オルタナ 発売日・バックナンバー

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■編集長コラム「alternative eyes」:中央集権型エネルギーの呪縛
オルタナ本誌78号をお届けします。今号の第一特集は「日本のGXはガラパゴス」です。日本政府は水素やアンモニアを軸とした「GX」を推進しています。世界的な脱炭素の流れと逆行し、ガラパゴス化する日本のGX政策をまとめました。

■高橋さとみの切り絵ワールド―人生はまわる

■第一特集: 日本のGXはガラパゴス
日本のGX(グリーントランスフォーメーション)政策が、世界の「脱炭素」潮流と大きく乖離(かいり)してきたことが際立ってきた。その極致は、「ゼロエミッション火力」だ。石炭火力発電の継続利用を前提とし、アンモニア混焼・専焼を推進する。海外のNGOからも批判が高まるが、日本政府はどこ吹く風だ。なぜ日本のGXはこれほど「ガラパゴス」なのか。

GXガラパゴス、5つのポイント
平田仁子・一般社団法人クライメート・インテグレート代表理事

GX政策はどこがガラパゴスなのか。気候政策シンクタンクの一般社団法人クライメート・インテグレートの平田仁子・代表理事が、GXの5つの論点を語った。パリ協定の「1.5℃目標との整合性」や「ゼロエミッション火力の削減効果」などだ。

化石燃料の延命、アジア各国で狙う
日本政府は「アジア・ゼロエミッション(AZEC)共同体」構想を掲げ、日本国内のみならず、アジア各国でも火力発電のアンモニア・水素混焼を推進する方針だ。8月にはインドネシア・ジャカルタに新たな拠点を構えた。これに対し、現地の環境NGOなどは「化石燃料の延命措置に過ぎない」と批判を強める。

日本の炭素賦課金、炭素税に程遠い
小林光・オルタナ客員論説委員/元環境事務次官

日本政府が進める「成長志向型カーボンプライシング構想」の一環で、2026年度から排出量取引、2028年度から炭素賦課金などを導入する予定だ。だが、その実効性は不十分との見方もある。1990年代から炭素税導入に取り組んできた元環境事務次官の小林光氏に寄稿してもらった。

原発への回帰は脱炭素を遅らせる
大島堅一・龍谷大学政策学部教授

政府はGXにおいて原子力発電を「脱炭素電源」と位置付け、再稼働・新増設・新型炉の開発を進めようとしている。しかし、最近の研究では「原発を推進してもGHGは減らない」ことが明らかになった。原発回帰は脱炭素に貢献せず、かえって気候変動対策を停滞させると言わざるを得ない。

■トップインタビュー: パーパスの推進に役職は要らない
不動奈緒美・ボルボ・カー・ジャパン社長

ボルボ・カー・ジャパンの不動奈緒美社長は、「パーパスドリブンな組織には、役職は要らない」と言い切った。2023年8月に社長に就任すると、真っ先に行った施策が「役職の廃止」だ。生命保険会社出身の新社長は、業界の「常識」にとらわれない。

■トップインタビュー: SDGsへの貢献、パーパスで実現へ
上田健次・ユニ・チャーム上席執行役員 ESG本部長

ユニ・チャームは、同社のパーパス(存在意義)を「SDGsの達成に貢献する」とし、事業活動を通して持続可能な社会を追求する。企業が、国際目標であるSDGsそのものをパーパスに揚げるのは珍しい。その狙いを聞いた。

■トップインタビュー: α世代の価値観で社内を変えたい
松江朝子・I-ne(アイエヌイー)執行役員 CSuO

ヘアケアブランド「ボタニスト」などを手掛けるアイエヌイーは2020年に上場してから4期連続で増収増益を続ける。急成長中の同社がサステナビリティを推進する理由は、健全な危機感を持つためだ。Z世代より若いα(アルファ)世代の声を聴くことが効果的だと言う。

■世界のソーシャルビジネス
[ウクライナ]木を切ることなく、葉から紙を作る

ウクライナ発の新興企業、リリーフ・ペーパー社は、木を伐採することなく、都市が回収した落ち葉を原料に紙を作る。同社の紙製品は、すでにロレアル、LVMHなどの大手企業も採用し、欧州で順調に顧客層を拡大している。

[ベトナム]少数民族が企画、山岳地帯の旅

ベトナムでは人口の約14%を少数民族が占めるが、貧困や教育などさまざまな課題に直面している。そうしたなか、黒モン族のスー・タンさんは、ベトナム北部の山岳地帯サパで、社会貢献を目的にした旅行会社を立ち上げた。少数民族のホームステイやトレッキングサービスを提供する。

[米国]子ども服の交換会、再利用を進める

米ニューヨークで生まれた、子ども服のアップサイクルプラットフォームが話題だ。創業者は、子どもの成長に伴い各家庭が大量の子ども服を廃棄している点に着目した。「親の視点」を社会課題の解決に生かした。

■第二特集: 2030年には原発稼働不可能に
岸田首相は8月の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、「残された任期の間に東日本における原子力発電の再稼働に筋道をつける」と前のめりの姿勢を見せた。しかし、その裏には2030年ころには原発稼働ができなくなるという深刻な問題が見え隠れしている。

■第三特集: ハリス対トランプ、気候政策の違い
11月の米国大統領選で民主党候補のカマラ・ハリス副大統領と共和党候補のドナルド・トランプ前大統領は、気候変動に関して対極の公約を展開している。どちらが勝利するかは我々の生活にも大きな影響がある。2人の大統領候補の気候政策の違いを見る。

■第四特集: AI運用の課題、環境と人権に
米グーグルと米マイクロソフトは、年間の温室効果ガス(GHG)排出量が4-5割増加したことを相次いで公表し、AI(人工知能)運用に伴う環境負荷の高さが露呈した。アルゴリズムがもたらす差別など、人権面での課題も多い。AIは持続可能な社会の実現に寄与するのだろうか。

■第五特集: 英国250年ぶり、石炭に「終止符」
英国は2024年9月末、同国最後の石炭火力発電所を閉鎖する。1776年にジェームス・ワットが蒸気機関を実用化し、後の産業革命へと導いてから250年余り。産業革命の先駆けが自ら石炭に終止符を打つことで、世界のエネルギー政策に大きな影響を与えよう。

■サステナブル★セレクション2024
「サステナブル★セレクション」とは、サステナブルな理念と手法で開発された製品/サービスを選定して、オルタナが推薦する仕組みです。一つ星は製品/サービスの持続可能性を審査し、二つ星はこれに加えて組織のサステナビリティを審査します。2024年の一つ星は43点、その内二つ星は13点を選定しました。三つ星は、2024年10月に発表いたします。今年2回目の一つ星公募は11月〜12月中旬を予定しています。

■オルタナティブの風(田坂広志) 「民主主義の自殺」と人類の未来
「賢明な国民がいない国に、賢明な国家リーダーは生まれてこない」。「ポピュリズム」(衆愚政治)が生まれる真の原因は、大衆迎合的な政策を振り撒く政治家ではなく、それを安易に受け入れる私たちの側にあるのかもしれません。

■エゴからエコへ(田口ランディ) AI時代に必要な「手のぬくもり」
コロナ禍は過ぎても、あまりの暑さに体調不良に悩む人が増えています。このほど、「ハンドマッサージ講座」を受講してみました。リラックスできるとともに、絆を深め合う効果も。CSRの一環にもいいかもしれません。

■ESG情報開示最前線(ESG情報開示研究会)
トップの語り軸に情報整理を(原田径子)

第一三共では、トップの想いや人柄が伝わるように、報告書全体で価値創造ストーリーをつくっています。重視するのは、「一貫性のあるストーリー」です。

社員にも「課題」を語らせよ

24年度版の統合報告書では、最重要資本である「人」に焦点を当て、「社員」の登場回数を増やしました。社員が持つ「課題」がどのようなものか、生の声で伝達することを狙いました。

■真のサステナビリティ投資とは(澤上篤人) 預貯金の3%を経済の現場に
日本には1012兆円という大量の個人マネーが預貯金に眠っています。その一部を動かすだけでも、日本経済はいくらでも活力を取り戻せます。

■モビリティトピックス(島下泰久)
スズキ、100キロ軽量目指す/ホンダと日産、協業の行方は/国内メーカーは「2陣営」に再編へ/BYD、BEV市場の旋風に

■モビリティの未来(清水和夫) 自動運転、米中に遅れるな
米サンフランシスコをはじめ、中国の北京や上海でロボットタクシーが走り始めています。自動運転の「現在地」をレポートします。

■農業トピックス(オルタナ編集部)
農産物の環境負荷を「見える化」/デンマーク、畜産に炭素税導入へ/アマゾン破壊に補償5千万ドル/生協と日芸「食料自給」を学ぶ

■日本農業 「常識」と「非常識」の間(徳江倫明) 70年前はすべて有機だった
ドキュメンタリー映画「食べることは生きること――アリス・ウォータースのおいしい革命」をぜひ見てください。私たちは再び有機農業に戻ることができるはずです。

■林業トピックス(オルタナ編集部)
住林などが米で7階建て木造ビル/セブンが店舗の木材活用進める/森林・林業白書、花粉と森林に焦点/コーヒー豆の森林破壊ゼロへ

■「森を守れ」が森を殺す(田中淳夫) 森林が温暖化ガスの発生源に
夏の高温と日射が強すぎると、スギが光合成できなくなる恐れがあります。一方でCO₂排出は増える可能性があり、森林が温暖化ガスの発生源になりかねません。

■漁業トピックス(オルタナ編集部)
クロマグロ資源量回復10倍に/スシロー、磯焼けウニを活用へ/サンゴの73%がすでに死滅/「海のエコラベル」認知度22%

■人と魚の明日のために(井田徹治) ハイチのウナギ、日本の食卓へ
アメリカウナギの稚魚(シラスウナギ)の輸入量が急増しています。ハイチでは密猟が横行しており、日本人の大量消費は、ウナギの絶滅につながりかねません。

■フェアトレードトピックス(潮崎真惟子)
人気スパイス、4割を「認証」に/金融機関の「人権DD」を問え/奴隷状態の労働者、イタリア農村で

■フェアトレードシフト(潮崎真惟子) 社内の推進体制、初の格付け
フェアトレード・ジャパンは、新たな企業登録制度として「フェアトレード・ワークプレイス」を開始しました。社員のサステナビリティ意識の向上にもつながるものです。

■ファンドレイジングトピックス(宮下真美)
千人超で資金調達の潮流探る/能登半島支援、代理寄付じわり/「Bコープ認証」、世界で8千社超に/資金調達者が描くキャリアは

■社会イノベーションとお金の新しい関係(鵜尾雅隆) 子どもの未来をどうつくるか
若者たちが、続々と新たな教育サービスを立ち上げています。日本ファンドレイジング協会も、カードゲーム「フロムミー」を用いて、SDGsと寄付教育を教育現場に浸透させていきます。

■廃棄物・静脈物流トピックス(エコスタッフ・ジャパン)
タイヤ電池搭載の街路灯を実証/砂問題を解決するテトラポッド/太陽光パネルのリユース目指す/官民連携で廃棄おむつの循環へ

■論考・サーキュラーエコノミー(細田衛士) 静脈市場は「鶏が先か卵が先か」
6月末に経済産業省が発表した「循環経済の実現に向けた中間とりまとめ(案)」が物議を醸しています。事業者に再生プラスチックの利用計画の策定を義務付けるというものです。

■欧州CSR最前線(下田屋毅) 自国の食文化を見つめ直す
デンマークのロラン島で開催された「食の国民会議」に参加しました。デンマークの国民が、自分たちの食について話し合って決めていく会議です。当地のようすをレポートします。

■CSRトピックス(CSR48)
ヤクルト、メルカリでリユース/生成AIをカスハラ対策に/開示のESGから戦略のESGへ/ファミマがパラアートのハンカチ/インクルーシブへの学びを深める/ラポールヘア、タイで女性支援へ/[総監督のつぶやき](CSR48・太田康子)「虎に翼」から80年を経て

■「こころざし」の譜(希代準郎) アマゾンの七夕
アマゾン奥地にヘリコプターでたどり着いた。安くはなかったが、体が動けるうちに、かつてゴールドラッシュに沸いた露天掘りの金鉱山セーハペラーダにどうしても行かなくてはならない理由があった。
オルタナ77号(2024年6月発売)全コンテンツ

■編集長コラム「alternative eyes」:ESGは社会を分断させるか
オルタナ本誌77号をお届けします。今号の第一特集は「米大統領選の行方とESG(環境・社会・ガバナンス)」です。一見、両者は何の関係も無いように見えがちですが、そうではありません。その証左は、本誌今号15ページにある通り、「ドナルド・トランプ大統領候補の公約」に見て取れます。

■高橋さとみの切り絵ワールドーお天気次第

いつも晴れというわけじゃない
晴れれば良いというものでもない
どんなお天気でも楽しく暮らそう

■第一特集: 米大統領選の行方とESG

米国で、共和党による反ESG(環境・社会・ガバナンス)の圧力が増している。その背景には、2024年11月の大統領選挙を控え、共和党と民主党の熾烈な「つば競り合い」がある。トランプ候補は公約で、「急進左翼のESG投資から米国人を守る」とまで言い切り、「再びパリ協定から脱退する」ことを明言した。そうなると各国の脱炭素や人権政策にも大きな影響は避けられない。

