判例時報 発売日・バックナンバー

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◆記 事◆

家事事件手続規則の一部を改正する規則の解説……宇田川公輔・山岸秀彬

統治構造において司法権が果たすべき役割第2部(6)
 マクリーン判決の間違い箇所……泉 徳治

死刑制度論のいま──基礎理論と情勢の多角的再考(5)
 エビデンスに基づく死刑制度論の模索……渡邊一弘

再審制度の課題に関する多角的考察(3)
 誤判救済と再審制度──イギリス誤判救済制度からの示唆……葛野尋之

◆判決録細目◆

行 政

▽保佐人による本人の損害賠償金の浪費・費消について、本人から虐待の訴えを受けていた地方公共団体の職員が、本人の財産が散逸する具体的危険性を認識したにもかかわらず、財産散逸を防止する措置を講じなかったことは、国家賠償法上違法であるとして、地方公共団体に対する請求を一部認容した事例
(大津地判平30・11・27)

民 事

◎共同漁業権から派生する漁業行使権に基づく潮受堤防排水門の開門請求を認容する判決が確定した後、当該確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結時に存在した共同漁業権から派生する漁業行使権に基づく開門請求権が消滅したことのみでは当該確定判決に対する請求異議の事由とはならないとされた事例
(最二判令1・9・13)

○生活保護の実施を受けていた者に対し、月2社以上の企業面接を受けること等の書面による指示に違反したことを理由に、停止処分を経ることなくされた保護廃止処分が、著しく相当性を欠き、裁量権を逸脱又は濫用したものであるとして、国家賠償法上の違法が肯定され、慰謝料5万円が認容された事例
(名古屋高判平30・10・11〈参考原審:津地判平30・3・15掲載〉)

▽1 民法724条後段の除斥期間による請求権の消滅を妨げるためには除斥期間満了までに裁判外で権利行使の意思を明確にすれば足り、裁判上の権利行使を行うまでの必要はないとした事例
 2 書面による通知が宛先に尋ね当たらないとして返送された場合であっても、受取人に同通知が到達したと認めた事例
(前橋地高崎支判平31・1・10)

▽他人がした投稿を引用する形式で自己のアカウントから投稿する方法(リツイート)によりなされたツイッター上の投稿が、名誉毀損に該当するとして、リツイートをした者に民法709条の不法行為責任が認められた事例
(大阪地判令1・9・12)

知的財産権

▽創作者の1人とは認められないため職務意匠の対価請求には理由がないとされた事例
(大阪地判平29・10・12)

商 事

▽保険法施行日前に締結された生命保険契約について、保険契約者の新保険金受取人に対する保険金受取人変更の意思表示及びその有効性が認められた事例
(和歌山地田辺支判平31・4・24)

労 働

○1 始業時刻及び終業時刻につき、シフト表に加え、PCのメール送信時刻、ログオフログ時刻などを使って認定した事例
 2 定額残業代(固定残業代)の定めが公序良俗に反し無効であるとする1審原告の主張を排斥して、その効力を認めた事例
(東京高判平31・3・28〈水戸地土浦支判平29・4・13掲載〉)

▽私立大学の大学教授の65歳定年後の再雇用に関して、再雇用による雇用継続を期待することに合理性が認められ、大学の再雇用拒否は許されず、定年後も再雇用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものと判断した事例
(名古屋地判令1・7・30)

刑 事

▽運転を予定している者に密かに睡眠導入剤を摂取させた上、意識障害等が現れている状況で、運転するように仕向けた行為は、運転者、同乗者及び事故に巻き込まれた第三者を死亡させる事故を惹起する危険性が高い行為であり、殺人の実行行為に当たるとした上、前記の者らに対する未必の殺意も認めた事例
(千葉地判平30・12・4)
1,470円
◆記 事◆

法テラスの破産手続開始申立弁護士費用立替にもとづく償還請求権の財団債権性
 ──借金苦による悲劇を繰り返さないために──……伊藤 眞

死刑制度論のいま──基礎理論と情勢の多角的再考(4)
 死刑執行と自由権規約6条4項の保障……福島 至

法曹実務のための行政法入門(24・完)
 ──行政訴訟⑧等──住民訴訟・行政不服申立て……高橋 滋

刑法判例と実務
 ──第52回 堕胎罪の周辺──……小林憲太郎

◆判決録細目◆

行 政

◎死刑確定者が親族以外の者との間で発受する信書につき刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律139条1項2号所定の用務の処理のために必要とはいえない記述部分がある場合に、同部分の発受を許さないこととしてこれを削除し又は抹消することの可否
(最二判令1・8・9)

