判例時報 発売日・バックナンバー

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◆記 事◆

講話 民事裁判実務の要諦(11)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史

★書評 角田美穂子=フェリックス・シュテフェック編著
『リーガルイノベーション入門』……後藤巻則


◆判例特報・特集◆

▽新型インフルエンザ等対策特別措置法45条3項による飲食店に対する営業時間短縮命令の違法性を認めたものの、東京都知事が職務上の注意義務に違反したとは認めず、東京都の国家賠償法上の責任を否定した事例
──グローバルダイニング社VS東京都 コロナ禍時短命令国賠事件
(東京地判令4・5・16)

コロナ禍と日本型法の支配の記憶
──グローバルダイニング社事件が語ること……倉持麟太郎


◆判決録◆

行 政

◎大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例(平成28年大阪市条例第1号)2条、5条~10条と憲法21条1項
(最三判令4・2・15)

◎固定資産課税台帳に登録されたゴルフ場用地の価格が固定資産評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判令4・3・3)


民 事

▽信販会社から立替払を受けて三輪自動車(トライク)を顧客に販売した加盟店が、その後別の顧客に対して別の信販会社からの信用供与を受けさせて同一のトライクを販売する等した行為が、最初に立替払をした信販会社の留保所有権を侵害したとされた事例
(東京地判令2・9・29)

▽相続させる旨の遺言に民法1002条1項が類推適用された事例
(大阪地判令3・9・29)

▽1 被保佐人であることを警備員の欠格事由と定める警備業法(令和1年法律第37号による改正前のもの)14条、3条1号は、同規定の制定当初から、憲法22条1項、14条1項に反する状態であったとした事例
 2 遅くとも平成29年3月20日までに前記各規定を改廃しなかった国会の立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法であるとした事例
(岐阜地判令3・10・1)


刑 事

◎被告人は心神耗弱の状態にあったとした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し何ら事実の取調べをすることなく完全責任能力を認めて自判をした原判決が、刑訴法400条ただし書に違反するとされた事例
(最三判令3・9・7)

▽1 被告人両名の暴行によって死因である外傷性脳障害が生じて被害者が死亡したと考えるのが自然としつつ、検察官が主張する日時における暴行や共謀について検察官の依拠する一方の被告人の公判供述には変遷があり、具体性、迫真性に欠けるなど看過できない疑問点があり信用できないとして、検察官は立証に失敗したと結論付け、傷害致死罪につき無罪とされた事例
 2 検察官が公判前整理手続終結後、論告で初めて同時傷害の予備的主張等をしたことは相当性を欠くとされた事例
(名古屋地判令2・7・13)
◆記 事◆

裁判制度のパラダイムシフト─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(9)
──違憲判断の「効力」と「拘束力」……笹田栄司


◆判例特報◆

◎あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律19条1項と憲法22条1項
(最二判令4・2・7)


◆判決録◆

行 政

▽政党県議団に属する議員らが県から県議団を通じて交付を受けた政務活動費の一部を政務活動に該当しない選挙活動等に係る記事も混在した広報紙の作成・配布に係る経費に充てたとして、県議会事務局長に対して県議団に不当利得返還等を求めるように請求した住民訴訟が一部認容された事例
(神戸地判令3・4・22)


民 事

〇地方公務員災害補償基金の支部審査会における参考人の陳述や参与の意見陳述についての審議記録は、民事訴訟法220条4号ニに定める「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」にあたらない
(仙台高決令3・5・31)

〇納品先の生活協同組合連合会が3か年計画による約1万本のLED蛍光灯の導入計画を立てる旨の説明をして、3か年計画による導入についての価格見積りとして1本5700円の価格を提示させながら、同連合会が3か年計画を立てなかったのにその説明をせず、同じ価格で発注を続けた同連合会の子会社である注文者につき、信義則上の情報提供義務違反の過失が認められた事例
(仙台高判令3・3・25)

▽1 学校法人のハラスメント防止委員会が行った、大学教授による発言がハラスメントに当たり厳重注意とすることが相当である旨の決定について、同決定の取消請求の訴えの利益を否定した事例
 2 前記決定による名誉感情侵害の不法行為の成立を否定した事例
(札幌地判令3・8・19)


知的財産権

▽「ぼてぢゅう」の文字を含む結合標章(暖簾を模した図案中、その上段に「総・ぼ・て」の3字を含む図案を、その下段に「ぼてぢゅう総本家」を、それぞれ配置したもの)が、「ぼてぢゅう」という商標に類似しないとされた事例
(東京地判令4・3・18)


商 事

〇1 株主権の確認及び当該株主に対する株主総会の招集通知を欠いたことによる株主総会決議の不存在確認を認めた1審判決が、控訴審において維持された事例
 2 前記株主総会における取締役解任決議が記載された株主総会議事録を作成し、解任登記をしたことが不法行為に当たるとされた事例
(大阪高判令3・7・30)


刑 事

◎数罪が科刑上一罪の関係にある場合において、各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり、軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときの罰金刑の多額
(最一判令2・10・1)

〇1 入場情報を機械として判定対象としていない自動改札機における、磁気定期券を用いたキセル乗車について、鉄道会社が設置する駅の自動改札システムの目的は、有効適切な区間の乗車券や磁気定期券による有効適切な乗車か否かを判断することにあり、同システムにおいて予定されている事務処理の目的とは、乗車駅と下車駅との間の正規の運賃が支払われた正当な乗車か否かを判定して出場の可否を決することを指すとして、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めた事例
 2 1審判決が、前記自動改札機が入場情報を判定対象としていないとの個別具体的な事務処理の内容を捨象し、自動改札システムの一般的な抽象的な目的を前提に判断するのは、電子計算機使用詐欺罪の外縁を不明確なものにし、処罰の範囲を不当に拡大するおそれがあるとしたのに対し、駅係員に前記キセル乗車に用いた定期券を示した場合には詐欺罪が成立することが明らかであるから、同自動改札機に同定期券を投入した行為を詐欺罪の補充規定である電子計算機使用詐欺罪で処罰することは、構成要件の外縁を不明確にするものでも処罰範囲を拡大するものでもないとした事例(名古屋高判令2・11・5)


