判例時報 発売日・バックナンバー

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◆判例特報◆

▽1 不知火海岸地域又はその周辺地域にかつて居住していた患者らについて、いずれも、メチル水銀への曝露及び四肢末梢優位の感覚障害等の症候が認められ、水俣病に罹患していると認められるとして、排出企業並びに規制権限を行使しなかった国及び熊本県に対する損害賠償請求を一部認めた事例
 2 民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段所定の除斥期間の起算点は、神経学的検査等に基づいて水俣病と診断された時であるとして、除斥期間の経過を否定した事例
ノーモア・ミナマタ第2次近畿訴訟第1審
(大阪地判令5・9・27)


◆判決録細目◆

民事

▽病院を経営する法人が弁護士法23条の2第2項に基づく照会に応じて患者の診療録等を開示したことが同患者に対する不法行為又は債務不履行を構成することはないとして、不法行為に基づく損害賠償請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求がいずれも棄却された事例
(東京地判令4・12・26)


刑事

◎他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効の期間
(最一判令4・6・9)


◆最高裁判例要旨(2023(令5)年11月分)
◆記 事◆

裁判員裁判の歩みとこれから(2)
私の約12年間の裁判員裁判の実践……山田耕司


◆判決録細目◆

民 事

〇1 IP電話サービスを提供する事業者と契約を締結する相手方ではないエンドユーザーは、犯罪による収益の移転防止に関する法律4条1項に定める「顧客」には当たらない
 2 IP電話サービスを提供する事業者は、取引の相手方である中間業者などの顧客について本人確認義務を負い、それを怠ったことにより、提供番号が本人確認できないエンドユーザーによって特殊詐欺に利用された場合には、欺罔行為を容易にしたものとして過失による幇助による不法行為責任を負う
 3 IP電話サービスを提供する事業者は、中間業者を介してエンドユーザーに提供した電話番号が特殊詐欺その他の何らかの犯罪に利用される具体的な危険性が予見又は認識できた場合には、当該電話番号の役務提供契約の解約等の措置を講ずるべき注意義務を負う
 4 IP電話サービスを提供する事業者は、その取引の相手方である中間業者が、エンドユーザーの本人確認義務を怠ったことにより、提供番号がエンドユーザーによって特殊詐欺等に利用された場合、中間業者が本人確認義務を怠っていることを予見でき、かつ、取引関係に基づく権利義務関係を適切に行使することによって特殊詐欺等に利用された提供番号の使用を未然に防止できた場合には、中間業者の顧客の本人確認義務が履行されているか調査し、かつ、本人が特定できない電話番号の回線については取引を停止するなどの条理上の注意義務を負う
 5 判決に記載された事情の下においては、IP電話サービスを提供する事業者が欺罔行為を容易にした過失があるとか、提供番号の役務提供契約の解約等の措置を講ずるべき注意義務を負うとはいえず、そのほか中間業者の顧客の本人確認義務が履行されているか調査し、かつ、本人が特定できない電話番号の回線については取引を停止するなどの条理上の注意義務を負うともいえない
(東京高判令4・4・12〈参考原審:さいたま地判令2・11・27〉)


労 働

〇1 二重偽装請負の場合における注文者に、労働契約申込みみなしに関する労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律40条の6は類推適用されないとされた事例
 2 二重偽装請負の場合における元請人に、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律40条の6が適用されるとされた事例
 3 二重偽装請負の場合における元請人に、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律40条の6第1項5号所定の同法等の規定の適用を免れる目的が認められないとされた事例
(大阪高判令5・4・20〈参考原審:大阪地判令4・3・30本誌2555号31頁〉)

▽有期契約労働者と無期契約労働者との間で、扶養手当、リフレッシュ休暇、年次有給休暇の半日単位の取得及び特別休暇に関して相違があったことが、労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
(津地判令5・3・16)


知的財産権

▽1 商品の形態が取引の際に出所表示機能を有するものではない場合における不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」該当性
 2 ジェネリック医薬品である気管支喘息用の医療用医薬品の形態が商品等表示に該当しないとされた事例
(東京地判令4・12・20)
◆記 事◆

実務と学説からみた憲法訴訟(5)
旧優生保護法事件と憲法論との距離と連関に関する実務的一考察
―控訴審逆転勝訴に至るまでの回顧とともに―……吉原  秀

旧優生保護法違憲訴訟によせて……上田 健介


◆判決録細目◆

民 事

▽当時高校1年の生徒が自転車競技部の練習中、坂を下る際にカーブを曲がりきることができず、ガードレールに衝突し、その先の側溝に転落して負傷した事故について、顧問教諭に指導上の過失を認めた上で、過失相殺を認めなかった事例
(京都地判令5・2・9)


