判例時報 発売日・バックナンバー

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◆記 事◆

最高裁民事破棄判決等の実情
 ──令和2年度──……家原尚秀・池原桃子

民事訴訟の隅々にまで口頭主義を
 ──民事訴訟で口頭主義を徹底するための基本的提案(3)……浅見宣義


◆第5回判例時報賞 奨励賞受賞論文◆

受益者連続型信託における受託者の公平義務……黒川 健


◆判決録細目◆

民 事

◎自筆遺言証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって同証書による遺言が無効となるものではないとされた事例
(最一判令3・1・18)

◎1 厚生労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋外の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないとされた事例
 2 建材メーカーが、自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者に対し、前記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたとはいえないとされた事例
──建設アスベスト訴訟京都ルート上告審判決
(最一判令3・5・17)

〇洗顔石けんの使用によりアレルギー症状を発症した場合において、石けんに使われていた原材料(グルパール19S)につき、その効用・有用性を考慮しても、当該アレルギー被害は、洗顔石けんの原材料によって生じるアレルギー被害として社会通念上許容される限度を超えており、洗顔石けんに配合、添加される原材料として通常有すべき安全性を欠き、製造物責任法2条2項の欠陥があるとされた事例
(福岡高判令2・6・25)

〇みかじめ料を支払わない性風俗店の経営者らに対して暴力団員らが加えた襲撃等の不法行為につき、最上位の指定暴力団の会長の使用者責任を肯定した1審判決が控訴審においても維持された事例
(広島高判平31・2・20)


商 事

〇平成30年法律第29号による改正後の商法が適用される事例において、商法684条及び船舶の所有者等の責任の制限に関する法律2条1項1号の「航海の用に供する船舶」とは、社会通念上海上とされる水域を航行する船舶をいうとされた事例
(福岡高決令3・2・4)
◆記 事◆

民事訴訟の隅々にまで口頭主義を
 ──民事訴訟で口頭主義を徹底するための基本的提案(2)……浅見 宣義

責任能力判断の責任論的・心理学的基礎と実践【第4回】……清野 憲一


◆判決録◆

行 政 

〇ある法人と形式的には別法人であっても、当該法人と実質的に同一体というべき法人の役職員が、当該法人のために金融商品取引法159条2項が禁止する相場操縦違反行為をした場合には、当該法人は同法174条の2第1項の違反者となり得るとされた事例
(東京高判令2・7・10)


民 事 

◎原告らの採る立証手法により特定の建材メーカーの製造販売した石綿含有建材が特定の建設作業従事者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例──建設アスベスト訴訟東京ルート上告審判決
(最一判令3・5・17)

〇妊娠していた5胎の胎児の一部を減胎する手術(減胎手術)について、担当医師が母体に対する危険防止のために経験上必要とされる最善の注意を尽くす義務に違反し、広く使われていた穿刺針よりも太い穿刺針で多数回の穿刺を行ったとして、医療法人に対する損害賠償請求が認められた事例
(大阪高判令2・12・17)

〇別居中の元妻が元夫の同意を得ることなく、同意書を偽造して医療法人が開設する診療所において融解胚移植の方法により妊娠して嫡出子となる子を出産したことにつき、元夫が元妻に対して自己決定権侵害に基づいて提訴した損害賠償請求が一部認容された事例
(大阪高判令2・11・27)

〇被害者の死亡が確認されるまでに2つの交通事故が発生した二重轢過事案において、民法719条1項後段を類推適用して、後発の事故の加害者に被害者死亡の損害の不真正連帯責任を負わせるためには、同条項の類推適用を求める者が「被害者が後発の事故によって死亡した可能性があること」を立証する必要があるとした事例
(福岡高判令2・12・8)

▽1 再審請求弁護人が精神科医とともに死刑確定者と面会するに際し、職員の立会いのない面会を許さなかった拘置所長の措置が違法とされた事例
 2 前記面会に際し、面会時間を1時間に制限した拘置所長の措置が違法とされた事例
 3 前記面会に際し、ICレコーダーの使用を許さなかった拘置所長の措置が違法ではないとされた事例
(広島地判令2・12・8)

▽インターネットのウェブサイト上の掲示板における投稿が名誉毀損の不法行為に当たるとして、慰謝料及び発信者特定のための調査費用等が損害として認められた事例
(水戸地判令2・11・4)

▽児童福祉法28条1項に基づいて児童相談所長がした、未成年者についての障害児入所施設への入所又は里親委託の承認申立てが認容された事例
(名古屋家審令1・5・15)


労 働 

〇じん肺管理区分3ロの判断を受けていた者が、10年以上療養を続けた後、慢性呼吸不全急性増悪(Ⅱ型)で死亡したことについて業務起因性が肯定された事例
(福岡高判令2・9・29)


刑 事 

◎1 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)2条3項にいう「児童ポルノ」の意義
 2 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否
(最一決令2・1・27)

◎1 医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為の意義
 2 医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為に当たるか否かの判断方法
 3 医師でない彫り師によるタトゥー施術行為が、医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為に当たらないとされた事例
(最二決令2・9・16)
◆記 事◆

民事訴訟の隅々にまで口頭主義を──民事訴訟で
 口頭主義を徹底するための基本的提案(1)……浅見 宣義

責任能力判断の責任論的・心理学的基礎と実践【第3回】……清野 憲一


◆判決録◆

民 事

◎土地の売買契約の買主が売主に対し債務の履行を求めるための訴訟の提起等に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することの可否
(最三判令3・1・22)

〇再保険契約の準拠法である日本法に、商慣習法として、運命共同体原則があるか(消極)
(東京高判令3・4・28)

〇家庭用火災保険契約に基づく保険対象建物の床の汚損等が保険約款にいう「不測かつ突発的な事故」に当たらず保険事故に該当しないとして保険金請求が棄却された事例
(名古屋高判令2・11・11)

〇公正証書遺言が、遺言能力に欠けることはなく要式違反も認められないとして有効とされた事例
(広島高判令2・9・30)