◆判例評論◆

31 最高裁大法廷夫婦同氏制合憲決定
  ──夫婦同氏制と国際人権法(最大決令3・6・23)……近江美保

32 1 被告国及び被告東電に対し、平成23年3月11日に発生した福島第一原発の事故により放射能に汚染された福島県双葉郡浪江町津島地区全域について、放射線量を低下させる義務のあることの確認を求める訴えが棄却され、放射線量を低下させることを求める訴えが却下された事例
  2 経済産業大臣が、福島第一原発について平成18年までに発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和40年通商産業省令第62号)4条1項の基準を満たしていないことを理由とする技術基準適合命令を発しなかったことは、法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであり、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
  3 被告東電に故意に匹敵するような重大な過失があったとは認められず、被告東電の悪質性を慰謝料の増額事由として考慮することはできないが、前記津島地区に居住する原告らが抱く被ばくの不安は、慰謝料の算定に当たって考慮すべきであるなどとして、被ばく慰謝料を請求している原告について基本額として1人1600万円を認めた事例
  4 被告東電から基本額を超える額の支払いを受けた原告については、被告東電と当該原告との間で、個別事情を考慮して上乗せした賠償額を被告東電が支払う旨の合意が成立したと認めた事例(福島地郡山支判令3・7・30)……長島光一

33 減額賦課決定により配当時に遡って存在しなかったこととなる年度分の個人住民税に充当されていた配当金を配当時に存在していた他の年度分の差押えに係る個人住民税に遡って充当すべきとされた事例(最三判令3・6・22)……倉見智亮
◆記 事◆

統治構造において司法権が果たすべき役割 第3部(6)
 表現活動への国家の「援助」と表現の自由……市川正人

建設工事紛争審査会の実情
 ──ADRとしての役割──……門口正人


◆判例特報◆

〇1 優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)4条ないし13条の憲法13条、14条適合性
 2 国会議員による優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)4条ないし13条の立法行為と国家賠償法1条1項の違法性
 3 優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)4条ないし13条の立法行為に係る国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権について民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の規定の適用が否定された事例
──旧優生保護法国賠訴訟控訴審判決
(大阪高判令4・2・22〈参考原審:大阪地判令2・11・30本誌2506=2507号69頁〉)


◆判決録細目◆

行 政

〇性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律2条に定める性同一性障害者であって、性別適合手術を受けておらず、戸籍上の性別変更をしていないトランスジェンダー(Male to Female)の国家公務員が、所属省内の女性用トイレの使用に制限を受けていたことにつき、公平処遇を求める措置要求を認められないとした人事院の判定の取消しを求めるとともに、国家賠償法に基づく損害賠償を求めた請求について、いずれも違法がないとされた事例
──経済産業省性同一性障害事件
(東京高判令3・5・27〈参考原審:東京地判令1・12・12〉)


民 事

▽1 送金委託契約に基づいて送金がなされる場合、送金依頼人と被仕向銀行の法律関係において民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)107条2項は類推適用されないとされた事例
 2 被仕向銀行が仕向銀行から受領した被仕向送金接受受付票記載の受取人の口座についての情報と被仕向銀行に実在する口座についての情報とが完全に一致していない場合において、被仕向銀行が自行の前記口座に被仕向送金額相当の入金をしたことにつき、受取人の特定として足りていたとされた事例
(東京地判令3・8・25)

▽1 相続人が、被相続人の生前に、被相続人の預金口座等から被相続人に無断で出金し、これに対し他の相続人が、被相続人から相続した不当利得返還請求権を行使する場合の権利割合は法定相続分であるとした事例
 2 相続人が、被相続人の死後、遺産である被相続人の預金口座から他の相続人に無断で出金し、これに対し他の相続人が、不当利得返還請求権を行使する場合の権利割合は法定相続分であるとした事例
(東京地判令3・9・28)


労 働

▽労働者派遣事業等を業とする株式会社である原告の従業員であった被告が原告に在職中に別会社(被告会社)を設立して原告のスタッフを被告会社に引き抜いたことによって損害を被ったと主張する原告が、被告及び被告会社に対して損害賠償を求める本訴を提起し、原告が被告の行為を非難する文書を関係先に配布したことによって名誉が毀損されたと主張する被告らが、原告に対して損害賠償を求める反訴を提起した事案において、本訴請求と反訴請求がそれぞれ一部認容された事例
(宮崎地都城支判令3・4・16)


商 事

〇取締役会議事録及び監査役会・監査等委員会議事録の閲覧謄写許可の申立てが、株主の権利を行使するため必要があること及び申立てに係る議事録部分が存在することの疎明があるとは認められないとして却下された事例
(大阪高決令3・5・28〈参考原審:神戸地尼崎支決令3・1・13〉)


刑 事

〇1 実子(生後1月及び3月)に対し身体を揺さぶる等の暴行を加え、急性硬膜下血腫等の傷害を負わせ(死亡させ)たという傷害(致死)の事案において、被害者の傷害は他の原因で生じた可能性が否定できないとして無罪とした原審の判断を是認した事例(①②事件)
 2 公判前整理手続終結後の検察官からの証拠調べ請求につき「やむを得ない事由」がないとして却下した原審の判断を是認するとともに、職権で取り調べなかった点に審理不尽の違法がある旨の検察官の主張を排斥した事例(②事件)
(①東京高判令3・5・28、②名古屋高判令3・9・28)

〇ベトナム人技能実習生である被告人が、死産したえい児の死体を段ボール箱に二重に入れて接着テープで封をし、自室にあった棚の上に置いた行為は死体遺棄罪にいう遺棄にあたるが、1日と約9時間の間、同死体の葬祭を行わなかった行為はこれにあたらないとした事例
(福岡高判令4・1・19)
◆記 事◆

講話 民事裁判実務の要諦(10)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史

統治構造において司法権が果たすべき役割 第3部(5)
 憲法判例の現状分析……渋谷秀樹


◆判決録細目◆

行 政

〇1 将来の転売を目的として購入したマンションに係る課税仕入れが消費税法30条2項1号の「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に当たらず、同号の「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に当たるとされた事例
 2 確定申告における消費税の申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとはいえないとされた事例
(東京高判令3・7・29〈参考原審:東京地判令2・9・3〉)

▽スリランカ国籍の父、モンゴル国籍の母、これらの国の二重国籍の3人の子らのうち、長女と二女について、法務大臣等が出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出に理由がない旨の裁決を撤回せず、在留特別許可をしなかったことが、その裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用したものであるとされた事例
(東京地判令3・11・24)