知的財産権

▽同一特許に基づく同一サービスに対する前訴(差止請求訴訟)と後訴(損害賠償請求訴訟)は、異なる訴訟物に基づく異なる訴えであるとして、後訴における無効理由の主張が、時機に後れたものとはいえず、また、訴訟法上の信義則に反するとはいえないとされた事例
(東京地判令5・2・16)

▽商業的写真をウェブページに掲載した行為が著作権法32条1項にいう引用に該当しないとされた事例
(東京地判令5・5・18)


◆判例評論◆

4 凍結保存精子を用いた生殖補助医療により出生した子の、性同一性障害者特例法に基づき女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた精子提供者に対する認知請求権
(東京高判令4・8・19)……稲葉 実香

5 殺人を犯した者が、捜査機関に発覚する前に、捜査機関に対し、被害者の嘱託を受けて同人を殺した旨を申告するなどしたが、同人の嘱託を受けた事実がなかった場合には、刑法42条1項の自首は成立しないとされた事例
(最一決令2・12・7)……古川 伸彦

6 量販店による複数の納入業者に対する各種の不利益行為につき、優越的地位の濫用が成立し、一つの違反行為を構成すると判断された事例
(東京高判令3・3・3)……中里  浩
◆記 事◆

◎新連載

裁判員裁判の歩みとこれから⑴
私の約12年間の裁判員裁判の実践……山田耕司


◆判決録細目◆

行 政

〇1 住民が、市が国庫補助金を原資とする補助金を事業者に違法に交付したことによって損害を被ったにもかかわらず、当時の市長に対し損害賠償請求権の行使を違法に怠っている旨を主張して、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、市長を被告として、当時の市長に対する損害賠償請求権を行使するよう求める住民訴訟について、市は、当該事業者から補助金の返還を受けることのないまま当該国庫補助金を国に返還すべき義務が生じ、当該損害を補填する財産を欠くことが確実となった時点において、初めて当該損害に係る当時の市長に対する損害賠償請求権を行使することができるので、国が当該国庫補助金の返還を命じた日を基準として同法242条2項の規定を適用すべきものとした事例
 2 市の補助金の交付決定当時、当該補助金を受ける事業実施主体の事業(原料の調達、成果物の販売及び自己資金の調達)の実現可能性が低かった等の事情の下では、当該補助金を交付することとした当時の市長の判断は、社会通念上著しく妥当性を欠き、その裁量の範囲を逸脱したものと認められるから、補助金の交付は、公益上の必要性を欠き、地方自治法232条の2に反するとした事例
(広島高判令5・1・11〈参考原審:広島地判令4・3・30本誌2565号5頁〉)

▽1 漁業法2条2項所定の漁業従事者であることの確認を求める義務付けの訴えが不適法であるとされた事例
 2 事前かつ一般的に原告らが漁業法2条2項所定の漁業従事者であることの確認を求める訴えが不適法であるとされた事例
 3 原告らに漁ろう以外の目的があったと認められる以上、原告らに対し、漁ろうのみを目的としていない又は漁業従事者に該当しないと回答した水産庁や、漁業従事者以外の者を乗船させて20海里を超えて漁業に出航したならば船舶安全法に違反する可能性があると述べた海上保安庁の職員の行為が国家賠償法上違法であるとはいえないとされた事例
(東京地判令4・12・13)

▽内閣官房内閣総務官が行政文書の開示請求につき開示決定等の期限を延長したことが、国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないとされた事例
(大阪地判令5・2・21)


民 事

◎当事者双方が口頭弁論期日に連続して出頭しなかった場合において、訴えの取下げがあったものとみなされないとした原審の判断に民事訴訟法263条後段の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
(最三決令5・9・27)

▽幼稚園で園児が昼食中に誤嚥窒息を起こし、重篤な後遺症を負った事故につき、救護に当たった園長らには、適時に心肺蘇生法を実施しなかった過失があり、重篤な後遺症が残らなかった相当程度の可能性を侵害したとして園児の請求を一部認めた事例
(さいたま地判令5・3・23)

▽訴訟代理人の訴訟行為の排除を求める申立てにつき、裁判所の選任により過去に理事職務代行者として関与した事件は、弁護士法25条1号の禁止する「その依頼を承諾した事件」に当たるとして、同号又はその類推適用により訴訟代理人の訴訟行為を排除した事例
(福岡地決令5・8・30)


◆最高裁判例要旨(2023(令5)年9・10月分)
◆記 事◆

性同一性障害事件の大法廷違憲決定と裁判官の視線……千葉 勝美


◆判決録細目◆

民 事

〇東日本大震災の津波による東京電力福島第一原子力発電所の放射性物質放出事故について、福島県南相馬市原町区内に居住していた原告らに対し、避難区域に応じ、1人につき、避難指示解除準備区域1100万円、緊急時避難準備区域300万円の一律の慰謝料が認められた事例
(仙台高判令4・11・25)

