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◆第8回判例時報賞 奨励賞受賞論文◆

家事審判・調停における単純執行文の要否に関する一考察……山本 真


◆判決録細目◆

行 政

▽アイヌで構成される権利能力なき社団が、先住民であるアイヌの集団的かつ固有の権利として北海道内の特定の内水面においてさけの漁業権を有し、水産資源保護法28条は当該漁業に関する限り無効であると主張した事案につき、かかる主張が認められなかった事例
(札幌地判令6・4・18)

▽警察官の現認供述の信用性を否定し、自動車の運転者にシートベルト装着義務違反があったとは認められないとして、当該運転者の区分を一般運転者とする運転免許証の有効期間の更新処分を取り消し、公安委員会に対し、同区分を優良運転者とする運転免許証の有効期間の更新処分をするよう命じた事例
(福岡地判令6・5・22)


民 事

▽警察署職員の不適切な保管行為により押収物が使用不能となったとして、損害の算定の時期及び額が争われた事案において、本来原告に還付されるべき時期の価値と現存価値との差額を損害とした事例
(東京地判令7・2・4)

▽ふるさと納税の寄附者と地方公共団体との間には返礼品交付の贈与契約が成立し、地方公共団体が郵送した合意解除等の申込書面は民法550条の「書面」に当たり同契約は解除できないとして、返礼品交付債務の不履行による返礼品調達費用相当額の損害を認めた事例
(横浜地川崎支判令7・1・21)


労 働

▽労働者の自死について業務起因性が肯定され、遺族に対する行政庁の遺族補償給付及び葬祭料の不支給処分が取り消された事例
(福岡地判令6・7・5)


刑 事

〇国家公務員共済組合連合会の運営する病院が、その敷地内に開設を予定していた調剤薬局の整備運営事業に係る契約に関し、優先交渉権者を選定するために実施した企画競争について、刑法96条の6第1項の「入札」及び「契約を締結するためのもの」に該当しないとされた事例
(札幌高判令7・1・28〈参考原審:札幌地判令6・4・18〉)
◆判例特報◆

――袴田事件再審公判無罪判決/袴田事件刑事補償決定
▽1 再審公判において、被告人が犯人であることを推認させる証拠価値のある3つの証拠には捜査機関によるねつ造があり、これらを排除した他の証拠によって認められる事実関係によっては被告人が犯人であるとは認められないと判断して、被告人を無罪とした事例(①事件)
 2 再審公判で無罪の判決が確定した請求人について、逮捕から釈放までの未決の抑留若しくは拘禁又は死刑執行のための拘置を受けた1万7389日間の刑事補償として法定の上限額である1日1万2500円の割合による合計2億1736万2500円の請求を認容した事例(②事件)
 3 無罪判決が捜査機関によるねつ造を認定するに当たって判示した事実には客観的に明らかな時系列や証拠関係とは明白に矛盾する内容も含まれていること、確定審において請求人の犯人性を認定するための中心的な証拠と位置付けられていた5点の衣類の犯行着衣性については再審請求審の審理においても司法判断が区々であったことに照らすと、本判決のねつ造認定を根拠に捜査機関の故意過失を肯定することは相当でない、という検察官の主張を排斥した事例(②事件)
(①静岡地判令6・9・26、②静岡地決令7・3・24)


◆判決録細目◆

民 事

◎民法709条の不法行為を構成する行為は宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たるか(積極)
(最一決令7・3・3)

▽吸収分割の方法による賃借人の地位の移転が民法612条1項所定の譲渡に当たり、同条2項所定の解除により賃貸借契約が終了したとして、吸収分割承継会社に対する建物明渡請求が認容された事例
(東京地判令7・1・16)

▽救急医療のための東京ルールの下で一時的に救急搬送された患者について、死因となった糖尿病性ケトアシドーシスの鑑別診断を行うべき医師の過失が否定された事例
(東京地判令6・7・18)


労 働

〇1 使用者の労働時間把握義務につき、労働時間を労働者の自己申告で把握することは不適法であるとして、タイムカードに沿った時間外勤務時間を認めた事例
 2 不当労働行為に当たる懲戒処分について不法行為の成立を認め、法人の理事長についても悪意・重過失を認めて賠償を命じた事例
 3 出勤停止中の賃金請求に対し原審が請求のない損害賠償請求として認容したため判決の脱漏が生じた部分について、当事者全員が控訴審で判断することに異議がないと陳述したことをもって控訴審が判断し未払賃金の支払を命じた事例
(名古屋高判令6・2・29〈参考原審:津地判令5・4・24〉)


