判例時報 発売日・バックナンバー

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◆記 事◆

裁判制度のパラダイムシフト──過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(8)
──訴訟上の和解を媒介にした政策形成──司法の役割とその限界……笹田 栄司

コロナ禍社会における法的諸問題(21)
 コロナ禍における刑事裁判実務……半田 靖史


◆判決録◆

行 政

◎相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分のうち前記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合において、課税庁は、国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し、当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額等を用いて税額等を計算すべき義務を負うか(消極)
(最一判令3・6・24)


商 事

◎監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は、計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり、当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば、その任務を尽くしたといえるか(消極)
(最二判令3・7・19)


民 事

○1 家賃債務保証業者に賃貸借契約を無催告解除する権限を付与する趣旨の消費者契約の条項等が消費者契約法8条1項3号、10条に該当するとはいえないとして、適格消費者団体による同法12条3項に基づく差止等の請求が棄却された事例
 2 賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、家賃債務保証業者において合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借物件を相当期間利用していないものと認められ、かつ、賃借物件を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときに、賃借人が明示的に異議を述べない限り、賃借物件の明渡しがあったものとみなす権限を家賃債務保証業者に付与する趣旨の消費者契約の条項等が消費者契約法8条1項3号、10条に該当するとはいえないとして、適格消費者団体による同法12条3項に基づく差止等の請求が棄却された事例
(大阪高判令3・3・5)

▽被告が夫と不貞行為を行ったとして妻である原告が被告に対し不法行為による損害賠償を求めたのに対し、メールのやりとりや夫が所持していたホテルの利用明細書等だけではただちに被告と原告の夫との不貞関係は認定できないとして、その請求を棄却した事例
(東京地判令3・1・27)

▽暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律3条の指定暴力団の構成員らが行った特殊詐欺について、同法31条の2本文の威力利用資金獲得行為に該当すると認められ、当該指定暴力団の代表者等にも損害賠償責任が認められた事例
(東京地判令3・2・26)

▽廃棄物処分場の立地自治体が、同処分場における廃棄物の不適正な処理の結果生じる生活環境保全上の支障等の除去のための措置に要した費用のうち自己の負担割合を超える部分について、同処分場に一般廃棄物を搬入してその処分を委託した者に対して行った、事務管理に基づく有益費償還請求が認められた事例
(福井地判令3・3・29)

▽建設中の産業廃棄物の安定型最終処分場について、有害物質の漏出により井戸水が汚染されるおそれがあるとして建設、使用及び操業禁止の仮処分命令の申立てが認められた事例
(広島地決令3・3・25)


知的財産権

▽タコの形状を模した公園の遊具である滑り台の著作物性が否定された事例
(東京地判令3・4・28)


◆最高裁判例要旨(2022(令4)年1月分)


◆判例評論◆

9 事業協同組合において先行する理事選挙について取消しの訴えが提起された後に後任の理事選挙がされた場合の、先行する理事選挙に関する訴えの利益(最一判令2・9・3)……久保 大作

10 福島第一原発事故による放射能汚染について、国の規制権限不行使に基づく損害賠償責任が認められた事例──生業訴訟控訴審判決(仙台高判令2・9・30)……近藤 卓也

11掘削して湧出させた温泉について慣習法上の物権としての温泉権は成立しないとされた事例(東京高判令1・10・30)……宮﨑 淳

12 日本スポーツセンターが行う災害共済給付制度における「同一部位についての障害」の意義(福岡高判令2・7・6)……肥塚 肇雄

13 団交ルールへの固執と団交拒否の不当労働行為(東京地判令2・1・30)……早津 裕貴
◆記 事◆

民法理論のいま──実務への架橋という課題(6)
 「説明義務」と「適合性の原則」について……近江 幸治

書評
 井田良『死刑制度と刑罰理論──死刑はなぜ問題なのか』……大谷 實


◆判決録◆

行 政

〇経済産業局長が採石権の存続期間の更新決定をすることができるのは、土地所有権の制限を正当化し得るに足りる公共の利益がある場合に限られるとされた事例
(東京高判令3・2・18)


民 事

〇1 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律31条の2本文に規定する「威力を利用」する行為とは、当該指定暴力団に所属していることにより資金獲得行為を効果的に行うための影響力又は便益を利用することをいい、当該指定暴力団員としての地位と資金獲得行為とが結びついている一切の場合をいうとした事例
 2 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律31条の2本文に規定する「威力を利用」する行為とは、資金獲得のために威力を利用するものであれば足り、被害者又は共犯者に対して威力が示されることは必要ではないとした事例
 3 指定暴力団の元会長に対して暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律31条の2に基づく損害賠償責任を認めた事例
(東京高判令3・3・22)

▽芸能人養成スクールが規定する入学時諸費用(38万円)の不返還条項について、消費者契約法9条1号の適用を認め、入学費用のうち地位獲得対価部分12万円、平均的損害1万円の合計13万円を超えて返金しないとの意思表示についての差止請求を認めた事例
(東京地判令3・6・10)

▽1 公正証書によらない死因贈与契約において、執行者を定めることができるとされた事例
 2 死因贈与の執行者は、死因贈与された銀行預金の払戻請求をする権限を有し、払戻請求訴訟の原告適格を有するとされた事例
 3 預金契約に譲渡禁止特約がある場合、受贈者は原則として死因贈与契約によって預金債権を取得できないとされた事例
 4 銀行が、執行者からの払戻請求を拒絶したことが信義則に違反しないとされた事例
(東京地判令3・8・17)

▽実父の遺産分割協議につき、家庭裁判所による特別代理人の選任がなかったとし、また、親権者とその未成年の子を当事者とする場合には遺留分制度の意義を踏まえて行わなければならないはずが、当該遺産分割協議は子である原告に大きな不利益をもたらし、客観的公正さを欠くものであることを理由に、その遺産分割協議が不成立ないし無効であるとして、原告がその母親(親権者)である被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得に基づく返還請求を求めたがいずれも認められなかった事例
(東京地判令2・12・25)

▽証券会社従業員の勧誘により行われた取引所株価指数証拠金取引について、その勧誘行為が新規委託者保護義務違反及び過当取引に当たるとして証券会社及びその支店長に不法行為に基づく損害賠償責任を認めた事例
(名古屋地判令3・5・20)


