判例時報 発売日・バックナンバー

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◆記 事◆

判例時報誌の判例紹介雑誌としての今日的役割等…田山 輝明


判例時報誌への期待…神田 秀樹


◆判決録◆

民 事

〇間接交流を認めた原審判を取り消し、試行的面会交流の実施を積極的に検討し、その結果をも踏まえて直接交流の可否等を検討させるべく、事件を原審に差し戻した事例
(東京高決令5・11・30〈参考原審:さいたま家川越支審令4・4・28〉)

▽同一の当事者間で基本契約を締結せずになされた複数回の金銭授受につき、当該取引が金銭消費貸借取引に当たり、利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金を、その後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるとした事例
(東京地判令5・8・18)

▽独立行政法人が設置運営する船員養成学校の航海実習中に、生徒が船上で体調不良を訴えた後に急変して死亡したことについて、船上で治療に当たった看護長ら及び当該独立行政法人の過失が否定され、国家賠償責任はないとされた事例
(横浜地判令6・2・14)

▽労働者災害補償保険の認定に関して、労働基準監督署の担当者が作成した給付調査復命書のうち関係者からの聴取内容が引用された部分等について、「その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」(民事訴訟法220条4号ロ)とはいえないとして、文書提出命令申立てが一部認容された事例
(大阪地決令5・9・27)

▽被告が運営する施設を利用していた当時7歳の重度知的障害を有する児童の死亡事故に関し、被告の使用者責任を認め、児童の基礎収入を賃金センサスの全労働者平均賃金の5割相当額として死亡逸失利益を算定し、児童の両親の損害賠償請求を一部認容した事例
(山口地判令5・12・20)

▽性別変更に「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号の規定が憲法13条に反し違憲無効とされ、性別の取扱いの変更申立てが認容された事例
(岡山家津山支審令6・2・7)


商 事

◎1 退任取締役の退職慰労金について内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の株主総会決議がされた場合に、上記退任取締役に対し上記内規の定める基準額から減額した退職慰労金を支給する旨の取締役会決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないとされた事例(①事件)
 2 民事事件の訴訟記録に係る閲覧等の制限の申立てについての却下決定に補足意見が付された事例(②事件)
(①最一判令6・7・8、②最一決令6・7・8)


労 働

〇1 入社1年目のAが自殺したことについて、その母である控訴人に対し労働者災害補償保険法に基づく遺族補償一時金を不支給とした処分行政庁の処分を適法として控訴人の請求を棄却した1審判決を取り消し、同不支給処分を違法として取り消した事例
 2 上司のパワーハラスメントによる心理的負荷が「中」に該当することをベースとして、前記Aが主担当とされた業務の1つで新入社員にとって難易度が高く、適切な指導や助言等がされていなかった業務による心理的負荷が「強」に、他の業務による心理的負荷が「中」に該当することを総合考慮すると、Aが業務により受けた心理的負荷の程度は全体的評価としても「強」に該当するから、Aの精神障害の発病及びこれによる自殺には業務起因性が認められるとした事例
(名古屋高判令5・4・25〈参考原審:名古屋地判令3・10・11〉)

▽前訴において業務起因性が認められず請求を棄却された原告が、同一の事故により別の傷病を発症したとして労働者災害補償保険法上の療養補償給付を再度請求し、その不支給決定の取消しを求めた事案で、前訴と同様の理由により請求が棄却された事例
(さいたま地判令5・9・6)


刑 事

〇少年が物の損壊や暴力等を行ったことから将来罪を犯すおそれがあるとされたぐ犯保護事件において、少年の問題性の根深さ等を指摘し、家裁継続歴がないことを考慮しても第1種少年院送致が相当とした原決定について、抗告を棄却した事例
(東京高決令5・1・19)

▽2年の保護観察を受けた本人が傷害事件を起こしたこと及び届出住居に居住しなかったことについて、遵守事項違反の程度が重く、このまま保護観察を継続しても本人の改善更生を図ることができないと認めて、本人を第5種少年院に収容した事例
(静岡家決令6・4・4)
◆記 事◆

公共財としての判例の役割と検証
―新時代の判例紹介誌に何が求められるか―……伊藤  眞

『判例時報』の大改訂に寄せて……野坂 泰司


◆判決録◆

行 政

▽旅券法13条1項1号に該当することを理由としてされた外務大臣の一般旅券の発給拒否処分が、外務大臣の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してしたものとして違法であるとされた事例
(東京地判令6・1・25)


民 事

〇中国に居住する元妻(原審申立人)が日本に住所を有する元夫(原審相手方)に対し、当事者間の子の養育費の支払を求め、原審判が、準拠法である中国法において法的効力が認められている最高人民法院による司法解釈に関する意見書に基づいて養育費を算定することは相当でないとして、日本における算定方法を参考にして養育費を算定したのに対し、上記意見書に基づいて養育費を算定するのが相当であるとした上で、結論において原審判は相当であるとして抗告を棄却した事例
(東京高決令4・9・8〈参考原審:横浜家小田原支審令4・4・28〉)

