判例時報 発売日・バックナンバー

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◆総 索 引
 
判 例 時 報 2301号~2400号
判 例 評 論 692号~723号


第一 判例の部

第二 判例評論および記事の部

第三 裁判年月日・著名事件索引
◆記 事◆

民法理論のいま──実務への架橋という課題(4)
 「錯誤」理論の新たな展開
 ──改正法によって錯誤 制度はどのように変わったか②……近江幸治

特集「検察庁法改正法案」が意味するもの
 ⑴検察庁法改正問題について……木村草太
 ⑵「検察庁法改正」を振り返る……亀井源太郎

刑法判例と実務
 ──第57回 各論と期待可能性の周辺──……小林憲太郎

◆判決録細目◆

民 事

○性同一性障害と診断された戸籍上の性別が男性である申立人が、男性名から女性名への名の変更許可を申し立てた事案において、原審は、申立人が変更を求める女性名が、通称として永年使用され社会的に定着しているとは認められず、申立人がホルモン治療等を行わなかったなどの通院治療の状況等を併せ考慮し、名を変更することにつき正当な事由があるとは認められないとして申立てを却下したのに対し、抗告審は、申立人が心療内科・精神科に約1年半通院して、医師2名から性同一性障害の診断ガイドラインに沿った診断の結果、性同一性障害であることの診断を得ていることなどから、正当な事由があると認められると判断し、原審を取り消して申立てを許可した事例
(大阪高決令1・9・18〈参考原審:大阪家審令1・7・22掲載〉)

○1 タイヤの製造工程で使用するタルクに含まれるアスベストなどが原因で従業員らが肺がんや中皮腫を発症したとして、タイヤ製造業者の当該従業員らに対する安全配慮義務違反及び不法行為が認められた事例
2 使用者が従業員らに対して負う損害賠償債務につき消滅時効を援用することが権利濫用に該当するとされた事例
(大阪高判令1・7・19〈参考原審:神戸地判平30・2・14本誌2377号61頁掲載〉)

○通信教育等を目的とするY社において管理していたXの個人情報について、Y社がシステム開発を委託していたD社の業務委託先の従業員が不正に取得して外部に洩えいしたことは、情報管理義務のあるY社とD社の共同不法行為に当たり、これによるXの慰謝料として1000円が相当と認められた事例
(大阪高判令1・11・20〈参考上告審:最二判平29・10・23本誌2351号7頁掲載〉)

○河川洪水による流域住民の浸水被害につき、利水ダムの設置者にダム設置当時の河床の高さまで浚渫する義務はない等として、ダム設置者の流域住民に対する民法709条に基づく責任が否定された事例
(仙台高判平31・3・15〈参考原審:福島地会津若松支判平30・3・26本誌2391号36頁掲載〉)

○1 遺産分割協議が無効となり、改めてされた遺産分割審判が確定した場合において、一部の相続人が、相続開始から遺産分割までの間、相続不動産から生じた賃料(果実)を収取したときに、悪意の占有者として法定相続分に応じた返還請求権が認められた事例
2 一部の相続人に相続税負担額が過納になった場合、当該過納部分を損失、他の相続人の過少納税部分を利得ととらえることを前提としても、これらの間には因果関係がなく、不当利得返還請求権は認められないとされた事例
(高松高判平31・2・28〈参考原審:高松地判平30・5・15掲載〉)

▽ベッドからの転落を防止するための体幹抑制ベルトを装着されていた高齢の入院患者が、体動等も少なくなったため装着を解除されたときにベッドから転落して急性硬膜下血腫等を受傷し、脳外科手術後に転医したが、寝たきり状態になり、最終的に心不全で死亡したことについて、担当医師らに体幹抑制ベルトの装着継続や常時見守りを怠った過失及び頭部CT検査等の遅延の過誤があるとはいえないとされた事例
(東京地判令1・8・29)

▽1 弁護士が第三者の代理人として刑事告訴等をした行為について、弁護士の不法行為責任を否定した事例
2 弁護士が第三者の代理人として訴えを提起した行為について、弁護士の不法行為責任を否定した事例
(東京地判令1・10・1)

▽1 住宅等の賃貸借契約(原契約)に基づく賃料等債務に係る保証委託契約において、一定の要件の下で賃借人が賃借物件の明渡しをしたものとみなす権限を受託保証人たる家賃債務保証業者に付与し、賃借物件内の動産類を賃貸人及び家賃債務保証業者が任意に搬出・保管することに賃借人が異議を述べない旨定める条項が、消費者契約法8条1項3号に該当するものとされた事例
2 前記保証委託契約において、受託保証人である家賃債務保証業者に原契約を無催告解除する権限を付与する条項及び家賃債務保証業者による原契約の無催告解除権の行使について、賃借人等に異議がないことを確認する旨定める条項などが、消費者契約法8条1項3号又は10条後段に該当しないものとされた事例
(大阪地判令1・6・21)

◆判例評論◆

24 在外邦人国民審査権訴訟第1審判決
(東京地判令1・5・28)……山崎友也

25 漁業権を管轄する行政庁である県知事が属する行政主体である地方公共団体が、国に対し、漁業権の設定されている漁場において規則により必要とされる県知事の許可を受けずに国により岩礁破砕等行為が行われるおそれがあると主張してした同行為の差止めを求める訴え等が、裁判所法3条1項の法律上の争訟に当たらず不適法であるとされた事例
(福岡高那覇支判平30・12・5)……西上 治

26 所有権留保の効力が集合動産譲渡担保に優先するとされた事例
(最二判平30・12・7)……直井義典

27 団地型マンションの一括高圧受電方式導入決議に基づく個別電力供給契約の解約の可否と不法行為責任の認否
(最三判平31・3・5)……鎌野邦樹

28 被相続人が銀行預金口座開設のため銀行に提出した印鑑届書に関する情報は相続人等の個人情報には当たらないとされた事例
(最一判平31・3・18)……山下義昭

29 弁護士会照会に対する報告義務確認請求の確認の利益
(最二判平30・12・21)……加藤新太郎

30 死刑確定者が吸取紙への書き込み等の行為をしたことが遵守事項違反として拘置所長等から懲罰等の措置を受けたことにつき、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとされた事例
(最一判平31・3・18)……福島 至
◆記 事◆

