判例時報 発売日・バックナンバー

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◆記 事◆

統治構造において司法権が果たすべき役割(9)
 裁判所における違憲審査の基準……渋谷秀樹


特集 2019年参院選における投票価値較差(4・完)
 参議院投票価値較差訴訟をとらえる視座
 ──令和元年高裁判決の背景にある判例理論──……安西文雄


在外研究だより(14)
 ──古い法学──……山城一真


コロナ禍社会における法的諸問題(3)
 休業・休校要請の法的根拠について
 ──特措法24条9項と45条2項の関係……木村草太


◆判決録細目◆

民 事

▽別居中の元妻が、元夫の意思を確認しないまま融解胚移植の方法により子を出産し、元夫の自己決定権を侵害したとして、元妻の責任が肯定されたが、クリニックの責任は否定された事例
(大阪地判令2・3・12)


▽適格都道府県センターが、暴力団事務所の付近住民の委託に基づき、暴力団会長に対し、暴力団事務所の使用禁止の仮処分を求めた事案において、同センターが任意的訴訟担当の要件を満たすものとして当事者適格を有するとされた事例
(京都地決令1・9・20)


商 事

○1 上場会社が巨額の金融資産の損失の計上を避けるために、ファンドに当該金融資産を簿価で買い取らせるなどして損失を分離するスキームを構築・維持したことについて、取締役の善管注意義務及び忠実義務違反は認められるが、上場会社に損害の発生が認められないとされた事例
2 損失分離スキームの発覚を防ぐことを目的として、疑惑を指摘した代表取締役を解職した取締役らの上場会社に対する損害賠償責任に関して、同解職から生じた上場会社の信用毀損による損害について、民事訴訟法248条により相当な損害額が認定された事例
3 分配可能額を超える剰余金の配当等について会社法462条1項に基づく取締役に対する金銭支払請求が認められるとともに、別件訴訟において成立した和解により上場会社に支払われた金額を控除することが認められた事例
4 有価証券報告書等の虚偽記載について上場会社が支払った課徴金及び罰金相当額について、当該有価証券報告書等の作成提出に関与した取締役の損害賠償責任が認められたが、作成提出時にはすでに退任していた取締役の善管注意義務違反と同損害との因果関係は認められないとされた事例
(東京高判令1・5・16)


労 働

▽1 被告会社との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、通信ネットワーク等の企画・開発等事業におけるリーダー的役割を期待されていたシステムエンジニアについて、業務成績が不良であるなどとしてされた解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないとして、雇用契約上の地位確認請求等が認容された事例
 2 使用者による組織的で違法な退職勧奨やパワーハラスメントの事実自体が認められないか、又は原告に対する関係で不法行為を構成するとはいえないとして、不法行為に基づく損害賠償請求が棄却された事例
(東京地判平31・2・27)


刑 事

○覚せい剤使用の事案において、警察官が、被告人の陰部付近に薬物を隠匿しているのではないかと考えて、令状がないのに意図して陰部付近の捜索を行い、続けざまに被告人に対してそのプライバシーや羞恥心への配慮を全く欠いたまま公道上でパンツを脱ぐように要求し、実際に被告人にパンツを脱ぐに至らせた上、これらの手続的な違法を糊塗するために、令状請求の疎明資料に、令状審査を行う裁判官をして覚せい剤の隠匿の嫌疑に関する事実を誤解させる記載をして裁判所に提出したもので、このような一連の捜査の過程は、令状主義の精神を没却する重大な違法があるとした上で、本件の一連の捜査過程の違法は、覚せい剤の所持の嫌疑に係るものではあるが、強制採尿手続により採取された被告人の尿の鑑定書は、一連の違法な手続の影響を免れず、違法収集証拠として証拠能力を否定すべきであるとして、原判決を破棄し、無罪を言い渡した事例
(東京高判令1・7・16〈参考原審:東京地判令1・7・16掲載〉)


▽1 捜索時に発見したとされる覚醒剤は捜査官が持ち込んだ疑いがあるとし、同所持による現行犯逮捕後に任意提出された尿の鑑定書の証拠能力を否定した事例(①事件)
 2 警察官が被告人の承諾なく居室内靴脱ぎ場に立ち入った行為は無令状の強制処分であって重大な違法があるとし、その結果得られた資料による強制採尿令状に基づいて採取された尿の鑑定書の証拠能力を否定した事例(②事件)
(①大阪地判令1・9・25、②京都地判令1・10・29)


▽被告人に対する職務質問及び現行犯人逮捕手続の後に行われた所持品検査の結果として大麻が発見されたところ、前記職務質問及び現行犯人逮捕手続には令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これと密接な関連を有する前記大麻等を証拠として許容することは、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないとして、その証拠能力を否定した事例
(釧路地判令1・9・27)
◆記 事◆

裁判制度のパラダイムシフト─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(3)
 ──判例における「裁判を受ける権利」の過小な役割
 ──裁判を受ける権利は「パンドラの箱」か……笹田栄司


刑法判例と実務
 ──第60回(完)わが国における近年の責任構想について……小林憲太郎・漫画:浅見理都


◎新連載 特集

コロナ禍社会における法的諸問題
 ⑴緊急事態における裁判所の役割……津田智成
 ⑵立憲主義のあり方から見る「自粛か強制か」問題……曽我部真裕


◆判決録細目◆

行 政

◎公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認と行政不服審査法7条2項にいう「固有の資格」
(最一判令2・3・26〈参考原審:福岡高那覇支判令1・10・23本誌2443号3頁掲載〉)

▽あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師を教育し又は養成する学校・施設についてのあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律2条1項の認定について、視覚障害者以外の者を教育し又は養成する学校・養成施設については、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、認定をしないことができる旨を定める同法附則19条1項の規定は、憲法22条1項に違反しないとした事例
(①東京地判令1・12・16、②大阪地判令2・2・25)

民 事

◎家屋の評価の誤りに基づき固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段所定の除斥期間の起算点
(最三判令2・3・24)

○自動車が道路から逸脱して農業用水路に転落・水没し全損となった自損事故につき、被保険者(運転者兼自動車保有者)の故意招致事故であるとして車両保険金支払請求を棄却した原判決が取り消され、被控訴人(自動車保険の保険者)に対し車両保険金の支払が命ぜられた事例
(大阪高判平31・3・19〈参考原審:神戸地姫路支判平30・8・1掲載〉)

▽1 不明確性を有する契約条項と消費者契約法12条3項における消費者契約の不当条項該当性の判断の在り方
 2 「他の会員に不当に迷惑をかけたと当社が判断した場合」などに会員資格取消措置等をとることができ、当該措置により会員に損害が生じたとしても当社は一切の損害を賠償しない旨を定める条項が、消費者契約法12条3項の適用上、同法8条1項1号及び3号の各前段に該当するとされた事例
(さいたま地判令2・2・5)


▽3歳の保育園児が、雲梯で遊戯中に頚部が雲梯に挟まれ死亡した事故において、保育所を運営する法人の責任を認めたが、園長及び担当保育士の過失を否定した事例
(高松地判令2・1・28)


▽建物明渡請求について、原告の本件居室の取得行為は弁護士法73条違反であり、係る行為に基づいた本件請求は権利濫用として認められないとした事例
(熊本地判平31・4・9) 