▽加害者が被害者を同乗させ被害者所有の自動車を運転中に起こした交通事故につき、加害者との間で自動車共済契約を締結していた共済事業者(原告)が被害者に対して損害賠償金を支払ったが、加害者と同居する加害者の父が他の共済事業者(被告)と自動車共済契約を締結していたときは、前記交通事故による損害については両共済契約の他車運転特約がそれぞれ適用されるから、両共済契約は保険法20条の重複保険に当たり、同条2項に基づき、原告は被告に対し、求償できるとした事例
(東京地判令2・6・22)

▽自宅で立ち上がれなくなり救急搬送された患者が、入院翌日に急変し、死亡した場合において、病院の看護師及び医師の過失をいずれも否定した事例
(大阪地判令2・6・5)

▽1 無症状の腰椎分離症が交通事故により有症化したことを認め、腰椎後方固定術後の腰部の状態を当該事故と相当因果関係のある後遺障害と認めた事例
 2 腰椎分離症が交通事故前から存在したことを踏まえ、30パーセントの素因減額を認めた事例
(金沢地判令2・8・31)

▽国外での代理懐胎により出生した子について、代理懐胎を依頼した夫婦の特別養子とすることが子の利益のために特に必要であり、代理母の同意も認められるとして、当該夫婦との間の特別養子縁組の成立を認めた事例
(静岡家浜松支審令2・1・14)


 刑 事 

〇1 実子に対する保護責任者遺棄致死の事案で、夫である共犯者からの心理的DVの影響下における心理状態及びこれを踏まえた非難可能性の程度を判断する前提として、参考意見聴取のために実施した医師の尋問において、判断の基礎とする事実の範囲に証言を制限した1審裁判所の措置に違法な点はないとされた事例
 2 共犯者からの心理的DVの影響を肯定しつつも、これを乗り越えて前記実子を助ける契機があったと認定し、被告人の責任を大幅に減じる事情ではないとした1審判決の量刑評価が適切であると判断された事例
(東京高判令2・9・8)

〇1 被告人両名が、共謀の上、実子である被害者を監視カメラで監視するなどしつつ施錠した居室に監禁し、室温の低下及び被害者の極度のるい痩等を認識しながら、生存に必要な保護を与えずに放置して死亡させたとされる監禁、保護責任者遺棄致死の事案において、検察官が請求した死体解剖時の被害者写真を採用して取り調べた1審の訴訟手続に法令違反はないとした事例
 2 被害者の要保護状況に関する被告人両名の認識を認めて不保護の故意を認定した1審判決の事実認定を是認した事例
(大阪高判令3・4・19)


◆判例評論◆

35 特許法102条1項(令和元年改正前)に基づく損害額の算定方法及び特許発明の特徴部分が特許製品の一部分である場合の取り扱いについて示した事例──美容器事件大合議判決
(知財高判令2・2・28)……志賀 典之

36 取締役選任に関する株主間の合意の法的効力
(東京高判令2・1・22)……松中 学
◆記 事◆

責任能力判断の責任論的・心理学的基礎と実践
 【第2回】 清野 憲一


◆判決録◆

行 政

◎補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとしてされた財産の処分の承認が同法7条3項による条件に基づいてされたものとして適法であるとされた事例
(最三判令3・3・2)

▽地方団体が国に対して特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たるか(積極)
(大阪地中間判令3・4・22)


民 事 

◎社債と利息制限法1条の適用の有無
(最三判令3・1・26)

◎少年保護事件を題材として家庭裁判所調査官が執筆した論文を雑誌及び書籍において公表した行為がプライバシーの侵害として不法行為法上違法とはいえないとされた事例
(最二判令2・10・9)

〇県立高等学校の寮内におけるいじめにより生徒が自殺し、学級担任及び寮の舎監長である教諭らの安全配慮義務違反が認められるものの、自殺についての具体的予見可能性までは認められないとしたが、前記教諭らのいじめに対する不適切な対処について、遺族の県に対する慰謝料請求が認容された事例
(福岡高判令2・7・14)

〇保佐人選任の審判がされ、その抗告審継続中に被保佐人本人が任意後見契約を締結した場合において、任意後見契約に関する法律10条1項の「本人の利益のため特に必要がある」と認められるとして、原審判を維持し、抗告を棄却した事例
(広島高決令2・8・3)

▽原告が中学校及び高等学校の新キャンパスを開設するために被告から購入した本件土地の土壌に土壌汚染対策法に基づく規制の対象となる物質が基準値を超えて存在していたなどとして、売買契約上の瑕疵担保責任等に基づき、土壌汚染対策工事費など11億円を超える損害賠償を被告に請求した事案について、売買の目的となった本件土地の土壌に基準値を超える鉛及び砒素が含まれていたことは「隠れた瑕疵」に当たるが、掘削工事に要した工事費用は本件土地の瑕疵と相当因果関係のある損害とは認められないなどとして、被告に対し、調査費用など約5600万円の損害賠償のみが命じられた事例
(大阪地判令3・1・14)

▽父からの未成年者らとの面接交流の申立てに対し、直接の交流は相当でなく、電話や手紙等による間接交流の実施を重ね、未成年者らの不安や葛藤を低減していくことが相当であるとされた事例
(奈良家審令2・9・18)


刑 事

◎詐欺の被害者が送付した荷物を依頼を受けて送付先のマンションに設置された宅配ボックスから取り出して受領するなどした者に詐欺罪の故意及び共謀があるとされた事例
(最二判令1・9・27)

〇刑事訴訟法321条1項2号後段により請求された検察官調書を却下した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反が認められるとして原判決を破棄し、同検察官調書の供述の相反部分を踏まえた上で、改めて本件の争点につき当事者間で更に攻撃防御を尽くさせるとともに、同相反部分を含めた新たな証拠関係のもとで、裁判員を交えて被告人の共謀の有無について審理を尽くさせるのが相当であるとして、事件を原審裁判所に差し戻した事例
(大阪高判令2・3・10)
◆記 事◆

海外判例研究──第12回──
  憲法   大林 啓吾
  民法   胡  光輝
  消費者法 カライスコス アントニオス
       ダン ローゼン・西口  元
  刑法   神馬 幸一
       佐藤 拓磨

