判例時報 発売日・バックナンバー

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◆記 事◆

裁判員裁判の解剖──制度と運用に関する批判的検証(5)
 取調べの録音・録画の証拠利用をめぐって……大村泰平


◆判決録細目◆

民 事

◎国が、津波による原子力発電所の事故を防ぐために電気事業法(平成24年法律第47号による改正前のもの)40条に基づく規制権限を行使しなかったことを理由として国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うとはいえないとされた事例(①事件、②事件)
(①、②最二判令4・6・17)

◎被害者の有する自動車損害賠償保障法16条1項の規定による請求権の額と労働者災害補償保険法12条の4第1項により国に移転した前記請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超える場合において、自動車損害賠償責任保険の保険会社が国の前記請求権の行使を受けて国に対してした支払の効力
(最一判令4・7・14)


知的財産権

▽特許権移転の際の許諾契約上の許諾者たる地位の承継を総合考慮のもとで肯定した事例
(大阪地判令3・3・11)


商 事

▽第三者による詐欺行為によって会社が不動産の売買代金名下に金銭をだまし取られた取引に関する取締役の判断について、善管注意義務ないし忠実義務に違反する任務懈怠があるとは認められなかった事例
(大阪地判令4・5・20)


刑 事

○共犯者らが共謀の上、他人の親族等になりすまし、被害者から現金をだまし取ろうとしたが未遂に終わった際、少年が見張りをするなどして幇助した詐欺未遂幇助保護事件において、少年を第1種少年院に送致し、収容期間を2年間と定めた原決定について、その処遇判断に誤りはないとして、抗告を棄却した事例
(東京高決令4・6・3)


◆最高裁判例要旨(2022(令4)年10月分)
◆記 事◆

裁判制度のパラダイムシフト ─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(10・完)
 行政裁判における「実効的権利救済」のインパクト
 ──難民不認定処分を受けた不法滞在者の強制送還と裁判を受ける権利……笹田栄司


◆判決録細目◆

行 政

◎固定資産課税台帳に登録された土地の価格についての審査の申出を棄却する旨の審査の決定をした固定資産評価審査委員会の委員に職務上の注意義務違反が認められないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判令4・9・8)

〇1 道路法39条1項に基づく道路占用料の納入告知の一部につき、長年にわたって占用料が免除されてきた経緯に照らせば信義則に反する違法な行政処分であるとされた事例
 2 道路法39条1項に基づく道路占用料の納入告知の一部につき、長年にわたって占用料が免除されてきた経緯を踏まえても適法な行政処分であるとされた事例
(大阪高判令3・12・14〈参考原審:大阪地判令1・7・31本誌2435号31頁〉)


民 事

◎国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律134条に基づく間接強制の方法による子の返還の強制執行の申立てが不適法であるとされた事例
(最三決令4・6・21)

〇私立高等学校3年の男子生徒が同級生らによるいじめ行為によって自殺したことについて、同校の教員に生徒の自殺についての予見可能性があるとして安全配慮義務違反を認め、学校設置者に対する損害賠償請求が認容された事例
(福岡高判令3・9・30〈参考原審:福岡地判令3・1・22〉)

〇事故より前に2度意識消失の発作を起こし、かねて前記事故発生日の2日後に大学病院での診察や検査が予定されていた状況の下で、意識消失の原因が判明するまで自動車の運転を一時的に避けるべき注意義務に反して自動車を運転した過失が認められた事例
(仙台高判令4・2・22〈参考原審:仙台地判令3・9・29〉)

▽航空大学校受験を目的とする予備校の受講生が同予備校の教材をネットで売却したことが受講規約の譲渡禁止条項に違反するとして、同予備校が前記受講生に対し前記規約の違約金条項に基づき500万円を請求した事案につき、前記規約における譲渡禁止条項及び違約金条項は消費者契約法10条に該当するとはいえないが、違約金額は高額に過ぎ公序良俗違反であるとして100万円の限度で有効と認められた事例
(東京地判令4・2・28)

▽てんかんの病歴がある運転者が、運転中に局所けいれんを起こしたため下り坂の中腹でフットブレーキを踏んで車を路側帯に停車させたが、その後けいれんが全身に及びフットブレーキを踏み続けることができなくなったため車が発進し、前方を走行中の貨物自動車に接触した事故において、前記停車の時点で、運転者には、意識を消失してフットブレーキを踏み続けることができなくなることの予見が可能であったから、エンジンを停止するなど車の逸走を確実に防止する措置を講ずるべき義務を怠った過失があるとされた事例
(長野地判令4・2・8)

▽申立人である子(フィリピン国籍)が、相手方(日本国籍)に認知を求めた事案において、子の母(フィリピン国籍)の前夫(フィリピン国籍)と申立人との間の親子関係を否定した上で、申立人が相手方の子であることを認知する旨の合意に相当する審判がなされた事例
(東京家審令4・1・19)


刑 事

◎不正競争防止法(平成27年法律第54号による改正前のもの)2条1項10号にいう「技術的制限手段の効果を妨げることにより影像の視聴を可能とする機能を有するプログラム」に当たるとされた事例
(最一決令3・3・1)


◆判例評論◆

1 不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金を民法405条の適用または類推適用により元本に組み入れることの可否─約定利息・法定利息・遅延利息の法的性質論を兼ねて
(最三判令4・1・18)……大久保邦彦

2 大学の医学部入学試験において出願者の属性(女性、浪人生及び高校学校等コード51000以上の者)を不利に扱う得点調整は違法であり、同大学を運営する学校法人は入学試験の評価において属性を考慮する旨を告知する信義則上の義務を負うものとし、受験生の納付した入学検定料、受験票送料、送金手数料、出願書類郵送料、及び特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額について損害を認め、旅費及び宿泊費については支配性の要件を欠くとして訴えを却下した事例
(東京地判令2・3・6)……秦 公正