刑 事

▽特定少年が、未成年者に裸の画像を送信させるなどし、他の未成年者に対して脅迫して同人と口腔性交するなどした児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、不同意性交等保護事件において、検察官送致決定後、少年法45条5号ただし書により検察庁から再送致された事件について、刑事処分以外の措置を相当と認め、第1種少年院に送致し、収容期間を3年間とした事例
(千葉家決令7・1・24)


◆判例評論◆

19 株券発行前の株式譲渡の当事者間効力と株券発行請求権の代位行使
(最二判令6・4・19)……今川 嘉文
◆判例特報◆

三大都市圏における自動車排出ガスによる大気汚染被害責任裁定申請事件
(公調委令7・5・26裁定)


◆判決録細目◆

民 事

〇1 原告の所有する土地につき公道に通ずる通路はあるがその幅が狭いために土地の効用を全うできないとして、より広い幅の通路の確保のために、被告の所有する土地につき民法213条に基づく通行権を認めた事例
 2 民法213条に基づく通行権の範囲を定める際の一事情として、建築基準法43条1項所定の接道要件を満たすべき必要性を考慮した事例
(大阪高判令7・3・27〈参考原審:大阪地判令6・9・27〉)

▽ツイッター(現在の「X」)における原告の名誉を毀損する投稿が被告によるものか争われた事案において、投稿元のアカウントに係るログ情報等を踏まえ、被告が投稿したと認定した事例
(旭川地判令6・7・25)


刑 事

◎児童に児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同法7条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するときに、同条5項を適用することの可否
(最三判令6・5・21)

◎弁護人からの証拠開示命令請求(刑事訴訟法316条の26第1項)の棄却決定の謄本が先に弁護人に送達され、その後に被告人本人に送達された場合における、同決定に対する弁護人の即時抗告提起期間の起算日
(最三決令6・11・15)
◆判決録細目◆

民 事

〇1 システム開発業務が納期までに完成しなかった原因について、要件等の確定に関する協力を怠り、要件定義書に記載されていない要件及び仕様に関する多数の要望を行っていた委託者と、上記要望事項について要件定義との関係を十分に整理しないままに任意の対応を続けた受託者の双方にあるとした事例
 2 システム開発業務においてシステムの要件の再定義や改修等に向けて委託者及び受託者の双方が協力して対応していたとの事情から、委託者が上記システムの納期延期について黙示的に承諾していたと判断した事例
(東京高判令6・1・31〈参考原審:東京地支判令3・5・24〉)

▽原告が元妻である被告に対し共有する建物について財産分与が請求されている中で共有物分割を求めることは権利の濫用であるとされた事例
(東京地判令6・9・18)

▽宗教団体の信者に対する献金勧誘行為が、勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱する違法なものであるとして、損害賠償請求が認容された事例
(高知地判令7・2・14)

▽小学校内で発生した傷害事故について、当該小学校の実施した調査がいじめ防止対策推進法28条1項所定の調査に該当しないと判断された事例
(静岡地判令7・1・30)


知的財産権

▽宗教法人の会員において同法人発行新聞掲載に係る報道写真をスマートフォンで写しこれをツイッターに掲載して批評と共に利用する行為が、著作権法32条1項にいう引用に該当するとされた事例
(東京地判令6・9・26)


刑 事

▽非現住建造物等及び現住建造物等放火事件について、自然発火等を否定して事件性は肯定したが、犯人性については、各情況証拠の証明度及び各情況証拠の総合を検討した結果、犯人であると合理的疑いなく認定することは不可能であるとして、無罪を言い渡した事例
(静岡地浜松支判令6・10・23)


◆判例評論◆
17 外国子会社合算税制における非関連者基準の充足が否定された事例──日産キャプティブ再保険事件最高裁判決
(最一判令6・7・18)…… 長戸 貴之

18 男性から女性への性別変更後に自己の精子で子を懐胎させた者の親子関係
(最二判令6・6・21) ……渡邉 泰彦
◆記 事◆

海外判例研究─第20回─

・憲法

 出生地主義に制限をかけた大統領命令に対して下級審が全国的差止を命令することはできないとされた事例
 ……大林 啓吾

 外国企業が運営するアプリ(TikTok)が国家安全保障上の脅威になっているとして売却等を要求することは表現の自由を侵害するか
 ……大林 啓吾

・民法

 ライブ配信関連契約における高額な違約金をめぐる事件
 ……胡 光輝

・消費者法

 EUにおける比較広告の該当性が問題となった事例
 ……カライスコス アントニオス

・著作権法
 著作権法は経済的権利を創設するものであるから権利者が財産を保有する能力を有することを前提としているところ、人工知能(AI)は財産を所有できる実体ではなく著作者になることはできないとされた事例
 ……ダン ローゼン・西口 元

