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◆判決録細目◆

行 政

◎特定商品等の預託等取引契約に関する法律(平成21年法律第49号による改正前のもの)違反及び不当景品類及び不当表示防止法(平成26年法律第71号による改正前のもの)違反に係る調査の結果に関する情報が行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成26年法律第67号による改正前のもの)5条6号イ所定の不開示情報に該当しないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判令4・5・17)

◎1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義
 2 組織再編成に係る一連の取引の一環として行われた金銭の借入れが法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらないとされた事例
(最一判令4・4・21)

▽バハイ教の教義に基づき活動する宗教法人が本部事務所として使用している建物のうち管理人が起居している管理人室が、地方税法348条2項3号の「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物」に該当するとされた事例
(東京地判令3・9・21)


民 事

〇遺産分割の審判を本案とする審判前の保全処分における被保全権利は、既存の権利ではなく、本案の終局審判で形成される具体的権利であると解され、同保全処分の発令には本案の終局審判で当該係争物の給付が命ぜられる見込みが一応あるといえることの疎明を要するとした事例
(東京高決令3・4・15)

〇定期賃貸借契約において、賃借人に約定の契約解除事由があり、それにより賃貸人が契約解除した場合において、賃貸人の約定の違約金条項に基づく違約金の請求が信義則違反ないし権利の濫用に当たるとして、その一部を制限した事例
(高松高判令3・3・17〈参考原審:高松地判平31・3・28〉)

▽指定暴力団による暴力的不法行為が、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律31条の2の「威力利用資金獲得行為」に該当するなどとして、同条に基づく指定暴力団の代表者等の損害賠償責任を認めた事例
(福岡地判令4・1・31)


商 事

〇1 ベトナムに子会社を設立する作業の一環として同子会社用の機械設備の購入を行った代表取締役につき、大口受注先から技術課題を指摘され、技術レベルが改善されなければ製品の発注を大幅に減少させることの予告を受けるとともに、ベトナム進出について消極的意見を示されるなどの事情の下では、財務上及び技術上の課題を踏まえて取締役会を開催し、ベトナム進出に関する具体的な準備作業を一時中止すべき善管注意義務があるのに、それを怠った違反があるとした事例
 2 代表取締役による自らの役員報酬の増額について、会社に役員報酬を増額するような業績の向上や経営状況の改善があったとは認められないこと、適切なガバナンスが効きにくい状況を作出した上でこれを利用して自らの報酬額を増額したこと、その増額の割合も他の取締役が3~4パーセントであるのに対し、25パーセントであることなどの事情の下では、取締役としての善管注意義務に違反するとした事例
(東京高判令3・9・28〈参考原審:長野地上田支判令2・3・30〉)


刑 事

◎生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患した幼年の被害者の治療をその両親から依頼された者が、両親に指示してインスリンの投与をさせず、被害者が死亡した場合について、母親を道具として利用するとともに不保護の故意のある父親と共謀した殺人罪が成立するとされた事例
(最二決令2・8・24)

▽少年が、共謀の上、被害者に対し、暴行を加え、現金を強取して傷害を負わせるなどした強盗致傷、強盗及びぐ犯保護事件において、ぐ犯事実は強盗致傷及び強盗の非行に吸収されるとした上で、試験観察により少年の問題性の根深さやその矯正の難しさが浮き彫りになったこと等を指摘し、少年を第1種少年院送致とした事例
(東京家決令4・1・13)


判例評論

42 家賃債務保証業者に対する消費者契約法に基づく差止請求の可否
(大阪高判令3・3・5)……山本弘明

43 弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条に違反する訴訟行為につき、相手方である当事者がその行為の排除を求めることは認められないとした事例
(最二決令3・4・14)……石田京子

44 債務者の受給年金等の振込先口座の預金債権を差し押さえ、これを取り立てた債権者が、その取り立てた金額の不当利得返還義務を負うことを認めた事例
(神戸地尼崎支判令3・8・2)……吉田純平

45 民法上の配偶者が中小企業退職金共済法14条1項1号及び企業年金等規約にいう配偶者に当たらない場合
(最一判令3・3・25)……丸谷浩介
◆記 事◆

刑事責任能力の本質とその具体的判断……安田拓人


◆判決録細目◆

行 政

▽市の所有・賃貸する土地について、賃借人に対する地方自治法238条の5第4項に基づく賃貸借契約の一部解除が認められた事例
(大阪地判令3・10・29)


民 事

〇会社の取締役責任調査委員会の委員を担当した弁護士らが、同委員会の調査結果に基づき、取締役であった者に対して提起した損害賠償請求事件において、当該弁護士らが会社の訴訟代理人として訴訟行為を行うことが、弁護士法25条2号、4号に違反するとして、その類推適用により当該弁護士らの訴訟行為を排除した事例
(大阪高決令3・12・22〈参考原審:大阪地決令3・3・26〉)

▽東日本高速道路株式会社の管理する高速道路の損傷又は汚損について事実的因果関係上の原因のある高速道路利用者は、同社の定める供用約款の規定に基づいて、同社に対し原因者負担金の支払義務を負うとして、損傷等の復旧に要する費用額の支払を命じた事例
(東京地判令3・12・3)

▽事業者向けファクタリング業等を目的とする会社からの債権の売却代金の交付が「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付」に該当しないとして、不当利得返還請求を棄却した事例
(東京地判令3・12・15)

▽ある事業者が消費者との間で締結していた消火器のリース契約の契約条項の一部は消費者契約法8条ないし10条により無効であり、特定商取引に関する法律10条1項3号及び4号に違反し、同事業者の勧誘行為は同法58条の18第1項1号ハに該当し、同事業者の表示は不当景品類及び不当表示防止法30条1項1号及び2号に該当するとして、前記契約条項の一部の差止め及び同条項が記載された契約書用紙の破棄、前記勧誘行為の差止め及び同勧誘行為が記載された文書等の破棄並びに前記表示の差止めが認められた事例
(仙台地判令3・3・30)


知的財産権

〇1 意匠の類否判断にあたっては対比する意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様を全体的に観察するとされた事例
 2 データ記憶機のケースは、データ記憶機と同一又は類似する物品と認めることはできないとされた事例
 3 意匠法39条2項の適用における推定覆滅に係る部分については同条3項が適用されるとされた事例
(大阪高判令3・2・18〈参考原審:大阪地判令2・5・28〉)