民 事

▽いわゆる給与ファクタリング取引は、契約書上事業者が労働者の給与債権を買い取る形になっていたとしても、実質的には金銭消費貸借契約であり、債権譲渡契約を根拠として当該労働者が支払を受けた給与債権の額面相当額の支払を求める前記事業者の請求は成立し得ないとされた事例
(東京地判令3・1・26) 

▽建物の使用を目的の1つとする土地の使用貸借において、被告が負担している同土地上の建物に係るローン残額に相当する額の支払と引き換えに、土地の使用及び収益をするのに足りる期間を経過したことによる使用貸借の終了を認めた事例
(東京地判令3・6・24)

▽日本及びD国の国籍を有する原告(妻)が、チェコ及びE国の国籍を有する被告(夫)に対し、離婚を求めるとともにD国及びE国の国籍だけでなく、チェコ国籍を有することに争いがある長男の親権者を原告と定めること等を申し立てた事案において、親子間の法律関係の準拠法については、法の適用に関する通則法により、原告は日本法(通則法38条1項ただし書)、被告は約24年間チェコに在住していたこと等からチェコ法(通則法38条1項本文)、長男はチェコ国籍を有するものと認めた上で約2年半チェコに居住し永住権も取得していること等からチェコ法(通則法38条1項本文)がそれぞれ本国法となり、子である長男の本国法と父である被告の本国法が同一であるから、親子間の法律関係はチェコ法が適用(通則法32条)されるとし、長男の親権者・監護については、チェコ民法においては、離婚後も親責任を有するが、被告は様々な国に転々と赴任し長男の養育環境としては不安定な面があることは否定できないなどとして、原告の単独監護(チェコ民法907条1項)に委ねることが相当であるとし、原告の請求を認容した事例
(東京家判令3・3・29)

▽1 被相続人の特別縁故者に当たるとして被相続人の財産を分与する旨の審判を求めた事案において、申立て後、審判前に死亡した申立人の相続人らに相続財産の一部を分与した事例
 2 前記事案における分与額につき、申立人が既に民法958条の3第2項の期間を経過した者との間で、申立人に対する相続財産分与審判が確定することを停止条件とする贈与契約を締結したことについての考慮の当否を判断した事例
(山口家周南支審令3・3・29)


労 働

▽じん肺法上のじん肺管理区分決定を受けていた労働者らが間質性肺炎の増悪により死亡したことについて、業務起因性が肯定された事例
(長崎地判令3・6・21)


◆最高裁判例要旨(2022(令4)年4・5月分)
◆記 事◆

議会制民主主義のいま─主権・選挙・代表を再考する(7)
 半直接民主制における議会の立法過程と日本への示唆……武蔵勝宏


◆判決録細目◆

行 政

〇1 不法残留に当たるなどとした処分行政庁の裁決及び処分行政庁がした退去強制令書の発付処分の各取消しを求める訴えを棄却する判決が確定した後、裁決後の事情を理由として提起された当該裁決の撤回の義務付けを求める訴えについて、訴訟要件を欠き不適法であるとされた事例
 2 前記裁決の撤回の義務付けを求める訴えとともに提起された在留特別許可の義務付けを求める訴えが不適法であるとされた事例
(東京高判令3・7・15〈参考原審:東京地判令3・1・28〉)


民 事

〇仮想通貨についての情報教材を販売する法人および販売勧誘を助長する事業者個人に対し、特定適格消費者団体が原告となって提起した共通義務確認訴訟において、同訴訟の適用要件である「支配性」が認められないとして訴えが却下された事例
(東京高判令3・12・22〈参考原審:東京地判令3・5・14〉)

〇支援の必要性の要件を欠くことを容易に知ることができたのにあえて住民基本台帳事務における支援措置の延長の申出をしたことが、ドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者とされた元夫に対する不法行為に該当するとされた事例
(名古屋高判令3・4・22〈参考原審:名古屋地判令2・9・24〉)

〇住宅型有料老人ホームに入居し訪問介護サービスの提供を受けていた高齢者が居室の窓から転落して傷害を負い、その後死亡した事故について、施設運営会社及び介護事業者に対する安全配慮義務違反又は共同不法行為等に基づく損害賠償請求をいずれも棄却した事例
(福岡高宮崎支判令3・4・21〈参考原審:鹿児島地判令2・10・30〉)

〇公立中学校に通う生徒が適応障害と診断されたとして部活動における負担軽減等の配慮を求めたにもかかわらず、教諭らが負担軽減措置を継続せず症状を悪化させたとして、配慮義務違反に基づく損害賠償請求を一部認容した事例
(福岡高宮崎支判令3・2・10〈参考原審:鹿児島地判平31・4・16〉)

▽高等学校が生徒募集を停止して閉校したことにつき、学校設置会社が提携先の事業者に対して債務不履行責任を負うとされた事例
(大阪地判令3・7・16) 


知的財産権

▽1 商品又は営業を表示するものとして文字から構成される標章の著作物性
 2 ANOWA等の文字から構成されるロゴタイプが著作物には該当しないとされた事例
(東京地判令3・12・24)


刑 事

◎違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に、法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
(最三判令3・7・30)


判例評論

28 建設アスベスト訴訟神奈川ルート上告審判決
(最一判令3・5・17)……北村和生

29 被告人の、車両(普通乗用車)を運転中、同車両を、被害者の運転する車両(大型自動二輪車)に後方から接近させ、時速100キロメートル弱の速度で衝突させ、被害者を車両もろとも転倒させるなどして死亡させた行為について、殺人罪の成立を認め、被告人を懲役16年に処した原判決が、その判断には事実の誤認も刑の量定不当もないとして是認された事例
──堺市あおり運転殺人事件控訴審判決
(大阪高判令1・9・11)……古川伸彦

30 身体拘束を受けていない被疑者の弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者が、任意取調べを受けている被疑者との面会を捜査機関に対して申し出た場合において、当該申出の存在を被疑者に告げないまま任意取調べを継続させた捜査機関の措置は国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
(東京高判令3・6・16)……堀田尚徳
◆記 事◆

最高裁民事破棄判決等の実情
 ──令和3年度──……宮﨑朋紀・大竹敬人

講話 民事裁判実務の要諦(9)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史


◆書 評◆

田中敦編『抗告・異議申立ての実務』(新日本法規出版、2021)
評者……遠藤賢治


◆判例特報◆

▽原子力発電所の運転差止請求において、原子力災害対策指針に定める段階的避難等が実現可能な避難計画の策定及びこれを実行し得る体制が講じられていないため、人格権侵害の具体的危険があるとして、PAZ及びUPZ(前記発電所から概ね半径30㎞の範囲)内の住民に限り、差止めを認めた事例
──東海第二原発運転差止請求事件第1審判決
(水戸地判令3・3・18)


