特集:「できた」「わかった」の次を目指せる理科授業
学びを深めようとする循環を生み出すために
理科教育の目標は、自然の事物・現象についての理解を深めるとともに、問題解決の力や科学的に探究する力、それらを身に付ける態度を育てることにあります。子どもが「できた」「わかった」と見取ることができたならば、教師は「目標を実現し、学習内容の定着や活動の達成ができた」として、その学習を終わらせることも多いでしょう。これでは、子どもが自ら自然事象に対する理解の枠組みを更新し続ける姿にはつながりません。
子どもが学習内容を理解し、「できた」と実感することは、学びの第一歩です。さらに、観察・実験を通して「わかった」と感じることは、学習意欲を高める重要な契機となります。しかし、本来の理科学習では、そこから新たな問いを生み出し、「もっと知りたい」「こうしたらどうなるだろう」と自然事象の理解の枠組みを更新し続ける過程にこそ価値があります。そのためには、子どもが自分の理解を振り返り、問題や課題を再構築できるような授業構成と教師の的確な支援が求められます。授業の中で「できた」「わかった」という達成感を大切にしつつ、それを次の学びにつなげるための「問い返し」や「再構築」の機会を意図的に設計することなどは有効です。具体的には、実験結果を確認して終わるのではなく、「この条件を変えるとどうなるだろう」「わかったことを踏まえると、 この新たな現象は説明できるだろうか」「他の現象でも同じことが言えるだろうか」といった次の疑問を子ども自身が見いだせるようにするとよいでしょう。また、学習過程の中で互いの考えを共有し、異なる視点に気付く活動を設定することによって、より深い理解と新たな気付きや疑問などが生まれると考えられます。
例えば、小学校第5学年「振り子の運動」において、1往復の周期に関係するのは「振り子の長さ(紐の長 さ+物体の重心)」であることを、子どもが実験を通して学ぶことが学習指導要領上のねらいです。しかし教師としては、ここで終わりとせず、子どもが新たな気付きや疑問を見いだせるようにしたいものです。具体的には、ブランコの座ったときと立ったときの感覚の違いを体験から認識し、学習内容や追加の実験を通して、その違いについての理解を深めていく新たなシナリオ※も考えられるでしょう。
理科の魅力は、自然事象を理解する枠組みを作成して終わりではなく、「なぜ」「どうして」と問い続け、その枠組みをさらに更新していこうとする姿勢(態度)を育てる点にあります。このような授業を通して、子どもが「できた」「わかった」で終わらず、そこからさらに学びを深めようとするよい循環を生み出すことができるでしょう。教師にとっても、子どもの思考の変化や新たな気付きを手がかりに、次の授業展開を柔軟に構想する契機となります。
本特集には、学びを自ら発展させる力を育む授業づくりの実践例が全国から寄せられました。本特集を通して、子どもが自らの学びに主体的に向き合い、自然事象の理解の枠組みを更新し続けられる理科学習の在り方を探っていきましょう。
※新たな時間を設定することが難しい場合は、単元内の気付きや疑問からの「できた」「わかった」の連鎖と捉える。
(『理科の教育』編集委員会)
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