◎固定資産評価審査委員会に審査の申出をした者が当該申出に対する同委員会の決定の取消訴訟において同委員会による審査の際に主張しなかった事由を主張することの許否
(最三判令1・7・16)

○無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律5条1項に基づき公安調査庁長官の観察に付する処分を受けた団体が複数の集団に分派又は分裂した場合において、各集団に対してされた同処分の期間を更新する決定は、この両集団を併せて1つの団体と認めることができない場合であっても、各集団について同処分の対象団体と同一性がある団体であると認められるときは、各集団について同処分の期間の更新の要件を満たすものである限り、各集団に対してされた同処分の期間を更新する決定は、その効力が各集団に及ぶものとして適法であるとされた事例
(東京高判平31・2・28〈参考原審:東京地判平29・9・25本誌2363号3頁〉)

〇救急活動記録票に記載された情報のうちの一部が、市情報公開条例で定める非公開事由(利益侵害情報)に該当するとされた事例
(大阪高判令1・5・16〈参考原審:大阪地判平30・11・9掲載〉)

民 事

◎土地改良区が河川法23条の許可に基づいて取水した水が流れる水路への第三者の排水により当該水路の流水についての当該土地改良区の排他的管理権が侵害されたとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判令1・7・18)

○1 定期傭船契約が解除された場合に、その返船時に残存していた燃料について、船舶所有者と傭船者との間に買取の合意が成立したとはいえないとされた事例
 2 定期傭船契約が解除された場合に、その返船時に残存していた燃料について、船舶所有者と傭船者との間の買取の合意の成否を判断するに当たり、被告の所在地法である準拠法のみならず、傭船契約の準拠法を含めて検討された事例
 3 定期傭船契約が解除された場合に、その返船時に残存していた燃料について、不当利得返還請求権が発生することについて、その準拠法を英国法とした事例
(東京高判平31・1・16〈参考原審:東京地判平30・5・9掲載〉)

労 働

▽長期間にわたって1か月当たり250時間を超える時間外労働に従事していた調理師が、ウイルス性の劇症型心筋炎を発症したことについて、業務起因性が認められた事例
(大阪地判令1・5・15)

▽地方公共団体の設置する中学校に勤めていた教員が過重業務等により精神疾患を発症し自殺したことにつき、同中学校の校長の安全配慮義務違反を認めた事例
(福井地判令1・7・10)

経 済

▽農業協同組合が、除名、出荷停止等の処分を受けるなどした組合員からなすの販売を受託せず、あるいは同農業協同組合の集出荷場以外に出荷した組合員から手数料等を収受するなどしていたことが不公正な取引方法12項に該当し私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条に違反する行為であるとされた事例
(東京地判平31・3・28)
◆記 事◆

会社法・金融法随想──立法事実からみる、近況・課題(2)
 会社法改正の歴史……神田秀樹

仮想通貨の機能及びその法律的構成……鬼頭季郎

◆判例特報◆

 地震に伴う津波の襲来により原子力発電所の原子炉建屋が水素ガス爆発するなどして発電所内の作業員を負傷させ、発電所周辺の病院入院患者や施設入所者を死亡させた事故につき、発電所を設置した電力会社の代表取締役会長らには、主要建屋が設置された地盤を超える津波が襲来することについて、発電所の運転停止措置を講じるべき結果回避義務を課すに相応しい予見可能性があったとは認められず、業務上過失致死傷罪が成立しないとされた事例
──東電福島第一原発業務上過失致死傷事件第1審判決
(東京地判令1・9・19)

◆特 集◆

東電福島第一原発業務上過失致死傷事件
──経営陣を無罪とした第1審判決の検討

①福島第一原発水素爆発事件・東電元副社長ら強制起訴事案
 第1審判決と過失犯についての見せかけのドグマ……古川伸彦

②東電無罪判決雑感……小林憲太郎

③東電無罪判決の手法について……福崎伸一郎

④東電経営陣の無罪判決について……樋口英明

⑤福島第一原発事故と東京電力の責任
 ──民事判決との対比から──……大塚正之

⑥東電刑事無罪判決に書かれなかったこと
 ──被害者参加代理人として法廷に立ち会って──……海渡雄一

◆最高裁判例要旨(2019(令1)年11月分)