◎特別寄稿
弁護士の懲戒処分に対する救済制度の違憲・違法性と是正策の提案……阿部泰隆

現代型取引をめぐる裁判例(455)……升田 純

緊急時の選挙延期と司法審査
 ── 新型コロナウイルス蔓延におけるアメリカの事例(海外判例研究特報)……大林啓吾

◆書 評◆

磯村健太郎=山口栄二『原発と裁判官』(朝日新聞出版、2013年)
評者……大塚正之

◆判決録細目◆

民 事

○別居親である抗告人(父)が、同居親である相手方(母)に対し、前件調停事件の調停条項に基づく面会交流が実施されなくなったとして、未成年者らとの面会交流を求めた事案において、間接交流のみを認めた原審判を変更し、従前の父子関係、直接交流時の状況、未成年者らの心情等からすると、直接交流を禁止すべき事由は見当たらず、これを速やかに再開することが未成年者らの福祉に適うとして、直接交流を認めた事例
(大阪高決令1・11・8〈参考原審:神戸家審令1・7・19掲載〉)

▽特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項の委任を受けた特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条第1項の発信者情報を定める省令3号の「電子メールアドレス」にSMS(ショートメッセージサービス)用電子メールアドレスが含まれるか否か(積極)
(東京地判令1・12・11)

▽鍼灸師が患者の頸部に鍼施術を行ったことにつき、当該鍼施術によって頸髄損傷が生じたことを認定し、鍼灸師の注意義務違反や一部後遺障害との因果関係を認めた事例
(東京地判令1・5・30)

▽夜間、漁港の岸壁から海中に転落し、運転者が死亡した事故につき、事故状況等からみて急激かつ偶然な事故とは認められないとした事例
(静岡地判平31・1・23)

労 働

▽勤務開始の時点で既にうつ病にり患していた者が自殺した理由は、上司の発言及び要望に応じた業務量の増加を受けられなかったことを原因としてうつ病の程度が増悪したことによるものであると主張して、遺族が使用者に対してした損害賠償請求が棄却された事例
(札幌地判令1・6・19)

刑 事

○1 被告人の尿から覚せい剤成分が検出された事件で、自らの意思で覚せい剤を摂取したと推認することができないとして覚せい剤使用について無罪とした原判決が控訴審で維持された事例
2 被告人が原審の最終陳述において覚せい剤が溶けた水をそれと知らずに飲んだ可能性があると述べたことについて原審検察官が追加立証をせず補充論告のみをし原審が無罪を言い渡した事案につき、検察官が控訴した場合において、その控訴趣意における、原審裁判所には検察官に立証を促さずに不意打ち的に無罪判決をした訴訟手続の法令違反(求釈明義務違反)があるとの主張が排斥された事例
(仙台高判平31・3・14〈参考原審:山形地判平30・3・19掲載〉)

▽13歳の少年が、覚せい剤及び大麻を友人と共に密売人から譲り受け、これを単独で所持したという触法(覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反)保護事件において、少年の薬物への依存性の深刻さ等を指摘し、少年を第1種少年院に送致した事例
(東京家決令1・9・12)
◆記 事◆

統治構造において司法権が果たすべき役割 第2部(10)
 団体の内部自治と司法権──地方議会を中心として──……渡辺康行

会社法・金融法随想──立法事実からみる、近況・課題(4)
 M&Aに関する諸問題……神田秀樹

科学と裁判(5)
 疫学と統計手法──特に因果関係を中心に……中村好一

無戸籍者問題の解消を図る一提案……杉浦徳宏

◆判決録細目◆

民 事

○マンション管理組合の理事長が善管注意義務に違反して、マンション大規模修繕工事を実施したと判断された事例
(東京高判令1・11・20〈参考原審:東京地判平30・11・28掲載〉)

○抗告人(原審申立人)が、相手方(原審相手方)に対し、遺産分割協議成立後に発見された遺産の分割を求めた事案において、先行する遺産分割が法定相続分と異なる不均衡なものであったことを考慮し、本件の遺産を全て抗告人に取得させるべきとした抗告人の主張を排斥し、先行する遺産分割の際に各相続人の取得する遺産の価額に差異があったとしても、そのことを是認していたというべきであり、その後の清算は予定されていなかったとして、本件の遺産を法定相続分により分割した原審の判断を肯認し、抗告を棄却した事例
(大阪高決令1・7・17〈参考原審:大阪家審平31・3・6掲載〉)

○事業遂行中の交通事故によって従業員が多数死傷するだけでなく、当該事故を契機として事故に遭わなかった従業員の多数が退職等を希望するようになって企業としての事業遂行が困難になったとしても、そのような事情は予見不可能な事情であるから、当該事故と事業遂行ができなくなったことで企業に生じた損害との間に相当因果関係は認められないとして、これを一部認めた原判決を取り消した事例
(大阪高判令1・9・25〈参考原審:京都地判平31・3・26本誌2423号89頁〉)

知的財産権

◎化合物の医薬用途に係る特許発明の進歩性の有無に関し当該特許発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定した原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判令1・8・27)

商 事

▽1 再保険契約の準拠法である日本法に、商慣習法として、運命共同体原則があるか(消極)
2 再保険及び元受保険の保険約款で保険金の支払条件として定められた元受被保険者の損害賠償義務が否定された事例
(東京地判令2・2・14)

刑 事

○自ら運営するインターネット上のウェブサイトの閲覧者が使用する電子計算機をもってその同意を得ることなく仮想通貨の採掘作業を実行させるプログラムコード(スクリプト本体)が蔵置されたサーバーコンピュータにアクセスさせ同プログラムコードを取得させて別のサーバーコンピュータに同プログラムコードの呼出しタグ(HTMLコード)を蔵置させ保管したとして不正指令電磁的記録保管罪(刑法168条の3)で起訴された被告人の行為につき、不正指令電磁的記録該当性(その主な構成要件であるいわゆる反意図性及び不正性に分かれる)、実行の用に供する目的及び故意の有無を争点と整理した上で不正性を否定するなどして無罪とした原判決を破棄し、いずれの要件も満たすと説示し有罪を言い渡した事例
(東京高判令2・2・7〈参考原審:横浜地判平31・3・27掲載〉)