刑 事

◎覚せい剤譲渡の約束に基づき支払われた代金全額が「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」2条3項にいう「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」に当たるとされた事例
(最二判令1・12・20)


判例評論

37 意匠の共同創作者の認定
(大阪地判平29・10・12)……井関涼子

38 自動車保険契約の車両損害保険条項に基づいて交通事故の被害者に支払われた車両損害保険金は当該交通事故に係る物的損害の全体を補填するものと解するのが相当であるとして、休車損害に係る部分の損害補填にも充てた事例
(東京高判平30・4・25)……山下典孝
◆記 事◆

処分性の拡張から訴えの利益へ……大沼洋一

現代型取引をめぐる裁判例(457)……升田 純


◆判決録細目◆

民 事

◎国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の規定する子の返還申立事件に係る家事調停における子を返還する旨の定めと同法117条1項の類推適用
(最一決令2・4・16)


▽1 被収容者による宅下げ(保管私物又は領置されている金品を他の者へ交付すること)の申請を許さない刑事施設の長の措置が国家賠償法1条1 項の適用上違法となる場合
2 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律50条各号に該当する事由が認められないにもかかわらず、被収容者が雑誌等を他の者へ交付する申請を許さない宮城刑務所長の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
(仙台地判令2・5・13)


刑 事

○原決定は、少年の問題性ないし要保護性に関する基礎事情を十分明らかにしていなかったり、これらを一面的に評価しているところがあり、それに伴って、施設収容による矯正教育以外の処遇が困難であることの見極めを十分にしていないといわざるを得ないから、このような調査・審判の過程により、少年を第1種少年院に送致した原決定の処分は著しく不当であるとして、原決定を取り消した事例
(東京高決平30・12・20)
◆記 事◆

特集 2019年参院選における投票価値較差(3)
 参院選・一票の較差(1対3・00)と衆院選・一票の較差(1対1・98)……升永英俊

海外判例研究──第10回──
・憲法
 信教の自由と政教分離の衝突──宗教学校に奨学金を使うことを禁止する州の行為は信教の自由を侵害するとした事例(エスピノーザ判決)……大林啓吾

 行政裁量と司法審査――不法移民に猶予を与える政策(DACA)の変更は行政裁量の逸脱濫用に当たるとした事例(国土安全保障省対カリフォルニア大学評議員判決)……大林啓吾

・民法
 消費者契約における契約条項のうち、加盟国法の任意規定の内容を反映するものは、事業者と消費者の間で交渉されていない場合であっても、不公正契約条項指令93/13/EECの適用を受けない……カライスコス アントニオス

 根抵当権の被担保債権の範囲の変更をめぐる事件……胡 光輝

 原告において、「全ての人は、白人市民が享受しているのと同様に、契約を締結し、強制する権利を有する」ことを保障する42 U.S.C. §1981(a)に基づいて、契約締結を拒否した被告に対して損害賠償を求める場合には、人種差別が契約締結拒否に何らかの役割を果たした旨主張するのみでは足りず、人種差別と損害との間に因果関係(条件関係)があることを主張しなければならないとされた事例……ダン ローゼン・西口 元

・刑法
 「業としての自殺援助罪(ドイツ刑法第217条)」の違憲性……神馬幸一

・刑事訴訟法
 重罪事件の刑事陪審における有罪評決が10対2で足りるとする州法を憲法第6修正違反とした事例……緑 大輔


◆判決録◆

行 政

○店舗販売業者に対し、要指導医薬品の販売等を行う場合には薬剤師に対面による情報の提供等を義務付け、これができないときは要指導医薬品の販売等をしてはならない旨を定める医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律36条の6第1項、3項は憲法22条1項に違反しないとされた事例
(東京高判平31・2・6)

▽精神保健指定医の指定取消処分につき、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律19条の2第2項に規定する「指定医として著しく不適当と認められるとき」に該当するとの処分事由に該当するとした厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったと認められるとされた事例
(東京地判令1・9・12)

民 事

◎合資会社の無限責任社員が退社により当該会社に対して金員支払債務を負う場合
(最三判令1・12・24)

○施設に入所している原告から訴訟委任を受けたとする弁護士が原告訴訟代理人として提起した訴えにつき、原告訴訟代理人が原告本人の意思で訴訟委任を受けたとは認められないとして、当該訴えが却下された事例
(大阪高判令2・3・26〈参考原審:京都地判令1・10・1掲載〉)

○1 警察官による逮捕及び検察官による勾留請求において、犯罪の嫌疑があると判断したことにつき、合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるということはできないとして、それらの違法性を否定した事例
2 警察官による取調べが、社会通念上相当な範囲を逸脱し、黙秘権及び弁護人選任権を侵害するような方法ないし態様で行われたとまではいえないとして、その違法性を否定した事例
(大阪高判令2・6・11〈参考原審:京都地判令1・9・25掲載〉)

▽自閉症と診断された2歳3か月の幼児に対して、小児神経学の専門医が少量のL―DOPAを継続的に長期間投与したところ、幼児が重度知的障害状態になったことについて、同医師に、投薬開始時点や投薬を長期に続ける際には幼児の両親に同療法が医学水準として確立した治療法でないことや副作用の出現や症状悪化の可能性があることについての説明義務違反があるとされた事例
(東京地判令1・10・17)

▽不妊治療で5つ子を妊娠したのち、減胎手術を受けたものの1人も出産できなかった事案で、医師の過誤を否定した事例
(大阪地判令2・1・28)

▽周辺住民らが開発工事の差止め等を求めた事案において、原告らの主張するまちづくり権について、法的な権利性を有するものとは認められないなどとして、請求が棄却された事例
(神戸地尼崎支判令1・12・17)


▽申立人と相手方は、子らについての親権を申立人と相手方の共同親権として外国において離婚が成立しているところ、申立人が相手方に対し、子らの親権者を申立人に指定するとの審判を求めた事案において、我が国の裁判所に国際裁判管轄があり、準拠法は日本法となる旨判断した上で、本件離婚は民事訴訟法118条の要件を満たすところ、外国における父母の共同親権とする定めが我が国においても有効とされる場合、民法819条6項に基づき、父母の一方の単独親権とすることができるとし、申立人の単独親権へ変更することが子らの利益のために必要であるとして、申立てを認容した事例
(東京家審令1・12・6)
◆記 事◆

特集 2019年参院選における投票価値較差(2)
 投票価値の平等と二院制の趣旨……只野雅人


刑法判例と実務
 ──第59回 未遂犯の構造をめぐる近時の議論について──……小林憲太郎


◆判決録細目◆

民 事

▽警察官の速度違反取締りの対象となった車両の運転者らが死傷した事故について、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任が認められた事例
(横浜地判令2・2・27)

▽防衛大学校の元学生が、在校中に上級生や同級生から暴行、強要、いじめ等の行為を受けたことについて、国に安全配慮義務違反がないとされた事例
(福岡地判令1・10・3)