◆判決録細目◆

行 政

◎都市計画区域内にある公園について湖南市地域ふれあい公園条例(平成17年湖南市条例第35号)に基づく公告がされたことをもって都市公園法2条の2に基づく公告がされたといえるか
(最一判令1・7・18)

▽父が石綿粉じんばく露作業により胸膜中皮腫を発症して死亡した後、その死亡に係る労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金等の支給を受けていた母が死亡した場合において、父の死亡に係る母の遺族給付等に関する調査結果復命書等の情報が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項所定の「自己を本人とする保有個人情報」に当たるとされた事例
(大阪地判令1・6・5)

民 事

○金銭消費貸借契約上の借主は会社であるとして会社代表者個人に対する貸金請求を棄却した第1審判決を取り消し、契約前後の事情を総合して、借主を会社代表者個人と認めて請求を認容した事例
(東京高判平30・4・18〈参考原審:静岡地沼津支判平29・11・17掲載〉)

○身寄りがなく、知的能力が十分ではない被相続人の相続財産(約4120万円)につき、同人の元雇用主が相続財産分与の審判を求めた事案で、被相続人が脳梗塞を発症してから死亡するまでの約15年間の支援にのみ着目し、分与額を800万円とする審判をした原審を変更し、抗告人(原審申立人)が被相続人を雇用していた期間(昭和47年~)にも着目し、知的能力が十分でなかった被相続人が4000万円以上もの相続財産を形成・維持することができたのは、抗告人が約28年間にもわたり、労働の対価を超えて実質的な援助を含んだ給与を支給し続けてきたことや、被相続人を解雇した平成13年以降も緻密な財産管理を継続してきたためであるとして、分与額を2000万円とした事例
(大阪高決平31・2・15)

▽1 福島第一発電所事故に関して、発電所の敷地高さを超える浸水高の津波の到来の予見可能性及び水密化対策を講じることによる結果回避可能性を肯定した上、経済産業大臣による規制権限の不行使が国家賠償法上違法と認められるとして、被告国の国家賠償責任を肯定し、相当因果関係が認められる損害全額について、被告国が被告東電と不真正連帯債務を負うと判断した事例
 2 原告らの各人の個別的な属性に応じて、当該個人が当時置かれていた具体的な状況のもとでは、避難を実施したり、避難生活を継続するという選択をしたことが、一般人からみても、やむを得ない事情によるものと評価し得る場合には、当該避難等は、社会通念上相当性があるとした上、原告ら各人について相当因果関係の認められる慰謝料の金額を算定した事例
(松山地判平31・3・26)

知的財産権

○特許権侵害訴訟において、特許法104条の3の特許無効の抗弁を主張することが訴訟上の信義則に反し許されないとされた事例
(知財高判平30・12・18〈参考原審:大阪地判平29・8・31掲載〉)

刑 事

▽暴力団組長であった被告人が、別件の死刑判決が確定した後に、15年以上前の殺人2件につき犯行告白をしたことで起訴された各殺人被告事件について、犯人性や共謀に関し、間接事実だけでは推認できず、被告人には死刑執行の引き延ばしのために虚偽自白をする動機があるなどとして自白の信用性も否定し、証拠全てを総合して検討しても犯人性や共謀を認定するには合理的な疑いが残ると判断して、無罪を言い渡した事例
(東京地判平30・12・13)
1,470円
◆記 事◆

許可抗告事件の実情
 ──平成30年度──……小林宏司・浅野良児

死刑制度論のいま──基礎理論と情勢の多角的再考(3)
 刑罰の正当化根拠と死刑……松原芳博

刑法判例と実務
 ──第51回 名誉毀損罪の周辺──……小林憲太郎

法曹実務のための行政法入門(23)
 ―─行政訴訟⑦―─行政訴訟の審理等(その二)……高橋 滋

◆判決録細目◆

行 政

◎1 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)におけるいわゆる特例選挙区の存置の適法性
 2 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)の議員定数配分規定の適法性
 3 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)におけるいわゆる特例選挙区の存置の合憲性
 4 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)の議員定数配分規定の合憲性
(最三判平31・2・5)

▽1 1型糖尿病にり患し、国民年金法に基づく障害基礎年金の支給を受けていた者に対してされた同法36条2項本文に基づく支給停止処分が、行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き、違法であるとされた事例
2 1型糖尿病にり患し、国民年金法に基づく障害基礎年金の支給を受け、同法36条2項本文の規定に基づく支給停止処分を受けた者に対してされた、支給停止を解除しない旨の処分が、行政手続法8条1項本文の定める理由提示の要件を欠き、違法であるとされた事例
(大阪地判平31・4・11)