◆最高裁判例要旨(2020(令2)2月分)
◆記 事◆

湖東記念病院再審請求事件を闘って……井戸謙一

科学と裁判(4)
 水俣病訴訟に関する科学的知見と最近の裁判例の動向……新美育文

刑法判例と実務
 ──第56回 「恐喝罪」の周辺──……小林憲太郎

◆判例特報◆

 入院患者に対する殺人により有罪の確定判決を受けた元看護助手の女性につき、新証拠によれば、事件性に疑いが生じたとして再審が開始された事件において、患者の死因を意図的な人工呼吸器の管の抜去による窒息死とする解剖医の判断の信用性に疑いがある一方、患者が他の原因で死亡した具体的可能性があるとして、被告人の自白供述を除いた証拠からは事件性が認められないと判断した上、人工呼吸器の管を抜去して患者を殺害した旨の被告人の自白供述につき、信用性がないのみならず任意性にも疑いがあると判断して被告人を無罪とした事例
──湖東記念病院再審請求事件無罪判決(大津地判令2・3・31)

◆判決録細目◆

民 事
○大学院の学費、留学費用等が特別受益と認められなかった事例
(名古屋高決令1・5・17〈参考原審:名古屋家審平31・1・11掲載〉)

○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、父である相手方が、母である抗告人に対して、子をその常居所地国であるロシアに返還するよう求めた事案において、原決定後にロシア国内の裁判所が、子の居住地を抗告人の下とし、抗告人が子を連れてロシアから日本へ出国することを許可する決定をしたことにつき、同法28条3項ただし書に基づき、同決定の理由が、子の返還事由の判断に影響しないかを検討した上で、返還拒否事由があるとは認められないことから、子の返還を命じた原決定は相当であるとして抗告を棄却した事例
(東京高決平31・2・28〈参考原審:東京家決平30・11・30掲載〉)

○1 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法」(刑特法)12条2項の定める緊急逮捕類似の手続は、少なくとも米軍により現行犯として身柄を拘束された者の身柄の引渡しに適用される限りにおいては、憲法33条、31条に反して違憲ということはできないとされた事例
2 米軍から米軍施設等内において拘束した者の身柄を引き渡す旨の通知を受けた海上保安官が、①同通知を受けた後、米軍から事情聴取を行い、身柄の引受けに不可欠な事務上の手続に要すると考えられる時間を超えて、身柄の引受けを遅延させたこと、②身柄の引受けを違法に遅延させた上で、同身柄の引受けに当たり刑特法12条2項に定める手続により身柄拘束を継続したことが、それぞれ国家賠償法上違法であるとされた事例
(福岡高那覇支判令1・10・7〈参考原審:那覇地判平31・3・19本誌2428号132頁掲載〉)

▽動産(日本刀)の引渡しを求める訴訟において、当初は日本刀の占有につき自白していた被告が、相当程度訴訟が進んだ段階で占有しているのは日本刀の偽物であるとして自白を撤回したことにつき、自白の撤回が認められ、さらに自白の撤回が時期に後れた攻撃防御方法とはいえないと判断され原告の請求が棄却された事例
(山形地判令1・8・6)

刑 事

▽1 駅改札口で駅員に対して脅迫を行ったとの訴因につき、防犯カメラの映像に照らし、被害者とされる駅員や現場に臨場した警察官の各証言が信用できないとして、現行犯逮捕された被告人が無罪とされた事例
2 被害者とされる駅員の証言が、事件後に実施された被害再現捜査の際の警察官の言動に影響を受け、これに沿うものとなったとして、信用性が否定された事例
(東京地立川支判平30・5・7)


判例評論

15 公選法204条の選挙無効訴訟において満18歳および満19歳の日本国民に衆議院議員総選挙の選挙権を付与する公選法9条1項の違憲を主張することが許されないとされた事例
(最一決平31・2・28)……山本真敬

16 1 個人タクシー事業の経営許可申請に対する却下処分につき、その根拠とされた収支計画要件が道路運送法6条の審査基準とすることができない違法なものであるなどとして、処分を取り消した原判決の判断を維持し、控訴人である国の控訴を棄却した事例
2 前記取消訴訟と併合提起されている事業許可の義務付け訴訟において、行政事件訴訟法37の3第5項が定める本案要件の有無は却下処分時における法令を前提に判断するとした上で、本案要件が認められるとして義務付けを認めた原判決を、却下処分時における法令を前提としても却下処分は本案要件を満たさないとして取り消し、義務付けの訴えに係る請求を棄却した事例
(東京高判平30・5・24)……春日 修

17 神奈川県議会政務活動費の交付等に関する条例に基づいて交付された政務活動費等について、その収支報告書上の支出の一部が実際には存在しないものであっても、当該政務活動費等の交付を受けた会派又は議員が不当利得返還義務を負わないとした事例
(最二判平30・11・16)……田中孝男

18 賃貸人が連帯保証人に市営住宅の建物賃貸借契約に基づく未払賃料等を請求した場合に、連帯保証人の一方的意思表示による連帯保証契約の解除を認め、解除以降の未払賃料等の債務負担を否定し、それ以降の支払請求は権利の濫用として許されないとした事例
(横浜地相模原支判平31・1・30)……能登真規子

19 離婚訴訟において原告と第三者との不貞行為を主張して請求棄却を求めている被告が当該第三者を相手方として提起した不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟が、人事訴訟法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たるとされた事例
(最三決平31・2・12)……常岡史子

20 ツイッター上におけるいわゆる「なりすましアカウント」作成者の特定のために、経由プロバイダに対して発信者情報の開示を求めた請求が、認められた事例
(東京高判平30・6・13)……高田 寛

21 1 ミキシングを行った者が著作権法2条1項6号所定のレコード製作者には該当しないとされた事例
2 映画の著作物に使用されているレコードにつき、許諾の不存在を合理的に疑わせる特段の事情の存在に基づき、外国映画配給会社に注意義務違反が認められた事例
(大阪地判平30・4・19)……前田哲男

22 休職期間中に行われた試し出勤(テスト出局)の相当性と賃金請求権などが争われ、試し出勤中の労働に対して最低賃金額相当の賃金支払が認められた事例
──日本放送協会事件
(名古屋高判平30・6・26)……柳澤 武

23 1 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の再抗告事件において同法70条1項所定の理由以外の理由により原決定を取り消すことの可否
2 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による入院決定を受けた対象者からの同法による医療の終了の申立て及び指定入院医療機関の管理者からの退院の許可の申立てを棄却した各原々決定及びこれを維持した各原決定に審理不尽の違法があるとされた事例
(最一決平29・12・25)……丸山 雅夫
◆記 事◆

