食べようびの編集長インタビュー

編集長プロフィール

オレンジページ
「食べようび」編集長 花村哲さん

はなむらてつ 1969年生まれ。明治大学文学部卒業後、株式会社オレンジページ入社。編集部に配属。「オレンジページ」デスクを経て現職。

編集長写真

第79回 食べようび! 編集長 花村哲さん

―すごく分かりやすく、見やすい雑誌で、私も自炊したい気分になりました。読者はかなり若い人ですか。

レシピを簡潔に 誰でもすぐ つくれるように

レシピを簡潔に 誰でもすぐ つくれるように

ありがとうございます。その若い層が狙いですが、続けるにしたがって、支持してくださる年齢層が広がっていくだろうと思っています。
いまは20~30代の女性、男性が中心読者で、基本は自炊をよしとする人たちです。単身の人もいればカップルの人もいます。男性読者はまだ15%くらいですが、号を重ねるごとに伸びていますから、ここもまだまだ伸びると思います。

―レシピの見せ方がカタログ的で、簡潔で、これならすぐつくれるといった気軽な感じがいいですね。

やはりこの世代の共通項として、節約したい、手早く食べたい、健康にも配慮したい、といった希望があります。でも既存の雑誌では、レシピや解説の分量が多く、なんだか手間がかかりそうな印象があって、料理雑誌を見ながらクイックにつくろうという気にはならなかった。そのあたりのニーズを掬っているところが他誌との違いでしょうか。外国人の読者にもうけがいい、という話を聞きます(笑)。

―この1ページを包装用紙にパッケージして、中にインスタントの具が入っていてもよさそうな感じ。

まさに、そうなんです。ヒントとなったのは、マーボー豆腐の素などのハコの裏にイラストで描いてあるレシピの見せ方。あれなんです。簡潔で、誰にでも簡単につくれるように絵ときで描かれていますよね。あれでいいんじゃないかって。それに誰にでも分かる写真と、なるべくアイコンなども上手につかって、シンプルで見た目もすっきりしたレイアウトにしています。だから、読んですぐ分かってつくれるという風に使ってもらえたらと思います。

―雑誌がデジタル化したときにも、このデザインならそのまま使えそうですね。


それも考えています。まだいろいろ準備が整わないので、すぐにデジタル化はできないのですが、読者はスマホやタブレットのユーザー層でもありますから、彼らのニーズに対応できるようにはしていこうと思っています。ですから、画面をフリックしていくような感覚で読めるレイアウトになっています。

―写真も真上からドカンと。

ええ、カクハンでないとシズル感が出ないとか、いろいろ意見はありますが、それはお皿の中で最大限出せればいいのではないかと。
ライフスタイル誌などでは、部屋の全体の雰囲気のなかで料理写真を見せたりしますが、この雑誌の読者の多くは、小さな部屋のなかで、でもそれが自分の城であって、そこで小さなシアワセを得られればいいと思っているわけですから。
もちろん、本全体を通した中では、日常のストーリーを感じさせるカクハンの料理写真で構成したページでもあります。

―読者世代の共通項があるとすれば何でしょう。

みんなそれぞれの小さな城のなかで、どんな風に暮らしてるの、といった情報の共有は欲していますね。それはやはりSNSの影響が大きいと思います。自分がいる場所はひとりの小さな空間でも、同時にいろんな場所のいろんな仲間とつながって、会話したり、いろんなことを共有できたりする。これがもたらした意識の変化はすごいと思います。

―ひとむかし前ならちょっと気恥ずかしかったはずのひとりメシや、お弁当なんか、男性も平気というか、何の抵抗もなくなっていますよね。

そうなんですよ。またそのお弁当の中身を見せ合ったり(笑)。こういうのって、やはりMixiやTwitterやFacebookの影響がほんと大きいですよね。
かつてはクイックな料理って、ちょっと見下げられるところがありましたが、彼らの世代は本当に合理性が大切で、それにかなっていれば、けっこう何でもいけちゃうみたいなところってありますね。

――となると、編集のスタンスも変わってきますか。


こちらの目線を上げないように気をつけています。あくまで、読者と同じ目線。まず彼らの生活シーンをイメージすることを、企画立案の基本にしています。あとは、ほどよいユルさ。たとえ失敗したとしても、うちの読者は、でも完成できたからいいじゃん、といった小さなシアワセ、小さな達成感を感じてくれています。正当派料理はこうですよ~なんて能書きを、彼らは求めているわけではないんだと思います。