労 働

▽1 変形労働時間制を無効とした上で、労働時間管理システムでの店長による退社時刻の修正等の事実を認定し、これを前提に労働時間が認定された事例
 2 セミナー受講後2年以内に退職した場合に受講料等を返納しなければならないとの合意が無効であるとされた事例
(長崎地判令3・2・26)
◆記 事◆

海外判例研究──第13回──
  憲法……大林啓吾
  民法……胡 光輝
      ダン ローゼン・西口 元
  消費者法……カライスコス アントニオス
  刑法……神馬幸一
      仲道祐樹

講話 民事裁判実務の要諦(5)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史


◆特 集◆

裁判手続のIT化のこれから・市民にとって利用しやすい裁判とは(下)
──日弁連主催・第29回司法シンポジウム「民事裁判手続のIT化とこれからの司法」
  第4部 パネルディスカッション(後半)


◆判決録◆

民 事

◎担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け、同競売の基礎となった担保権の被担保債権が前記決定の効力を受ける場合における、当該債務者の相続人の民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」該当性
(最一決令3・6・21)

〇テレビジョン受信機に日本放送協会の放送に係る電波のみを減衰する機器を取り付けた場合であっても、当該機器を取り外したり、又は当該機能を働かせなくさせたりすることにより、放送を受信することのできる状態にすることができるときには、当該受信機設置者は放送法64条1項に規定する受信設備を設置した者に当たるとした事例
(東京高判令3・2・24)

〇1 個人事業主とリース会社とのソフトウェアのリース契約について、特定商取引に関する法律に基づくクーリング・オフによる契約解除の主張が排斥された事例
 2 前記リース契約に基づくリース料請求が信義則に基づき7割に制限されるとされた事例
(大阪高判令3・2・16)

▽「一切の遺言を全部撤回する」旨の遺言公正証書が遺言能力を欠く状態で作成されたとして、無効とされた事例
(東京地判令3・3・31)

▽弁護士会が所属弁護士に対してした業務停止1月の懲戒処分が違法であったとして、国家賠償法に基づく損害賠償請求が認容された事例
(東京地判令3・1・26)

▽無痛分娩のための腰椎麻酔における注意義務違反により母親が重篤な後遺障害を負い、胎児が重篤な後遺障害を負って約6年後に死亡した事案につき、債務不履行により医療法人に対し総額約3億円の賠償支払が命じられた事例
(京都地判令3・3・26)

▽1 放送法遵守義務確認訴訟は裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たるが、確認の利益を欠くとして却下された事例
 2 受信者らの放送法4条違反等の損害賠償請求は理由がないとして請求が棄却された事例
(奈良地判令2・11・12)
◆特 集◆

裁判手続のIT化のこれから・市民にとって利用しやすい裁判とは(上)
──日弁連主催・第29回司法シンポジウム「民事裁判手続のIT化とこれからの司法」
 第4部 パネルディスカッション(前半)


◆判決録◆

行 政

▽映画製作会社がした文化芸術振興費補助金に係る助成金の交付申請に対し、その製作映画の出演俳優が麻薬及び向精神薬取締法違反による有罪判決を受けたことを理由に前記助成金を交付しないとした処分が、独立行政法人日本芸術文化振興会理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとされた事例(東京地判令3・6・21)

▽1 中部地方整備局長及び静岡県知事が行った鉄道高架化に係る都市計画の事業計画の各変更認可について、同都市計画の事業地周辺に居住等する者の原告適格が否定された事例
 2 前記各変更認可の前提となる都市計画決定が違法とはいえないとされた事例
 3 前記各変更認可が、前記都市計画決定後の社会・経済情勢の変化との関係において違法とはいえないとされた事例
(静岡地判令2・12・24)


民 事

〇商品にベーコンビッツの骨片の残存可能性についての警告表示がなかったことをもって、商品が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえないとした事例
(東京高判令2・1・15)

〇太陽光発電事業者が保険会社との間で太陽光発電所設置工事につき組立保険契約を締結していた場合において、河川の氾濫により工事の材料であった太陽電池モジュール(太陽光パネル)が浸水した保険事故の保険金の対象となる復旧費につき、「保険事故発生前の正常な状態と物理的、機能的に同一の状態に復するために必要な費用に限られる」とした事例
(福岡高宮崎支判令2・7・8)

〇婚姻意思がなかったことを理由とする婚姻無効確認請求訴訟について棄却された原判決が控訴審において取り消され、婚姻無効が確認された事例
(札幌高判令3・3・10)

▽1 キャバクラ店の従業員である被告が使用者である原告との間でした、被告が私的交際をせずこれに違反した場合は原告に対して違約金200万円を支払う旨の合意は、労働基準法16条に違反し無効であると判断された事例
 2 前記合意が、公序良俗に反し無効であると判断された事例
(大阪地判令2・10・19)

▽申立人ら夫婦が申立人母の非嫡出子を養子にすることの許可を求めた事案において、申立人父との関係ではニュージーランド法を、申立人母との関係では日本法をそれぞれ準拠法として認定した上、各準拠法における養子縁組の要件を検討し、申立てを許可した事例
(東京家審令3・1・27)


商 事

◎会社法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者が同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合における前記の者の同法318条4項にいう「債権者」該当性
(最二判令3・7・5)

▽金融商品取引法166条1項1号の規定に違反して上場会社等の特定有価証券等の売買をしたことを理由とする課徴金納付命令について、業務執行を決定する機関が同条2項1号ヨ(令和1年法律第71号による改正前のもの)の「業務上の提携」を行うことについての決定をしたとは認められないとされた事例
(東京地判令3・1・26)


◆最高裁判例要旨(2021(令3)年12月分)


◆判例評論◆

 5 数筆の宅地が一画地の宅地として認定される場合における、各筆の宅地の評価方法
(最一判令2・3・19)…渋谷 雅弘

 6 司法解剖に関連する資料の文書提出義務―鑑定書の写し等の刑事事件関係書類等該当性(①決定)及び解剖写真の法律関係文書該当性(②決定)
(①②最三決令2・3・24) …内海 博俊

 7 公認会計士協会から上場会社監査事務所名簿への登録を認めない旨の決定を受けた公認会計士らにつき、その実施した監査手続が当該監査において識別すべきリスクに個別に対応したものであったか否か等の点を十分に検討することなく当該決定の前提となる監査の基準不適合の事実はないとして当該決定の差止めを認めた原審の判断に違法があるとされた事例
(最二判令2・11・27)…原 弘明

