MAMOR(マモル)の編集長インタビュー

編集長プロフィール

扶桑社
「MAMOR(マモル)」編集長 高久裕さん

たかくゆたか 日之出出版、ダイヤモンド社を経て、1987年に扶桑社に入社。「ESSE」編集、「Caz」副編集長、「SPA!」副編集長、「エッセ・パパ」編集長、「Caznet」編集長、「e-ESSE」編集長を歴任後、現カスタム出版で現職

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第76回 MAMOR(マモル) 編集長 高久裕さん

この国、われわれを、守ってくれている人たちの現実を知って欲しい

――創刊5周年ですね。おめでとうございます。

編集部のある扶桑社からは海が見渡せる
編集部のある扶桑社からは海が見渡せる

ありがとうございます。当初、防衛省と4年契約で始めたものですから、昨年また入札があって、無事続けることができるようになりました。今度は5年の契約です。

――防衛省の広報誌といっていいのでしょうか。それとも準広報誌というのがふさわしいのでしょうか。むかし防衛庁が出していた「セキュリタリアン」という広報誌がありましたが、この「MAMOR(マモル)」とはどう違うのですか。

はい、防衛省の広報誌と言って下さって結構です。むかし防衛弘済会が出していた「セキュリタリアン」は、一般書店に置かれるものでもなかったものです。それに対してこの「MAMOR(マモル)」は、広報誌とはいえ、扶桑社という一般の出版社が発行する一般雑誌として広く全国で販売されています。日本の防衛について、自衛隊の内部について、広く世の人に知ってもらうために我々は編集しています。

――なぜ、この広報誌を扶桑社さんが出すことになったのですか。

7年前に扶桑社の内部にカスタム出版いう部門ができ、私も配属されて、どこの企業と組んで雑誌を出そうかと考えていたころなんです。私はカスタム出版なんてやったことがなかったのですが、以前、自衛隊の取材をしたことがあったことを思い出し、組むなら大きいところがいいだろうと防衛庁(当時)の代表電話に電話して(笑)、企画趣旨を話すところから始めたんです。
防衛省内部でも、ちょうど広報誌の編集を民間に委託しようという動きがあって、タイミング的にはちょうどよかったんですね。
企画競争入札があって、運良く我々が勝ち残った。よく扶桑社だから出してるんだろう、という人がいますが、全然違うんです。本当に一から、それも何もないところから始めた雑誌なんですよ。制作費の見積りの出し方も知らなかったくらいですから(笑)。

――面白い雑誌ですよね。こういう特殊な世界を一般にもわかりやすくするには、雑誌っていいツールですね。編集も楽しそうな気がする。

編集部は高久さんひとり。あとは外部での作業
編集部は高久さんひとり。あとは外部での作業

そうですね。実際、扶桑社では編集は私一人が担当し、あとは外部のプロダクションと作業をしています。これまでいろいろなジャンルの雑誌を編集してきた経験を活かせて、やりがいはありますね。確かに雑誌の特性が活かせるひとつの道だと思います。

――コンセプトは「自衛隊のことを広く知らしめる」ということでいいんですか。

最初は、老若男女に広く自衛隊の活動を広報したいということでした。ただ、ご承知のように、雑誌ってターゲット・メディアじゃないですか。ですから、老若男女といわれても・・・(笑)。ですから、昨年の入札で、続けてやれることになったとき、ターゲットは青少年に重点を置くといういうことに変わりました。
いま読者の平均年齢は約36歳です。もちろん男性が多いですね。

――あ、でも名物企画になった「婚活」のページなどは、あきらかに女性狙いですよ。現役自衛官の顔写真、プロフィールとなんと年収まで出てる(笑)。

名物企画の婚活
名物企画の婚活

「マモルの婚活」ですよね、あれはそうですね。お蔭様で、たくさんのメディアにも取り上げていただき、好評をいただいてます。あれで女性読者が増えました(笑)。
でも、女性に読んでいただけないとやはりダメですからね。

