「我が銀河」の最も正確な姿
銀河系を外から眺めてみたいと思いませんか?
現代社会に生きる私たちが,当然のこととして疑わないものは多い。たとえば夜空に見える天の川は,無数の星の集まりである。「銀河系」ともよばれ,私たちの地球もこの中にある。そして銀河系は円盤のような形をしており,渦巻き模様がある――。
しかしちょっと考えてみていただきたい。誰が銀河系全体の姿を確かめたというのだろうか? 銀河系の中にいる私たちが銀河系の全体像を探るのは,実は非常にむずかしいことだ。深い森の中に居ながら森全体を見渡そうとする“無謀な”試みと似ている。一方,銀河系を外から眺めることも不可能に近い。無人の探査機でさえ,となりの恒星にすら到達していないのが現実だ。
それでも人類は銀河系の真の姿を知りたいと願う。画像の撮影が不可能ならば,イラストで描くしかない。幸い,研究者たちは工夫を凝らし,銀河系の真の姿に迫りつつある。最新の研究成果を結集して銀河系のイラストを描くと,どのようなものができあがるだろうか。
来月号のNEWTON SPECIALでは,人類史上最も正確な銀河系イラストをお見せしたい。以下,編集部内での会話を通して見どころを紹介しよう。
【内容紹介】
銀河系の真の姿
──なぜいまさら,「銀河系の形」なのですか?
もっともな意見だと思います。なにしろ百数十億光年彼方の銀河が見える時代ですから――。逆に質問しましょう。銀河系はどんな形だと思いますか?
──直径10万光年ほどの円盤のような形で,渦巻き模様があるのでしょう?
そのとおりです。では,なぜそのような形をしているとわかるのですか?
──それは……。
むずかしいのは当然です。誰も銀河系の姿なんて確認したことがないのですから。
──でも,夜空には天の川が見えているじゃないですか。天の川は銀河系なのでしょう?
確かに天の川は銀河系です。しかし見えているのは銀河系の一部でしかありません。全体像ではないのです。天の川を見て銀河系の形を想像できますか? ましてやこれに渦巻き模様があることなど,どうやったらわかるのでしょう。実に不思議な話です。
──言われてみれば確かにそうです。
「銀河系は円盤状で……」などと見てきたように説明しがちですが,銀河系の中にいる私たちが銀河系の真の姿を把握するのは,実は至難の業なのです。よその銀河は望遠鏡で簡単に見えるのに,皮肉な話です。
──なるほど。なんとなく銀河系のことをよく知っているつもりになっていました。
そこで今回の記事では,限られた観測結果から銀河系の真の姿を推理していくような内容にしたいと考えています。推理の出発点は,やはり天の川です。
先ほど,「天の川を見て銀河系の形を想像できますか?」と言いました。実はこの質問は論理が飛躍しています。というのも,天の川が銀河系の一部分であるという知識があるからこそ,成立する質問だからです。そもそも「宇宙には無数の銀河があり,銀河系はそれら数ある銀河の一つである」という宇宙観が確立されたのは,わずか80年ほど前の話です。それ以前は「天の川とは何か」ということさえ,正確にはわかっていませんでした。「天の川とは何か」という疑問から出発し,ゴールである銀河系の真の姿にどうやってたどり着くのか,おもしろい記事になると思います。
史上最も正確な銀河系イラスト
──来月号の一番の見どころは,どこですか?
何といっても,やはり銀河系を外から眺めたイラストでしょう。最新の研究成果をもとに,現時点で考え得る最も正確なイラストを描きたいと思います。
──これまでのイラストとどこが違うのですか?
たとえば銀河系の中心に「棒」があることを知っていますか? 銀河系の中心では,星が集まって円柱状の構造をつくっているのだそうです。近年,これを裏づける観測結果が着々と積み重ねられています。2005年には棒の長さが銀河系の直径の3分の1にもなるという発表があり,話題になりました。ただし「棒」の長さや角度は研究者によってばらつきがありますが。
──単純な渦巻き銀河ではないのですね。
そうなんです。また,「棒」のような見かけ上の変化も重要ですが,もう一つ大切なことがあります。たとえば渦巻き模様について考えてみましょう。従来から渦巻き模様が存在することはわかっており,その位置もある程度は推測されていました。しかし観測データが十分ではなく,これをイラスト化するにはある意味“想像力をふくらませて”描かざるをえませんでした。近年はその位置がかなり正確にわかってきています。つまり観測的事実の裏付けがある正確なイラストが描けるようになりつつあるのです。
──最も正確な銀河系,見てみたいですね。
次号のNEWTON SPECIALは,これまで当たり前のように受け入れてきた銀河系の形を根本から見つめ直す,挑戦的な企画です。 必見の1冊にご期待ください。
【協力】
岡村定矩 東京大学大学院理学系研究科教授
坪井昌人 国立天文台野辺山宇宙電波観測所所長
中田好一 東京大学大学院理学系研究科教授
中西裕之 国立天文台野辺山宇宙電波観測所研究員
本間希樹 国立天文台電波研究部VERA観測所上級研究員
ほか
【主な内容】
●天の川を見上げてみれば……
●銀河系の姿を確認した人類はいない
●天の川が「銀河」だとわかるまでには,長く険しい道のりがあった
●多士済々,宇宙の銀河たち。私たちの銀河系は?
●星とガスでできた壮大な円盤
●地球は円盤のどこにあるか
●渦巻き模様をどうやって“見る”のか
●中心の棒状構造とは何か
●壮観! 最も正確な銀河系イラスト
●銀河系の名所をめぐってみよう
●銀河系の理解はどこまで進むのか
Newton(ニュートン)の内容
- 出版社:ニュートンプレス
- 発行間隔:月刊
- 発売日:毎月26日
驚きと興奮のサイエンスマガジン 『ニュートン』
科学雑誌Newton(ニュートン)は1981年の創刊以来、多くの方々にご愛読いただいております。ページ全面に展開するスーパーイラストレーションや美しくダイナミックな写真の数々、そして第一線の研究者に取材した正確でわかりやすいレポートによって、幅広い読者を獲得。ビジュアル科学雑誌のパイオニアとしての地位を揺るぎないものにしています。
科学はけっしてむずかしいものではなく、そこには感動的なドラマがあるというNewtonの編集方針は、おかげさまで多くの方々に共感いただけているものと考えています。Newtonは国際的にも高い評価を得ており、韓国版や中国版も刊行されています。
IT・AI技術の急速な進歩などに象徴されるように、社会は劇的に変化しつづけています。現代社会における科学の役割は、現在ますますその比重を増しているように思われます。今後もNewtonは時代のニーズに合った新しい記事を提供できるように日々専心してまいります。
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