 8 市診療所所長であった医師の自殺につき、診療業務、患者虐待問題や病床廃止計画への対応による負荷が、総合的に評価すると精神疾患を発症させるほど過重であったとして、公務起因性を認め、公務外災害認定処分を取り消し、公務災害処分の義務付けをした事例
(盛岡地判令2・6・5)…弘中 章
◆記 事◆

情報をめぐる現代の法的課題⑼
 令和3年改正個人情報保護法と個人情報保護条例の効力……齋藤  裕

振り込め詐欺救済法に係る裁判例の問題点……加松 正利


◆判決録◆

行 政

〇市庁舎前広場の使用許可申請に対する不許可処分を適法とした原審の判断が維持された事例
(名古屋高金沢支判令3・9・8)


民 事

〇不在者に対する債権者となる可能性があるにとどまる者は、民法30条1項の「利害関係人」に該当しないから、失踪の宣告を申し立てることができないとされた事例
(東京高決令2・11・30)

〇大気汚染による周辺住民の健康被害のほか地球温暖化や生態系への悪影響を理由として、石炭火力発電所・仙台パワーステーションの運転差止めを求めた請求が、認められなかった事例
(仙台高判令3・4・27)

▽破産債権者に対してなされた支払不能後の期限前弁済について、破産法162条2項2号に基づく悪意の推定を覆すには至らないとされるとともに、前記弁済を受けさせた前記破産債権者の代表取締役がその職務を行うについて悪意又は重過失があったとして会社法429条1項の責任を負うとされた事例
(東京地判令2・1・20)

▽外国人技能実習の監理団体が、外国人技能実習生の帰国の意思を書面により確認し、外国人技能実習機構に書面で届け出る義務があり、しかも、外国人技能実習生の旅券及び在留カードを保管すること等が禁止されているにもかかわらず、それらに違反した上で帰国させようとしたこと等について、外国人技能実習生に対する不法行為責任が認められた事例
(熊本地判令3・1・29)

▽原告と原告の取締役であった被告との間においては、被告が原告を退職後に競業会社の取締役に就任し、同社へ原告の従業員を多数転職させるとともに、原告の顧客情報を漏洩して原告の顧客である取引先を侵奪したと主張して、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求をしている別訴があり、既に債務不履行等を認める判決が言い渡され、同判決は控訴されているから、被告の退職後の競業避止義務及び秘密保持義務に違反したことなどを理由にして損害賠償請求を求める本訴と別訴とは、判断内容が矛盾抵触する可能性が生じることなどを理由に、民事訴訟法142条の法意を類推して被告に対する本訴が却下された事例
(東京地判令3・4・20)


経 済

〇1私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律20条2項に基づく排除措置命令に係る命令書の主文の記載並びに理由の記載に違法があるとされた事例
 2私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律20条の6に基づく課徴金納付命令に係る命令書の理由の記載に違法があるとされた事例
(東京高判令2・12・11)


刑 事

〇危険運転致死傷罪の「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」に該当するかの判断に当たり、その一判断要素である「道路の状況」に他の走行車両は含まれないとして、その成立を否定した事例
(名古屋高判令3・2・12)


◆最高裁判例要旨(2021(令3)年11月分)
◆記 事◆

議会制民主主義のいま─主権・選挙・代表を再考する(3)
 代表制民主主義と「民意」を遮断する法制度……中島 徹

講話 民事裁判実務の要諦(4)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史


◆判決録◆

行 政

◎刑事施設に収容されている者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律45条1項所定の保有個人情報に当たるか
(最三判令3・6・15)


民 事

◎弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条に違反する訴訟行為につき、相手方である当事者がその行為の排除を求めることの許否
(最二決令3・4・14)

◎法例の一部を改正する法律(平成1年法律第27号)の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立の準拠法
(最三判令2・7・7)

〇自転車運転中に自動車と衝突して負傷した者について、事故後に発症した切迫性尿失禁・腹圧性尿失禁は、事故との間に相当因果関係の認められる後遺障害であり、自動車損害賠償保障法施行令別表第2の11級10号に相当すると判断した事例
(札幌高判令3・2・2〈参考原審:札幌地判平31・3・26〉)

▽仮想通貨(暗号資産)の取引用アカウントに第三者が不正にアクセスして行った取引の効力が、利用規約の定めにより、アカウント開設者に及ぶとされた事例
(東京地判令2・3・2)

▽行政書士である被告に自動車損害賠償責任保険の保険金の請求手続等の事務を委任する契約を締結し、同契約に基づいて被告に報酬を支払った原告が、高額に過ぎる報酬を原告から受領した被告の行為は暴利行為であり、また、弁護士法72条が禁止する非弁行為に当たるなどとして、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案において、原告の請求が認容された事例
(神戸地洲本支判令3・3・11)


労 働

〇1 長時間労働の中、取締役からひどい嫌がらせ・いじめと評価される叱責を受けた従業員が精神障害を発病し自殺したとして、相当因果関係を認めた事例
 2 会社の安全配慮義務違反を認めた事例
 3 取締役らに会社法429条1項に基づく損害賠償責任を認めた事例
(高松高判令2・12・24〈参考原審:高知地判令2・2・28〉)


刑 事

〇殺すぞなどと怒号しながら包丁を示して脅迫したという暴力行為等処罰に関する法律違反保護事件において、家裁係属歴がない少年を第1種少年院に送致した原決定について、抗告審が、少年の非行性がさほど進んでいるとは言い難く、社会内処遇の可能性が検討されるべきであり、原決定の処分は著しく不当であるとして、これを取り消した事例
(広島高決令2・8・18)

▽男女9名の被害者に対する強盗·強制性交等殺人、強盗殺人、死体損壊、死体遺棄被告事件につき、承諾殺人の主張を排斥し、完全責任能力を認めて、被告人を死刑に処した事例──座間(9人殺害)事件
(東京地立川支判令2・12・15)
◆記 事◆

情報をめぐる現代の法的課題⑻
 コンテンツモデレーションとAIの利用、
 そして差止請求──EUの動向との比較検討……丸橋 透

議会制民主主義のいま― 主権・選挙・代表を再考する(2)
 参議院をめぐる憲法問題……櫻井 智章

これからの原発運転差止訴訟について……樋口 英明


◆判決録◆

行 政

◎複数年度分の普通徴収に係る個人の住民税を差押えに係る地方税とする滞納処分において当該差押えに係る地方税に配当された金銭であってその後に減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の住民税に充当されていたものの帰すう
(最三判令3・6・22)