科学と裁判(3)
 疫学と損害賠償訴訟における因果関係の証明
 ──大気汚染公害訴訟を中心に─……吉村良一

現代型取引をめぐる裁判例(454)……升田 純

◆判決録細目◆

民 事

▽担保不動産競売手続において土地建物が一括競売され法定地上権が成立することを前提に建物共有者に交付された剰余金の一部について、実体法上の土地利用権が使用借権であることを理由として土地所有者兼建物共有者からの前記建物共有者に対する不当利得返還請求が認められた事例
(横浜地判令1・10・30)

○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、父である相手方が、母である抗告人に対して、子をその常居所地国であるブラジルに返還するよう求めた事案において、同国が子の常居所地国であると認めた上で、同法28条1項3号(子の連れ去りの同意又は承諾)、同項4号(重大な危険)等の返還拒否事由があるとは認められないことから、子の返還を命じた原決定は相当であるとして抗告を棄却した事例
(東京高決平31・3・27〈参考原審:東京家決平31・2・4掲載〉)

○自動車保険契約における酒気帯び免責条項による免責の可否(積極)
(大阪高判令1・5・30〈参考原審:神戸地判平30・12・19掲載〉)

▽近視矯正等を目的として、レーシック手術又はレーゼック手術を受けた患者らが、それぞれ受けた施術によってコントラスト感度が低下したことについて、当時の屈折矯正手術ガイドラインを検討し、屈折矯正量を超える不適切なものであったといえず、適切なインフォームド・コンセントがなかったとか、術後に発生する合併症等についての適切な術前説明がなかったともいえないとして、施術にあたった医師らの責任が否定された事例
(東京地判平31・3・28)

▽1 公立女子大学が男性であることを理由に入学願書を不受理としたことは憲法14条に違反する等と主張して訴訟を提起した男性に関する週刊誌の記事について、読者は同記事の意見を主観的なものと受け取るにすぎないとして社会的評価の低下を否定し、名誉毀損の成立を認めなかった事例
 2 名誉感情侵害(侮辱)において、一般の読者を基準とした同定可能性は不法行為成立の要件ではなく、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為か否かの考慮要素にすぎないとした上で、前記記事の意見は社会通念上許容される限度を超える侮辱行為に当たるとして名誉感情侵害の成立を認めた事例
(福岡地判令1・9・26)

▽国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、父である申立人が、母である相手方に対して、3人の子らをその常居所地国であるスペインに返還するよう求めた事案において、子の返還申立ては、相手方による子らの留置の開始から1年を経過した後にされたものであり、子らはいずれも日本での生活に適応していると認められるから、同法28条1項1号(新たな環境への適応)の返還拒否事由があるとして申立てを却下した事例
(東京家決平30・12・11)

労 働

○1 期間の定めのない雇用契約が定年により終了した場合であっても、労働者からの申込みがあれば、それに応じて有期再雇用契約を締結することが就業規則等で明定され、又は確立した慣行となっていて、かつ、その場合の契約内容が特定されている場合には、労働者において雇用契約の定年による終了後も再雇用契約により雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があるとして、使用者が有期再雇用契約を締結しない行為が権利濫用に該当し、労働契約法19条、解雇権濫用法理の趣旨ないし信義則に照らして、雇用契約が成立するとみる余地はあるものの、本件においては、前記の慣行等があったとまでは認め難く、また、成立するとみなされる契約内容が特定できないとして、雇用契約の成立を否定した事例
2 従業員らから残業代の支払を求めるために別件訴訟を提起されたことを主要な動機として行われた再雇用契約締結の拒否、又は更新拒絶(雇止め)、及びそれと相前後する一連の働きかけは、裁判を受ける権利に対する違法な侵害行為であるというべきであるとして、会社の、前記従業員ら及び同人らが所属する労働組合に対する不法行為を認めた事例
(東京高判平31・2・13〈参考原審:東京地判平30・6・14掲載〉)

刑 事

○少年が、仮眠中の交際相手の女性に対し、首をつかんで無理やり起こし、あごを手でつかむ暴行を加えたという暴行保護事件において、少年の要保護性が極めて高いことから、比較的軽微な事案であることを考慮しても少年院への収容が必要不可欠であるとして第1種少年院送致とした原決定を是認し、抗告を棄却した事例
(東京高決令1・7・29〈参考原審:東京家決令1掲載〉)
◆記 事◆

特集 科学と裁判
 序文……大塚 直
 ⑴医学の不確実性と医療過誤判例……米村滋人
 ⑵訴訟と科学──その実務的対応……加藤新太郎

刑法判例と実務
 ──第55回 損壊の概念の周辺──……小林憲太郎

◆判決録細目◆

行 政

○1 県知事による沖縄防衛局に対する公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認を取り消す処分が、行政不服審査法に基づく国土交通大臣の裁決により取り消された場合において、当該裁決が地方自治法251条の5第1項の訴訟の対象となる「国の関与」に当たらないとして、同裁決の取消しを求める同項の訴えを却下した事例
 2 公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認を取り消す処分は、沖縄防衛局が行政不服審査法7条2項にいう「固有の資格」において相手方となった処分に当たらず、同処分には行政不服審査法の規定が適用されるとした事例
 3 県知事から事務の委任を受けた機関が行った処分に対する行政不服審査法に基づく審査請求について、同機関の処分権限が委任の終了に伴い消滅しているときは、県知事が処分を行った機関の立場を承継しており、当該処分は地方自治法255条の2第1項1号にいう「都道府県知事の処分」に当たり、当該処分に係る事務を規定する法律を所管する大臣が審査請求をすべき行政庁になるとした事例
(福岡高那覇支判令1・10・23)

民 事

○協議離婚時に公正証書で定めた養育費の額(合計月額15万円)が住宅ローンの支払に関する合意と不可分一体のものとなっており、合意の真の意味は、未成年者らの養育監護に使用される実際の養育費としては、住宅ローン月額支払額10万円相当額を除いた、月額合計5万円を抗告人に支払うことを約するものであるとして、前記公正証書で定めた養育費の減額請求につき、住宅ローンに関する合意と切り離して養育費のみを減額することは相当でないとし、これを認めた原審判を取り消して、申立てを却下した事例
(東京高決令1・8・19〈参考原審:千葉家佐倉支審平31・3・26掲載〉)