3 原画に描かれたアナログ時計の形象が応用美術に当たるとした上で、分離可能性説によってその著作物性を否定した事例
(大阪地判令3・6・24)……奥邨弘司
◆記 事◆

最高裁判所の越権行為に対する規律と是正
 ──福島原発避難者訴訟最高裁判決の民事手続上の問題点……長島光一

情報をめぐる現代の法的課題(11・完)
 インターネット空間における「法執行の民間化」
 ──ドイツの「ネットワーク執行法」執行状況の調査をふまえて……毛利 透


◆判決録細目◆

行 政

▽生活扶助基準の引下げ等を内容とする「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)の改定が生活保護法3条、8条2項の規定に違反し違法であるとされた事例
(東京地判令4・6・24)


民 事

◎会社法423条1項に基づく損害賠償請求訴訟において原告の設置した取締役責任調査委員会の委員であった弁護士が原告の訴訟代理人として行う訴訟行為を弁護士法25条2号及び4号の類推適用により排除することはできないとされた事例
(最一決令4・6・27)

◎宮古島市水道事業給水条例(平成17年宮古島市条例第215号)16条3項の趣旨
(最三判令4・7・19)

◎建材メーカーが、石綿含有建材の製造販売に当たり、当該建材が使用される建物の解体作業に従事する者に対し、当該建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示すべき義務を負っていたとはいえないとされた事例
(最二判令4・6・3)

▽元妻である被告が調停に代わる審判によって定められた元夫である原告による子の監護の実施を妨げたことにつき、子の福祉の観点から正当事由があるものと認めることはできず、故意による不法行為が成立するとされた事例
(東京地判令3・11・30)


商 事

〇従業員の長時間労働に起因する死亡につき、いわゆる名目的代表取締役の会社法429条1項に基づく損害賠償責任を肯定した事例
(東京高判令4・3・10〈参考原審:東京地判令3・4・28〉)


労 働

〇山形県内の果物生産会社で農作業に従事する労働者が、さくらんぼ収穫に向けた同社の決起大会での腕相撲により右肘骨折等のけがをしたことについて、労働者が業務上負傷した場合にあたると認められた事例
(仙台高判令3・12・2〈参考原審:山形地判令3・7・13〉)

▽1 有限会社とその代表取締役の親族であり監査役として登記された者との間に労働契約の成立を認めた事例
 2 使用者における違法行為を警察に告発したこと等を理由とする減給処分及び普通解雇処分がいずれも無効とされた事例
 3 使用者が警察の捜査を受けたことを契機とする営業停止に伴う整理解雇が無効とされた事例
 4 無効な解雇がされた後に労務の提供ができなかったのは使用者の責めに帰すべき事由によるものであり、その期間の労働契約に基づく賃金請求権が失われないとした事例
(横浜地判令4・4・14)


刑 事

◎管轄移転の請求が訴訟を遅延させる目的のみでされたことが明らかである場合における刑事訴訟規則6条による訴訟手続の停止の要否
(最三決令3・12・10)

〇実刑判決確定後に約3か月間逃亡した事案の保釈保証金没取請求について、保釈保証金の実質的納付者の事情や刑の執行が開始されたことなどを指摘して保釈保証金の一部を没取した原決定について、本件の没取事由によれば、特に事情がない限り保釈保証金は全額没取すべきであり、原決定が考慮した事情は、没取額を減額する方向の事情ではないか、一部没取が相当な理由が示されていないとして、これを取り消し、保釈保証金の全額を没取した事例
(東京高決令4・1・24) 

▽少年が、保護観察所長の警告を受けたにもかかわらず、保護観察所長から許可を受けた住居に居住しなかったという施設送致申請事件において、遵守事項違反の程度が重く、少年の問題性の根深さや保護環境等を考慮すると、保護観察によっては少年の改善更生を図ることはできないとして、少年を第1種少年院送致とした事例
(名古屋家決令3・12・15)
◆記 事◆

未遂犯の構造をめぐる近時の議論について(再論)……小林憲太郎


◆判決録細目◆

行 政

〇国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(平成24年法律第99号)は、憲法25条、13条、29条1項、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)2条、9条、11条1項に違反しないとした事例
(高松高判令4・5・26〈参考原審:徳島地判令2・12・23〉) 

〇幼少期に発行された身体障害者手帳が国民年金法施行規則(平成27年厚生労働省令第144号による改正前のもの)31条2項6号の「障害の原因となつた疾病又は負傷に係る初診日(疾病又は負傷が昭和61年4月1日前に発したものであるときは、当該疾病又は負傷が発した日を含む。)を明らかにすることができる書類」に当たるものとされた事例
(名古屋高金沢支判令3・9・15〈参考原審:金沢地判令2・11・13〉)


民 事

〇弁護士会が所属弁護士に対してした業務停止1月の懲戒処分が違法であったとして国家賠償法に基づく損害賠償請求を認容した原判決が取り消され、同請求が棄却された事例
(東京高判令4・4・14〈参考原審:東京地判令3・1・26本誌2512号48頁〉)


▽被告が開設する病院において、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を受けた84歳の男性が手術の翌日に死亡した事案につき、執刀医に適応外であるESDを実施した注意義務違反があったとして、被告に対する使用者責任に基づく損害賠償請求を認容した事例
(東京地判令3・8・27)


▽禁忌であった血栓溶解剤を投与したことにより患者が死亡した事案において、担当医師の死亡診断書の記載、担当医師が異状死の届出をしなかったこと、病院管理者が医療法上の医療事故として報告をしなかったことにつき、遺族の権利利益を違法に侵害したとは認められないとされた事例
(大阪地判令4・4・15)