商 事

▽金融商品取引業者である証券会社に原告らが預託した顧客資産の分別管理義務違反は認められないとして、原告らの被告(投資者保護基金)に対する補償金請求を棄却した事例
(東京地判令3・9・29)


刑 事

▽「人又は車の通行を妨害する目的」(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条4号)とは、人又は車の安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか、危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに、人又は車の自由かつ安全な通行を妨害する可能性があることを認識しながら、あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当であるとされた事例
(金沢地判令3・12・7)
◆記 事◆

法律家による刑事責任能力判断のための機序読解方法論
 ──8ステップ構造モデル理論を超えて……岡田幸之

コラム 裁判員裁判の解剖──番外編
 裁判員は常識を述べているか……大宮徳次郎


◆判決録細目◆

行 政

◎不当景品類及び不当表示防止法7条2項と憲法21条1項、22条1項
(最三判令4・3・8)


民 事

◎被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が、被害者との間でいわゆる人傷一括払合意をし、前記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けた場合において、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から前記損害賠償額の支払金相当額を全額控除することはできないとされた事例
(最一判令4・3・24)

〇相手方(妻)が抗告人(夫)に対し、婚姻費用の分担金の支払を求めた事案において、婚姻費用分担額の算定に当たっては生活保護費を収入と評価することはできないとし、相手方の病歴や障害等級、就労実績、医師の見解、現在の状況等に鑑みて、現時点においては、相手方に潜在的稼働能力があるとは認められないとして、抗告人に婚姻費用の分担金の支払を命じることは相当であるとした事例
(東京高決令4・2・4〈参考原審:さいたま地越谷支審令3・10・21〉)

▽盗取されたキャッシュカードを用いて行われた現金自動支払機による預金の払戻しが預金者の「重大な過失」(偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律5条3項1号イ)により行われたものであるとして、当該預金者から金融機関に対する同条に基づく補填金支払請求が棄却された事例
(東京地判令3・2・19)

▽原告が、学校法人の理事長であった被告らにおいて、同学校法人には、当時、小学校の新築工事の請負契約の報酬を支払う能力がなく、同報酬を支払う意思もないのに、これがあるかのように装い、原告を欺罔して工事の請負契約を締結させたことが詐欺に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案において、被告らは資金の調達方法を偽ったにとどまり、同学校法人の前記請負契約締結当時の資力に照らせば、請負報酬を支払う意思も能力もなかったとはいえず、被告らにつき欺罔行為も詐欺の故意も認められない等として原告の請求が棄却された事例
(大阪地判令3・8・24)

▽1 同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定と憲法13条、14条1項及び24条
 2 同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定を改廃しないことが国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められないとして、立法不作為を理由とする国家賠償請求が棄却された事例
(大阪地判令4・6・20)


刑 事

〇店舗内において女性のスカートの中を撮影することを企図して、小型カメラでその臀部等を約5秒間動画で撮影し、さらに、スカートの裾と同じ高さでその下半身に向けて同カメラを構えるなどした行為が東京都迷惑防止条例違反に当たるとされた事例
(東京高判令4・1・12〈参考原審:東京地立川支判令3・1・15〉)

▽統合失調症に罹患していた被告人が、実兄である被害者に対し、その胸部等を包丁で多数回突き刺すなどして死亡させたという殺人の事案において、責任能力については心神耗弱であることに争いがなかったが、詳細に説示を加えた上で心神耗弱の認定をした事例
(岡山地判令3・11・29)

▽コンビニエンスストアの男性店員である被告人が客として同店を訪れた男子小学生2名の臀部を軽く叩いた行為が兵庫県迷惑防止条例にいう「卑わいな言動」に該当しないとして無罪を言い渡した事例
(神戸地判令3・11・30)
◆記 事◆

裁判員裁判の解剖──制度と運用に関する批判的検証

 ⑴ 量刑理論と量刑評議の在り方……福崎伸一郎

 ⑵ 裁判員裁判における刺激証拠に関する運用……今井輝幸

 ⑶ 共同正犯のメルクマールについて……小林憲太郎

 ⑷ 裁判員裁判時代の公判──訴訟指揮上の諸懸念……清野憲一


◆判例特報◆

◎1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことと憲法15条1項、79条2項、3項
 2 国が在外国民に対して次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認を求める訴えの適否
 3 国会において在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとされた事例
――在外邦人国民審査権行使制限憲法適合性訴訟最高裁大法廷判決
(最大判令4・5・25)


参考論文

在外邦人最高裁裁判官国民審査訴訟最高裁判決私的傍論的補足見解……君塚正臣


◆判決録細目◆

民 事

〇被相続人を保険契約者兼被保険者とし、共同相続人の1人を死亡保険金の受取人とする生命保険契約に基づく死亡保険金請求権について、民法903条の類推適用による特別受益に準じた持戻しを否定した事例
(広島高決令4・2・25〈参考原審:広島家審令3・12・17〉)

〇1 県議会の本会議の撮影を許可制とする規則の地方自治法115条1項、憲法21条1項適合性
 2 議会記者クラブに所属しないドキュメンタリー映画の製作会社に対する本会議の撮影不許可処分に、憲法14条1項・21条1項違反、裁量権の逸脱・濫用の違法がないとされた事例
(福岡高那覇支判令3・1・21〈参考原審:那覇地判令2・8・5本誌2485号80頁〉)

▽高校在学中の生徒による自殺は、他の生徒のいじめが主たる原因となって生じたものであるとして、独立行政法人日本スポーツ振興センター法に基づく災害共済給付金請求を認容するとともに、口頭弁論終結時の翌日から遅延損害金請求を認容した事例
(福岡地判令3・11・25)


労 働

〇期間付きで雇用された公立図書館の館長が労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)に該当するとされた事例
(福岡高判令3・12・9〈参考原審:福岡地田川支判令3・3・17〉)


刑 事

▽拘置所長がした死刑確定者の信書発受の不許可処分が違法とされた事例
(名古屋地判令3・9・21)