○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、父である抗告人が、母である相手方に対して、子をその常居所地国であるシンガポールに返還するよう求めた事案において、同法28条1項3号(留置についての同意又は承諾)及び同項4号(重大な危険)の各返還拒否事由があると認められることから、子の返還申立てを却下した原決定は相当であるとして抗告を棄却した事例
(東京高決平30・5・18〈参考原審:東京家決平30・2・13掲載〉)

○産婦人科医師が血糖値測定義務に違反したことと生後3日の新生児が低血糖から胃出血・出血性ショックを起こし低酸素性虚血性脳症を発症し脳性麻痺に至ったこととの間に因果関係が認められた事例
(大阪高判平31・4・12〈参考原審:神戸地判平30・2・20掲載〉)

○推定相続人の被相続人に対する暴力を理由に推定相続人の廃除を認めた事例
(大阪高決令1・8・21〈参考原審:大阪家審平31・4・16掲載〉)

○抗告人と相手方が、婚姻後約9年間同居した後別居し、婚姻から約44年後離婚したという事実関係において、夫婦の扶助義務は別居した場合も基本的に異ならず、老後のための所得保障についても同等に形成されるべきであり、本件では、年金の保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような特別な事情があるとはいえないとして、按分割合を0・5とすべきとした事例
(大阪高決令1・8・21〈参考原審:大津家高島出審令1・5・9掲載〉)

▽民法750条及び戸籍法74条1号の各規定は、憲法14条1項、24条、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約又は市民的及び政治的権利に関する国際規約に違反することが明白であるとはいえず、その改廃等の立法措置を執らない立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないとされた事例
(東京地判令1・10・2)

▽社会保険労務士が強制執行を免れるために社会保険労務士法人を設立した行為が法人格を濫用したとして、社会保険労務士法人の責任が認められた事例
(東京地判令1・11・27)

▽1 加害行為を行った責任無能力者の両親につき、民法714条1項の法定の監督義務者に当たらないと判断された事例
2 加害行為を行った責任無能力者の両親につき、民法714条1項の法定の監督義務者に準ずべき者に当たらないと判断された事例
(大分地判令1・8・22)

刑 事
○犯人性を争点とする事案において、犯行現場に被告人の眼鏡等が落ちていたこと等の一見して有力な間接事実を認定しながらも、被告人が犯人であると認めるには合理的な疑いが残るとして無罪とした1審判決を維持し、検察官の控訴を棄却した事例
(東京高判令2・1・23〈参考原審:横浜地判令1・5・31掲載〉)
◆記 事◆

最高裁民事破棄判決等の実情
 ──令和元年度──……作田寛之・日置朋弘

改正民法が民事裁判実務に及ぼす影響(11・完)
 債務者の責任財産の保全等に関する見直し……石田 剛

現代型取引をめぐる裁判例(453)……升田 純


◆判決録細目◆

行 政

▽中央防波堤埋立地付近における特別区の境界を、現在の水際線を基礎とした等距離線に利用状況等による修正を加えた線と確定した事例
(東京地判令1・9・20)

民 事

○原審が、父親(抗告人)と3人の子ら(利害関係参加人ら)との直接交流(面会)を認めず、手紙の送付等の間接交流のみを認めたのに対し、抗告審は、原審を基本的に維持しつつ、母親から父親に対して子らの電子メールのアドレス及びLINEのIDを通知すべきことなどは認め、その限度で原審を変更した事例
(東京高決令1・8・23〈参考原審:さいたま家審平31・2・26掲載〉)

○株式会社の社外役員で構成される調査委員会作成に係る調査報告書が民事訴訟法220条4号ニにいう「自己利用文書」に該当しないとされた事例
(大阪高決令1・7・3〈参考原審:大阪地決平31・4・15掲載〉)

▽川崎市内の河川敷で当時13歳であった被害者が未成年者である少年ら3名に殺害された事件について、同少年らのうち2名の少年の各親権者については監督義務違反の責任が認められ、他の1名の少年の親権者については監督義務違反の責任が否定された事例
(横浜地判令1・7・26)

▽被告県が公共工事のために実施した総合評価一般競争入札について、①被告県については、評価が恣意的であり、裁量を逸脱するとして、国家賠償法1条1項に基づき、②被告会社については、被告県に不当な圧力を掛け、恣意的な評価を行わせたとして、民法709条に基づき、損害賠償を求めた原告の請求をいずれも棄却した事例
(津地判令1・5・16)

▽構造改革特別区域法に基づく学校設置認可を受けた学校設置会社が運営する学校において、不適切な単位認定が行われたことから、学校設置を認可した地方公共団体が、履修回復のための費用を支出したことに対し、事務管理に基づく費用償還請求を求めた事案において、請求を認容した事例
(津地判令1・6・20)

▽児童相談所長である申立人が、児童福祉法28条1項に基づき、保護者である母から暴言や暴行を受けて一時保護中の児童について、里親等への委託又は児童養護施設への入所を承認するよう求めた事案において、児童家庭支援センターへの定期的な通所、心理カウンセリングの受講、児童相談所への家庭訪問や助言の受け入れ等を内容とする審判前の指導措置の勧告を行った上で、同勧告に基づく援助を母が肯定的に捉えていることから、児童に対する監護が著しく児童の福祉を害するものとはいえないとして、申立てを却下し、併せて同条7項に基づく同内容の勧告をした事例
(福岡家審令1・8・6)

刑 事

○いわゆる特殊詐欺の事案において、被害者の交付行為を欠くことから、受け子に詐欺未遂罪と窃盗罪が成立する場合に、共謀の内容が詐欺と窃盗にわたるものと認定できるため、共犯者である被告人が窃盗の責任も負うとした事例
(東京高判平31・4・2〈参考原審:水戸地判平30・9・26掲載〉)
◆記 事◆

統治構造において司法権が果たすべき役割第2部(9)
 立法権にとっての憲法と司法権にとっての憲法……毛利 透

死刑制度論のいま──基礎理論と情勢の多角的再考(6)
 死刑制度論における世論の意義……本庄 武

会社法・金融法随想──立法事実からみる、近況・課題(3)
 株式に関する諸問題……神田秀樹

◆判決録細目◆

行 政

▽福岡市において屋台を営んでいた原告らが、道路占用許可の申請の不許可処分の取消しを求めたところ、本件においては、条例の定めと異なる取扱いをすることを認めるべき特段の事情があり、前記不許可処分につき裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとはいえないとされた事例
(福岡地判令1・11・27)