刑 事

▽いわゆる特殊詐欺等の事案において、包括的共謀の成立が認められなかった事例
(東京地判令3・12・7)


判例評論

46 廃棄物処分場の立地自治体による、一般廃棄物の搬入及び処分を委託した者への事務管理に基づく有益費償還請求が認められた事例
(福井地判令3・3・29)……奥田進一

47 相続税法32条1項に規定する更正の請求と納税者の権利救済
(最一判令3・6・24)……谷口智紀

48 1 電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者と民事訴訟法197条1項2号の類推適用
  2 電気通信事業者は、その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名、住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され、又は記録された文書又は準文書を検証の目的として提示する義務を負うか
(最一決令3・3・18)……安永祐司


【別冊付録】

判例時報総索引2499号~2535号(2022年版)
◆記 事◆

わが国における近年の責任構想について(再論)……小林憲太郎


◆判決録細目◆

民 事

〇消火器の訪問販売業者に対し、契約書用紙とパンフレットの裏面に記載した契約条項の全条項の使用差止めを求めた適格消費者団体の請求が認められた事例
(仙台高判令3・12・16〈参考原審:仙台地判令3・3・30本誌2538号44頁〉)

▽マンションの専有部分での住宅以外の利用を禁止しているマンション管理規約の趣旨及び目的等に照らして、専有部分を障害者グループホームとして利用することが、前記マンション管理規約の規定に違反し、建物の区分所有等に関する法律6条3項、1項の区分所有者の共同の利益を侵害する行為に該当し、かつ原告による本件の訴訟提起等が法令等の規定する不当な差別に該当しないと判断して、原告が請求していた被告による障害者グループホームとしての利用の停止及び提訴に要した弁護士費用等の支払を認めた事例
(大阪地判令4・1・20)

▽フランス人の夫と日本で同居していた日本人の妻が、子らを連れて別居し、その後、フランスの裁判所が「監督責任を持つ者からの子供の略奪」などの罪状で妻を被疑者とする逮捕状を発布したという事実関係の下で、子らの親権者を妻と指定した事例
(東京家判令4・7・7)

▽地方議会議員の地方議会内における発言及び地方議会外におけるSNS上の発言について、国家賠償法上の違法性が認められた事例
(横浜地判令3・12・24)


知的財産権

▽特定農林水産物等の名称の保護に関する法律12条1項に基づく特定農林水産物等の登録に関する処分の取消しを求める訴えが、行政事件訴訟法14条1項ただし書にいう「正当な理由」があるとはいえないとされた事例
(東京地判令4・6・28)


労 働

▽大学で語学の授業を担当する非常勤講師につき、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律15条の2第1項1号の「研究者」該当性を否定し、労働契約法18条に基づく無期労働契約への転換を認めた事例
(東京地判令3・12・16)


刑 事

〇現金等の回収役であった被告人と共犯者との間で共謀がなされ、これに基づいて実行役が被害者からキャッシュカード等を詐取し、それを用いて現金を引き出したという詐欺、窃盗の事案合計17件のうち、10件について、被告人のアリバイの成立が否定できず回収役であったとは認められない、あるいは回収役であったが共謀が認められないとして無罪とし、7件について、犯罪の成立を認めた1審判決の事実認定を支持した事例
(仙台高判令3・12・16)


◆最高裁判例要旨(2022(令4)年8・9月分)
◆記 事◆

情報をめぐる現代の法的課題(10)
 ツイッター投稿記事削除請求事件──最二判令4・6・24 ……宮下 紘


◆判決録◆

民 事

〇当事者双方とも年金収入がある婚姻費用分担請求事件において、いわゆる標準的算定方式の適用にあたって、年金収入を給与収入に換算する場合には、職業費がかかっていないことから修正計算をした一方で、事業収入に換算する場合には、事業収入は既に職業費に相当する費用を控除済みであるとして、修正計算は必要ないとした事例
(東京高決令4・3・17)

〇遺言者の財産を特定の者に包括遺贈する旨の遺言において、遺言執行者に預貯金の解約・払戻しの権限が付与されている場合、法定相続人の一部の者が遺留分減殺請求権を行使したとしても、遺言執行者は単独で貯金債権の全額の払戻しを請求することができるとされた事例
(高松高判令3・6・4)

〇記名式定期預金及び記名式定期積金の預金債権が預金名義人に帰属するとされ、これらの払戻しが預金名義人の意思に基づかずにされたもので無効であるとされた事例
(大阪高判令3・10・8)

▽インターネットオークションにおける物品の売買取引において落札時に売買契約が成立したとされた事例
(横浜地判令4・6・17)

▽陸上自衛隊の教育課程に入校した自衛官が自殺したことについて、その指導に当たった自衛官らが国の履行補助者としての安全配慮義務に違反したことが認められた事例
(熊本地判令4・1・19)

▽石綿製品工場における石綿粉じん曝露のために石綿肺に罹患し、その後死亡した男性について、生前受けていたじん肺法に基づく管理区分の決定よりも重い管理区分に相当する石綿肺の病態を発症していたと認定して、相続人らの国家賠償請求を認容した事例
(岐阜地判令3・12・10)


労 働

〇1 原告の主張が審査請求と取消訴訟とで異なるが、審査請求前置の要件を満たすとされた事例
 2 遺族補償給付等不支給処分に対する取消訴訟において、労働者が特異的な形態学的変化のない心臓性突然死により死亡したものと認定された事例
(名古屋高金沢支判令3・11・10)


刑 事

〇強盗殺人等の犯行時、被告人は、その主人格が別人格をコントロールできない状態にあったが、主として別人格が支配している精神状態においても、目的に従って合理的な行動をしていること、状況を正しく認識し、行動のコントロールができていたという鑑定人の意見に基づき、被告人の完全責任能力を認めた原判決を是認した事例
(大阪高判令1・12・12)
◆判決録細目◆