▽逮捕された被疑者から当番弁護士の派遣要請を受けた警察官はできる限り速やかに弁護士会にその旨を通知する義務を負うところ、これを怠った過失があるとした事例
(大阪地判令4・12・23)


知的財産権

▽Googleマップに画像を投稿した行為が著作権法41条にいう時事の事件の報道のための利用に該当しないとされた事例
(東京地判令5・2・28)

▽靴製品の形態が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に該当するとされた事例
(東京地判令5・3・24)


労 働

▽大学職員の精神障害発病後の自殺について業務起因性を否定した事例
(大阪地判令5・3・23)

▽夏季賞与の支給日の20日前に病死を理由として退職した労働者について、支給日に在籍する者のみに賞与を支給するという要件を課した賃金規程の適用を排除して、夏季賞与の支払請求権を肯定した事例
(松山地判令4・11・2)


刑 事

〇1 強制的措置許可申請事件の決定は抗告の対象とはならないと説示した事例
 2 ぐ犯性の判断基準時はぐ犯事由存在時であると説示した事例
 3 児童相談所若しくは関連施設内で、多数回、暴行、傷害、器物損壊をしたことをぐ犯事由とするぐ犯保護事件で少年を第1種少年院に送致した原決定の処分は著しく不当であるとして、原決定を取り消した事例
(札幌高決令3・11・11)

〇準強制わいせつ被告事件の被害供述の信用性を判断するにあたり被害供述をした者の司法面接時の供述その他の証拠を検討して、当該被害供述の信用性に疑いがあることを理由として無罪判決を言い渡した事例
(名古屋高判令5・1・18)
◆記 事◆

実務と学説からみた憲法訴訟(4)
「宮本から君へ」事件と「裁量論と人権論」の新展開……平  祐介

芸術に対する国家助成―「宮本から君へ」事件判決の位置づけと疑問点……御幸 聖樹


◆判決録細目◆

民 事

〇県公共嘱託登記土地家屋調査士協会の執行部構成員の土地家屋調査士である被告らが、同協会に所属していた土地家屋調査士である原告らに対して、理事会を経ずに、土地家屋調査士法(令和1年法律第29号による改正前のもの)44条に基づく措置申立てを行ったことが、事実上又は法律上の根拠を欠き、調査義務を尽くしておらず、制度の趣旨・目的に照らし相当性を欠くものとして不法行為を構成するとされた事例
(名古屋高金沢支判令4・3・23〈参考原審:福井地判令3・4・14〉)

▽健康保険組合が職権で行った被保険者に対してその子を被扶養者から外す旨の処分が適法であるとされた事例
(東京地判令4・12・1)

▽1 申立人(基本事件の原告)が被告人となった本件横領事件(申立人については無罪判決が確定)において、申立人の共犯者とされた者の取調べの録音録画記録媒体につき、民事訴訟法220条3号後段所定の法律関係文書に該当するとされた事例
 2 前記記録媒体のうち、本件横領事件の刑事裁判の公判に提出された部分について、閲覧制限事由はなく文書提出義務を認めることに支障はないとされた事例
 3 前記記録媒体のうち、本件横領事件の刑事裁判の公判に提出されなかった部分について、刑事訴訟法47条に基づきその提出を拒否したことが、保管検察官の裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものとされた事例
(大阪地決令5・9・19)

▽特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人について、入所者が食事をする際に職員をしてこれを常時見守らせるべき注意義務があるのに、それを怠った違反があるとされた事例
(名古屋地判令5・2・28)

▽1 公文書の写しであっても組織共用文書に当たり得るとして、文書の組織共用性について検討をせずに文書不存在と回答した市長の対応に過失があり、違法とされた事例
 2 職員が無罪を主張し示談を拒否した後にも繰り返し示談を勧める市長の対応が違法とされた事例
(大津地判令4・3・17)


労 働

▽被告が原告に対し道具を提供したことや被告代表者が原告に対して作業工程を指示したことなどを踏まえると、原告と被告との間には、信義則上、安全配慮義務を認めるべき特別な社会的接触の関係があったと認めるのが相当であり、一定程度墜落の危険性がある作業に従事させる以上、被告には安全教育等の措置を採るなどの義務があったと判断した事例
(東京地判令4・12・9)


商 事

◎会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格の決定の手続において裁判所が前記売買価格を定める場合に、DCF法によって算定された前記譲渡制限株式の評価額から非流動性ディスカウントを行うことができるとされた事例
(最三決令5・5・24)


刑 事

▽少年補償事件において、少年が逮捕勾留されていた22日間のうち、2日間については少年の保護事件に係る補償に関する法律3条2号により補償しないこととし、残りの20日間について補償をした事例
(岡山家決令4・10・17)


