Pen(ペン)の編集長インタビュー

編集長プロフィール

阪急コミュニケーションズ
「Pen」編集長 安藤貴之さん

あんどうたかゆき 1965年東京生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、新聞記者、ビジネス誌の編集者を経て、1995年、TBSブリタニカ(現・阪急コミュニケーションズ)に入社。
Pen創刊に携わり、2001年に副編集長、2005年から現職。

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第55回 Pen(ペン) 編集長 安藤貴之さん

積極的にデジタル化も推進して、世界に発信していきます

―第一回雑誌大賞に2誌もノミネートされています。「キリスト教とは何かⅡ」(1/1・1/15号)、「ディズニー完全読本」(12/15号)です。

雑誌大賞にノミネートされた2誌のポスターも
雑誌大賞にノミネートされた2誌のポスターも

有難いことです。私はそう思わないのですが、一般的に雑誌のパワーが落ちていると言われているなかで、それなりの評価を頂けたことがうれしいです。評価されるとやはりやりがいに結びつきます。
「ディズニー完全読本」なども、大変苦労されたでしょう、と言われましたが、もちろん苦労してつくってますが、かなり前からしっかり仕込んで動いてますから。

―雑誌のパワーは落ちてないと。

雑誌の魅力自体は変わってないと思います。最近のマスメディアの変遷のなかで、いろんなことがあって、とくにネットが台頭し、モバイルなど多様化していく流れのなかで、多メディア化され、ひとつひとつのメディアのあり方が小さく感じるようになっただけだと思うんです。雑誌メディアのパワーが落ちたというより、いろんなメディアが増えたのでそう感じてしまうということではないのかなと。
いまや雑誌って、必ずしも旧来の紙のメディアである必要はないと思います。紙の良さは、確かにすごくあって、手触り感の魅力など、プロダクツとしてのよさがあります。
でもコンテンツによってデバイスを変えていくタイプのものも雑誌の表現としてとらえていいと思います。これは紙で表現したほうがいい、これは携帯向け、これはwebに流したほうがいい、とか。
大切なのは、臨機応変な対応だと思います。もちろんそれがすべてではありませんが。

―隔週で出されてますが、大変じゃないですか。

2班に分かれた編集部
2班に分かれた編集部
個性的なデスクを発見
個性的なデスクを発見

毎月1日と15日に出していますが、2班に分けてそれぞれ副編集長がしっかり見てくれてますから、それほど大変ではありません。連載やタイアップも副編集長が入稿するようにしています。2班がそれぞれ半年くらい前から企画を決めて動きます。けっこう余裕をもって進めています。企画会議はそれくらい先を見据えてやり、最終的に副編集長たちと私とで決定します。
でも、校了とデザイン入稿が重なることがたびたびあって、そのときは一日20時間くらい集中しなければならず、これはさすがにこたえますね(笑)。

―毎回特集主義でつくっていると、部数の上下もあって、気を遣いますね。

そうですね。以前よりも、販売部や書店さんの意見をよく聞くようになったと思います。
弊誌の場合、読者の層はだいたい36~7歳で、男性8割女性2割といったデータが出ていますので、そのあたりに響くものを考えています。もともとデザイン特集、家具やインテリア、北欧など、言ってみれば豊かなライフスタイルの紹介といった記事に人気がありました。それがいまテーマがより多様化していて、ディズニーあり、キリスト教ありといった具合になっているのだと思います。

―「目利き」がいる雑誌ですね。各誌編集長の愛読誌にもよくあがる雑誌です。目利きとしてのセンスはどうやれば磨かれるのですか。

デザインや建築といった特集が多かったこともあって、ものづくりに関わる読者が多いのも特徴です。建築家、アートディレクター、編集者・・・クリエイティブな仕事をしている人に読んでもらえてるようですね。目利きと言ってもらえるのは有難いですが、これはもう日々勉強して積み重ねるしかないと思っています。

―大きく当てた特集って何でしたか。

注目を集めた佐藤可士和特集
注目を集めた佐藤可士和特集

いまでも印象に残っているのが、5年ほどまえにやったデザイナーの「佐藤可士和」特集です。まるごと佐藤さんをやったのですが、本屋さんからは「彼って誰?知らない」とか言われて(笑)。
まだ一般にはブレイクする前の佐藤さんでしたから無理もないのですが、確実にきてる人だったので、思い切って一冊まるごとでやってみたら、結果は大成功でした。

―目利きであると同時に時代のちょっと先を見て仕掛けていくことが大切ですね。

そうだと思います。また、そのとき、本屋さんたちともいろいろ交渉しながら雑誌を売っていくということの大切さを学んだ気がします。
もともと「Pen」って、手書きの文化というか、アナログでヒューマニズムな部分を大切にってコンセプトで始まっている雑誌なんです。ちょうどWindows95が出た頃で、デジタル時代到来かと言われていたときです。
その精神はいまも生きていますが、あり方としては、デジタルコンテンツとしての展開は積極的にやろうというスタンスなんです。

―それは面白いですね。

実際、デジタルで読みたいという人も多いですし、何より海外で多くの人に読まれるメリットが重要です。海外の日本人のみならず、外国人読者も開拓していけるじゃないですか。
ヨーロッパなんか雑誌の歴史は長いのに、意外と「Pen」のような雑誌ってないんです、だからニーズはあると思います。ファッション関係のクライアントと話しているとよく言われるんですよ。

―言語の壁はどうされますか。

弊社では「ニューズウィーク日本版」を出していることもあって、翻訳スタッフのレベルは非常に高いんです。彼らの協力を仰ぎながら、デザインも変えて、英語版として展開したいですね。できれば中国版も。

―内向きだといつまでたっても、「雑誌って元気がない」とか言われ続けそうですものね。

そう思います。いまはフランスの人たちだって積極的に英語を使いますから、英語版でヨーロッパはかなり対応できるかなと。むかしはフランス人って英語喋りたがらなかったですよね。この前、シャネル日本法人の社長のレクチャーを聞いたのですが、彼は「フランスも文化的プライドが高く、自国が一番だと思っているが、それだけではダメだと理解している。世界の動きのなかでうまく自分の文化を伝えていけるようにしなきゃいけない。そのために英語を学び、積極的に世界へ出て行った。日本人もそうしなければ」と言うんです。
私もそう思います。せっかくいいものをもっているのだから、そのコンテンツを世界に発信していかないと損だと。それがデジタル化によって可能になっているわけですからね。

編集長の愛読誌

(2011年3月)

取材後記
「Pen」は多くの雑誌編集長が愛読誌にあげるもののひとつです。独特の切り口の斬新さ、スタイリッシュなつくりなどが、プロの目にも気になるところなのでしょう。書店で平積みにされていると、確かにちょっと手を出してしまいがち。お洒落で中味の濃い、いい雑誌だと思います。特集によって毎回部数が増減する雑誌というのは、つくり手側は大変だろうと思いましたが、長い時間をかけて上手に練られながらつくられているという話を聞き、古き良き時代の雑誌づくりのスピリットがこういうところに脈々と受け継がれているのだなと思いました。
安藤さんの愛読誌を尋ねたとき、「芸術新潮」をその1冊にあげられ、「浮世離れしたつくりに出版社の誇りを感じる。それがないと出版はつまらない」と言われました。私もまったく同意見です。近ごろ元気がないと言われ続けている雑誌界ですが、こうした心意気が静かに受け継がれている限り、雑誌は読まれ続けるのだと思いました。

インタビュアー:小西克博

大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で「GQ」日本版の創刊に参画。 「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に「遊覧の極地」など。

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