アイデア 発売日・バックナンバー

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3,850円
特集│Special Feature
親密さのグラフィック―BL漫画にみる関係性のデザイン

BL(ボーイズラブ)は、漫画や小説のみならず、アニメ、ゲーム、二次創作へと広がりながら独自の文化圏を築いてきた。その一方で、BLはこれまで主に物語やジェンダー、セクシュアリティの文脈から論じられてきたジャンルでもある。本特集では、そうしたBL表現を「デザイン」の視点から捉え直し、そこで視覚化される「親密さ」や「関係性」の表現に注目する。

2010年代以降のBL漫画を中心に、50点以上におよぶカバーデザインを掲載。ふたりの距離感を示す構図や色彩、タイポグラフィ、装丁表現などを通して、「親密さ」や「関係性」がどのように視覚化されてきたのかを読み解く。あわせて、デザイナーによるコメント、漫画家・ソライモネへのインタビュー、藤本由香里、西原麻里、溝口彰子、タイモン・スクリーチらによる寄稿も収録。BL表現の豊かさと、その視覚文化としての魅力に迫る。
3,850円
特集│印刷史の断層
―リソグラフがひらく本づくりの未来

 長らく印刷は,均質性と再現性を理想として発展してきた。活版からオフセット,そしてデジタル印刷へと至るその歩みは,いかに正確に、いかに効率的に複製できるかという問いの積み重ねでもある。日本の出版文化もまた、著者、編集者、デザイナー、印刷所、流通、書店といった専門的分業のもと、その技術的基盤に支えられながら成熟してきた。
 しかし近年、その境界は静かに揺らぎ始めている。編集やデザイン、印刷、製本、流通といった役割を横断しながら本をつくる実践が広がり、小規模で柔軟な出版のありかたがあらためて注目されている。

 そうした動向と結びつくかたちで,再び注目を集めているのがリソグラフ印刷である。日本の理想科学工業株式会社によって開発されたこの印刷機は、教育現場や事務用の簡易印刷機として普及したが、2000年代以降、予期せぬかたちで海外のアーティストやデザイナーに見出され、ZINEやアートブックの制作現場で独自の文化圏を形成していった。そしていま、その文化は日本国内の動きとも響き合いながら広がりを見せている。

 リソグラフ印刷は決して万能ではないが、版ズレやかすれ,色ムラといった不確かさを内包しながらも、その偶発的な表情やアナログな質感は、画一的な大量生産とは異なる価値を提示している。均質性や再現性を軸に発展してきた印刷史のなかで、不完全さや不確かさといった制作の痕跡が批評的な意味をもち始めたいま、リソグラフ印刷は、その連続性の内部に異なる価値を差し込む「断層」として位置づけることができる。

 DIY的な試みから始まったこの印刷手法は、やがてZINEやアートブックへと展開し、いまではデザイン事務所やインディペンデント系出版社がオフィスに導入し、自らの手で出版を行う実践も広がっている。本特集では、こうした国内外のリソグラフスタジオやインディペンデント系出版社へのインタビューを通じて、印刷と出版の関係をあらためて問い直す。効率や均質性から距離をとる実践のなかに、これからの出版文化の可能性を探っていきたい。
3,960円
特集│Special Feature
有馬トモユキ│関係から生まれるデザイン

日本デザインセンター「有馬デザイン研究室」の有馬トモユキは、2000年前後からはじまったデジタルイノベーションにリアルタイムで併走してきた人物である。有馬はいわゆる美術大学でデザインの専門教育を受けてきたわけではない。コンピュータを通じてゲームとインターネットに触れ、ウェブで漫画・アニメカルチャーと出会い、音楽によってグラフィックデザインを知り、同人デザインに参加することで人と出会い、出会った人との関わりから自分の仕事の領域を拡張しつづけてきた。ウェブ、書籍、パッケージ、ブランディング、アニメーション、ゲーム、展覧会―技術と人とのかかわりのなかで探求をつづけ、あり合わせの道具としてアプリケーションを駆使してきた。