▽1 二重瞼形成手術について術後の左右瞼の外観の非対称性が問題となった損害賠償請求において、手技上の注意義務違反又は債務不履行があったと認められるためには、少なくとも、同手術によって形成された左右瞼の外観が、一般人から見て、対称性について違和感をもつ程度に至っていると認められることが必要であるとされた事例
 2 二重瞼形成手術の手技上の注意義務違反及び説明義務違反が否定された事例
(東京地判令5・10・2) 

▽インターネット上のニュースサイトが報じたニュース記事等のコメント投稿欄に投稿されたコメントが、当該ニュース記事等において報道対象となった者の名誉感情を侵害するものであるとして、慰謝料、発信者情報開示手続費用等の損害賠償責任を認めた事例
(名古屋地判令5・3・30)

▽1 閉塞性細気管支炎を示す病変は発見されなかったが、その原因となる爆発事故の際に発生した有毒ガスの吸引、病状や診療経過等の間接事実から同疾患の発症を認定し、同事故と原告の同疾患との因果関係を肯定した事例
 2 国立大学法人の教員について、国家賠償法が適用されるとして、民法上の責任を負わないとされた事例
(旭川地判令6・3・1)


労 働

〇東海道新幹線の運転士による年次有給休暇の請求に対する使用者がした時季変更権の行使が適法とされた事例
(東京高判令6・2・28〈参考原審:東京地判令5・3・27〉)

▽1 組合員らが組合活動を行う目的で有給休暇を取得し、その後欠勤に変更する処理を扱っていたことを理由としてされた労働組合の書記長に対する懲戒解雇処分につき、懲戒解雇事由該当性を否定し、無効とした事例
 2 労働組合の書記長に対する懲戒解雇処分が不当労働行為に該当するとして、使用者である株式会社及びその代表取締役に対する損害賠償責任を認めた事例
(函館地判令5・10・24)


知的財産権

▽1 芸能プロダクションが所属タレントの肖像写真をホームページに掲載した行為がパブリシティ権を侵害しないとされた事例
 2 人の肖像を無断で使用する行為が肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となる場合
(東京地判令5・12・11)


刑 事

〇原審公判廷で宣告された判決主文と異なる主文を記載した判決書を作成した原審の訴訟手続が、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反を構成するとされた事例
(福岡高判令6・9・3)

▽被害者が自死を企図して被告人が自動車で走行する車線に飛び出してきた可能性を否定できない事案において、過失運転致死罪を否定し、被告人に無罪を言い渡した事例
(札幌地判令6・1・23)


◆最新判例批評◆

1 番号利用法に基づく個人情報の収集・保管・利用又は提供には、憲法13条との関係で問題がないとされた事例
(最一判令5・3・9)……實原 隆志

2 いわゆる弁済受領文書の提出による強制執行の停止の期間中にされた執行処分の効力
(最一判令5・3・2)……今津 綾子
◆第7回判例時報賞 奨励賞受賞論文◆
連帯債務と債務発生原因……西内 康人


◆判例特報◆

〇確定判決が請求人の犯人性を認める根拠とした関係者らの供述について、新旧証拠の総合評価によれば、関係者の1人が、本件に関する情報提供をすることで自らの刑事事件における量刑の軽減等の不当な利益を得ようと、請求人が犯人であるとの虚偽の供述をし、捜査に行き詰まった捜査機関において、他の関係者らに対して前記虚偽の供述に基づく誘導等の不当な働きかけを行い、他の関係者らも迎合した結果、前記虚偽の供述に沿う関係者らの供述が形成された疑いが払拭できないとして、関係者らの供述の信用性を否定し、確定判決の事実認定に合理的な疑いが生じたとして、再審開始を認めた事例
──福井女子中学生殺人事件第2次再審請求事件・再審開始決定
(名古屋高裁金沢支決令6・10・23)

◎参考論文
 福井女子中学生殺人事件・第2次再審請求における主張立証と再審開始決定の概要
 (証拠開示が再審開始の決め手となった事例)……福井女子中学生殺人事件弁護団

 福井女子中学生殺人事件第2次再審請求事件の再審開始決定の意義……村岡 啓一


◆判決録◆

行 政

◎租税特別措置法施行令(平成28年政令第159号による改正前のもの)39条の117第8項5号括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」の意義
(最一判令6・7・18)

◎労働保険の保険料の徴収等に関する法律(令和2年法律第14号による改正前のもの)12条3項所定の事業についてされた業務災害に関する保険給付の支給決定の取消訴訟と事業主の原告適格
(最一判令6・7・4)


民 事

◎1 宗教法人とその信者との間において締結された不起訴の合意が公序良俗に反し無効であるとされた事例
 2 宗教法人の信者らによる献金の勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判令6・7・11)

▽宗教法人が、その運営する墓地を使用する檀徒に対して行った墓地使用許可の取消処分につき、墓地使用規則上の取消事由が認められないとして、墓地使用権を有することの確認を求める檀徒からの請求が認められた事例
(東京地判令5・6・12)

▽マンションの敷地の一部が崩落し、直下の市道を通行していた者が崩落に巻き込まれ死亡した事故について、通行人との関係で、マンションの管理会社及び同会社の従業員に本件事故の発生を防止する義務の違反があるとして不法行為責任を認めた事例
(横浜地判令5・12・15)


知的財産権

▽「エンリケ」という名称等の使用がパブリシティ権を侵害するとされた事例
(東京地判令5・11・30)