▽児童自立支援施設入所中の少年が、保護者の正当な監督に服さず、施設職員に傷害を負わせるなどし、将来においても罪を犯すおそれがあるというぐ犯保護事件及び強制的措置許可申請事件において、前者について少年を児童自立支援施設に送致するとともに、後者について事件を児童相談所長に送致し、強制的措置を許可した事例
(千葉家決令4・3・29)


判例評論

38 特別区議会議員選挙に係る当選人甲の当選無効の決定の取消しを求める請求及び同決定に対する審査の申立てを棄却するとの裁決の取消しを求める請求と当選人乙の当選無効を求める請求とでは訴えで主張する利益が共通であるとはいえないとされた事例
(最三決令3・4・27)……河野憲一郎

39 組立保険における損害の評価
──約款における「損害発生直前の状態に復旧するために直接要する」費用(復旧費)の解釈
(福岡高宮崎支判令2・7・8)……土岐孝宏

40 民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合に、その弁済が前記部分に係る債権に充当されたものとして前記判決についての執行判決をすることの可否
(最三判令3・5・25)……芳賀雅顯

41 株式買取請求を行い、仮払いを受けた者が、株主総会議事録閲覧請求をした場合における「債権者」該当性
(最二判令3・7・5)……松嶋隆弘
◆記 事◆

コロナ禍社会における法的諸問題(23)
 韓国・フランスの行政救済事例から……小林久起

再審における「明白性」の考え方
 ──大崎事件第4次再審請求棄却決定に接して……木谷 明

書 評
松原芳博=杉本一敏編『判例特別刑法 第4集』(日本評論社、2022)
評者……大谷 實


◆第6回判例時報賞 特別賞受賞論文◆

追完請求権を巡る実務上の諸問題についての総合的考察……渡邉 拓

身体拘束中の被疑者に対する取調べ前の権利告知制度の機能的分析……大角洋平


◆判決録細目◆

民 事

◎父母以外の第三者で事実上子を監護してきたものが前記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることの許否
(最一決令3・3・29)

◎父母以外の第三者で事実上子を監護してきたものが子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることの許否
(最一決令3・3・29)

〇病院を運営する一般財団法人のM&Aに係る仲介契約に関し、仲介に基づき株式会社との間で締結された同法人の運営権移転契約が医療法等に違反して無効であるとの主張が排斥され、債務不履行に基づく損害賠償請求等が認められないとされた事例
(大阪高判令3・1・22〈参考原審:大津地判令1・10・29〉)

〇加害者が、自動車運転中、心房細動による心原性脳梗塞を発症し意識を消失して運転制御不能状態に陥り、センターラインを越えて対向車線に逸走し、同車線を走行してきた車両に正面衝突等をした事故について、民法713条ただし書の過失は認められないとして、損害賠償義務を負わないとされた事例
(名古屋高判令4・5・27〈参考原審:名古屋地判令3・12・6〉)

▽摂食障害治療に伴って行われた 14歳の少女に対する 77日間の身体的拘束について、そのうち 17日間の拘束を違法として、損害賠償請求の一部を認容した事例
(東京地判令3・6・24)

▽白内障手術を受けた患者が、失明等の後遺障害を負ったことについて、担当医師の説明義務違反及びカルテの改ざんがあるとして、損害賠償の一部が認容された事例
(東京地判令3・4・30)


労 働

▽銀行の従業員が長時間労働により死亡したことについて、銀行の取締役が従業員の使用したPCのログ又は入退館に使用するICカードの履歴によって労働時間を把握する体制を構築していなかったことが安全配慮義務に違反しないとされた事例
(熊本地判令3・7・21)


刑 事

◎準強制わいせつ被告事件について、公訴事実の事件があったと認めるには合理的な疑いが残るとして無罪とした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し有罪とした原判決に、審理不尽の違法があるとされた事例
(最二判令4・2・18)


◆最高裁判例要旨(2022(令4)年6・7月分)
◆記 事◆

講話 民事裁判実務の要諦(12・完)
──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本 英史

★書評 芦名定道・宇野重規・岡田正則・小沢隆一・加藤陽子・松宮孝明
『学問と政治─学術会議任命拒否問題とは何か』……稲 正樹


◆判例特報◆

▽普天間飛行場を離発着する米軍の航空機等の騒音等により周辺住民が被っている法的利益の侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えており、同飛行場には日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法2条にいう設置又は管理の瑕疵があるとして、原告らの慰謝料請求の一部が認められた事例
──普天間米軍航空機騒音国賠訴訟第1審判決
(那覇地沖縄支判令4・3・10)


◆判決録◆

民 事

◎権利能力のない社団であるXが建物の共有持分権を有することの確認を求める旨を訴状に記載して提起した訴訟において、控訴審が、Xの請求につき、前記共有持分権がXの構成員全員に総有的に帰属することの確認を求める趣旨に出るものであるか否かについて釈明権を行使することなくこれを棄却したことに違法があるとされた事例
(最三判令4・4・12)

▽新型コロナウイルスのまん延が、不可抗力によって婚礼を実施できなかった場合に該当しないとの理由で、結婚式の企画運営等を業とする会社に対する婚礼費用の前受金の返還請求が棄却された事例
(東京地判令3・9・27)

▽事業者向けのファクタリング取引が実質的に貸金業法及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)にいう「金銭の貸付け」に該当すると認め、貸金業の登録を受けずにこれを業として行い、かつ出資法の上限金利を大幅に超える利率の約定でこれを行い、債権譲渡人から金員の支払を受けた債権譲受人の行為は不法行為に該当するとされた事例
(名古屋地判令3・7・16)

▽1 人事評価等の権限を有する者による内部通報者を特定しようとした行為について違法性が認められた事例
 2 会社の人事と任意団体の役職に事実上の連動が認められる任意団体において、正当な理由なく所属会員を除名処分とする旨の議題を提出し、これまでとは異なる特別な議決方法を実施した行為等について違法性が認められた事例
(福岡地判令3・10・22)


刑 事

◎1 刑法168条の2第1項にいう「その意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」に当たるか否かの判断方法
 2 ウェブサイトの閲覧者の同意を得ることなくその電子計算機を使用して仮想通貨のマイニングを行わせるプログラムコードが不正指令電磁的記録に当たらないとされた事例
(最一判令4・1・20)