◆判例評論◆

1 保佐開始の審判事件を本案とする保全処分事件において選任された財産管理者が提出したその管理すべき財産の目録及び財産状況に関する報告書は、同保全処分事件の事件記録に該当するか(消極)
(最一決令4・6・20)……内田 義厚

2 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律98条の定める作業報奨金の支給を受ける権利に対する強制執行の可否
(最三決令4・8・16)……小名木 明宏

3 宅地建物取引業における名義貸しと利益分配合意
(最三判令3・6・29)……橋谷 聡一
◆記 事◆

万引きの量刑……安西 二郎


◆判例特報◆

▽東北地方太平洋沖地震に伴う津波による東京電力福島第一原子力発電所の事故について、津波対策に係る取締役としての任務懈怠を肯定し、取締役らに対し、会社法423条1項に基づく損害賠償として、連帯して13兆3210億円を東京電力に支払うよう命じた事例
──東電福島第一原発事故株主代表訴訟第1審判決
(東京地判令4・7・13)


◆判決録細目◆

民 事

◎婚姻費用分担審判において、妻がその夫との婚姻後に出産し戸籍上夫婦の嫡出子とされる子であって民法772条の嫡出推定を受けないものとの間の父子関係の存否を審理判断することなく、当該父子関係に基づく扶養義務を認めた原審の判断に違法があるとされた事例
(最二決令5・5・17)

◎事件が1人の裁判官により審理された後、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が民事訴訟法254条1項により判決書の原本に基づかないで第1審判決を言い渡した場合において、全部勝訴した原告が控訴をすることの許否
(最二判令5・3・24)

▽優先関係のある十字路交差点での自動車同士の衝突事故について、降雪等のため、優先側ではない運転者が、交差道路の優先性を認識し又は認識し得たとはいえないが、優先側の運転者の期待は相当であるなどとして、過失割合を各50%と認定した事例
(旭川地判令5・3・16)


刑 事

◎勾留理由の開示に対する特別抗告申立ての適否
(最一決令5・5・8)
◆記 事◆

実務と学説からみた憲法訴訟(3)
「婚姻の自由をすべての人に」(同性婚)訴訟の現状と憲法上の論点……綱森 史泰

婚姻という名の桎梏──同性婚は同化か、抵抗か……江藤 祥平


◆判決録細目◆

行 政

〇1 複数の適用事業所を有する地方公共団体内での適用事業所間での異動等により適用事業所が変更になったが、引き続き同一団体内において継続して就労しており、異動等により給与に関する雇用条件が異ならない非常勤教員について、「施行日前から引き続き当該被保険者の資格を有するもの」(平成27年政令第343号50条)及び「施行日前から引き続き改正後厚生年金保険法第27条に規定する被保険者」(平成27年政令第347号〔平成30年政令第183号による改正前のもの〕36条1項による読替後の平成24年法律第63号改正附則15条3項)と同視するのが相当であるとされた事例
 2 公法上の実質的当事者訴訟(給付訴訟)の一部が、処分行政庁による具体的処分を待つ必要があることを理由として不適法とされた事例
(東京高判令4・7・20〈参考原審:東京地判令2・10・7〉)

▽1 合衆国軍隊等の行為等による被害者等に対する賠償金の支給等に関する省令15条1項に基づきSACO見舞金を支給する行為は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか(消極)
 2 沖縄防衛局長がSACO見舞金を支給しないことが国家賠償法上違法とはいえないとされた事例
(那覇地判令4・7・14)


民 事

〇優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)による強制優生手術を受けた原告の国家賠償請求において、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の不法行為による損害賠償請求権の期間の制限につき、除斥期間ではなく消滅時効を定めた規定と解し、この規定による権利の消滅についての被告国の主張が権利の濫用にあたるとした事例
(仙台高判令5・10・25〈参考原審:仙台地判令5・3・6〉)


労 働

◎1 職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和1年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分の適否に関する裁判所の審査
 2 職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和1年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により公立学校教員を退職した者に対してされた一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分に係る県の教育委員会の判断が、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとはいえないとされた事例
(最三判令5・6・27)

◎無期契約労働者と有期契約労働者との間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違の一部が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判令5・7・20)


◆判例評論◆

40 懲戒処分の停職期間中に同僚等に対して行った同処分に関する働き掛けを理由とする停職6か月の懲戒処分が適法とされた事例
(最三判令4・6・14)……須藤 陽子

41 部下への暴行等の行為をした地方公共団体の職員が地方公務員法28条1項3号に該当するとしてされた分限免職処分を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判令4・9・13)……深澤龍一郎