民 事

〇指定暴力団の構成員を含むグループによって行われた特殊詐欺行為が、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律31条の2の「威力利用資金獲得行為」を行うについてされたものとして、同条に基づく指定暴力団の代表者等の損害賠償責任が認められた事例
(東京高判令3・1・29)

〇市民団体が開催する集会の開催地へ往復するために集会の参加者を自家用バスに乗車させたことにつき、道路運送法4条1項所定の一般旅客自動車運送事業を経営したものに当たるとした警察官による捜索差押許可状の請求行為が違法であるとされた事例
(大阪高判令3・2・4)

〇基本事件の裁判籍では土地管轄権を有しない先行事件の管轄裁判所に対し、基本事件と先行事件との訴訟の目的である権利又は義務の間に民事訴訟法38条前段の関係があるとして、基本事件の訴訟提起がされて先行事件と併合審理することが求められた事案において、同法7条の類推適用を否定して管轄違いの移送の申立てを認容した事例
(福岡高決令2・11・27)

▽自筆証書遺言の要件である遺言者の押印の存在が否定された事例
(東京地判令2・12・17)

▽マンション内の居宅が暴力団事務所として使用されていることによって、同マンションの住民らの生命・身体に対する危険が切迫しており、平穏な生活を営む権利が受忍限度を超えて現に侵害され、今後も侵害が継続する蓋然性が高いとして、同居宅の使用者である暴力団組長に対し、暴力団の事務所としての使用禁止を、同居宅の所有者に対しては、使用者をして暴力団の事務所又は連絡場所として使用させることの禁止を、それぞれ認めた事例
(福岡地久留米支判令3・2・5)


知的財産権

〇侵害者が、特許権が他の共有者との共有であることを主張立証したときは、特許法102条2項による推定は他の共有者の共有持分割合による同条3項に基づく実施料相当額の損害額の限度で覆滅され、侵害者が、他の共有者が特許発明を実施していることを主張立証したときは、同条2項による推定は他の共有者の実施の程度に応じて按分した損害額の限度で覆滅されるとされた事例
(知財高判令2・9・30)


労 働

〇懲戒解雇された労働者(大手金融機関の行員)に対する退職金全額不支給措置が、懲戒事由が数年にわたり反復継続された雑誌社への秘密情報漏洩行為であって雇い主たる前記金融機関の信用を大きく毀損したことを考慮して、適法であるとされた事例
(東京高判令3・2・24)


刑 事

〇覚せい剤密輸入事件につき、控訴審において、間接事実を推認して輸入の故意と営利目的を認定した1審判決の推論過程の一部を是認しない判断を示した上で、自白調書の信用性を肯定して輸入の故意を認定し、他方、営利目的は否定して、事実誤認により1審判決を破棄し、自判した事例
(東京高判令3・3・17)


◆判例評論◆

1 1 同性婚を認めない法制(民法・戸籍法)と憲法13条、14条、24条
  2 同性婚を認めないことの違憲性と立法不作為を理由とする国賠請求──札幌同性婚違憲訴訟
(札幌地判令3・3・17)……吉田 邦彦

2 請負人である破産者の支払の停止の前に締結された請負契約に基づく注文者の破産者に対する違約金債権の取得が、破産法72条2項2号にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たり、前記違約金債権を自働債権とする相殺が許されるとされた事例
(最三判令2・9・8)……北島 典子

3 強制執行の申立てをした債権者が債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において当該強制執行に要した費用のうち民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することの許否
(最三判令2・4・7)……岡庭 幹司

4 特許権の通常実施権者が、特許権者を被告として、特許権者の第三者に対する特許権侵害を理由とする損害賠償請求権が存在しないことの確認を求める訴えにつき、確認の利益を欠くとされた事例
(最二判令2・9・7)……工藤 敏隆
◆記 事◆

新連載
統治構造において司法権が果たすべき役割 第3部
(1)同性婚認容判決と司法部の立ち位置──司法積極主義の足音は聞こえてくるのか?……千葉 勝美
(2)比較衡量/総合的考慮論と審査基準論……小山 剛

講話 民事裁判実務の要諦(3)──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本 英史

コロナ禍社会における法的諸問題(20)
 ワクチン接種義務化をめぐる司法判断──アメリカの事例……大林 啓吾


◆判決録◆

行 政

◎1 沖縄県漁業調整規則(昭和47年沖縄県規則第143号。令和2年沖縄県規則第53号による改正前のもの)41条1項に基づく水産動植物の採捕に係る許可に関する県知事の判断と地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるもの
 2 沖縄県漁業調整規則(昭和47年沖縄県規則第143号。令和2年沖縄県規則第53号による改正前のもの)41条に基づく水産動植物の採捕に係る許可の申請について、県知事において審査基準にいう申請内容の必要性を認めることができないと判断したことが裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められた事例
(最三判令3・7・6)

◎被災者生活再建支援法に基づき被災者生活再建支援金の支給決定をした被災者生活再建支援法人が支給要件の認定に誤りがあることを理由として当該決定を取り消すことができるとされた事例
(最二判令3・6・4)

▽生活扶助の基準生活費の減額をその内容に含む「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)の改定が生活保護法3条及び8条2項の規定に違反するとされた事例
(大阪地判令3・2・22)


民 事

▽経鼻チューブが咽頭部内でトグロを巻き、その先端が胃に届かない状態で食道内に留置され、そのまま栄養剤等が注入されたため、患者が誤嚥性肺炎によって死亡したことにつき、医師に過失があったとされた事例
(大阪地判令3・2・17)

▽原告らに対して優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)に基づく優生手術が実施された事案において、同法4条ないし13条は、子を産み育てるか否かの意思決定をする自由及び意思に反して身体への侵襲を受けない自由を侵害し、合理的な根拠のない差別的な取扱いをするものであり、明らかに憲法13条、14条に違反して違憲であるとしたうえで、国会議員による前記各規定の立法行為は国家賠償法上違法であるが、原告らは、優生手術の実施から20年が経過した後に提訴しており、損害賠償請求権は、除斥期間の経過によって消滅し、本件の事実関係の下において、除斥期間の規定の適用を制限するのは相当ではないとした事例
(大阪地判令2・11・30)