民 事

▽膵尾部切除及び胆嚢摘出の手術を受けた患者に総肝管の狭窄が生じたことにつき、手術担当医に胆管損傷を回避するための措置を怠ったなど治療判断や手技上の過失が否定された事例
(東京地判平31・1・31)

▽私立中学校の学校長が生徒に対して行った校則違反を理由とする退学処分が裁量の範囲を逸脱した違法なものであるとして学校法人に対する損害賠償請求が認容された事例
(さいたま地川越支判令1・6・13)

▽慢性副鼻腔炎と診断された患者が、内視鏡下副鼻腔手術及び粘膜下下鼻甲介骨切除術の施術を受けて後遺障害を負ったことについて、医師に手技上の過失等はないとされた事例
(岡山地判令1・5・22)

知的財産権

▽口コミランキングサイトにおけるランキング表示につき誤認惹起行為の成立が認められた事例
(大阪地判平31・4・11)

刑 事

◎ひそかに児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否
(最一決令1・11・12)

◎被告人の記名のみがあり署名押印がいずれもない控訴申立書による控訴申立ての効力
(最一決令1・12・10)

○強制わいせつ未遂事件において、原判決が被告人のわいせつ目的を客観的事情から推認し、その補強として、被告人が5日後にも同種の強制わいせつ行為に及んだ事実を用いたことに違法はないとした事例
(東京高判令1・5・15〈参考原審:千葉地判平30・11・27掲載〉)

▽1 自動車を窃取した際、これを取り返そうとした被害者をボンネットに乗り上げさせて走行し、路上に転落させて殺害した事案につき、被告人がその車を運転していたとして起訴されたのに対し、現場にいた窃盗の共犯者の供述は信用することができないとして無罪とした第1審の判断は論理則経験則に反するとされた事件の差戻審
2 事件後の被告人と共犯者との間の手紙のやりとり等を詳細に検討し、これを用いて共犯者ら及び被告人の供述の信用性を判断した事例
(千葉地判平31・2・26)

▽覚せい剤営利目的所持の事案において、被告人使用車両を追尾するに当たり実施されたGPS捜査を違法と判断し、それにより直接得られた証拠の証拠能力を否定したが、同捜査のほか、被告人の行動確認の結果得られた情報に基づいて行われた捜査によって得られた証拠について、GPS捜査とは密接に関連しないとして証拠能力を肯定した事例
(旭川地判平31・3・28)

◆最高裁判例要旨(2020(令2)1月分)
1,470円
◆記 事◆
衆議院法制局創立七十周年記念講演会(二〇一八)
 衆議院法制局初代局長・入江俊郎の識見とその今日的意義……高見勝利 先生

刑法判例と実務
 ──第54回 「他人のためにその事務を処理する者」の周辺──……小林憲太郎

◆判決録細目◆

民 事

○司法書士が順次売買について登記手続の連件申請を行う場合において、前件の司法書士が、委任関係のない後件の登記権利者に対しても、書類の真否について調査確認すべき義務を負うとした事例
(東京高判令1・5・30〈参考原審:東京地判平30・9・13掲載〉)

○1 個人情報の管理の再委託を受けた外部業者の従業員が当該個人情報を漏えいさせたことにつき、個人情報を受託管理していた会社に、MTP対応スマートフォンに対する書き出し制御措置を講ずべき注意義務違反を認めた事例
2 個人情報の管理を委託していた会社に対して、委託先に対する適切な監督をすべき注意義務違反を認めた事例
3 個人情報の漏えいにより、不快感及び生活の平穏等に対する不安感を生じさせるとして、精神的損害の発生を認めた事例
(東京高判令1・6・27〈参考原審:東京地判平30・6・20掲載〉)

○郵便はがきに、全文、日付及び氏名を自署指印して作成された上、郵送された当該郵便はがきについて、自筆証書遺言としての効力を認めなかった事例
(東京高判令1・7・11〈参考原審:東京地判平31・2・8掲載〉)

▽市立高校のソフトボール部員がノック練習中、捕球時に左手小指を骨折した事故につき、監督教師に過失があるとして、市の国家賠償責任が認められた事例
(京都地判令1・10・24)

▽自動車総合保険契約に基づく加害者側任意保険会社に対する直接請求につき、原告主張の交通事故は、被保険者の故意によって発生したものであるとして、請求が棄却された事例
(名古屋地判令1・6・26)

▽原告が、強姦の被疑事実で逮捕された旨の事実等が掲載されたウェブ記事に関し、原告の検索事業者に対する検索結果削除請求の一部を認容し、不法行為に基づく損害賠償請求を棄却した事例
(札幌地判令1・12・12)

刑 事

◎刑事訴訟法299条の4、299条の5は憲法37条2項前段に違反しない
(最二決平30・7・3)

○自宅で妻を殺害したとして起訴された事件につき、検察官が、被告人以外の者による犯行の可能性がないという「消去法的立証」を試みたのに対し、その可能性は否定できないとして無罪とした原判決を支持した事例
(福岡高那覇支判平30・7・12〈参考原審:那覇地判平29・10・27掲載〉)

◆判例評論◆
11 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号(生殖腺除去要件)は、憲法13条、14条1項に違反するか
(最二決平31・1・23)……君塚正臣

12 年金保険金(年金)支払請求権の差押命令の申立てにつき、特に生計の維持のために保険金の受給の必要がなかったとして、差押禁止債権該当性を否定した事例
(東京高決平30・6・5)……渡部美由紀

13 臨時職員と正規職員の基本給・賞与の相違が労契法20条の不合理性を有するとされた例
(福岡高判平30・11・29)……岩出 誠

14 強制わいせつ罪における「性的意図」
(最大判平29・11・29)……木村光江
2,200円
■特集
 ハンセン病家族訴訟熊本地裁判決
 (熊本地判令1・6・28)
  解説
  判決全文
 
〈ハンセン病家族訴訟をめぐって〉
① ハンセン病国賠訴訟(熊本地判令1・6・28)について……内田博文
② ハンセン病家族訴訟判決(熊本地裁令和元年6月28日)
 の意義と今後の課題……小林洋二
③ 裁かれた社会の偏見差別……糠塚康江
④ ハンセン病家族訴訟の検討……植木 淳
⑤ ハンセン病家族訴訟熊本地裁判決の概要と意義……西村淑子
◆記 事◆
衆議院法制局創立五十周年記念講演会(一九九八)
 議会政治と政党政治の間  樋口陽一 先生
 