民 事

◎相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときの民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額
(最三判令1・8・27)

知的財産権

○1 特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額の算定方法
 2 特許法102条2項による推定の覆滅についての判断基準
 3 特許法102条3項所定の実施に対し受けるべき金銭の額の算定方法
(知財高判令1・6・7〈参考原審:大阪地判平30・6・28掲載〉)

労 働

○じん肺管理区分4の決定を受けていた元炭鉱労働者が、30年以上にわたって療養を続けた後、胃がんを併発した上、肺炎で死亡したことについて、業務起因性が否定された事例
(福岡高判令1・8・22〈参考原審:福岡地判平30・9・28掲載〉)

刑 事

○被告人と犯人との同一性が争われた強盗致傷等被告事件において、被告人と防犯カメラに記録された人物との異同識別等に関する専門家の証言について、資料とされた画像が鮮明度を欠き、分析評価に当たって極端に処理した画像が用いられていることなどに照らすと、前記証人の採用した異同識別法の科学的原理やその理論的正当性を更に解明するとともに、その証拠価値や信用性を判断することが可能となるよう、検察官に対して釈明を求めたり、必要な証拠調べを実施したりして、専門的な知見を得る必要があったのに、それらの措置をとらなかった原審の手続には審理不尽の違法があるとして、原判決を破棄して原裁判所に差し戻した事例
(東京高判平29・11・2〈参考原審:東京地判平29・3・3掲載〉)

○警察官らが管理人の承諾なくマンションの共用部分に立ち入った上、被告人に居室のドアを閉めさせず、室内の様子を窺っていた行為は強制処分に当たるとし、これに引き続いて強制採尿令状に基づき採取された尿につき、その鑑定書等の証拠能力を否定した事例
(大阪高判平30・8・30〈参考原審:大阪地判平30・3・1掲載〉)

▽1 検察官から実質証拠として請求のあった録音・録画記録媒体につき、当該取調べにおける被告人の不利益事実の承認又は自白には任意性を疑わせるような事情はなく証拠能力が認められると判断した事例
 2 前記録音・録画記録媒体につき、その必要性、相当性を考慮し、一部時間帯に限定し、かつ録画映像を除いて証拠として採用した事例
(東京地決令1・7・4)

◆判例評論◆

68 B(投資コンサルタント会社)が、一方で、X(厚生年金基金)との間で年金資産運用助言契約を、他方で、A(不動産ファンド会社)との間で商品販売協力契約を締結し、Aから巨額の歩合報酬を受領するという自己の利益を図って、Xに対しAの商品への過剰な集中投資を推奨し、Xの利益を著しく損なわせていった中で(「利益相反行為」)、Aが、Bに巨額の歩合報酬を支払い続けたことにより、Bにそのような利益相反行為を実行させ続けたことは、XのBに対する適切な助言を受けるべき債権を故意に侵害するものであるとして、Aの元代表者Yに対し、債権侵害の不法行為による損害賠償責任を認めた事例
(東京高判平30・4・11)……新堂明子

69 保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあった場合に、その旨を未決拘禁者に告げないまま、保護室収容を理由に面会を許さない刑事施設の長の措置が、国家賠償法上違法となる場合
(最一判平30・10・25)……葛野尋之
◆記 事◆

改正民法が民事裁判実務に及ぼす影響(10)
 消費貸借、賃貸借に関する見直し……遠藤研一郎

再審制度の課題に関する多角的考察(2)
 客観的状況の取扱いについて
 ──大崎事件を素材として……福崎伸一郎

現代型取引をめぐる裁判例(450)……升田 純

◆最高裁判例要旨(2019(令1)年10月分)

◆判決録細目◆

行 政

▽東京都教育委員会によりエンカレッジスクールとして指定された高校の校長であった原告が、その入学者選抜において東京都立高等学校入学者選抜実施要綱に違反したことを理由としてなされた懲戒免職処分の取消しを求めたところ、同懲戒免職処分に裁量権を逸脱濫用した違法があるとは認められないとして、原告の請求が棄却された事例
(東京地判平30・5・15)