▽染料・顔料の中間体を製造する工場で乾燥工程に従事していた労働者が発がん性物質であるオルト‒トルイジンにばく露し膀胱がんを発症したことについて、使用者の安全配慮義務違反による債務不履行責任が認められた事例
(福井地判3・5・11)

▽業務委託契約に基づき県から犬猫の譲渡推進事業を委託された団体(権利能力なき社団)の活動にボランティアとして参加していた女性が、同契約に係る譲渡動物として同団体に引き渡され飼養されていた犬に咬みつかれて右手親指の指尖部切断等の傷害を負い、右手親指爪甲の変形及び指尖部の軽度知覚低下を後遺した事故について、犬の占有者である県と保管者である団体代表者の責任が認められた事例
(宮崎地判令3・1・13)


商 事

▽1人しかいない監査役によって任期途中にされた報酬増額決定を有効とし、同増額決定に善管注意義務違反があるとはいえないとした上、正当な理由なく解任されたとして、同監査役の未払報酬請求及び損害賠償請求を一部認容した事例
(千葉地判令3・1・28)


知的財産権

〇名称を「チューブ状ひも本体を備えたひも」とする発明に係る特許権の共有者の1人が特許法73条2項の「別段の定」に反して同発明の実施品を日本において製造販売したことが特許権侵害に当たるとして、他の共有者からの特許権侵害に基づく損害賠償請求及び差止請求等が認められた事例
(知財高判令2・11・30)


刑 事

▽特殊詐欺の受け子から指示役の指示内容や行動状況の報告を受け、詐欺グループの上位者と思われる人物に報告するなどした被告人につき、正犯意思を否定して共同正犯の成立を認めず、無罪とした事例
(名古屋地判令1・12・9)
◆記 事◆

裁判制度のパラダイムシフト─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(7)
 ──民事裁判手続のIT化と憲法……笹田 栄司

コロナ禍社会における法的諸問題(19)
 人権・ロックダウン・緊急事態……横大道 聡

共犯論をめぐる近時の裁判例について
 第3回 詐欺未遂の承継的共同正犯をめぐる近時の裁判例について……小林憲太郎


◆判決録◆

行 政

▽都市計画で決定された公園の計画区域内に、当該都市計画を変更しないまま、一般廃棄物処理施設への廃棄物の運搬車両のための専用道路を設置したことについて、これが都市計画法上違法であり、道路設置のために市長がした契約の締結が地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反するとして、市長が損害賠償義務を負うとされた事例
(東京地判令2・11・12)


民 事

〇生徒の自死事件を受けて市教育委員会が設置した調査委員会が、調査の過程で収集した資料について、インカメラ手続を経て、証拠調べの必要性及び民事訴訟法220条4号ロ該当性について判断した事例
(広島高決令2・11・30)

〇車道の第2車線の中央分離帯寄りの位置で歩行又は一時的に佇立していた歩行者が交通事故に遭遇した保険事故に係る保険金請求について、重大な過失に起因する旨の免責事由の適用の有無が争点となった場合に、免責事由を認めた原判決を、控訴審において重大な過失があるとはいえないとして取り消し保険金請求を認容した事例
(福岡高判令2・8・27)

▽1自身になりすました第三者により無断でインターネット上のウェブサイトに記事を投稿されたことについて、他人に氏名を冒用されない権利(人格権)を違法に侵害されたものとして、同サイトの投稿記事につき削除権限を有する者に対して、人格権に基づく当該記事の削除請求が認められた事例
 2インターネット上のウェブサイトの運営者が、発信者情報の開示を求められた別件仮処分命令申立事件で答弁書を提出した時点において、なりすましによる記事であることを認識できるだけの情報を提供されていなかったという事情の下で、当該記事を削除する条理上の義務違反を理由とする不法行為の成立が否定された事例
(大阪地判令2・9・18)


労 働

〇会社従業員の過労死について会社の債務不履行責任に加えて一部の取締役の会社法429条1項所定の責任が認められる一方、5割の過失相殺の類推適用が認められた事例
(東京高判令3・1・21)


刑 事

〇1強盗殺人罪の訴因について殺人罪及び窃盗罪で有罪とした1審判決を破棄して被告人を無罪とした控訴審判決が最高裁判決によって破棄された後の差戻審において、被告人の犯人性を肯定するとともに、強盗殺人罪の不成立につき事実誤認があるとして1審に差し戻した事例(①事件)
▽2前記の差し戻された事件につき、被告人に対して強盗殺人罪の成立を認めて無期懲役を言い渡した事例(②事件)
(①広島高判平31・1・24、②鳥取地判令2・11・30)──米子ホテル強盗殺人差戻審判決


◆判例評論◆

44 普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰と司法審査──岩沼市議出席停止処分事件
 (最大判令2・11・25)……野坂 泰司

45 不動産競売手続において建物の区分所有等に関する法律66条で準用される同法7条1項の先取特権を有する債権者が配当要求をしたことにより配当要求債権について差押え(平成29年法律第44号による改正前の民法147条2号)に準ずるものとして消滅時効の中断の効力が生ずるための要件
(最二判令2・9・18)……香川  崇

46 1 中学校におけるいじめによって自殺した亡生徒の自殺に係る損害につき、いじめ行為から「通常生ずべき損害」に当たるとして、いじめ行為との相当因果関係を認めた事例
  2 いじめによる自殺に係る損害賠償額につき、亡生徒は自らの意思で自殺を選択し、さらに金銭窃取という違法行為により自らを逃げ場のない状態に追い込んだという点で、両親も家庭環境を適切に整えることができず、亡生徒を精神的に支えることができなかったという点で、過失相殺の適用及び類推適用を基礎づける事情があると認定し、4割を減額した事例
(大阪高判令2・2・27)……齋藤  航

47 複数の暴行行為者の間に暴行途中から共謀が認められた場合における刑法207条適用の可否
(最二決令2・9・30)……杉本 一敏
◆記 事◆

特集 夫婦別姓問題の行方
 ⑷夫婦同氏制と憲法……大西祥世
 ⑸夫婦同氏違憲訴訟と「救済法」……上田健介

共犯論をめぐる近時の裁判例について
 第2回 共犯関係の解消をめぐる近時の裁判例について……小林憲太郎


◆書 評◆

木谷明『違法捜査と冤罪 捜査官‼その行為は違法です。』
評者……福崎伸一郎


◆判決録細目◆

行 政

▽原子力規制委員会がした発電用原子炉の設置変更許可が違法であるとされた事例
(大阪地判令2・12・4)