◆判決録細目◆

民 事

〇公立高校に在籍していた生徒が、教員らから頭髪指導として受けた措置のうち、黒染め強要等について国家賠償法上の違法又は在学関係上の安全配慮義務違反があるとは認められないが、不登校となった後の生徒名簿からの削除等については教育環境配慮義務における裁量権の範囲を逸脱したものとして国家賠償法の違法に基づく損害賠償請求を認めた原審の判断を、控訴審が是認した事例
(大阪高判令3・10・28〈参考原審:大阪地判令3・2・16〉)


刑 事

〇警察官が職務質問の際に被告人運転車両から見つけたとするチャック付きビニール袋の束が警察官が仕込んだ虚偽の証拠であるか否かにつき、その疑いを拭い去ることはできないが疑いは濃厚でないところ、その程度にとどまる事情だけを根拠に薬物等の証拠能力を否定しても、将来における違法行為抑止の実効性を担保し得るかどうか疑問があるとして、違法収集証拠排除法則の適用を否定した事例
(東京高判令2・11・12)
◆記 事◆

議会制民主主義のいま─主権・選挙・代表を再考する(6)
 議会制民主主義の空洞化──国会の権限放棄を問う視角から……村西良太

コロナ禍社会における法的諸問題(22)
 刑事司法のデジタル化に対する期待とコロナ禍……今井輝幸


◆判決録◆

行 政 

◎性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号と憲法13条、14条1項
(最三決令3・11・30)


民 事

○伊方原発3号機につき、地震、火山の噴火等に起因する事故による人格権侵害のおそれを根拠として運転差止めを求めた仮処分命令申立事件において、運転差止めを命じた抗告審決定を取り消し、債権者らの抗告を棄却した事例
──伊方原発運転差止仮処分命令申立事件
(広島高決令3・3・18)

▽地方公共団体である原告が住民である被告に対し還付しすぎた住民税の返還を求める不当利得返還請求権につき、延滞金条例の適用はないとした事例
(大阪地判令3・10・13)


知的財産権

▽1 商品に関する表示が複数の商品形態を含む場合における不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「商品等表示」該当性
 2 ハイヒールの靴底に赤色を付した表示が商品等表示には該当しないとされた事例
(東京地判令4・3・11)

▽フリーマーケットサイトにおいて、「#」(ハッシュタグ)に続く文字表記に原告の登録商標を記載する行為について、商標的使用にあたるとして商標権侵害に基づく差止請求を認容した事例
(大阪地判令3・9・27)


刑 事

▽3名の共謀による強制わいせつ致傷の公訴事実について、被害者の証言によって事件性を認めるには合理的な疑いが残るとして、共謀の検討をするまでもなく無罪の言渡しをした事例
(千葉地判令3・7・15)

▽任意同行後、被疑者をホテルに6夜にわたり宿泊させ、捜査官が常に被疑者の客室の前付近で警戒を続けていたなどの事実関係から、任意同行が実質的な逮捕に当たるとして、制限時間の不遵守を理由に勾留請求等を却下した原裁判を是認した事例
(富山地決令2・5・30)


◆最高裁判例要旨(2022(令4)年3月分)


◆判例評論◆

24 平水区域・沿海区域を航行する船舶への船主責任制限法の適用と責任制限の適用排除
(福岡高決令3・2・4)……増田史子

25 破産会社の過年度遡及損益修正に関する更正の請求と公正処理基準
(最一判令2・7・2)……長島 弘

26 正当な理由によって「不公正な取引方法の勧奨」が成立しないと判断された事例
(東京地決令3・3・30)……伊永大輔

27 有価証券届出書の財務計算部分に係る虚偽記載と元引受業者の民事責任──エフオーアイ事件
(最三判令2・12・22)……山下徹哉
◆記 事◆

議会制民主主義のいま─主権・選挙・代表を再考する(5)
 現代日本の議会制民主主義──その特徴と課題……待鳥聡史


◆判決録◆

行 政

〇1 心筋梗塞を申請疾病とする原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定申請に対する却下処分につき、予防接種のたびに化膿していたことや結膜炎により眼球摘出を余儀なくされたといった申請人の被曝後の健康状態は放射線被曝による好中球等の機能低下により生じたものと推認することができ、このような健康状態や被曝状況等を考慮すれば、申請人に複数の心筋梗塞の危険因子が存在していることを踏まえても、前記申請に係る申請人の心筋梗塞については、原爆放射線に被曝したことに起因するものと認めるのが相当であるから前記却下処分が違法であるとして、前記却下処分の取消請求を棄却した原判決を変更し、前記却下処分を取り消した事例
 2 前記の原爆症認定申請につき、原爆症認定要件の充足に関する判断を誤って却下したことなどが国家賠償法上違法であるとはいえないとされた事例
(大阪高判令3・5・13)

▽墓地、埋葬等に関する法律10条1項に基づく経営許可がされた納骨堂の周辺に居住する者等が当該許可の取消訴訟の原告適格を有しないとされた事例
(大阪地判令3・5・20)

▽1 暴行被告事件で無罪が確定した原告による、逮捕等の違法を理由とする国家賠償請求及び被害者の被害申告が虚偽であることを理由とする損害賠償請求を棄却した事例
 2 捜査段階で取得された原告の指紋、DNA型、顔写真及び携帯電話の各データの抹消請求を一部認容した事例
(名古屋地判令4・1・18)


民 事

◎不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金を民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることの可否
(最三判令4・1・18)

▽債務の存在を争いつつ行った弁済の受領の催告について、債務の本旨に従った弁済の提供と認められた事例
(東京地判令3・8・30)


知的財産権

〇電話ボックス様の水槽に水をいれ金魚を泳がせた作品の著作物性が控訴審で認められた事例
(大阪高判令3・1・14)

▽原告漫画を含む著作物を無断掲載するサイト(海賊版サイト)の運営が同サイトに掲載される広告に係る広告料収入を唯一の資金源として行われていた事情の下で、広告主を募り広告料を同サイトに提供する行為が、著作権(公衆送信権)侵害の過失による幇助行為に当たると認められた事例
(東京地判令3・12・21)
◆記 事◆
不正指令電磁的記録に関する罪が保護するもの
 コインハイブ事件最高裁判決(最一判令4・1・20)……永井善之