・刑法
 重症患者への過剰な薬剤投与において殺人罪の証拠評価が争われた事案
 ……神馬 幸一

 客体の錯誤と中止犯の成否
 ……仲道 祐樹

 2000年テロリズム法13条と厳格責任およびその欧州人権条約適合性
 ……仲道 祐樹


◆判決録細目◆

民 事

〇金銭消費貸借契約及び連帯保証契約が通謀虚偽表示として無効とされた事例
(福岡高宮崎支判令6・1・19〈参考原審:宮崎地都城支判令5・3・29〉)

▽美容師が使用者との間で締結した退職後の競業避止義務に関する合意に違反して、退職後に近隣の店舗で美容師として勤務した事案において、使用者の損害賠償請求を一部認容した事例
(東京地判令7・3・26)

▽人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が同条項の適用対象となる事故による損害について人身傷害保険金額を超える金員を支払った場合において、同保険金額を超える分が自賠責保険金の立替払の性質を有するとされた事例
(東京地判令6・9・5)

▽父の死亡の日から23年以上が経過した後に提起された認知の訴えについて、民法787条ただし書の出訴期間の起算日は戸籍上の父による認知を無効とする判決が確定した日と解することが相当であるとして認知の訴えの提起は適法であるとした事例
(千葉家館山支判令5・7・7)


知的財産権

▽被告が製造する医薬品は特許法104条に基づき原告が保有する特許に係る発明の製造方法により生産したものと推定することはできないとされた事例
(東京地判令6・9・26)


労 働

〇1 イタリア共和国外務・国際協力省が本邦において開設する会館の職員として試用期間付きで採用され本採用を拒否された原告がなした地位確認・解雇後の賃金請求について、外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律9条2項3号の主権免除規定を適用して却下した事例
 2 イタリア共和国外務・国際協力省が本邦において開設する会館の職員として勤務していた原告の時間外労働に係る未払割増賃金請求について、外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律9条1項により裁判権の免除を認めず、最密接関係地法上の強行規定である労働基準法37条を適用して請求を一部認容した事例
(大阪高判令6・1・26〈参考原審:大阪地判令5・3・22〉)


刑 事

◎1 道路交通法(令和4年法律第32号による改正前のもの)72条1項前段の義務を尽くしたといえる場合
 2 道路交通法(令和4年法律第32号による改正前のもの)72条1項前段の義務に違反したとされた事例
(最二判令7・2・7)
◆記 事◆

書籍紹介 宮本康昭『志と道程──満洲・チチハルに生まれ、司法の不義に立ち向かう』……下村 幸雄


◆判 決 録◆

民 事

◎検察官が被疑者として取り調べた者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体が、民事訴訟法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとして文書提出命令の申立てがされた場合に、刑事訴訟法47条に基づきその提出を拒否した上記記録媒体の所持者である国の判断が、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとされた事例
(最二決令6・10・16)

〇別荘地の分譲を受ける際に締結した、分譲地所有者を委任者、管理者を受任者とする分譲地の管理等を目的とする管理契約について、受任者の利益のためにも締結されたものと認められるとして、分譲地所有者が行った解除の効力を否定した事例
(東京高判令7・7・1〈参考原審:静岡地沼津支判令7・1・9本誌2622・76〉)

▽クラウドソーシングサービスにより業務を受託した原告が、同サービスを運営する被告に対し、委託者から代理受領した業務委託料の支払を請求したところ、履行された内容を巡る委託者と原告との認識の相違を理由として、利用規約に基づき請求が棄却された事例
(東京地判令6・10・3)

▽1 外国判決の言渡し当時、被告が刑務所に収監されていたところ、被告訴訟代理人弁護士が辞任の申出をし、その後辞任申立てが却下された場合において、当該外国判決の訴訟手続につき日本における公序良俗に反しないとされた事例
2 アメリカ合衆国テキサス州南部地区連邦地方裁判所における損害賠償金の支払を命ずる判決について、相互の保証があるとして執行判決が認められた事例
(東京地判令6・7・10)

▽アメリカ合衆国カリフォルニア州の裁判所が言い渡した判決(懈怠判決)について、原告が執行判決を求める部分につき、執行判決が認められた事例
(東京地判令6・7・17)

