Discover Japan(ディスカバージャパン)の編集長インタビュー

編集長プロフィール

エイ出版社
「Discover Japan」編集長 高橋俊宏さん

たかはしとしひろ 1973年岡山生まれ。1999年エイ出版社入社。シーカヤックやサーフィンの雑誌の部署に配属。その後ライフスタイル系のムック本に携わり、「こんな家に住みたい」、「リアルデザイン」誌など建築やインテリア、デザイン系の担当を経て、現在、「Discover Japan」、「北欧スタイル」編集長を務める。趣味はスキー、山登り、素潜り、キャンプ、温泉など、プライベートはアウトドア派

編集長写真

第50回 Discover Japan 編集長 高橋俊宏さん

古いもの、身近なものに新しいスポットライトを当てるんです

―編集者にも人気の高い雑誌です。でも、なかなかペイさせていくのが大変じゃないか、といった声もあります。いい雑誌だからこそ、長続きしてほしいと思うのですが、その点はどう解決されていますか。

幸い弊社の場合は内製率が高いんです。デザインも内部スタッフでつくってるケースがほとんどですから、編集コストを安くおさえることができるんです。取材費を抑えると中味が薄っぺらになるのでなかなかできないのですが、編集費は内部でやりくりすることで、なんとかなるものです。社内製手工業って私は呼んでます(笑)。
もちろんコントリビュータというか、外部の識者に相談して企画を考えていくということはやっています。要所要所でそういった外部ブレインの力を借り、作業は内部でこなすという感じでしょうか。

―高橋さんは転職組ですか。

はい。僕は前も出版社にいて広告営業をしていました。でももともと編集志望でしたので、編集の仕事ができて、それも趣味の雑誌をつくらせてくれるここに転職してきました。前職の出版社は歴史のある出版社で、そこそこ点数も出していましたので、仕事が分業していました。
ところがこちらへ来たら、本ができるまでのすべてをやる。これはやりがいがあるなと。好きなことをやれるわけですから、忙しいのは覚悟の上、むしろドロのように働きたいと希望して入社しました(笑)。

―最初は何をされたのですか。

「北欧スタイル」の編集も兼ねる高橋編集長のデスク
「北欧スタイル」の編集も兼ねる高橋編集長のデスク

「シーカヤック」「サーフトリップジャーナル」といったアウトドア系の編集です。それをやりながら、「湘南スタイル」を手伝って、「田園都市生活」の立ち上げにかかわり、建築の本などをつくってきました。そこからインテリアをやって「北欧スタイル」「リアルデザイン」などをやり、それからこの「ディスカバー・ジャパン」です。
そもそも人の暮らしに興味があって、外国のものがかっこいいといわれた風潮も理解しながら、でもちょっと待てよと言いたかった。実は日本のデザインだって、そのライフスタイルだって、けっこうすごいぞと。そこで「ディスカバー・ジャパン」、つまりは日本再発見をやろうということになったわけです。

―実際、若い人ほど日本が好きかもしれませんよ。

そうなんですよね。そんなちょっと日本の素晴らしさに気づいた人がこの雑誌に興味をもってくれたらいいな、と。ですからデザインなどは、けっこう若者向きにしています。でもこれは、消費を引っ張る団塊世代向けでもあるんです。この層の人たちは渋めのものを好むのと同時に、若いものに触れていたいという欲求があるんです。
実際この雑誌の読者は30代から60代まで広く、男女比もだいたい半々なのですが、読者のコアな層が30~40歳、50~60歳とふたつの山が出来上がる図になっているんですよ。

―日本再発見を掲げておられますが、高橋さんがびっくりするような日本再発見って何でした。

俵屋のすごさも紹介される創刊号
俵屋のすごさも紹介される創刊号
茶の特集はiPadのアプリにもなる予定
茶の特集はiPadのアプリにもなる予定

取材を通じてお陰さまで、いろんな出会いがあるのですが、まずは名旅館でしょうか。それも俵屋さん。女将の佐藤年さんの美意識の高さにはとにかく驚かされました。伝統を守りながら革新していく、これぞ本当の伝統の伝え方だと勉強になりました。宿の世界観にも感動しました。
それとお茶ですね。玉露の氷出しというのを飲ませてもらったときも、お茶というものの深さに感激しました。なんと言うか、お茶が上質の出汁のようでもあり、脳天に覚醒する衝撃がありました。お茶の概念が変わりましたね。
それにお米のバリエーションの素晴らしさ。コシヒカリが流行るのは、やはり味がしっかりしているからなんですね。日本人の食卓も西洋化するなかでおかずの味が濃くなった。それに対抗するのにお米もしっかりとした濃い味を出さないといけなかったのでしょうね。そこから生まれたコシヒカリの旨さ。とにかく、古いもの、身近なものに新しいスポットライトを当てると、次から次へと面白いものが生まれてきますね。

―仕事の流れはどんな感じなんですか。

年の初めに一年の計画をたて、年間の企画をつくります。微調整はありますが、大体決めたことを念頭にそれぞれの号の内容をつめていきます。内容は特集主義なので、そのジャンルに詳しい人にブレーンになっていただき、打合せをしながら、内容をビジュアル化していきます。ビジュアルにはこだわりますね。難しいことをいかにわかりやすく、魅力的に伝えるかに苦心します。それぞれ個性的で優秀なスタッフが揃ってます。みんなと普段からワイワイ楽しく話しながら仕事をしています。編集会議よりも日常会話から企画があがることが多いですね(笑)。
私を入れて4人編集部で、年6冊と別冊、それと「北欧スタイル」を2冊つくっています。