42 財産分与の審判の申立てを却下する審判に対して相手方が即時抗告をすることの許否(積極)
(最一決令3・10・28)……伊藤  隼

43 財産の分与に関する処分の審判の手続において、申立人が給付を受けるべき権利者であるとは認められず、かえってその相手方が給付を受けるべき権利者であると認められる場合において、少なくとも相手方が、当該審判の手続において、自らが給付を受けるべき権利者であり、申立人に対して給付を求める旨を主張しているときは、申立人の財産分与の審判の申立てを却下するのではなく、申立人に対して相手方への給付を命じることができるとして、原審判中財産分与の申立てを却下した部分を取り消した上、相手方への給付を命じるべきか否かという点について更に審理を尽くさせるため、財産分与申立事件を原審(家庭裁判所)に差し戻した事例
(広島高決令4・1・28)……山下祐貴子
◆判決録細目◆

民 事

◎統合失調症の治療のため精神科病院に任意入院者として入院した患者が無断離院をして自殺した場合において、同病院の設置者に無断離院の防止策についての説明義務違反があったとはいえないとされた事例
(最二判令5・1・27)

〇民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の規定する「不法行為の時」とは、再審手続があった場合においては再審による無罪判決が確定した時であって、当該時点が除斥期間の起算点となるとした事例
(東京高判令3・8・27〈参考原審:東京地判令1・5・27〉)


刑 事

▽1 犯行時15歳、判決時17歳の少年の殺人等被告事件について、情状鑑定を行い、更生する余地は残されているとしながらも、被害者らに激しい恐怖心を与え、1人の生命を奪い、社会を動揺させた少年が保護処分を受けることは許容しがたいとして、家庭裁判所への移送を否定した事例
 2 犯罪事実に関係する事情を中心に据えて検討し、不定期刑の長期を法定の上限とし、少年の問題の改善には相当の長期間を要するから短期も法定の上限として、少年に不定期刑の最高刑を科した事例
(福岡地判令4・7・25)

▽特定少年である少年が、普通自動二輪車を無免許運転した道路交通法違反保護事件について、非行態様や同種の非行による複数の保護処分歴があること等を考慮し、少年院送致を許容した上で、資質上の問題や保護環境等も踏まえ、少年を第1種少年院に送致し、収容期間を2年とした事例
(那覇家沖縄支決令5・3・7)
◆判決録細目◆

行 政

◎墓地、埋葬等に関する法律10条の規定により大阪市長がした納骨堂の経営等に係る許可の取消訴訟と納骨堂の周辺住民の原告適格
(最三判令5・5・9)


民 事

▽1 被告設営の造船所において船舶建造又は修繕工事に従事し、じん肺法上の管理2の管理区分決定を受けていた労働者らの一部について、粉じん曝露に起因するじん肺等の罹患及び安全配慮義務違反を認めた事例
 2 前記労働者らのうち被告設営の造船所における粉じん曝露と他の事業所における粉じん曝露とが相まってじん肺等に罹患した者について、寄与度に応じた不法行為及び債務不履行に基づく損害賠償責任を認めた事例
(長崎地判令4・11・7)

▽保温材の販売等を行う事業所において、石綿を用いた保温筒の製造等に従事していた労働者が悪性胸膜中皮腫に罹患して死亡したことにつき、事業者の安全配慮義務違反が否定された事例
(長崎地判令4・12・6)

▽1 下請代金支払遅延等防止法2条1項所定の製造委託に当たると判断された事例
 2 下請代金支払遅延等防止法4条1項3号違反に当たると判断された事例
 3 下請代金支払遅延等防止法4条1項3号違反の私法上の合意の効力
(東京地判令4・12・23)


知的財産権

〇1 民事訴訟法6条1項所定の「特許権」「に関する訴え」には、特許権そのものでなくとも特許権の専用実施権や通常実施権さらには特許を受ける権利に関する訴えも含んで解されるべきであり、また、その訴えには、前記権利が訴訟物の内容をなす場合はもちろん、そうでなくとも、訴訟物又は請求原因に関係し、その審理において専門技術的な事項の理解が必要となることが類型的抽象的に想定される場合も含まれるとされた事例
 2 受託研究契約上の債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟として訴訟提起された事件について、その訴状の記載からは、その争点が、特許を受ける権利に関する契約条項違反ということで特許を受ける権利が請求原因に関係しているとし、その判断のためには専門技術的な事項の理解が必要となることが類型的抽象的に想定されることから、当該事件は民事訴訟法6条1項所定の「特許権」「に関する訴え」に含まれるとされた事例
(大阪高判令4・9・30〈参考原審:神戸地判令4・3・24〉)

▽写真をウェブサイトに投稿した行為が著作権法41条にいう時事の事件の報道のための利用に該当するとされた事例
(東京地判令5・3・30)
◆特 集◆
民事司法改革シンポジウム
実効性ある民事裁判制度実現のために──損害賠償制度改革の課題と展望──