▽1 精神科病院において身体的拘束を受けた者が肺血栓塞栓症によって死亡した事故につき、担当医師が、身体的拘束を開始・継続したことが違法であるとは認められないとされた事例
 2 前記事故につき、担当医師が、身体的拘束期間中、患者に対し、肺血栓塞栓症の予防措置として弾性ストッキングを装着すべき注意義務に違反したことが認められるが、同注意義務違反と死亡との間の相当因果関係が否定された事例
(金沢地判令2・1・31)

▽上場株式の発行者が、公衆の縦覧に供されている有価証券報告書等に虚偽記載等が存する可能性があることによる株価下落のリスクを一般投資家に予め警告し、流通市場における同株式の取得者が、前記の株価下落のリスクを引き受けていたものとして、同取得者の主張する虚偽記載等と株価下落による損害との間の相当因果関係を否定した事例
(大阪地判令2・3・27)

▽死刑が宣告された殺人被告事件における損害賠償命令が認可された事例
(京都地判令1・10・29)

労 働

▽1 長期間継続して雇用された有期労働契約の労働者が不更新条項の付された雇用契約書に署名押印をしたとしても、直ちに労働契約を終了させる明確な意思を表明したものとはいえないとして、労働契約の合意による終了を認めなかった事例
 2 約30年にわたり29回有期労働契約が更新された労働者に対する雇止めにつき、雇用継続に対する合理的期待が高いとし、労働契約法19条2号該当性を肯定した上、雇止めに客観的合理的理由がなかったとして、従前と同一の労働条件で労働契約が更新されたものと認めた事例
(福岡地判令2・3・17)

刑 事

○1 単独犯と共同正犯の択一的認定により傷害致死罪の成立を認めた原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとして、原判決を破棄して差し戻した事例(①事件)
2 原審裁判所が、単独犯の訴因に「単独で又は氏名不詳者と共謀の上」を付加した予備的訴因の追加を促した訴訟指揮、それに引き続く訴因変更許可決定、弁護人の求釈明申立てに応ぜず、検察官に釈明を求めなかった訴訟指揮、弁護人の弁論再開請求を却下した決定等に、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるとして、原判決を破棄して差し戻した事例(②事件)
(①東京高判平30・11・15〈参考原審:新潟地判平30・11・15掲載〉、②東京高判平31・2・8〈参考原審:さいたま地判平30・2・6掲載〉)

▽1 父親が母親を殴ろうとしていると誤信して父親の胸部を包丁で突き刺した第1暴行を誤想過剰防衛とし、これによって倒れて動かなくなった父親の後頸部等を突き刺した第2暴行について、急迫不正の侵害が存在せず、これを誤信する状況でもなかったと認定した上で、第2暴行の殺人未遂罪は第1暴行の殺人罪に吸収されるとした事例
 2 父親を殺害した少年について凶悪性・悪質性を大きく減じて保護処分を許容し得る特段の事情はないとした上、第1暴行につき誤想過剰防衛が成立することなどの事情を考慮して懲役4年以上7年以下に処した事例
(横浜地判平31・2・19)


判例評論

35 都市計画区域内にある公園について、湖南市地域ふれあい公園条例(平成17年湖南市条例第35号)に基づく公告がされたことをもって、都市公園法2条の2に基づく公告がされたとはいえないとした事例
(最一判令1・7・18)……洞澤秀雄

36 子の引渡しを命ずる審判に基づく間接強制の申立てが権利の濫用に当たるとされた事例
(最三決平31・4・26)……稲垣朋子
◆記 事◆

特集2019年参院選における投票価値較差(1)
 2019年参議院議員選挙区選挙の「一票の較差」訴訟をめぐる高裁諸判決……新井 誠


現代型取引をめぐる裁判例(456)……升田 純


◆書籍紹介◆

千葉勝美『判事がメガネをはずすとき』(日本評論社、2020年)


◆判決録細目

行 政

▽1 生活保護費徴収決定に係る通知書の記載が、行政手続法14条1項本文の理由の提示として不十分であるとして、同決定の取消請求が認められた事例
2 生活保護法による保護を受けていた原告が、預金口座への入金及びFX取引により生じた利益を収入として申告しないまま保護費を受給したことが、生活保護法78条にいう「不実の申請その他不正な手段」により保護を受けた場合に該当するとされた事例
(名古屋地判平31・1・31)


民 事

◎婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚した場合における婚姻費用分担請求権の帰すう
(最一決令2・1・23)

○1 火災等共済金請求権が破産法34条2項の「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」にあたるとした事例
2 火災共済契約を締結した者が破産手続開始決定を受けた場合に、その後に当該契約が自動更新され、かつ、当該破産者において共済掛金の支払を継続したときであっても、当該火災等共済金請求権は、破産財団に属するとした事例
(東京高判平31・4・17〈参考原審:東京地判平30・4・25掲載〉)

○1 職権により成年後見人を追加して選任する審判及び成年後見人の事務を分掌してその権限を行使すべきことを定める審判に対する各即時抗告を不適法なものであるとして原審において却下する旨の決定が相当とされた事例(①事件)
2 成年後見開始申立事件の記録の閲覧謄写の許可の申立てを却下する決定に対する即時抗告を不適法なものであるとして原審において却下する旨の決定が一部取り消された事例(②事件)
(①東京高決令1・12・25、②東京高決令2・1・20〈参考原審:東京家決令1・10・28、参考原々審:東京家決令1・10・15掲載〉)

▽研究者が、その研究資金として交付され、所属する国立大学法人が管理する科研費等の補助金を、正規の手続によらずに支出し、研究用の資材を販売等する業者にいわゆる預け金として預託していたところ、その業者が倒産して預け金の回収が事実上不可能になった場合において、前記国立大学法人の、当該研究者に対する、不法行為による損害賠償請求が認められた事例
(京都地判令1・11・5)

▽果物ナイフで頸部を刺され、搬送先の病院において血気胸と診断された患者について、緊張性血気胸を生じたことにより死亡したとは認められず、止血のための緊急手術終了時までの間及び同手術終了後の各時点において、執刀医に胸腔ドレナージを実施すべき注意義務があったとはいえないとして、病院側の損害賠償責任を認めなかった事例
(札幌地判令2・1・22)

商 事

○転換社債型新株予約権付社債の発行について、有利発行に当たらず、著しく不公正な方法によりされたものともいえず、かつ、発行条件の変更、発行の延期又は撤回等の措置を採らなかったとしても、取締役としての善管注意義務に反するものではないとされた事例
(東京高判令1・7・17〈参考原審:東京地判平30・9・20掲載〉)

刑 事

○1 発注者側の職員による入札の仕様書案の条項の設定が、刑法96条の6第1項及び入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律8条にいう「公正を害すべき行為」に当たるとされた事例
2 当初の入札希望者が一者のみで、実質的には自由競争が形骸化しているなどの事情があったとしても、発注者側の職員がこれを知りつつなした行為が、刑法96条の6第1項の罪及び入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律8条の罪に当たるとされた事例
(大阪高判令1・7・30〈参考原審:大阪地判平30・3・16掲載〉)

▽特殊詐欺の事案において、被告人が、上位者との連絡担当者等として犯行に関与した旨一致して述べる共犯者2名の証言は信用できず、被告人の犯行への関与を認めるに足りる証拠はないとして、被告人に無罪を言い渡した事例
(大津地判令1・9・27)


