―伊藤さんは何代目の「コモ」編集長ですか?

妊娠・出産・育児を楽しむ3冊
7代目です。その前は「Pre-mo」「Baby-mo」と妊娠・育児を応援する雑誌の編集長をしていまして、08年10月から「コモ」の編集部に異動になりました。
この雑誌はことしで創刊19年。「コモ」と「Ray(レイ)」の2誌が社内では同時期の創刊で、 「Ray」は金赤袋文字系を、「コモ」はミセス向け狙いのものをそれぞれ考えていました。「コモ」は社名誌の「主婦の友」に変わる雑誌になるのかという声もあったとも聞きました。
―創刊当初と変わったことはありますか?
私は昨年からなので、すべてを知っているわけではないのですが、以前の「コモ」はよりファッションの要素が強かったような気はします。
いまは生活や雑貨、食などの内容が増えていますね。不況の影響もあると思います。
可処分所得が減るとママたちは、まず自分が買うものを減らします。自分の服は犠牲にしてもいいから、まず子供の買い物、そして家族のレジャーなどを優先します。そうすると自ずからファッションページよりも生活ページを充実させたほうが読者受けがよくなってくる。
「Mart(マート)」(光文社)が好調だとききますが、ホームベーカリーとか日常のなかのささやかな幸せにフォーカスしているからだと思います。
「巣ごもり」「おうちごはん」などは、この時代には欠かせないキーワードなんですね。それらにわれわれはうまく対応していかないと。
―ママのニーズに応えるまさに“主婦の友”ですね。

家電メーカーとのタイアップ広告もこの雑誌らしい
ええ。社名は古いですが、この会社がメッセージとして発信してきたことはずっといまも受け継がれています。それは雑誌「主婦の友」が休刊になったいまでも何も変わっていないと思います。
―「コモ」の名前の由来は何ですか?
スペイン語の「コモエスタ(ご機嫌いかが)」やイタリアのコモ湖などをイメージしたとは聞いていますが、語呂合わせが一人歩きした部分もあるみたいです。
「プレモ」「ベビモ」「シュフノトモ」・・・韻をふんでますね(笑)。
―読者は小さい子供のいるママたちということですか?
はい。創刊当初の読者には、短大を出てOLになって結婚して家に入り子供ができて・・・みたいな人が多かったんです。ファッションもコンサバ。いまは、それが非常に多様化しています。
就学前の子供を持つママ、3歳から7歳までの子供を持つママが主な読者に違いないのですが、すごく若いママもいればそうでない人もいる。平均すると25歳~35歳ということになるのですが、年齢が10歳違うと付き合いも、趣味も、生活スタイルも、年収もかなり違ってきますよね。だから読者をひとくくりにするのは非常に難しいんです。
先代の編集長時代には「姉ママ」「妹ママ」ということばをつくったりもしていました。そんな幅広い読者ですので、私はあまりかたよらないように内容を提供するように心がけています。
―競合誌というのは何になるのですか?
「LEE(リー)」(集英社)「レタスクラブ」(角川グループパブリッシング)「オレンジページ」(オレンジページ)「ESSE(エッセ)」(扶桑社)「サンキュ!」(ベネッセ)「Mart」(光文社)「saita(サイタ)」(セブン&アイ)「おはよう奥さん」(学習研究社)「すてきな奥さん」(主婦と生活社)・・・などが競合といえば競合ですが、弊誌の場合、決定的に違うのは読者が100%ママだってことです。子供を産み育て、という経験のある人。
コモモデルと呼んでいる素人モデルさんたちもみなさん本当のママです。
―コモモデルは何人くらいいらっしゃるのですか。
81名です。誌面で募集をして写真選考します。それからスタジオ撮影をして編集部が決定するのですが、毎年10人ほどのコモモデルが誕生します。彼女たちは表紙を飾ったり、中の企画ページで登場したりして、さまざまな協力をしてくれます。
イベントの際にも出てもらうことがありますが、人気は抜群です。コモモデルはママたちの間でカリスマとして受け止められているようです。憧れの存在というのでしょうか?
―いわゆる“お受験”というテーマはどうお考えですか。
基本ポリシーとして“お受験”は積極的には扱わないことにしています。
全国誌だということもありますが、むしろ健康面や情緒面であったりしつけであったり、そちらのほうを優先しています。たとえば「パパにもわかる幼稚園選びの基本のキ!」といったような特集も組みます(2009年9月号)。
夫婦で一緒に子育てを考えていこうということに重きを置いた企画のほうが「コモ」らしいですね。
―必ずやる特集のようなものはあるのですか。