――そうですね。でもいい企画。表紙もいいですね。ミリタリー好きにも、制服フェチにもいろいろ受けそう(笑)。

これは定番ですね。やはり若い人に手にとってもらうための雑誌の顔ですから。最近のタレントさんって皆さんブログとかやっておられるでしょう。表紙の撮影が終わってから、女たちは写メ撮ったりして、それを自分のブログに上げるんですよ。そうしたらそれを見てるファンたちが、こぞって雑誌を読んでくれるんです。「何これ、え~自衛隊ってこんなことやるの~」みたいな感じで興味を持ってくれて、読んでくれる。雑誌からではなく、こういう流れで読みに来てくれる。これが新しい読者の獲得の仕方なんだと学びましたね。
ミリタリーオタクには専門誌があり、アイドルオタクにも専門誌があって、お互い重なっているところもあるのですが、うちが強いのはホンモノの自衛官の制服を着たアイドルが登場するということ(笑)。

――なるほど、他では手に入らないレアアイテム(笑)。

タレントさんの場合は、事務所と防衛省のチェックが必要になる
タレントさんの場合は、事務所と防衛省のチェックが必要になる
歴代の表紙モデルのカレンダーが飾られていた
歴代の表紙モデルのカレンダーが飾られていた

イミテーションのミリタリー衣装を着たアイドル写真は手に入っても、本物を着たアイドル写真は他では見れません。これは絶対に強いです(笑)。
これも、そういった専門誌とはちょっと違った角度で見てもらうための方法でもあるのですが。

――広報誌という以上、防衛省のネガティブな部分とかは出しにくいですね。軍事上の機密もありましょうし。

そうですね、それは限界がありますし、これは“報道”ではないですからね。撮影のときも撮影禁止箇所とか、入れない場所は当然あります。
雑誌の企画段階から防衛省の広報の人が立ち会いますし、取材にも同行します。もちろん記事チェックもありますし、それは広報誌である以上、そういうものですね。

――自衛隊ってなかなか一般的には分からない世界ですが、どういう面を紹介すると読者に喜ばれるのでしょう。

やはり一般のニュースに登場しない世界だと思います。実際、自衛隊って24時間何やってるんだろうって思ってる人は多いと思います。
でも見えないところで本当に一生懸命頑張っているんですよ。レーダーで探知する役割の人は、窓のない暗い部屋で一日中、画面を見続けるわけですし、スクランブル発進だって毎日何回もある。とくに震災で弱った日本の領空にに、その防衛能力をチェックするかのようにロシアや中国の飛行機が、頻繁に近づいてきます。それに対してこちらから警告を発しなければならない。まさに体を張って仕事をしているわけですよね。そんな人たちの活動をやはりしっかり知って欲しいでね。

――日本の自衛隊って本当にモラルが高く優秀だということは言われ続けてきましたが、今回の大震災でそれがよりはっきりしましたね。

あれは、本当にすばらしかったですね。寒い中、自分たちは何日も風呂も入らず、捜索活動をやる。救助した人にはちゃんと風呂に入ってもらい、暖かい食事も出してあげる。そして自分たちは毎日冷たいカンヅメですからね。
私もその姿をみて感動しましたし、あと、もっとすごいなと思ったのは、瓦礫しかない被災地には当然トイレもありません。私は、そこらの人目のつかない場所で用を足すのかと思ってたらそうじゃない。自分たちのトラックに、段ボール箱にビニールシートを敷いた簡易トイレをつくって、そこで済まして、溜まった排泄物は、駐屯地に持って帰るんです。非常時なんだから外でしてもいいのでは? と訊いたら「いや、ここはついさっきまでここに暮らす人のご自宅で、ここが居間だったかもしれないからできないですよ」といった答えが返ってくるわけです。