責任能力判断の責任論的・心理学的基礎と実践
 【第1回】 清野 憲一


◆判決録◆


行 政

〇小学校の教員が脳幹部出血を発症して後遺障害が残ったことについて、当該発症と公務との間に相当因果関係が認められるとされた事例
(福岡高判令2・9・25)


民 事

◎1 有価証券届出書の財務計算に関する書類に係る部分に虚偽記載等がある場合に当該有価証券の募集に係る発行者等と元引受契約を締結した金融商品取引業者等が金融商品取引法21条1項4号の損害賠償責任につき同条2項3号による免責を受けるための要件
 2 株式の上場に当たり提出された有価証券届出書のうち当該上場の最近事業年度及びその直前事業年度の財務諸表に虚偽記載があった場合において当該株式の発行者等と元引受契約を締結した金融商品取引業者の金融商品取引法21条1項4号の損害賠償責任につき同条2項3号による免責が否定された事例
(最三判令2・12・22)

▽地方公共団体である被告の設置運営する高校に在籍していた原告が、被告に対し、同高校の教員らから頭髪指導として頭髪を黒く染めるよう繰り返し強要され、高校に登校しなくなった後は生徒名簿から氏名を削除されるなどして精神的苦痛を被ったなどとしてした国家賠償請求等につき、染髪を禁じた校則及びこれに基づく頭髪指導は同高校及び教員らの裁量の範囲内で適法であるとする一方、生徒名簿からの氏名の削除等は教育環境を整える目的でされたものではなく、手段の選択も著しく相当性を欠くなどとして、原告の国家賠償請求を一部認めた事例
(大阪地判令3・2・16)


労 働

◎1 無期契約労働者に対しては夏期休暇及び冬期休暇を与える一方で有期契約労働者に対してはこれを与えないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(①事件)
 2 私傷病による病気休暇として無期契約労働者に対して有給休暇を与えるものとする一方で有期契約労働者に対して無給の休暇のみを与えるものとするという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(②事件)
 3 無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(③事件)
 4 無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(③事件)
 5 無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(③事件)
(①②③最一判令2・10・15)


経 済

▽パチンコ遊技機及びパチスロ遊技機の販売業者の事業者団体が、組合員である販売業者に対し、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則の改正により設置が許されなくなった遊技機を経過措置期間経過前に計画的に撤去するという同事業者団体を含む業界関係団体の立てた計画に従わないパチンコ・パチスロ遊技場の経営者に対して中古遊技機の設置に係る風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律上の行政手続に必要となる保証書作成等の業務をすることを拒絶するように求めた行為は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9項1号の「供給を拒絶」する行為に該当するが、目的の正当性及び手段の相当性が認められるから、不公正な取引方法に該当しないとされた事例
(東京地決令3・3・30)


刑 事

〇少年が、元同級生であった被害者に対し、メリケンサックを装着した右手拳で殴打して全治10日間を要する左側頭部挫創の傷害を負わせた傷害保護事件において、少年を保護観察に付することとした原決定につき、処分の著しい不当を理由とする抗告を棄却した事例
(東京高決令2・11・20)

▽自宅で宅配荷物を受領する際、配達票の受取印欄に仮名で署名した行為について、作成者と名義人の人格の同一性に齟齬をきたすものとはいえないから、署名偽造に当たらないとした事例
(京都地判令2・6・25)
◆記 事◆

民法理論のいま──実務への架橋という課題(5)
 集合動産・集合債権等の担保化に対する社会的要請……近江 幸治


◆書 評◆

川﨑富雄『錯覚の医事法学―よき医療とよき司法のための提言―』……大谷  實


◆判 決 録◆

行 政

▽普通免許を有するが準中型自動車免許を受けていない者が、準中型貨物自動車(1・5トントラック)を運転したという無免許運転行為を理由に、公安委員会から運転免許の取消処分及び2年間を運転免許を受けることができない期間(欠格期間)として指定する処分がされた事案につき、運転は会社の指示でなされたものであるが、会社には普通免許で運転できる1・5トントラックもあり、会社の代表者も両トラックの違いを認識していなかったなど判示の事情の下では、2年間を欠格期間とする前記指定処分には、欠格期間の指定に関する処分量定基準にいう「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」が認められるのに処分の軽減をしなかった点において、裁量権の逸脱・濫用があるとされた事例(岐阜地判令2・9・4)


民 事

▽英国法人の支配下にある被告会社及び同法人の支配下にある被告役員らに対して提起した原告の訴えにつき、同法人と原告との間で締結された国際仲裁における仲裁合意を被告らも主張できるとして、仲裁法14条により訴えを却下した事例
(東京地判令2・6・19)
▽納骨壇使用契約の法的性質を諾成的寄託契約に準委任契約が付随した混合契約であるとした上、納骨壇使用契約に基づく永代使用料及び永代供養料の支払の一部について、解約により法律上の原因を欠くに至ったため、不当利得として返還することを命じた事例
(大阪地判令2・12・10)
▽国立大学の医学系研究科(大学院)の博士課程に在籍していた原告が、指導教員からいわゆるアカデミックハラスメントを含む違法行為を受け、精神的苦痛を被ったと主張して国立大学法人と指導教員に損害賠償を求めた事案について、国立大学法人に対する請求が一部認容された事例
(名古屋地判令2・12・17)
▽被告の運営する病院において胸腔鏡下拡大胸腺摘出術を受けた患者が、手術中の大量出血により低酸素脳症を発症し、意識が回復することのないまま、手術の約1年後に死亡した事案について、手術を執刀した医師に注意義務違反があったと認め、被告に患者の遺族に対する損害賠償を命じた事例
(広島地判令2・12・22)


労 働

〇長時間労働等と劇症型心筋炎との間の因果関係は認められず、また治療機会喪失により劇症型心筋炎を発症したとも認められないとして業務起因性を否定し、業務起因性を認めて不支給処分を取り消した原審判決を控訴審が取り消した事例
(大阪高判令2・10・1)