〇1 殺人、現住建造物等放火等の事件の犯人性を1審判決が間接事実の推認等により認定し、その判断が控訴審においても維持された事例
 2 第1行為(なたでの加害行為)時には殺意があったが、実際の死亡結果は既に死亡していると誤信した状態で行われた第2行為(放火行為)によって生じた場合に、第1行為との因果関係を肯定して殺人罪が成立するとの判断を1審判決が示した事例
(大阪高判令3・10・4)

▽少年が、共犯者とともに友人の自殺を幇助したという自殺幇助保護事件において、犯情は検察官送致をするほどに重いとは認められず、少年の行状等も考慮すると、保護処分を相当と認めるが、安易に不適切な解決方法を選択しやすいとの問題点を自覚させ、適切な社会性を身に付けさせるためには、長期間の系統立った矯正教育が必要であるとして、少年を第1種少年院送致(2年程度の相当長期間の処遇勧告)とした事例
(千葉家決令3・12・10)
◆記 事◆

民法理論のいま──実務への架橋という課題(7)
 「事業成長担保権」構想の制度的前提……近江幸治

統治構造において司法権が果たすべき役割 第3部(7)
 憲法24条の「婚姻」の意義と同性婚……篠原永明


◆判例特報◆

◎離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務が履行遅滞となる時期
(最二判令4・1・28)


◆判決録細目◆

行 政

◎1 相続税の課税価格に算入される財産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない場合
 2 相続税の課税価格に算入される不動産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反しないとされた事例
(最三判令4・4・19)


民 事

〇不動産の取得時効完成後に当該不動産に設定され登記された根抵当権の譲渡を受けて根抵当権移転の付記登記を了した者が背信的悪意者に当たるとして、時効取得者による根抵当権設定登記の抹消登記請求が認められた事例
(大阪高判令3・5・21〈参考原審:大阪地堺支判令2・8・26〉)

▽1 他者の給付請求権に係る訴えを提起した原告について、法定訴訟担当又は任意的訴訟担当に該当しないため、当事者適格が認められないとして、訴えが却下された事例
 2 大学に対する社会的評価の低下に伴い、同大学に所属する(又はしていた)者にもたらされることがあり得る不快感や屈辱感は、それを被侵害利益として直ちに損害賠償を請求し得るほどの利益とまでは認められないとして、不法行為の成立が否定された事例
(東京地判令3・11・30)


労 働

▽1 配転命令を拒否したことを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例
 2 配転命令の有効性を判断する際に、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益の有無について、配転命令を発出した時点において使用者が認識していた事情に基づいて判断することが相当とされた事例
(大阪地判令3・11・29)


刑 事

◎原審が被告人質問を実施したが、被告人が黙秘し、他に事実の取調べは行われなかったという事案につき、第1審が無罪とした公訴事実を原審が認定して直ちに自ら有罪の判決をしても、刑事訴訟法400条ただし書に違反しないとされた事例
(最一決令3・5・12)

〇1 覚醒剤営利目的輸入の事案において、密輸組織関係者との間のやり取りを全体として評価すれば、被告人は違法薬物を復路でヨーロッパに「持ち帰る」などの仕事をさせられるのではないかという疑念を抱いていたにとどまり、往路で日本に「持ち込む」故意があったと認めるには合理的な疑いが残るなどとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例(①事件)
 2 覚醒剤営利目的輸入の事案において、覚醒剤が隠匿されていたコーヒー豆の袋は同行者にすり替えられたなどという被告人供述は排斥できないなどとして、被告人の覚醒剤輸入の故意、同行者との共謀を否定し、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例(②事件)
 3 覚醒剤営利目的輸入の事案において、日本への渡航に至るまでの依頼者とのメッセージのやり取り等を検討し、各時点における被告人両名の認識に関する原判決の判断は不合理であり、被告人両名に故意があったと認めるには合理的な疑いが残るとして、原判決を破棄し、被告人両名に無罪を言い渡した事例(③事件)
(①東京高判令3・4・26〈参考原審:東京地判令2・7・3〉、
 ②東京高判令3・6・15〈参考原審:東京地判令1・12・8〉、
 ③東京高判令3・7・13〈参考原審:千葉地判令2・9・15〉)


◆判例評論◆

34 被災者生活再建支援法に基づき被災者生活再建支援金の支給決定をした被災者生活再建支援法人が支給要件の認定に誤りがあることを理由として当該決定を取り消すことができるとされた事例
(最二判令3・6・4)……北見宏介

35 沖縄県漁業調整規則に基づく水産動植物の採捕に係る許可に関する県知事の判断と地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるもの
(最三判令3・7・6)……西上 治

36 暗号資産に関する寄託契約の成立を否定し、利用規約上の免責規定に基づきハッキング時の損失を顧客企業に負わせた事例
(東京地判令2・3・2)……久保田隆

37 1人しかいない監査役によって任期途中にされた報酬増額決定を有効とし、同増額決定に善管注意義務違反があるとはいえないとした上、正当な理由なく解任されたとして、同監査役の未払報酬請求及び損害賠償請求を一部認容した事例
(千葉地判令3・1・28)……早川咲耶
◆記 事◆

SBS/AHT仮説をめぐる日本と海外の議論状況……秋田真志

海外判例研究──第14回──
<憲法>
 ・ボストン市が希望者に対して市庁舎前の市旗掲揚ポールに旗の特別掲揚を認めていたところ、キリスト教の旗の掲揚の申込に対しては政教分離を理由としてこれを拒否したため、表現の自由を侵害するかどうかが争われた事例――シュルトレフ判決……大林啓吾

 ・公益団体の理事会が理事に対して行った譴責が表現の自由を侵害すると主張することができるかが争われた事例――ヒューストン・コミュニティ・カレッジ判決……大林啓吾

<民法>
 ・違約金に関連する和解協議書の内容の履行をめぐる事件……胡 光輝

 ・ハーグ条約13条1項⒝は、子の返還につき「重大な危険」(grave risk)がある場合には、裁判所に子の返還を命じない裁量権を与えているとして、子の返還を安全にする可能性があるあらゆる選択肢を検討すべきであるとした原審の判断が取り消された事例……ダン ローゼン・西口 元