◆最高裁判例要旨(2020(令2)年3・4月分)
◆記 事◆

会社法・金融法随想──立法事実からみる、近況・課題(5)
 中小会社に関する諸問題……神田秀樹

◆書 評◆

①門口正人『司法的企業運営──最近の会社判例から』(きんざい、2020年)
 評者……井上 聡

②米村滋人『医事法講義』(日本評論社、2020年)
 評者……大谷 實

◆判決録細目◆

行 政

○平成30年法律第75号によって改正された公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
(名古屋高金沢支判令1・10・29)

民 事

○共同被告の1人が第1回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかったため、当該被告につき、弁論を分離した上で終結し、判決を言い渡したことについて、訴訟手続に法律違反又はこれに準ずる不当な取扱いがあるとされた事例
(東京高判令1・11・7〈参考原審:水戸地土浦支判平31・4・17掲載〉)

○高額な天珠と称する商品(天然石であるメノウを原材料として模様を染み込ませて焼成された商品)を、短期間に6回にわたって購入させた販売店長等の販売行為等について、最初の2回は違法な勧誘行為等によるものとは認められないが、3回目以降の取引については、少なくとも軽率又は稚拙な判断能力の低下に乗じた社会的相当性を欠く販売方法によるものであるとして不法行為を認めた事例
(大阪高判令1・12・25〈参考原審:大阪地堺支判令1・5・27本誌2435号62頁掲載〉)

○1 仲裁人と同じ法律事務所に所属する別の弁護士が、別件訴訟において仲裁事件当事者の関連会社の訴訟代理人の地位を有していたとの事実は、仲裁法18条4項の開示事実に該当するとされた事例
2 仲裁人の所属する法律事務所が一般的な水準のコンフリクト・チェックシステムを構築している場合、仲裁人は同チェックシステムの存在を前提に、同チェックシステムで必要とされる行動をしている限り、合理的な範囲の調査を継続的に行ったものと評価すべきであるとされた事例
(大阪高決平31・3・11〈参考差戻前抗告審:最三決平29・12・12本誌2365号70頁掲載〉)

▽一般自動車保険契約の人身傷害条項に基づく保険金請求において、実父の営む運転代行業務に従事中であった者が交通事故により死亡したことにつき、同人が前記保険契約に附帯された運転者年齢条件(26歳以上補償)特約における「業務に従事中の使用人」に該当するとして保険金請求が否定された事例
(前橋地判令1・5・15)

▽私立高校校長の男子学生に対する、同校の女子学生に暴力を振るったことを理由とする退学処分が、社会通念上著しく妥当性を欠き、校長の裁量権の逸脱又は濫用に当たるとして、同男子学生が授業を受けることの妨害を禁止する仮処分命令が認められた事例
(山口地宇部支決令2・2・12)

商 事

○先物取引受託会社従業員の違法行為により顧客が被った損失について同社役員の職務執行上の重過失が認められた事例
(名古屋高判令1・8・22〈参考原審:名古屋地判平30・11・8掲載〉)

刑 事

○1 殺人被告事件において、被害者の死因が頸部圧迫による窒息死であるとした原判決の認定には合理的な疑いがあり、むしろ薬物中毒死あるいは、これと被告人の加えた身体拘束による突然死の可能性があるとされた事例
2 被告人が被害者の首に腕を巻き付けて締め付けた行為は、殺人の実行行為とはいえず、また、被害者が被告人の右手を突然噛んできたことなどに照らし、正当防衛が成立するとして、殺人として有罪と認めた原判決を破棄して、無罪が言い渡された事例
(大阪高判平30・10・31〈参考原審:大阪地判平29・3・14掲載〉)

▽刑務所収容中の原告に対し、刑務所長が行った眼鏡の使用不許可、雑誌等の宅下げ等不許可の処分が、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に反して違法であるとされた事例
(岐阜地判令1・5・10)
◇第4回判例時報賞 結果発表

◆記 事◆

許可抗告事件の実情
 ──令和元年度──……小林宏司・浅野良児

刑法判例と実務
 ──第58回 過失犯無罪判例の構造──……小林憲太郎


◆判決録細目◆

行 政

◎差止めの訴えの訴訟要件である「行政庁によって一定の処分がされる蓋然性があること」を満たさない場合における、将来の不利益処分の予防を目的として当該処分の前提となる公的義務の不存在確認を求める無名抗告訴訟の適否
(最一判令1・7・22)

民 事

◎民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」の意義
(最二判令1・8・9)

○本人の長男が後見開始の申立てをした事案において、原審は、本人につき、後見開始相当との診断書があるものの、同診断書は一方で発語不能としながら、他方で言語による意思疎通が可能ともしており、明らかな矛盾があることなどから、その信用性に疑義があり、後見開始相当の常況にあるか否かを判断するためには鑑定を実施する必要があるが、本人から鑑定に対する協力が得られる見込みがないとして申立てを却下したのに対し、抗告審は、前記診断書の矛盾した記載は単なる誤記に過ぎず、同診断書やHDS︱Rの結果等によれば、本人が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあると認められるとして原審を取り消したうえ、成年後見人の選任につき、更に審理を尽くさせる必要があるとして、審理を差し戻した事例
(大阪高決令1・9・4)

○人格権に基づき、恐喝事件及び同和利権問題に関与したこと並びに元暴力団構成員であったことが記載されたインターネット検索結果を削除するよう求める請求が、認められなかった事例
(大阪高判令1・5・24)

▽約1年間にわたり著しい長時間労働に従事していた調理師が、劇症型心筋炎を発症して最終的に死亡したことについて、長時間労働による過労状態と死亡との間の相当因果関係を肯定して使用者及びその代表者に対する損害賠償請求を認容した事例
(大阪地判令2・2・21)

労 働

○法定年次有給休暇の日数を超える日数の有給休暇が与えられている場合において使用者が法定年次有給休暇の部分とそれ以外の部分とを区別せずにした時季の指定の効力(消極)
(東京高判令1・10・9)

刑 事

◎1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為の意義
 2 子に対する保護責任者遺棄致死被告事件について、被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に、刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
 3 裁判員の参加する合議体で審理された保護責任者遺棄致死被告事件について、訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例
(最二判平30・3・19)

◎詐欺罪につき実行の着手があるとされた事例
(最一判平30・3・22)

○少年が店舗で医薬品等を2回にわたり万引きしたという窃盗保護事件において、立件されていない大麻使用に関する事情を非行事実とほぼ並列的に掲げて要保護性を検討した上で少年を第1種少年院送致とした原決定につき、非行事実ではないが処分に実質的に大きな影響を与える可能性のある大麻使用に関する事情を、要保護性の判断として許容される限度を超えて、あたかも非行事実であるかのように扱ったものであり、法令違反があるとしつつ、その法令違反は決定に影響を及ぼすものとまではいえないとした事例
(大阪高決令1・9・12)

○ゲーム依存状態にあった当時14歳1か月の少年が、ゲーム場所を確保しようと考え、空き家であるかを確認するために居宅に侵入したという住居侵入保護事件において、少年を児童自立支援施設送致とした原決定につき、収容処遇となると少年が希望する来年度の高校進学が相当に困難になること、特に悪質な事案ではないことなどを指摘し、基本的に社会内処遇を選択するのが相当として、これを取り消した事例
(広島高決令1・8・28)