▽有期派遣労働者と派遣元の無期労働契約社員との間における通勤手当の支給の有無に係る労働条件の相違につき、労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)の適用があり、期間の定めがあることによる相違に当たるが、支給の趣旨・目的、職務の内容等の相違のほか、その他の事情(派遣先における均衡待遇等に係る労働者派遣法の規律や労働者による就労条件の選択可能性等の派遣就労の特殊性、原告自身が派遣就労ごとに就労条件を吟味し決定していたこと、原告に支給されていた時給額が通勤交通費を自己負担するのに不足はなかったこと等)を勘案して、同条の「不合理と認められるもの」とはいえないとした事例
(大阪地判令3・2・25)

▽就業規則に根拠規定がない場合であっても労働者の同意を得て試用期間を延長し得るものの就業規則の最低基準効に反する事情を認めて試用期間延長を無効とし(解雇無効)、退職勧奨の違法性を一部認め、労働者の損害賠償請求等を一部認容した事例
(東京地判令2・9・28)


刑 事

▽実父母に対する傷害、傷害致死事案で、実母に対する行為は妄想と密接に関連し、実父に対する行為は正に妄想が直接の原因であると認められるから、動機は理解不能であるとして、その余の事情も考慮し、心神喪失であると判断した事例
(横浜地判令2・3・19)


判例評論

31 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律36条の6第1項、3項の憲法適合性──要指導医薬品ネット販売規制事件控訴審判決(東京高判平31・2・6)……斎藤 一久

32 担保不動産競売手続において土地建物が一括競売され法定地上権が成立することを前提に建物共有者に交付された剰余金の一部について、実体法上の土地利用権が使用借権であることを理由として土地所有者兼建物共有者からの前記建物共有者に対する不当利得返還請求が認められた事例(横浜地判令1・10・30)……米倉 暢大

33 後遺障害逸失利益は、不法行為に基づく損害賠償制度の目的と理念に照らして相当と認められるとき、定期金賠償の対象となる(最一判令2・7・9)……藤村 和夫

34 担保不動産競売の手続において最高価買受申出人が受けた売却許可決定に対し他の買受申出人が民事執行法188条において準用する同法71条4号イに掲げる売却不許可事由を主張して執行抗告をすることの許否(消極)(最二決令2・9・2)……内田 義厚
◆記 事◆

許可抗告事件の実情
 ──令和2年度── ……福井 章代  宮脇 雅代  


◆判決録◆

行 政 

◎制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が確定した場合において当該制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算方法と一般に公正妥当と認められる会計処理の基準
(最一判令2・7・2)

〇1 審査請求の対象となっている処分を決議した処分庁の理事会に総括監事として出席していた者は、同処分について、予断を抱くおそれや当該処分を弁護しようとする意識が働くおそれが類型的に高いといわざるを得ないとして、行政不服審査法9条2項1号の「審査請求に係る処分に関与した者」に該当し、審理員の資格を欠くと判断された事例
 2 審理員として指名された者が審理員の資格を欠き、審理員意見書を参酌することなく裁決がされ、その審理過程も審理員を挟んだ審査請求人と処分庁の対審的審理構造ではなく、審理員と処分庁が審査請求人と対立する形となっていたなど行政不服審査法の趣旨に反する重大な手続上の瑕疵があるとして、裁決が取り消された事例
(東京高判令1・5・21)


民 事

〇商品先物取引の受託会社従業員に、委託者に対する実質的一任取引禁止違反、無意味な反復取引等禁止違反があるとして、当該従業員に対する不法行為に基づく損害賠償請求と、受託会社に対する使用者責任に基づく損害賠償請求が、それぞれ一部認容された事例
(名古屋高判令1・12・20)

〇公立高校に教員として勤務していたAが、先輩教員であるBから度重なる注意を受けたことにより鬱状態となり自殺したことについて、Bの不法行為該当性等を認めて、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求を一部認容した原判決に対する1審被告の控訴を棄却した事例
(仙台高判令3・2・10)

▽夫である申立人(日本国籍)が、妻(ルーマニア国籍)と自身との間の子として出生届を提出した民法772条の嫡出推定の及ばない子を相手方として、親子関係不存在の確認を求めた事案で、嫡出親子関係も非嫡出親子関係も存在しないとして、申立人と相手方の間には親子関係が存在しないとの合意に相当する審判をした事例
(東京家審令2・9・10)

▽申立人夫(日本国籍)と申立人妻(フィリピン国籍)が、申立人妻と申立外男性との間の非嫡出子である未成年者(フィリピン国籍)との養子縁組の許可を求めた事案において、申立てを認容した事例
(東京家審令2・4・17)

▽「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」の立法行為等を理由とする国家賠償請求が棄却された事例
(前橋地判令2・10・1)


刑 事

▽警察官らが、不法残留による現行犯人逮捕に伴い、被告人が隠匿していた大麻を捜索し、大麻所持による現行犯人逮捕をして大麻を差し押さえた行為が、別件捜索差押えとして許されず違法であるなどとして、違法収集証拠排除法則により大麻等の証拠能力を否定し、無罪とした事例
(東京地判令2・3・18)

▽1 過失運転致死の事案において、被告人車両のタイヤに被害者DNAの付着が認められたにもかかわらず、被害者轢過の点につき疑いが残るとして無罪を言い渡した事例
 2 捜査機関の証拠品(安全靴)管理の不手際により、付着した被害者DNAが毀損された可能性があると判断した事例
(福岡地判令2・10・26)


◆最高裁判例要旨(2021(令3)年4・5月分)
◆記 事◆

特殊詐欺からの被害回復を目的とする組長訴訟
 ──「威力利用資金獲得行為」の解釈・適用を中心に──……余頃桂介

情報をめぐる現代の法的課題⑹
 刑事手続とIT【後編】……山本了宣


◆判決録細目◆

民 事

〇親権者である養父及び実母から暴行等の虐待を受け、一時保護の措置がとられている子について、親権者らによる親権の行使が不適当であり、そのことにより子の利益を害することは明らかであるとして、親権者らの子に対する親権をいずれも2年間停止した事例
(東京高決令1・6・28)