▽弁護人が勾留通知に先立って勾留の裁判がされたことを知っていたとしても、勾留の裁判後直ちに弁護人への勾留通知を行わなかったことが国家賠償法上違法であるとされた事例
(京都地判令6・10・24)

▽1 日本手話で授業を受ける権利は具体的権利として保障されておらず、北海道教育委員会及び北海道札幌聾学校が日本手話でひととおりの授業を提供しないことは憲法26条、14条に反しないとされた事例
 2 北海道教育委員会及び北海道札幌聾学校による担任教諭の配置等は入学前の説明に反せず不法行為とならないとされた事例
(札幌地判令6・5・24)


労 働

▽事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることについて、合理的理由が認められないとして、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の趣旨に照らし、間接差別に該当すると認めた事例
(東京地判令6・5・13)


◆最新判例批評◆

15 相続回復請求権の消滅時効完成前における表見相続人の時効取得の可否
(最三判令6・3・19)……小川 惠

16 区分所有建物の共用部分の瑕疵を原因とする漏水事故に関して、区分所有者が他の区分所有者と管理組合に対して損害賠償を求めた事例
(東京高判令5・9・27)……吉原 知志
◆記 事◆

持続化給付金詐欺の量刑……安西 二郎


◆判決録細目◆

行 政

〇受刑者は、選挙に参加する資格・適性がないと疑うに足りるやむを得ない事由があるというべきであり、「自ら選挙の公正を害する行為をした者等」の「等」に含まれると解することができるから、公職選挙法11条1項2号の規定は憲法に違反するものとはいえないとした事例
(東京高判令6・3・13〈参考原審:東京地判令5・7・20本誌2601・64〉)

▽秘密会の議事の記録は公表しないなどと定める地方公共団体の議会の会議規則に基づきなされた地方公共団体の議会の委員会で開催された秘密会の議事録の全部非公開決定につき、会議規則は当該地方公共団体の情報公開条例の「法令等の定めるとこにより、公開することができないとされている情報」にいう「法令等」に当たらないなどとして、全部非公開決定を取り消した事例
(横浜地判令6・3・27)

▽1 大阪府議会がした「旧統一教会等の悪質な活動とは一線を画する決議」と題する決議は行政事件訴訟法3条2項にいう処分に当たらないとして、上記決議の取消しの訴えが却下された事例
 2 大阪府議会がした「旧統一教会等の悪質な活動とは一線を画する決議」と題する決議は原告の請願権等を侵害するものであるとは認められないなどとし、また、上記決議による名誉毀損の違法性について上記議会が原告の社会的評価を低下させたりするためにあえて上記決議をしたなど、上記決議の内容が上記議会の議事機関としての権限を逸脱又は濫用するものであるとは評価することができず、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないなどとして、同項に基づく損害賠償請求が棄却された事例
(大阪地判令6・2・28)


民 事

〇民事再生手続開始後の脱退により生じた信用組合に対する出資金返戻請求権を受働債権とする相殺は民事再生法92条1項により許容されないとして、被控訴人の出資金返戻請求を認容した原判決が控訴審でも維持された事例
(大阪高判令5・12・19〈参考原審:大阪地判令4・11・24〉)

〇生命共済事業約款の暴力団排除条項に基づく生命共済契約の解除が有効とされた事例
(広島高判令6・10・4〈参考原審:広島地尾道支判令6・3・26〉)

▽1 被告が内容を了知せずに確定した外国判決に係る訴訟手続が民事訴訟法118条3号の公序良俗に反しないとされた事例
 2 外国判決基準時後に完成した消滅時効を執行判決訴訟で抗弁として主張でき、その場合には当該外国法の消滅時効規定が適用されるとした事例
(千葉地判令6・7・19)

▽総合飼料メーカーである原告が、家畜の肥育等を事業目的とする株式会社である被告が民事再生手続開始決定を受ける前に、被告との間の継続的商品売買基本契約に基づいて被告に生豚の肥育のための飼料を供給した行為が、民法307条1項の「財産の保存」に当たり、被告に対する飼料等の売掛債権について一般先取特権を有すると主張して、再生手続外で被告に飼料等の売買代金の支払を求めた訴えが却下された事例
(神戸地判令4・11・4)