本特集では有馬トモユキのキャリアを総括する。有馬は技術と人との関係から生まれるデザインをつくりつづけてきた。みずからの職域を職能で規定するのではなく、求めに応じ、あるいは求められていなくとも自身の動機に基づき、プロジェクトごとに自分の仕事の範囲を定める。「ここまでがデザイン」なのではなく、「これもデザイン」であっていい。
デザイナーとして、ではなく、デザインができる人間として力を尽くす。そのことがプロジェクトをともにする仲間を触発し、受発注の境界を曖昧にさせ、デザインスタイルを超えて、「有馬トモユキのデザイン」を成立させている。

有馬の仕事を振り返ることは、現代における技術とデザインの関係を問い直すとともに、デザインが「人間の仕事」であるために、そこにかならず介在する「人」という要素に目を向けることにもつながる。それは来るべき2030年代のデザイナーたちにとってひとつの指針を示すものになるはずだ。本特集がデザインを目指すすべての人の背中を後押しするものとなることを願う。
3,630円
【特集】
書のかたち,文字のデザイン
アラビア書道とタイポグラフィから読みとく造形文化

企画・構成:アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,鎌田紗栄,小泉桜)

アラビア文字は,精神性と造形性を兼ね備えた文字体系として,約1400年にわたりイスラーム世界の文化と信仰を支えてきた。もともと口承で伝えられていた聖典クルアーンを,その理念の崇高さにふさわしい視覚表現へと昇華する営みのなかで,アラビア書道は発展を遂げた。偶像の使用が制限される文化的背景のもと,文字そのものが意味と美を兼ね備える視覚表現として尊重され,とりわけモスクやマドラサといった宗教建築では,幾何学文様や植物文様と並び,壁面やドームを彩る装飾として空間に精神的な深みと象徴性を与えてきた。

しかし,この文字体系は,連綿とつながる筆画や複雑な字形の変化ゆえに印刷への適応が難しく,活版化はヨーロッパ諸言語に比べて遅れた。ムスリムによる本格的な活版印刷が始まったのは18世紀であり,カリグラフィの美を損なわずに機械的な複製を可能にするという大きな課題を伴っていたのである。

今日では,こうした制約を超えて,伝統と革新を横断する多彩な試みが生まれている。古典の精神を現代的に再解釈する書家や,デジタル環境におけるフォント設計やレイアウトを探究するデザイナーなど,いずれも線の伸びやかさやリズム,字間や余白の美を保ちながら,ポスターやロゴタイプ,ブックデザインなど現代の視覚文化へと書の遺産を受け継いでいる。

本特集では,アラビア書道の源流と美学をたどる第1章「カリグラフィ」と,近代以降の活字化と現代的展開を探る第2章「タイポグラフィ」の2部構成で,この文字が築いてきた造形文化の系譜を描き出す。宗教的背景から生まれた書の文化が,いかにして時代と技術を越えて生き続けているのかを考えながら,文字の「かたち」と「意味」をあらためて見つめたい。

Chapter 01 カリグラフィ──書の伝統と精神
アラビア文字とアラビア書道
文:相島葉月

アラビア文字・形と音の手引き
監修:林 則仁

書物・工芸品・建築にみるアラビア文字
文:林 則仁

アラビア書道の現在

Chapter 02 タイポグラフィ──現代に息づく書のかたち
アラビア文字のタイポグラフィ
文:大曲都市

タイプデザイナーの実践

[寄稿]
イスラーム空間における文字と装飾
文:深見奈緒子

東洋と西洋の狭間──イスラーム美術とアラビア文字
文:小林一枝

沈黙の書体──アラブ・グラフィックデザインと可視化の駆け引き
文:ハイサム・ナワール

[選書]
アラビア文字・関連書籍案内
文:大曲都市

[連載]
デザイン蒐集家たちの部屋
第11回:デザインアーカイヴ「The Design Reviewed」part 3
East meets West & West meets East ──和本の美しさに魅せられて
文:中島悠子  デザイン:山田和寛+竹尾天輝子(nipponia)
翻訳:株式会社フレーズクレーズ