日本の金融行政、反ESGに動じない(池田賢志・金融庁CSFO)
米国では反ESGの動きが増す一方で、ESG投資への影響は限定的であり、サステナビリティに向かう流れは変わらないとする見方もある。日本の金融行政に影響はあるのか。池田賢志・金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー(CSFO)に聞いた。

ESGは踊り場、インパクトを問え(金井司・三井住友信託銀行 フェロー役員)
2006年に発足した国連責任投資原則(PRI)によって、ESG投資残高は急激に伸びてきた。金井司・三井住友信託銀行・フェロー役員は「市場拡大のペースが異常だった」と指摘する。ESGを巡る投資の動きは「踊り場を迎えた」とし、「インパクト」が次の潮流だと話す。

トランプ再選も脱炭素は後退せず(細井レイナ・インフルエンスマップ)
トランプ候補が再選すれば反ESG政策が進み、米国のパリ協定再脱退の可能性さえ囁かれる。「そうなっても世界の気候変動地策に与える影響は限定的。企業はアドボカシーを通してさらに実効性のある脱炭素を求められる」。グローバルな独立系シンクタンク・インフルエンスマップの細井レイナ・シニアアナリストは、こう指摘する。

「もしトラ」現象、どこでも起きうる(水口剛・高崎経済大学学長)
「社会がサステナブルであり続けるか、潮目を迎えた」。高崎経済大学の水口剛学長はこう言い切る。どの国も格差の拡大によって、自国主義に陥る可能性があるとし、外部不経済を社会全体で削減し、ジャストトランジションを考えることが重要と訴えた。

■トップインタビュー: 「極端な需要」が社会ニーズをつかむ
瀬戸 欣哉・リクシル社長
サステナ経営には、アウトサイド・イン(社会課題の解決を起点にしたビジネス創出)の考えが重要だ。リクシルは10ドル以下のトイレなど環境・社会課題の解決を起点に製品を企画する。瀬戸欣哉社長は、「極端な需要が社会ニーズをつかむ」と言い切る。

■トップインタビュー: LGBTQ教育で旅の課題を解決へ
ローラ・ホールズワース・ブッキング・ドットコム副社長
チェックイン時の性別確認など、LGBTQ当事者が旅行中に抱える課題はさまざまだ。世界最大級の旅行予約サイトを運営するブッキング・ドットコムは、宿泊施設に対し、LGBTQに関する教育プログラムを提供する。ローラ・ホールズワース副社長に、その狙いを聞いた。

■トップインタビュー: 「水と生きる」が自然を守る原点に
藤原正明・サントリーホールディングス常務執行役員
サントリーグループは使った水の量以上に自然に還元する「ウォーター・ポジティブ」やペットボトルの水平リサイクルなどに力を入れる。活動の原点は、「水と生きる」だ。この言葉はサステナ経営の推進においてどのような役割を果たすのか。

■世界のソーシャルビジネス
[スペイン]海中漁網を家具に、7千人の漁師動く
スペイン南部のスタートアップ、グラビティ・ウェーブは、海に沈む漁網や漁具などのプラスチックを回収し、デザイン性の高い家具にして販売する。「プラスチックのない海」を目指すミッションの実現に、企業120社と漁師7千人が動いた。これまでに回収したプラ廃棄量は500トンを超える。

[日本]視覚障がい者も使いやすいスマホ
スマートフォンは、弱視や全盲など視覚障がいがある人にとっても、便利に使えるツールだ。しかし、うまく使いこなせる人は少ない。遠隔カメラシステムで遠隔作業支援を行うリモートアシスト(大阪府茨木市)はこのほど、視覚障がい者が使いやすいスマートフォン「エルビー(LB)フォン」を発売した。

[米国]ケイト・スペード、内面から自信を
ケイト・スペード・ニューヨークは1993年に米ニューヨークで創業したファッションブランドだ。世界的に人気なブランドだが、社会課題の解決にも注力する。財団を立ち上げ、女性のエンパワーメントとメンタルヘルスの改善を目指し、4つの取り組みを行う。

■第二特集: 脱炭素に流れ込む巨額投資マネー
巨額の投資マネーが「脱炭素」に押し寄せている。米国は「インフレ削減法」で約50兆円を国が支援し、EUは「グリーン・ディール」などで、官民合わせて約140兆円の投資を集める。日本政府は官民で150兆円規模のGX投資を進める方針だ。炭素の価格を見える化し、予見可能性を示すことを狙う。

■第三特集: 欧州CSDDD、「国際標準化」も
欧州議会は4月、企業持続可能性デューデリジェンス指令案(CSDDD)を採択し、環境や人権へのデューデリジェンス(DD)の義務化を決めた。適用対象の企業数が当初基準案から3割程度に減ったが、採択した意味は大きい。環境・人権へのDDが国際標準化することも見据えて、日本企業は備えておくべきだ。

■第四特集: 欧州PFAS規制、日本まさかの反対
国の暫定指針値を超えたPFAS(有機フッ素化合物)の検出が日本の各地でも相次ぐ。PFASは長期間残留することから、環境への影響や健康被害の懸念がある。EUはPFASの製造や使用を全面禁止にする規制案を発表したが、日本の経産省や経団連はまさかの「反対」を表明した。

■第五特集: 最新型石炭火力もガスの2倍のCO2
日本の全発電量に占める石炭火力の割合は、先進国再興だ。世界的な脱石炭の中で、「日本の最先端技術をもってすればパリ協定1.5℃目標も達成できる。廃止の必要はない」という声も聞かれる。しかし、石炭火力発電は最新型であっても、天然ガス火力の2倍ものCO2を排出する。

■オルタナティブの風(田坂広志) 「賢明な政府」の時代
近年、人口減少による税収の低下、職員の不足によって、本来、行政が提供すべき公共サービスが、十分に提供できない自治体が増えている。

■エゴからエコへ(田口ランディ) 「共に踊ろう」
文化祭のラストと言えば、フォークダンス――と書くと今の若者は驚くだろうが、60-70年代の高校では常識だった。「マイム・マイム」を知っているなら、あなたは私と同世代。あのメロディーが流れるとつい踊りたくなる。

■ESG情報開示最前線(ESG情報開示研究会)
「自社らしさ」とマガジンライク
ESG情報開示研究会ではこのほど、会員企業の担当者と統合報告書の「独自性」の示し方について議論しました。事例として、日本企業3社、欧州と米国の企業3社を対象に、統合報告書の読みたくなるポイントについて比較分析しました。

ESGデューデリへの対応を
欧州を中心に、ESG領域のデューデリジェンス(DD)の実施や情報開示を義務化する動きが加速しています。持続可能な経営を目指すには不可欠な取り組みです。

■真のサステナビリティ投資とは(澤上篤人) 若者よ、「投資のリズム」つかめ
若い人たちの間で投資熱が高まっている。国や金融業界を挙げての新NISAキャンペーンの効果が大きい。それに、老後不安を少しでも軟らげるため、年金の不足分を補うためなど、資産形成のニーズは着実に高まっているのはたしかだ。

■モビリティトピックス(島下泰久)
ホンダ、バッテリー製造強化へ/フォーミュラE、日産2位に/テスラ充電器減、業界に動揺広がる/アウディ、「超高速」に応える

■モビリティの未来(清水和夫) バッテリーの資源循環を描け
4月、中国最大のモーターショーである北京ショーが開幕した。予想通りバッテリーEV(BEV)オンパレードとなり、多くの中国メーカーが魅力的なBEVを展示していた。中国メーカーのBEVの魅力は、デジタル化とコネクトだ。タイヤがついたスマートフォンのようなものだ。バッテリーとモーターで走ることは当たり前になった。

■農業トピックス(オルタナ編集部)
「農業基本法」が本格改正へ/59カ国・地域で約3億人が飢餓に/千枚田クラファン、1855万円に/キリン、規格外果実で酎ハイ

■日本農業 「常識」と「非常識」の間(徳江倫明) 有機農業の本質は「ローカル」に
2016年に始めた「オーガニックライフスタイルEXPO」が9回目を迎える。2024年10月3-5日、東京都立産業貿易センター浜松町館(東京・港)で開く。8年を経て国内最大のオーガニック展示会に成長した。

■林業トピックス(オルタナ編集部)
森林が大気中の微小プラを吸収/林野庁、生物多様性向上へ指針/住林などの新会社、国産林活用目指す/森林を活用し循環型の牧場に

■「森を守れ」が森を殺す(田中淳夫) 「木造建築は炭素中立」のウソ
木材は炭素を固定するから木造建築物をもっと建てよう――。このところ、そうした論調が目立ち出した。木を伐って木材として利用するとともに跡地に植林したら、炭素中立(カーボンニュートラル)だというのである。実際、公共建築を中心に木造建築物は増えている。

■漁業トピックス(オルタナ編集部)
世界の河口、35年で2割減る/海面温度の上昇、アジアで顕著に/ギリシャ、保護区底引き網漁禁止へ/生協連などエビのASC認証

■人と魚の明日のために(井田徹治) イカナゴ漁の崩壊の危機に
イカナゴは細い体をした美しい魚だ。特に瀬戸内海で重要な漁業資源の一つで、兵庫県では、シンコ(新子)と呼ばれる稚魚を甘辛く煮た「くぎ煮」が郷土料理として古くから愛されてきた。筆者の兵庫県の知人は毎年のように自家製のくぎ煮を贈ってくれていた。だが、数年前からそれが途絶えた。「極度の不漁でイカナゴが手に入らなくなった」という。

■フェアトレードトピックス(潮崎真惟子)
CSDDD可決、賛否分かれる/国内FT市場は200億円超え/エシカル面にも森林伐採リスクが

■フェアトレードシフト(潮崎真惟子) カカオ高騰は「氷山の一角」に
3月末、カカオ豆の先物価格はニューヨーク市場で1トンあたり1万ドルを超え、史上最高値を更新した。主要金属である銅の先物価格を上回り、この1年で3倍以上に値上がりした。

■ファンドレイジングトピックス(宮下真美)
カードでウェルビーイング学ぶ/博物館がCFで9億円集める/インパクト投資、1.1兆円に急拡大へ/資金調達にもDEIの流れ

■社会イノベーションとお金の新しい関係(鵜尾雅隆)知のスケール力が社会を救う
社会イノベーションとは、「社会問題に対する革新的な解決手法」と一般的に言われている。その定義は多様であるが、一般的には、今までにない技術やプロセス、仕組みなどの革新により社会問題を解決しようとすることを指している。

■廃棄物・静脈物流トピックス(エコスタッフ・ジャパン)
再生材のマーケット創出へ/廃漁網100%使用の糸を発売/災害ごみの処理で県外業者と連携/ICカードにも再生素材

■論考・サーキュラーエコノミー(細田衛士) 資源循環は「地域性」考慮せよ
先日、NHKのニュースで、スウェーデンの首都ストックホルムで生ごみをバイオガス化し、バスの燃料として使っているという特集を見た。スウェーデンでは、各家庭が生ごみを分別排出することが法律で義務化された。

■欧州CSR最前線(下田屋毅) 日本企業もDD求められる
欧州議会は2024年4月24日、コーポレート・サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)に関する修正案を賛成多数で正式に採択した。CSDDDは企業に対し、人権と環境に関する徹底したデューディリジェンス(DD)と義務付けるものだ。

■CSRトピックス(CSR48)
博多大丸、企業支援にクラファン/非上場もTCFDに基づく開示へ/水道不要、太陽光で動くトイレ/レインボープライド協賛314社に/アシックス、分別再生を可能に/横須賀市「メルカリ」でリユース/[総監督のつぶやき](CSR48・太田康子) 「話してくれてありがとう」

■「こころざし」の譜(希代準郎) 安楽死を生き延びる
ひみつ基地病院は雪に埋もれた山奥の地下にある。狭くて薄暗いが高齢の医師吉崎誠は今日も背中を丸めるようにして院内を巡回していた。国立病院を辞めて三カ月。新しい職場にも慣れてきたところだ。Eエリアに立ち寄るとNPOのアケルコが若い女性をベッドに運び込んだところだった。
オルタナ76号(2024年3月29日発売)

目次


■編集長コラム「alternative eyes」: イノベーションの原点は価値の変革
オルタナ76号をお届けします。今号の第一特集は「ジェンダードイノベーション」です。「ジェンダード」は「性差に基づく」という意味で、これに「イノベーション」を組み合わせた造語です。

■第一特集: ジェンダードイノベーションーー性差を起点に社会変革
ジェンダーギャップ指数は世界125位、男女の賃金格差は21%と、ジェンダーに基づく格差は日本に依然として存在する。障がい者やLGBTQ、難民など、脆弱な立場にある人への支援も十分ではない。「ジェンダードイノベーション」はもともと性差に着目した概念だが、日本のDEI(多様性・公正性・包摂性)の欠如を解消するヒントになりそうだ。