刑 事

〇地方公共団体から自己名義の預金口座に住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金4630万円の誤振込入金を受けた被告人が、前記誤振込入金が自身に無関係なものであることを知りながらこれを利用して、複数回にわたり前記口座からオンラインカジノサービスの決裁代行業者名義の預金口座に送金等を行った事案において、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めた原判決につき、法令適用の誤りないし事実誤認があるなどとする主張を排斥して、被告人の控訴を棄却した事例
(広島高判令6・6・11〈参考原審:山口地判令5・2・28〉)
◆判決録細目◆

民 事

〇妻が別居中の夫に対し婚姻費用分担金の支払を求めたところ、夫が抑うつ症状との診断を受け勤務先を退職したとしてその支払を拒絶した事案において、夫の就労が不可能な程度かは疑いが残るとして、退職後も退職前収入の約4割の収入があるものと扱い、基礎収入額をその43%と認めた上で、夫に婚姻費用分担金の支払を命じた原審判が維持された事例
(福岡高決令5・5・8〈参考原審:福岡家審令5・2・28〉)

▽建物所有を目的とする土地賃貸借契約において、賃貸人から賃借人に対して未払賃料(地代)の支払催告をした事実は認められず、無催告解除が許されるべき特段の事情も認められないとして、賃貸人による解除の意思表示が無効であるとされた事例
(東京地判令6・11・28)

▽1 粟粒結核を疑う両側肺野のびまん性の微細粒状ないし小粒状影がX線画像に写っていた患者について、医師に結核の再燃の可能性を念頭において注意深く上記画像を読影する注意義務違反があり、患者の死亡との間に高度の蓋然性があるとした事例
 2 原告が相続放棄の意思表示をした時点において、上記1の注意義務違反による損害賠償請求権があると認識していたとはいえず、その意思表示を無効とした事例
(東京地判令6・3・28)

▽動産の所有者に差押えがあった場合の譲受人からの意思表示を停止条件として動産所有権を譲渡する旨の合意に基づき行われた動産の譲渡について、動産の所有者の破産管財人による破産法160条3項に基づく否認権行使を認めた事例
(東京地判令6・8・29)

▽地方公共団体に対して土地を寄付した被相続人が寄付当時意思能力を有していなかった場合において、その相続人の1人が当該地方公共団体に対して当該土地についての所有権移転登記の抹消登記手続を求めることが権利の濫用に当たるとされた事例
(札幌地判令6・11・1)


労 働

▽1 労働基準法施行規則32条1項にいう「長距離にわたり継続して乗務するもの」及び同条2項の「その他の時間」の意義
 2 航空機の客室乗務員が、その具体的業務の実態に照らして、労働基準法施行規則32条1項にいう「長距離にわたり継続して乗務するもの」に該当せず、同条2項所定の時間の合計が労働基準法34条1項規定の休憩時間に相当するとはいえないとされた事例
 3 使用者が労働者に対して労働基準法34条1項に違反する勤務を命ずることについて、人格権に基づく差止めを認めた事例
(東京地判令7・4・22)


知的財産権

◎1 動画共有サービスを提供するため、米国所在のサーバからインターネットを通じてユーザが使用する我が国所在の端末にプログラムを配信することが、特許法2条3項1号にいう「電気通信回線を通じた提供」に当たるとされた事例
 2 動画共有サービスを提供するため、米国所在のサーバからインターネットを通じてユーザが使用する我が国所在の端末にプログラムを配信することが、特許法101条1号にいう「譲渡等」に当たるとされた事例
(最二判令7・3・3)

◎動画共有サービスを提供するため、米国内でウェブサーバ及びコメント配信用サーバ等の設置管理をしている米国法人が、上記ウェブサーバからインターネットを通じてユーザが使用する我が国所在の端末にファイルを配信することにより、上記端末と上記コメント配信用サーバ等とを含むシステムを構築することが、特許法2条3項1号にいう「生産」に当たるとされた事例
(最二判令7・3・3)


刑 事

▽触法(強制わいせつ、暴行、傷害)、ぐ犯、器物損壊保護事件及び強制的措置許可申請事件において、前者について少年を児童自立支援施設に送致するとともに、後者について事件を児童相談所長に送致し、1年6月の間に通算180日を限度として強制的措置を許可した事例
(千葉家決令6・3・5)