<消費者法>
 ・消費者契約におけるオンラインプラットフォーム事業者の情報提供義務……カライスコス アントニオス

<刑法>
 ・少年同士の一対一の殴り合いによる傷害について、被害者の同意による正当化が認められた事例……小池信太郎

 ・相場操縦罪における没収の範囲……佐藤拓磨


◆書 評◆

三ヶ月章『流涕記』
評者……泉 徳治


◆判例特報◆

◎使用者が誠実に団体交渉に応ずべき義務に違反する不当労働行為をした場合において、当該団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときに、労働委員会が使用者に対して誠実に団体交渉に応ずべき旨を命ずることを内容とする救済命令を発することの可否
──山形大学不当労働行為救済命令取消請求事件
(最二判令4・3・18)

▽1 地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たり、その取消しを求めるにつき訴えの利益がある
 2 ふるさと納税に係る寄附金の収入見込額が一定額を超えた場合を特別交付税の減額項目と定める「特別交付税に関する省令」(昭和51年自治省令第35号)附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの)の規定は、地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱し、無効である
──泉佐野市ふるさと納税事件
(大阪地判令4・3・10)


◆判決録◆

行 政

◎複数の不動産を一括して分割の対象とする共有物の分割により不動産を取得した場合における地方税法73条の7第2号の3括弧書きに規定する「当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分」の有無及び額の判断の方法
(最三判令4・3・22)

▽ひとり親障害者が障害基礎年金を受給したことを理由に、児童扶養手当の支給を停止された事案において、児童扶養手当法施行令(令和2年政令第318号による改正前のもの)6条の4のうち、障害基礎年金の子加算部分だけでなく本体部分についても併給調整の対象として児童扶養手当の支給を停止する旨を定めた部分は、①児童扶養手当法(令和2年法律第40号による改正前のもの)13条の2第2項の委任の範囲を逸脱するものではない、②憲法14条、25条、国際人権規約に違反して無効であるとはいえないとされた事例
(京都地判令3・4・16)

▽複合構造家屋の登録価格の決定が客観的には違法であっても、当該登録価格が合理性を否定し難い他の方法により是正されたときの価格を上回らない場合には、職務上の注意義務に違背して納税者に損害を加えたとはいえないとして、国家賠償責任が否定された事例
(東京地判令3・3・26)

▽県道で発生した自動車事故の原因が、道路の排水設備に落ち葉等が堆積したことにより生じた水たまりを走行したことにあるとして、落ち葉等を除去しなかったこと等につき、道路管理者である県に国家賠償法2条1項の責任を認めた事例
(神戸地判令3・8・24)

▽1 自治区の構成員らによる共同断交の決議やこれに沿った各言動が村八分として共同不法行為を構成するとされた事例
 2 行政区の自治委員や自治区の区長が国家賠償法上の公務員や市の被用者に当たらず、自治会連合会も同法上の公共団体に当たらないとされた事例
(大分地中津支判令3・5・25)


刑 事

〇被告人を無罪とした控訴審判決が最高裁判決により破棄され、その後の差戻控訴審が、強盗殺人罪の成立を否定して殺人罪と窃盗罪を認めた差戻前1審判決を破棄して1審に差し戻した事件につき、破棄判決の拘束力を一部認めて強盗殺人罪の成立を認定した1審判決に対する被告人からの控訴を棄却した事例
──米子ホテル強盗殺人第3次控訴審判決
(広島高松江支判令3・11・5)

▽看護師であった被告人が、勤務先の病院において、入院患者3名に消毒薬を投与して殺害した殺人事件等につき、被告人に完全責任能力を認めた上で、死刑を科することがやむを得ないとまではいえないとして、無期懲役刑を言い渡した事例
(横浜地判令3・11・9)
◆総 索 引◆

判 例 時 報 2401号~2500号

判 例 評 論 724号~754号


第一 判例の部


第二 判例評論および記事の部


第三 裁判年月日・著名事件索引
◆記 事◆

講話 民事裁判実務の要諦(11)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史

★書評 角田美穂子=フェリックス・シュテフェック編著
『リーガルイノベーション入門』……後藤巻則


◆判例特報・特集◆

▽新型インフルエンザ等対策特別措置法45条3項による飲食店に対する営業時間短縮命令の違法性を認めたものの、東京都知事が職務上の注意義務に違反したとは認めず、東京都の国家賠償法上の責任を否定した事例
──グローバルダイニング社VS東京都 コロナ禍時短命令国賠事件
(東京地判令4・5・16)

コロナ禍と日本型法の支配の記憶
──グローバルダイニング社事件が語ること……倉持麟太郎


◆判決録◆

行 政

◎大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例(平成28年大阪市条例第1号)2条、5条~10条と憲法21条1項
(最三判令4・2・15)

◎固定資産課税台帳に登録されたゴルフ場用地の価格が固定資産評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判令4・3・3)


民 事

▽信販会社から立替払を受けて三輪自動車(トライク)を顧客に販売した加盟店が、その後別の顧客に対して別の信販会社からの信用供与を受けさせて同一のトライクを販売する等した行為が、最初に立替払をした信販会社の留保所有権を侵害したとされた事例
(東京地判令2・9・29)

▽相続させる旨の遺言に民法1002条1項が類推適用された事例
(大阪地判令3・9・29)

▽1 被保佐人であることを警備員の欠格事由と定める警備業法(令和1年法律第37号による改正前のもの)14条、3条1号は、同規定の制定当初から、憲法22条1項、14条1項に反する状態であったとした事例
 2 遅くとも平成29年3月20日までに前記各規定を改廃しなかった国会の立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法であるとした事例
(岐阜地判令3・10・1)


刑 事

◎被告人は心神耗弱の状態にあったとした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し何ら事実の取調べをすることなく完全責任能力を認めて自判をした原判決が、刑訴法400条ただし書に違反するとされた事例
(最三判令3・9・7)