参考論文
損害賠償制度を考える視点──日弁連の2つの立法提言が投げかける課題……窪田 充見


◆記 事◆

実務と学説からみた憲法訴訟(2)
「外国人」の強制送還を憲法32条に違反するとした
東京高裁令和3年9月22日判決からみる外国人の「人権」……髙橋 済


「人権訴訟」への取り組み方
──国際人権法・憲法・行政法をいかに用いるか……山田 哲史


◆判決録細目◆

行 政

〇岩石採取計画認可申請に対する不認可処分に係る取消裁定申請において、その審理中に別件訴訟により当該岩石採取計画に関する他法令に基づく行政庁の処分の効力を争う機会が失われたとの事情を考慮して棄却の判断をしたことが、本件の経過等に照らし相当とされた事例
(東京高判令5・3・23)

〇地方団体が国に対して特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たるか(消極)
(大阪高判令5・5・10)


民 事

〇公益社団法人の地方本部役員の選任に当たり、役員としての資格要件を審査する同本部の資格審査委員会の委員長が内部規程の解釈を誤り、同委員会が当該役員の候補者につき役員不適格者としたため、同本部の理事会に上程されることなく同本部の役員に選任されなかったことについて、同委員長の権限行使が違法であるとして、公益社団法人の使用者責任を認めた事例
(東京高判令4・5・31〈参考原審:東京地判令3・7・6〉)

▽1 テーマパークのチケット販売についての利用規約中、一定の場合を除いて購入後のチケットをキャンセルすることができない旨の条項は、消費者契約法9条(令和4年法律第59号による改正前のもの)及び10条に規定する消費者契約の条項に該当しないとされた事例
 2 テーマパークのチケット販売についての利用規約中、チケットの転売を禁止する旨の条項は、消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に該当しないとされた事例
(大阪地判令5・7・21)


刑 事

◎スカート着用の前かがみになった女性に後方の至近距離からカメラを構えるなどした行為が、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和37年東京都条例第103号)5条1項3号にいう「人を著しく羞恥させ、人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」に当たるとされた事例
(最一決令4・12・5)

▽生後2か月の乳児が急性硬膜下血腫及び両眼底出血の傷害を負ったのは、被告人(乳児の父)による激しい揺さぶりによるものではなく、乳児が先天性の疾患にり患して血液凝固機能の異常が生じており、被告人による比較的軽微な外力により生じた可能性が否定できないなどとして、被告人に無罪を言い渡した事例
(大阪地判令5・3・17)

〇特定少年である少年が、交際相手を殺害して自殺する目的で、包丁を突き付けるなどした殺人予備及び銃砲刀剣類所持等取締法違反保護事件において、比較的長期の処遇勧告を付して少年を第3種少年院に送致し、収容期間を3年間とした原決定について、その処分が著しく不当であるとはいえないとして抗告を棄却した事例
(東京高決令5・1・19)

▽特定少年である少年が、ゴミ集積所に置かれたゴミ袋等に放火し、公共の危険を生じさせたという建造物等以外放火保護事件について、犯行の結果等の犯情に加え、少年の性格・行状等を考慮し、刑事処分以外の措置が相当であると認め、少年を第1種少年院に送致し、収容期間を2年間とした事例
(大阪家決令4・9・5)
◆判決録細目◆

民 事
◎いわゆる弁済受領文書の提出による強制執行の停止の期間中にされた執行処分の効力
(最一判令5・3・2)

〇1 日本放送協会(NHK)との間で受信契約を締結した受信者らがNHKに対して、放送法4条又はNHKが自ら定めた国内放送基準を遵守してニュース報道番組を放送する義務があることの確認を求める訴えが、確認の利益を欠く不適法なものとされた事例
 2 前記遵守義務違反の放送を理由とする受信者らのNHKに対する損害賠償請求に理由がないとされた事例
(大阪高判令4・5・27〈参考原審:奈良地判令2・11・12本誌2512号70頁〉)


知的財産権

〇1 発信者情報開示請求において、権利侵害の明白性が認められないと判断された事例
 2 ツイートにおけるイラスト画像の利用が適法な引用に当たるとされた事例
 3 ツイートに添付されたイラスト画像が、タイムライン上においてトリミング表示されることにつき、「やむを得ないと認められる改変」に当たるとされた事例
(知財高判令4・10・19〈参考原審:東京地判令3・12・23〉)


労 働

〇地方公共団体の職員が公務上の疾病による休職であったとして復職後に条例により休職期間中の「給与の全額」の支払を受けた場合について、本来の給与支給日を徒過した以上、遅延損害金を付すべきとされた事例
(大阪高判令4・4・15〈参考原審:京都地判令3・5・24〉)

▽新聞記者からの取材に対するコメントを理由とする停職処分、組合名義のビラの配布等を理由とする諭旨退職処分につき、いずれも、目的、態様、内容に照らして正当な組合活動の範囲を逸脱するものではないとして、前記各処分が無効と判断された事例
(横浜地判令4・12・22)