行 政

◎特定商品等の預託等取引契約に関する法律(平成21年法律第49号による改正前のもの)違反及び不当景品類及び不当表示防止法(平成26年法律第71号による改正前のもの)違反に係る調査の結果に関する情報が行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成26年法律第67号による改正前のもの)5条6号イ所定の不開示情報に該当しないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判令4・5・17)

◎1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義
 2 組織再編成に係る一連の取引の一環として行われた金銭の借入れが法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらないとされた事例
(最一判令4・4・21)

▽バハイ教の教義に基づき活動する宗教法人が本部事務所として使用している建物のうち管理人が起居している管理人室が、地方税法348条2項3号の「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物」に該当するとされた事例
(東京地判令3・9・21)


民 事

〇遺産分割の審判を本案とする審判前の保全処分における被保全権利は、既存の権利ではなく、本案の終局審判で形成される具体的権利であると解され、同保全処分の発令には本案の終局審判で当該係争物の給付が命ぜられる見込みが一応あるといえることの疎明を要するとした事例
(東京高決令3・4・15)

〇定期賃貸借契約において、賃借人に約定の契約解除事由があり、それにより賃貸人が契約解除した場合において、賃貸人の約定の違約金条項に基づく違約金の請求が信義則違反ないし権利の濫用に当たるとして、その一部を制限した事例
(高松高判令3・3・17〈参考原審:高松地判平31・3・28〉)

▽指定暴力団による暴力的不法行為が、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律31条の2の「威力利用資金獲得行為」に該当するなどとして、同条に基づく指定暴力団の代表者等の損害賠償責任を認めた事例
(福岡地判令4・1・31)


商 事

〇1 ベトナムに子会社を設立する作業の一環として同子会社用の機械設備の購入を行った代表取締役につき、大口受注先から技術課題を指摘され、技術レベルが改善されなければ製品の発注を大幅に減少させることの予告を受けるとともに、ベトナム進出について消極的意見を示されるなどの事情の下では、財務上及び技術上の課題を踏まえて取締役会を開催し、ベトナム進出に関する具体的な準備作業を一時中止すべき善管注意義務があるのに、それを怠った違反があるとした事例
 2 代表取締役による自らの役員報酬の増額について、会社に役員報酬を増額するような業績の向上や経営状況の改善があったとは認められないこと、適切なガバナンスが効きにくい状況を作出した上でこれを利用して自らの報酬額を増額したこと、その増額の割合も他の取締役が3~4パーセントであるのに対し、25パーセントであることなどの事情の下では、取締役としての善管注意義務に違反するとした事例
(東京高判令3・9・28〈参考原審:長野地上田支判令2・3・30〉)


刑 事

◎生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患した幼年の被害者の治療をその両親から依頼された者が、両親に指示してインスリンの投与をさせず、被害者が死亡した場合について、母親を道具として利用するとともに不保護の故意のある父親と共謀した殺人罪が成立するとされた事例
(最二決令2・8・24)

▽少年が、共謀の上、被害者に対し、暴行を加え、現金を強取して傷害を負わせるなどした強盗致傷、強盗及びぐ犯保護事件において、ぐ犯事実は強盗致傷及び強盗の非行に吸収されるとした上で、試験観察により少年の問題性の根深さやその矯正の難しさが浮き彫りになったこと等を指摘し、少年を第1種少年院送致とした事例
(東京家決令4・1・13)


判例評論

42 家賃債務保証業者に対する消費者契約法に基づく差止請求の可否
(大阪高判令3・3・5)……山本弘明

43 弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条に違反する訴訟行為につき、相手方である当事者がその行為の排除を求めることは認められないとした事例
(最二決令3・4・14)……石田京子

44 債務者の受給年金等の振込先口座の預金債権を差し押さえ、これを取り立てた債権者が、その取り立てた金額の不当利得返還義務を負うことを認めた事例
(神戸地尼崎支判令3・8・2)……吉田純平

45 民法上の配偶者が中小企業退職金共済法14条1項1号及び企業年金等規約にいう配偶者に当たらない場合
(最一判令3・3・25)……丸谷浩介
◆記 事◆

刑事責任能力の本質とその具体的判断……安田拓人


◆判決録細目◆

行 政

▽市の所有・賃貸する土地について、賃借人に対する地方自治法238条の5第4項に基づく賃貸借契約の一部解除が認められた事例
(大阪地判令3・10・29)


民 事

〇会社の取締役責任調査委員会の委員を担当した弁護士らが、同委員会の調査結果に基づき、取締役であった者に対して提起した損害賠償請求事件において、当該弁護士らが会社の訴訟代理人として訴訟行為を行うことが、弁護士法25条2号、4号に違反するとして、その類推適用により当該弁護士らの訴訟行為を排除した事例
(大阪高決令3・12・22〈参考原審:大阪地決令3・3・26〉)

▽東日本高速道路株式会社の管理する高速道路の損傷又は汚損について事実的因果関係上の原因のある高速道路利用者は、同社の定める供用約款の規定に基づいて、同社に対し原因者負担金の支払義務を負うとして、損傷等の復旧に要する費用額の支払を命じた事例
(東京地判令3・12・3)

▽事業者向けファクタリング業等を目的とする会社からの債権の売却代金の交付が「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付」に該当しないとして、不当利得返還請求を棄却した事例
(東京地判令3・12・15)

▽ある事業者が消費者との間で締結していた消火器のリース契約の契約条項の一部は消費者契約法8条ないし10条により無効であり、特定商取引に関する法律10条1項3号及び4号に違反し、同事業者の勧誘行為は同法58条の18第1項1号ハに該当し、同事業者の表示は不当景品類及び不当表示防止法30条1項1号及び2号に該当するとして、前記契約条項の一部の差止め及び同条項が記載された契約書用紙の破棄、前記勧誘行為の差止め及び同勧誘行為が記載された文書等の破棄並びに前記表示の差止めが認められた事例
(仙台地判令3・3・30)