◎新連載
裁判制度のパラダイムシフト
 ──過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(1)
──制度の導入及び定着過程における違憲審査制のデザイン……笹田栄司
 
現代型取引をめぐる裁判例(452)……升田 純
 
海外判例研究──第9回──
 大林啓吾  ダン・ローゼン/西口 元  胡 光輝  カライスコス・アントニオス  佐藤拓磨  神馬幸一  緑 大輔

◆判決録◆
行 政
○国有地の払下げに係る売買契約書に記載された売買代金額等及び瑕疵担保責任免除特約条項が行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報に該当せず、処分行政庁がこれを不開示情報に該当すると判断したことが国家賠償法上違法であるとされた事例
(大阪高判令1・12・17〈参考原審:大阪地判令1・5・30掲載〉)

○公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
(仙台高秋田支判令1・10・25)

民 事
○商品の取り込み詐欺をしていた者から継続的に当該商品を買い受けていた業者について共同不法行為の成立を認めた事例
(東京高判令1・9・19〈参考原審:東京地判平30・11・20掲載〉)

○石綿由来の肺がんにり患したことを理由とする国家賠償請求における遅延損害金の起算日
(福岡高判令1・9・27〈参考原審:福岡地判平31・3・12本誌2425号70頁掲載〉)

▽石綿工場内での石綿ばく露により肺がんを発症した被害者の国に対する国家賠償請求に関し、その遅延損害金の起算日は肺がんの確定診断日と解すべきであるとされた事例(神戸地判令1・9・17)

▽1 破産者のした弁済が、破産法162条1項2号の「その時期が破産者の義務に属しない行為」に該当するか否かが問題とされた事例
2 破産者のした弁済に対する破産法162条1項1号イによる否認が、債権者の単独の意思表示による相殺処理も可能であったとの理由で認められなかった事例
3 破産法162条1項柱書の「既存の債務についてされた担保の供与」の該当性につき、対抗要件具備の経緯が問題とされた事例
(和歌山地判令1・5・15)

刑 事
○クレプトマニア(窃盗症)による執行猶予期間中の万引き事案につき、実刑とした原判決を破棄して、再度の執行猶予を付した事例
(東京高判平30・8・31〈参考原審:さいたま地越谷支判平30・2・20掲載〉)
◆記 事◆
統治構造において司法権が果たすべき役割第2部(8)
 米軍機飛行差止請求訴訟と国内法の適用
 ──最高裁「第三者行為論」の克服に向けて──……福田 護

◆書 評◆
千葉勝美『憲法判例と裁判官の視線―その先に見ていた世界』(有斐閣、2019年)
評者……①高橋和之 ②高見勝利

◆判例特報◆
公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
 ——2019年参院選投票価値格差訴訟高松高裁判決
(高松高判令1・10・16)

◆判決録◆
民 事
◎高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療給付を行った後期高齢者医療広域連合が当該後期高齢者医療給付により代位取得した不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務についての遅延損害金の起算日
(最二判令1・9・6)

◎貸金の支払を求める訴訟において、前訴でその貸金に係る消費貸借契約の成立を主張していた被告が同契約の成立を否認することは信義則に反するとの原告の主張を採用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例
(最二判令1・7・5)

○インターネットのウェブサイト上に掲載された記事について名誉毀損の成立を認め、出版社らに対し、損害賠償の支払に加えて記事の一部の削除と訂正記事の掲載が命じられた事例(東京高判令1・11・27〈参考原審:東京地判平31・2・13掲載〉)

▽市議会議員による、ネット上の記事掲載者に対する名誉毀損等に基づく損害賠償請求(本訴)について、記事掲載者には記事内容が真実であると信じたことに相当の理由があるとして不法行為の成立を否定し、本訴提起が不法行為を構成するとして、記事掲載者の市議会議員に対する賠償請求(反訴)が認められた事例(千葉地松戸支判令1・9・19)

▽1 高校教師の指導が体罰等として違法行為に当たり、この結果、当該生徒が自殺するに至ったとして、学校設置者に対して損害賠償を求めた事案において、当該指導は、生徒指導として許容される限度を超えるものではなかったとして、損害賠償請求が棄却された事例
2 高校生徒の自殺について、全校生徒を対象として行われたアンケートの原本を学校が廃棄してしまったのは、遺族に対する調査報告義務違反を構成するとして、損害賠償請求が一部認容された事例
(札幌地判平31・4・25)

刑 事
◎被告人が強姦及び強制わいせつの犯行の様子を隠し撮りした各デジタルビデオカセットが刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に当たるとされた事例(最一決平30・6・26)

▽1 被告人が、同居の実子A(当時19歳)がかねてより被告人による暴力や性的虐待等により被告人に抵抗できない精神状態で生活していて抗拒不能の状態に陥っていることに乗じてAと性交したとする2件の準強制性交等罪の事案において、抗拒不能状態を認定できないとして無罪が言い渡された事例(①事件)
2 被告人が、深夜被害者に声を掛け、暴行を加えて反抗を著しく困難にして口腔性交をし障害を負わせたとする強制性交等致傷罪の事案において、被告人の加えた暴行は強いものではなかったが、それにより被害者は頭が真っ白になり反抗を著しく困難にする程度に至っていたものの、被告人にその認識があったとは認められないとして無罪が言い渡された事例(②事件)
(①名古屋地岡崎支判平31・3・26、②静岡地浜松支判平31・3・19)

◆最高裁判例要旨(2019(令1)年12月分)
1,470円
◆記 事◆
民法理論のいま──実務への架橋という課題(3)
 「錯誤」理論の新たな展開
 ──改正法によって錯誤制度はどのように変わったか①……近江幸治

刑法判例と実務
 ──第53回 強盗致死傷罪の周辺──……小林憲太郎

◆判決録細目◆
行 政
◎1 市の経営する競艇事業の予算に違法な内容が含まれていた場合において、市長が前記予算を調製したことを理由として不法行為に基づく損害賠償責任を負うとはいえないとされた事例
2 市の経営する競艇事業の管理者が違法な補助金の交付決定をした場合において、前記管理者を補助すべき立場にある職員が前記決定に関与したことを理由として不法行為に基づく損害賠償責任を負うとはいえないとされた事例
(最一判令1・10・17)