講話 民事裁判実務の要諦(8)──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史

書評 水野浩二『葛藤する法廷──ハイカラ民事訴訟と近代日本』……伊藤 眞


◆判例特報◆

〇1 原子爆弾が投下された後において、いわゆる「黒い雨」を直接浴びたり、「黒い雨」降雨域で生活していた者につき、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律1条3号の「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」として「被爆者」に該当すると判断した事例
 2 原審判決と異なり、原子爆弾被爆者に対する
援護に関する法律27条所定の健康管理手当の支給対象となる11種類の障害に伴う疾病にり患したことを、同法1条3号の「被爆者」要件としなかった事例  ──「黒い雨」訴訟控訴審判決
(広島高判令3・7・14)


◆判決録◆

民 事

◎交通事故により被害者に身体傷害及び車両損傷を理由とする各損害が生じた場合における、被害者の加害者に対する車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条前段所定の消滅時効の起算点
(最三判令3・11・2)

▽神社の氏子会の会員が、同会の活動の一環として、神社の境内において、地上約5メートルの高さの地点で電動工具(チェーンソー)を用いて長さ約15メートル、重さ300キログラム以上の大枝を切り落とす作業をした際、落下した大枝が地上にいて同作業を見守っていた他の会員に当たり同人が死亡した事故において、日常事故賠償責任補償特約に基づき保険金が請求された事案につき、同事故は、同特約の保険金支払要件に規定する「日常生活に起因する」事故に該当しないとして請求が棄却された事例
(東京地判令3・6・22)

▽遺産の一部を相続させるものとされた複数の推定相続人の一部が遺言者の死亡以前に死亡したとしても、直ちに遺言全部が無効となるとは認め難いとされた事例
(東京地判令3・11・25)

▽外国において日本人がその国の方式に従って「夫婦が称する氏」を定めることなく婚姻をした場合には、「夫婦が称する氏」が定められて婚姻による夫婦同氏の効力が発生する前であっても、我が国において婚姻が有効に成立しているとされた事例
(東京地判令3・4・21)


知的財産権

▽1 公立大学の名称について、不正競争防止法2条1項2号の著名性が否定され、同項1号の周知性が認められた事例
 2 設置主体を示す文言の有無を異にする2つの大学の名称について、不正競争防止法2条1項1号の類似性が否定された事例
(大阪地判令2・8・27)


刑 事

◎強制わいせつ罪等を非親告罪とした「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)の経過措置を定めた同法附則2条2項と憲法39条
(最三判令2・3・10)

▽精神障害による妄想・幻聴の影響下で家族及び近隣住民計5名を殺傷するなどした殺人、殺人未遂等の事案につき、捜査段階で行われた2名の精神科医による各精神鑑定の信用性を検討した上、心神喪失状態にあった疑いが残るとして無罪を言い渡した事例
(神戸地判令3・11・4)
◆記 事◆

統治構造において司法権が果たすべき役割第3部(4)
 裁判官の良心について……長谷部恭男


◆判決録細目◆

行 政

〇令和3年10月の衆議院小選挙区選出議員選挙における選挙区割りを定める公職選挙法の規定の憲法適合性
(大阪高判令4・2・3)


民 事

◎財産の分与に関する処分の審判の申立てを却下する審判に対し相手方が即時抗告をすることの許否
(最一決令3・10・28)

〇親族間の土地使用貸借において、借主の死亡による民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)599条に基づく使用貸借の終了が否定されたが、当事者の信頼関係破壊を理由に同法597条2項ただし書の類推適用により使用貸借の解約が認められた事例
(名古屋高判令2・1・16〈参考原審:名古屋地半田支判平31・3・26〉)

〇交通事故により死亡した公務員の遺族が受領した死亡退職手当は、損益相殺として、被害者の退職手当逸失利益の当該遺族の相続分から控除されるが、退職手当逸失利益の当該相続分の額が死亡退職手当の額を下回る場合であっても、その差額を給与逸失利益等他の損害の費目から控除することは許されないとされた事例
(高松高判平30・1・25〈参考原審:高松地判平29・7・18〉)

▽大学の医学部入学試験において出願者の属性(女性、浪人生及び高等学校等コード51000以上の者)を不利に扱う得点調整は違法であり、同大学を運営する学校法人は入学試験の評価において属性を考慮する旨を告知する信義則上の義務を負うものとし、受験生の納入した入学検定料、受験票送料、送金手数料、出願書類郵送料、及び特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額について損害を認め、旅費及び宿泊費については支配性の要件を欠くとして請求を却下した事例
(東京地判令2・3・6)

▽店舗内の個室トイレに入室しようとした67歳の女性がトイレ内の段差に足を取られて転倒し傷害を負ったとして、同店舗の運営会社に対し損害賠償を求めた事案で、土地工作物責任(民法717条1項)が認められ、請求が一部認容された事例(過失相殺5割)
(横浜地判令4・1・18)

▽原告が主張する燃料電池ユニットを発生源とする低周波音による健康被害について、前記発生源から生じた低周波音により原告が健康被害を受けるようになり、同被害が継続している旨の具体的な立証がないとして請求を棄却した事例
(横浜地判令3・2・19)


労 働

〇従業員による暴行により三叉神経痛・心的外傷後ストレス障害(PTSD)が発症した旨の労災認定がされた事案につき、その発症・因果関係に疑問があり、PTSD発症についての予見可能性も認められないとして、顔面殴打に関連する眼科初診治療費等に限り損害賠償を命じた事例
(大阪高判令2・11・13〈参考原審:大阪地判平30・12・14〉)


刑 事

〇軽度知的障害を有する年少の養女に対する監護者性交等の事案において、捜査機関の関与前に児童相談所が実施していた被害者面接時の記録媒体を証拠採用し、その内容も踏まえた上で被害者証言の信用性を肯定して被告人を有罪とした差戻後第1審判決が控訴審において維持された事例
(福岡高判令3・10・29〈参考差戻前第1審:福岡地判令1・7・18、差戻前控訴審:福岡高判令2・3・11、差戻後第1審:福岡地判令3・6・9〉)


判例評論

19 違法行為の転換あるいは理由(法的根拠)の差替え
(最三判令3・3・2)……平 裕介

20 土地の売買契約の買主が売主に対し債務の履行を求めるための訴訟の提起等に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することができないとされた事例
(最三判令3・1・22)……都筑満雄