◆判例評論◆

31 統合失調症により精神科医の診療を受けていた患者が中国の実家に帰省中に自殺した場合において、医師に患者の自殺を防止するために必要な措置を講ずべき義務がないとされた事例
(最三判平31・3・12)……林 誠司

32 日本における仲裁判断取消審において国内民事訴訟手続の規律ではなく、国際的に通用する解釈を適用すべきとした事例
(東京高決平30・8・1)……宮下摩維子


33 引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」であって、当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され、当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には、当業者は、特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該刊行物の記載から当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず、これを引用発明として認定することはできないとして、進歩性が肯定された事例
(知財高判平30・4・13)……淺見節子

34 処遇勧告に関する抗告の適否
(大阪高決平31・3・15)……小西暁和
◆記 事◆

裁判制度のパラダイムシフト──過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(2)
 判例に現れた「司法権」の批判的検討
 ──「純然たる訴訟事件」の墨守?……笹田栄司


特集 「検察庁法改正法案」が意味するもの
 ⑶ 憲法問題としての検察制度の個人的な感想……棟居快行
 ⑷ いともたやすく行われるえげつない行為……横大道聡
 ⑸ 「#検察庁法改正案に抗議します」の衝撃
  ──芸能事務所への独占禁止法の適用とその民主的意義……木下昌彦
 ⑹ 検察官の「定年制」および検察幹部の「留任特例」について
  ──憲法の視座から……高見勝利


少年法適用年齢引下げに反対する意見書提出の経緯について……元裁判官呼掛け人一同


◆判決録細目◆

民 事

○法定相続人である抗告人らが相続放棄の各申述をした事案において、抗告人らの各申述の遅れは、相続放棄手続が既に完了したとの誤解や被相続人の財産についての情報不足に起因しており、抗告人らの年齢や被相続人との従前の関係からして、やむを得ない面があったというべきであるから、本件における民法915条1項所定の熟慮期間は、抗告人らが、相続放棄手続や被相続人の財産に関する具体的説明を受けた時期から進行するとして、熟慮期間を経過しているとして本件各申述を却下した原審判を取り消し、各申述をいずれも受理する決定をした事例
(東京高決令1・11・25〈参考原審:①前橋家太田支審令1・9・10、②同令1・10・3掲載〉)

○別居中の妻である相手方が、夫である抗告人に対し、当事者間の子である未成年者らの監護者の指定及び引渡しを求めた事案において、これまでの監護実績に明らかな差はないところ、未成年者らが、父母の同居中の住居と同じ校区内で就学するなど従前からの生活環境によく適応していること、抗告人の監護能力と未成年者らとの関係に問題は見受けられず、未成年者らと相手方との面会交流も安定的に実施されていること等の事情を考慮すれば、未成年者らにとっては、現状の生活環境を維持した上で、県外の実家に転居した相手方との面会交流の充実を図ることが最もその利益に適うなどとして、相手方の申立てをいずれも却下した事例
(福岡高決令1・10・29〈参考原審:福岡家大牟田支審平31・2・22掲載〉)

▽被告の開設する病院に急性腹痛で救急入院した原告妊婦がCT検査により子宮破裂と診断されて緊急帝王切開手術を受けたが死産となったことについて、産科医の当初の診察及び検査時に原告妊婦が子宮破裂を発症していたとはいえず、これを見逃した過失はなく、次いで担当した内科医も腹部全体の触診による判断に過誤があるとは言えないとされた事例
(東京地判令1・8・29)


▽1 東北地方太平洋沖地震により建物の車路スロープが崩落した事故について、建物の構造設計監理者及び意匠設計監理者の不法行為責任が肯定され、施工者の不法行為責任が否定されるとともに、施主に4割の過失相殺がされた事例
 2 民法717条3項の求償権について、土地工作物責任者の過失が競合する場合、各責任者の負担部分の限度で行使することができるとし、施主に4割の過失相殺をした上で、意匠設計及び監理の統括会社の責任を1割5分、設計変更前の構造設計及び構造監理の一部の担当会社の責任を2割、設計変更後の構造設計及び構造監理の一部の担当会社(及びその代表取締役)の責任を2割5分とし、民法724条の類推適用を否定して消滅時効完成を否定した事例
(東京地判令1・6・7)


▽拘置所に収容されている受刑者が慢性骨髄性白血病により死亡したことにつき、拘置所の医師らに、前記受刑者に投与する薬剤を変更する注意義務違反はなかったとして、国家賠償請求が棄却された事例
(東京地判令1・8・9)


▽1 国会が民法750条及び戸籍法74条1号の改廃を行わない立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けるものではないとされた事例(①事件)
 2 民法750条及び戸籍法74条1号は、憲法14条1項、24条に違反するものではないなどとして、国会が民法750条及び戸籍法74条1号を改廃する立法措置をとらないという立法不作為の違法を理由とする国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求を棄却した事例(②事件)
(①東京地立川支判令1・11・14、②広島地判令1・11・19)


▽被相続人がした複数の遺言の効力及び解釈について相続人間に争いがあり、これに関して民事訴訟の提起が予定されている遺産分割事件につき、遺産全部の分割を2年間禁止する旨の審判がされた事例
(名古屋家審令1・11・8)

▽原子力委員会又は経済産業大臣が福島第一原子力発電所の地震及び津波対策並びにシビア・アクシデント及びステーションブラックアウト対策に関して規制権限を行使しなかったことが許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとまで認めることはできず、国家賠償法1条1項の違法性があるとはいえないとされた事例
(山形地判令1・12・17)
◆総 索 引
 
判 例 時 報 2301号~2400号
判 例 評 論 692号~723号


第一 判例の部

第二 判例評論および記事の部

第三 裁判年月日・著名事件索引
◆記 事◆

民法理論のいま──実務への架橋という課題(4)
 「錯誤」理論の新たな展開
 ──改正法によって錯誤 制度はどのように変わったか②……近江幸治

特集「検察庁法改正法案」が意味するもの
 ⑴検察庁法改正問題について……木村草太
 ⑵「検察庁法改正」を振り返る……亀井源太郎

刑法判例と実務
 ──第57回 各論と期待可能性の周辺──……小林憲太郎

◆判決録細目◆

民 事

○性同一性障害と診断された戸籍上の性別が男性である申立人が、男性名から女性名への名の変更許可を申し立てた事案において、原審は、申立人が変更を求める女性名が、通称として永年使用され社会的に定着しているとは認められず、申立人がホルモン治療等を行わなかったなどの通院治療の状況等を併せ考慮し、名を変更することにつき正当な事由があるとは認められないとして申立てを却下したのに対し、抗告審は、申立人が心療内科・精神科に約1年半通院して、医師2名から性同一性障害の診断ガイドラインに沿った診断の結果、性同一性障害であることの診断を得ていることなどから、正当な事由があると認められると判断し、原審を取り消して申立てを許可した事例
(大阪高決令1・9・18〈参考原審:大阪家審令1・7・22掲載〉)