「多次元の交差」、デザインに統合を(ロンダ・シービンガー・米スタンフォード大学教授)
これまで見過ごされてきた「性の違い」に着目する研究手法「ジェンダードイノベーション(GI)」が注目されている。GIを2005年に提唱したスタンフォード大学のロンダ・シービンガ―教授は、「GIは性差だけの話ではなく、すべての人に公平性をもたらすものだ」と語る。オルタナの書面取材に答えた。

人口減少の日本、GI視点が救う(渡辺美代子・日本大学常務理事)
急速に進む少子高齢化に伴う人口減少。様々な属性や立場の人が活躍できる環境を整えなければ、持続可能な社会は実現できない。科学技術の分野でダイバーシティを推進してきた渡辺美代子・日本大学常務理事は、「人口減少が急激に進む日本だからこそ、ジェンダードイノベーション(GI)が必要だ」と語る。

LGBTQ課題はリスクも機会も(松岡宗嗣・一般社団法人fair代表理事)
2010年代半ば以降、「LGBTQ」という言葉が急激に認知されるようになり、今や大企業のうち半数程度は性的マイノリティに関して何らかの施策を行っている状況だ。LBGTQ対応は、企業にとっては機会にもリスクにもなり得るが、具体的なイノベーションにはどうつながっているのだろうか。

【米国】製品開発や政策もGI軸に見直す
米国では、「ジェンダードイノベーション(GI)」を取り入れ、製品・サービス開発や政策に反映する動きが相次ぐ。巨大IT企業のGAFAMはサービスの開発段階からこの概念を取り入れ、カリフォルニア州は玩具店に性別を問わないエリアを義務付けた。

【フィンランド】フィンランドの性差に「光と影」
ジェンダー・ギャップ指数で世界3位と男女格差が小さいフィンランド。就労率が男女ともに約70%と高く、政治参加や教育の分野でも平等度は高い。だが、その裏には女性に対する暴力の問題と、なかなか縮まらない男女間の職域分離に起因する賃金格差の問題が潜む。

【デンマーク】デンマークでは幼少期に性教育
ジェンダーの固定観念を刷り込まない教育が欧州で進む。デンマークでは、すべての小学校で子どもたちが性教育週間に参加する。性の多様性を受け入れる価値観の醸成がすべての人が「生きやすい」社会実現につながる。

【台湾】STEM女性の人材育成に躍起
OECDの2023年「社会制度・ジェンダー指数(SIGI)」で台湾がアジアトップ(世界6位)に躍り出た。男性の育休給付金申請や、女性のSTEM(科学、技術、工学、数学)人材も増加。半導体世界大手のTSMCも、STEM女性確保に力を入れる。

変わる学生服、多様性にも配慮
「カンコー学生服」ブランドを展開する菅公学生服(岡山市)は、多様な性のあり方を尊重した制服づくりに力を入れる。「詰襟(学ラン)」やセーラー服といった性差が顕著に出るものから、性自認にかかわらず誰もが「自分らしく」いられる制服へと転換。学生生活を謳歌できる環境整備を支援する。

女性視点の農機、担い手不足解消へ
農業機械メーカーの井関農機(愛媛県松山市)は、「農家を過酷な労働から解放したい」という創業精神のもと、農業現場の機械化を進めてきた。同社は10年ほど前から、女性も操作しやすいトラクタ「しろプチ」などを展開する。背景には、担い手の高齢化や不足といった日本農業の深刻さがある。

当事者との対話、社会ニーズ見出す
性差に起因する格差を世の中に問うブランドが増えてきた。課題の当事者から困りごとを聞き出し、市場ニーズの先にある「社会ニーズ」を起点に製品を企画する。社会の格差をビジネスの機会に変える。

■トップインタビュー: 100%再エネ化、さらにその先へ
渡辺 潤一・セイコーエプソン常務執行役員
セイコーエプソンは2023年12月、国内製造業ではじめて(※)全世界で使う電力を100%再生可能エネルギーに切り替えた。渡辺潤一常務は「自社の100%達成は通過点、社会へのさらなる再エネ拡大に貢献したい」と語る。

■トップインタビュー: 変革できないと存在価値なくなる
福田 靖・ヤマトホールディングス執行役員
ヤマトホールディングスは、2026年度までに環境投資800億円を投じ、事業変革を目指す。長尾裕社長をはじめ、経営陣が率先して取り組む。変革に向けて陣頭指揮を執る担当役員に戦略を聞いた。

■トップインタビュー: より良い環境を次の世代のために
ジョナサン・クシュナー・日本マクドナルド執行役員
日本マクドナルドは2030年までに温室効果ガス排出量を18年比50・4%削減することを発表した。コーポレートPPAの導入やプラスチック包装材の削減など環境に配慮した多彩な施策を打つ。

art
7 ■高橋さとみの切り絵ワールド─一歩ずつ
道を作っては進み、通った道を新しい道に変える
3本の瓶上で闊歩する昔見たサーカスの人
時々ふと思い出す

■世界のソーシャルビジネス
9 [スウェーデン]北欧の森に浮かぶ「ツリーホテル」
スウェーデン北部にある人口600人ほどの小さな村ハラッズには、世界中から観光客が訪れる。目当ては、森の中にある「ツリーホテル」だ。鳥の巣やUFOを模した個性的なデザインが目を引くが、環境への影響も最小限に抑えた。

10 [英国]1着で7サイズ、成長する子ども服
子どもとともに「成長する子ども服」が話題だ。英国発アパレルブランド「プチ・プリ(PetitPli)」は、「長く着られる服」を目指し、1着で7サイズ分、成長する子ども服を展開する。100%リサイクル素材で、服に寿命が来ても、単繊維のためリサイクルも可能だ。日本でも2024年、期間限定で商品を体験できるポップアップイベントを開催する。

11 [米国]移民女性の自立、パン工場が手助け
ホット・ブレッド・キッチンは、所得の低い移民女性の自立支援を行う。クッキングスキルを提供したり、フード関連ビジネスの創業支援を行ったりする。ジェンダーや人種に関わらず多様な人を受け入れるのが特徴だ。

36
第2特集: 揺れる脱炭素政策、表現の自由も問う
各国の気候変動政策が揺れている。EUや米国の規制当局は企業の温室効果ガス(GHG)排出量の開示を義務付ける方向で動くが、「開示が困難」「『表現の自由』に反する」などとして、その動きを押し戻す可能性も出てきた。一方、日本はプライム企業にGHG排出量の開示を義務化する方針だ。

39
第3特集: 福岡発コンポスト、フランスに挑む
生ごみを、可燃ごみとして廃棄せず、微生物の力を借りながら堆肥(コンポスト)にして循環させる取り組みが広がる。なかでも母娘3世代女性が福岡で火をつけた「LFCコンポスト」は順調にユーザー数を伸ばす。2024年から全国民に生ごみの分別回収を義務付けたフランスにも挑む。


columns
41
■オルタナティブの風(田坂広志) 左脳型人間と右脳型人間
雑誌などの特集で、しばしば、「左脳型人間は、論理的思考に優れている」「右脳型人間は、直観判断に優れている」といった言葉を目にする。

43
■エゴからエコへ(田口ランディ) 「不謹慎な私」
1980年代に生きている主人公が現代にタイムスリップするドラマを観た。懐かし過ぎる。ああ、そうそう、この粗野な感じ。罵詈雑言。差別用語オンパレード、これが80年代だった。

finance
44
■ESG情報開示最前線(ESG情報開示研究会)
社長の「意志(ウィル)」が見えるか
統合報告書のトップメッセージでは、社長自身の言葉で書くことが重要です。では、社長自身の言葉で書くとはどのような意味でしょうか。

グローバルリスクにBCPで対応を
世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書2024では、短期的には「誤報と偽情報」、長期的に「異常気象」が最も重視すべきリスクとして選定されました。

45
■真のサステナビリティ投資とは(澤上篤人) 「資産運用立国」、絵に描いた餅に
新NISAが始まった。国を挙げての「貯蓄から投資へ」は、資産運用立国を目指すとする首相発言もあり、結構なことである。だが、金融界がやたら大はしゃぎしているのには思わず苦笑してしまう。

mobility
46
■モビリティトピックス(島下泰久)
ホンダ、26年に次世代EV販売へ/ホンダが新型FCEV、外部給電も/メルセデス・ベンツ、「全車EV」撤回へ/ポルシェ「マカン」がBEVに

47
■モビリティの未来(清水和夫) BEVのLCAはいばらの道
「カーボン・ニュートラリティ」や「ゼロ・カーボン社会」など、CO₂削減に向けたビジョンが各国から発出されているが、どれも抽象的な言い方なのでよく分からない。

agriculture
48
■農業トピックス(オルタナ編集部)
輪島の千枚田、震災復興めざす/EU農薬規制法案を取り下げ/サステナ金融大賞、水田の脱炭素に/ワタミがGHG削減「三つ星」に

49
■日本農業 「常識」と「非常識」の間(徳江倫明) 食料・農業・農村基本法はだれのため
農業の憲法といわれる「食料・農業・農村基本法」の改正案が2月に閣議決定され、4月ごろに国会で議論される。

forestry
50
■林業トピックス(オルタナ編集部)
CDP「フォレストA」に7社/アマゾンを襲う記録的干ばつ/建物の木材利用、9割が肯定的/「森林環境税」を新たに導入

51
■「森を守れ」が森を殺す(田中淳夫) 「再造林」することの難しさ
林業界では、やにわに再造林が課題として上がってきた。

fishery
52
■漁業トピックス(オルタナ編集部)
世界の漁業紛争40年で20倍に/MSC認証マグロの需要高まる/「再エネ×水素」、島の養殖実験進む/高校生と漁村地域再生へ

53
■人と魚の明日のために(井田徹治) サーモンやサワラに迫る危機
海水温度の上昇によって、魚の分布域が高緯度にシフトし、獲れる魚の種類が変わってきていることは日本を含めてさまざまな場所で指摘されている。だが、最近の評価では種の存続自体が危ぶまれる可能性まで指摘されるようになってきた。

fairtrade
54
■フェアトレードトピックス(潮崎真惟子)
農水省、食品企業に人権ガイド/強制労働品、EUでも輸入禁止へ/欧州小売、共同で賃金保障進める

55
■フェアトレードシフト(潮崎真惟子) 自己認証のラベル、使用禁止へ
2月20日、EU理事会はグリーンウォッシング禁止指令案を採択した。環境に良いなどの旨を企業が訴求・表示するに際し、測定可能な目標や独立した第三者機関による定期的な検証、明確なコミットメントなどの要件を満たすことを義務付ける。

fundraising
56 ファンドレイジングトピックス(宮下真美)
能登半島地震、社内募金広がる/ジェンダーレンズを通した投資とは/ワン・アジアでインパクト推進へ/教育分野への寄付拡がる

57
■社会イノベーションとお金の新しい関係(鵜尾雅隆) アジア系財団の成長から見える可能性
「アジアのフィランソロピーには欧米のフィランソロピーとは違う価値世界がある」。これは、昨年12月にアジア・ベンチャー・フィランソロピー・ネットワーク(AVPN)主催で東京で開催された「ソーシャル・インベストメント・フォーラム」にアジア各国から集った財団トップたちが異口同音に語ったことだ。

circular economy
58
■廃棄物・静脈物流トピックス(エコスタッフ・ジャパン)
太陽光パネルに追跡可能性を/浜松市が紙おむつのリサイクルへ/バイオマス灰を肥料に変える/エネオスが家庭ゴミのリサイクル

59
■論考・サーキュラーエコノミー(細田衛士) 公取委、ペット再生にもの申す
2023年10月、公正取引委員会がペットボトルリサイクルの在り方についての報告書を上梓した。

61
■欧州CSR最前線(下田屋毅) 欧州自然再生法の意義
2024年2月27日に欧州自然再生法(Nature Restoration Law: NRL)が欧州議会の最終承認段階を通過、成立の見込みとなった。本法案は、20年5月に発表された「2030年に向けたEU生物多様性戦略」に基づき、欧州委員会が22年6月にEU議会・EU理事会に提出し、23年11月には暫定的な政治合意に達していた。

62
■CSRトピックス(CSR48)
サイボウズ、ITで能登半島を支援/サントリーがサステナブルアルミ缶/「SDGsアワード」に車いすアプリ/ダイソー、折り鶴をトロフィーに/「改正障害者差別解消法」が施行へ/スポーツの力を気候危機対策に

[総監督のつぶやき](CSR48・太田康子) 気候危機の解決を世界平和に
2023年は観測史上最も暑い年となり、世界的な人気女性アーティストのコンサートでは観客に死者がでました。会場に飲み物の持ち込みを禁止したことも影響したようです。

69 サステナブル・ビジネス・リーグ(SBL)

67 バックナンバー

flash fiction
64
■「こころざし」の譜(希代準郎) 影法師屋
知り合いに紹介してもらった店は路地の奥にひっそりとしたたたずまいを見せていた。主人はといえば髪の白い初老の男だった。