〇平成23年法律第36号の施行前に締結された契約におけるカリフォルニア州裁判所を専属的管轄裁判所とする合意について、一定の法律関係に基づく訴えを定めるものとして有効とした事例
(東京高判令2・7・22〈参考原審:東京地中間判平28・2・15〉)

〇基本事件の被告の訴訟代理人が基本事件の訴訟行為を行うことが弁護士職務基本規程57条違反であることを理由として、基本事件の原告らに前記訴訟行為を排除する旨の裁判を求める申立権があるとし、共同事務所の他の所属弁護士が弁護士法25条1号及び前記規程27条1号により職務を行うことができない事件について、共同事務所の所属弁護士は前記規程57条によりその事件について訴訟行為を行うことができないとされた事例
(知財高決令2・8・3〈参考原審:東京地決令2・3・30〉)

▽原告名義の普通預金口座が「犯罪利用預金口座等」(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律2条4項2号)に該当しないなどとされた事例
(東京地判令2・6・30)

▽1 民法968条1項が規定する各要件が具備されていることの主張立証責任は、自筆証書遺言の有効性を主張する者が負うとした事例
 2 遺言書には遺言書が作成された真実の日が記載されていることが必要であり、その主張立証責任は、自筆証書遺言の有効性を主張する者が負うとした事例
 3 封緘されていない封筒に収められていた3枚の便箋からなる遺言書について、それぞれ作成時期が異なる1枚目の便箋(左半分が切断されて右半分しか残っていないもの)と2枚目・3枚目の便箋とを組み合わせた形式で作成されたという合理的な疑いを否定できず、有効な自筆証書遺言の要件を具備しておらず、無効であるとした事例
(東京地判令2・10・8)


知的財産権

〇1 不正競争防止法2条1項14号(平成30年法律第33号による改正前のもの)における商品の属性に関する限定列挙性(肯定)
 2 銘菓の製造販売事業の創業を元禄2年(1689年)とする表示等が、不正競争としての品質等誤認表示に該当しないと判断された事例
(大阪高判令3・3・11〈参考原審:京都地判令2・6・10〉)


労 働

▽1 制服の着用が義務付けられていた引越作業員について、その着替えの時間及び朝礼の時間以降は、被告会社の指揮命令下に置かれたものと評価することができるとされた事例
 2 被告会社における正社員とアルバイトの間における通勤手当に係る労働条件の相違は、労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たると判断された事例
 3 原告らには被告組合に加入する黙示の意思表示があったものと認められた事例
 4 被告会社の採用するいわゆるチェック・オフ制度が有効であると判断された事例
(横浜地判令2・6・25)


刑 事

▽生後約3か月の実子に対し、身体を激しく揺さぶるなどして頭部に衝撃を与える暴行を加え、急性硬膜下血腫等の傷害を負わせたという傷害の事案において、同児の傷害はソファーからの落下によって生じた可能性が否定し切れないとして無罪とした事例
(岐阜地判令2・9・25)
◆記 事◆

裁判制度のパラダイムシフト
 ──過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(6)
 ──憲法裁判において最高裁判所をサポートするシステム
 その2──調査官制度……笹田栄司

情報をめぐる現代の法的課題⑸
 刑事手続とIT【前編】……山本了宣


◆書 評◆

門野博『刑事裁判は生きている・刑事事実認定の現在地』(日本評論社、2021年)
評者……水野智幸


◆判決録細目◆

民 事

◎債権の仮差押えを受けた仮差押債務者がその後に第三債務者との間で当該債権の金額を確認する旨の示談をした場合において、当該債権に対する差押命令及び転付命令を得た仮差押債権者が第三債務者に対して当該示談で確認された金額を超える額の請求をすることができないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判令3・1・12)

〇心房細動と診断してカテーテルアブレーション手術を実施中に当該患者が急性心タンポナーデの発症により低酸素脳症を起こして遷延性意識障害に陥り、その後入院治療を受けたものの死亡したことについて、心房細動の診断の医療水準が自然に発生した発作時における心電図を記録して心房細動を確認することが原則であったのに、電気生理学的検査の結果、誘発された不整脈が心房細動の波形を示したことをもって、心房細動であると確定判断した医師には過失があるとした事例
(東京高判令2・12・10〈参考原審:横浜地横須賀支判平30・3・26〉)

〇1 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律3条3項所定の責任制限阻却事由の立証責任の所在及び同事由の存否
 2 船舶が地方公共団体の管理する橋梁に接触し損傷を与えたことによって生じた損害に関する債権の制限債権該当性
(広島高決令2・2・21〈参考原審:広島地決平31・2・15〉)

▽任意後見契約に関する法律10条1項に定める「本人の利益のために特に必要があると認めるとき」に該当するとされた事例
(水戸家審令2・3・9)


知的財産権

〇登録意匠の要部を認定するに当たり、出願後の公知意匠(当該登録意匠を追随したようなものも含まれる)を観察することによっても、当該登録意匠に含まれる当該形態が、需要者の注意を引くかどうかを判断することができるとされた事例
(大阪高判令2・7・31〈参考原審:大阪地判令1・12・17〉)


労 働

◎1 無期契約労働者に対して退職金を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例(①事件)──メトロコマース事件
 2 無期契約労働者に対して賞与を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例(②事件)──大阪医科薬科大学事件
(①・②最三判令2・10・13)


▽退職願を書け、他の会社に行け等の言辞を含む長時間繰り返しの退職勧奨が不法行為に当たるとされた事例
(宇都宮地判令2・10・21)


刑 事

〇準強制わいせつ被告事件において、被害者は麻酔覚醒時のせん妄による幻覚を見ていた可能性があるとして、その証言の信用性には疑問を差し挟むことができ、アミラーゼ鑑定及びDNA定量検査の結果も信用性に疑義があり、信用性があるとしてもその証明力は十分なものといえないから、被害者証言の信用性を補強できず、また、それ自体から被告人の犯行を推認させるものともいえないとして被告人に無罪を宣告した原判決を破棄し、被害者が幻覚を見たという可能性はなく、被害者証言には高い信用性があり、アミラーゼ鑑定及びDNA型鑑定並びにDNA定量検査の結果は、被害者証言の信用性を補強する証明力を十分有しており、本件については合理的な疑いを容れない立証があるというべきであるとして被告人に有罪を言い渡した事例
(東京高判令2・7・13〈参考原審:東京地判平31・2・20本誌2426号105頁〉)