民 事

◎乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しHBe抗原陽性慢性肝炎の発症、鎮静化の後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害につきHBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例
(最二判令3・4・26)

〇マンションの外面に掲げられた横断幕・垂れ幕が隣地で建物を建設中の業者の名誉毀損に当たるとして業者が当該マンションの管理組合に対し損害賠償請求と横断幕等の掲示禁止請求をしたが、1審判決で棄却され、控訴審でも原審の判断が維持された事例
(大阪高判令2・9・10〈参考原審:大阪地判令2・2・28〉)

〇精神科病院に医療保護入院中に患者が急性肺血栓塞栓症で死亡した事故について、当該患者の身体的拘束が精神保健指定医に認められたその必要性の判断の裁量を逸脱して違法であるとして、医療側の過失を肯定した事例
(名古屋高金沢支判令2・12・16〈参考原審:金沢地判令2・1・31本誌2455号41頁〉)

▽医療法人の定款に、社員の資格喪失事由として退社等を掲げる規定及び同規定に「定める場合の外」社員は理事長の同意を得るなどして退社できる旨の規定がある場合において、社員が理事長の同意を得ることなく退社できると解することはできないとされた事例
(東京地判令3・6・7)


刑 事

◎自動車を運転する予定の者に対し、ひそかに睡眠導入剤を摂取させ運転を仕向けて交通事故を引き起こさせ、事故の相手方に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について、事故の相手方に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に、刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
(最二判令3・1・29)

▽警察官が逮捕・勾留中の取調べの際に当時19歳の少年であった被疑者(原告)に対してした発言が原告の黙秘権を実質的に侵害するものであり、警察官が原告に対する接見内容の聴取を行ったことが原告の接見交通権を侵害するものであると認められた事例
(熊本地判令3・3・3)


◆最高裁判例要旨(2021(令3)年10月分)
◆記 事◆

特集 夫婦別姓問題の行方
 ⑵2021年大法廷決定の行間……大河内美紀
 ⑶開かれた24条論に向けて ……志田 陽子

講話 民事裁判実務の要諦(2)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本 英史

共犯論をめぐる近時の裁判例について
 第1回 中立的行為による幇助をめぐる近時の裁判例について……小林憲太郎

情報をめぐる現代の法的課題⑺
 デジタル政策とプライバシー保護……宮下 紘


◆判決録◆

民 事 

◎民事訴訟法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合に、その弁済が前記部分に係る債権に充当されたものとして前記判決についての執行判決をすることの可否
(最三判令3・5・25)

〇遺言者が一切の財産を抗告人(長男)に相続させ、その相続の負担として、原審申立人(二男)の生活を援助するものと定めた遺言について、原審申立人が、遺言者の死亡後、「原審申立人の生活を援助する」義務を負ったのにこれを履行していないとして、前記遺言の取消しを求めた事案において、原審はこれを認め、前記遺言を取り消したが、抗告審においては、抗告人に「原審申立人の生活を援助すること」、すなわち、少なくとも月額3万円を援助する義務があることを認めた一方で、前記遺言の文言が抽象的であり、その解釈が容易でないこと、抗告人は今後も一切義務の履行を拒絶しているものではなく、義務の内容が定まれば履行する意思があることなどを考慮すると、抗告人の責めに帰することができないやむを得ない事情があり、前記遺言を取り消すことが遺言者の意思にかなうものともいえないとして、原審を取り消し、本件申立てを却下した事例
(仙台高決令2・6・11)

〇青空駐車場内の公道との出入口付近において発生した、駐車動作として後退中の自動車と公道から進入後停止中の後続自動車との衝突事故について、駐車場内の事故についての過失相殺率の標準的認定基準を適用すべきでないとされた事例(東京高判令3・2・10) 19
▽継続的に売買取引がなされていた場合において、売主である事業者が、その取引期間中に、買主の判断能力が相当程度低下している事実を認識し、又は容易に認識し得たものと認められるときには、前記事業者は、社会通念に照らし、信義則上、当該買主との取引を一旦中断すべき注意義務を負うとし、事業者に一定の損害賠償責任を認めた事例
(東京地判令2・1・29)

▽原告と被告との間において遺産分割未了の確認等をした調停調書が作成されている場合、遺産分割協議の不存在の確認を求める訴えは、同一事項を再度確認することを求める訴えとなるが、前記の調停成立後にも、同調停の効力自体を否定して遺産分割協議を拒否する被告の言動に照らし、同調停で決着したはずの遺産分割協議の有無をめぐる前提問題が再度蒸し返されて、後日予想される家裁の遺産分割手続が膠着する事態を防止する実益があるとして、確認の利益が認められた事例
(東京地判令2・12・17)

▽1 民事訴訟における主張立証活動は事実の公表を目的とする行為ではないが、訴訟記録が閲覧可能な状態に置かれることなどにより、結果的に公表と同様の効果をもたらすことがあるため、プライバシーの侵害の成否が問題となり得るところ、このような場面では、その事実を公表されない法的利益と当該主張立証活動に係る法的利益とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するとされた事例
 2 個人情報に係る事実を公表されない法的利益と民事訴訟における立証活動に係る法的利益とを比較衡量した結果、直ちに前者が後者に優越するとまでは認められないとして、不法行為の成立が否定された事例
(横浜地判令2・12・11)

▽ソリリスを投与中の患者が髄膜炎菌感染症に罹患し症状が急激に悪化して死亡したことについて、担当医に高熱、嘔吐等の症状から髄膜炎菌感染症を疑って速やかに抗菌薬を投与すべき義務を怠った過失があった等として、損害賠償責任を認めた事例
(京都地判令3・2・17)


労 働 

◎民法上の配偶者が中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者に当たらない場合
(最一判令3・3・25)


刑 事 

〇あおり運転をして普通乗用車を被害車両(二輪車)に追突させて、被害者を車両もろとも転倒させるなどして死亡させた事案につき、殺人罪の成立を認めて、被告人を懲役16年に処した原判決を是認した事例
(大阪高判令1・9・11)