労 働

▽1 配転命令の要件として事前の労使間協議を定めた労働協約の成立を認め、労使間協議を経ていない配転命令を無効とした事例
 2 組合員らに対する配転命令が不当労働行為に該当するとして、使用者である株式会社及びその代表取締役に対する損害賠償責任を認めた事例
(函館地判令5・10・24)


刑 事

〇特定少年である少年が友人に大麻を譲渡したという大麻取締法違反保護事件において、少年を第1種少年院に送致し、収容期間を2年間と定めた原決定について、処分の著しい不当を理由とする抗告を棄却した事例
(東京高決令5・7・4)

〇特定少年である少年が、共犯者と共謀の上、大麻を所持したという大麻取締法違反保護事件において、収容期間を2年間として第1種少年院に送致した原決定について、処分が著しく不当であるとして、これを取り消した事例
(東京高決令6・2・28)

〇迷惑行為防止条例違反保護事件において、非行事実を認定する旨等を審判期日で少年らに告知した後に審判開始決定の取消決定をし、さらに、審判不開始決定(保護的措置)をしたという事案における同決定に対する抗告について、申立てが不適法であるとして抗告を棄却した事例
(福岡高決令5・8・18)
◆記 事◆

許可抗告事件の実情
─令和5年度─……岡崎 克彦・今西 和樹

裁量基準の適用違法(3)
─合理的裁量基準の不合理な適用・矯正行政の実務を踏まえて─……常岡 孝好


◆判決録細目◆

民 事

〇未成年者について一時保護が開始され、その後も未成年者が抗告人の下に戻る見通しが立っていないこと等を踏まえて、離婚判決の主文のうち、相手方の養育費支払義務を定める部分を、養育費減額審判申立日以降分について取り消した事例
(東京高決令4・12・15〈参考原審:横浜家審令4・8・26〉)

▽長時間労働等により精神疾患を発症し自殺した公立中学校教員の遺族が校長の安全配慮義務違反等を主張して学校設置者である被告に損害賠償(国家賠償)請求した事案について、遺族の請求を認容した事例
(水戸地下妻支判令6・2・14)

▽電源を入れた状態でスロットルを回し、ペダルをこぐことなく、モーターの動力のみにより走行する方法、電源を入れた状態で、スロットルを回さずにペダルをこぎ、モーターの動力による補助を受けながら走行する方法及び電源を切った状態で、モーターに頼ることなく、ペダルをこぐことで走行する方法の各走行方法による走行が可能なペダル付きの原動機付自転車(いわゆるモペット)は、原動力がもっぱら人力であるものには当たらないから、個人賠償責任保険約款の免責の対象となる「車両」に当たり、その所有、使用又は管理に起因する賠償責任の負担に係る損害については、保険金支払の対象外となるとされた事例
(大阪地判令5・12・14)


知的財産権

▽発信者が著作物にリンクするURLを送信した行為が、情報の流通によって原告の著作権の侵害を直接的にもたらしているものと認めることはできず、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律5条1項にいう権利の侵害に当たらないとされた事例
(東京地判令6・1・18)


労 働

〇職場における孤立防止義務違反を認めて損害賠償を命じた原判決に対し、原審での当事者の主張の中に孤立防止義務違反の主張はなく、仮に当審で新たに主張をしたものと解してもその内容は抽象的なものにすぎない上、事案に照らして孤立防止義務違反は認められないとした事例
(東京高判令5・6・28〈参考原審:千葉地判令4・3・29〉)


◆判例評論◆

27 一事不再理効の時間的範囲
(最一決令3・6・28)……関口 和徳

28 2022(令和4)年参議院議員通常選挙と違憲状態判断
(最大判令5・10・18)……淺野 博宣

29 1 職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和1年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分の適否に関する裁判所の審査
  2 職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和1年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により公立学校教員を退職した者に対してされた一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分に係る県の教育委員会の判断が、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとはいえないとされた事例
(最三判令5・6・27)……弘中  章
◆判決録細目◆

行 政

▽県が保有している旧優生保護法下での優生手術に関する公文書一式に係る情報公開請求についてされた公文書一部不開示決定に違法があるとして、不開示部分の一部取消と取消部分に係る公開の義務付けなどを求めた訴えについて、優生手術対象者の職業及び就労の状況に関する情報、出生及び異性関係情報、遺伝情報、親族等の意向に関する情報及び医師個人の氏名に関する情報について非公開事由があるが、その余の情報について非公開事由が認められないと判断した事例
(大津地判令5・3・24)


民 事

◎嫡出でない子は、生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し、その者の法令の規定の適用の前提となる性別にかかわらず、認知を求めることができるか(積極)
(最二判令6・6・21)

〇弁護士が控訴審において依頼者の意向を確認しないまま和解の意向がない旨の記載のある照会兼回答書を提出したことが委任契約上の善管義務違反に当たるとした事例
(大阪高判令5・5・25〈参考原審:大阪地判令4・9・20〉)


知的財産権

▽「牧野日本植物圖鑑」という書籍の題号が不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「商品等表示」に該当しないとされた事例
(東京地判令6・7・8)

