目次
特集
ベートーヴェンが成し遂げたこと
9曲の交響曲、ピアノ・ソナタ32曲、弦楽四重奏曲16曲…オペラを除く音楽の分野でベートーヴェンは後世の規範であり続けた。後の作曲家は否応なくベートーヴェンを意識せざるを得なかった。
ピアノ・ソナタ第23番について桐朋学園大の西原稔教授は「提示部と展開部、再現部の3つの部分が連続した新しいソナタ形式が生まれる。この試みも伝統にタイする変革であり、破壊であり、新しい秩序の誕生である」と記す。また、大阪音楽大学の中村孝義名誉教授は「弦楽四重奏曲というジャンルになると、ベートーヴェンがなした業績は、彼以前のものはもとより、彼以後のどの作曲家のものも、遂にこれを超えることはできなかったと断言しても決して間違いではない」と綴っている。
特集ではジャンルごとにベートーヴェンの作品を紹介している。「運命」の呼称で知られる交響曲第5番。音楽評論家の許光俊氏は「私は、ベートーヴェンが本当にオリジナルな交響曲を書いたのは、第5番が初めてだったのではないかと思う」という。ところで、冒頭の4つの音について、ベートーヴェンは弟子のシンドラーに「運命はこのように扉を叩く」と話した、ということから「運命」と名付けられたが、近年はこの逸話の信憑性に疑問がつき、次第に使われなくなっている。
ベートーヴェンが生きた時代は、ピアノ(フォルテピアノ)の開発、発展が急速に進んだ。ヨーロッパ各地のピアノ製造者によって、音域が拡大され、新たなアイデアが盛り込まれたピアノが日進月歩で開発され、大作曲家ベートーヴェンの元に持ち込まれた。シュタイン、ヴァルター、シュトライヒャー、エラール、ブロードウッドなどと音色も機構も違うさまざまピアノを使い、時代によって異なるピアノで作曲されている。
フランスのピアノ、エラールで作曲した代表作はソナタ第21番「ワルトシュタイン」や第23番「熱情」。イギリス式(突き上げ式)アクションを持つピアノで、タッチが重く力強い音が出る。しかし、「熱情」のあと5年ほど、ピアノ作品の作曲から遠ざかってしまう。「新たなピアノ曲の作曲に向かうには新たなピアノが必要になった」と音楽評論家の高久暁氏。そして、続いてはュトライヒャーのピアノが作曲の伴侶となった。
他に、◎ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ◎革命家ベートーヴェンを象徴する第九◎ベートーヴェン弾きの系譜◎ロシアのベートーヴェン受容◎新国立劇場で「フィデリオ」を演出するカタリーナ・ワーグナー◎楽聖伝説の背景にあるもの、などです。
◎宮本文昭の気軽に話そう ゲスト 彌勒忠史 カウンターテナー
近年、バロック・オペラの上演が増え、カウンターテナーという声種が注目されている。バロック時代は女性が舞台に立てなかったため、高い声のカストラートが歌っていた。現代のカウンターテナーはその声部を歌う。「女声のメゾ・ソプラノに相当し、モンテヴェルディなど初期バロック音楽ですとソプラノ、バッハのような後期バロックではアルトのパートを歌う」と彌勒。小学生のころ、ジャズやファンクを聴き、アース・ウィンド&ファイアーのようにファルセットで歌う歌手がいたので、裏声で歌うのは普通のことだった、と語る。
◎連載 CDを超えるハイレゾの革命児MQA
CDではなくハイレゾの音源をダウンロードしてクラシックを聴いている人が増えている。従来のハイレゾ方式であるリニアPCMとは全く違うMQAという音響技術が注目されている。オーディオと音楽評論の麻倉怜士さんによるこの連載が先月から始まった。今回は、MQAはニューロサイエンス(神経工学)の研究から誕生したことを書いている。人間が音を認識する時間間隔、時間軸解像度というものがある。開発者のボブ・スチュワート氏によると、これまでの5倍細かい解像度を持つことが分かった。人間に耳の感度に近づける研究を進めて開発されたのがMQAだ。
このほか
◎青島広志の「ブルー・アイランド版音楽辞典」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
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