▽1 被告人両名の暴行によって死因である外傷性脳障害が生じて被害者が死亡したと考えるのが自然としつつ、検察官が主張する日時における暴行や共謀について検察官の依拠する一方の被告人の公判供述には変遷があり、具体性、迫真性に欠けるなど看過できない疑問点があり信用できないとして、検察官は立証に失敗したと結論付け、傷害致死罪につき無罪とされた事例
 2 検察官が公判前整理手続終結後、論告で初めて同時傷害の予備的主張等をしたことは相当性を欠くとされた事例
(名古屋地判令2・7・13)
◆記 事◆

裁判制度のパラダイムシフト─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(9)
──違憲判断の「効力」と「拘束力」……笹田栄司


◆判例特報◆

◎あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律19条1項と憲法22条1項
(最二判令4・2・7)


◆判決録◆

行 政

▽政党県議団に属する議員らが県から県議団を通じて交付を受けた政務活動費の一部を政務活動に該当しない選挙活動等に係る記事も混在した広報紙の作成・配布に係る経費に充てたとして、県議会事務局長に対して県議団に不当利得返還等を求めるように請求した住民訴訟が一部認容された事例
(神戸地判令3・4・22)


民 事

〇地方公務員災害補償基金の支部審査会における参考人の陳述や参与の意見陳述についての審議記録は、民事訴訟法220条4号ニに定める「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」にあたらない
(仙台高決令3・5・31)

〇納品先の生活協同組合連合会が3か年計画による約1万本のLED蛍光灯の導入計画を立てる旨の説明をして、3か年計画による導入についての価格見積りとして1本5700円の価格を提示させながら、同連合会が3か年計画を立てなかったのにその説明をせず、同じ価格で発注を続けた同連合会の子会社である注文者につき、信義則上の情報提供義務違反の過失が認められた事例
(仙台高判令3・3・25)

▽1 学校法人のハラスメント防止委員会が行った、大学教授による発言がハラスメントに当たり厳重注意とすることが相当である旨の決定について、同決定の取消請求の訴えの利益を否定した事例
 2 前記決定による名誉感情侵害の不法行為の成立を否定した事例
(札幌地判令3・8・19)


知的財産権

▽「ぼてぢゅう」の文字を含む結合標章(暖簾を模した図案中、その上段に「総・ぼ・て」の3字を含む図案を、その下段に「ぼてぢゅう総本家」を、それぞれ配置したもの)が、「ぼてぢゅう」という商標に類似しないとされた事例
(東京地判令4・3・18)


商 事

〇1 株主権の確認及び当該株主に対する株主総会の招集通知を欠いたことによる株主総会決議の不存在確認を認めた1審判決が、控訴審において維持された事例
 2 前記株主総会における取締役解任決議が記載された株主総会議事録を作成し、解任登記をしたことが不法行為に当たるとされた事例
(大阪高判令3・7・30)


刑 事

◎数罪が科刑上一罪の関係にある場合において、各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり、軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときの罰金刑の多額
(最一判令2・10・1)

〇1 入場情報を機械として判定対象としていない自動改札機における、磁気定期券を用いたキセル乗車について、鉄道会社が設置する駅の自動改札システムの目的は、有効適切な区間の乗車券や磁気定期券による有効適切な乗車か否かを判断することにあり、同システムにおいて予定されている事務処理の目的とは、乗車駅と下車駅との間の正規の運賃が支払われた正当な乗車か否かを判定して出場の可否を決することを指すとして、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めた事例
 2 1審判決が、前記自動改札機が入場情報を判定対象としていないとの個別具体的な事務処理の内容を捨象し、自動改札システムの一般的な抽象的な目的を前提に判断するのは、電子計算機使用詐欺罪の外縁を不明確なものにし、処罰の範囲を不当に拡大するおそれがあるとしたのに対し、駅係員に前記キセル乗車に用いた定期券を示した場合には詐欺罪が成立することが明らかであるから、同自動改札機に同定期券を投入した行為を詐欺罪の補充規定である電子計算機使用詐欺罪で処罰することは、構成要件の外縁を不明確にするものでも処罰範囲を拡大するものでもないとした事例(名古屋高判令2・11・5)


◆判例評論◆

31 最高裁大法廷夫婦同氏制合憲決定
  ──夫婦同氏制と国際人権法(最大決令3・6・23)……近江美保

32 1 被告国及び被告東電に対し、平成23年3月11日に発生した福島第一原発の事故により放射能に汚染された福島県双葉郡浪江町津島地区全域について、放射線量を低下させる義務のあることの確認を求める訴えが棄却され、放射線量を低下させることを求める訴えが却下された事例
  2 経済産業大臣が、福島第一原発について平成18年までに発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和40年通商産業省令第62号)4条1項の基準を満たしていないことを理由とする技術基準適合命令を発しなかったことは、法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであり、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
  3 被告東電に故意に匹敵するような重大な過失があったとは認められず、被告東電の悪質性を慰謝料の増額事由として考慮することはできないが、前記津島地区に居住する原告らが抱く被ばくの不安は、慰謝料の算定に当たって考慮すべきであるなどとして、被ばく慰謝料を請求している原告について基本額として1人1600万円を認めた事例
  4 被告東電から基本額を超える額の支払いを受けた原告については、被告東電と当該原告との間で、個別事情を考慮して上乗せした賠償額を被告東電が支払う旨の合意が成立したと認めた事例(福島地郡山支判令3・7・30)……長島光一

33 減額賦課決定により配当時に遡って存在しなかったこととなる年度分の個人住民税に充当されていた配当金を配当時に存在していた他の年度分の差押えに係る個人住民税に遡って充当すべきとされた事例(最三判令3・6・22)……倉見智亮
◆記 事◆

統治構造において司法権が果たすべき役割 第3部(6)
 表現活動への国家の「援助」と表現の自由……市川正人

建設工事紛争審査会の実情
 ──ADRとしての役割──……門口正人


◆判例特報◆

〇1 優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)4条ないし13条の憲法13条、14条適合性
 2 国会議員による優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)4条ないし13条の立法行為と国家賠償法1条1項の違法性
 3 優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)4条ないし13条の立法行為に係る国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権について民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の規定の適用が否定された事例
──旧優生保護法国賠訴訟控訴審判決
(大阪高判令4・2・22〈参考原審:大阪地判令2・11・30本誌2506=2507号69頁〉)


