目次
特集●内視鏡で見える病気,診る病気 ―背景を考える―
企画編集/春間 賢(川崎医科大学 総合医療センター 総合内科学2 特任教授)
<特集にあたって>
この度の特集号のタイトルは,「内視鏡で見える病気,診る病気 ―背景を考える―」とさせていただきました.“見える”は形態の病気,“診る”は機能の病気を,この特集号では意味します.最近,上部消化管の分野は非常に多くの疾患が登場し,エキサイティングになっています.私は,常日頃,消化管の内視鏡検査をしながら,なぜこのような病気ができるのか,そしてその背景はどうなっているのかを考えながら検査を行っています.
最近の内視鏡は,粘膜の表面がよく見えるようになってきました.従って,Helicobacter pylori(ピロリ菌)未感染胃でも,稜線状発赤やびらんなど詳細に観察され,病変なしとは言えない症例が増えてきました.しかしながら,内視鏡所見からは自覚症状が説明できない症例に出会うこともよくあります.上部消化管であれば,食道の運動機能異常や機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia:FD)が代表的な疾患で,機能性消化管障害と呼ばれています.
さて,ピロリ菌は萎縮性胃炎,消化性潰瘍,さらには胃癌の原因であることは周知の事実です.ピロリ菌感染率の低下,またピロリ菌除菌の普及は,上部消化管の疾患に大きな革命を起こしました.日々の内視鏡検査では萎縮のない胃が増加し,以前は胃角部や胃体部の多かった消化性潰瘍も激減しております.胃癌もピロリ菌除菌で解決すると思われましたが,ピロリ除菌後の胃癌,ピロリ未感染の胃癌も増加しているようです.逆流性食道炎はもとより,バレット腺癌,あるいは食道と胃の接合部に発生する胃癌の増加は,ピロリ菌感染陰性の症例が多くなり,以前であれば萎縮性胃炎のために胃酸が低下していたものが,ピロリ菌未感染,あるいはピロリ菌除菌で胃酸が食道へ逆流することが増えたためと考えられます.十二指腸についても,恐らく同じことが言えます.萎縮性胃炎のため十二指腸へ胃酸が流れにくくなっていたところに,ピロリ菌未感染例が増加し,あるいはピロリ菌除菌で低下していた胃酸が復活し,以前よりも十二指腸に胃酸が流れることが多くなっていると思われます.この現象が,十二指腸の腫瘍発生に影響しているとも考えられます.アレルギー性疾患である好酸球性食道炎や好酸球性胃腸症も,ピロリ菌感染とは逆相関にあり,ピロリ菌感染率が低下するほど,アレルギー性疾患が増加していく可能性があります.
タイトルに「内視鏡で見える病気,診る病気」とさせていただいたのは,日頃から,消化管の形態と機能の両者に私が興味を持っているからです.消化管の機能異常は咽喉頭から始まり,食道,胃,十二指腸,さらに小腸,そして大腸へと病態は進んでおります.CACS(celiac artery compression syndrome)やACNES(anterior cutaneous nerve entrapment syndrome)は,消化管以外の原因で発生する病気ですが,消化器病医を必ず受診しますので,知っておくべき重要な疾患です.自己免疫性胃炎や胃NET(neuroendocrine cell tumor),プロトンポンプ阻害薬の使用により発生するGAP(gastropathy associated with PPI),さらに,壁細胞の機能不全も,考えてみれば消化管の機能異常により発生する,また,背景に機能異常を伴った疾患です.特発性胃前庭部難治性潰瘍も,意外と前庭部の収縮運動の過収縮によるものかもしれませんし,また,PHG(portal hypertensive gastropathy)も肝臓へ行くはずの血流が胃で停滞する,すなわち,機能異常を背景にした疾患です.
こうやって上部消化管の疾患を眺めてみると,上部消化管疾患が変貌していく背景には形態と機能の異常が確実にあり,その頻度は確実に増加しています.
春間 賢
川崎医科大学 総合医療センター 総合内科学2 特任教授
<目次>
【1 食道胃接合部と十二指腸に注意しよう】
1-1. バレット食道腺癌・胃食道接合部癌 ―胃食道逆流関連接合部腺癌の初期病変に迫る―/貝瀬 満
1-2. 非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の発症リスクと好発部位/大野和也,黒上貴史,増井雄一,中谷英仁
【2 機能を考える疾患】
2-1. 食道運動機能異常/栗林志行,保坂浩子,草野元康,浦岡俊夫
2-2. 好酸球性食道炎,好酸球性胃腸症/藤原靖弘
2-3. 自己免疫性胃炎と胃NET/佐藤祐一,佐藤明人,富所 隆,寺井崇二
2-4. プロトンポンプ阻害薬に関連した胃粘膜変化 ―GAP(Gastropathy Associated with PPI)―/鎌田智有,春間 賢,砂金 彩,眞部紀明,永井 宏
2-5. 壁細胞機能不全症(parietal cell dysfunction)/石岡充彬,平澤俊明,河内 洋
2-6. 逆流性食道炎/綾木麻紀,眞部紀明,春間 賢
2-7. 特発性(ピロリ菌陰性NSAID 陰性)胃前庭部難治性潰瘍/寺井智宏,丸山保彦
2-8. 門脈圧亢進症性胃症/西野 謙,川中美和,河本博文,眞部紀明,鎌田智有,春間 賢
【3 胃外(意外)な疾患】
3-1. 機能性ディスペプシア/二神生爾,阿川周平,山脇博士
3-2. CACS,ACNES/楠 裕明,畠 二郎,春間 賢
企画編集/春間 賢(川崎医科大学 総合医療センター 総合内科学2 特任教授)
<特集にあたって>
この度の特集号のタイトルは,「内視鏡で見える病気,診る病気 ―背景を考える―」とさせていただきました.“見える”は形態の病気,“診る”は機能の病気を,この特集号では意味します.最近,上部消化管の分野は非常に多くの疾患が登場し,エキサイティングになっています.私は,常日頃,消化管の内視鏡検査をしながら,なぜこのような病気ができるのか,そしてその背景はどうなっているのかを考えながら検査を行っています.