▽ある投稿における匿名の人物が、原告と面識がある又は原告に関する知識を有する者によって原告であると同定され、その者が特定少数であってもこれを流布するおそれがあるとして、原告の名誉を毀損するものとされた事例
(東京地判令6・7・18)
◆判決録細目◆

行 政

▽消費者庁の実施した機能性表示食品に係る検証事業の成果物である検証報告書に対する開示請求に対する一部不開示決定について、その不開示部分のうち一部につき行政機関の保有する情報の公開に関する法律上の不開示情報該当性を否定し、不開示情報に該当するとされたものについてもうち一部については部分開示義務があるとして一部を取り消し、その開示を義務付けた事例
(東京地判令4・10・4)


民 事

◎相続回復請求の相手方である表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができるか(積極)
(最三判令6・3・19)

〇区分所有建物の共用部分の瑕疵を原因として生じた漏水事故に関して、区分所有者の1人が、区分所有者全員で構成される当該建物の管理組合に対し、損害賠償債務の履行を求めることはできないとされた事例
(東京高判令5・9・27〈参考原審:東京地判令4・12・27本誌2591号21頁〉)

▽親の名義で開設された普通預金口座及び定期預金口座に入金された金員の帰属を巡り、その預金者が誰かが争われた事案において、預金者は名義人と異なり、その子であると認定された事例
(東京地判令5・7・18)

▽破産者に対する配当について、破産管財人が税務署に対する照会の回答に従って源泉徴収をしなかったことが善管注意義務に違反したとはいえず、また、自然人たる破産者の所得税について確定申告義務を負うものでもないとされた事例
(東京地判令5・10・18)

▽職場の休憩室において、約4か月間に20回程度、1回当たり3時間程度、他の人に気付かれない位置に録音機を設置して無断で録音した会話が違法収集証拠として排除された事例
(大阪地判令5・12・7)

▽介護施設を利用していた高齢者が利用中に食物を誤嚥して窒息死した事件につき、当該介護施設の職員に誤嚥防止義務違反があるとして、当該介護施設の運営者の使用者責任が肯定された事例
(広島地判令5・11・6)


労 働

▽1 リモートワークで業務に従事していた従業員に対して使用者が出社を命じたところ、この出社命令には業務上の必要性が認められないとしてその有効性が否定され、出社命令後の期間について民法536条2項に基づき賃金請求が認められた事例
 2 リモートワーク期間中の所定労働時間外労働による割増賃金請求(本訴請求)及び同期間中の不就労時間に係る賃金の返還請求(反訴請求)について、労働時間、不就労時間のいずれについても立証が不十分であるとして請求が棄却された事例
(東京地判令4・11・16)

▽業務中に追突事故に遭った労働者の右肩腱板不全断裂について、業務起因性が肯定された事例
(東京地判令5・3・17)


刑 事

◎農地の売買契約が締結されたが、譲受人の委託に基づき第三者の名義を用いて農地法所定の許可が取得され、当該第三者に所有権移転登記が経由された場合において、当該第三者が当該土地を不法に領得したときの横領罪の成否
(最二判令4・4・18)

◎債権譲渡の対価としてされた金銭の交付が貸金業法2条1項と出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律5条3項にいう「貸付け」に当たるとされた事例
(最三決令5・2・20)
◆記 事◆

裁量基準の適用違法(2)
─合理的裁量基準の不合理な適用・矯正行政の実務を踏まえて─……常岡 孝好

◆判決録細目◆

行 政

▽1 訴訟上の和解条項に基づき分割金の支払が履行されたことにより残債務が免除された場合に、その債務免除による利益が一時所得として所得税の課税対象となるとされた事例
 2 訴訟上の和解条項に基づく分割金の支払中に債務者に相続が発生した場合に、分割金の支払が履行された場合に免除される残債務について、相続税の課税においては消極財産として扱われなかった場合であっても、その後分割金の支払が履行された場合の債務免除による利益を一時所得として所得税の課税対象としたことが二重課税の排除(所得税法9条1項16号〔令和3年法律第11号による改正前のもの〕)の趣旨に反しないとされた事例
 3 訴訟上の和解に向けて支出された弁護士費用等が、同和解の条項に基づく分割金支払義務履行時の残債務の免除による利益について、「その収入を得るために支出した金額」(所得税法34条2項)に該当するものとして所得税課税において一時所得から控除することができるとされた事例
(東京地判令5・3・14)


民 事

▽換金可能と謳ったポイント商品を販売したものの、事情変更による改定を認める規約を根拠に換金停止措置をとった事業者について、前記規約による改定の効力を否定し、換金停止期間中はポイントの有効期間も進行しないとして、顧客からの換金請求を認容した事例
(東京地判令5・9・4)

▽中学生2名が同じクラスの生徒に対して悪口などのいじめを繰り返した行為につきそれぞれ不法行為に該当するとされた一方で、被害生徒の両親が加害生徒1名に対して行ったヒアリング行為が不法行為に該当するとはいえないとされた事例
(東京地判令5・10・30)


労 働

▽日本人客室乗務員とオランダの航空会社との間で日本法を準拠法として締結された有期労働契約の効力について、法の適用に関する通則法12条1項によりオランダ法の強行規定が適用された結果、無期転換が認められた事例
(東京地判令5・3・27)