[レビュー]
Art Book Osaka
文・デザイン:ブラザトン・ダンカン

受け継ぐことのよろこび
《ギャビー・バザン デザインのアトリエ 活版印刷 
Gaby Bazin – Le Typographe》
文・デザイン:長田年伸
協力・写真提供:市谷の杜 本と活字館

アン・サンス個展「Hollyeora(Be Spellbound)」
文:西まどか デザイン:中山詳子

スウェーデン国立美術館 
素描コレクション展──ルネサンスからバロックまで
文:アイデア編集部 デザイン:中山詳子

160 第27回亀倉雄策賞・JAGDA新人賞2025・JAGDA賞2025決定

INFORMATION

BOOK
3,630円
特集:「こわい」をかたちにする ―恐れと不穏を視覚化するブックデザイン

「こわい」とは、恐怖や不安、嫌悪、驚き、あるいは不条理や理不尽といった感情の集合であり、私たちの心を揺さぶる強い力をもっている。本特集では、そういった「こわさ」の感覚が本の装丁や表紙といった視覚表現にどのように現れているのかを探る。

小説・絵本・漫画・雑誌という4つのジャンルを軸に、現在の「こわい本」のヴィジュアルを紹介。また、坂野公一(welle design)、伊藤潤二、Chilla’s Art、fracoco各氏へのインタビューや、東雅夫氏による寄稿を通して、「こわさ」をめぐる表現の奥行きを考えていく。
3,630円
特集:美しい書物を求めて ―中世ヨーロッパの写本とデザイン

 写本とは、活版印刷が発明される前の時代に、手書きで文字を写した書物のことである。中世ヨーロッパの修道院には「スクリプトリウム」と呼ばれる写字室が設けられ、そこでは「写字生」たちが、羊や子牛などの動物の皮からつくられた紙(羊皮紙)に文字を書き写していた。
 中世の写本といえば、世界で最も美しい本と称される『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』や、アイルランドの国宝『ケルズの書』など、豪華な金箔や色彩をふんだんに使用した装飾や、美しいカリグラフィーを特徴とする作品が知られている。これらの写本は、単なる宗教書にとどまらず、芸術的な価値を持つ作品としても高く評価されている。

 ページのマージン設計やレイアウト、配色といった、読者の利便性を考慮した写本のデザイン面については、あまり光が当てられてこなかったが、文字の大きさや配色だけでなく、ときにはインフォグラフィックスを用いて視覚的な補助を通じて読者の理解を助けるなど、写本の制作に携わった写字生たちは、まさに現代のグラフィックデザイナーの先駆者ともいえるだろう。

 本特集では、その写字生たちが手がけた書物の「デザイン」に焦点を当て、レイアウト・フォーマット、装丁、配色や書体といった視点から写本を分析することで、現代のグラフィックデザインとのつながりを探る。美しく文章を配置するためにガイドラインを設けたり、挿絵や装飾(彩飾)イニシャルを施すためのスペースを事前に確保し、後からその部分に装飾挿絵師が担当して入れるなどといった、現代のDTPやデザインに共通する工程や、いつの時代にも存在する「制約」のなか、わずかに残された「自由な空間」(ページの余白など)で写字生や装飾画家たちが発揮した遊び心など、人々の本づくりの工夫や情熱を探りながら、美しい書物とは何かを改めて考えたい。
3,960円
【別冊付録 ニューカレンダー2025付 特大号】

特集:物語るピクセル表現 小さなドットが描く世界とデザインの美学

技術的な制約から生まれた「ピクセル表現」は、現在では確立されたデジタルアートのスタイルとして定着した。ゲームというメディアを通じて進化を遂げたこのスタイルは、レトロな印象をもちながらも新しい感性や価値観を内包し、現代においても独自の表現力を発揮している。