▽保護処分歴のない少年が店舗で書籍等を2回にわたり万引きした窃盗保護事件で、経緯を踏まえると軽微な事案と評価することは相当ではなく、問題性が広がりを見せつつあり、資質面の課題が非行と強く関係し、根深いこと等を指摘し、第1種少年院送致とした事例
(東京家決令3・2・9)
◆記 事◆

講話 民事裁判実務の要諦(1)
 ──裁判官と代理人弁護士の方々へ……橋本英史

議会制民主主義のいま― 主権・選挙・代表を再考する(1)
令和元年参議院議員選挙における議員定数配分規定の合憲性……齋藤 暁


◆書 評◆

早稲田大学法務教育研究センター編『挑戦する法曹たち』
評者……古笛恵子


◆判決録細目◆

行 政

◎県知事が管弦楽団による演奏会に出席したことが公務に該当するとされた事例
(最二判令3・5・14)

〇非居住者が内国法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(租税特別措置法施行令(平成24年政令第105号による改正前のもの)39条の13第11項3号)を有しているものとして過少資本税制における「国外支配株主等」(租税特別措置法(平成24年法律第16号による改正前のもの)66条の5第4項1号)に該当するものとされた事例
(東京高判令3・7・7)


民 事

◎1 労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋内の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
 2 労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋内の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者のうち労働者に該当しない者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
 3 被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在しないことは、民法719条1項後段の適用の要件か
 4 石綿含有建材を製造販売した建材メーカーらが、中皮腫にり患した大工らに対し、民法719条1項後段の類推適用により、前記大工らの各損害の3分の1について連帯して損害賠償責任を負うとされた事例
 5 石綿含有建材を製造販売した建材メーカーらが、石綿肺、肺がん又はびまん性胸膜肥厚にり患した大工らに対し、民法719条1項後段の類推適用により、前記大工らの各損害の3分の1について連帯して損害賠償責任を負うとされた事例
──建設アスベスト訴訟神奈川ルート上告審判決
(最一判令3・5・17)

▽宗教法人の代表役員等の地位にあることの確認を求める訴えにおいて、信義に反する特段の事情があるとして辞任の申請の撤回を認めず、有効に住職を解任され代表役員等の地位を失っているとして請求を棄却した事例
(長野地判令2・11・27) 


労 働

▽有期労働契約の契約期間が通算5年10箇月、更新回数が7回に及んでいた労働者に対する雇止めにつき、労働契約法19条1号及び2号該当性がいずれも否定された事例
(東京地判令2・10・1)


経 済

▽通信販売事業者が自ら運営するウェブサイトにおいて商品を販売するとともに同ウェブサイトにおいて商品を出品し販売するための場及びこれに伴うサービスを提供する事業を営んでいる場合に、同ウェブサイト上の商品価格表示について当該販売事業者が不当景品類及び不当表示防止法5条の「事業者」に当たるとされた事例
(東京地判令1・11・15)


刑 事

〇1 ピンク歯が頸部圧迫による窒息死を示す所見であるとの法医学者の証言の証拠能力が肯定された事例
 2 ピンク歯が頸部圧迫による窒息死を示す所見であるとの法医学者の証言に依拠して被害者が頸部を圧迫されて窒息死したと認定した原判決に事実の誤認があるとして、原判決を破棄し、原審に差し戻した事例
(東京高判令2・12・10〈参考原審:東京地判令1・7・10〉)


判例評論

40 公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
 ──令和1年参議院議員選挙投票価値較差訴訟大法廷判決
(最大判令2・11・18)……佐々木雅寿

41 旧優生保護法違憲訴訟札幌地裁判決
(札幌地判令3・1・15)……植木 淳

42 任意後見契約法10条1項にいう「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」の意義
(高松高決令1・12・13)……神野礼斉

43 参議院(比例代表選出)議員の選挙について、いわゆる特定枠制度を定める公職選挙法の規定の合憲性
(最二判令2・10・23)……上神貴佳
◆記 事◆

最高裁刑事破棄判決等の実情──令和2年度──……内藤 恵美子


◆特 集◆

夫婦別姓問題の行方(1)夫婦別姓訴訟の到達点と今後──訴訟代理人の立場から……榊原 富士子


◆判例特報◆

民法750条及び戸籍法74条1号と憲法24条──夫婦同氏制合憲最高裁大法廷決定
(最大決令3・6・23)


◆判決録◆

行 政 

◎1 利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当はその全体が法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの)24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当するか
 2 法人税法施行令(平成27年政令第142号による改正前のもの)23条1項3号の規定のうち資本の払戻しがされた場合の当該払戻し直前の払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分の法適合性
(最一判令3・3・11)

▽児童養護施設に入所している児童と母親との面会の制限を行政指導により継続した措置が違法であるとして、県に対し慰謝料15万円の支払を命じた事例
(宇都宮地判令3・3・3)


民 事 

▽人材紹介取引契約に基づく紹介手数料の支払請求が認められた事例
(東京地判令2・11・6)


労 働

▽被告との間で雇用期間を1年とする有期雇用契約を締結し、その後4回にわたり契約を更新した後、当初の雇用契約から5年の期間満了により雇止めされた原告が、当初の雇用契約には、雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない旨の不更新条項が付されていたものの、同条項は労働契約法18条の無期転換申込権を回避しようとするもので無効であり、原告には雇用継続の合理的期待があったなどと主張し、雇止めが無効であるとして争った事案につき、原告の同主張を排斥し、雇用の継続を期待することについて合理的な理由があるとは認められないとした事例
(横浜地川崎支判令3・3・30)


刑 事 

〇身体の拘束を受けていない被疑者の弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者が、任意の取調べを受けている被疑者との間で立会人のない接見の申出をした場合に、その事実を告げないまま任意の取調べを継続する捜査機関の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
(東京高判令3・6・16)

〇少年が、共犯少年と共謀の上、被害者の背部を飛び蹴りして転倒させるなどして金品を強取し、負傷させたという強盗傷人保護事件において、少年を第1種少年院送致とした原決定につき、在宅処遇の可能性を慎重に検討しておらず、処分が著しく不当であるとして、これを取り消した事例
(福岡高決令3・1・7)

▽空港で税関職員が行う機内預託手荷物の検査において旅客のスーツケースを解体することは、行政調査手続であっても実力の行使にわたり、その強制が刑事手続と密接に関連し、裁判官の令状がなければ許されないものであるとされた事例
(千葉地判令2・6・19)
◆記 事◆