――私も自衛隊の人と接してそれに似た経験をしたことがあるのですが、とにかくモラルというか、公の気持ちというか、レベルが高いなと思うんです。なんでなんでしょうね。

海外派遣活動をする自衛隊は、海外でも、文句を言わず期日を守る熟練された人たち、という評価なんですね。これが日本人のすごさなんだと思います。第二次大戦後、この国から軍隊を失くさせた戦勝国はそういった日本人のすごさを恐れたのでしょうね。
吉田茂がかつて防衛大学校の卒業生に向かって、「君たちは日陰ものたれ」と演説したといいます。自衛隊はそういう位置に置かれ、後輩は先輩からのその教えを守った。あえて表に出ない態度。それと教育ですかね。ゆとり教育の正反対といいますか、当たり前のことを理屈じゃなく当たり前のこととして教える。そんな世界があの基地の中で生き続けている。まるでサンクチュアリのように守られているんだと思います。古き良き日本人が持っていたすばらしい世界が残されていて、それが、3・11以降、どっと被災地や町中に出てきたわけです。

――若い人たちもあの自衛隊の人たちの活動を見て感動したと思うし、自分たちも、できることはやろうという気になったと思います。勇気を与えてくれましたね。

そうですね。ですから、教育って本当に大事だと思いますね。この雑誌では、そんな自衛官の素顔をたくさんの人にみていただけたらと思っています。知らないところで日夜、体を張って国をわれわれの安全を守ってくれている人がいるんだぞということを知ってほしいですね。戦闘機や護衛艦の専門誌ってたくさんありますが、「MAMOR(マモル)」は“国を守る人間”の専門誌でありたいです。

――読者から、こんな企画やってほしいといった要求はありますか。

ハードな練習を特集してほしいとか、防衛大学の学生の生活を知りたいとか、タレントを訓練に入れて疑似体験したいとか、いろいろあります。企業研修で自衛隊に入るというのは人気が高いんですよ。

――やろうとしてやりにくい企画とかありますか。

編集部脇の本棚
編集部脇の本棚


若い自衛官の恋愛事情ですね(笑)。これはぜったい面白いですよ。だって自衛官25万人いて、そのうち女性は5%ですから、いろいろありますよ。でも企画通らない(笑)。あと、自衛官100人に聞きましたという類の自衛官の本音トーク集(笑)。
ドラマやマンガになるようなネタ・・・。でも、人間の弱さを描いてはじめてカッコイイっていえる話ができると思うんです。最前線に出るのは誰だって怖い、でも行くんだ、みたいな。

――高久さん自身いろいろ雑誌を経験されていますが、この雑誌をやってよかったと思えることは何ですか。

私はかれこれ30年ほど、この業界にいてさまざまなジャンルの雑誌をつくってきました。ですから、読者ターゲットが変わっても、楽しんで雑誌作りができるのですが、やはり「MAMOR(マモル)」で思ったのは、楽しいだけではなく、国を守る仕事の一助を担えたかなということでしょうか。
自衛隊員の新人って、ちょうど自分の子供世代なんですよ。そんな若い人たちが、自らの命をも投げ出して自分たちを守ってくれている現実。これは応援したいし、知ってもらいたい。そんなお手伝いを少しでもできているとすれば、編集者冥利につきます。

編集長の愛読誌

(2012年01月)

取材後記
むかし「スタジオボイス」で自衛隊をまるごと特集した号がありました。たまたま友人が編集していたこともあり、面白く読んだ記憶があるのですが、尖がったカルチャー誌やファッション誌や、サブカル誌なんかがこのサンクチュアリを特集すると、切り口が新鮮なので面白いものができますね。
「MAMOR(マモル)」は、専門誌、広報誌でありながら、さすが、高久編集長の長年のキャリアとセンスがうまく活かされていて、「SPA!」の別冊かと言われても通りそうな出来になっています。良くも悪くも日本でなきゃ成立しないかな、と思わせるつくりも面白い。韓国あたりが真似するといいかも、という話をしていたら、中国軍が高久さんに「MAMOR(マモル)」の話を聞きにきたことがあるとか。人民解放軍も自らをポップに見せようとたくらんでいるのでしょうか。
こういうコアでニッチな専門誌は、一般的な雑誌の手法で、まだまだ面白くできるものがあるんでしょうね。雑誌の可能性のひとつを見た気がしました。

インタビュアー:小西克博

大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で「GQ」日本版の創刊に参画。 「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に「遊覧の極地」など。

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