◆最高裁判例要旨(2025(令7)年3・4・5月分)
◆判例特報◆

〇1 幼児に対する頭部受傷による傷害致死事案につき、具体的な外力の立証がないにもかかわらず、医師証人の見解に基づき頭蓋内損傷等の存在から当然に外力の存在を推認した原判決には論理の飛躍があり、論理則経験則等に反するとして無罪を言い渡した事例
 2 幼児に対する強制わいせつ致傷事案につき、医師証人の推論の科学的根拠や推論が合理的に及ぶ範囲等について十分な検討を行わなかった原判決が論理則経験則等に反するとして無罪を言い渡した事例
 3 幼児に対する傷害事案につき、骨折の存在等によって被告人の暴行を推認するには足らない一方、骨折した可能性のある場所の物品、幼児の注意力や動きの程度、医学的知見等から事故によって骨折した可能性が否定できないなどとして無罪の原判決を維持した事例
──今西事件控訴審無罪判決
(大阪高判令6・11・28)

【参考論文】

今西事件控訴審判決について……石塚 章夫

専門家供述の評価方法——今西事件第1審判決と控訴審判決の検討——……高田 昭正


◆判決録細目◆

民 事

〇1 信託契約において信託金融資産から受益者の生活費等を交付すべきことが定められているが、生活費等の具体的金額やその算定方法が明らかにされておらず、生活費等の交付時期も明示されていないとして、受益者の受託者に対する信託契約に基づく生活費等の支払請求が棄却された事例
 2 信託法38条1項及び6項に基づく帳簿等の閲覧謄写請求につき預金通帳のみの謄写請求が認容された事例
(東京高判令6・2・8〈参考原審:さいたま地越谷支判令4・3・23〉)

▽回復期リハビリテーション病棟に入院中であった高次脳機能障害を有する患者が病室2階の窓から転落し死亡した事故について、当該病室の窓及びこれに隣接するベランダに設置又は保存の瑕疵があったとして土地工作物責任を肯定した事例
(東京地判令6・9・6)

▽東日本大震災の被災者である被告に対して応急仮設住宅として国家公務員宿舎を提供していた原告が、被告が使用貸借契約の期間満了後も当該建物を明け渡さないことは債務不履行であるとして損害賠償を請求した事案において、原告の請求が認容された事例
(東京地判令6・10・7)

▽外国の方式により婚姻した日本人夫婦が、夫婦が称する氏を定めずに戸籍法41条に基づく婚姻の届出をした場合において、同届出を不受理とした処分が不当とはいえないとされた事例
(東京家審令7・1・10)

▽内縁の成立及び効力の準拠法につき法の適用に関する通則法33条を適用して各当事者の本国法と解すべきとされた事例
(東京家審令7・1・31)

▽1 死亡した子に対する敬愛追慕の情がSNSへ投稿された記事により侵害されたとして提起された不法行為に基づく損害賠償請求が、証拠として提出された当該投稿に係る画像が捏造されたものである可能性を否定できないなどとして棄却された事例
 2 上記1の場合において、当該請求に係る訴えの提起の時点において通常人であれば当該画像が捏造されたものであることを容易に知り得たとまでは認められないなどとして、当該訴えの提起等が違法な行為とはならないとされた事例
(大阪地判令6・8・30)


刑 事

〇特定少年が実母の腹部等を包丁で突き刺すなどして同人を殺害しようとしたが傷害を負わせたにとどまったという殺人未遂保護事件において、少年が心神耗弱状態であったと認め、収容期間を3年間として第3種少年院に送致した原決定について、観護措置中に精神鑑定を実施するなどして少年の非行時の精神状態を慎重に判断する必要があったというべきであり、原審には審理不尽の法令違反があるとして、原決定を取り消し、原審に差し戻した事例
(福岡高宮崎支決令6・11・5)


◆最高裁判例要旨(2025(令7)年1・2月分)
◆記 事◆

最高裁民事破棄判決等の実情
―令和6年度―……宮端 謙一 一藤 哲志

日弁連主催シンポジウム報告
デジタル時代における民事訴訟の事実認定
―令和4年改正民事訴訟法施行を前に―


◆判決録細目◆

民 事

〇土留改修工事の不備により地盤沈下が生じたとする不法行為に基づく損害賠償請求において、民法724条2号の消滅時効の起算点を当該工事の完了検査時点ではなく地盤沈下が発生した時点と判断した事例
(東京高判令7・2・5〈参考原審:甲府地判令6・2・20〉)

▽原告が納付した固定資産税及び都市計画税に関し、固定資産の登録価格を決定する際に東京都の担当職員が家屋の建築当初の再建築費評点数の算出を誤ったことについて、職務上の注意義務違反が認められ国家賠償法上違法であるとして、原告の請求を認容した事例
(東京地判令6・10・28)