近年は、Lucas Popeの『Return of the Obra Dinn』やToge Productions の『Coffee Talk』、さらに直近ではWONDERPOTIONによる『SANABI』などがその深い物語性や美しいヴィジュアルで注目を集めた。日本でも海外作品の影響を受けた新たなタイトルが生まれる一方で、独自の感性をもつ作品も多数登場している。これらの作品は、国境を越えてこの表現の可能性を広げると同時に、文化や技術が交差する場となっている。

本特集では、Lucas PopeやToge Productions、Mojiken Studio、Pixpil、WONDERPOTION、Sabotage Studio、Sukeban Games、SOMI、Odencat、room6といった、ピクセル表現を取り入れた作品で高い評価を得ている世界中のクリエイターたちにご登場いただいた。いずれもその独自性と創造性により、素晴らしい作品を生み出し続けている存在だ。彼らのインタビューやゲームヴィジュアルの詳細に触れることで、この領域のさらなる可能性を感じていただけると思う。

ピクセル表現は、単なる懐古的なスタイルではない。時代を超え、技術を越え、表現力の限界を問い直すクリエイティブな挑戦といえるだろう。本特集が、その奥深い可能性を感じ取る契機となり、本誌読者の新たなインスピレーションを得る一助となれば嬉しい。
3,630円
紙媒体がつなぐ未来 雑誌・同人誌・リトルプレスをつくるひとたち
企画・構成:アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,鎌田紗栄)
撮影:青柳敏史・稲口俊太・高畠正人(pp. 66-69)
1990年代後半以降,紙の書籍や雑誌の売上は右肩下がりが続いている。近年は,印刷資材の価格が高騰し,紙媒体の出版活動はますます厳しい状況だ。出版業界は,大量生産によって本の価格や資材のコストを抑えるモデルに依存してきたが,このモデルは本が広く売れることを前提に成り立っていた。しかし,インターネット,スマートフォン,SNSの爆発的な普及によって,本や雑誌の販売はかつての盛況を失い,特に雑誌は急激にその数を減少させた。この状況は旧来の生産と流通システムの維持を困難にし,出版業界の在り方自体の根本的な変革を余儀なくしている。
一方で,独立系出版社による新たな試みや,「紙媒体」での情報発信にこそ価値を見出す動きが盛んになっている。これらの新しい出版物は,既存の出版取次頼みのシステムから離れ,新たなネットワークやブランド価値を創造しようとしている。紙媒体がもつ独自の魅力を再評価し,現代の情報社会における新たな位置づけを模索しながら,独立した編集者たちは,自らの視点と使命感をもって,紙媒体の未来を切り拓こうとしている。
本特集では,『Subsequence』『mahora』『inch magazine』『MMA fragments』『MOMENT』『ランバーロール』『モノノメ』『SASHIKO BOOK』『mürren』『台湾手帖』『茶酔叢書』『ノーツ』『製本と編集者』と,多様なジャンルの雑誌・リトルプレスに焦点を当て,編集者やデザイナーへのインタビューを通じて,彼らが「今」どのような理念で活動を続けているのかを掘り下げる。
また,野中モモ氏にはZINEの最新潮流についての見解を,文学フリマを主催する望月倫彦氏には文フリのこれまでとこれからについての洞察を寄せていただいた。映画館「Stranger」の元代表である岡村忠征氏には,ミニシアターとしての「場」づくりと自社発行メディアの役割についての考察をお伺いしている。
紙幅の都合上,本特集に参加いただいたメディアはほんの一部に過ぎないが,雑誌・同人誌・リトルプレスを手がける編集者たちの活動は現在も着実に広がっている。こうした小さくとも力強い試みが,やがて大きな変革の火種となり,業界の「再発見」につながるのではないだろうか。
3,630円
特集:小林一毅 生活の図考
企画・構成:小林一毅、明津設計、アイデア編集部 デザイン:明津設計