判例評論

27 憲法53条後段に基づく臨時会の召集
(那覇地判令2・6・10)……長谷部恭男

28 2筆の土地にまたがって建てられた1棟のマンションについて、その専有部分の区分所有者がこれらの敷地のうちの1筆についてのみ借地権を有する場合に、借地権が設定されていない敷地の所有者が、当該区分所有者に対し、建物の区分所有等に関する法律10条に基づく区分所有権の売渡請求権を行使できるとされた事例
(東京地判令1・12・11)……吉原知志

29 中間省略登記の方法による不動産の所有権移転登記の申請の委任を受けた司法書士に、当該登記の中間者との関係において、当該司法書士に正当に期待されていた役割の内容等について十分に審理することなく、直ちに注意義務違反があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最二判令2・3・6)……田中 洋

30 短文投稿サイト「Twitter」を管理運営する者に対する投稿記事の削除請求が棄却された事例──ツイッター投稿記事事件
(東京高判令2・6・29)……栗田昌裕
◆記 事◆

座談会 『お気の毒な弁護士』を読んで
 山浦 善樹  江川 紹子  治部れんげ  山内 久光  
杉浦ひとみ  山本 了宣  近松仁太郎 ほか


◆判例特報◆

◎市長が市の管理する都市公園内に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して同施設の敷地の使用料の全額を免除した行為が憲法20条3項に違反するとされた事例
──那覇孔子廟訴訟上告審判決(最大判令3・2・24)

▽1 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく被爆者健康手帳交付申請却下処分の取消し及び同交付の義務付けを求める訴訟において、訴訟の係属中に申請者が死亡した場合における訴訟承継の成否(積極)
 2 原子爆弾が投下された際及びその後において、いわゆる「黒い雨」を直接浴びるなどしたり、「黒い雨」降雨域で生活したりしていた者につき、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律27条所定の健康管理手当の支給対象となる11種類の障害を伴う疾病に罹患したことを要件として、同法1条3号の「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」に該当すると判断した事例
──「黒い雨」訴訟1審判決(広島地判令2・7・29)


◆判決録細目◆

行 政

▽市が火葬場建設のために土地所有者との間で締結した土地売買契約について、鑑定額の3倍以上である代金額があまりにも高額に過ぎるなどとして、市長の裁量権の範囲を逸脱したものであり、違法であると判断された事例
(奈良地判令2・7・21)

▽深夜、降雪による視界不良の中で死亡交通事故を起こした原告に対し、道路交通法70条の安全運転義務違反を理由としてされた運転免許取消処分について、当該事故の事実関係の下においては、処分理由として、安全運転義務違反と記載するのみでは、行政手続法14条1項本文の理由提示の要件を満たさないとして、前記処分を取り消した事例
(札幌地判令2・8・24)


民 事

▽申立人夫(カナダ国籍)と申立人妻(日本国籍)が、未成年者(日本国籍)を申立人らの特別養子とすることを求めた事案において、準拠法について、申立人夫との関係では反致により日本法が適用されるとし、申立人妻との関係でも日本法が適用されるとした上で、特別養子縁組の要件をいずれも満たしているとして、申立てを認容した事例
(東京家審令2・9・7)


刑 事

〇1 覚せい剤使用の事実につき、解離性同一性障害の影響による心神耗弱を認めた事例
 2 精神科医の診断に対する原判決の評価を批判し、完全責任能力を認めた原判決には事実誤認があるとして、被告人を一部執行猶予とした原判決を破棄して、被告人に対して、再度の全部執行猶予を付した事例
(大阪高判平31・3・27〈参考原審:大阪地判平30・12・4〉)
◆記 事◆

情報をめぐる現代の法的課題⑷
 オンライン・プラットフォームの統治論を目指して
 ──デジタル表現環境における「新たな統治者」の登場……水谷瑛嗣郎


◆書籍紹介◆

門口正人『裁判官のつぶやき』


◆判例特報◆

▽1 同性婚を認めていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定と憲法13条、14条1項及び24条
 2 同性婚を認めないことの違憲性が明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたって民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定の改廃等の措置を怠っていたと評価することはできないとして、立法不作為を理由とする国家賠償請求が棄却された事例
――同性婚訴訟札幌地裁判決(札幌地判令3・3・17)

解説・判決全文

参考論文
 同性婚をめぐる初の憲法判断とその影響……加藤丈晴


◆判決録細目◆

民 事

◎同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合における借主による充当の指定のない一部弁済と債務の承認(平成29年法律第44号による改正前の民法147条3号)による消滅時効の中断
(最三判令2・12・15)

◎公認会計士協会から上場会社監査事務所名簿への登録を認めない旨の決定を受けた公認会計士らにつき、その実施した監査手続が当該監査において識別すべきリスクに個別に対応したものであったか否か等の点を十分に検討することなく当該決定の前提となる監査の基準不適合の事実はないとして当該決定の開示の差止めを認めた原審の判断に違法があるとされた事例
(最二判令2・11・27)

▽宗教法人による排斥措置が違法であるとして損害賠償及び排斥措置の差止めを求めた原告の請求が、いずれも「法律上の訴訟」に当たらないとして却下された事例
(新潟地判令2・4・9)

▽「別れさせ工作委託契約」と称する契約等につき、その目的達成のために想定されていた方法が、人倫に反し関係者らの人格、尊厳を傷付ける方法や、関係者の意思に反してでも接触を図るような方法であったとは認められないこと、実際に実行された方法も女性が男性と食事をするなどというものであったことなど判示の事実関係の下では、公序良俗に反しないとされた事例
(大阪地判平30・8・29)


労 働

▽執行役員退任や役職定年に伴う賃金減額等の人事上の措置が有効とされた事例
(東京地判令2・8・28)