▽債務者が就労しつつ生活保護費を受給しているところ、養育費・婚姻費用請求権者である債権者から給与債権に対する差押えを受けたという事実関係の下で、債務者による差押えの全部取消しの申立て(民事執行法153条1項)が認められず、差押禁止債権の範囲変更の限度で認容された事例
(大阪地決令6・8・23)

▽建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者が死亡した場合に、同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできないとして、競売開始決定が取り消された事例
(大阪地決令6・9・5)


労 働

〇1 出来高払制賃金として支給されていた手当について労働基準法施行規則19条1項6号に定める出来高払制賃金に該当しないとした事例
 2 作業服の着替え時間を労働時間と認めた事例
 3 1年単位の変形労働時間制について適用の要件とされる労働日及び労働日ごとの労働時間の特定がなされていないとして無効とした事例
(東京高判令6・5・15〈参考原審:東京地立川支判令5・8・9〉)


◆最高裁判例要旨(2024(令6)年11・12月分)


◆最新判例批評◆

13 社団たる医療法人の社員が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律37条2項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することの可否(消極)
(最三決令6・3・27)…山本 真知子
◆記 事◆

高齢者の生活に関わる法律制度の概要と法律的諸問題……鬼頭 季郎


◆判決録細目◆

行 政

◎地方団体が特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えと裁判所法3条1項にいう法律上の争訟
(最一判令7・2・27)

〇1 現在日本国籍を有する者が、外国籍取得申請前の段階で、自己の志望によって外国籍を取得しても日本国籍を失わない地位にあることの確認の利益が認められた事例
 2 自己の志望によって外国籍を取得したときは日本国籍を失う旨規定する国籍法11条1項の規定は、憲法10条、13条、14条1項及び22条2項に違反しないとされた事例
(東京高判令5・2・21〈参考原審:東京地判令3・1・21〉)


民 事

▽企業間取引に関する契約書の記載をめぐり、契約書とは異なる内容の合意があったとは認められず、また、契約書における契約当事者の意思表示にはその要素に錯誤があったと認められるが、その一方で重過失があったと認められた事例
(東京地判令6・5・27)

▽1 特別支援学校の教職員に、給食時間時、生徒の動静を見守り、窒息等を防止すべき義務違反があったとした事例
 2 不法(違法)行為により死亡した者の相続人が被害者の得べかりし国民年金法30条の4所定の障害基礎年金を逸失利益として請求することはできないとした事例
(大分地判令6・3・1)
◆記 事◆

続・行政裁量論再訪(『争訟制度と行政法学』余滴)
——裁量基準の基準提示機能… 高橋 滋


◆判決録細目◆

行 政

◎飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分を受けて地方公共団体の職員を退職した者に対してされた大津市職員退職手当支給条例(昭和37年大津市条例第7号。令和1年大津市条例第25号による改正前のもの)11条1項1号の規定による一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判令6・6・27)


民 事

◯元外国籍であることを理由にゴルフクラブへの入会を拒否したことが憲法14条1項、市民的及び政治的権利に関する国際規約26条、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約1条1項の趣旨に反し、不法行為を構成するとして慰謝料等が認められた事例
(名古屋高判令5・10・27〈参考原審:津地四日市支判令5・4・19〉)

▽インターネットショップの利用規約における転売禁止を定める条項に違反した場合の違約金支払条項が、民法548条の2第2項に該当し、売買契約の合意内容とはならず無効であるとして、転売した顧客への違約金請求を棄却した事例
(東京地判令5・8・24)

▽1 物流サービス業務の受託者が保管商品の出荷指示を拒否した行為につき債務不履行責任等を負うとされた事例
 2 物流業務委託基本契約の契約期間中に委託者が新たな個別契約の締結を控えた場合に同基本契約に基づく違約金等が発生しないとされた事例
(東京地判令6・4・22)


労 働

◎大学の講師の職が大学の教員等の任期に関する法律4条1項1号所定の教育研究組織の職に当たるとされた事例
(最一判令6・10・31)

〇外国人女性が日本の飲食店での就労を勧誘され来日したところ、売春行為に従事させられ性的自由又は性的自己決定権を侵害されたとして、勧誘者及び飲食店経営者に対する共同不法行為に基づく損害賠償請求が認められた事例
(東京高判令6・4・11〈参考原審:前橋地判令5・2・10〉)

〇生命保険会社が営業職員の賃金から業務上の経費を控除したことにつき、全体として会社と営業職員との間の負担合意による控除を適法と認めたものの、一部について合意の効力を否定して、経費控除に相当する額につき未払賃金請求を認めた事例
(大阪高判令6・5・16〈参考原審:京都地判令5・1・26〉)