68 次号予告&編集後記
990円
880円
■第一特集: サステナ2024メガトレンド/「厳格EU」対「緩い日本」ESG路線対立 鮮明に

ESG(環境・社会・ガバナンス)政策で、欧州と日本の間の「溝」が鮮明になってきた。EUはESGで域内外のリーダーシップを執ろうと、法規制を続々と打ち出す。一方、日本政府は「GX」の名のもとに、企業の自主性に任せる緩い枠組みにとどめる。日本企業はどちらに顔を向ければ良いのか。

Gウォッシュ規制、世界で監視強まる
グリーンウォッシュへの規制が世界で強化されている。実体や科学的根拠に裏打ちされた合理的な理由がないにもかかわらず「サステナブル」「生分解性」「環境配慮」などを謳う。関連する訴訟も増えた。「カーボンニュートラル」についても、その中身の精査が求められる。

規制も罰則もない日本の排出量市場
世界的に見ても異質な「キャップなしトレード」型の排出量取引が日本で始まった。排出量取引制度は、取引価格を公示することで多排出企業に脱炭素化を促す施策だ。総量規制がない日本独自のやり方を専門家はどう見るか。

GHGスコープ3、悩む前に算定を
ネットゼロを目指すには供給網(スコープ3)も含めた脱炭素化が欠かせない。だが、供給網の算定は正確なデータを入手できず、課題が山積みだ。国際NGO CDPの幹部は、「供給網の算定は不完全でもいい」と言い切る。

「経営」と「人材」、戦略に一貫性を
人的資本経営とは、人材を「資本」と捉え、中長期的な企業価値向上につなげる経営を指す。人的資本経営に詳しい大喜多一範氏は、「人材戦略を経営戦略に紐づけることが重要だ」と解説する。(Future Vision社長・大喜多一範)

自然資本の豊かさ、新たな成長機会に
自然資本の回復を経営戦略に組み込む企業が増えてきた。積水ハウスは生物多様性を回復する事業のあり方を探る。自然資源に依存しながら事業を展開する資生堂は、サステナ調達を強化した。

ジェンダー改革、司法が一石投じる
「LGBT理解増進法」が6月23日に公布され、同日に施行された。修正が加えられるたびに後退する法案に対し、当事者らは「差別を助長しかねない」として、強く抗議していた。一方、同性婚や性別変更のための生殖不能要件を巡り「違憲」判決を出すなど、司法が一石を投じようとしている。

国家人権機関がなぜ日本にないか
「国連ビジネスと人権の作業部会」が2023年夏に初めて公式来日し、ジャニーズ性加害問題を調査したことで、日本でも「ビジネスと人権」への関心が一気に高まった。同部会は「日本には独立した国家人権機関がないことを深く憂慮する」と指摘。24年6月に最終報告書を提出する予定だ。

■エルコ・ファン・デル・エンデン(GRI CEO)インタビュー:
サステナ開示は低コストで簡便に
各国でサステナ情報開示が義務化される中、企業側の負担も増している。今後のサステナ開示はどうなるのか。サステナ報告基準を定めるGRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)のエルコ・ファン・デル・エンデンCEOに聞いた。

■マーク・クラマー(FSG共同創業者)インタビュー:
パーパス経営は行動に移してこそ
社会的使命を追求する「パーパス」(存在意義)を掲げる企業が増えている。パーパス経営の実現には、企業が社会課題を理解し、競争戦略に落とし込むことが重要だ。マイケル・ポーター教授とともにCSV(共通価値の創造)を提唱したマーク・クラマー氏は「お飾りのパーパスでは意味がない」と言い切る。

■トップインタビュー:「自分らしさ体現し、真のリーダーへ」
ジョイ・ホー・ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング社長
LGBTQの認知が広がっているものの、当事者を取り巻く環境は厳しい。レズビアンであることを公表しているユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングのジョイ・ホー社長は、「『自分らしく』を体現するリーダーであるためにカミングアウトを決意した」と明かす。

■トップインタビュー:「心理的安全性もサービスの土台に」
高崎 邦子・JTB執行役員DEIB推進担当
新型コロナ禍を機に、ダイバーシティ施策を拡大したJTBは、2023年4月に、「DEIB」を掲げた。心理的安全性を指す「B(ビロンギング)」を加え、DEIB推進でサービスの質を上げる。担当役員にその戦略を聞いた。

■トップインタビュー:「『なぜ』売るのか、モノより理念示せ」
梅田 直孝・コクヨ執行役員
コクヨは、中長期的な成長を目指すためサステナ経営に舵を切った。働き方や暮らし方に関する困り事を特定し、商品を通してその課題の解決に取り組む。「なぜ」売るのかを深堀りし、商品そのものより、企業理念や文化を押し出す。

■編集長コラム「alternative eyes」:「子どもだまし」のGXで大丈夫か
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで11月30日、COP28(気候変動枠組条約第28回締約国会議)が開幕しました。118カ国の首脳が「2030年までに再生可能エネルギーの発電容量を最低でも110億キロ㍗と、これまでの3倍にする」との意欲的な施策を討議し、気候変動対策の軸を「再生可能エネルギー」に置いて、脱炭素を目指す国際的な潮流を再確認しました。

■高橋さとみの切り絵ワールドー変わらないもの
景色や手法が変わっても
大切なものの本質は古来よりあまり変わらない

■世界のソーシャルビジネス
[スイス]単一素材のみで循環型バッグを
アップサイクルブランドの先駆者として知られるスイス発「フライターグ」。トラックタープ(幌)やシートベルトといった廃棄素材を使ったバッグ類は日本でも人気だ。このほど単一素材のみを使用した初の循環型バックパックを開発し、2024年春にも販売する。

[ギリシャ]ギリシャに初の廃棄物ゼロの島
2022年、ギリシャのティロス島が世界初の廃棄物ゼロの島を達成した。このゼロ・ウェイストプロジェクトをティロス市政府と共に推進したのがギリシャに本社を置くポリグリーン社だ。廃棄物の分別回収の教育、定期的な資源回収、アプリでの可視化と住民へのフィードバックなどを通じて取り組みを牽引した。

[米国]コーヒーを色分け、農家の賃金保証も
米ニューヨークで弁護士が立ち上げたコーヒーショップが話題だ。コーヒー農家の8割が貧困状態であるなか、生産者への公正な賃金を保証する。支援内容ごとに色分けし、来店客に分かりやすく表示した。創業者は、「生産者を大切にするとコーヒーは美味しくなる」と話す。


■第2特集:反ESGは一時的、リスクを直視せよ
本田桂子・コロンビア大学国際公共政策大学院客員教授
2024年に大統領選を控える米国で、ESG(環境・社会・ガバナンス)を投資手法に組み入れる動きへの反発が強まってきた。コロンビア大学でESG投資を教える本田桂子氏にESGを考慮した運用手法は受託者責任に反するか聞いた。

■サステナブル★セレクション2023:三つ星にライオンやアシックスなど
オルタナとサステナ経営協会は2023年11月24日、サステナブルな製品/サービスを推奨する「サステナブル★セレクション2023」三つ星の認定証の授与式を開いた。三つ星には、ライオンやアシックスなど8社・団体の製品を選んだ。

■「脱炭素チャレンジカップ2023」オルタナ最優秀ストーリー賞:
佐賀県で利用進む、低コスト地中熱
佐賀県で「有明未利用熱利用促進研究会」と題したプロジェクトが進む。県内の大学や企業、金融機関など30社・団体が集まり、地中熱の実験を進める。そのうちバイオテックス(佐賀市、原田烈社長)は、地中熱交換器を「横方向」に埋没することで、コストを約3分の1減らした。

■オルタナティブの風(田坂広志) 創発のマネジメント
教育や経営の世界では、しばしば、「管理か、自由か」という問題に直面するが、その難しさを象徴するのが、1990年代後半に注目された「創発のマネジメント」である。

■エゴからエコへ(田口ランディ) 「若者たち」
この4月から、熱海の鍼灸学校に入学して東洋医学を学んでいる。アジア情勢を知るには「昭和史」は必須なのだが、若者はいまだそれを義務教育で学ぶ機会がないらしい。

■ESG情報開示最前線(ESG情報開示研究会)
情報開示のメガトレンドは
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は2023年5月に今後2年間のアジェンダの優先度に関する意見募集を公表し、9月1日で締め切りました。

「統合報告」に起きる3つの動き
ESG情報開示研究会(代表理事・研究会座長 北川哲雄)では、9月上旬に欧州を視察し、国際会計基準(IFRS)財団などを訪れました。

■真のサステナビリティ投資とは(澤上篤人) 新NISA協奏曲に浮かれるな
国を挙げての「貯蓄から投資へ」大合唱から、首相の唱える資産運用立国ときて、いよいよ2024年からは新NISA制度が始まる。いずれも、その方向や良しだが、どこまで国民の資産形成につながるかが問われよう。とりわけ、新NISAは大きな問題をはらんでいる。

■モビリティトピックス(島下泰久)
クルマを自由な表現の「場」に/トヨタと出光、全固体電池で協働/FC大型トラック、共同研究相次ぐ/自由な移動、体重移動で

■モビリティの未来(清水和夫) 循環型モビリティに価値見出せ
「お疲れさま」という声がアチコチで聞こえた。とにかく4年ぶりのモーターショーだったので、クルマの未来がどうなるのか、多くの人が興味を示したショーだった。実は今年からは「ジャパンモビリティショー(JMS)」というコンセプトに変え、自動車産業以外の企業が参加しやすいイベントとなった。

■農業トピックス オルタナ編集部
オーガニックビレッジ相次ぐ/輸入バイオマスが原生林減らす/農業のB面市場、規模3千億円超に/ネイチャーポジティブを投資判断に

■日本農業 「常識」と「非常識」の間(徳江倫明) 日本の有機市場、2240億円に
前回記事で、2021年の「みどりの食料システム戦略」の公表以来、さまざまな側面からのアプローチで有機農業は日本の農業の25%の成長分野になるということを述べた。それを示す新しい情報としては農林水産省が公表したオーガニックマーケットの市場規模がある。

■林業トピックス オルタナ編集部
EU森林破壊規制まで1年/「森林と人権」ユニリーバがトップに/熊本県小国町に「森林×脱炭素」賞/キャロウェイ、大学生と森を守る

■「森を守れ」が森を殺す(田中淳夫) 花粉対策も脱炭素も行き詰まる
岸田首相が2023年5月に、花粉症対策を言い出した。そこで政府が打ち出したのは、スギ人工林を10年後に約2割減少させ、30年後に花粉の発生量を半減させること。具体的には、スギ林を毎年約7万
ヘクタール(現在は約5万ヘクタール)皆伐し、また10年後に植林するのは9割以上を無花粉・少花粉の苗木にするとしている。

■漁業トピックス オルタナ編集部
公海を守る協定に67カ国賛同/痩せウニの再生養殖で磯焼け防ぐ/天然ブリ激増で養殖に大打撃/持続可能でアイルランド漁業が躍進

■人と魚の明日のために(井田徹治) 「無法地帯」の船上で人権侵害
世界中の海で中国漁船による深刻な人権侵害や違法漁業が行われている実態を長期間にわたって追跡、つぶさに記録した特ダネ映像を米国の「アウトロー・オーシャン・プロジェクト」が作製、公開した。プロジェクトを主催するイアン・アービナ氏は、米ニューヨークタイムズ紙の記者時代の2015年、遠洋漁業での強制労働や奴隷労組が横行する実態に関する記事を執筆し、世界的に注目された。

■フェアトレードトピックス(潮崎真惟子)
イオントップバリュが大賞に/小中高向け認定制度、日本でも/米のラベル認知4年で2倍に

■フェアトレードシフト(潮崎真惟子) サステナが品質を高める時代に
9月、国内初となるフェアトレード認証に特化したコーヒーの品評会が都内で開催された。日本スペシャルティコーヒー協会とフェアトレード・ラベル・ジャパンの共催で行われた同品評会は、近年世界10
カ国以上で毎年開催されるフェアトレード認証コーヒー品評会「ゴールデンカップ」との連動企画だ。

■ファンドレイジングトピックス(日本ファンドレイジング協会・宮下真美)
国内最大会議、24年3月開催へ/戦略的な資金調達でNPO後押し/資金調達者の収入、インフレ率超す/「インパクト」の拡大狙うIMMとは

■社会イノベーションとお金の新しい関係(鵜尾雅隆) 「インパクト」の次のステージは
筆者は2008年から本格的に「社会のお金の流れを変える」取り組みをはじめ、寄付や社会的投資(インパクト投資)の推進に携わってきた。23年の今、感じることは、「ついに準備が整った」という感覚だ。

■廃棄物・静脈物流トピックス(エコスタッフ・ジャパン)
廃ボトル争奪、公取委が調査/環境省、水平リサイクルの新制度/水平リサイクル、太陽光パネルでも/水素エンジントラックが実証走行

■論考・サーキュラーエコノミー(細田衛士) 循環経済が人と人との絆を取り戻す
経済学の始祖アダム・スミスは、経済主体の利己的な動機に基づく行動が市場を通じて人々を経済的に幸福な状態に導くことを明らかにした。他人の幸せを考えて行動するわけでもないのに、各人が自己利益を追求するだけで、社会全体の幸せがもたらされるという考え方は、資本主義を奉じる者にとって有り難い考え方だ。