民 事

○児童相談所長が児童養護施設に入所中である未成年者の親権者に対する親権喪失の審判を求めた事案で、未成年者については、①親権者による不適切な監護養育から切り離されて保護されており、親権者による不当な引取要求に対しても児童福祉法28条に基づく入所措置または入所措置更新により対応することができること、②児童虐待の防止等に関する法律において親権者による面会通信や接近を禁止できると規定されていることから、親権者の未成年者に対する親権を喪失・停止させる必要があるのは、児童福祉法28条に基づく各措置、あるいは面会通信や接近の禁止によっては未成年者の保護を図れない特段の事情がある場合に限定されるとして申立てを却下した原審判を取り消し、親権者には民法834条所定の親権喪失事由があるとして、抗告人(原審申立人)の申立てを認容した事例
(大阪高決令1・5・27〈参考原審:神戸家姫路支審平31・3・15掲載〉)

 ○乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染し、成人になって慢性肝炎を発症したときのHBe抗原セロコンバージョン後(同抗原陰性化後)に発生した損害につき、HBe抗原セロコンバージョン後のHBe抗原陰性慢性肝炎は、HBe抗原セロコンバージョン前のHBe抗原陽性慢性肝炎と質的に異なるものではなく、その罹患によって新たな損害が発生したということはできないから、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症による損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の除斥期間の起算点は、HBe抗原セロコンバージョン前のHBe抗原陽性慢性肝炎を発症したときであるとした事例
──B型肝炎九州訴訟・控訴審判決
(福岡高判平31・4・15〈参考原審:福岡地判平29・12・11本誌2397・59掲載〉)

▽1 募集型企画旅行契約において、契約後に旅程先で大地震が発生したことに関し、解除権行使の前提となる情報収集・提供義務違反があったとして損害賠償請求を認めた事例
 2 前記情報収集・提供義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求において、弁護士費用を請求できるとした事例
(大阪地判平31・3・26)

▽医療法人の病院で膠原病等の治療を受け、麻酔医から経皮吸収型麻酔性鎮痛剤オピオイドパッチを断続的に処方されていた患者に対して、死亡まで同剤処方が継続されず取りやめられたこと及び患者や家族になされたその理由の説明の時期や程度について、過誤がないとされた事例
(那覇地判平31・4・16)

知的財産権

▽1 タイプフェイスの著作物性が否定された事例
  2 タイプフェイスの利用につき、利用許諾の抗弁が認められた事例
(東京地判平31・2・28)

労 働

○1 会員制のスポーツクラブの支店長が労働基準法41条2号に定める管理監督者に当たらないとされた事例
2 給与規程で定められた時間外労働等の割増率が労働基準法所定の割増率を上回る場合において、管理監督者に当たらないとされた労働者の割増賃金を労働基準法所定の割増率で算定した事例
(東京高判平30・11・22〈参考原審:東京地判平29・10・6掲載〉)

刑 事

○1 以前から、麻薬取締官に依頼されて覚せい剤取引の情報提供を行い、麻薬取締官らにその取引状況を監視させるなどの捜査協力を行いつつ、当該密売の仲介者等として利益を得ていた被告人が、共犯者から覚せい剤密輸への協力を依頼された際に、麻薬取締官の求めに応じてこれに加担した事案について、被告人に営利の目的が認められ、共同正犯が成立するとされた事例
2 覚せい剤密輸等を行う際の被告人の保身のため、ひいては密輸等による利益のためになされていた捜査協力を量刑上被告人に有利に考慮する余地はなく、また、被告人が、麻薬取締官から捜査協力のために覚せい剤密輸への加担を求められるなどの助長を受けていたという事実により、被告人の意思決定に対する非難の程度が原判決の量刑を左右するほど減弱するとはいえないなどとされた事例
(東京高判平30・10・18〈参考原審:東京地判平29・7・3掲載〉)

▽1 夜間路上に横臥していた人を自動車で轢過したという事案において、被告人が前方等を注視していたとしても本件事故を回避することができなかった疑いがあるとして、過失運転致死につき無罪とした事例
  2 被告人が本件事故時に人に傷害を負わせたとの認識があったと認めることはできないとして、道路交通法違反(救護義務違反、報告義務違反)について、無罪とした事例
(神戸地判平30・10・24)
◆記 事◆
死刑制度論のいま──基礎理論と情勢の多角的再考(2)
 死刑制度の存廃をめぐって──議論の質を高めるために……井田 良
 
◎新連載
再審制度の課題に関する多角的考察(1)
 刑事裁判において事実を認定するとは如何なることか
 ──大崎事件第三次再審最高裁決定を契機に考える……石塚章夫
 
