目次
特集●B型肝炎患者の長期予後とC型肝炎の残された課題
企画編集/茶山一彰(広島大学大学院医系科学研究科 消化器・代謝内科学 教授)
<特集にあたって>
B型,C型肝炎ウイルス感染は,肝硬変,肝細胞癌につながる重要な感染症である.しかし,患者の高齢化,新しい治療の開発により,疫学的な状況は顕著に変化してきている.これらのウイルスによる肝疾患に関する治療は,ここ数年間で劇的に変化した.とくにC型肝炎では,治療薬の改良により高率にウイルスの排除が可能となってきている.
抗ウイルス活性が高い薬剤にはprotease inhibitor,NS5A inhibitor,polymerase inhibitorの3種類があり,いずれも複数の薬剤のコンビネーションにより治療される.これはRNAウイルスの特徴として変異を起こしやすく,耐性を生じやすいC型肝炎ウイルスの薬剤耐性獲得に対する対策である.最近の薬剤は耐性が極めて生じにくく,しかもすべてのgenotypeに使用可能であり,治療期間も慢性肝炎では8週間まで短縮されてきている.さらに,腎疾患など合併症のある症例や非代償性肝硬変でも,ウイルスを排除することが可能になった.
このような治療により,少数の例外的な症例を除いて,日本ではほぼすべての治療例でウイルスの排除が得られるようになった.C型肝炎ウイルスが排除されれば,肝外症状として表れていた疾患も改善する症例があることも明らかになってきた.しかし,一度ウイルスが排除されても,麻薬系薬剤の不正使用による再感染,再々感染はまだ起きる可能性もあり,海外では患者がむしろ増加している国もある.また,とくにアジア,アフリカなどの後進国ではまれなgenotypeが存在し,抗ウイルス薬による治療の効果が十分に評価されていないものがあり,国際的には今後の課題であると考えられている.近い将来,地域によってはeliminationが達成されると考えられるが,海外との交流の活発化によるウイルスの流入にも注意を払っておく必要がある.さらに,ウイルス排除後に肝細胞癌を発症する症例もあるので,癌の発症を見落とさないようにする必要がある.
B型肝炎に対しては,peg-interferonの注射による治療と,核酸アナログによる治療が行われている.前者による治療は週1回の注射を48週行い,肝炎の沈静化とウイルスの増殖抑制がみられるが,良好な効果がみられる症例は20%程度であり,発熱,関節痛,鬱症状といった副作用もある.一方,核酸アナログ製剤の内服によりウイルスの増殖を抑制し,肝炎の沈静化を得ることはほぼ確実にできるようになった.最近の薬剤は耐性が生じにくく,副作用も軽減されたものが発売されている.しかし,まれにみられる耐性ウイルスの出現,副作用による腎障害,骨軟化症などに対する注意が必要である.患者の不用意な薬剤の中断による急性増悪の可能性もあるので,治療に当たっては十分説明し,良好なコンプライアンスの重要性に対する理解を得ておく必要がある.また,ウイルスが減少し,肝炎が沈静化しても,肝細胞癌発癌のリスクは消えるわけではないので,油断せずに画像診断などを定期的に実施する必要がある.AFP,PIVKA IIといった腫瘍マーカーも診療のモニターには有用であるが,早期発見には画像診断のほうが明らかに優れている.
今回の特集では,これらウイルス性肝炎の治療について最新の情報を提供しており,この特集を読めばB型,C型肝炎の治療の概略が理解でき,どのような視点で患者を診療すればよいかが理解できる.本特集が一般医科の日常診療に役立つことを期待している.
茶山一彰
広島大学大学院医系科学研究科 消化器・代謝内科学 教授
<目次>
1. わが国における肝炎ウイルス感染の実態と今後の見通し/田中純子,永島慎太郎,山本周子
2-1. 初回治療 C型慢性肝炎に対する薬物治療/髭 修平,中島知明
2-2. 初回治療 genotype1,2以外に対する薬物治療/宮瀬志保,藤山重俊
2-3. 初回治療 代償性肝硬変に対する治療/早川優香,黒崎雅之
3. DAA再治療によるC型慢性肝炎,代償性肝硬変の治療/高口浩一
4. 薬剤耐性変異と難治例の治療/内田義人,持田 智
5. 合併症のある症例に対する治療選択―肝不全,腎不全を有する症例の治療について―/厚川正則
6. ウイルスの排除と肝外病変の変化/森 奈美
7. C型肝炎ウイルス排除後の肝発癌/長沖祐子,今村道雄,相方 浩,茶山一彰
8. C型肝炎による発癌のリスク因子/三木大樹,茶山一彰
9. B型肝炎のインターフェロン治療/鈴木文孝
10. B型肝炎の核酸アナログによる治療/保坂哲也
11. B型肝炎のAdd on therapy,switching therapy/松本晶博
企画編集/茶山一彰(広島大学大学院医系科学研究科 消化器・代謝内科学 教授)
<特集にあたって>
B型,C型肝炎ウイルス感染は,肝硬変,肝細胞癌につながる重要な感染症である.しかし,患者の高齢化,新しい治療の開発により,疫学的な状況は顕著に変化してきている.これらのウイルスによる肝疾患に関する治療は,ここ数年間で劇的に変化した.とくにC型肝炎では,治療薬の改良により高率にウイルスの排除が可能となってきている.