グラフィックデザイナー、小林一毅(こばやし・いっき)の特集号。小林は2015 年に多摩美術大学を卒業後、資生堂に入社しクリエイティブ本部でデザイン業務を担当。退職後の2019年にはJAGDA新人賞を受賞した。現在はフリーランスのグラフィックデザイナーとして、東京を拠点に活動を続けている。

本特集では、小林が2023年冬から描きためてきた新作図案38点を収録した。小林の制作において、これらの図案は下絵にあたるものであり、通常は手描きの図案をもとにIllustratorでパスを起こし、デジタルでの作業を介してデザインとして完成させていく。しかし、小誌では小林がつくる「かたち」が立ち上がってくる過程や、図案を描くという行為を通じて彼がどのように身体で思考しているかに焦点をあてるため、「生活の図考」と題し、デザイン未然のものとしての「図案」を並べてみることにした。誌面の構成・デザインは、小林と大学の同期にあたり、その活動を身近に見てきた明津設計によるものだ。

高度にデジタル化された現代社会においては、ものづくりの現場でも合理化が進み、おどろくべきスピードで大量の表現が発生しては消費されていく。ここ数年の生成AIブームはそうした状況を後押し、一定のアルゴリズムに基づいてイメージを操作したり、他者との協働やツールの手助けを借りたりすることで、画が描けなくてもデザインをすることは可能だ。

造形へのアプローチがアナログかデジタルかといった議論は、デザインにおいてはもはやそれほど大きな問題ではなく、アナログとデジタルの両者が適材適所で使い分けされていけばいいだろう。ただ、誰かのために何かをつくろうとする動機や、何をもって完成とするのか、少なくとも現時点では、始まりと終わりには人間の判断が必要となる。そうした判断の材料として、わたしたちが手や目を通じて得た経験は、ビッグデータのアルゴリズム以上の確かさをもっている。

日々の生活のなかでの整理のつかない感情や、余分なもの、なんでもないものにふと関心を抱くような感性が、かたちの根拠となり、強度ともなる。つくること、働くこと、暮らすこと、日々わりきれない生活のなかでも実直にかたちと向き合い、手を動かす小林の姿勢から、かたちが生まれるということの尊さについて、いまいちど考えてみることにしたい。
3,630円
[特集]
世界を覗くグラフィック
―断面図・間取り図・分解図―見えないものを描く視点
企画・構成:アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策、鎌田紗栄)

たてものの骨組みを描いた構造図や間取り図、巨大都市の地下を這う地下鉄や下水道の断面図、閉ざされた工場内部の生産ラインを一望する俯瞰図など、ひとの目では見ることのできない都市や構造物の内側を描いた視覚表現には、見る者の想像力を掻き立てる不思議な魅力がある。絵本に登場する乗りものや機械の分解図、人体解剖図、野菜や植物などの中身を描いたイラストレーションは多くの子どもたちを魅了するし、街の俯瞰図や住宅の間取り図は大人たちの記憶や想像力に働きかける視覚装置でもある。

「見えないものをみる/描く」という行為は、人間にとって根源的な欲求のひとつとも言えるが、印刷技術が発達した近代以降には、欧米を中心に図鑑の中の解剖図や新聞・雑誌の挿絵として、断面図や分解図を用いたイラストレーションが親しまれてきた。一方で、そうした表現は近年グラフィックの分野で注目される「インフォグラフィックス」や「データヴィジュアライゼーション」にも共通する視点をもっており、イラストとデザインの両者をつなぐ表現とも位置付けられるだろう。そこで、本特集では領域を超えた視覚表現(グラフィック)の可能性を探ってみることにした。