◆判決録細目◆

行 政

〇性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律2条に定める性同一性障害者であって、性別適合手術を受けておらず、戸籍上の性別変更をしていないトランスジェンダー(Male to Female)の国家公務員が、所属省内の女性用トイレの使用に制限を受けていたことにつき、公平処遇を求める措置要求を認められないとした人事院の判定の取消しを求めるとともに、国家賠償法に基づく損害賠償を求めた請求について、いずれも違法がないとされた事例
──経済産業省性同一性障害事件
(東京高判令3・5・27〈参考原審:東京地判令1・12・12〉)


民 事

▽1 送金委託契約に基づいて送金がなされる場合、送金依頼人と被仕向銀行の法律関係において民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)107条2項は類推適用されないとされた事例
 2 被仕向銀行が仕向銀行から受領した被仕向送金接受受付票記載の受取人の口座についての情報と被仕向銀行に実在する口座についての情報とが完全に一致していない場合において、被仕向銀行が自行の前記口座に被仕向送金額相当の入金をしたことにつき、受取人の特定として足りていたとされた事例
(東京地判令3・8・25)

▽1 相続人が、被相続人の生前に、被相続人の預金口座等から被相続人に無断で出金し、これに対し他の相続人が、被相続人から相続した不当利得返還請求権を行使する場合の権利割合は法定相続分であるとした事例
 2 相続人が、被相続人の死後、遺産である被相続人の預金口座から他の相続人に無断で出金し、これに対し他の相続人が、不当利得返還請求権を行使する場合の権利割合は法定相続分であるとした事例
(東京地判令3・9・28)


労 働

▽労働者派遣事業等を業とする株式会社である原告の従業員であった被告が原告に在職中に別会社(被告会社)を設立して原告のスタッフを被告会社に引き抜いたことによって損害を被ったと主張する原告が、被告及び被告会社に対して損害賠償を求める本訴を提起し、原告が被告の行為を非難する文書を関係先に配布したことによって名誉が毀損されたと主張する被告らが、原告に対して損害賠償を求める反訴を提起した事案において、本訴請求と反訴請求がそれぞれ一部認容された事例
(宮崎地都城支判令3・4・16)


商 事

〇取締役会議事録及び監査役会・監査等委員会議事録の閲覧謄写許可の申立てが、株主の権利を行使するため必要があること及び申立てに係る議事録部分が存在することの疎明があるとは認められないとして却下された事例
(大阪高決令3・5・28〈参考原審:神戸地尼崎支決令3・1・13〉)


刑 事

〇1 実子(生後1月及び3月)に対し身体を揺さぶる等の暴行を加え、急性硬膜下血腫等の傷害を負わせ(死亡させ)たという傷害(致死)の事案において、被害者の傷害は他の原因で生じた可能性が否定できないとして無罪とした原審の判断を是認した事例(①②事件)
 2 公判前整理手続終結後の検察官からの証拠調べ請求につき「やむを得ない事由」がないとして却下した原審の判断を是認するとともに、職権で取り調べなかった点に審理不尽の違法がある旨の検察官の主張を排斥した事例(②事件)
(①東京高判令3・5・28、②名古屋高判令3・9・28)

〇ベトナム人技能実習生である被告人が、死産したえい児の死体を段ボール箱に二重に入れて接着テープで封をし、自室にあった棚の上に置いた行為は死体遺棄罪にいう遺棄にあたるが、1日と約9時間の間、同死体の葬祭を行わなかった行為はこれにあたらないとした事例
(福岡高判令4・1・19)
◆記 事◆

講話 民事裁判実務の要諦(10)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史

統治構造において司法権が果たすべき役割 第3部(5)
 憲法判例の現状分析……渋谷秀樹


◆判決録細目◆

行 政

〇1 将来の転売を目的として購入したマンションに係る課税仕入れが消費税法30条2項1号の「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に当たらず、同号の「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に当たるとされた事例
 2 確定申告における消費税の申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとはいえないとされた事例
(東京高判令3・7・29〈参考原審:東京地判令2・9・3〉)

▽スリランカ国籍の父、モンゴル国籍の母、これらの国の二重国籍の3人の子らのうち、長女と二女について、法務大臣等が出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出に理由がない旨の裁決を撤回せず、在留特別許可をしなかったことが、その裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用したものであるとされた事例
(東京地判令3・11・24)


民 事

▽いわゆる給与ファクタリング取引は、契約書上事業者が労働者の給与債権を買い取る形になっていたとしても、実質的には金銭消費貸借契約であり、債権譲渡契約を根拠として当該労働者が支払を受けた給与債権の額面相当額の支払を求める前記事業者の請求は成立し得ないとされた事例
(東京地判令3・1・26) 

▽建物の使用を目的の1つとする土地の使用貸借において、被告が負担している同土地上の建物に係るローン残額に相当する額の支払と引き換えに、土地の使用及び収益をするのに足りる期間を経過したことによる使用貸借の終了を認めた事例
(東京地判令3・6・24)

▽日本及びD国の国籍を有する原告(妻)が、チェコ及びE国の国籍を有する被告(夫)に対し、離婚を求めるとともにD国及びE国の国籍だけでなく、チェコ国籍を有することに争いがある長男の親権者を原告と定めること等を申し立てた事案において、親子間の法律関係の準拠法については、法の適用に関する通則法により、原告は日本法(通則法38条1項ただし書)、被告は約24年間チェコに在住していたこと等からチェコ法(通則法38条1項本文)、長男はチェコ国籍を有するものと認めた上で約2年半チェコに居住し永住権も取得していること等からチェコ法(通則法38条1項本文)がそれぞれ本国法となり、子である長男の本国法と父である被告の本国法が同一であるから、親子間の法律関係はチェコ法が適用(通則法32条)されるとし、長男の親権者・監護については、チェコ民法においては、離婚後も親責任を有するが、被告は様々な国に転々と赴任し長男の養育環境としては不安定な面があることは否定できないなどとして、原告の単独監護(チェコ民法907条1項)に委ねることが相当であるとし、原告の請求を認容した事例
(東京家判令3・3・29)

▽1 被相続人の特別縁故者に当たるとして被相続人の財産を分与する旨の審判を求めた事案において、申立て後、審判前に死亡した申立人の相続人らに相続財産の一部を分与した事例
 2 前記事案における分与額につき、申立人が既に民法958条の3第2項の期間を経過した者との間で、申立人に対する相続財産分与審判が確定することを停止条件とする贈与契約を締結したことについての考慮の当否を判断した事例
(山口家周南支審令3・3・29)


