に腸管ベーチェット病の項目が含まれている.それらの内容は把握しておきたい.好酸球性胃腸炎については,2011年に診断指針が日本で初めて作られた.一方,好酸球性食道炎は日本で急激に増加している疾患であり,好酸球性胃腸炎との関係は興味深い.虚血性大腸炎に関しては日本のガイドラインはないが,2015年にアメリカ消化器病学会による大腸虚血のガイドラインが作られている.日本の虚血性大腸炎と比べて重症例が多く,臨床像はかなり異なっているが,内容はぜひ知っておきたい.
 薬剤性腸炎は,臨床に直結するため知識のupdateが必要である.lansoplazoleは日本でのcollagenous colitisの大部分の原因であり,NSAIDsが薬剤性の原因として最も多い欧米とは異なっている.腸間膜静脈硬化症は,多くは漢方薬が原因であることが最近日本で解明された.NSAIDs起因性腸炎は,出血以外の症状はほとんどないが,最も頻度の高い薬剤性腸炎である.高血圧の治療薬であるオルメサルタンに起因するスプルー様腸症は,最近日本でも報告がみられる.免疫チェックポイント阻害剤による免疫関連有害事象(irAE)関連大腸炎も増加しており,その臨床的特徴像や内視鏡像は把握しておきたい.
 第2部として,罹患部位による鑑別診断をとりあげた.十二指腸下行部病変で診断できる「IBD」は多いと筆者は常々感じており,IgA血管炎やアミロイドーシスなどが代表的疾患である.小腸に広範囲病変を見た場合には,いくつかの代表的な「IBD」を列挙できるようになりたい.回盲部や下部直腸は潰瘍が多くみられる部位であり,この部位に好発する疾患とその特徴的内視鏡像は知っておく必要がある.
 本特集では,第1部と第2部に分けよくばった企画になったが,熟読していただければ,明日からの日常診療に必ず役立つ内容であると自負している.

大川清孝
大阪市立十三市民病院 消化器内科/淀川キリスト教病院 消化器内科


<目次>

1-1. 急性細菌性腸炎の診断と治療/堀木紀行,中川勇人
1-2. アメーバ性大腸炎とクラミジア直腸炎の診断と治療/松井佐織,松岡里紗,小野洋嗣,阿南会美
1-3. Clostridioides(Clostridium)difficile感染症の診断と治療/髙橋憲一郎
1-4. 腸管ベーチェット病の診断と治療/久松理一
1-5. 好酸球性胃腸炎の診断と治療/石原俊治,沖本英子,川島耕作,石村典久
1-6. 虚血性大腸炎の診断と治療/牟田口 真,髙林 馨,細江直樹,緒方晴彦,金井隆典
1-7. Microscopic colitisと腸間膜静脈硬化症の診断と治療/清水誠治
1-8. NSAIDs起因性腸病変の診断と治療および最近話題の薬剤性腸炎について/蔵原晃一, 池上幸治,大城由美,河内修司,松本主之
2-1. 十二指腸内視鏡像からIBDを診断する/坂田資尚,江﨑幹宏
2-2. 小腸広範囲病変をきたすIBDの鑑別疾患/梁井俊一,松本主之
2-3. 回盲部潰瘍の鑑別診断/小林広幸,蔵原晃一
2-4. 直腸潰瘍の鑑別診断/大川清孝

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