刑 事

〇広義の特殊詐欺の事案において電子計算機使用詐欺罪の成立を認めた原判決につき、被告人には詐欺の故意はあったが、これと構成要件が異なる電子計算機使用詐欺の故意はなかった旨及び詐欺罪が成立するため、その補充規定である電子計算機使用詐欺罪は成立しない旨の事実誤認、法令適用の誤りの弁護側の主張が排斥された事例
(大阪高判令4・11・17〈参考原審:大阪地堺支判令4・5・10〉)
◆判決録細目◆

行 政

◎行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(令和3年法律第36号による改正前のもの)に基づき特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)の収集、保管、利用又は提供をする行為と憲法13条
(最一判令5・3・9)

▽銃砲刀剣類所持等取締法(令和3年法律第69号による改正前のもの)上の射撃教習を受ける資格の認定申請を行った者につき、同法5条1項18号所定の欠格事由が認められるとの県公安委員会の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められないとされた事例
(奈良地判令4・6・2)


民 事

▽マンションに設置された機械式駐車装置に関し、団地管理組合法人である原告の当該装置を設置した被告に対する不法行為を理由とする損害賠償請求が否定された事例
(東京地判令3・12・24)


労 働

〇第三者委員会による各種調査及び検討を経た上で原告の行為がパワーハラスメントに該当する旨記載された調査報告書が作成され、同報告書に基づいてされたパワーハラスメントを理由とする被告による原告の懲戒解雇について、いずれも懲戒事由に該当するとはいえないなどとして無効とされた事例
(高松高判令4・5・25)

▽地方公共団体の設置する中学校の教員が過重業務等によりくも膜下出血を発症し死亡したことにつき、同中学校の校長の安全配慮義務違反を認めた事例
(富山地判令5・7・5)

▽交番に勤務する警察官の自殺に関し、公務起因性を肯定したうえ、妻子による安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求を一部認容した事例
(広島地福山支判令4・7・13)


刑 事

◎捜査機関による押収処分を受けた者の還付請求が権利の濫用として許されないとされた事例
(最一決令4・7・27)
◆記 事◆

◎新連載 実務と学説からみた憲法訴訟(1)

 連載開始にあたって……渡辺康行

 第三次選択的夫婦別姓訴訟へ向けて
  ―第一次・第二次別姓訴訟と同性婚訴訟の比較からみる裁判所の思考方法―……寺原真希子

 夫婦同氏制違憲訴訟を振り返る
  ―第二次夫婦同氏制違憲訴訟における三浦意見を中心として―……渡辺康行


◆判決録細目◆

行 政

〇地方自治法242条の2第1項4号に基づき普通地方公共団体の執行機関に損害賠償請求又は不当利得返還請求(本件請求)をすることを求める本件住民訴訟の係属中に、別訴において、本件請求に係る債務の債務者とされる者から当該債務の不存在の確認請求がされ、別訴の反訴において、当該普通地方公共団体が本件請求の一部について請求をした事案において、本件請求の残部については当該普通地方公共団体が訴訟上の請求をしていないが、本件住民訴訟及び別訴における当事者のやりとりにおいて、本件住民訴訟で控訴人の求めている内容がすべて実現したといえるから、本件住民訴訟には訴えの利益が認められないとされた事例
(東京高判令5・5・25〈参考原審:甲府地判令4・3・15〉)


民 事

◎第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、前記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に前記電子記録債権の支払がされたときの前記転付命令の効力
(最三決令5・3・29)

◎破産管財人が別除権の目的である不動産の受戻しについて前記別除権を有する者との間で交渉し又は前記不動産につき権利の放棄をする前後に前記の者に対してその旨を通知するに際し、前記の者に対して破産者を債務者とする前記別除権に係る担保権の被担保債権についての債務の承認をしたときに、その承認は前記被担保債権の消滅時効を中断する効力を有するか(積極)
(最三決令5・2・1)

〇地下トンネル設計業務を受託した建設コンサルタントについて、設計した構築物の安全性に関する説明義務違反があったとして不法行為責任を認めるとともに、発注者である地方公共団体にも過失があったとして4割の過失相殺をした事例
(大阪高判令4・9・29〈参考原審:大阪地判令3・3・26本誌2500号75頁〉)


知的財産

〇控訴人から納入された商品について、梱包箱の控訴人の屋号が記載された箇所の上にシールを貼付し、梱包箱に同梱されていた使用説明書を差し替えた被控訴人の行為は、控訴人の標章の剥離抹消行為と評価すべきものとは認められないとした事例──ローラーステッカー事件
(大阪高判令4・5・13〈参考原審:大阪地判令3・11・9〉)

▽特許発明が特許出願前に公然実施をされた発明であるとされた事例
(大阪地判令5・1・31)


刑 事

◎地方検察庁に属する検察官が区検察庁検察官事務取扱いとして保管記録の閲覧に関する処分をした場合と刑事確定訴訟記録法8条1項にいう「保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所」
(最一決令5・1・30)