――プロの方がレシピをつくっておられるわけでしょうから、そこはまたひとつ大変でしょうね。

そうなんです、料理家の先生には、「引き算」が基本のレシピに戸惑われる方もいました。たぶん編集部のなかでは、僕が一番料理をつくらないほうだと思う。だから、逆にシンプルにできる部分もあるのかな、と。これとあれはカットして、ここだけ残すみたいな編集ができるのかなと思ったりしています。

――やっぱりみんな家飲みとかやってるんですか。

そういう読者が大半です。だいたい都会の真ん中で集まって飲むようなことはしないで、地元の駅の安い居酒屋か家のみが多い。とにかく低予算というのは重要です。
冷凍料理を半分食べて、またラップして次の日に半分食べるとかそれを弁当に入れるとかは日常です。ラクチンだし、安上がりだし、とくかく合理的です。
編集部員を24時間営業のスーパーにはりつけて、ターゲットとなる世代の方を取材したのですが、このときに彼らが買ったものって、ものすごく効率的なんです。冷蔵庫にあるものをちゃんと把握していて、これとこれを組み合わせたら1食になるとか、すごいですよ。

――ちょっと前までは、それが健康的ではない生活のように言われましたが、いまは冷凍ものだって、インスタントだって、ヘルシーにできていますからね。

そうなんですよ。彼らもただ安ければってことじゃない。やはり健康に気をつかうということもものすごく大切な要素です。
それにコンビニや家電の動きなどにも象徴的に現れていますが、これからは、こういったひとりひとりにしっかり対応できる商品が主流になりますね。2013年には2人以下の世帯が半数を超えるという統計もでていますから、ひとりで簡単にできて、安くてヘルシーというのが重要なキーワードだと思います。
ビニメシってわかります? お弁当箱にも入れないでラップに包んだだけのご飯。山で食べるような弁当ですね。金曜のお昼なんかはこれを持ってきて公園とかで簡単に食べて、ラップを処分しておしまい(笑)。金曜は仕事が終わったら遊びに行きたいから荷物を持ちたくないという気もわかりますが、ここまでもうみんな合理的にやれているというのが現状です。

――特集のテーマとかは編集長が用意するのですか。


編集部は僕入れて6人。校了の2ヶ月前メドでテーマを用意するようにしています。テーマはブレストのなかで生まれてくることが多くて、部員が出した企画やキーワードをもとにテーマを決め、僕がパッケージする感覚です。この8月号(6月20売り)から月刊化ですから、それを繰り返していくつもりです。

――そうですね。おめでとうございます。社内の評判などはどうですか。

お蔭様でいいです。他部署の人が自腹で買いましたと言ってくれたり。とくに読者世代に近い人からそう言われると嬉しいです。
いま、時代がちょうど、こういうものを欲していると思います。食をめぐるシーンも、この2~3年でがらりと変わりました。ですから、生まれるべくして生まれてきた雑誌であるとも思うんです。
大衆はクラスタ化し、たくさんの小さな塊になっている。そのクラスタ自身が小さいから売れるものが出来ない、という発想ではなく、クラスタの共通項を結び付けられるようなものを、この雑誌で提案できたらと願います。

――広告主にとっては、出広しやすい雑誌のひとつかもしれません。実際表4は毎回独自のタイアップです。

表1や特集と連動するタイアップもあります。このあたりはニューメディアクリエイション部と蜜に打ち合わせしながら柔軟に対応していくつもりでいます。
いままで料理しなかった男性が、この雑誌をみてつくりはじめたら面白くなってはまっちゃったという話をよく聞くんです。これってプラモデルを組み立てるのと同じ感覚なのかなと思ったりしていますが、新しいニーズを発見したのかなと思いました。
ただ、旦那さんが料理にはまっちゃって、仕事中に奥さんに「バルサミコ酢、どこにしまってあるの?」とかしょっちゅう電話してくる、なんて話を聞くと、奥さんにしたら、これはちょっとメイワクなのかなあって思ったり(笑)

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(2012年5月)

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