■欧州CSR最前線(下田屋毅) 食のサステナの推進者
日本サステイナブル・レストラン協会(SRAジャパン)は、3回目となる「フード・メード・グッド・ジャパン・アワーズ2023」を11月20日に開催した。これは、国内の飲食店・レストランからサステナビリティの取り組みを推進した店舗を表彰するものだ。

■CSRトピックス(CSR48)
難民支援と企業の関係を考える/障がい者がさまざまな職種で活躍/観光庁が阿蘇の自転車ツアーを表彰/TNFDが本格的にスタート/「PRIDE指標2023」834社が認定/AOKI、スーツをシューズにリサイクル/[総監督のつぶやき](CSR48・太田康子) 「とても身近な存在だった難民」

■「こころざし」の譜(希代準郎) カラスの神様
カウンターに一列に並ぶ黒い影。目を凝らすと何とカラスだった。六羽はいるだろうか。止まり木につかまり丸い目を細めて行儀よく寿司をつまんでいる。

■編集後記
オルタナ73号 ★ 目次

October 2023 vol.74
contents

from editor in chief
3 「alternative eyes」(森 摂) 「志」と「良心」とサステナ経営
オルタナ74号をお届けします。今号の第一特集は「サステナ経営浸透 完全マニュアル」です。企業のサステナビリティ担当者は実感しておられると思いますが、サステナ経営の最大の難所は「社内浸透」です。

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7 高橋さとみの切り絵ワールド──心を掴む

世界のソーシャルビジネス
9 [マレーシア]アクセサリーで難民の教育支える
マレーシアには世界各地から難民が集まる一方で、「不法移民」として扱われ、生活環境は厳しい。そうしたなか、難民の教育支援につながるアクセサリーブランド「Fugeelah(フジーラ)」が誕生した。立ち上げたのは、元ミス・ユニバース・マレーシアだ。_

10 [カナダ]使い捨て割り箸をモダンな家具に
使い捨ての割り箸を再利用し、モダンな家具や家庭用品にアップサイクルする企業が注目を集める。2016年に木材エンジニアが立ち上げたチョップバリューだ。使い終わった割り箸を回収し、モダンな家具に再生する「サーキュラーエコノミー型事業」への共感の輪が広がる。

11 [米国]道路も走れる空飛ぶクルマ
米連邦航空局(FAA)は7月、アレフ・エアロノーティクス社(米カリフォルニア州)が開発した「空飛ぶクルマ」に対し、テスト用の特別耐空証明を発行した。道路の走行と空の飛行の両方ができる電気自動車(EV)が、米政府から承認を受けるのは初だ。2025年末の引き渡しを予定する。
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feature story
12 サステナ経営浸透 完全マニュアル
5つのメソッド+ロードマップ
サステナビリティ(持続可能性)を経営に統合するプロセスは、サステナブル経営における「最重要課題」だ。すべての部署が事業におけるサステナビリティを理解しないと、思わぬ「リスク」が起きたり、「機会」を逸したりする。サステナ経営を社内に浸透させるためのメソッドをまとめた。

12 【❶ トップが「なぜ」を知る】サステナ経営は風土改革

15 【❷ 従業員に体験させる】やる気と気づき、仕事にもプラス
さまざまな試みを駆使して、サステナビリティの理解だけでなく、モチベーションも高める動きが出てきた。三井住友FGの「プロボノ」、スターバックスの「タンブラー部」、ユニリーバの「リバースメンタリング」を例に解説する。

16 サステナ経営のロードマップ

18 【❸ 事業に結び付ける】社会課題を起点に新規ビジネス創出
社会課題を知り、自社の事業と結びつけてその課題解決を図る「アウトサイド・イン・アプローチで、ビジネス」に取り組む企業が増えてきた。サステナビリティに資する取り組みを、「コスト」ではなく、「新たなビジネス機会」と捉えることで、自社のサステナ経営につなげる動きだ。_

20 【❹ 社内で競う・褒める】自主性を育成し挑戦する風土へ
社内表彰制度やビジネスコンテストなどに、サステナビリティの観点を取り入れる企業が増えてきた。社員の自主性を育み、正解のない問いに対して、チャレンジしやすい風土をつくることが目的だ。NTTは10年前から表彰制度を開催する。

21 【❺ 家族も巻き込む】社員の誇りは家族が後押し
サステナ経営の浸透に向けて「家族」がカギとなる。社員の家族が会社に信頼を寄せれば、社員の会社への自尊心やモチベーションの向上につながる。企業が積極的に取り組むのが「健康経営」での実装だ。

22 【サステナ担当者座談会】存在意義と収益性、二項対立にしない
サステナ経営の重要性が高まる一方で、社内浸透に課題を抱える企業は多い。経営層や社員の理解を深め、行動を促すには何が必要なのか。ブリヂストン、リコージャパン、KDDIのサステナ担当者が議論した。_

26 【サステナ経営】社内浸透を進める4つのステップ
 吉野賢哉(SDGsアントレプレナーズ代表)
サステナビリティ(サステナ)領域において、社内浸透は最大テーマの一つだ。この分野に詳しい、SDGsアントレプレナーズの吉野賢哉代表パートナーは「サステナが社内浸透をしている状態は、サステナが全ての事業活動における意思決定の要素として考慮されている状態だ」と指摘する。同氏が社内浸透を進めるためのステップを解説する。


top interview
28 300年続く先義後利、社員の熱量高める
好本 達也(J.フロント リテイリング社長)
大丸松坂屋百貨店やパルコを抱えるJ.フロント リテイリング。300年続く社是「先義後利」のもと、従来型の百貨店モデルから脱却し、コロナ禍を経て再成長を目指す。その原動力となるのが、若手社員の熱量だ。好本達也社長に、その狙いを聞いた。

30 TNFDの期待にICTで応える
清水 茂樹(NEC執行役コーポレートSVP兼CSCO)
NECは7月、国内IT企業としては初の「TNFDレポート」を発行した。ICT事業を行う同社の自然資本に関するリスクは高くない。率先して取り組んだのは、自社のICTサービスが「ネイチャーポジティブ」に役立つことを証明するためでもあった。

32 緑のローソンで社会課題に挑む
郷内 正勝(ローソン専務CRO兼CSO補佐・CS推進室長)
「青」のイメージのローソンが「グリーンローソン」を昨年11月、都内にオープンした。プラゴミや食品ロスなど、様々な社会課題の解決に取り組む「実験の場」だ。郷内正勝専務執行役員CRO兼CSO補佐は「社会的課題の解決が、財務の向上につながる」と語った。


sustainable★selection
36 サステナブル★セレクション2023
「サステナブル★セレクション」とは、サステナブルな理念と手法で開発された製品/サービスを選定して、オルタナが推薦する仕組みです。一つ星は製品/サービスの持続可能性を審査し、二つ星はこれに加えて組織のサステナビリティを審査します。2023年一つ星は39点、その内二つ星は19点を選定しました。三つ星は、2023年11月に発表いたします。2024年の公募は来年春を予定しています。


columns
45 オルタナティブの風(田坂広志)─「新時代の教養」 三つの深化
これからの時代、「教養」というものは、どう変わっていくべきか。

47 エゴからエコへ(田口ランディ)─水俣病、コロナ禍、そして「処理水」
今年も10月7日から11月14日まで、福岡アジア美術館にて「水俣・福岡展」が開催される。私もトークゲストとして参加する予定だ。

finance
48 ESG情報開示最前線(ESG情報開示研究会)
サステナ開示は国際標準化へ(窪田雄一・有限責任監査法人トーマツ パートナー
ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は、最初の2つの基準IFRS S1(全般開示要求事項)とIFRS S2(気候関連開示)(以下ISSB基準)を公表しました。

「供給網」含めて脱炭素化を(岡田紀子・シスメックス内部統制室長)
脱炭素社会の実現に向けた取り組みの情報開示の重要性はますます高まっています。シスメックスでは様々な環境対応を進めており、血液検査機器の小型化や環境負荷の少ない原材料の使用などを推進しています。遺伝子検査などに使われる試薬の超低温輸送についてもその一環です。

49 真のサステナビリティ投資とは(澤上篤人) 「安売り日本」でいいのか
外国人観光客の積極的な誘致、インバウンドが活況となっている。ずっとデフレ気味だった日本は海外諸国からみると、ホテル代も食事代も恐ろしく安く、それでいて清潔かつ安全ときた。まるで天国旅行をしているかのように映る。そこへ円安もあって訪日客は、ごきげんそのものである。

mobility
50 モビリティトピックス(島下泰久)
テスラの充電規格、欧州にも/対テスラ式充電網、7社がスクラム/BMW、日本でFCEVを実証へ/トヨタ、専任組織でBEVに本腰

51 モビリティの未来(清水和夫) ギガキャストがトヨタを変える
テスラの新しい製造法として注目されるのが、「ギガキャスト」という従来とは異なる製造法だ。関係者は「まるで隕石が落ちたような新しいバッテリーEV(BEV)の製造法」と考えている。

agriculture
52 農業トピックス(オルタナ編集部)
コメでJ-クレジットを創出/直営農場の有機転換を進める/VRと遠隔操作で障がい者も農業に/農産物などの価格を適正に

53 日本農業 「常識」と「非常識」の間(徳江倫明) 有機化が成長を後押しする
最近、「農業経営者」という農業誌から「有機給食の全国展開運動・私はこう思う」という原稿依頼があった。そもそもの題名が「オーガニック給食運動はここが危うい」だった。

forestry
54 林業トピックス(オルタナ編集部)
エリート樹木で花粉を減らす/木造ビルでコスト減と脱炭素に寄与/農工大などが森林再生で協定/森林ファンドを600億円で組成

55 「森を守れ」が森を殺す(田中淳夫) EU伐採規制に対応できるか
EUに森林に関わる新たな制度が誕生したことを知っているだろうか。

fishery
56 漁業トピックス(オルタナ編集部)
海水温上昇でサバ減少に懸念/欧州、漁船にもGPSを義務化へ/食べて磯焼け対策、三重県で始まる/岡山県で国内初の「受注漁」

57 人と魚の明日のために(井田徹治) 海水温上昇、サンゴ礁に迫る危機
海の貴重な生態系の一つ、サンゴ礁に危機が迫っている。海洋汚染に加え、地球温暖化の影響が顕在化しつつあるからだ。2023年は世界各地で海水温が高くなるエルニーニョ現象が発生、サンゴへの影響がさらに拡大すると懸念されている。

fair trade
58 フェアトレードトピックス(潮崎真惟子)
認証コーヒー、社内浸透にも/「「開発協力大綱」、8年ぶりに改定/カスケード型研修、生産者の知識養う
59 フェアトレードシフト(潮崎真惟子) 「人権尊重」の公共調達を
4月、日本政府は公共調達において人権尊重の取り組みを努力義務化する方針を発表した。入札希望者や契約者には「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に沿って人権尊重に取り組むことを求めた。各省庁の入札説明書や契約書などに同要請が記載される見込みだ。

fundraising
60 ファンドレイジングトピックス(宮下真美)
大学向け資金調達ガイド/カードゲームで寄付の「意義」養う/資金調達スキル、キャリア教育にも/NPOの信頼性を可視化へ

61 社会イノベーションとお金の新しい関係(鵜尾雅隆) 信頼と共感に基づく金融が進化する
「『社会的成果(アウトカム)を買う』という発想の助成金があってもいい。それが私たちのスタートの原点だった」。世界で今最も注目される国連組織であるエデュケーション・アウトカム・ファンドの創設者で代表を務めるアメル・カルブール氏は本年7月の来日時のセッションでこう語った。

circular economy
62 廃棄物・静脈物流トピックス(エコスタッフ・ジャパン)
廃マットレスをリサイクルへ/資源循環社会へ、大手銀と連携/ゴミから堆肥に、短期間で製造/白井グループ・白井徹社長が逝去

63 論考・サーキュラーエコノミー(細田衛士) リチウム電池の火災、生産者の責任は
この原稿も20回を越える連載になった。正直、話題が尽きるのではないかと一時心配することもあったが、それは杞憂に過ぎなかった。次から次へと話のタネが出てくるのだ。実際、今回もどの話題で原稿を書こうかと迷ったほどだ。

65 欧州CSR最前線(下田屋毅) 「ゲノム編集食品」の危うさ
欧州委員会は7月5日、ゲノム編集食品に関する規制緩和に向けた立法案を発表した。この法案では、ゲノム編集と遺伝子組み換え作物に対する表示義務、安全性チェック、あらゆる種類の責任プロセスが廃止される。

66 CSRトピックス(CSR48)
サステナ情報開示をクラウドで支援/コープさっぽろ、地域共助を促す/障がい者手帳がスマホアプリに/食品6社、CO₂削減へ物流で連携/「マイクラ」で子どもにSDGs教育/「デコ活」で暮らしの脱炭素を促す

総監督のつぶやき(CSR48・太田康子) 「グリーンハッシング」とは
企業が環境配慮をしているように装う、上辺だけのコミュニケーションは「グリーンウォッシング」と呼ばれますが、こうした批判を恐れて、企業が環境への取り組みについて発信することを辞めてしまう動きを「グリーンハッシング」といいます。