知的財産権

▽1 子供用椅子「TRIPP TRAPP」の原告主張に係る商品形態が商品等表示に該当しないとされた事例
 2 被告製品の製造販売等が子供用椅子「TRIPP TRAPP」を複製又は翻案するものではないとされた事例
(東京地判令5・9・28)


◆判例評論◆

25 えい児の死体を段ボール箱に二重に入れて接着テープで封をし、自室の棚の上に置いた行為が、刑法190条にいう「遺棄」に当たらないとされた事例
(最二判令5・3・24)……萩野 貴史


26 墓地、埋葬等に関する法律10条の規定により大阪市長がした納骨堂の経営等に係る許可の取消訴訟と納骨堂の周辺住民の原告適格
(最三判令5・5・9)……田近 肇
◆記 事◆

実務と学説からみた憲法訴訟(12)
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号生殖腺手術要件最高裁憲法13条違反決定について…本多 広高

「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」と憲法判断の方法
―最大決令和5年10月25日を主たる検討対象として―…青井 未帆


◆判決録細目◆

行 政

〇1 児童相談所長が、児童虐待の防止等に関する法律12条1項によらずに、一時保護中の児童の保護者に対して、事実上の強制によって当該児童との面会を制限することは、児童が一時保護されていることによる内在的制約による場合(保護施設の人的・物的態勢に起因して面会の時間や場所が一定の制限を受ける等)又は面会をさせることによって児童の安全や福祉が侵害される具体的なおそれがあり、面会を求めることが権利濫用に該当する場合等を除き、国家賠償法1条1項の適用上違法となる(①事件)
 2 親権者等により一時保護に基づく児童に対する措置を不当に妨げる行為が現に行われ、又は行われると認められるために監護等の措置をとることが必要な場合には、児童相談所長は、児童虐待の防止等に関する法律12条1項によらずに、児童福祉法33条の2第2項に基づき、必要かつ相当と認められる範囲で、親権者等の意に反して、監護等の措置と一体のものとして児童との面会通信を制限することが許される(②事件)
(①大阪高判令5・8・30〈参考原審:大阪地判令4・3・24本誌2567号5頁〉、②大阪高判令5・12・15〈参考原審:大阪地判令5・4・27〉)


民 事

〇被相続人から長男に対する共同住宅及びその敷地の負担付贈与について、贈与時の価額から引受債務の額を控除した額に相当する部分につき特別受益に当たると評価するとともに、長男の同引受債務の完済による寄与分の主張を排斥し、被相続人の長女に対する援助や不動産持分の贈与について持戻免除の意思表示を推認した事案
(東京高決令5・12・7)

〇1 水産業協同組合法18条1項1号所定の要件を満たす者につき、漁業協同組合の組合員資格審査規程所定の新規加入申込者の特例は適用されないとして、組合員たる資格を有するとされた事例
 2 漁業協同組合への加入申込みに対する拒否が不法行為に当たるとして慰謝料請求が認容された事例
(福岡高那覇支判令5・1・31〈参考原審:那覇地沖縄支判令4・2・21〉)

▽インターネット上の投稿について、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律所定の不当な差別的言動に該当する人格権侵害及び名誉感情侵害を認め、不法行為に基づく損害賠償請求を認容した事例
(横浜地川崎支判令5・10・12)

▽契約当事者において契約期間内であっても合意により契約を解除することができる旨の規定は、解除権を放棄するものとはいえないとして、カップルユーチューバーに係る専属マネジメント契約の解除が認められた事例
(東京地判令6・7・8)


労 働

▽従業員の長時間労働による突然死に係る会社及び代表取締役の損害賠償責任がそれぞれ肯定された事例
(東京地判令5・3・23)
◆記 事◆

◎特別寄稿
別荘地管理の法律関係 その2……淺生 重機


◆判決録細目◆

民 事

〇位置指定道路の敷地所有者が隣接地で運送業を営む会社に対して当該位置指定道路の自動車での通行禁止を求めた請求が棄却された事例
(東京高判令4・12・13〈参考原審:東京地立川支判令4・4・22〉)

▽民事訴訟において訴訟代理人を務めた弁護士が、依頼者に対して判決の結果等を報告する義務を怠ったとして、同弁護士及び同弁護士が代表社員を務める弁護士法人の依頼者に対する各損害賠償責任を認めた事例
(東京地判令5・5・10)

▽1 団地建物所有者の団体である管理組合の規約において、区分所有者等が共用部分等において不法行為を行ったときは、管理者たる理事長が、評議員会決議を経て当該管理組合を代表して差止め・原状回復措置の請求に関する訴訟を追行することができ、当該訴訟を提起する場合に請求の相手方に対し弁護士費用等を請求することができる旨定めることは、建物の区分所有等に関する法律の趣旨に反しない
 2 建物の区分所有等に関する法律上の規約に管理組合の行う管理の本旨は居住者の共同利益の増進に努めること等とする旨の定めが存し、業務執行に当たっている管理組合の役員等に対する名誉毀損に該当する文書の配布を内容とする不法行為を対象として前記請求をする場合において、当該不法行為が単なる特定の個人に対する名誉毀損の域を超えないもので、それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどして建物の正常な管理又は使用が阻害されることもないときは、前記請求は、管理組合の管理の本旨に反するものとして許されない
 3 建物の区分所有等に関する法律上の規約に基づく原状回復措置として謝罪文の配布を命じる必要がないと判断された事例
(東京地判令5・5・25)