▽労働契約法18条1項に基づき無期転換した後の労働条件に関し、無期転換後の労働者に適用される就業規則が別途定められている場合において、当初から無期労働契約を締結している労働者に適用される就業規則が適用されないと判断された事例
(大阪地判令2・11・25)


刑 事

〇少年が、共犯少年らと共謀の上、深夜に一般民家に侵入し、現金等を強取するなどした強盗致傷等保護事件において、短期の処遇勧告を付すことは相当ではないとした上で少年を第1種少年院送致とした原決定につき、抗告を棄却した上で、少年には保護処分歴がないこと、少年の素行の乱れが比較的最近のものにとどまること、少年と両親の関係が良好であり、少年に両親の指導に従おうとする意欲が認められ、両親も指導への意欲を高めていることなどを指摘して、一般短期の処遇が相当と説示した事例
(東京高決令2・7・16)


判例評論

23 在外国民に次回の国民審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認の請求が認容された事例
(東京高判令2・6・25)……巽 智彦

24 人格権に基づき、恐喝事件及び同和利権問題に関与したこと並びに元暴力団構成員であったことが記載されたインターネット検索結果を削除するよう求める請求が、認められなかった事例
(大阪高判令1・5・24)……町村泰貴

25 家屋の評価の誤りに基づき固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段所定の除斥期間の起算点
(最三判令2・3・24)……手塚貴大

26 被用者が使用者の事業の執行について第3者に加えた損害を賠償した場合における使用者への求償(いわゆる逆求償)の可否
(最二判令2・2・28)……大内伸哉
◆記 事◆

政教分離訴訟の新たな展開
 ──孔子廟違憲判決②孔子廟違憲判決を受けて
 ──原告代理人による論稿……德永信一


◆判決録細目◆

行 政

〇県知事が、公有水面埋立法2条1項に基づく埋立免許を受けた電力会社からの同免許に係る工事竣功期間伸長等の許可申請に対する許否の判断を留保したことについて、同判断留保には違法性が認められず、判断留保中にされた公金の支出も違法とはいえないとされた事例
(広島高判令2・1・22)

▽双極性障害により厚生労働大臣から障害等級3級の状態に該当するとして同級の障害厚生年金を支給する旨の処分を受けた原告が、自身の状態は少なくとも障害等級2級に該当する程度であったとして、前記処分の取消しを求めた事案において、裁判所が原告の生活状況、傷病の治療、病状の経過、精神鑑定を踏まえ、原告の障害が障害等級2級に該当すると判断し、前記処分を取り消した事例
(大阪地判令2・6・3)


民 事

〇1 ヴィジュアル系ロックバンドとしてグループ名を冠して実演活動をしていた構成員らには、当該グループ名を使用することについて、各人に人格権に基づくパブリシティ権があるとした事例
 2 ヴィジュアル系ロックバンドとして実演活動をしていた構成員らが、音楽事務所との間で、実演活動上のグループ名でマネージメントの専属契約を締結していた場合において、当該契約が終了した後には、当該事務所には、当該グループ名の利用権がないとした事例
(東京高決令2・7・10)

〇夜間に漁港の岸壁から自動車が海中に転落して運転者が死亡した事故につき、急激かつ偶然な外来の事故とは認められないとした原審の判断が維持された事例
(東京高判令2・7・15)

〇民法750条及び戸籍法74条1号の各規定は憲法14条1項、24条、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約又は市民的及び政治的権利に関する国際規約に違反するものではなく、国会が前記各規定を改廃して選択的夫婦別氏制を導入しない立法不作為は国家賠償法上違法とはいえないとされた事例
(広島高判令2・9・16)

▽くも膜下出血のため大学病院に入院していた患者が、入院中に低酸素脳症をきたしていわゆる植物状態になり、その後に死亡したことについて、看護師に生体情報モニタのアラーム設定の確認が不十分であった過失があるとされた事例
(東京地判令2・6・4)


労 働

▽取締役の従業員(労働者)該当性
(東京地判令2・3・11)


刑 事

〇1 殺人被告事件において、覚醒剤精神病に罹患し、妄想や幻聴のあった被告人の行為について、心神耗弱を認定した原判決を破棄して、心神喪失による無罪を言い渡した事例
 2 責任能力の判断基準である行動制御能力について、犯行を行わないでいることができる能力であることを明示して、原判決の判断に事実誤認があるとした事例
(東京高判平31・4・24)


◆最高裁判例要旨(2021(令3)年3月分)
◆記 事◆

政教分離訴訟の新たな展開──孔子廟違憲判決①
 孔子廟違憲判決批評……江藤祥平


◆判決録細目◆

民 事

◎請負契約に基づく請負代金債権と同契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴の係属中における、前記本訴請求債権を自働債権とし前記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁の許否
(最二判令2・9・11)

〇平成16年以降に地下を100メートル以上掘削して新たに湧出させた温泉であり、再生手続における財産評価において温泉権が零円と評価され、温泉権を認める慣習法の証明がないなどの判示の事実関係の下においては、慣習法上の物権である温泉権は成立しないとされた事例
(東京高判令1・10・30〈参考原審:東京地判平30・12・12〉)

〇1 別居親の面会交流権が憲法上保障されているとはいえないとした事例
 2 別居親の面会交流権について立法措置を執らないことが、国家賠償法上、違法の評価を受けるものとはいえないとした事例
(東京高判令2・8・13〈参考原審:東京地判令1・11・22〉)

▽遺言書本文が封入された封筒の裏面に、被相続人がある相続人より先に死亡した場合の遺言書との文言が記載された遺言書について、当該遺言は被相続人の死亡時に当該相続人が生存していることを停止条件としたものであり、同相続人が被相続人の生前に死亡していたことにより条件が成就しないことが確定したとして、遺言書が効力を失ったとされた事例
(東京地判令2・7・13)

▽いわゆるあおり運転に殺人罪が適用された刑事事件における損害賠償命令に対する異議申立て後の民事事件において、被告に車両の衝突及び被害者の死亡結果に対する未必の故意が認められた事例
(大阪地堺支判令2・7・30)