21 社債に対する利息制限法の適用の可否
(最三判令3・1・26)……松嶋隆弘

22 加害者が被害者を同乗させ被害者所有の自動車を運転中に起こした交通事故につき、加害者との間で自動車共済契約を締結していた共済事業者(原告)が被害者に対して損害賠償金を支払ったが、加害者と同居する加害者の父が他の共済事業者(被告)と自動車共済契約を締結していたときは、前記交通事故による損害については両共済契約の他車運転特約がそれぞれ適用されるから、両共済契約は保険法20条の重複保険に当たり、同条2項に基づき、原告は被告に対し、求償できるとした事例
(東京地判令2・6・22)……濱口弘太郎

23 自筆遺言証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって同証書による遺言が無効となるものではないとされた事例
(最一判令3・1・18)……浦野由紀子
◆記 事◆

わくわくする民事訴訟改正
──いよいよ「6か月内の迅速審理」がスタートする……定塚 誠

議会制民主主義のいま─主権・選挙・代表を再考する(4)
 代表構成と選挙制度をめぐる憲法論の「過少」
 ──司法判断で改めて留意してほしい諸論点……新井 誠


◆判決録細目◆

行 政

〇普通河川の敷地の占用に関する不許可処分について、市長の裁量権の行使に当たって事業の公共性・公益性等も考慮できるとして、市長の判断には裁量権の逸脱又は濫用の違法はないが、適切な理由が提示されなかったとして前記不許可処分が取り消された事例
(東京高判令3・4・21)

〇市が管理する道路の歩道部分に設置されたガソリンスタンドへの車両乗入口につき、車種、走行条件によっては車体底部が路面に接触し得る構造であるといえても、それにより生ずる損傷は軽微であり、多くの車両運転者は相応の注意を払って進入し接触を回避している実情にあるといえるから、車両乗入口として通常有すべき安全性を欠くとはいえず、車両乗入口を設置したガソリンスタンドの所有者につき不法行為責任及び道路を管理する市につき国家賠償責任がいずれも成立しないとされた事例
(名古屋高判令3・2・26)


民 事

〇民法811条6項の死後離縁の申立てにつき、生存養親又は養子の真意に基づく限り、原則としてこれを許可すべきであるが、離縁により養子の未成年の子が養親から扶養を受けられずに生活に困窮することとなるなど、社会通念上容認し得ない事情がある場合には、これを許可すべきではないと解した上で、本件においては、前記社会通念上容認し得ない事情がある場合に該当しないとして、推定相続人廃除の手続を潜脱する目的でなされた恣意的なものであるとして死後離縁の申立てを却下した原審判を取り消し、死後離縁の申立てを許可した事例
(大阪高決令3・3・30)

▽建物賃貸借契約が法定更新される場合にも更新事務手数料を必要とする条項について、消費者契約法10条に反し無効とした1審の判断を変更し、控訴審では同条に該当せず前記条項は有効であるとした事例
(東京地判令3・1・21)

▽子らの監護者の指定と引渡しを求めた事案において、主たる監護者は申立人であったところ、相手方は、単独監護の開始を強行した上、子らを海外渡航させて申立人との交流を断ったものであり、監護者としての適格を欠くとして、前記各申立てをいずれも認容した事例
(東京家審令3・5・31)


知的財産権

〇五線譜に表された音楽的要素及び「マツモトキヨシ」の片仮名で記載された歌詞の言語的要素からなる音商標が、商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標に当たらないと判断された事例
(知財高判令3・8・30)

〇1 音楽教室における教師の演奏行為の演奏主体は音楽教室事業者であり、その演奏行為は音楽教室事業者による演奏権の行使にあたるとした事例
 2 音楽教室における生徒の演奏行為の演奏主体を生徒であるとした事例
 3 音楽著作物を楽譜や録音物に複製することを許諾したことによって、演奏権が消尽することはないとした事例
(知財高判令3・3・18)


労 働

〇約1年間にわたり著しい長時間労働に従事していたレストランの調理師が、劇症型心筋炎を発症して最終的に死亡したことについて、レストラン経営会社代表者兼オーナーシェフには従業員である前記調理師に対する負担軽減措置を講じない注意義務違反があり、同注意義務違反及び長時間労働による過労状態と前記調理師の死亡との間の相当因果関係を肯定して損害賠償請求を認容した1審判決が控訴審でも維持された事例
(大阪高判令3・3・25)


刑 事

〇少年が、被害者を引き倒して腹部を踏みつけるなどの暴行を加え、腹部挫傷等の傷害を負わせたという傷害保護事件において、少年を第1種少年院送致とした原決定に対する処分の著しい不当を理由とする抗告につき、試験観察中に補導委託先から無断退去し、不良交友に居場所を求めたこと等を指摘し、抗告を棄却した事例
(東京高決令3・9・6)


◆最高裁判例要旨(2022(令4)年2月分)
◆記 事◆

講話 民事裁判実務の要諦(7)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史


◆書 評◆

加藤新太郎『民事事実認定の技法』(弘文堂、2022)
評者……山浦善樹


◆判決録細目◆

行 政

▽1 1型糖尿病にり患し、国民年金法に基づく障害基礎年金の支給を受けていた者に対してされた同法36条2項本文に基づく支給停止処分が違法であるとされた事例
 2 1型糖尿病にり患し、国民年金法に基づく障害基礎年金の支給を受けていた者に対してされた同法36条2項本文に基づく支給停止処分、及び1型糖尿病にり患し、同項本文の規定に基づく支給停止処分を受けた者に対してされた、支給停止を解除しない旨の処分が、違法であるとはいえないとされた事例
(大阪地判令3・5・17)


民 事

〇1 前訴と訴訟物を異にする後訴において前訴の確定判決の理由中で判断されたものより高度の後遺障害の存在を主張することが信義則上許されないとされた事例
 2 交通事故の被害者が後遺障害について違法に虚偽の申告をしたことと加害者との間で自動車損害賠償責任保険契約を締結していた保険会社による後遺障害等級認定及び保険金の支払との間に相当因果関係がないとされた事例
(大阪高判令2・1・31〈参考原審:大阪地判平31・4・18〉)