○1 タイヤの製造工程で使用するタルクに含まれるアスベストなどが原因で従業員らが肺がんや中皮腫を発症したとして、タイヤ製造業者の当該従業員らに対する安全配慮義務違反及び不法行為が認められた事例
2 使用者が従業員らに対して負う損害賠償債務につき消滅時効を援用することが権利濫用に該当するとされた事例
(大阪高判令1・7・19〈参考原審:神戸地判平30・2・14本誌2377号61頁掲載〉)

○通信教育等を目的とするY社において管理していたXの個人情報について、Y社がシステム開発を委託していたD社の業務委託先の従業員が不正に取得して外部に洩えいしたことは、情報管理義務のあるY社とD社の共同不法行為に当たり、これによるXの慰謝料として1000円が相当と認められた事例
(大阪高判令1・11・20〈参考上告審:最二判平29・10・23本誌2351号7頁掲載〉)

○河川洪水による流域住民の浸水被害につき、利水ダムの設置者にダム設置当時の河床の高さまで浚渫する義務はない等として、ダム設置者の流域住民に対する民法709条に基づく責任が否定された事例
(仙台高判平31・3・15〈参考原審:福島地会津若松支判平30・3・26本誌2391号36頁掲載〉)

○1 遺産分割協議が無効となり、改めてされた遺産分割審判が確定した場合において、一部の相続人が、相続開始から遺産分割までの間、相続不動産から生じた賃料(果実)を収取したときに、悪意の占有者として法定相続分に応じた返還請求権が認められた事例
2 一部の相続人に相続税負担額が過納になった場合、当該過納部分を損失、他の相続人の過少納税部分を利得ととらえることを前提としても、これらの間には因果関係がなく、不当利得返還請求権は認められないとされた事例
(高松高判平31・2・28〈参考原審:高松地判平30・5・15掲載〉)

▽ベッドからの転落を防止するための体幹抑制ベルトを装着されていた高齢の入院患者が、体動等も少なくなったため装着を解除されたときにベッドから転落して急性硬膜下血腫等を受傷し、脳外科手術後に転医したが、寝たきり状態になり、最終的に心不全で死亡したことについて、担当医師らに体幹抑制ベルトの装着継続や常時見守りを怠った過失及び頭部CT検査等の遅延の過誤があるとはいえないとされた事例
(東京地判令1・8・29)

▽1 弁護士が第三者の代理人として刑事告訴等をした行為について、弁護士の不法行為責任を否定した事例
2 弁護士が第三者の代理人として訴えを提起した行為について、弁護士の不法行為責任を否定した事例
(東京地判令1・10・1)

▽1 住宅等の賃貸借契約(原契約)に基づく賃料等債務に係る保証委託契約において、一定の要件の下で賃借人が賃借物件の明渡しをしたものとみなす権限を受託保証人たる家賃債務保証業者に付与し、賃借物件内の動産類を賃貸人及び家賃債務保証業者が任意に搬出・保管することに賃借人が異議を述べない旨定める条項が、消費者契約法8条1項3号に該当するものとされた事例
2 前記保証委託契約において、受託保証人である家賃債務保証業者に原契約を無催告解除する権限を付与する条項及び家賃債務保証業者による原契約の無催告解除権の行使について、賃借人等に異議がないことを確認する旨定める条項などが、消費者契約法8条1項3号又は10条後段に該当しないものとされた事例
(大阪地判令1・6・21)

◆判例評論◆

24 在外邦人国民審査権訴訟第1審判決
(東京地判令1・5・28)……山崎友也

25 漁業権を管轄する行政庁である県知事が属する行政主体である地方公共団体が、国に対し、漁業権の設定されている漁場において規則により必要とされる県知事の許可を受けずに国により岩礁破砕等行為が行われるおそれがあると主張してした同行為の差止めを求める訴え等が、裁判所法3条1項の法律上の争訟に当たらず不適法であるとされた事例
(福岡高那覇支判平30・12・5)……西上 治

26 所有権留保の効力が集合動産譲渡担保に優先するとされた事例
(最二判平30・12・7)……直井義典

27 団地型マンションの一括高圧受電方式導入決議に基づく個別電力供給契約の解約の可否と不法行為責任の認否
(最三判平31・3・5)……鎌野邦樹

28 被相続人が銀行預金口座開設のため銀行に提出した印鑑届書に関する情報は相続人等の個人情報には当たらないとされた事例
(最一判平31・3・18)……山下義昭

29 弁護士会照会に対する報告義務確認請求の確認の利益
(最二判平30・12・21)……加藤新太郎

30 死刑確定者が吸取紙への書き込み等の行為をしたことが遵守事項違反として拘置所長等から懲罰等の措置を受けたことにつき、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとされた事例
(最一判平31・3・18)……福島 至
◆記 事◆

◎特別寄稿
弁護士の懲戒処分に対する救済制度の違憲・違法性と是正策の提案……阿部泰隆

現代型取引をめぐる裁判例(455)……升田 純

緊急時の選挙延期と司法審査
 ── 新型コロナウイルス蔓延におけるアメリカの事例(海外判例研究特報)……大林啓吾

◆書 評◆

磯村健太郎=山口栄二『原発と裁判官』(朝日新聞出版、2013年)
評者……大塚正之

◆判決録細目◆

民 事

○別居親である抗告人(父)が、同居親である相手方(母)に対し、前件調停事件の調停条項に基づく面会交流が実施されなくなったとして、未成年者らとの面会交流を求めた事案において、間接交流のみを認めた原審判を変更し、従前の父子関係、直接交流時の状況、未成年者らの心情等からすると、直接交流を禁止すべき事由は見当たらず、これを速やかに再開することが未成年者らの福祉に適うとして、直接交流を認めた事例
(大阪高決令1・11・8〈参考原審:神戸家審令1・7・19掲載〉)

▽特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項の委任を受けた特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条第1項の発信者情報を定める省令3号の「電子メールアドレス」にSMS(ショートメッセージサービス)用電子メールアドレスが含まれるか否か(積極)
(東京地判令1・12・11)

▽鍼灸師が患者の頸部に鍼施術を行ったことにつき、当該鍼施術によって頸髄損傷が生じたことを認定し、鍼灸師の注意義務違反や一部後遺障害との因果関係を認めた事例
(東京地判令1・5・30)

▽夜間、漁港の岸壁から海中に転落し、運転者が死亡した事故につき、事故状況等からみて急激かつ偶然な事故とは認められないとした事例
(静岡地判平31・1・23)

労 働

▽勤務開始の時点で既にうつ病にり患していた者が自殺した理由は、上司の発言及び要望に応じた業務量の増加を受けられなかったことを原因としてうつ病の程度が増悪したことによるものであると主張して、遺族が使用者に対してした損害賠償請求が棄却された事例
(札幌地判令1・6・19)

刑 事

○1 被告人の尿から覚せい剤成分が検出された事件で、自らの意思で覚せい剤を摂取したと推認することができないとして覚せい剤使用について無罪とした原判決が控訴審で維持された事例
2 被告人が原審の最終陳述において覚せい剤が溶けた水をそれと知らずに飲んだ可能性があると述べたことについて原審検察官が追加立証をせず補充論告のみをし原審が無罪を言い渡した事案につき、検察官が控訴した場合において、その控訴趣意における、原審裁判所には検察官に立証を促さずに不意打ち的に無罪判決をした訴訟手続の法令違反(求釈明義務違反)があるとの主張が排斥された事例
(仙台高判平31・3・14〈参考原審:山形地判平30・3・19掲載〉)