知的財産権

〇1 意匠の類否判断にあたっては対比する意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様を全体的に観察するとされた事例
 2 データ記憶機のケースは、データ記憶機と同一又は類似する物品と認めることはできないとされた事例
 3 意匠法39条2項の適用における推定覆滅に係る部分については同条3項が適用されるとされた事例
(大阪高判令3・2・18〈参考原審:大阪地判令2・5・28〉)


商 事

▽金融商品取引業者である証券会社に原告らが預託した顧客資産の分別管理義務違反は認められないとして、原告らの被告(投資者保護基金)に対する補償金請求を棄却した事例
(東京地判令3・9・29)


刑 事

▽「人又は車の通行を妨害する目的」(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条4号)とは、人又は車の安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか、危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに、人又は車の自由かつ安全な通行を妨害する可能性があることを認識しながら、あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当であるとされた事例
(金沢地判令3・12・7)
◆記 事◆

法律家による刑事責任能力判断のための機序読解方法論
 ──8ステップ構造モデル理論を超えて……岡田幸之

コラム 裁判員裁判の解剖──番外編
 裁判員は常識を述べているか……大宮徳次郎


◆判決録細目◆

行 政

◎不当景品類及び不当表示防止法7条2項と憲法21条1項、22条1項
(最三判令4・3・8)


民 事

◎被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が、被害者との間でいわゆる人傷一括払合意をし、前記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けた場合において、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から前記損害賠償額の支払金相当額を全額控除することはできないとされた事例
(最一判令4・3・24)

〇相手方(妻)が抗告人(夫)に対し、婚姻費用の分担金の支払を求めた事案において、婚姻費用分担額の算定に当たっては生活保護費を収入と評価することはできないとし、相手方の病歴や障害等級、就労実績、医師の見解、現在の状況等に鑑みて、現時点においては、相手方に潜在的稼働能力があるとは認められないとして、抗告人に婚姻費用の分担金の支払を命じることは相当であるとした事例
(東京高決令4・2・4〈参考原審:さいたま地越谷支審令3・10・21〉)

▽盗取されたキャッシュカードを用いて行われた現金自動支払機による預金の払戻しが預金者の「重大な過失」(偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律5条3項1号イ)により行われたものであるとして、当該預金者から金融機関に対する同条に基づく補填金支払請求が棄却された事例
(東京地判令3・2・19)

▽原告が、学校法人の理事長であった被告らにおいて、同学校法人には、当時、小学校の新築工事の請負契約の報酬を支払う能力がなく、同報酬を支払う意思もないのに、これがあるかのように装い、原告を欺罔して工事の請負契約を締結させたことが詐欺に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案において、被告らは資金の調達方法を偽ったにとどまり、同学校法人の前記請負契約締結当時の資力に照らせば、請負報酬を支払う意思も能力もなかったとはいえず、被告らにつき欺罔行為も詐欺の故意も認められない等として原告の請求が棄却された事例
(大阪地判令3・8・24)

▽1 同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定と憲法13条、14条1項及び24条
 2 同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定を改廃しないことが国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められないとして、立法不作為を理由とする国家賠償請求が棄却された事例
(大阪地判令4・6・20)


刑 事

〇店舗内において女性のスカートの中を撮影することを企図して、小型カメラでその臀部等を約5秒間動画で撮影し、さらに、スカートの裾と同じ高さでその下半身に向けて同カメラを構えるなどした行為が東京都迷惑防止条例違反に当たるとされた事例
(東京高判令4・1・12〈参考原審:東京地立川支判令3・1・15〉)

▽統合失調症に罹患していた被告人が、実兄である被害者に対し、その胸部等を包丁で多数回突き刺すなどして死亡させたという殺人の事案において、責任能力については心神耗弱であることに争いがなかったが、詳細に説示を加えた上で心神耗弱の認定をした事例
(岡山地判令3・11・29)

▽コンビニエンスストアの男性店員である被告人が客として同店を訪れた男子小学生2名の臀部を軽く叩いた行為が兵庫県迷惑防止条例にいう「卑わいな言動」に該当しないとして無罪を言い渡した事例
(神戸地判令3・11・30)
◆記 事◆

裁判員裁判の解剖──制度と運用に関する批判的検証

 ⑴ 量刑理論と量刑評議の在り方……福崎伸一郎

 ⑵ 裁判員裁判における刺激証拠に関する運用……今井輝幸

 ⑶ 共同正犯のメルクマールについて……小林憲太郎

 ⑷ 裁判員裁判時代の公判──訴訟指揮上の諸懸念……清野憲一


◆判例特報◆

◎1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことと憲法15条1項、79条2項、3項
 2 国が在外国民に対して次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認を求める訴えの適否
 3 国会において在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとされた事例
――在外邦人国民審査権行使制限憲法適合性訴訟最高裁大法廷判決
(最大判令4・5・25)


参考論文

在外邦人最高裁裁判官国民審査訴訟最高裁判決私的傍論的補足見解……君塚正臣


◆判決録細目◆

民 事

〇被相続人を保険契約者兼被保険者とし、共同相続人の1人を死亡保険金の受取人とする生命保険契約に基づく死亡保険金請求権について、民法903条の類推適用による特別受益に準じた持戻しを否定した事例
(広島高決令4・2・25〈参考原審:広島家審令3・12・17〉)