▽被告がインターネット上に掲載した記事の一部について、真実相当性の抗弁を認めて損害賠償を否定しつつ、同記事の掲載は違法であるとして、その削除を命じた事例
(東京地判令5・12・13)


労 働

▽公立学校教諭が配偶者の名義で開設運営する空手道場の唯一の師範として会員に対して空手の指導を行うなどの活動をしたことが地方公務員の営利企業への従事等の制限(地方公務員法38条1項)等に違反するとしてされた減給処分が適法とされた事例
(名古屋地判令4・9・7)


知的財産権

▽指定国において国内移行手続が行われずに取下擬制がされた国際特許出願に係る発明について、原告が特許を受ける権利を有することの確認を求める訴えが、確認の利益を欠くものとして却下された事例
(東京地判令6・1・22)

▽宗教上の教義である「神示」を出版物に掲載した行為が著作権法32条1項にいう引用に該当するとされた事例
(東京地判令4・12・19)


刑 事

▽1 インターネット上での情報掲示による名誉毀損では、閲覧可能な状態が継続する間は未だ犯罪は終了しないとして掲示開始後3年を経過しても公訴時効が完成せず、掲示終了直後にされた告訴を有効とした事例
 2 危険ドラッグに係る有罪判決の言渡後、短期間経過した時点でその情報を掲示しても違法ではないが、執行猶予期間が満了し、更生に向けた社会生活も進んでいた時期に当該情報の掲示を続けた時点では、その主たる動機が公益目的であったとはいえず違法であり、当該情報を掲示した被告人がその掲示を停止させる等によって情報を閲覧できない状態にする義務があるのにこれを放置した不作為による名誉毀損罪の成立を認めた事例
(さいたま地判令5・8・29)
◆記 事◆

「人質司法」について……西 愛礼

海外判例研究──第18回──
【憲法】
 ・法律が曖昧な場合には行政機関の判断に敬譲するとしたシェブロン法理を覆し、裁判所が自ら法解釈を行うことを示した事例……大林 啓吾

 ・商標制度は勝手に他人の名前を使って商標登録することを認めていないが、それは表現の自由を侵害しないとした事例……大林 啓吾

【民法】
 ・公序良俗違反により賃貸借契約が無効と認められた事件……胡 光輝

【消費者法】
 ・消費者の支払義務が発生することに関する事業者の表示義務……カライスコス アントニオス

【刑法】
 ・医療資源の配分決定における障害者の不利益取扱いの禁止──トリアージ決定……天田 悠

 ・外国政府職員等の刑事裁判権からの事項的免除と人道に対する犯罪としての奴隷化……久保田 隆


「家主による正当防衛」の成立要件……川崎 友巳


◆判決録細目◆

行 政

▽1 LINEを用いたオンラインによる住民票の写し交付請求サービスを提供していた事業者が、国に対し同サービスを適法に行い得る地位にあることの確認を求める当事者訴訟について、確認の利益が認められた例
 2 電子署名及び電子証明書の併用による本人確認以外の方法でオンラインで住民票の写しの交付請求をすることを禁ずることとなる省令改正が、その授権規定である情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律6条1項の委任の範囲を超えるものとは認められないとされた例
(東京地判令4・12・8)


民 事

◎社団たる医療法人の社員が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律37条2項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することの可否
(最三決令6・3・27)

▽選任審判主文に掲げられた案文どおり遺産分割協議を成立させた特別代理人に善管注意義務違反がないとされた事例
(東京地判令5・9・22)

▽東京入国管理局長が行った外国人による在留期間更新許可申請に対する不許可処分につき、国家賠償法1条1項の違法性が認められるとされた事例
(東京地判令5・7・24)


知的財産権

▽YouTubeに投稿された動画の著作者において当該動画によって思想、意見等を伝達する利益が人格的利益として認められないとされた事例
(東京地判令6・2・26)

▽発信者情報開示仮処分命令申立事件に係る申立書類一式をiPhoneで撮影した写真の著作物性が否定された事例
(東京地判令5・7・6)

▽被告標章につき先使用権は認められず、原告の本訴請求は権利濫用にもあたらないとして、商標権に基づく差止等請求が認められた事例
(大阪地判令5・11・30)


刑 事

〇少年が特殊詐欺の受け子をしたとされる詐欺未遂保護事件において、詐欺未遂罪の成立を認定して少年を第2種少年院に送致した原決定につき、詐欺の故意を認めた判断に重大な事実の誤認があるとして、これを取り消した事例
(東京高決令5・9・15)


◆判例評論◆

23 令和2年総務省令第82号の施行前に特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(令和3年法律第27号による改正前のもの)4条1項に基づき前記施行後に発信者の電話番号の開示を請求することの可否
(最二判令5・1・30)……町村 泰貴

24 政務活動費のうちその趣旨、目的に反して支出された金額の返還を求める不当利得返還請求権は、「行政上の便宜を考慮する必要のある公法上の債権」であるとは認められないから、消滅時効期間を民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)167条1項所定の10年と解するのが相当であるとされた事例
(名古屋高金沢支判令5・2・8)……大田 直史
◆記  事◆