特集 岡口判事弾劾裁判における憲法上の問題点
 ①裁判官弾劾制度の意義・概要・課題
  ──令和3年(訴)第1号罷免訴追事件に関連して……柳瀬 昇

 ②裁判官の表現の自由……市川正人

 ③表現活動を理由とする裁判官への懲戒・弾劾の問題性……毛利 透

 ④裁判官弾劾制度少考
  ──岡口基一裁判官の訴追を契機として……渡辺康行


◆判決録細目◆

行 政

◎特別区議会議員選挙に係る当選人甲の当選無効の決定の取消しを求める請求及び同決定に対する審査の申立てを棄却するとの裁決の取消しを求める請求と当選人乙の当選無効を求める請求とでは訴えで主張する利益が共通であるとはいえないとされた事例
(最三決令3・4・27)

〇同族会社がその属する国際的な企業集団の組織再編の一環として当該企業集団に属する外国法人からした金銭の無担保借入れが、法人税法132条1項にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たらないとされた事例
(東京高判令2・6・24〈参考原審:東京地判令1・6・27〉)


民 事

◎建材メーカーが、自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者に対し、前記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたとはいえないとされた事例──建設アスベスト訴訟大阪ルート上告審判決
(最一判令3・5・17)

◎1 電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者と民事訴訟法197条1項2号の類推適用
 2 電気通信事業者は、その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名、住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され、又は記録された文書又は準文書を検証の目的として提示する義務を負うか
(最一決令3・3・18)

〇ゴルフ練習場の敷地の賃貸借契約について建物所有目的であるとして借地借家法の適用が肯定された事例
(名古屋高金沢支判令2・9・30〈参考原審:金沢地判令2・3・30〉)

〇貸付債権者が債務者から砂利採取事業の譲渡を受け、事業収益から多額の顧問料の支払と貸付返済を受けて債務者が事業を買い戻す契約を締結し、同契約による利益を実現しようとしてされた破産手続開始の申立てが、不当な目的でされたものと認められた事例
(仙台高決令2・11・17〈参考原審:仙台地決令2・9・14〉)

▽トンネル建設工事につき、設計業者が構築物の安全性に関する説明義務を怠ったために損害が発生したとして、設計業者の不法行為責任を認めたが、発注者である地方公共団体にも十分な確認や検討を怠った注意義務違反があり、その程度は重大であるとして、8割の過失相殺をした事例
(大阪地判令3・3・26)


労 働

▽被告法人の経営する保育園で勤務していた保育士が自殺したことについて、業務と自殺との因果関係及び被告法人の安全配慮義務違反を認めて、遺族の損害賠償請求を一部認容した事例
(長崎地判令3・1・19)

▽消極的な合意に至ることが期待できなかった口外禁止条項を付した労働審判は、手続の経過を踏まえたものとはいえず、労働審判法20条1項及び2項に反するものといえるが、当該審判に違法又は不当な目的があったとはいえないとされた事例
(長崎地判令2・12・1)


◆最高裁判例要旨(2021(令3)年6・7・8・9月分)
◆記 事◆

特集 津島ふるさと訴訟 第一審判決を受けて
 ①「除染なくして稼働なし」原則の確立に向けて……大塚 正之

 ②ふるさとを返せ津島原発訴訟第一審判決……山田 勝彦

 ③「農村のことは先ず農民自らに聴かねばならぬ」……関 礼子

 ④原発事故が奪った「地域の価値」……除本 理史

コロナ禍社会における法的諸問題(18)
 コロナ禍において民主主義社会の友愛の政治理念を考える……鬼頭 季郎


◆判決録◆

行 政 

◎医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律36条の6第1項及び3項と憲法22条1項
(最一判令3・3・18)


民 事 

◎相続人YがAの遺産について相続分を有することを前提とする前訴判決が他の相続人Xとの間で確定し、また、XがYに対してAのXに対する債務をYが法定相続分の割合により相続したと主張してその支払を求める訴えを提起していた場合において、Xが自己に遺産全部を相続させる旨のAの遺言の有効確認をYに対して求める訴えを提起することが信義則に反するとはいえないとされた事例
(最二判令3・4・16)

▽1 被告国及び被告東電に対し、平成23年3月11日に発生した福島第一原発の事故により放射能に汚染された福島県双葉郡浪江町津島地区全域について、放射線量を低下させる義務のあることの確認を求める訴えが棄却され、放射線量を低下させることを求める訴えが却下された事例
 2 経済産業大臣が、福島第一原発について平成18年までに発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和40年通商産業省令第62号)4条1項の基準を満たしていないことを理由とする技術基準適合命令を発しなかったことは、法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであり、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
 3 被告東電に故意に匹敵するような重大な過失があったとは認められず、被告東電の悪質性を慰謝料の増額事由として考慮することはできないが、前記津島地区に居住する原告らが抱く被ばくの影響に対する不安は、慰謝料の算定に当たって考慮すべきであるなどとして、被ばく慰謝料を請求している原告について基本額として1人1600万円を認めた事例
 4 被告東電から基本額を超える額の支払を受けた原告については、被告東電と当該原告との間で、個別事情を考慮して上乗せした賠償額を被告東電が支払う旨の合意が成立したと認めた事例
(福島地郡山支判令3・7・30)


◆判例評論◆

37 1 許可認可等臨時措置法(昭和18年法律第76号)及びその委任を受けた都市計画法及同法施行令臨時特例(昭和18年勅令第941号)に基づき内閣の認可を受けることなく行われた旧都市計画法(大正8年法律第36号)に基づく都市計画決定が違法であるとはいえないとされた事例
  2 関東地方整備局長が行った道路の整備に係る都市計画事業の認可が、その前提となる都市計画決定後の社会・経済情勢の変化との関係において違法であるとはいえないとされた事例
(東京地判令2・2・27)……三好 規正

38 人身傷害補償保険会社が、被害者の同意を得て加害者の加入する自賠責保険金を回収した場合において、これを加害者の被害者に対する弁済に当たるとして、損益相殺を認めた事例
(福岡高判令2・3・19)……山下 典孝

39 均等侵害に基づく多機能品型間接侵害の成否と差止め及び損害賠償の範囲
(大阪地判令2・5・28)……横山 久芳
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