◆最高裁判例要旨(2019(令1)年9月分)

◆記 事◆

死刑制度論のいま──基礎理論と情勢の多角的再考(2)
 死刑制度の存廃をめぐって──議論の質を高めるために……井田 良

再審制度の課題に関する多角的考察(1)
 刑事裁判において事実を認定するとは如何なることか
 ──大崎事件第三次再審最高裁決定を契機に考える……石塚章夫

◆判決録細目◆

民 事

○1 所管の政策に反対する内容の請願行為をした民間企業の取締役について、当該請願行為を理由に同民間企業への発注停止を示唆して取締役の自発的辞任に追い込んだ国家公務員の行為が、請願を理由とする差別待遇であって、国家賠償法1条の違法な行為に当たると判断された事例
 2 被害者が、国家公務員の違法行為の時点においては加害者が特定の省の本庁又は地方支分部局の職員のうちの誰かであるとの認識はあったが具体的にどの部局のどの役職者かを知る手がかりがなく、その後に弁護士のアドバイスにより行った関係者インタビューの結果特定の部局の幹部が加害者であると確信した場合において、消滅時効の起算点はインタビュー終了時であると判断された事例
(東京高判平31・4・10〈参考原審:東京地判平29・9・15掲載〉)

○大学病院においてクローン病の治療のため回腸結腸吻合部切除術を受けた患者が、手術後腸から出血し、出血性ショックによる低血圧で脳に重篤な障害が残った場合において、出血の可能性を念頭に置いた術後管理をすべき注意義務違反を認め、大学病院及び主治医に対し、損害賠償責任を肯定した事例
(福岡高判平31・4・25〈参考原審:福岡地判平27・6・25掲載〉)

▽国有林の分収育林制度(通称:緑のオーナー制度)に基づき国との間で分収育林契約を締結した者ないしその承継人が、契約書及び管理経営計画所定の主伐の時期に国が主伐を実施しなかったことが債務不履行に当たるとして、解除に基づく原状回復請求として国に対し費用負担金の返還を求めた請求が棄却された事例
(大阪地判令1・5・10)

▽1 医療法人(被告)の矯正歯科において歯科矯正治療を担当した歯科医師が患者(原告)に対して歯列矯正治療期間が1年程度かかると説明したことが、医学的根拠に欠け説明義務違反にあたるとまではいえないとされた事例
  2 埋入期間2年半を経過したアンカーインプラント抜去手術中に骨結合したインプラントが破折し、その一部を骨組織内に残留させたことについて、前記担当歯科医師が抜去時期の判断を誤った過誤があるとはいえないとされた事例
(東京地判平31・3・14)

▽再保険の約款として、Follow the settlement(略してFS) 条項、すなわち「この再保険は、元受保険者が行った一切の保険金支払額の決定に従う。但し、保険金支払義務がないことを知りながら行う支払い及び保険金支払義務があることを認めずに行う支払いは除く。」との文言があったにもかかわらず、当該事案が、地震に引き続いて発生した火災及びその結果として発生した損失に対する保険担保は特別に提供されるとの条項(FFEQ条項)に該当し、元受保険者に元受保険金の支払義務があったとの判断を先行させて、元受保険者の再保険者に対する再保険金の請求を認容した事例
(東京地判平31・1・25)

▽自動車保険契約に付された弁護士費用特約に基づく弁護士費用相当額の保険金請求事件において、弁護士に委任した損害賠償請求事件に係る交通事故が労働者災害補償保険法上の通勤災害に該当する場合、当該事故による障害は前記特約の免責条項に定める「労働災害により生じた身体の障害」に該当するとして、免責を認めた事例
(大阪地判令1・5・23)

▽医師らが頭部CT検査報告書の脳腫瘍の疑いとの記載を見落とし、脳腫瘍を放置した過失と、後医で受けた脳腫瘍摘出術後に残存した後遺障害との間の因果関係が認められた事例
(福岡地判令1・6・21)

▽1 米軍に身柄を拘束された者が日本側に引き渡される場合の緊急逮捕等の手続を定めた日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法12条2項は、米軍に現行犯として身柄を拘束された者に適用される限りにおいて、憲法33条に違反しないとした事例
  2 海上保安官が、米軍に拘束された者の身柄を直ちに引き受けなかったこと及びその後に日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法12条2項に基づき緊急逮捕したことが、いずれも国家賠償法上違法とされた事例
(那覇地判平31・3・19)
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