抗ウイルス活性が高い薬剤にはprotease inhibitor,NS5A inhibitor,polymerase inhibitorの3種類があり,いずれも複数の薬剤のコンビネーションにより治療される.これはRNAウイルスの特徴として変異を起こしやすく,耐性を生じやすいC型肝炎ウイルスの薬剤耐性獲得に対する対策である.最近の薬剤は耐性が極めて生じにくく,しかもすべてのgenotypeに使用可能であり,治療期間も慢性肝炎では8週間まで短縮されてきている.さらに,腎疾患など合併症のある症例や非代償性肝硬変でも,ウイルスを排除することが可能になった.
このような治療により,少数の例外的な症例を除いて,日本ではほぼすべての治療例でウイルスの排除が得られるようになった.C型肝炎ウイルスが排除されれば,肝外症状として表れていた疾患も改善する症例があることも明らかになってきた.しかし,一度ウイルスが排除されても,麻薬系薬剤の不正使用による再感染,再々感染はまだ起きる可能性もあり,海外では患者がむしろ増加している国もある.また,とくにアジア,アフリカなどの後進国ではまれなgenotypeが存在し,抗ウイルス薬による治療の効果が十分に評価されていないものがあり,国際的には今後の課題であると考えられている.近い将来,地域によってはeliminationが達成されると考えられるが,海外との交流の活発化によるウイルスの流入にも注意を払っておく必要がある.さらに,ウイルス排除後に肝細胞癌を発症する症例もあるので,癌の発症を見落とさないようにする必要がある.
B型肝炎に対しては,peg-interferonの注射による治療と,核酸アナログによる治療が行われている.前者による治療は週1回の注射を48週行い,肝炎の沈静化とウイルスの増殖抑制がみられるが,良好な効果がみられる症例は20%程度であり,発熱,関節痛,鬱症状といった副作用もある.一方,核酸アナログ製剤の内服によりウイルスの増殖を抑制し,肝炎の沈静化を得ることはほぼ確実にできるようになった.最近の薬剤は耐性が生じにくく,副作用も軽減されたものが発売されている.しかし,まれにみられる耐性ウイルスの出現,副作用による腎障害,骨軟化症などに対する注意が必要である.患者の不用意な薬剤の中断による急性増悪の可能性もあるので,治療に当たっては十分説明し,良好なコンプライアンスの重要性に対する理解を得ておく必要がある.また,ウイルスが減少し,肝炎が沈静化しても,肝細胞癌発癌のリスクは消えるわけではないので,油断せずに画像診断などを定期的に実施する必要がある.AFP,PIVKA IIといった腫瘍マーカーも診療のモニターには有用であるが,早期発見には画像診断のほうが明らかに優れている.
今回の特集では,これらウイルス性肝炎の治療について最新の情報を提供しており,この特集を読めばB型,C型肝炎の治療の概略が理解でき,どのような視点で患者を診療すればよいかが理解できる.本特集が一般医科の日常診療に役立つことを期待している.
茶山一彰
広島大学大学院医系科学研究科 消化器・代謝内科学 教授
<目次>
1. わが国における肝炎ウイルス感染の実態と今後の見通し/田中純子,永島慎太郎,山本周子
2-1. 初回治療 C型慢性肝炎に対する薬物治療/髭 修平,中島知明
2-2. 初回治療 genotype1,2以外に対する薬物治療/宮瀬志保,藤山重俊
2-3. 初回治療 代償性肝硬変に対する治療/早川優香,黒崎雅之
3. DAA再治療によるC型慢性肝炎,代償性肝硬変の治療/高口浩一
4. 薬剤耐性変異と難治例の治療/内田義人,持田 智
5. 合併症のある症例に対する治療選択―肝不全,腎不全を有する症例の治療について―/厚川正則
6. ウイルスの排除と肝外病変の変化/森 奈美
7. C型肝炎ウイルス排除後の肝発癌/長沖祐子,今村道雄,相方 浩,茶山一彰
8. C型肝炎による発癌のリスク因子/三木大樹,茶山一彰
9. B型肝炎のインターフェロン治療/鈴木文孝
10. B型肝炎の核酸アナログによる治療/保坂哲也
11. B型肝炎のAdd on therapy,switching therapy/松本晶博
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