裁量基準の適用違法(1)
─合理的裁量基準の不合理な適用・矯正行政の実務を踏まえて─……常岡 孝好


◆判決録細目◆

行 政

▽厚生労働大臣がした障害基礎年金を支給しない旨の処分が、裁定請求者は障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあったとして取り消された事例
(東京地判令5・2・9)

▽「主要農作物種子法を廃止する法律」により廃止された主要農作物種子法3条1項所定の指定種子生産ほ場の指定を受けていた採種農家につき、その指定を受ける地位確認の利益が肯定されたが、憲法13条、22条、25条及び29条の各権利の侵害は否定された事例
(東京地判令5・3・24)

▽コンゴ民主共和国の国籍を有する外国人男性に対して東京出入国在留管理局長がした難民の認定をしない処分が違法であるとされた事例
(東京地判令5・1・12)


民 事

◎遺言により相続分がないものと指定され、遺留分侵害額請求権を行使した相続人は、特別寄与料を負担するか(消極)
(最一決令5・10・26)


労 働

◎外国人の技能実習に係る監理団体の指導員が事業場外で従事した業務につき、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判令6・4・16)

▽地方自治体職員に対する条件付採用期間の勤務成績不良を理由とする免職処分につき、裁量権の逸脱・濫用、公正原則違反、育児休業等を理由とする不利益取扱いによる違法があるとは認められないとされた事例
(宮崎地判令5・10・18)


刑 事

▽犯人性が争点となっている強制わいせつ被告事件において、DNA混合試料の分析・評価を行うなどした上で、被告人が犯人であると認定するには合理的な疑いが残るとして無罪を言い渡した事例
(横浜地判令5・8・7)
◆記 事◆

最高裁刑事破棄判決等の実情
──令和5年度──……開發 礼子


◆判例特報◆

燕市における工場からの振動・騒音・悪臭による財産被害等責任裁定申請事件
(公調委令6・3・21裁定)


◆判決録細目◆

行 政

▽1 事業者が土地と建物とをその代金額を明示的に区分した上で同一の者に対して同時に譲渡した場合における消費税法施行令45条3項の適用の可否
 2 事業者が土地と建物とを同一の者に対して同時に譲渡した場合の消費税の課税標準の額の算定に当たって、当該譲渡に係る売買契約書において土地の代金額と建物の代金額とが明示的に区分されていたとしても、消費税法施行令45条3項所定の「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当するとされた事例
(東京地判令5・5・25)


民 事

〇1 大学の研究室につき講師による占有回収の訴えが認められた事例
 2 研究室の占有奪取行為を学校法人に助言した弁護士の共同不法行為責任が認められた事例
(大阪高判令5・1・26〈参考原審:大阪地判令4・1・18〉)

〇婚姻費用分担義務者による別居前後の時期における暗号資産の売却または他の暗号資産への変換について、課税当局がこれを所得として把握したものとしても、その売却等により継続的に収益を得ていたと認められず、実質的夫婦共有財産の保有形態の変更にすぎないとして、これを婚姻費用算定上の収入とみることが相当でないとした事例
(福岡高決令5・2・6〈参考原審:福岡家審令4・9・13〉)

▽登山講習会の開催中に発生した雪崩により県立高校の生徒及び教員が死亡した事故について、県立高校の教員である講師3名の個人責任を否定した一方、同講師ら及び主催団体が講習会を中止すべき義務を怠ったとして、県及び主催団体の損害賠償責任を認めた事例
(宇都宮地判令5・6・28)


刑 事

〇交通人身事故を起こしてから被害者に対する救護措置を講じるまでの間に、飲酒運転の発覚を免れる目的で口臭防止用品を購入し服用する行動をとった被告人について、事故後の被告人の行動は、被害者に対して直ちに救護措置を講じなかったと評価することはできないとして、救護義務違反の罪の成立が否定された事例
(東京高判令5・9・28〈参考原審:長野地判令4・11・29〉)


◆最高裁判例要旨(2024(令6)年6・7月分)
◆記 事◆

憲法24条は同性婚を含むという憲法解釈の定立
──同性婚認容判決と司法部の立ち位置(その2)……千葉 勝美

実務と学説からみた憲法訴訟(11)
 岡口基一氏に対する弾劾裁判を振り返って
 ─弁護人の視点から─……大賀 浩一

 裁判官弾劾制度に関する若干の考察
 ──岡口判事弾劾裁判罷免判決を受けて……野坂 泰司


◆判決録細目◆

行 政
▽廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条の2第1項にいう、産業廃棄物処理施設の設置及び維持管理に関する計画が周辺地域の生活環境の保全等について適正な配慮がなされたものであること(2号要件)に関する処分行政庁の判断について、判断過程に看過しがたい過誤、欠落があるとして、設置許可処分を取り消した事例
(広島地判令5・7・4)


民 事

〇物流倉庫内においてフォークリフト運転者が段ボールを回収運搬するに当たり、大量の段ボールが堆積する場所でフォークリフトの前進・後退を繰り返し、高温となった排気管と段ボールが接触して発火したことから発生した火災事故についてフォークリフト運転者の過失が肯定された事例(過失相殺3割5分)
(東京高判令6・2・8〈参考原審:東京地判令5・4・26〉)