取り上げた古今東西の8名の作家たちは、イラストレーターとして活躍する人もいれば、建築家やゲームグラフィッカーなど異なるバックグラウンドをもつ人もいる。しかし、ともに「ものの内側」を描くことに着目し、断面図や間取り図などの表現を用いて多くの人の目を奪う制作を続けている。また、特集後半の寄稿や小特集では、絵本における空間表現、地図や建築の領域におけるイラストレーションなど、見えないものを描くことに魅了された作家たちの仕事も紹介していく。彼/彼女らの視点を通じて、多くの読者が新たな発見や興奮に出会えることに期待したい。
3,960円
3,630円
【特集】
世界の「声」をつくる
書体デザイナー大曲都市の仕事

企画・構成:アイデア編集部
編集協力:長田年伸,藤井亮一,柴田光
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,守谷めぐみ)
翻訳:フレーズクレーズ,ブラザトン・ダンカン
大曲都市(おおまがり•とし)は,1984年福岡県春日市生まれの書体デザイナー。Tabular Type Foundry、Omega Type Foundry主宰。ゲームと映画,そしてラーメンを愛し,近頃は書体づくりとコーヒー豆の焙煎に情熱を注ぎながら,英国ロンドンを拠点に活動を続けている。
大曲は武蔵野美術大学,英国レディング大学を卒業後,世界的なタイプファウンドリMonotypeに入社。約8年にわたり数々の欧文書体の復刻•改刻に関わる一方で,モンゴル文字やチベット文字,キリル文字,ギリシア文字など,ノンラテン文字の書体デザインにも精力的に取り組んできた。GoogleのNoto Fontsプロジェクトへ参画するなど,多言語書体制作の第一人者として世界的に認められる書体デザイナーだ。
本特集では,これまでの大曲の制作書体を一挙に収録。多言語の書体デザインとカリグラフィの実践,欧文書体の復刻・改刻を通じた歴史へのアプローチ,カスタム書体の制作事例と幅広いコラボレーション,そして,さまざまな書字体系に対応するための独自のアプリケーション,デジタルデバイス開発など,従来の書体デザイナーの職能を超え,領域横断的に活動する大曲の仕事を紹介する。
Chapter 1 世界の文字と書体デザイン
・Noto Fonts
・Platia
・Klaket
【座談会】
世界の言葉と文字:「 文字」が背負う歴史とアイデンティティ
荒川慎太郎,澤田英夫,大曲都市

Chapter 2 欧文書体のデザイン
・Metro Nova,Albertus Nova,Wolpe Pegasus,Wolpe Tempest,Wolpe Fanfare,Neue Plak / Neue Plak Text,Forte Forward,Plantin,Quentin Blake,Premier League,Inkulinati,Tokyo Dome City

【寄稿】
大曲都市とレディング大学
文=ジェリー・レオニダス
【寄稿】
Typotheque:ラテン書体から世界の書体へ
文=セバスチャン・モーリゲム

【寄稿】
書体プロジェクト Kigelia
アフリカの主要な書記体系を支える,文字体系とスタイルを複数含む業界初のフォントファミリー開発の裏側
文=マーク・ジャムラ&ニール・パテル
Chapter 3 Type & Play
・BubbleKern
・Glyphsコントローラ

Chapter 4 等幅フォント
・アーケードゲーム•タイポグラフィ
・Tabular Type Foundry

【座談会】
来るべき書体を求めて:グローバリズムのなかで書体デザインを続けていくこと
鈴木功,土井遼太,大曲都市

別冊付録 THE NEW CENTAUR SPECIMEN
構成・デザイン:白井敬尚,三橋光太郎(白井敬尚形成事務所)