68 サステナブル・ビジネス・リーグ(SBL)

69 バックナンバー

flash fiction
70 「こころざし」の譜(希代準郎) 先生はセニョリータ
遠くうっすらと稜線を残して山々が連なる。それを背に草原を駆け抜ける馬の群れ。草はまばらで土煙があがる。ドッ、ドッ、ドッと地響きを立てて疾走している数は二十頭を超える。一人取り残された卓也には、風を切って走る心地よさよりも落馬の怖さの方が勝り、馬の背中しか目に入らない。

72 次号予告&編集後記








オルタナ73号(2023年6月発売)の全コンテンツは次の通りです。

■編集長コラム「alternative eyes」: 企業が日本のDEIの旗手に
オルタナ73号の第一特集は「DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)は競争力の源泉」です。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)という言葉はこの数年で「DEI」へと進化しました。(森 摂)

■social design gallery  
渋谷を彩る「福祉×アート」
主に知的障害のある作家によって制作されたアート作品を建設現場や商業施設内の仮囲いを利用して発表する「ウォール・アート・ミュージアム」。手掛けるのは、福祉実験ユニット「ヘラルボニー」。障害のある作家や福祉施設と契約を結び作品を商品やインテリアデザインに昇華、企業に利用してもらうことで利益を還元する。

■高橋さとみの切り絵ワールド──ちがうことから始まる
命あるものに同じものはない
違っているから世界は広がる

■世界のソーシャルビジネス
[ウクライナ]戦災がれきを再生コンクリに
ウクライナ戦争で「がれき」と化した建築物は推定約1200万㌧に上る。これらをリサイクルし「再生コンクリート」として活用することで再建に挑むウクライナ企業が出てきた。今後は、高度なリサイクル技術やノウハウを持つ欧州や日本企業との連携を模索する。(オルタナ編集部・北村佳代子)

[スウェーデン]EV給電高速道、3000㎞構築へ
スウェーデンは2035年にも、走行中のEVに給電できる「Eモーターウェイ」(給電高速道路網)を3000km建設する。特にトラックやバスなどの大型EVは大型バッテリーが必要なため、走行時給電によってバッテリーの小型化や、車両生産コストの低減が可能になる。(オルタナ編集部・北村佳代子)

[米国]垂直農業相次ぐ、グーグルも屋内に
自然と対峙する農業とは真逆の「農業」が米国で話題だ。垂直に作付けする「垂直農業」だ。作物に最適な環境をアルゴリズムで再現し、天候の影響を受けず一年中栽培できる。農薬を使わず、水の利用量を最大で95%削減した。米グーグル本社はこのシステムを取り入れ、採れたての野菜を社員食堂で提供する。(オルタナS編集長・池田真隆)

■第一特集: 「DEIは競争力の源泉」
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I、多様性と包摂)はDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)に進化した。そして、LGBTQなど性的少数者、障がい者、移民や難民など社会的弱者を社会・企業・組織に積極的に取り組むことは、自由闊達な組織風土をつくるとともに、「競争力を高めるために不可欠」との認識が広がってきた。

日本はDEIの伸びしろが多い
元OECD東京センター所長の村上由美子氏は、「多様性のない日本企業は危機的状況にある」と指摘する。DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)を企業競争力に生かすリーダーの条件を聞いた。

キヤノンショック、女性役員ゼロの弁明は時代遅れ
女性役員ゼロの日本企業の議案に反対する機関投資家が増えている。2022年7月末時点ではプライム上場企業の2割弱の344社に女性役員がいなかった。その1社キヤノンの株主総会では、御手洗冨士夫会長兼社長CEOの取締役再任議案に多くの反対票が集まった。いわゆる「キヤノンショック」だ。

障がいの課題は製品・技術で解決
環境や社会の仕組みが「障がい」を生み出すととらえる「障がいの社会モデル」という考え方がある。こうした社会的な障壁を取り除く、さまざまな製品やサービスが生まれている。「合理的配慮」は、リスク管理にとどまらず、イノベーションを促進し、ビジネス創出につながりそうだ。

LGBTQ支援、大学にも広がる
LGBTQ当事者を支援し、受け入れ体制を整える動きは、教育機関にも広がっている。中央大学や早稲田大学などは専門のセンターを開設したほか、大学関係者による「大学ダイバーシティ・アライアンス」(UDA)も生まれた。

シニアとDEI、80歳、90歳も活躍、生きがいも成長も
少子高齢化に伴い、企業の人材不足がますます深刻になってきた。住友林業は柔軟な再雇用制度を取り入れ、70歳以降も再雇用を可能にした。ノジマも再雇用契約の上限を80歳に引き上げた。日本マクドナルドでは94歳のクルーが活躍する。シニア人材が「生きがい」を持って人生を送ることにも貢献する。

北米トヨタがDEIで全米4位、カイゼンも進む
北米トヨタが150社以上が参加する全米企業のDEIランキングで2年連続で4位にランクインした。DEI施策を進めることで、社員の定着率向上や、社員からアイデアが共有されることでの「カイゼン」も進む。

積水ハウス、人材サステナ戦略、男性育休率は100%
積水ハウスの「D&I」の取り組みは、2006年の「人材サステナビリティ」宣言から始まった。女性活躍から始まり、男性育休にも取り組んできた。男性育休取得率は19年から100%の取得を実現した。23年にはEの推進を目指し、DEIを掲げた。

ヘラルボニー、社会的な障壁をアートで変える
ヘラルボニーは「障害」を社会的障壁ととらえ、その所在を社会に問題提起する。アートライセンス事業を展開する同社はあえて営利を追求する株式会社の形態にこだわり、2027年度の株式上場を目指す。

大橋運輸、中堅中小企業こそDEIとESがカギ
人材確保が難しい物流業界で、大橋運輸(愛知県瀬戸市)への応募は途切れない。同社では、LGBTQ当事者、障がいがある人、外国人、高齢者など、多様な人材が活躍している。鍋嶋洋行社長は「中小企業こそDEIに取り組んでほしい」と語る。

■第二特集: 責任果たせぬなら、プライムから去れ
池田 賢志(金融庁CSFO)インタビュー
金融庁の池田賢志CSFOはオルタナの取材に対して、東証プライム上場企業でもサステナビリティに対する取り組みが足りなければ「上場先をプライム市場から変更するのが筋ではないか」と強い口調で語った。池田氏は「プライム上場を維持したいなら積極的に責任を果たすべきだ」と話した。

■第三特集: プラ汚染防止条約へ、野心的な目標を日本は描けるか
プラスチック汚染防止条約の策定に向けた国際交渉の第2回会合が、6月2日に閉幕した。2024年末までに条約制定を目指し、11月までに最初の草案をまとめる。世界共通ルールの導入を目指すが、積極派と消極派で二分している。

■トップインタビュー: 「『中計病』から脱却、挑戦を促す風土へ」
森島 千佳(味の素 執行役常務)
味の素の藤江太郎社長は2023年2月、30年までの経営戦略を発表した中で、「中期経営計画」の廃止を宣言した。いわゆる「中計病」から脱却し、社員がワクワクして挑戦しやすい社風づくりに取り組む。そのための指標として、社会価値と経済価値を統合したASV指標を掲げた。

■トップインタビュー: 「オープンな社風へ、エクイティ進める」
種家 純(ANAホールディングス 上席執行役員)
新型コロナ禍で過去最大の赤字を出した全日本空輸は、需要回復と事業構造改革によるコスト削減が進んだことで2023年3月期に3期ぶりの黒字化を達成した。非航空事業にも力を入れる同社は、DEIのうち「エクイティ」を重要視した「オープンな組織風土」づくりを目指す。

■トップインタビュー: 「自社株を消却せず配当を原資に財団」
山根 聡(小林製薬 専務取締役)
小林製薬が、買い取った自社株の配当を元手に公益財団を立ち上げて5年あまりが経った。本来なら、自社株は消却して一株当たりの利益を上げるのが一般的だが、同社は配当を社会貢献に充てた。その考えが株主の理解も得て、財団が動き出した。設立に尽力した山根聡専務に真意を聞いた。

■インタビュー: 再エネ100%は夢物語ではない
大石 英司(UPDATER代表取締役社長)
ウクライナ戦争による一時的な化石燃料回帰、原発推進のGX法案成立、新電力の相次ぐ撤退など、再生可能エネルギーの推進に逆風が吹いている。しかし、調達電力の9割以上が再エネの「みんな電力」を運営するUPDATERの大石英司社長は、今できることを着実に進めれば、再エネ100%は十分に可能だと言い切る。

■「オルタナティブの風」(田坂広志) 「言語知」から「身体知」の時代へ
これからの時代、AIの驚異的な進歩によって、人材に求められる条件と教育機関に求められる条件が、二つの点で、大きく変わっていくだろう。

■エゴからエコへ(田口ランディ) 「生きる力ってなに?」
少子化政策があまりにズレている。本当に少子化を止めたいと思っているんだろうか。根本的になぜ若者が子どもを産めないかが、政府はわかっていない。子どもを育てていく自信がないからだ。

■ESG情報開示最前線 (ESG情報開示研究会)
ESG活動が収益率を押し上げ
日立製作所は2021年7月に京都大学経営管理大学院・砂川(いさがわ)伸幸教授と共同研究プロジェクトを立ち上げました。非財務・無形資産への取り組みが、財務にどのようなインパクトがあるかを証明することが狙いです。

生物多様性への「依存」とは
生物多様性とビジネスは、その距離を急速に縮めつつあります。2022年12月は「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。30年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30目標」が主要な目標の一つとして定められ、ビジネスにおける生物多様性の主流化などの目標が打ち出されています。

■「真のサステナビリティ投資とは」(澤上篤人) 円安大合唱では日本は沈む
国を挙げてのインバウンド熱が高まっている。海外からの旅行客を増やし、お金を落としてもらう。それでもって、国内景気を高めようという算段だ。その鍵は円安である。海外からの旅行客からすると、円安はそれだけ日本への旅行がお得となる。

■モビリティトピックス(島下泰久)
液体水素で24時間耐久レース/ル・マン、30年に100%水素化へ/電動車ならでは、容易に性能アップ/いすゞとホンダ、FC大型トラック開発へ

■「モビリティの未来」(清水和夫) 高級スポーツカーとLGBTQ
LGBTQの権利を強く主張する欧米では、自動車を使ったユニークなイベントが開催されている。有名なのは毎年新年を祝うイベントとして開く「ヨーロピアン ゲイカー・オブ・ザ・イヤー」だ。

■農業トピックス
オーガニックビレッジが続々と/不適格な「日向夏」を飲料や菓子に/JTB、缶詰で食品ロスを低減へ/日東工業、太陽光で農地再生へ

■日本農業 「常識」と「非常識」の間(徳江倫明) 農業政策見直し、国民と議論を
ぼくに支持政党はない。あえて言えば、目指すべき政策の実現を共有できる議員を支持するということになる。

■林業トピックス
自伐型林業、10年で大幅増へ/EU、森林破壊フリーへ規制強める/治山対策は急務、気候変動に対応を/木造人工衛星実現へ、耐久性を実証

■「森を守れ」が森を殺す(田中淳夫) 「雑木」という木は存在しない
NHK朝ドラ「らんまん」のおかげか、牧野富太郎の「雑草という草はない」という言葉が知られるようになった。

■漁業トピックス
水産業界初の「Bコープ認証」/水産庁、トリチウムを毎日分析へ/ニッスイが進める養殖魚の福祉とは/海藻を牛に与えメタンガス削減へ

■「人と魚の明日のために」(井田徹治) ウナギの危機は続く
メディアでも近年、あまり取り上げられることがなくなったが、ニホンウナギを取り巻く状況は今も非常に深刻だ。水産庁によると2022年11月から今年初めにかけての今期のシラスウナギ漁も低調だった。

■フェアトレードトピックス(潮崎真惟子)
「最低価格」を3割引き上げ/「フェアトレード大学認定」とは/業種別の人権・環境DDガイド相次ぐ

■「フェアトレードシフト」(潮崎真惟子) 世界的にFT産品の需要高まる
5月にフェアトレードインターナショナルが発表した数値によるとフェアトレードに参加する世界の生産者・労働者は2021年に200万人を突破した。中東、アフリカ、中南米、アジア太平洋のすべての地域で増加し、全体では前年比4%増となった。

■ファンドレイジングトピックス(宮下真美)
資金提供も「インパクト連動」へ/インパクト投資残高は約6兆円に/ファンドレイザー、描くキャリアは/資金調達は「継続寄付」で

■「社会イノベーションとお金の新しい関係」(鵜尾雅隆) 評価が「評価」されるために
「社会を変えるということは、制度や事業が生まれることではなく、一人ひとりの『モノの見方』が変わることだ」。これは社会変革の本質を表している。