〇抗告人(母)が未成年者らを相手方(父)と直接的面会交流させることを内容として成立した調停調書に基づいて相手方が間接強制を申し立てた事案において、当事者間では新型コロナウイルス感染症の流行拡大を踏まえて代替としてビデオ通話を利用するなどして面会交流が実施されてきており、実際に何らの面会交流もされなかったのは緊急事態宣言発令下の1回のみであること、前記調停調書が定める以外にも抗告人が未成年者らと相手方との直接的面会交流をさせてきたこと等の事情によれば、相手方が間接強制により面会交流させることの履行を求めることは過酷執行に当たるなどとして、原決定を取り消し、相手方の間接強制の申立てを却下した事例
(大阪高決令3・8・2〈参考原審:京都家決令3・5・31〉)

▽男性教授が、女子学生に対し、同女子学生が虚偽又は誇張したセクハラ被害を大学設置者に申告するとともに、他の学生による同様の被害申告を首謀又は主導したため懲戒処分を受けたと主張して、不法行為に基づく損害賠償を請求したが、同女子学生が虚偽又は誇張した申告をしたり、他の学生による同様の被害申告を首謀又は主導したりしたとは認められず、また、同女子学生の行為と同男性教授が受けた懲戒処分との間に相当因果関係を肯定することもできないとして、請求が棄却された事例
(横浜地判令2・12・18)

▽幼稚園の園庭の南側に隣接する土地上に高層マンションを建築するに当たり幼稚園の日照について配慮すべき義務を怠ったとして、幼稚園を運営する法人によるマンションを建築した会社に対する損害賠償請求が認容された事例
(名古屋地判令3・3・30)

▽「K」字型の変形交差点において発生した自動車事故に関し、同交差点に接続する2つの道路の対面信号が、「共に一定時間青色表示となるように設定された信号機」につき、その設置・管理に瑕疵があるとした事例
(神戸地判令3・6・25)

▽出生届未了の子が母(フィリピン国籍)の元夫である相手方(日本国籍)に対して申し立てた嫡出否認の調停において、合意に相当する審判を行うことができるとした上で、申立人が相手方の嫡出子であることを否認した事例
(東京家審令3・1・4)


労 働

▽県立高校の教員が、栃木県高等学校体育連盟の主催する春山安全登山講習会の講師としての業務に従事中に雪崩に巻き込まれた災害について、公務遂行性が認められた事例
(宇都宮地判令3・3・31)
◆書 評◆

①高野隆『人質司法』(角川書店、2021年)
 評者……木谷 明

②栗田路子ほか『夫婦別姓─家族と多様性の各国事情』(筑摩書房、2021年)
 評者……澤 康臣


◆判決録細目◆

行 政

〇刑事施設に収容されている者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律45条1項所定の保有個人情報に当たらないとして、開示しない決定を是認した1審判決を取り消した事例
(大阪高判令3・4・8〈参考原審:大阪地判令2・9・11〉)

▽夜間、自動車が交差点を左折した際に中央分離帯に乗り上げた事故につき、同交差点に設置されていた街灯が点灯しておらず、視認性が低下したとして営造物の設置・管理の瑕疵を認め、それと事故との間に相当因果関係があるとされた事例
(神戸地判令3・1・22)


民 事

〇事業用大型貨物自動車の走行中にエンジンから出火した事故により生じた損害について、その製造業者が製造物責任法3条に基づく賠償責任を負うとされた事例
(大阪高判令3・4・28〈参考原審:大阪地判平31・3・28〉)

〇家事事件手続法279条1項本文の利害関係人について、審判により直接身分関係に何らかの変動が生ずる者に限られず、当該審判によって変動する身分関係を前提として、自らの身分関係に変動を生ずる蓋然性のある者も含まれるとして、合意に相当する審判に対する異議申立却下審判に対する抗告を認容して原審判を取り消した事例
(大阪高決令3・3・12)

▽1 精肉作業に用いられた工場内の機械について、管理責任者が、同機を用いた特定の精肉作業により生じる危険性を容易に認識し得た場合において、使用者が、同機に何らの備えもしないまま、非熟練労働者を前記作業に従事させたことが安全配慮義務違反に当たるとした事例
 2 前記の場合において、使用者が、非熟練労働者に対し、前記作業を踏まえた具体的な安全衛生教育をしなかったことが安全配慮義務違反に当たるとした事例
(横浜地判令3・3・26) 

▽債務者の受給年金等の振込先口座の預金債権を差し押さえ、これを取り立てた債権者が、その取り立てた金額の不当利得返還義務を負うことを認めた事例
(神戸地尼崎支判令3・8・2)


知的財産権

▽時計原画が著作物に当たり、時計製品の販売行為が当該時計原画に係る著作権を侵害していることを理由とする、当該時計製品の頒布差止め及び廃棄並びに損害賠償等の請求が棄却された事例
(大阪地判令3・6・24)


刑 事

◎人を欺いて補助金等又は間接補助金等の交付を受けた旨の事実について詐欺罪で公訴が提起された場合において、当該行為が補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律29条1項違反の罪に該当するときに、刑法246条1項を適用することの可否
(最三決令3・6・23)

▽1 暴力団組織の序列1位及び同2位の立場にある被告人両名が、その配下組員らの行った殺人1件及び組織的殺人未遂等3件について、共謀共同正犯の罪責を負うとされた事例
 2 殺人の死亡被害者が1名である前記事案において、暴力団組織の序列1位の被告人に死刑、同2位の被告人に無期懲役がそれぞれ言い渡された事例
(福岡地判令3・8・24)


判例評論

14 那覇市至聖廟事件上告審判決
(最大判令3・2・24)……木村草太

15 債権の仮差押えを受けた仮差押債務者がその後に第三債務者との間で当該債権の金額を確認する旨の示談をした場合において、当該債権に対する差押命令及び転付命令を得た仮差押債権者が第三債務者に対して当該示談で確認された金額を超える額の請求をすることができないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判令3・1・12)……山本 研

16 ロックバンドの実演家のグループ名について人格的権利としてのパブリシティ権を肯定したうえで、専属契約の相手方である音楽事務所へのその帰属を否定した事例
(東京高決令2・7・10)……本山雅弘

17 1 無期雇用労働者に支給されている賞与が、有期雇用のアルバイト社員には払われない措置が、労働契約法旧20条に照らして不合理なものとは言えないとされた事例(①事件)―大阪医科薬科大学事件

  2 無期雇用労働者に支給されている退職金が、有期雇用の契約社員には払われない措置が、労働契約法旧20条に照らして不合理なものとは言えないとされた事例(②事件)―メトロコマース事件
(①②最三判令2・10・13)……野川 忍