つづく、ひろがる、華ひらく
包装紙のリファインと、伝統を次世代へつなぐ教育プログラム
百貨店・三越の包装紙「華ひらく」は1950年に制作され,70年を超えていまなお愛される。その制作には,画家の猪熊弦一郎や,三越宣伝部に当時在籍していた漫画家のやなせたかしが携わり,華やかで力強くも優しいデザインは三越のシンボルのひとつになっている。
 2016年にグラフィックデザイナー岡本健の手によって,オリジナルのかたちと色を模索するリファインが行われた。三越の創業350周年でもある2023年,子どもたちが「包む」ことを学び,包装紙をつくる教育プログラムへと展開し,その伝統は未来へ向けて紡がれている。華ひらくをめぐる三越と岡本健デザイン事務所の協働の姿を追った。
協力:株式会社三越伊勢丹,岡本健デザイン事務所,丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
取材:アイデア編集部
構成:藤井亮一
デザイン:trimdesign
【連載】デザイン蒐集家たちの部屋
第3回:デザインアーカイヴ「Design Reviewed」part 3
ウィム•クロウエルとアムステルダム市立美術館

文:マット・ラモント
デザイン:山田和寛(nipponia)
翻訳:山本真実
永井一正
連綿と続く雑誌広告とグラフィズムのあゆみ
2023年に94歳を迎えた永井一正が,およそ半世紀にわたって手がけている竹尾の雑誌広告。『グラフィックデザイン』(講談社)にて掲載が始まり,『アイデア』に引き継がれ今も続く。
 デザインアーカイヴ「竹尾アーカイヴズ」によって,その広告作品の作品集の刊行と展覧会「NAGAI & TAKEO―永井一正デザインによる竹尾広告」が企画され,同時にウェブサイトでもデジタルアーカイヴが公開された。全作品およそ130点が一堂に会した展示では,モチーフや表現方法が時代によって移り変わっていく永井の創作の変遷が見える。その軌跡を臼田捷治がたどり,永井による広告におけるグラフィック表現をひもとく。
文:臼田捷治
協力:株式会社竹尾,竹尾アーカイヴズ
写真:古屋和臣
デザイン:長田年伸
インフォメーション
新刊紹介
3,630円
【特集】小さな本づくりがひらく 独立系出版社の営みと日本の出版流通の未来

ここ数年、出版界隈で存在感を増している独立系出版社に焦点をあてた特集。
“大きな本づくり”から “小さな本づくり”の時代へと向かういま、誰にでもひらかれた営みとしての本づくりを考える。



今号の特集で取り上げるのは、本づくりの舞台裏だ。手にした本に綴られた言葉の外側——その本の発行元、本づくりに携わった人々、出版された場所や刊行の経緯——は、読者が本を楽しむ体験に直接的に影響するものではない。世の中に本があふれ、読みたい本を読みたいときに手にしてきたわたしたちにとって、本や、本づくりに関わる人々の営みは、日常生活を支えるインフラのように、あって然るべき存在だろう。しかし近年、その当たり前は崩れてきている。街から書店が消え、紙の雑誌や本が少しずつ数を減らし、国内の出版産業の将来が危ぶまれるようになってきた。言葉を綴り、本を編み、後世に残していくという出版流通が担う役割を、これからの日本で誰が引き受け、守っていくことになるのか。そんな本づくりの未来をひらく存在として、独立系出版社に焦点をあててみたい。

インターネットの登場や、大手以外の取次会社、取引代行など流通販売の選択肢の拡大により、一般の書店やAmazonなどのネット書店でも多くの独立系出版社の書籍を購入できるようになってきた。近年では、同じく数を増している独立系書店の後押しや、ソーシャルメディア上での情報拡散など、ネット社会における出版販売のあたらしい在り方として小さな本づくりという生業は定着しつつある。

本特集では、ころから、rn press、夕書房、いぬのせなか座、エトセトラブックス、港の人、書肆侃侃房という7つの出版社/出版人たちを取材し、独自の視点やテーマ性をもって刊行された書籍やその佇まい、各社の出版活動の姿勢を紹介していく。また、各社の紹介と並行して日本の出版流通の状況を俯瞰するために、長年出版業界を見つめてきたライターの永江朗、東京・荻窪で書店Titleを営む辻山良雄、取引代行サービスを展開するトランスビュー代表の工藤秀之の3名に文章を寄せてもらった。あわせて、近年の出版動向と日本の近代出版史・装丁史を接続させる試みとして、装丁史研究者の臼田捷治による論考も収録している。特集後半の選書コーナーでも7名の書店や出版関係者に独立系出版社の刊行物を推薦してもらった。ぜひ、それらの本と出版社の活動にも注目していただきたい。
3,630円
【特集】
ウェイファインディングデザイン
都市とグラフィックの結節点