〇1 県議会の本会議の撮影を許可制とする規則の地方自治法115条1項、憲法21条1項適合性
 2 議会記者クラブに所属しないドキュメンタリー映画の製作会社に対する本会議の撮影不許可処分に、憲法14条1項・21条1項違反、裁量権の逸脱・濫用の違法がないとされた事例
(福岡高那覇支判令3・1・21〈参考原審:那覇地判令2・8・5本誌2485号80頁〉)

▽高校在学中の生徒による自殺は、他の生徒のいじめが主たる原因となって生じたものであるとして、独立行政法人日本スポーツ振興センター法に基づく災害共済給付金請求を認容するとともに、口頭弁論終結時の翌日から遅延損害金請求を認容した事例
(福岡地判令3・11・25)


労 働

〇期間付きで雇用された公立図書館の館長が労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)に該当するとされた事例
(福岡高判令3・12・9〈参考原審:福岡地田川支判令3・3・17〉)


刑 事

▽拘置所長がした死刑確定者の信書発受の不許可処分が違法とされた事例
(名古屋地判令3・9・21)

▽児童自立支援施設入所中の少年が、保護者の正当な監督に服さず、施設職員に傷害を負わせるなどし、将来においても罪を犯すおそれがあるというぐ犯保護事件及び強制的措置許可申請事件において、前者について少年を児童自立支援施設に送致するとともに、後者について事件を児童相談所長に送致し、強制的措置を許可した事例
(千葉家決令4・3・29)


判例評論

38 特別区議会議員選挙に係る当選人甲の当選無効の決定の取消しを求める請求及び同決定に対する審査の申立てを棄却するとの裁決の取消しを求める請求と当選人乙の当選無効を求める請求とでは訴えで主張する利益が共通であるとはいえないとされた事例
(最三決令3・4・27)……河野憲一郎

39 組立保険における損害の評価
──約款における「損害発生直前の状態に復旧するために直接要する」費用(復旧費)の解釈
(福岡高宮崎支判令2・7・8)……土岐孝宏

40 民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合に、その弁済が前記部分に係る債権に充当されたものとして前記判決についての執行判決をすることの可否
(最三判令3・5・25)……芳賀雅顯

41 株式買取請求を行い、仮払いを受けた者が、株主総会議事録閲覧請求をした場合における「債権者」該当性
(最二判令3・7・5)……松嶋隆弘
◆記 事◆

コロナ禍社会における法的諸問題(23)
 韓国・フランスの行政救済事例から……小林久起

再審における「明白性」の考え方
 ──大崎事件第4次再審請求棄却決定に接して……木谷 明

書 評
松原芳博=杉本一敏編『判例特別刑法 第4集』(日本評論社、2022)
評者……大谷 實


◆第6回判例時報賞 特別賞受賞論文◆

追完請求権を巡る実務上の諸問題についての総合的考察……渡邉 拓

身体拘束中の被疑者に対する取調べ前の権利告知制度の機能的分析……大角洋平


◆判決録細目◆

民 事

◎父母以外の第三者で事実上子を監護してきたものが前記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることの許否
(最一決令3・3・29)

◎父母以外の第三者で事実上子を監護してきたものが子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることの許否
(最一決令3・3・29)

〇病院を運営する一般財団法人のM&Aに係る仲介契約に関し、仲介に基づき株式会社との間で締結された同法人の運営権移転契約が医療法等に違反して無効であるとの主張が排斥され、債務不履行に基づく損害賠償請求等が認められないとされた事例
(大阪高判令3・1・22〈参考原審:大津地判令1・10・29〉)

〇加害者が、自動車運転中、心房細動による心原性脳梗塞を発症し意識を消失して運転制御不能状態に陥り、センターラインを越えて対向車線に逸走し、同車線を走行してきた車両に正面衝突等をした事故について、民法713条ただし書の過失は認められないとして、損害賠償義務を負わないとされた事例
(名古屋高判令4・5・27〈参考原審:名古屋地判令3・12・6〉)

▽摂食障害治療に伴って行われた 14歳の少女に対する 77日間の身体的拘束について、そのうち 17日間の拘束を違法として、損害賠償請求の一部を認容した事例
(東京地判令3・6・24)

▽白内障手術を受けた患者が、失明等の後遺障害を負ったことについて、担当医師の説明義務違反及びカルテの改ざんがあるとして、損害賠償の一部が認容された事例
(東京地判令3・4・30)


労 働

▽銀行の従業員が長時間労働により死亡したことについて、銀行の取締役が従業員の使用したPCのログ又は入退館に使用するICカードの履歴によって労働時間を把握する体制を構築していなかったことが安全配慮義務に違反しないとされた事例
(熊本地判令3・7・21)


刑 事

◎準強制わいせつ被告事件について、公訴事実の事件があったと認めるには合理的な疑いが残るとして無罪とした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し有罪とした原判決に、審理不尽の違法があるとされた事例
(最二判令4・2・18)


◆最高裁判例要旨(2022(令4)年6・7月分)
◆記 事◆

講話 民事裁判実務の要諦(12・完)
──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本 英史

★書評 芦名定道・宇野重規・岡田正則・小沢隆一・加藤陽子・松宮孝明
『学問と政治─学術会議任命拒否問題とは何か』……稲 正樹


◆判例特報◆

▽普天間飛行場を離発着する米軍の航空機等の騒音等により周辺住民が被っている法的利益の侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えており、同飛行場には日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法2条にいう設置又は管理の瑕疵があるとして、原告らの慰謝料請求の一部が認められた事例
──普天間米軍航空機騒音国賠訴訟第1審判決
(那覇地沖縄支判令4・3・10)


◆判決録◆

民 事

◎権利能力のない社団であるXが建物の共有持分権を有することの確認を求める旨を訴状に記載して提起した訴訟において、控訴審が、Xの請求につき、前記共有持分権がXの構成員全員に総有的に帰属することの確認を求める趣旨に出るものであるか否かについて釈明権を行使することなくこれを棄却したことに違法があるとされた事例
(最三判令4・4・12)