■廃棄物・静脈物流トピックス(エコスタッフ・ジャパン)
太陽光パネルの2Rを推進へ/経産省、再エネ設備廃棄へ対策/プラ新法成立後、処分事例に学ぶ/四国初、空港作業車にバイオ燃料

■論考・サーキュラーエコノミー(細田衛士) ペットボトルの水平リサイクルが熱い
このところ、ペットボトルからペットボトル(P2P)への水平リサイクルが本格化している。原料となる使用済みペットボトルをめぐって取り合いが生じるほどだ。

■欧州CSR最前線(下田屋毅) 飲食店の新グローバル基準
2023年6月、サステイナブル・レストラン協会(SRA:本部英国)は、食のサステナビリティのグローバル基準である「FOOD MADE GOODスタンダード」を発行した。これは各分野の専門家が、最新のサステナビリティ評価指標を飲食店・レストランに提供するものだ。前回その概要に触れたが、改めて詳細を紹介する。

■CSRトピックス(CSR48)
TDLコスチュームをアップサイクル/無印良品の「もったいない市」/フェアトレード意識、年々高まる/三井不、服の循環拠点を木更津に/マットレスに海洋プラごみ/楽天が「対話」のノウハウ明かす/[総監督のつぶやき]まだ知らない国連・平和の鐘

■「こころざし」の譜(希代準郎) 泥んこシルクロード
遠くうっすらと稜線を残して山々が連なる。それを背に草原を駆け抜ける馬の群れ。草はまばらで土煙があがる。ドッ、ドッ、ドッと地響きを立てて疾走している数は二十頭を超える。一人取り残された卓也には、風を切って走る心地よさよりも落馬の怖さの方が勝り、馬の背中しか目に入らない。
オルタナ72号 ★ 目次

April 2023 vol.72
contents

from editor in chief 3 alternative eyes 森 摂 「地球に優しい」はもう止めよう

social design gallery 4 命と環境守る福島の防災緑地

art 9 高橋さとみの切り絵ワールド─見せかけ

social business 11 [ウガンダ]廃棄牛乳で化粧水、マラリア予防にも
around the world 13 [デンマーク]100%植物由来、プラフリーのガム
15 [米国]高齢者の生活守るプリペイドカード

feature story1 16 ウォッシュ監視 国連も行政も
環境やSDGs、ESGなどに配慮しているように偽る「グリーンウォッシュ」への包囲網が、着々と狭まっている。
大きな転機は2022年11月、国連のグテーレス事務総長による「ウォッシュ撲滅宣言」だ。すでに欧州では
「ウォッシュ」を取り締まる規制や法制化が相次ぎ、グリーンウォッシュは「ソフトロー」から「ハードロー」に変わり始めた。

22 [英国] 公取委が監視強化、消費財も対象に
日本の公取委に当たる英競争・市場庁(CMA)は2023年1月、新たに食品、飲料、洗剤、セルフケア用品などの
消費財について「グリーンウォッシュ」の監視対象とすると発表した。CMAは消費者保護の視点から、環境配慮をうたう
商品・サービスを対象に、その表現や主張の根拠を精査する。

23 [消費者庁] 根拠なき生分解プラ、行政処分の対象に
消費者庁は2022年12月、「生分解性」をうたっていたカトラリー類やレジ袋などの表示が「優良誤認」にあたるとして、
10社に対し行政処分を行った。生分解性プラは、「特定の環境下」で生分解するが、土壌や海中でも分解するかのような誤解を
与えると判断した。

24 [視界不良の炭素中立] ゼロエミ火力、リスクも輸出
政府は2050年「カーボンニュートラル」を目指すが、化石燃料業界には「不透明なカーボンニュートラル」が広がる。
自称「CO2を出さない」火力発電はCO2そのものを輸出する計画まで出てきた。カーボンニュートラルな液化天然ガス(LNG)も
クレジット頼みだ。

27 [GX基本方針] 原発・化石燃料、「脱炭素に使うな」
政府は今後10年間のエネルギー政策として「GX基本方針」を掲げた。しかし、その内容は、原発の最大限活用や石炭火力の維持など、
国際潮流と逆行する。認定NPO法人気候ネットワーク東京事務所の桃井貴子所長は「ウォッシュそのものだ」と指摘した。

28 [木質バイオマス発電] 石炭よりCO2多い輸入木質ペレット
大規模な木質バイオマス発電所の建設が全国で相次ぐ。燃料となる木質ペレットの輸入量は年々増加し、国内生産量の約20倍に上った。
しかし、NPO法人バイオマス産業社会ネットワークの泊みゆき理事長は、輸入木質ペレットを使用した場合のCO2排出量の多さを問題視する。

29 [ドリーム燃料装置] 「永久機関的に動く」、人工石油に疑問符
2023年1月、大阪市や大阪府などの支援で、「水と大気中のCO2などから生成する人工石油」の実証実験があった。
この「ドリーム燃料製造装置」を開発したのは、京大名誉教授で立命館大学総合科学技術研究機構・上席研究員の今中忠行氏だ。
同氏はオルタナの取材に対して、装置を「永久機関的だ」と形容した。

30 [現代奴隷] 希少金属を巡りEVに人権リスク
電気自動車(EV)用バッテリーには、コバルトやリチウムといった希少金属が不可欠だ。しかし、その採掘現場や生産プロセスでは、
児童労働や強制労働が起きている。自動車メーカーは環境性能だけでなく、人権に関する情報開示を進めなければ、「ウォッシュ」と
批判されるリスクもある。

31 [チャットGPT] 性差別や人種差別、AIにも偏見潜む
対話型AI「チャットGPT」の登場で、AIと人間との距離が一気に縮まった。AIは、作業だけではなく、意思決定の自動化まで進め、
さまざまな場面で実用化されている。一方、学習データのバイアス(偏見)によって、公平性が失われるなど倫理的なリスクも抱える。

32 [ピンクウォッシュ] LGBTQ+啓発、宣伝先行に注意を
「LGBTQ+」を巡る権利擁護や啓発の一貫で、企業のロゴが「レインボー」に彩られる機会が増えた。差別や偏見が根強い社会で、
LGBTQ+に関する取り組みの広がりを歓迎する声が高まる一方、「ピンクウォッシングでは」という批判的な声も聞こえてくる。

33 [動物福祉] 畜産物の飼育環境、客観的な説明を
アニマルウェルフェア(動物福祉)を担保するためには、客観的な指標が必要だ。しかし、多くの日本企業は客観的指標を明示することなく、
牧歌的なイラストや「大切に育てた」など、あいまいな表現で飼育の実態を覆い隠している。

feature story2 34 最大のリスクは社員からの不信任
「『SDGsウォッシュ』がもたらす最も深刻なダメージは、社員のエンゲージメントの低下だ」。こう主張するのは、ソニーブラジル社長、
WWF(世界自然保護基金)ジャパン事務局長を経て、現在は中堅・中小企業のSDGs経営を支援する筒井隆司・日本ノハム協会専務理事だ。
同氏がSDGsウォッシュのリスクを解説する。

feature story3 36 「SDGs疲れ」、全世代に広がる
オルタナ総研はオズマピーアール(東京・千代田)と、企業のサステナビリティ領域実務担当者と生活者を対象にした「SDGs意識調査」を
行った。企業のSDGsに関する情報発信は増えているが、生活者の「SDGs疲れ」とでも呼ぶべき現象が浮き彫りになった。

top interview 38 パーパスと信念で社員を能動的に
掬川 正純(ライオン 代表取締役社長CEO)
ライオンはパーパス(存在意義)を実践するための拠りどころとして、ビリーフス(信念)を策定している。その信念を共有するために、
社内への情報発信やワークショップを重ねる。その意図を掬川正純社長に聞いた。

40 個が活きる職場はDEI指標から
宮地 純(カルティエ ジャパン プレジデント&CEO)
カルティエ ジャパンが職場を自分らしく働ける「居場所」にする取り組みに力を入れる。DEI(多様性・公正性・包摂性)の一環で、
性別や国籍、障がいの有無などを乗り越え、すべての人々を迎え入れる施策だ。「DEI指標」の作成を目指す。

42 最先端ICTで児童労働を可視化
佐藤 利弘(ロッテ 常務執行役員[ESG担当])
ロッテは2023年2月、国内初となるブロックチェーン技術による実証実験を始めた。ブロックチェーンのシステムを活用して、
サプライチェーンの児童労働リスクの可視化に取り組む。非上場企業でありながらESG/サステナ経営を推進する狙いを聞いた。


columns 45 オルタナティブの風 田坂広志
民主主義と資本主義の「過信」
47 エゴからエコへ 田口ランディ
「危険な国保」

finance 48 ESG情報開示最前線 ESG情報開示研究会
49 真のサステナビリティ投資とは 澤上篤人
日銀はあるべき姿を取り戻せ

mobility 50 モビリティトピックス 島下泰久
51 モビリティの未来 清水和夫
FCEVが日本で増えないワケ

agriculture 52 農業トピックス オルタナ編集部
53 日本農業 「常識」と「非常識」の間 徳江倫明
農業は「農家の専有物」ではない

forestry 54 林業トピックス オルタナ編集部
55 「森を守れ」が森を殺す 田中淳夫
林野庁が描く日本の森の未来図

fishery 56 漁業トピックス オルタナ編集部
57 人と魚の明日のために 井田徹治
海藻食と藻場の未来

fair trade 58 フェアトレードトピックス 潮崎真惟子
59 フェアトレードシフト 潮崎真惟子
リスク評価は何から始めるべきか

fundraising 60 ファンドレイジングトピックス 宮下真美
61 社会イノベーションとお金の新しい関係 鵜尾雅隆
「ウォッシュ」への懸念が質高める

circular economy 62 廃棄物・静脈物流トピックス エコスタッフ・ジャパン
63 論考・サーキュラーエコノミー 細田衛士
時代は「ハイパワードマテリアル」

65 欧州CSR最前線 下田屋毅
食のグローバルムーブメント

66 CSRトピックス CSR48

68 SBL(サステナブル・ビジネス・リーグ)とは

69 バックナンバー

flash fiction 70 「こころざし」の譜 希代準郎
アコーディオン弾きの自転車旅

72 次号予告&編集後記





オルタナ71号 ★ 目次

January 2023 vol.71
contents

from editor in chief
3 alternative eyes  森 摂 
あと「7年半」しかない

social design gallery
4 絶滅危機にあるアジアの霊長類

art
9 高橋さとみの切り絵ワールド──今の時間

social business around the world
11  [ナイジェリア]電子ごみでつくるソーラーランタン
13  [日本]袴(はかま)風「巻きスカート」、車椅子男性にも

feature story 1
14 サステナビリティ2023メガトレンド
 2023年のサステナビリティ領域は、これまでにない大きな変化が起きるだろう。2月に開戦1年を迎えるウクライナ戦争は、各国のエネルギー・食料調達に大きな打撃を与えた。脱炭素に向けて、「あるべき姿」と現実のギャップは開きつつある。世界的な物価高騰は、貧困・低所得者層の生活を直撃した。ジェンダー問題にも目を離せない。2023年のメガトレンドを追った。

17 [誰がSDGsを殺すのか] 最大の脅威は価値の糊塗(こと)
 SDGsの認知度が高まる一方で、米シンクタンクがSDGs達成は2092年になるとの予測を発表した。「SDGsがファッションになりつつある」と警鐘を鳴らし、「バリュー(価値)」を評価するモデルを構築した同志社大学大学院ビジネス研究科の須貝フィリップ教授、井上福子教授に寄稿してもらった。

18 [GX(グリーン・トランスフォーメーション)] 炭素税・排出量取引、国際潮流に遅れる
 政府は炭素の価格付け制度「カーボンプライシング」(CP)をGXの中核に位置付けるが、導入には二の足を踏む。足元のエネルギー危機に翻弄され、「未来のあるべき姿」を描き切れていない。「30年46%減」の国際公約も迫る。脱炭素とエネルギーの安定供給の同時実現には、高度な政治判断が必要だ。

20 [GHG/スコープ3] 一次データの推奨、2つの省が足並み
 環境省と経済産業省はこのほど、企業活動における温室効果ガス(GHG)排出量「スコープ3」の算定において「一次データ活用」の推奨で足並みを揃えた。企業のGHG排出削減努力を反映させることに主眼を置く。企業など民間側もおおむね追随する見通しだが、業界や企業の独自事情を訴える声もある。

22 [元ユニリーバCEO/国連グローバル・コンパクト副議長 ポール・ポールマン]
   野心的な目標が最高の企業文化に 
 ユニリーバのサステナ経営を10年にわたってけん引したポール・ポールマン元CEOが書面インタビューに応じた。サステナ経営こそ長期的に利益を上げる唯一の方法だと言い切り、「野心的目標が最高の企業文化をつくる」と強調した。

25 [ダイバーシティ] DEIのE(エクイティ)とは何か
 人材施策として「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)」に加え、「エクイティ」を掲げる企業が増えてきた。日本語で「公平性」と訳される言葉だが、どういう意味を持つのか。「イクオリティ(平等)」とは何が違うのか。