世界的なコロナ禍で人々の行動は変容し、多くの人々がそれまでの生活様式にオンラインコミュニケーションや仮想空間などのデジタル技術を取り入れながら、未曾有の危機を乗り越えてきた。期せずして、わたしたちはフィジカルとデジタル、あるいはその重ね合わせという活動領域の多様性を急速に獲得しつつあり、とりまく環境への向き合い方が変化してきている。時を同じくするように、日本では2021年に東京オリンピックを経験し、 2025年には「未来社会のデザイン」「未来社会の実験場」といったことをテーマなどに掲げる2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が予定され、メガスケールの出来事とともに都市のあり方を再考する契機が訪れている。
 近い将来、都市そのものの身体性に変化が訪れるとすれば、当然、街中にあふれる標識や案内板などのグラフィックも変化を強いられるだろう。そうした状況をふまえて、都市空間、つまり環境とグラフィックデザインの関係をいまいちど明らかにしておきたい。そのひとつの方法として、本特集では「ウェイファインディングデザイン」に着目する。

ウェイファインディングデザインは空間に連続的に展開し、人々を地理的・情報的にナビゲートすることで、単に道案内をするだけでなく、人々の意識や振る舞いに影響を与えながら、その場所らしさやその都市らしさを生み出す。つまり、ウェイファインディングデザインは都市と人とをつなぐインターフェイスであり、空間の個性と体験をかたちづくる重要な役割をもつ。グラフィックデザインが受けもつ多様な領域の中でも、都市とのつながりが色濃く反映される結節点といえるだろう。
 そこで、本特集では、世界で活躍する4つのデザイン事務所の実践を軸に、都市空間とデザインに関わる人々の寄稿や提言を収録した。序論では近代的なウェイファインディングデザインのパイオニアであるデヴィッド・ギブソンが、古代ローマを起点にウェイファインディングデザインの歴史とその役割の変遷をたどる。そして、都市計画研究者・岸井隆幸は、都市構造の変化が引き起こす空間認知の変容に対して、どのような方法で向き合ってきたかを江戸や新宿・渋谷といった都市スケールの視点から論じる。書体設計を専業とするSwiss Typefacesには、空間と文字の関係性と、その文字を適用するデザイナーとの協働の実際を聞いた。最後に、大阪・関西万博にも携わる建築家・豊田啓介が、フィジカル空間とデジタル空間の統合を試みる「コモングラウンド」の取り組みを視座に、これからの社会とウェイファインディングデザインの未来像を語る。

事例をもとにウェイファインディングデザインの現在地を確認しながら、論考によって過去から未来までを接続し、その先を示す道しるべを描く。本特集をこれからの都市とグラフィックデザインのあり方を考えていくきっかけとしたい。
4,070円
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商品情報・内容

  • 出版社:誠文堂新光社
  • 発行間隔:季刊
  • 発売日:3,6,9,12月の10日
  • サイズ:B4

■ グラフィック中心の国際的なデザイン誌

グラフィックメディアを中心に、国際的視点からリアルタイムなデザインムーブメントを紹介するインターナショナルデザインマガジン。1953年の創刊よりつねに世界各国のデザイン事情にアンテナを張り巡らし、時代の先端を切り拓くデザイナーとそのクリエイティブワークを毎号豊富なビィジュアルを通じてグラフィカルに紹介。掲載作品も、ポスターをはじめとするグラフィック全般から映像、そしてマルチメディアデザインまで幅広く網羅、多様化する視覚的価値観に対応しながら、デザインシーンのフロントラインをハイクオリティに伝える。

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