▽新型コロナウイルスのまん延が、不可抗力によって婚礼を実施できなかった場合に該当しないとの理由で、結婚式の企画運営等を業とする会社に対する婚礼費用の前受金の返還請求が棄却された事例
(東京地判令3・9・27)

▽事業者向けのファクタリング取引が実質的に貸金業法及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)にいう「金銭の貸付け」に該当すると認め、貸金業の登録を受けずにこれを業として行い、かつ出資法の上限金利を大幅に超える利率の約定でこれを行い、債権譲渡人から金員の支払を受けた債権譲受人の行為は不法行為に該当するとされた事例
(名古屋地判令3・7・16)

▽1 人事評価等の権限を有する者による内部通報者を特定しようとした行為について違法性が認められた事例
 2 会社の人事と任意団体の役職に事実上の連動が認められる任意団体において、正当な理由なく所属会員を除名処分とする旨の議題を提出し、これまでとは異なる特別な議決方法を実施した行為等について違法性が認められた事例
(福岡地判令3・10・22)


刑 事

◎1 刑法168条の2第1項にいう「その意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」に当たるか否かの判断方法
 2 ウェブサイトの閲覧者の同意を得ることなくその電子計算機を使用して仮想通貨のマイニングを行わせるプログラムコードが不正指令電磁的記録に当たらないとされた事例
(最一判令4・1・20)

〇1 殺人、現住建造物等放火等の事件の犯人性を1審判決が間接事実の推認等により認定し、その判断が控訴審においても維持された事例
 2 第1行為(なたでの加害行為)時には殺意があったが、実際の死亡結果は既に死亡していると誤信した状態で行われた第2行為(放火行為)によって生じた場合に、第1行為との因果関係を肯定して殺人罪が成立するとの判断を1審判決が示した事例
(大阪高判令3・10・4)

▽少年が、共犯者とともに友人の自殺を幇助したという自殺幇助保護事件において、犯情は検察官送致をするほどに重いとは認められず、少年の行状等も考慮すると、保護処分を相当と認めるが、安易に不適切な解決方法を選択しやすいとの問題点を自覚させ、適切な社会性を身に付けさせるためには、長期間の系統立った矯正教育が必要であるとして、少年を第1種少年院送致(2年程度の相当長期間の処遇勧告)とした事例
(千葉家決令3・12・10)
◆記 事◆

民法理論のいま──実務への架橋という課題(7)
 「事業成長担保権」構想の制度的前提……近江幸治

統治構造において司法権が果たすべき役割 第3部(7)
 憲法24条の「婚姻」の意義と同性婚……篠原永明


◆判例特報◆

◎離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務が履行遅滞となる時期
(最二判令4・1・28)


◆判決録細目◆

行 政

◎1 相続税の課税価格に算入される財産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない場合
 2 相続税の課税価格に算入される不動産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反しないとされた事例
(最三判令4・4・19)


民 事

〇不動産の取得時効完成後に当該不動産に設定され登記された根抵当権の譲渡を受けて根抵当権移転の付記登記を了した者が背信的悪意者に当たるとして、時効取得者による根抵当権設定登記の抹消登記請求が認められた事例
(大阪高判令3・5・21〈参考原審:大阪地堺支判令2・8・26〉)

▽1 他者の給付請求権に係る訴えを提起した原告について、法定訴訟担当又は任意的訴訟担当に該当しないため、当事者適格が認められないとして、訴えが却下された事例
 2 大学に対する社会的評価の低下に伴い、同大学に所属する(又はしていた)者にもたらされることがあり得る不快感や屈辱感は、それを被侵害利益として直ちに損害賠償を請求し得るほどの利益とまでは認められないとして、不法行為の成立が否定された事例
(東京地判令3・11・30)


労 働

▽1 配転命令を拒否したことを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例
 2 配転命令の有効性を判断する際に、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益の有無について、配転命令を発出した時点において使用者が認識していた事情に基づいて判断することが相当とされた事例
(大阪地判令3・11・29)


刑 事

◎原審が被告人質問を実施したが、被告人が黙秘し、他に事実の取調べは行われなかったという事案につき、第1審が無罪とした公訴事実を原審が認定して直ちに自ら有罪の判決をしても、刑事訴訟法400条ただし書に違反しないとされた事例
(最一決令3・5・12)

〇1 覚醒剤営利目的輸入の事案において、密輸組織関係者との間のやり取りを全体として評価すれば、被告人は違法薬物を復路でヨーロッパに「持ち帰る」などの仕事をさせられるのではないかという疑念を抱いていたにとどまり、往路で日本に「持ち込む」故意があったと認めるには合理的な疑いが残るなどとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例(①事件)
 2 覚醒剤営利目的輸入の事案において、覚醒剤が隠匿されていたコーヒー豆の袋は同行者にすり替えられたなどという被告人供述は排斥できないなどとして、被告人の覚醒剤輸入の故意、同行者との共謀を否定し、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例(②事件)
 3 覚醒剤営利目的輸入の事案において、日本への渡航に至るまでの依頼者とのメッセージのやり取り等を検討し、各時点における被告人両名の認識に関する原判決の判断は不合理であり、被告人両名に故意があったと認めるには合理的な疑いが残るとして、原判決を破棄し、被告人両名に無罪を言い渡した事例(③事件)
(①東京高判令3・4・26〈参考原審:東京地判令2・7・3〉、
 ②東京高判令3・6・15〈参考原審:東京地判令1・12・8〉、
 ③東京高判令3・7・13〈参考原審:千葉地判令2・9・15〉)