▽1 原被告間において締結された健康診断業務に関する基本契約に基づいて、20年間にわたって毎年個別契約が締結され、健康診断業務が行われてきたなどの事実関係の下において、担当者間で受託業務内容について合意が成立するなどしていたとしても、なお、個別契約の成立が否定され、基本契約又は個別契約に基づく報酬請求が認められないとされた事例
 2 健康診断業務に関する個別契約の成立は認められないが、健康診断業務を受託できるとの原告の期待は保護に値し、被告には契約締結上の過失が認められるとして、信頼利益の損害請求が認められた事例
(東京地判令5・5・9) 

▽仮想通貨交換業者が管理していた仮想通貨が不正送信され、当該交換業者が仮想通貨の送信等の停止措置を講じた事案において、当該交換業者とユーザーとの間における補償合意を否定して、ユーザーによる送信請求を認める一方で、当該交換業者の停止措置による履行遅滞や仮想通貨の管理体制の構築義務違反を否定した事例
(東京地判令4・4・27)


◆判例評論◆

21 離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき裁判を先送りすることの許否
(最二判令4・12・26) ……松尾 知子

22 1 消費税法における「課税資産の譲渡等にのみ要する」課税仕入れと「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する」課税仕入れとの区別(①事件)
2 事業者が消費税及び地方消費税の確定申告において課税期間中に行った課税仕入れの区分につき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできないとされた事例(②事件)
(①最一判令5・3・6、②最一判令5・3・6)……大藏 将史
◆判決録細目◆

民 事

◎消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律2条4号所定の共通義務確認の訴えについて、同法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判令6・3・12)

〇公の施設の管理委託契約の終了について、普通地方公共団体において指定管理者の指定の取消事由がないにもかかわらず、実体とは異なる指定取消しの要件を満たすような外形を整えて指定取消しをしたものであり、内実は合意解約であるとされた事例
(名古屋高金沢支判令5・4・19〈参考原審:富山地判令4・10・6〉)

▽従業員が使用者(法人)の業務として不動産取引を仲介する際、本来使用者に帰属すべき利益を私的に得たことが労働契約上の誠実義務に違反するなどとして、使用者の元従業員等に対する損害賠償請求を認容した事例
(東京地判令5・3・22)

▽夫が妻(ただし離婚後)及び未成年の子らに対し、同居中に暴力、暴言等をしており、強度の身体的又は精神的苦痛を被らせる行為を継続的に行っていたものと評価すべきであるとして、それぞれ不法行為に基づく損害賠償請求が認められた事例
(東京地判令4・3・29)

▽腹臥位での頸椎椎弓形成術後に患者の視力及び視野機能が低下したことについて、担当医師に視神経等への血流低下予防措置を講じなかった過失が認められた事例
(東京地判令5・3・23)

▽検索サイト内ニュースページで配信された記事による名誉毀損事案につき、同サイト運営者に特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律3条1項による責任限定が認められた事例
(東京地判令5・3・29)


知的財産権

▽1 絵柄を商品化したタオルについて、絵柄を除くタオル部分には、それ自体独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えているものとはいえないとして、応用美術としての著作物性が否定された事例
 2 著作権者がその著作物に係る実施料のみを得ている場合における著作権法114条2項の適用又は類推適用の可否
(東京地判令6・3・28)


刑 事

▽覚醒剤所持の事案につき、当該覚醒剤が被告人の鞄の財布内から発見されたとは認められず、被告人が覚醒剤を所持したとは認められないとされた事
(大阪地判令5・10・13)
◆記 事◆

近時の就業態様の変容とその法律問題
―裁判官時代の在宅ワーク(いわゆる宅調制度)の経験も振り返っての分析―……鬼頭 季郎


◆判決録細目◆

行 政

◎犯罪被害者と同性の者は犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得るか(積極)
(最三判令6・3・26)

▽シリア・アラブ共和国国籍を有する外国人について、政治的意見(それに基づく兵役忌避)を理由に、難民に該当するとして、難民不認定処分を取り消した事案
(名古屋地判令6・5・9)


民 事

〇平成26年閣議決定による政府の憲法解釈の変更に基づき立法された平和安全法制が憲法9条1項の規定や憲法の平和主義の理念に明白に違反するとまではいえないとして国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が棄却された事例
(仙台高判令5・12・5〈参考原審:福島地いわき支判令4・2・22〉)

▽過去にモデル等として芸能活動に携わっていた者の肖像写真を掲載するとともに芸名を記載した電子書籍をウェブサイトで販売した行為につき、肖像権及び氏名権侵害に係る不法行為の成立が否定された事例
(東京地判令5・7・10)


経 済

▽1 主要な飲食店ポータルサイトの運営会社が、同サイトに掲載されている飲食店の評点を算出するためのアルゴリズムについて、チェーン店の評点を非チェーン店の評点に比して下方修正する変更を実施し、継続していることが、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9項5号ハに定める優越的地位の濫用であるとされた事例
 2 同事案で、チェーン店による私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律24条に基づく、同変更に係るアルゴリズムの使用の差止請求が棄却された事例(東京地判令4・6・16)
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