―雑誌のデジタル化も積極的に展開されていますね。

イベントやコラボも多い。大きなパネルが編集部脇に
イベントやコラボも多い。大きなパネルが編集部脇に

そうですね。まずは1~3号で紙の雑誌が品切れになったものから電子雑誌にして販売しています。また、いまちょうどやってる最中なのですが、お茶のアプリをつくってこれを日本語と英語で出すことを進めています。
あとは、Twitterで「みんなでつくる京都」とかをやってまして、これも本になればいいなとおもっています。
ちょうど京都のハイアット リージェンシー 京都でディスカバー・ジャパンの部屋ができていて、そこではブックディレクターの幅允孝さんに「ディスカバー・ジャパン」できる本の部屋をつくってもらいました。3月末までですが、機会があればぜひご覧ください。

―隔月だとなかなか季節をテーマに撮影していくのが難しいですが、季節を先取りした絵づくりなどは、どうされていますか。

前もって撮影することもありますが、テーマによって季節やその風景にとらわれないようにしています。お茶を特集したときも茶畑に何もないときでした(笑)。お米の特集でも黄金色の田の写真はそんなに使っていません。
それよりむしろ見せ方ですよね。逆にステレオタイプな見せ方になることのほうを恐れていて、我々の雑誌をもっと面白くみせるにはどうすればいいか、それに気を配っています。茶葉や米粒を拡大してみせるとか、そんな見せ方のほうがうちの雑誌的にはプライオリティが高い(笑)。

―取材依頼とか日本中から来そうですが。

創刊号から始まる「イズモザキ通信」は、もうひとつの顔だ
創刊号から始まる「イズモザキ通信」は、
もうひとつの顔だ

伝統芸能の方々や、地方からよく依頼がきます。われわれとしては、その時々にあったテーマでうまく切り取れるならいろんな要求に応えるようにしています。芸術祭があったから瀬戸内を特集するとか。スポットが当たりにくいものも世の中の流れの中に入れてみようと考えます。トレンドのなかでいまの日本を考えていく。基本は、少しでも日本がよくなっていってくれることなんです。地方でスポットがあたらないところでも、いいところっていっぱいあるじゃないですか。
たとえば新潟の出雲崎。ここは創刊のときからずっと定点観測して「イズモザキ通信」として連載しています。きっかけは中越地震で縄文時代の古い木がいっぱい出てきたというニュースから始まっているのですが、単に紹介するのではなく、イベントなどをやって人が動くような、地域の活性化につながるような活動を雑誌を通じて行いたいと思っています。
創刊号でもこの「イズモザキ通信」をうしろのページのトップに持ってきて、うしろからも読めるような仕掛けをしてみました。これレコードのB面の発想なんですが、古いですね、レコードって(笑)。

―日本中旅して編集しての生活でしょうが、プライベートでは何かされてることはありますか。

僕はパウダージャンキーで、パウダースノーのあるところへ出かけるのが大好きなんです。よく年末年始は毎年北海道のニセコへこもります。富士山山頂からスキーで滑り降りたこともあるんですよ(笑)。

―やっぱりアウトドアな編集長ですね。

古い大型本などがデザインの参考になると編集長
古い大型本などがデザインの参考になると編集長

アウトドア好きですね。いかなる取材にも必ず海パン持っていって潜るし(笑)。身をもって体験しないと良さはわからないと、よく人には言う(笑)。でも、だからこそといったほうがいいのか、自然の豊かな日本が好きなんですよ。
いまでも日本をしっかり取り上げた古い雑誌、たとえば「太陽」とか読むのが大好きですし、古い美術本、大型本などは眺めるだけでも気持ちがいい。古い本はデザインのヒントに満ち満ちていますね。いまこそもっと古き良きものに新しいスポットを当てるべきです。本当に豊かな世界が広がっていますから。

編集長の愛読誌

(2010年11月)

取材後記
高橋さんは富士山の頂上からスキーで滑降するくらいのアウトドア野郎でありながら、古き良き日本文化をこよなく愛するというバランス感覚の優れた人で、紙の雑誌を編集しながら、実際村おこしなどの立体的なイベントにも力を注ぐという本当に幅広い編集者です。昨今、編集というものが、どうも小さい概念で捉えられすぎていて、編集者が肩身の狭い思いをしているという話も聞きますが、高橋さんのようなスケールで仕事をされている人に出会うと、もっとこの仕事を見直さなければならないという気持ちになります。
父上の影響か、小さい頃から遊園地より寺めぐりに興味を持ち、陶器に触れるといったことを面白がったという話を聞いたとき、かつて私の友人が「編集者は空間の司祭たれ」と言ったことを思い出しました。まぁ空間の司祭はオーバーにしても、編集者たるもの、もっと自由に新しい価値創造をしたいものと、プチ自戒です。

インタビュアー:小西克博

大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で「GQ」日本版の創刊に参画。 「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に「遊覧の極地」など。

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