ママの実際の体験談が企画のヒントになる
年中行事、家族イベントですね。これは「コモ」の裏コンセプトでもあるのですが、家族のイベントは最重要です。
家族にとってのイベントって実はたくさんあるのです。ハロウィーンやクリスマス、お正月、七五三、卒園式・・・。毎月のようにあるこれらの行事をどう扱うかに編集部は頭を使います。年中行事の由来を知りたいといった要望もよくあります。
ママは家族を仕切るキャプテンとしてこれらの場では大活躍。アンケートをとってみても、家族イベントとレジャーは常にやりたいことナンバー1なんですよ。 どういうふうにイベントを楽しく仕切り、そしてその場に何を着ていくか。ここがママたちの勝負どころでもあるわけで、ここで好感度アップにつながるファッションや振る舞いが大切。
そんなハレの場で「~ちゃんのママってすてきね、きれいだね」といわれたらうれしいじゃないですか。生活ではしっかり地に足をつけながらも、おしゃれの面では地面から少し背伸びするくらいの意識を持つママたちに読まれる雑誌でありたいですね。
―時間のないママたちには通販はありがたいと思われますが、雑誌ではどういうふうに通販に取り組まれてますか?
ニーズは非常に高いんです。ママの服に限らず、子供服なども、かわいいのは近くに売ってないということが多々ありますからね。
でも、通販事業に大きく踏み込むというよりは、まだ読者サービスの一環としてやっているというレベルですね。中ページでいくつかやっているものも主婦の友ダイレクト (http://www.s-direct.co.jp/)が中心になっています。今後はもっと拡大していきたいと考えています。

「コモ」から生まれた単行本
―読者との距離が非常に近い雑誌だと思います。携帯やwebへの対応はどうですか。
読者と双方向で作り上げるような部分もありますから、デジタル対応をもっと積極的にやれればと思っています。まだ有効利用できるコンテンツが少ないということもあるのですが、ことしの4月から新部署が発足しました。「プレモ」「ベビモ」「コモ」の連合サイトもますます充実させていきます。 (http://www.prebabycomo.com/ )
携帯を上手に使うママたちは多いし、自分の子供たちを写メでとって送るコンテストなども人気が高いですからね。
―編集部の構成を教えてください。
私を入れて11人です。副編集長が男女1人ずつで、編集者のなかにはママが2人います。
編集会議といっても世間話っぽい感じで、ママ編集者の日常の話題、コモモデルたちとの話、ブームの話などからいろいろ出てくるものを掬い上げることが多いですね。 それに年中行事、イベントがしょっちゅうありますので、それは毎回手を変え品を変えて見せていかねばなりません。これはファッション雑誌の手法に近いかもしれません。
とにかく現役のママの意見は強いです。実際に体験していますから。 残念ながら私は独身なのですが(笑)。
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1.東京人(都市出版)
昭和的な企画が多く、つい買ってしまう。寄稿陣も魅力的。
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2.サライ(小学館)
安心できる誌面づくりは読む精神安定剤に。
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3.dancyu(プレジデント社)
以前のほうが威厳があって好きだったが、いまも愛読。
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4.ナンバー(文藝春秋)
サッカー好きなのでその特集は見逃さない。
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5.小説新潮(新潮社)
居酒屋好きなので太田和彦さんの「居酒屋百名山」目当てで。
(2009年8月)