▽1 石綿を含有する吹付けロックウールが施された総合体育館が遅くとも平成2年5月頃には通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになったとされた事例
 2 従業員が石綿粉じんにばく露して死亡したことについて、雇用主であるビルメンテナンス会社に安全配慮義務違反が認められた事例
(福岡地判令2・9・16)

▽1 ドキュメンタリー映画の製作会社に報道の自由が認められた事例
 2 沖縄県議会の本会議の撮影を許可制とする沖縄県議会傍聴規則15条が地方自治法115条、憲法94条、21条に違反しないとされた事例
 3 原告が記者クラブに未加入であったことを理由に議長が本会議の撮影及び録音を不許可としたことが、憲法14条、21条に違反しないとされた事例
(那覇地判令2・8・5)


刑 事

〇窃盗未遂の被害者の名前を別の者の名前に変更する訴因変更を許さなかった原審の措置に訴訟手続の法令違反があるとして破棄し、原審に差し戻した事例
(東京高判令2・2・5〈参考原審:東京地判令1・10・4〉)
◆記 事◆

離別後の子の養育について
 ─英国司法省の報告書を中心に……藤村賢訓・小川富之


◆書 評◆

小山剛=新井誠編
『イレズミと法──大阪タトゥー裁判から考える』(尚学社、2020年)
評者……松尾 陽


◆判例特報◆

〇平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震が引き起こした津波の影響で発生した福島第一原発事故により旧居住地からの避難を余儀なくされるなどした福島県及び隣接県の住民である1審原告ら(提訴時3864人)が、旧居住地の空間線量率を本件事故前の値以下にすること(原状回復請求)及び平穏生活権侵害に基づく慰謝料等を求めた事案につき、原状回復請求は却下したものの、1審被告東京電力に対して原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づく損害賠償責任を認めるとともに、1審被告国に対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を認め、1審原告らの主張する損害の一部につき、1審被告らに対し連帯して支払うよう命じた事例
──東電福島第一原発事故避難者訴訟(福島県・隣接県)仙台高裁判決
(仙台高判令2・9・30〈参考原審:福島地判平29・10・10本誌2356号3頁〉)

解説
判決全文
参考論文
 仙台高裁令和2年9月30日判決の損害論
 ──原賠審基準の合理性と低線量放射線の危険性について……大塚正之


◆判例評論◆

18 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律附則19条1項の規定と憲法22条1項
(①東京地判令1・12・16、②大阪地判令2・2・25)……松本哲治

19 周辺住民らが開発工事の差止め等を求めた事案において、原告らの主張するまちづくり権について、法的な権利性を有するものとは認められないなどとして、請求が棄却された事例
(神戸地尼崎支判令1・12・17)……牛尾洋也

20 1 不明確性を有する契約条項と消費者契約法12条3項における消費者契約の不当条項該当性の判断の在り方
  2 「他の会員に不当に迷惑をかけたと当社が判断した場合」などに会員資格取消措置等をとることができ、当該措置により会員に損害が生じたとしても当社は一切の損害を賠償しない旨を定める条項が、消費者契約法12条3項の適用上、同法8条1項1号及び3号の各前段に該当するとされた事例
(さいたま地判令2・2・5)……上杉めぐみ

21 婚姻費用分担審判申立て後に離婚が成立した場合の婚姻費用分担請求の可否
(最一決令2・1・23)……櫻井弘晃

22 ハーグ条約実施法の規定する子の返還申立事件に係る家事調停における子を返還する旨の定めと同法117条1項の類推適用
(最一決令2・4・16)……小池 泰
◆記 事◆

裁判制度のパラダイムシフト─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(5)
 ──憲法裁判において最高裁判所をサポートするシステムその1
 ──アミカスキュリィ……笹田栄司


◆書 評◆

水町勇一郎『詳解 労働法』(東京大学出版会、2019年)
評者……大内伸哉


◆判決録細目◆

行 政

▽人工呼吸器による呼吸管理等の医療的ケアが必要な児童につき、地域の小学校に就学させたいとの父母の意向に反する、県教育委員会による特別支援学校への就学通知が違法でないとされた事例
(横浜地判令2・3・18)


民 事

〇売主が買主に対し、隣地所有者の立会いを得た上で資格のある者が作成した確定測量図を交付する旨約した土地の売買契約において、一部隣地所有者の署名押印がない確定測量図を交付したことが、約定の義務の履行とは認められないとされた事例
(名古屋高判令1・8・30)

〇先天性の脳性まひにより身体障害者福祉法別表第1級の認定を受け、特別支援学校に在籍していた生徒が、給食介助中の誤嚥により窒息状態に陥り、低酸素脳症に由来する重篤な脳障害を後遺した事故について、既存障害と新たに生じた障害とが、日本スポーツ振興センターが行う災害共済給付制度における「同一部位についての障害」に該当し、かつ、同一の障害等級となることを理由として、障害見舞金の支払請求を棄却した事例
(福岡高判令2・7・6)

▽1 被相続人の所有地について生前締結された賃貸借契約の初回の賃料支払日の到来以前に被相続人が死亡した事案において、同賃貸借契約が租税特別措置法施行令40条の2第1項にいう準事業に当たるとして、租税特別措置法69条の4の小規模宅地等の特例の適用があると判断した事例
 2 税理士法人が相続税申告の代理業務に係る委任契約上設けていた損害賠償責任を制限する旨の条項について、消費者契約法10条後段に反し無効と判断した事例
(横浜地判令2・6・11)


労 働

▽1 対外秘である行内通達等を無断で多数持ち出し、出版社等に漏えいしたことを理由とする銀行員への懲戒解雇が有効とされた事例
 2 前記懲戒解雇を理由とする退職金の不支給について、7割を不支給とする限度で合理性を有するとされた事例
(東京地判令2・1・29)


刑 事

〇協議・合意制度に基づく合意内容書面の信用性判断のための協議・合意に関して作成した文書の類型証拠開示を認めなかった事例
(東京高決令1・12・13)


◆最高裁判例要旨(2021(令3)年2月分)
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