18 被告人が、同居の実子(当時19歳)が被告人による暴力や性的虐待等によって抗拒不能の状態に陥っていることに乗じて性交をしたとされる準強制性交等罪の事案において、抗拒不能状態を認定できないとして無罪を言い渡した原判決を破棄して有罪とした事例
(名古屋高判令2・3・12)……嘉門 優
◆記 事◆

許可抗告事件の実情 ──令和3年度──……福井章代・宮脇雅代


◆判決録細目◆

行 政

〇国がマイナンバー制度により個人番号を収集、保存、利用及び提供する行為は、当該個人が個人番号の利用に同意していないとしても、憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではないとした事例
(仙台高判令3・5・27〈参考原審:仙台地判令2・6・30〉)


民 事

〇介護老人保健施設の介護支援専門員等が、入所者から利用料金の負担軽減の相談を何度も受けていたのに、食費及び居住費の支払を自己負担額に限定できる介護給付申請制度の説明を怠ったとして説明義務違反による過失を認め、不法行為に基づく損害賠償金(過失相殺3割)の支払を使用者である施設運営者に命じた事例
(東京高判令3・10・27〈参考原審:東京地判令3・3・12〉)

〇交通事故により労働能力を喪失(100%)した全盲の視覚障害者(事故当時17歳、女性)の後遺障害逸失利益の算定に用いる基礎収入の額について、就労可能期間を通じ、賃金センサス(男女計、学歴計、全年齢)の平均賃金の8割とした事例
(広島高判令3・9・10〈参考原審:山口地下関支判令2・9・15〉)

▽同性愛者である被告(女性)が原告の妻と性的行為を行ったことについて、不貞行為に該当するとして不法行為に基づく損害賠償請求を認めた事例
(東京地判令3・2・16)

▽妻が夫に対し、婚姻費用の支払を求めた事案において、①分担の始期は、内容証明郵便により分担を求める意思を確定的に表明した時点を基準とし、②その算定に関し、標準算定方式及び算定表は、法規範ではなく、合理的な裁量の目安であるとして、改定前の算定表等を用いる合意があるなどの事情がない限り、改定後の算定表等による算定に合理性がある以上、同算定表等の公表前の未払分を含め、同算定表等により分担額を算定するのが相当であるとした事例
(宇都宮家審令2・11・30)


知的財産権

〇弁護士が懲戒請求に対する反論をブログに掲載するに当たり、未公表の懲戒請求書にリンクを張ったことについて、懲戒請求書の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権)に基づく前記弁護士に対する損害賠償請求は権利濫用に当たり許されないとされた事例
(知財高判令3・12・22〈参考原審:東京地判令3・4・14〉)


労 働

〇出産後1年を経過していない女性労働者に対する解雇が、客観的合理的な理由を欠いており、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律9条4項に違反し、無効とされた事例
(東京高判令3・3・4〈参考原審:東京地判令2・3・4〉)


刑 事

▽電子連動装置の設置にともなう訓練中に、無遮断状態の踏切に電車が進入し、同踏切に進入してきた被害者運転の乗用車と衝突した結果、被害者が傷害を負ったという事案において、鉄道会社の鉄道部運輸課長および運転管理者であった被告人に業務上過失傷害罪が成立しないとされた事例
(京都地判令3・3・8)
◆記 事◆

統治構造において司法権が果たすべき役割第3部(3)
 憲法理論からみた同性婚の省察……渋谷秀樹

講話 民事裁判実務の要諦(6)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史


◆書 評◆

筧康生ほか編『詳解商業登記〔全訂第3版〕』(きんざい、2022年)
評者……服部 悟


◆判決録◆

民 事

◎宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り、当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意の効力
(最三判令3・6・29)

〇婚姻費用分担事件において、失職した義務者の収入について、潜在的稼働能力に基づく収入の認定が許されるには、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情が必要であるとされた事例
(東京高決令3・4・21〈参考原審:宇都宮家審令2・12・25〉)

〇破裂脳動脈瘤に対する血管内治療であるコイル塞栓術を受けた女性が、術中の前記動脈瘤の再破裂により死亡したことにつき、医師らの手技上の注意義務違反を認定した上で、原判決を変更し、請求を一部認容した事例
(広島高判令3・2・24〈参考原審:広島地判平31・2・22〉)

〇防衛大学校の元学生が、在校中上級生らから暴行、強要等のいじめ行為を受けたことにつき、履行補助者である同校教官らに安全配慮義務違反があるとして、国の損害賠償責任が認められた事例
(福岡高判令2・12・9〈参考原審:福岡地判令1・10・3本誌2455号16頁〉)

▽ツイッター上で名誉権を侵害する投稿があった場合において、当該投稿の直前にアカウントにログインした際の発信者情報につき、経由プロバイダに対する開示請求が認められた事例
(東京地判令3・1・15)

▽新聞紙上に、原告らの氏名、年齢、職業、国籍と共に、住所の地番までを記載した上で、原告らが逮捕された事実を報道する記事を掲載したことが、原告らのプライバシーを侵害し、不法行為が成立するとした事例
(静岡地判令3・5・7)


刑 事

〇1 近隣の住人5人を殺害した事案につき、犯行当時妄想性障害の強い影響を受けていたとして、心神耗弱を認定した事例
 2 控訴審において精神鑑定を行い、1審での精神鑑定と控訴審での精神鑑定の内容を比較検討して、判断の基礎とする鑑定を定め、これに従って検討した結果、完全責任能力を認定した1審判決には事実誤認があるとして、死刑判決を破棄して無期懲役刑を言い渡した事例
(大阪高判令2・1・27〈参考原審:神戸地判平29・3・22〉)

▽警察官1名を殺害してけん銃を奪った上、そのけん銃で更に1名を殺害するなどした事件につき、警察官に対する強盗殺人罪の成立を否定した上で、非難可能性の面でASD(自閉症スペクトラム障害)の影響があったこと、計画性が高くないことなどを考慮し、被告人を無期懲役に処した事例
(富山地判令3・3・5)
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■ 最新重要判例の全文を報道する法律専門誌※2025/4/1発売号から毎月1日、15日発刊になります

調査・判例入手に必読の資料。主要な最高裁判例及び重要な下級審判例の全文を掲載。判例の背景、要旨、意義等についての解説が付されている最も一般的な判例紹介誌。「最高裁判所民事(刑事)破棄判決等の実情」など最高裁判所調査官が最高裁判例を紹介・解説した記事が掲載されるほか、各種連載記事や論文も掲載されている。

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