◆最新判例批評◆

12 人傷保険金の損賠請求権の額からの全額控除はできないとされた事例
(最一判令5・10・16)…肥塚 肇雄
◆総索引◆

判 例 時 報 2501号~2600号

判 例 評 論 755号~787号


 第1 判例の部

 第2 判例評論および記事の部

 第3 裁判年月日・著名事件索引
◆判決録細目◆

民 事

▽1 海上運送契約の当事者の確定について判断した事例
 2 コンテナの海上運送契約において、海上運送人の運送約款の効力が海上運送契約の当事者である荷送人のみならず、荷送人の代理人にも及ぶとされた事例
(大阪地判令6・8・1)

▽婚姻関係の破綻後の不貞行為につき、当該不貞行為を行った者が婚姻関係の破綻をもたらせた場合、同人は破綻後の不貞行為についても不法行為責任を負うとされた事例
(東京地判令7・1・30)


労 働

◯思想信条を理由に昇級昇格差別を受けたとしてなされた同期同学歴従業員との間に生じた賃金・退職金差額相当の損害賠償とその余の差別を理由とする慰謝料請求が、時効消滅していないとされる範囲で認められた事例
(東京高判令7・3・25〈参考原審:水戸地判令6・3・14〉)


知的財産権

▽共同著作者性及び職務著作性の法律関係には、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約5条2項に基づき、日本で保護される著作権については日本法が、米国で保護される著作権については米国法が、それぞれ適用されるとされた事例
(東京地判令7・1・30)
◆記 事◆

医療事故判例の理論的整理…平沼 直人


◆判決録細目◆

民 事

◎文化功労者年金法に基づく年金の支給を受ける権利に対する強制執行の可否
(最三決令6・10・23)

◯再転相続人(兄弟の配偶者)として相続放棄の申述が受理された後、再転相続人(おいの母)としてした相続放棄の申述につき、申述を却下すべきことが明白であるとは認められないとして、これを受理した事案
(東京高決令6・7・18〈参考原審:東京家立川支審令5・8・8〉)

〇先天性の聴覚障害を有する児童が交通事故死した事案で、聴覚の状態像、聴覚障害者をめぐる社会情勢や職場環境の変化を踏まえ、全労働者平均賃金を減額するべき程度に労働能力に制限があるとはいえないとして、これを減額せずに逸失利益を認定した事例
(大阪高判令7・1・20〈参考原審:大阪地判令5・2・27本誌2572・71〉)

〇1 昭和48年に建築されたマンションにおける区分所有者全員による管理者選任合意(規約)が認められた事例
 2 建物の区分所有等に関する法律25条2項に基づくマンション管理者解任請求が認容された事例
(福岡高判令6・1・18〈参考原審:福岡地小倉支判令4・12・12〉)

▽1 公益社団法人の会員に対する懲戒処分等の違法を理由とする損害賠償請求に係る訴えが司法審査の対象になるとした上で、上記懲戒処分等による不法行為の成立を否定した事例
 2 上記会員の地位確認請求に係る訴えが「法律上の争訟」に当たらないと判断した事例
(東京地判令6・10・18) 

▽親権者指定協議無効確認の訴えについて、人事訴訟法2条柱書の「その他の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴え」に当たるとして、人事訴訟として取り扱った上で、原告の請求を認容した事例
(東京家判令4・10・20)

▽ブログに掲載された原告の社会的評価を低下させる記事について、掲載の時点では公共の利害に関する事項に当たるものであったが、その後11年以上が経過した口頭弁論終結日の時点においては公共の利害に関する事項に係るものとはいえないとして、削除請求が認容された事例
(名古屋地判令6・8・8)

▽建物の区分所有等に関する法律3条所定の団体が管理する文書について、その構成員は、同法及び規約の定めの限度で閲覧をさせるよう求めることができるにとどまるとされた事例
(名古屋地判令6・10・24)


刑 事

▽児童自立支援施設に送致されるとともに1年半の間に通算30日を限度として強制的措置をとることができる旨の決定を受けた少年につき、その強制的措置をとり得る大枠の期間内に再度の強制的措置許可申請がなされた事件で、通算40日を限度として許可された事例
(東京家決令6・9・24)


◆最新判例批評◆

11 性同一性障害特例法3条1項4号の生殖不能要件と憲法13条
(最大決令5・10・25)…渡邉 泰彦


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