▽13歳の少年が、覚せい剤及び大麻を友人と共に密売人から譲り受け、これを単独で所持したという触法(覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反)保護事件において、少年の薬物への依存性の深刻さ等を指摘し、少年を第1種少年院に送致した事例
(東京家決令1・9・12)
◆記 事◆

統治構造において司法権が果たすべき役割 第2部(10)
 団体の内部自治と司法権──地方議会を中心として──……渡辺康行

会社法・金融法随想──立法事実からみる、近況・課題(4)
 M&Aに関する諸問題……神田秀樹

科学と裁判(5)
 疫学と統計手法──特に因果関係を中心に……中村好一

無戸籍者問題の解消を図る一提案……杉浦徳宏

◆判決録細目◆

民 事

○マンション管理組合の理事長が善管注意義務に違反して、マンション大規模修繕工事を実施したと判断された事例
(東京高判令1・11・20〈参考原審:東京地判平30・11・28掲載〉)

○抗告人(原審申立人)が、相手方(原審相手方)に対し、遺産分割協議成立後に発見された遺産の分割を求めた事案において、先行する遺産分割が法定相続分と異なる不均衡なものであったことを考慮し、本件の遺産を全て抗告人に取得させるべきとした抗告人の主張を排斥し、先行する遺産分割の際に各相続人の取得する遺産の価額に差異があったとしても、そのことを是認していたというべきであり、その後の清算は予定されていなかったとして、本件の遺産を法定相続分により分割した原審の判断を肯認し、抗告を棄却した事例
(大阪高決令1・7・17〈参考原審:大阪家審平31・3・6掲載〉)

○事業遂行中の交通事故によって従業員が多数死傷するだけでなく、当該事故を契機として事故に遭わなかった従業員の多数が退職等を希望するようになって企業としての事業遂行が困難になったとしても、そのような事情は予見不可能な事情であるから、当該事故と事業遂行ができなくなったことで企業に生じた損害との間に相当因果関係は認められないとして、これを一部認めた原判決を取り消した事例
(大阪高判令1・9・25〈参考原審:京都地判平31・3・26本誌2423号89頁〉)

知的財産権

◎化合物の医薬用途に係る特許発明の進歩性の有無に関し当該特許発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定した原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判令1・8・27)

商 事

▽1 再保険契約の準拠法である日本法に、商慣習法として、運命共同体原則があるか(消極)
2 再保険及び元受保険の保険約款で保険金の支払条件として定められた元受被保険者の損害賠償義務が否定された事例
(東京地判令2・2・14)

刑 事

○自ら運営するインターネット上のウェブサイトの閲覧者が使用する電子計算機をもってその同意を得ることなく仮想通貨の採掘作業を実行させるプログラムコード(スクリプト本体)が蔵置されたサーバーコンピュータにアクセスさせ同プログラムコードを取得させて別のサーバーコンピュータに同プログラムコードの呼出しタグ(HTMLコード)を蔵置させ保管したとして不正指令電磁的記録保管罪(刑法168条の3)で起訴された被告人の行為につき、不正指令電磁的記録該当性(その主な構成要件であるいわゆる反意図性及び不正性に分かれる)、実行の用に供する目的及び故意の有無を争点と整理した上で不正性を否定するなどして無罪とした原判決を破棄し、いずれの要件も満たすと説示し有罪を言い渡した事例
(東京高判令2・2・7〈参考原審:横浜地判平31・3・27掲載〉)

◆最高裁判例要旨(2020(令2)2月分)
◆記 事◆

湖東記念病院再審請求事件を闘って……井戸謙一

科学と裁判(4)
 水俣病訴訟に関する科学的知見と最近の裁判例の動向……新美育文

刑法判例と実務
 ──第56回 「恐喝罪」の周辺──……小林憲太郎

◆判例特報◆

 入院患者に対する殺人により有罪の確定判決を受けた元看護助手の女性につき、新証拠によれば、事件性に疑いが生じたとして再審が開始された事件において、患者の死因を意図的な人工呼吸器の管の抜去による窒息死とする解剖医の判断の信用性に疑いがある一方、患者が他の原因で死亡した具体的可能性があるとして、被告人の自白供述を除いた証拠からは事件性が認められないと判断した上、人工呼吸器の管を抜去して患者を殺害した旨の被告人の自白供述につき、信用性がないのみならず任意性にも疑いがあると判断して被告人を無罪とした事例
──湖東記念病院再審請求事件無罪判決(大津地判令2・3・31)

◆判決録細目◆

民 事
○大学院の学費、留学費用等が特別受益と認められなかった事例
(名古屋高決令1・5・17〈参考原審:名古屋家審平31・1・11掲載〉)

○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、父である相手方が、母である抗告人に対して、子をその常居所地国であるロシアに返還するよう求めた事案において、原決定後にロシア国内の裁判所が、子の居住地を抗告人の下とし、抗告人が子を連れてロシアから日本へ出国することを許可する決定をしたことにつき、同法28条3項ただし書に基づき、同決定の理由が、子の返還事由の判断に影響しないかを検討した上で、返還拒否事由があるとは認められないことから、子の返還を命じた原決定は相当であるとして抗告を棄却した事例
(東京高決平31・2・28〈参考原審:東京家決平30・11・30掲載〉)

○1 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法」(刑特法)12条2項の定める緊急逮捕類似の手続は、少なくとも米軍により現行犯として身柄を拘束された者の身柄の引渡しに適用される限りにおいては、憲法33条、31条に反して違憲ということはできないとされた事例
2 米軍から米軍施設等内において拘束した者の身柄を引き渡す旨の通知を受けた海上保安官が、①同通知を受けた後、米軍から事情聴取を行い、身柄の引受けに不可欠な事務上の手続に要すると考えられる時間を超えて、身柄の引受けを遅延させたこと、②身柄の引受けを違法に遅延させた上で、同身柄の引受けに当たり刑特法12条2項に定める手続により身柄拘束を継続したことが、それぞれ国家賠償法上違法であるとされた事例
(福岡高那覇支判令1・10・7〈参考原審:那覇地判平31・3・19本誌2428号132頁掲載〉)

▽動産(日本刀)の引渡しを求める訴訟において、当初は日本刀の占有につき自白していた被告が、相当程度訴訟が進んだ段階で占有しているのは日本刀の偽物であるとして自白を撤回したことにつき、自白の撤回が認められ、さらに自白の撤回が時期に後れた攻撃防御方法とはいえないと判断され原告の請求が棄却された事例
(山形地判令1・8・6)

刑 事

▽1 駅改札口で駅員に対して脅迫を行ったとの訴因につき、防犯カメラの映像に照らし、被害者とされる駅員や現場に臨場した警察官の各証言が信用できないとして、現行犯逮捕された被告人が無罪とされた事例
2 被害者とされる駅員の証言が、事件後に実施された被害再現捜査の際の警察官の言動に影響を受け、これに沿うものとなったとして、信用性が否定された事例
(東京地立川支判平30・5・7)


判例評論

15 公選法204条の選挙無効訴訟において満18歳および満19歳の日本国民に衆議院議員総選挙の選挙権を付与する公選法9条1項の違憲を主張することが許されないとされた事例
(最一決平31・2・28)……山本真敬

