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○◆ 特集 松井冬子 ~絵画に描かれた痛みと贖罪~
かつて、幽霊画は一種の厄払いの装置として機能していたという。現代におい
て、松井冬子の絵を一度でも観た者は、そこに描かれた「痛 み」「恐怖」「暴
力」に視覚神経から感染し、覚醒する。それは厄払いか、輪廻の環か?
そして、彼女はなぜ、このような絵を描かなければならなかったのか。
~*~*~ 目次 ~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
1 松井冬子 作品
2 奇想の対談 辻惟雄×松井冬子
3 アトリエ訪問インタビュー
4 松井冬子を撮る・語る
5 松井冬子を観せる・語る
6 テキスト1 二重の構造のジレンマ―アブジェクトの別のかたちを求めて
7 テキスト2 21世紀のモナ・リザ
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┃1 松井冬子 作品
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・思考螺旋
・切断された長期の実験
・浄相の持続
・終極にある異体の散在
・優しくされているという証拠をなるべく長時間にわたって要求する
・世界中の子と友達になれる(2004)
・完全な幸福をもたらす普遍的万能薬
・世界中の子と友達になれる(2002)
・この疾患を治癒させるために破壊する
・陰刻された四肢の祭壇
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┃2 奇想の対談 辻惟雄×松井冬子
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日本美術のユニークな精神の探求を続ける辻とともに、松井の系譜に連なる奇
想の画家たちについて語る。耽美、恐怖、狂気、ナルシシズム……といった松
井冬子の発想の源に迫る。
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┃3 アトリエ訪問インタビュー 聞き手 松井みどり
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「ものではなく感情を描きたい」という画家は、日本画特有の工程である下図
を何回も描き直すことで、殺しても殺しきれない感情を絵画にする。視覚によ
って痛覚が覚醒され、暴力が循環を始める―松井は、芸術表現が呼び起こす精
神的、肉体的な「痛覚」や「恐怖」を想像力のかたちとしてとらえている。彼
女の世界観や芸術観から、松井の絵画の魅力をひもとく鍵を探る。
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┃4 松井冬子を撮る・語る 写真家 中川真人
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┃5 松井冬子を観せる・語る 成山画廊 成山明光
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┃6 テキスト1 二重の構造のジレンマ―アブジェクトの別のかたちを求めて
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松井は狂気と女性性を「アブジェクト=おぞましきもの」のかたちとして描く。
なかでも「狂った花」「解体される肉体」という2つのテー マに、そして、
さらなる大胆なアブジェクトの投擲に松井冬子の絵画の可能性をみる。
(文=長谷川祐子)
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┃7 テキスト2 21世紀のモナ・リザ
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自らの腹を切り裂き幸福そうに微笑む死体に、子宮の中の胎児や深い微笑を描
いたダ・ヴィンチや、死体が白骨化する過程を描写した六道絵を見た。松井の
作品は、21世紀の《モナリザ》や《九相詩絵巻》となりえるのだろうか?
(文=布施英利)
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第2特集 日本画復活論
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┃ 巻頭テキスト 三瀬夏之介
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日本画の定義/日本画の滅亡/日本画という宿命/日本画というジャンル/日
本画というひとつの光
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┃ 岡村桂三郎
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眼に見えるのではなく、空気のように感じられること
表面を焼いた板に岩絵具を塗り込め、切り刻む。そうして描かれた絵は屏風に
組まれ、暗闇に溶け込んでいく。「絵画」以前の、外界と未 分化の「絵」とし
て―。80年代、「日本画」の歴史に異を唱え、新しい波を引き起こした画家が、
民族的表象や宗教的体験を経て到達した精神世界。作家個人の存在を超えた、
美のダイナミズムが空間を覆う!
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┃ 日本画の教育
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美大の日本画科ではなにが行われているか?
私たちとって今、「日本画を描く」という行為は、どのようなことか。そのこ
とを考えていくと、多くの人にとってはじめて日本画に触れる場、美術大学の
日本画科の存在に行き着く。美大ではどんな教育が行われているのか。岡村桂
三郎教授の案内で、東北芸術工科大学芸術学部日本画コースの様子をのぞいて
みた。
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┃ ニッポン画 山本太郎
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「日本画」たりえなかった絵画についての考察
近代の幕開け、東京美術大学設立にかかわり、「日本画」をつくった岡倉天心。
そのころの京都には、生活の中の美を琳派の継承に賭ける神坂雪佳がいた。翻
って現代、「ニッポン画」を提唱する画家は、二人の先達に何を見出すのか。
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┃ 三瀬夏之介
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マグマが蠢く不穏な「日本」を描く
富士山、ドゥオーモ、UFO、日本国旗、十字架、隆起する山脈、ころがる岩、う
ごめく大気、きらめく星々、天地創造、生成流転、ユートピア、ディストピア
……。見えるもの、見える世界を言葉でいくら並べてみても、三瀬の絵には届
かない。途方もない時間と葛藤をぎりぎりのところでひとつの画面として統合
させている「 力」はどこからやってくるのか。
三瀬夏之介 × 福住廉 往復書簡 フィレンツェ―東京 時差8時間
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┃ 沖縄の美術、その軌跡と前路
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沖縄県立博物館・美術館オープン
11月1日、沖縄県立博物館・美術館が開館の日を迎えた。オープン展は、琉球処
分以降の複雑に折り重なった困難な歴史から生み出された、美術を中心とした
沖縄の文化を総合的に検証する、この地にできた美術館にふさわしいものとな
った。美術家たちによる建設運動、高らかな理念を謳った基本計画の策定、混
乱を招く行政の変調と長い時間の紆余曲折を経た末の美術館は、しかし多くの
問題を抱えたままである。美術館の現状とアートシーンから沖縄の美術の前路
を照らす。
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┃Around the Globe 海外のアートシーンから
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■ニューヨーク / フランク・ステラのパブリックアート、ロクシー・パイ
ンのパブリックアート、マーティン・パーイヤー個展
■ロサンジェルス / バーバラ・T・スミス個展「残存:1965~72年のアー
トワークス」、フランシス・アリス個展「リハーサルの政治学」
■ロンドン / フリーズ・アートフェア、イヤー07、ブリッジ・アートフェ
ア、パルス・ロンドン、ズー・アートフェア
■リヨン+パリ郊外 / ギャレリアコンティニュア ル・ムーラン開廊記念
展、「第9回リヨン・ビエンナーレ:まだ命名されていない10年の歴史」展
■上海 / 「ドールズハウス 日韓メディア・アート」展、「アニマミック
ス・ビエンナーレ 現在から永遠へ」展、上海eARTフェステ ィバル、「ファブ
リカ―開いた眼」展
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┃連載
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■子供と美術 32 三日野 お好み焼き ~ 手のひらの中の宇宙
■やっつけメーキング 49 顔文字をやっつける
■画家たちの美術史 59 与那覇大智
■アクリリックス・ワールド 29 大竹司
■アートで生きる/アートとかかわる 7 竹内万里子×杉田敦
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