◆判例評論◆

34 被災者生活再建支援法に基づき被災者生活再建支援金の支給決定をした被災者生活再建支援法人が支給要件の認定に誤りがあることを理由として当該決定を取り消すことができるとされた事例
(最二判令3・6・4)……北見宏介

35 沖縄県漁業調整規則に基づく水産動植物の採捕に係る許可に関する県知事の判断と地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるもの
(最三判令3・7・6)……西上 治

36 暗号資産に関する寄託契約の成立を否定し、利用規約上の免責規定に基づきハッキング時の損失を顧客企業に負わせた事例
(東京地判令2・3・2)……久保田隆

37 1人しかいない監査役によって任期途中にされた報酬増額決定を有効とし、同増額決定に善管注意義務違反があるとはいえないとした上、正当な理由なく解任されたとして、同監査役の未払報酬請求及び損害賠償請求を一部認容した事例
(千葉地判令3・1・28)……早川咲耶
◆記 事◆

SBS/AHT仮説をめぐる日本と海外の議論状況……秋田真志

海外判例研究──第14回──
<憲法>
 ・ボストン市が希望者に対して市庁舎前の市旗掲揚ポールに旗の特別掲揚を認めていたところ、キリスト教の旗の掲揚の申込に対しては政教分離を理由としてこれを拒否したため、表現の自由を侵害するかどうかが争われた事例――シュルトレフ判決……大林啓吾

 ・公益団体の理事会が理事に対して行った譴責が表現の自由を侵害すると主張することができるかが争われた事例――ヒューストン・コミュニティ・カレッジ判決……大林啓吾

<民法>
 ・違約金に関連する和解協議書の内容の履行をめぐる事件……胡 光輝

 ・ハーグ条約13条1項⒝は、子の返還につき「重大な危険」(grave risk)がある場合には、裁判所に子の返還を命じない裁量権を与えているとして、子の返還を安全にする可能性があるあらゆる選択肢を検討すべきであるとした原審の判断が取り消された事例……ダン ローゼン・西口 元

<消費者法>
 ・消費者契約におけるオンラインプラットフォーム事業者の情報提供義務……カライスコス アントニオス

<刑法>
 ・少年同士の一対一の殴り合いによる傷害について、被害者の同意による正当化が認められた事例……小池信太郎

 ・相場操縦罪における没収の範囲……佐藤拓磨


◆書 評◆

三ヶ月章『流涕記』
評者……泉 徳治


◆判例特報◆

◎使用者が誠実に団体交渉に応ずべき義務に違反する不当労働行為をした場合において、当該団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときに、労働委員会が使用者に対して誠実に団体交渉に応ずべき旨を命ずることを内容とする救済命令を発することの可否
──山形大学不当労働行為救済命令取消請求事件
(最二判令4・3・18)

▽1 地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たり、その取消しを求めるにつき訴えの利益がある
 2 ふるさと納税に係る寄附金の収入見込額が一定額を超えた場合を特別交付税の減額項目と定める「特別交付税に関する省令」(昭和51年自治省令第35号)附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの)の規定は、地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱し、無効である
──泉佐野市ふるさと納税事件
(大阪地判令4・3・10)


◆判決録◆

行 政

◎複数の不動産を一括して分割の対象とする共有物の分割により不動産を取得した場合における地方税法73条の7第2号の3括弧書きに規定する「当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分」の有無及び額の判断の方法
(最三判令4・3・22)

▽ひとり親障害者が障害基礎年金を受給したことを理由に、児童扶養手当の支給を停止された事案において、児童扶養手当法施行令(令和2年政令第318号による改正前のもの)6条の4のうち、障害基礎年金の子加算部分だけでなく本体部分についても併給調整の対象として児童扶養手当の支給を停止する旨を定めた部分は、①児童扶養手当法(令和2年法律第40号による改正前のもの)13条の2第2項の委任の範囲を逸脱するものではない、②憲法14条、25条、国際人権規約に違反して無効であるとはいえないとされた事例
(京都地判令3・4・16)

▽複合構造家屋の登録価格の決定が客観的には違法であっても、当該登録価格が合理性を否定し難い他の方法により是正されたときの価格を上回らない場合には、職務上の注意義務に違背して納税者に損害を加えたとはいえないとして、国家賠償責任が否定された事例
(東京地判令3・3・26)

▽県道で発生した自動車事故の原因が、道路の排水設備に落ち葉等が堆積したことにより生じた水たまりを走行したことにあるとして、落ち葉等を除去しなかったこと等につき、道路管理者である県に国家賠償法2条1項の責任を認めた事例
(神戸地判令3・8・24)

▽1 自治区の構成員らによる共同断交の決議やこれに沿った各言動が村八分として共同不法行為を構成するとされた事例
 2 行政区の自治委員や自治区の区長が国家賠償法上の公務員や市の被用者に当たらず、自治会連合会も同法上の公共団体に当たらないとされた事例
(大分地中津支判令3・5・25)


刑 事

〇被告人を無罪とした控訴審判決が最高裁判決により破棄され、その後の差戻控訴審が、強盗殺人罪の成立を否定して殺人罪と窃盗罪を認めた差戻前1審判決を破棄して1審に差し戻した事件につき、破棄判決の拘束力を一部認めて強盗殺人罪の成立を認定した1審判決に対する被告人からの控訴を棄却した事例
──米子ホテル強盗殺人第3次控訴審判決
(広島高松江支判令3・11・5)

▽看護師であった被告人が、勤務先の病院において、入院患者3名に消毒薬を投与して殺害した殺人事件等につき、被告人に完全責任能力を認めた上で、死刑を科することがやむを得ないとまではいえないとして、無期懲役刑を言い渡した事例
(横浜地判令3・11・9)
◆総 索 引◆

判 例 時 報 2401号~2500号

判 例 評 論 724号~754号


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