16 1 個人タクシー事業の経営許可申請に対する却下処分につき、その根拠とされた収支計画要件が道路運送法6条の審査基準とすることができない違法なものであるなどとして、処分を取り消した原判決の判断を維持し、控訴人である国の控訴を棄却した事例
2 前記取消訴訟と併合提起されている事業許可の義務付け訴訟において、行政事件訴訟法37の3第5項が定める本案要件の有無は却下処分時における法令を前提に判断するとした上で、本案要件が認められるとして義務付けを認めた原判決を、却下処分時における法令を前提としても却下処分は本案要件を満たさないとして取り消し、義務付けの訴えに係る請求を棄却した事例
(東京高判平30・5・24)……春日 修

17 神奈川県議会政務活動費の交付等に関する条例に基づいて交付された政務活動費等について、その収支報告書上の支出の一部が実際には存在しないものであっても、当該政務活動費等の交付を受けた会派又は議員が不当利得返還義務を負わないとした事例
(最二判平30・11・16)……田中孝男

18 賃貸人が連帯保証人に市営住宅の建物賃貸借契約に基づく未払賃料等を請求した場合に、連帯保証人の一方的意思表示による連帯保証契約の解除を認め、解除以降の未払賃料等の債務負担を否定し、それ以降の支払請求は権利の濫用として許されないとした事例
(横浜地相模原支判平31・1・30)……能登真規子

19 離婚訴訟において原告と第三者との不貞行為を主張して請求棄却を求めている被告が当該第三者を相手方として提起した不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟が、人事訴訟法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たるとされた事例
(最三決平31・2・12)……常岡史子

20 ツイッター上におけるいわゆる「なりすましアカウント」作成者の特定のために、経由プロバイダに対して発信者情報の開示を求めた請求が、認められた事例
(東京高判平30・6・13)……高田 寛

21 1 ミキシングを行った者が著作権法2条1項6号所定のレコード製作者には該当しないとされた事例
2 映画の著作物に使用されているレコードにつき、許諾の不存在を合理的に疑わせる特段の事情の存在に基づき、外国映画配給会社に注意義務違反が認められた事例
(大阪地判平30・4・19)……前田哲男

22 休職期間中に行われた試し出勤(テスト出局)の相当性と賃金請求権などが争われ、試し出勤中の労働に対して最低賃金額相当の賃金支払が認められた事例
──日本放送協会事件
(名古屋高判平30・6・26)……柳澤 武

23 1 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の再抗告事件において同法70条1項所定の理由以外の理由により原決定を取り消すことの可否
2 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による入院決定を受けた対象者からの同法による医療の終了の申立て及び指定入院医療機関の管理者からの退院の許可の申立てを棄却した各原々決定及びこれを維持した各原決定に審理不尽の違法があるとされた事例
(最一決平29・12・25)……丸山 雅夫
◆記 事◆

科学と裁判(3)
 疫学と損害賠償訴訟における因果関係の証明
 ──大気汚染公害訴訟を中心に─……吉村良一

現代型取引をめぐる裁判例(454)……升田 純

◆判決録細目◆

民 事

▽担保不動産競売手続において土地建物が一括競売され法定地上権が成立することを前提に建物共有者に交付された剰余金の一部について、実体法上の土地利用権が使用借権であることを理由として土地所有者兼建物共有者からの前記建物共有者に対する不当利得返還請求が認められた事例
(横浜地判令1・10・30)

○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、父である相手方が、母である抗告人に対して、子をその常居所地国であるブラジルに返還するよう求めた事案において、同国が子の常居所地国であると認めた上で、同法28条1項3号(子の連れ去りの同意又は承諾)、同項4号(重大な危険)等の返還拒否事由があるとは認められないことから、子の返還を命じた原決定は相当であるとして抗告を棄却した事例
(東京高決平31・3・27〈参考原審:東京家決平31・2・4掲載〉)

○自動車保険契約における酒気帯び免責条項による免責の可否(積極)
(大阪高判令1・5・30〈参考原審:神戸地判平30・12・19掲載〉)

▽近視矯正等を目的として、レーシック手術又はレーゼック手術を受けた患者らが、それぞれ受けた施術によってコントラスト感度が低下したことについて、当時の屈折矯正手術ガイドラインを検討し、屈折矯正量を超える不適切なものであったといえず、適切なインフォームド・コンセントがなかったとか、術後に発生する合併症等についての適切な術前説明がなかったともいえないとして、施術にあたった医師らの責任が否定された事例
(東京地判平31・3・28)

▽1 公立女子大学が男性であることを理由に入学願書を不受理としたことは憲法14条に違反する等と主張して訴訟を提起した男性に関する週刊誌の記事について、読者は同記事の意見を主観的なものと受け取るにすぎないとして社会的評価の低下を否定し、名誉毀損の成立を認めなかった事例
 2 名誉感情侵害(侮辱)において、一般の読者を基準とした同定可能性は不法行為成立の要件ではなく、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為か否かの考慮要素にすぎないとした上で、前記記事の意見は社会通念上許容される限度を超える侮辱行為に当たるとして名誉感情侵害の成立を認めた事例
(福岡地判令1・9・26)

▽国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、父である申立人が、母である相手方に対して、3人の子らをその常居所地国であるスペインに返還するよう求めた事案において、子の返還申立ては、相手方による子らの留置の開始から1年を経過した後にされたものであり、子らはいずれも日本での生活に適応していると認められるから、同法28条1項1号(新たな環境への適応)の返還拒否事由があるとして申立てを却下した事例
(東京家決平30・12・11)

労 働

○1 期間の定めのない雇用契約が定年により終了した場合であっても、労働者からの申込みがあれば、それに応じて有期再雇用契約を締結することが就業規則等で明定され、又は確立した慣行となっていて、かつ、その場合の契約内容が特定されている場合には、労働者において雇用契約の定年による終了後も再雇用契約により雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があるとして、使用者が有期再雇用契約を締結しない行為が権利濫用に該当し、労働契約法19条、解雇権濫用法理の趣旨ないし信義則に照らして、雇用契約が成立するとみる余地はあるものの、本件においては、前記の慣行等があったとまでは認め難く、また、成立するとみなされる契約内容が特定できないとして、雇用契約の成立を否定した事例
2 従業員らから残業代の支払を求めるために別件訴訟を提起されたことを主要な動機として行われた再雇用契約締結の拒否、又は更新拒絶(雇止め)、及びそれと相前後する一連の働きかけは、裁判を受ける権利に対する違法な侵害行為であるというべきであるとして、会社の、前記従業員ら及び同人らが所属する労働組合に対する不法行為を認めた事例
(東京高判平31・2・13〈参考原審:東京地判平30・6・14掲載〉)

刑 事

○少年が、仮眠中の交際相手の女性に対し、首をつかんで無理やり起こし、あごを手でつかむ暴行を加えたという暴行保護事件において、少年の要保護性が極めて高いことから、比較的軽微な事案であることを考慮しても少年院への収容が必要不可欠であるとして第1種少年院送致とした原決定を是認し、抗告を棄却した事例
(東京高決令1・7・29〈参考原審:東京家決令1掲載〉)
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