最近の内視鏡は,粘膜の表面がよく見えるようになってきました.従って,Helicobacter pylori(ピロリ菌)未感染胃でも,稜線状発赤やびらんなど詳細に観察され,病変なしとは言えない症例が増えてきました.しかしながら,内視鏡所見からは自覚症状が説明できない症例に出会うこともよくあります.上部消化管であれば,食道の運動機能異常や機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia:FD)が代表的な疾患で,機能性消化管障害と呼ばれています.
さて,ピロリ菌は萎縮性胃炎,消化性潰瘍,さらには胃癌の原因であることは周知の事実です.ピロリ菌感染率の低下,またピロリ菌除菌の普及は,上部消化管の疾患に大きな革命を起こしました.日々の内視鏡検査では萎縮のない胃が増加し,以前は胃角部や胃体部の多かった消化性潰瘍も激減しております.胃癌もピロリ菌除菌で解決すると思われましたが,ピロリ除菌後の胃癌,ピロリ未感染の胃癌も増加しているようです.逆流性食道炎はもとより,バレット腺癌,あるいは食道と胃の接合部に発生する胃癌の増加は,ピロリ菌感染陰性の症例が多くなり,以前であれば萎縮性胃炎のために胃酸が低下していたものが,ピロリ菌未感染,あるいはピロリ菌除菌で胃酸が食道へ逆流することが増えたためと考えられます.十二指腸についても,恐らく同じことが言えます.萎縮性胃炎のため十二指腸へ胃酸が流れにくくなっていたところに,ピロリ菌未感染例が増加し,あるいはピロリ菌除菌で低下していた胃酸が復活し,以前よりも十二指腸に胃酸が流れることが多くなっていると思われます.この現象が,十二指腸の腫瘍発生に影響しているとも考えられます.アレルギー性疾患である好酸球性食道炎や好酸球性胃腸症も,ピロリ菌感染とは逆相関にあり,ピロリ菌感染率が低下するほど,アレルギー性疾患が増加していく可能性があります.
タイトルに「内視鏡で見える病気,診る病気」とさせていただいたのは,日頃から,消化管の形態と機能の両者に私が興味を持っているからです.消化管の機能異常は咽喉頭から始まり,食道,胃,十二指腸,さらに小腸,そして大腸へと病態は進んでおります.CACS(celiac artery compression syndrome)やACNES(anterior cutaneous nerve entrapment syndrome)は,消化管以外の原因で発生する病気ですが,消化器病医を必ず受診しますので,知っておくべき重要な疾患です.自己免疫性胃炎や胃NET(neuroendocrine cell tumor),プロトンポンプ阻害薬の使用により発生するGAP(gastropathy associated with PPI),さらに,壁細胞の機能不全も,考えてみれば消化管の機能異常により発生する,また,背景に機能異常を伴った疾患です.特発性胃前庭部難治性潰瘍も,意外と前庭部の収縮運動の過収縮によるものかもしれませんし,また,PHG(portal hypertensive gastropathy)も肝臓へ行くはずの血流が胃で停滞する,すなわち,機能異常を背景にした疾患です.
こうやって上部消化管の疾患を眺めてみると,上部消化管疾患が変貌していく背景には形態と機能の異常が確実にあり,その頻度は確実に増加しています.
春間 賢
川崎医科大学 総合医療センター 総合内科学2 特任教授
<目次>
【1 食道胃接合部と十二指腸に注意しよう】
1-1. バレット食道腺癌・胃食道接合部癌 ―胃食道逆流関連接合部腺癌の初期病変に迫る―/貝瀬 満
1-2. 非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の発症リスクと好発部位/大野和也,黒上貴史,増井雄一,中谷英仁
【2 機能を考える疾患】
2-1. 食道運動機能異常/栗林志行,保坂浩子,草野元康,浦岡俊夫
2-2. 好酸球性食道炎,好酸球性胃腸症/藤原靖弘
2-3. 自己免疫性胃炎と胃NET/佐藤祐一,佐藤明人,富所 隆,寺井崇二
2-4. プロトンポンプ阻害薬に関連した胃粘膜変化 ―GAP(Gastropathy Associated with PPI)―/鎌田智有,春間 賢,砂金 彩,眞部紀明,永井 宏
2-5. 壁細胞機能不全症(parietal cell dysfunction)/石岡充彬,平澤俊明,河内 洋
2-6. 逆流性食道炎/綾木麻紀,眞部紀明,春間 賢
2-7. 特発性(ピロリ菌陰性NSAID 陰性)胃前庭部難治性潰瘍/寺井智宏,丸山保彦
2-8. 門脈圧亢進症性胃症/西野 謙,川中美和,河本博文,眞部紀明,鎌田智有,春間 賢
【3 胃外(意外)な疾患】
3-1. 機能性ディスペプシア/二神生爾,阿川周平,山脇博士
3-2. CACS,ACNES/楠 裕明,畠 二郎,春間 賢
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