○公職選挙法14条1項、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性(合憲)
(福岡高宮崎支判令1・10・30)

民 事
◎1 振替口座簿に開設された被相続人名義の口座に記載又は記録がされている振替株式等の共同相続により債務者が承継した共有持分に対する差押命令の適否
2 振替株式等の共同相続により債務者が承継した共有持分について譲渡命令を発することの許否
(最二決平31・1・23)

○元請会社及び第一次下請会社の第二次下請会社労働者に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償責任が認められた事例(過失相殺5割)
(東京高判平30・4・26〈参考原審:東京地判平28・9・12掲載〉)

▽仮想通貨(暗号資産)交換業者に預託していた金銭が何者かによって不正にビットコインに交換され、これが外部のビットコインアドレスに送付されたことについて、前記業者には不正アクセス者による機密取得及び不正取引防止のためのシステム構築義務違反は認められないとされた事例
(東京地判平31・1・25)

▽業務委託契約において、消費税相当額に対応する合意を行っていなかった場合に、消費税法に基づき、業務委託報酬として消費税相当額の支払を求めることは認められないとされた事例
(大阪地判平31・1・25)

▽1 「集団送還」の方法による強制送還執行につき、国家賠償法上の違法性が否定された事例
2 入国警備官が訴えの利益について誤った教示をしたことにつき、国家賠償法上の違法性を肯定した事例
(名古屋地判令1・7・30)

労 働
▽病院の事務職員が自殺した事案において、病院での長時間労働によりうつ病エピソードを発病した結果自殺に至ったものと認定し、病院管理者である被告に安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を認めた上、被告の主張する前記事務職員の業務の進め方、超過勤務申請書の不提出、医療機関の不受診等の事情による過失相殺等がいずれも否定された事例
(岐阜地判平31・4・19)

◆判例評論◆
6 難民に該当することを理由に難民不認定処分の取消判決が確定している外国人について法務大臣が再度不認定処分をする場合には、難民条約における終止条項に該当することを要するとした事例
(東京高判平30・12・5)……阿部浩己

7 民訴法324条に基づく移送決定についての取消しの許否
(最三決平30・12・18)……棚橋洋平

8 訴訟当事者に判決の内容が了知されず又は了知する機会も実質的に与えられなかったことにより不服申立ての機会が与えられないまま確定した外国裁判所の欠席判決に係る訴訟手続が民訴法一一八条三号にいう公の秩序に反するとした事例
(最二判平31・1・18)……松永詩乃美

9 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律4条)における、「その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的」及び「その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させること」の意味
(札幌高判平29・1・26)……松尾誠紀

10 原審の摘示した間接事実だけでは被告人においてAが逃走中の「Z」であると認識していたとは認められないとして、事実誤認を理由に犯人蔵匿罪を認めた原判決を破棄した事例について
(大阪高判平30・9・25)……佐藤結美
◆記 事◆
最高裁刑事破棄判決等の実情
 ──平成30年度──……蛭田円香

統治構造において司法権が果たすべき役割 第2部(7)
 「部分社会の法理」と司法権の限界……木下智史

現代型取引をめぐる裁判例(451)……升田 純

◆判決録細目◆

行 政

▽道路の占用料を道路敷地の固定資産税及び都市計画税の額と同額と定めた当該占用料の納入告知が裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法となるとされた事例
(大阪地判令1・7・31)

民 事

◎債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断の効力が生ずるためにその債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることの要否
(最一判令1・9・19)

▽自動車保険契約の申込みの際に、被保険車両の主たる運転者でも、被保険車両を支配、使用する者でもない者を記名被保険者として告知した行為が、詐欺(民法96条1項)に当たるとして、詐欺取消しが認められた事例
(大阪地判令1・5・22)

▽天然石や薬草等を混ぜて焼結させた加工アクセサリーを天珠と称し宗教的効果等があるなどとして、一般消費者に高額で購入させ、さらにそれを清める儀式である浄化と称する機会を設けて来店に誘い、さらに同類商品を6回にわたり高額で購入させた販売店長等の販売行為等について、実質的に暴利行為、目的を隠匿しての勧誘行為、長時間にわたる勧誘行為として不法行為に該当し、それらの各行為を販売会社が組織的に反復継続して行ったものとして、販売会社に使用者責任を認めた事例
(大阪地堺支判令1・5・27)

▽胃がん等の手術を受けたことのある患者が、転院先の病院で、内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP)及び内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)の処置を受けた後、入院中に痰詰まりにより一時心肺停止になり低酸素性脳症に陥り、3年余り後に敗血症で死亡したことについて、前記病院の担当医師らに施術適応性判断の過誤、手技及び救命措置の不手際、施術に関する説明義務違反などの過失がないとされた事例(反訴請求事件)
(広島地判平29・9・15)

労 働

◎有期労働契約を締結していた労働者が労働契約上の地位の確認等を求める訴訟において、契約期間の満了により当該契約の終了の効果が発生するか否かを判断せずに請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判令1・11・7)

○1 就業規則と異なる労働条件である出来高払制の合意をしたとの会社側の主張が排斥された事例
 2 労働者に対するパワーハラスメントが認められるとして、事実上の取締役の不法行為責任及び会社の会社法350条の類推適用による責任が肯定された事例
(福岡高判平31・3・26〈参考原審:福岡地判平30・9・14本誌2413=2414号195頁〉)

刑 事

○1 警察官である被告人が、内偵捜査中に、捜査対象者であった被害者から不審者として問い詰められて身体や衣服をつかまれるなどしたので、その拘束から逃れるために、衣服をつかまれたままの状態で勢いよく自己の身体を反転させる暴行を加え、被害者に傷害を負わせた行為につき、正当防衛の成立を認めた原判決を支持し控訴を棄却した事例
 2 私服警察官による適法な内偵捜査であることを知らない私人が当該警察官を不審者として警察に引き渡す目的で逮捕した場合、現行犯逮捕としての違法性阻却事由が認められないとしても、「相当な範囲での若干の引き留め行為」である限り、社会的正当行為として許容される場合のあることを判示した事例
(東京高判平31・3・1〈参考原審:千葉地判平30・6・29掲載〉)
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