労 働

▽じん肺法上のじん肺管理区分決定を受けていた労働者らが間質性肺炎の増悪により死亡したことについて、業務起因性が肯定された事例
(長崎地判令3・6・21)


◆最高裁判例要旨(2022(令4)年4・5月分)
◆記 事◆

議会制民主主義のいま─主権・選挙・代表を再考する(7)
 半直接民主制における議会の立法過程と日本への示唆……武蔵勝宏


◆判決録細目◆

行 政

〇1 不法残留に当たるなどとした処分行政庁の裁決及び処分行政庁がした退去強制令書の発付処分の各取消しを求める訴えを棄却する判決が確定した後、裁決後の事情を理由として提起された当該裁決の撤回の義務付けを求める訴えについて、訴訟要件を欠き不適法であるとされた事例
 2 前記裁決の撤回の義務付けを求める訴えとともに提起された在留特別許可の義務付けを求める訴えが不適法であるとされた事例
(東京高判令3・7・15〈参考原審:東京地判令3・1・28〉)


民 事

〇仮想通貨についての情報教材を販売する法人および販売勧誘を助長する事業者個人に対し、特定適格消費者団体が原告となって提起した共通義務確認訴訟において、同訴訟の適用要件である「支配性」が認められないとして訴えが却下された事例
(東京高判令3・12・22〈参考原審:東京地判令3・5・14〉)

〇支援の必要性の要件を欠くことを容易に知ることができたのにあえて住民基本台帳事務における支援措置の延長の申出をしたことが、ドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者とされた元夫に対する不法行為に該当するとされた事例
(名古屋高判令3・4・22〈参考原審:名古屋地判令2・9・24〉)

〇住宅型有料老人ホームに入居し訪問介護サービスの提供を受けていた高齢者が居室の窓から転落して傷害を負い、その後死亡した事故について、施設運営会社及び介護事業者に対する安全配慮義務違反又は共同不法行為等に基づく損害賠償請求をいずれも棄却した事例
(福岡高宮崎支判令3・4・21〈参考原審:鹿児島地判令2・10・30〉)

〇公立中学校に通う生徒が適応障害と診断されたとして部活動における負担軽減等の配慮を求めたにもかかわらず、教諭らが負担軽減措置を継続せず症状を悪化させたとして、配慮義務違反に基づく損害賠償請求を一部認容した事例
(福岡高宮崎支判令3・2・10〈参考原審:鹿児島地判平31・4・16〉)

▽高等学校が生徒募集を停止して閉校したことにつき、学校設置会社が提携先の事業者に対して債務不履行責任を負うとされた事例
(大阪地判令3・7・16) 


知的財産権

▽1 商品又は営業を表示するものとして文字から構成される標章の著作物性
 2 ANOWA等の文字から構成されるロゴタイプが著作物には該当しないとされた事例
(東京地判令3・12・24)


刑 事

◎違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に、法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
(最三判令3・7・30)


判例評論

28 建設アスベスト訴訟神奈川ルート上告審判決
(最一判令3・5・17)……北村和生

29 被告人の、車両(普通乗用車)を運転中、同車両を、被害者の運転する車両(大型自動二輪車)に後方から接近させ、時速100キロメートル弱の速度で衝突させ、被害者を車両もろとも転倒させるなどして死亡させた行為について、殺人罪の成立を認め、被告人を懲役16年に処した原判決が、その判断には事実の誤認も刑の量定不当もないとして是認された事例
──堺市あおり運転殺人事件控訴審判決
(大阪高判令1・9・11)……古川伸彦

30 身体拘束を受けていない被疑者の弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者が、任意取調べを受けている被疑者との面会を捜査機関に対して申し出た場合において、当該申出の存在を被疑者に告げないまま任意取調べを継続させた捜査機関の措置は国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
(東京高判令3・6・16)……堀田尚徳
◆記 事◆

最高裁民事破棄判決等の実情
 ──令和3年度──……宮﨑朋紀・大竹敬人

講話 民事裁判実務の要諦(9)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史


◆書 評◆

田中敦編『抗告・異議申立ての実務』(新日本法規出版、2021)
評者……遠藤賢治


◆判例特報◆

▽原子力発電所の運転差止請求において、原子力災害対策指針に定める段階的避難等が実現可能な避難計画の策定及びこれを実行し得る体制が講じられていないため、人格権侵害の具体的危険があるとして、PAZ及びUPZ(前記発電所から概ね半径30㎞の範囲)内の住民に限り、差止めを認めた事例
──東海第二原発運転差止請求事件第1審判決
(水戸地判令3・3・18)


◆判決録細目◆

民 事

〇公立高校に在籍していた生徒が、教員らから頭髪指導として受けた措置のうち、黒染め強要等について国家賠償法上の違法又は在学関係上の安全配慮義務違反があるとは認められないが、不登校となった後の生徒名簿からの削除等については教育環境配慮義務における裁量権の範囲を逸脱したものとして国家賠償法の違法に基づく損害賠償請求を認めた原審の判断を、控訴審が是認した事例
(大阪高判令3・10・28〈参考原審:大阪地判令3・2・16〉)


刑 事

〇警察官が職務質問の際に被告人運転車両から見つけたとするチャック付きビニール袋の束が警察官が仕込んだ虚偽の証拠であるか否かにつき、その疑いを拭い去ることはできないが疑いは濃厚でないところ、その程度にとどまる事情だけを根拠に薬物等の証拠能力を否定しても、将来における違法行為抑止の実効性を担保し得るかどうか疑問があるとして、違法収集証拠排除法則の適用を否定した事例
(東京高判令2・11・12)
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調査・判例入手に必読の資料。主要な最高裁判例及び重要な下級審判例の全文を掲載。判例の背景、要旨、意義等についての解説が付されている最も一般的な判例紹介誌。「最高裁判所民事(刑事)破棄判決等の実情」など最高裁判所調査官が最高裁判例を紹介・解説した記事が掲載されるほか、各種連載記事や論文も掲載されている。

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