▽施設送致申請事件において、遵守事項違反の内容、程度、本人の問題性、保護観察の経過等を考慮し、本人を第1種少年院送致とするとともに、必要な保護観察期間等を考慮して収容期間を定めた事例
(金沢家決令5・3・9)


◆最新判例批評◆

 32 宮古島市水道事業給水条例(平成17年宮古島市条例第215号)16条3項の趣旨(最三判令4・7・19)……鈴木 崇弘

 33 共同漁業権から派生する漁業行使権に基づく諫早湾干拓地潮受堤防排水門の開門請求を認容する確定判決に対する請求異議訴訟において、前訴口頭弁論終結後の事情変動等を踏まえて改めて利益衡量を行った結果、現時点において、前記確定判決に基づく強制執行は、権利濫用に当たり、又は、信義則に照らし、許されないとされた事例(福岡高判令4・3・25)……上田 竹志

 34 会社法423条1項に基づく損害賠償請求訴訟において原告の設置した取締役責任調査委員会の委員であった弁護士が原告の訴訟代理人として行う訴訟行為を弁護士法25条2号及び4号の類推適用により排除することはできないとされた事例(最一決令4・6・27)……栁川 鋭士

 35 不当景品類及び不当表示防止法の不実証広告規制の合憲性(最三判令4・3・8)……奈須 祐治

◆判決録細目◆

行 政

▽大阪市が高等学校等を大阪府に移管することに伴って高等学校等に係る土地及び建物を大阪府に無償で譲渡する契約を締結することが、地方財政法27条1項及び28条の2並びに地方自治法232条の2、96条1項6号及び237条2項に違反しないとして、地方自治法242条の2第1項1号に基づく無償譲渡契約の締結の差止請求が棄却された事例
(大阪地判令4・3・25)


民 事

◎1 遺言執行者は、共同相続人の相続分を指定する旨の遺言を根拠として、平成30年法律第72号の施行日前に開始した相続に係る相続財産である不動産についてされた所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えの原告適格を有するか(消極)
 2 相続財産の全部又は一部を包括する遺贈する旨の遺言がされた場合における、当該包括遺贈が効力を生じてからその執行がされるまでの間に包括受遺者以外の者に対してされた不動産の所有権移転登記の抹消登記手続又は一部抹消(更正)登記手続を求める訴えと遺言執行者の原告適格を生ぜず、又は放棄によってその効力を失った場合における、その効力を有しない包括遺贈につき包括受遺者が受けるべきであったものの帰すう
(最二判令5・5・19)

〇発信者情報開示請求事件において、発信者情報として発信者の電話番号を追加する旨の省令の改正(令和2年総務省令第82号)の施行前にされた投稿につき、改正後の省令を適用して、発信者情報として電話番号が開示の対象となると認めた事例
(東京高判令4・9・7)

▽小型特殊自動車が、歩行中の被害者(先天性の両側感音性難聴があった当時11歳の女性)に衝突し、被害者が死亡したという交通事故に関し、被害者の基礎収入(年収)を賃金センサスの全労働者平均賃金の85%に相当する422万6200円として死亡逸失利益を算定するなどして、被害者の親族である原告らの損害賠償請求を一部認容した事例
(大阪地判令5・2・27)

▽被告名義の不動産について被告が所有名義人としての地位を喪失し、原告が同地位を取得したと主張して、原告が被告に対し所有権に基づく移転登記手続を求めた訴訟において、被告に対する債務名義に基づき、当該不動産に対する仮差押決定を得ていた第三者が、被告を補助するために参加することが許可された事例
(神戸地判令4・7・28)

▽養育費減額の審判において、相手方が、相手方の夫の直近の収入資料の提出を拒否した場合に、相手方の夫が精神科の開業医であることに鑑み、少なくとも標準算定票の上限の金額の営業所得を得ていると推認して、養育費を算定した事例
(宇都宮家審令4・5・13)


商 事

▽特別支配株主による株式売渡請求に対して売渡株主が売買価格の決定を申し立てた事案において、公開会社で非上場である対象会社の株式につき、DCF法による評価額を重視しつつ、これと修正簿価純資産法による評価額との加重平均を求める折衷法を用いた総合評価により売買価格を決定した事例
(東京地決令4・1・13)


労 働

▽1 労働者の職能資格に応じて固定給が定められる給与の制度の下における降格処分について、その根拠となった能力評価につき使用者の裁量権の逸脱又は濫用は認められないとして、当該降格を有効とした事例
 2 前記降格処分に係る訴訟の係属中に行われた当該労働者に対する能力不足を理由とする解雇について、客観的合理的理由があるとも社会通念上相当であるとも認められないとして、当該解雇を無効とした事例
(東京地判令4・3・16)


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