27 [LGBTQ施策] 企業の対応で温度差が顕著に
 LGBTQ当事者に対する取り組みで、企業間の格差が鮮明になってきた。同性パートナーも「結婚」と認めて、祝い金や家族手当を出す企業がある一方で、ジェンダー意識が薄い企業も多い。企業の人材獲得や社会からの評価において、LGBTQ課題がリスクにも機会にもなり得る時代になった。

feature story 2
28 [気候変動] IPCC報告書、「1.5℃」の未来予測
 脱炭素の議論で必ず耳にするのがIPCC報告書だ。パリ協定「1.5℃目標」などの国際的合意は、この報告書が元になるケースが多い。最新版の第6次評価報告書「第1作業部会報告書」は、気候変動が進むと何が起きるかを、最新の科学的知見に基づいてシミュレーションしている。(オルタナ客員論説委員・財部明郎)

30 サステナブル★セレクション2022
   「サス★セレ」三つ星に5件
 オルタナとCSR経営者フォーラムは2022年9月17日、サステナブルな製品/サービス/ブランドを推奨する「サステナブル★セレクション」2022の三つ星選考会を開いた。その結果、三つ星として5件が選んだ。

top interview
32 DEIの統合が企業成長のカギ
ロレーナ・デッラジョヴァンナ(日立製作所 チーフ・サステナビリティ・オフィサー)
 日立製作所のダイバーシティ推進を担うイタリア出身のロレーナ・デッラジョヴァンナ常務。2020年4月に担当役員に就任し、従来のD&I(多様性と包摂)に公正性を意味する「E」を加えた「DEI」と、成長戦略との統合を進める。その真意を聞いた。

34 国内最速150kW、充電器を全国へ
マティアス・シェーパース(アウディ ジャパン 代表取締役)
 アウディが2026年以降に投入する新型車は、すべてBEV(バッテリー式電気自動車)となる。日本においても24年までに15車種を投入する。日本法人のマティアス・シェーパース社長は、これまでのEV充電器の3倍の充電速度となる150kWの充電器を各地に展開すると表明した。

FEATURE STORY 3
38 [デンマーク] 「牛が踊る」牧場、飼料も有機で
 デンマークは、世界で最も有機食品が流通するオーガニック先進国だ。日本の目標より20年以上早い「2030年までに有機農業比率および市場シェア30%」を目指す。有機農業推進の背景には、環境配慮を含めた「食の安全」と、動物福祉の観点があった。


columns
45 オルタナティブの風 田坂広志
「予測・制御不能社会」の出現

47 エゴからエコへ 田口ランディ
「マイナンバーカードってどうよ?」

finance
48 ESG情報開示最前線 ESG情報開示研究会
49 真のサステナビリティ投資とは 澤上篤人
代理人運用が社会を滅ぼす

mobility
50 モビリティトピックス 島下泰久
51 モビリティの未来 清水和夫
新型プリウスをどうみるか

agriculture
52 農業トピックス オルタナ編集部
53 日本農業 「常識」と「非常識」の間 徳江倫明
有機農業、過去と未来の50年

forestry
54 林業トピックス オルタナ編集部
55 「森を守れ」が森を殺す 田中淳夫
生物多様性なくして経済なし

fishery
56 漁業トピックス オルタナ編集部
57 人と魚の明日のために 井田徹治
養殖業への過剰な期待

fair trade
58 フェアトレードトピックス 潮崎真惟子
59 フェアトレードシフト 潮崎真惟子
脱炭素だけで気候変動は止まらない

fundraising
60 ファンドレイジングトピックス 宮下真美
61 社会イノベーションとお金の新しい関係 鵜尾雅隆
「家族」という機能を社会化する

circular economy
62 廃棄物・静脈物流トピックス エコスタッフ・ジャパン
63 論考・サーキュラーエコノミー 細田衛士
資源高は循環経済のチャンス

65 欧州CSR最前線 下田屋毅
飲食業界のサステナ表彰

66 CSRトピックス CSR48

68 SBL(サステナブル・ビジネス・リーグ)とは

69 バックナンバー

flash fiction
70 「こころざし」の譜 希代準郎
海底都市に住む日

72 次号予告&編集後記
●第一特集:外形のガバナンス 内面のガバナンス
ESGの重要な柱を形成するガバナンス。その共通の指針として、日本でもコーポレートガバナンス・コード(CGC)が策定されてから7年が経った。2021年6月には2度目の改訂を経て、上場企業にさらなる組織改革や情報開示を迫る。だが、CGCが可視化できるのは「外形のガバナンス」だ。それと同等以上に「内面のガバナンス」が重要だ。

・「カビ型不祥事」、根絶への対処法  郷原 信郎(弁護士)
 郷原信郎弁護士(郷原総合コンプライアンス法律事務所)は「ムシ型」不祥事は一部の悪意がある経営幹部や社員によるもの、データ改ざんや談合は社内にまん延する「カビ型」に分類する。

・社外取締役との情報格差を埋めよ  大久保 和孝(公認会計士)
 上場企業6社の社外取締役を務める、コンプライアンスと危機管理の専門家・大久保和孝氏は、「ガバナンス改革は取締役会のあり方を見直すことから始めるべき」と訴える。そのポイントは、社内取締役と社外取締役との情報格差だ。

・「ノルマ」を廃止、組織に「風」通す  関根 正裕(商工中金社長)
 商工組合中央金庫は2016年に発覚した大規模な不正融資事件を受け、貸し付けノルマの廃止など組織風土の改善に力を入れてきた。ガバナンス改革は制度設計など外形だけにこだわらず、従業員の心理的安全性など内面にまで踏み込んだ。

・「匿名チャット」で内部通報の壁破る――日産自動車
 社内で不正が発覚したとき、世間に訴えられる前に対処・改善することが望ましい。その仕組みの一つが「内部通報制度」だ。日産自動車は匿名チャット形式にしたことで通報件数が増加したという。

・心理的安全性は「ESG対話」で――積水ハウス
 地面師詐欺事件が発覚した積水ハウスは、2018年を「ガバナンス改革 元年」と位置付け、4年間で27項目の具体的施策を実行してきた。全従業員との「ESG対話」も実施している。

・モノ言う株主よりモノ言う社員を――レオパレス21
 歪(ゆが)んだ企業風土が不祥事を引き起こす。施工不備が発覚したレオパレス21では利益最優先の体質などがあった。「モノ言う社員」を増やすことで企業風土の改革を目指す。

・座談会:ガバナンス改革は「企業文化」から
 ESG投資が広がる中、国内企業にガバナンスは根付いたのか。ガバナンスを機能させるには何が必要なのか。運用機関ESG担当者(A氏)、ESGコンサルティング会社パートナー(B氏)、大手メーカーESG担当者(C氏)の3人に語ってもらった。

●サステナブル経営 トップインタビュー
・サーバーの冷却も液体で行う時代
大島 葉子(日本マイクロソフト 執行役員)
 マイクロソフトは2030年までの「カーボンネガティブ」や「ウォーターポジティブ」を掲げている。データセンターの100%再エネ化や水の使用量90%以上の削減を目指すとともに、約1100億円を新たな環境技術の研究開発に投資する。

・ESGの4本柱、循環経済を推進へ
エイジャズ・ムンシフ(デル・テクノロジーズ CDO)
 デル・テクノロジーズは環境負荷を減らす「脱物質化」を軸にサステナビリティを推進する。製品が古くなったときに簡単に貴金属やプラスチックを分離・回収できるように設計し、ビジネスモデルそのものを循環型に変えていくことが最終目標だ。

・音力から波力へ、久米島で実証実験
速水浩平(グローバルエナジーハーベスト代表取締役)
 慶応義塾大学SFC発技術ベンチャーとして2006年に創業した「音力発電」は22年2月、「グローバルエナジーハーベスト」に社名変更し、循環型波力揚水発電の実証実験を進める。対費用効果が上がれば、世界有数の海岸線を持つ日本で、波力発電のポテンシャルは大きい。速水浩平社長に勝算を聞いた。

・LGBTの葛藤、命を守る責任
パトリック・ジョーダン(日本コカ・コーラ 人事本部長)
 日本のコカ・コーラシステム全6社がLGBTQ施策を進めている。同性パートナーに配慮した就業規則を整備したほか、同性婚・LGBT平等法の実現を求めるキャンペーンを展開。自身も当事者と明かす日本コカ・コーラのパトリック・ジョーダン人事本部長は、「多様性の尊重は事業の成長に欠かせない」と力を込めた。

●第二特集:温室効果ガス算定、変わる「スコープ3」
 環境省は2024年3月をめどに、企業や組織の温室効果ガス(GHG)の排出量のうち「スコープ3」(間接排出)について、「一次データ」(実測値)を使った算定方法の方針を示すことが明らかになった。これまで国内では売上高や取引高と業種平均(産業連関表ベース)の排出係数を基にした推計値によって算定していた。

●第三特集:人権DD義務化、日本の動き鈍く
 2022年8月末、国連が新彊ウイグル問題で報告書を出したのを受け、サプライチェーン上の人権問題は企業にとって一層のリスクになるのは必至だ。すでに人権DD(デューディリジェンス)を義務化した欧州などにならい、日本政府も動き出したが、人権DDの義務化にはほど遠い。

●第四特集:35年ガソリン車もHV車も販売禁止
 米カリフォルニア州大気資源局(CARB)は8月、2035年以降に販売するすべての自動車を「ゼロエミッション車(ZEV)」とする議案を可決した。35年以降はHV車の販売も禁止とし、PHEVは販売量や電池のみの走行距離に基準を設ける。

●第五特集:核融合は本当にクリーンで安全か
 次世代の発電システムとして、小型原発などとともに国が期待を寄せているのが核融合発電だ。海水から燃料を作ることができ、クリーンで安全で実用化も近いとされている。しかし、一つひとつ検証していくと問題が山積みだ。

from editor in chief
3 alternative eyes  森 摂 
ガバナンスを「統治」と訳してよいのか

social design gallery
4 温暖化と豪雨災害

art
9 高橋さとみの切り絵ワールド─お日さまの輝き

social business around the world
11  [香港] 香港の高級ホテル、ベジタリアン化
13  [日本] トートバッグのコンポストが人気

32 サステナブル★セレクション2022
「サステナブル★セレクション」とは、サステナブルな理念と手法で開発された製品/サービス/ブランドを選定し、オルタナが推薦する仕組みです。合格した製品/サービス/ブランドは、オルタナ誌面やウェブサイトでご紹介します。サステナブル★セレクションの一つ星は製品/サービス/ブランドの持続可能性を審査します。二つ星はこれに加えて組織のサステナビリティを審査します。第5期一つ星は追加募集をして新たに3点、二つ星は11点を選定しました。

columns
53 オルタナティブの風 田坂 広志
第四次産業革命が求める三つの能力

55 エゴからエコへ 田口 ランディ
崩壊する終末期医療

finance
56 ESG情報開示最前線 ESG情報開示研究会
57 真のサステナビリティ投資とは 澤上 篤人
渦巻くエネルギーと世界政治

mobility
58 モビリティトピックス 島下 泰久
59 モビリティの未来 清水 和夫
BEVが越えるべき3つの壁

agriculture
60 農業トピックス オルタナ編集部
61 日本農業 「常識」と「非常識」の間 徳江 倫明
必要なのは「第二の農地解放」

forestry
62 林業トピックス オルタナ編集部
63 「森を守れ」が森を殺す 田中 淳夫
理想の林業の「つまみ食い」

fishery
64 漁業トピックス オルタナ編集部
65 人と魚の明日のために 井田 徹治
ASCすり身に人生最後の挑戦

fair trade
66 フェアトレードトピックス 潮崎 真惟子
67 フェアトレードシフト 潮崎 真惟子
なぜバナナは値上げしないのか

fundraising
68 ファンドレイジングトピックス 宮下 真美
69 社会イノベーションとお金の新しい関係 鵜尾 雅隆
新しい資本主義は共感型に

circular economy
70 廃棄物・静脈物流トピックス エコスタッフ・ジャパン
71 論考・サーキュラーエコノミー 細田 衛士
新しい経済には新しい付加価値を

73 欧州CSR最前線 下田屋 毅
レストランのネット・ゼロ

74 CSRトピックス CSR48

76 SBL(サステナブル・ビジネス・リーグ)とは

77 バックナンバー

flash fiction
78 「こころざし」の譜 希代 準郎
もしも鈴のような声だったなら

80 次号予告&編集後記
●今号の表紙
アサヒユウアスが開発したエコカップ「UPCYCLE B 森のタンブラー」。「使い捨て」という消費行動の変革を目指す。アサヒビールモルトが加工する際に発生する廃棄物(焙煎麦芽粉末)を55%含有した「森のタンブラー MUGI」を使う。© Atsushi Kishimoto

●第一特集:アウトサイド・イン、さらに進化・深化
SDGsの公式用語「アウトサイド・イン」が「進化」「深化」の度合いを深めてきた。SDGsの公式文書では「社会ニーズを捉えた目標設定」を指すが、本誌では、「社会課題の解決を起点にした事業創出」と定義した。さまざまな事例を調べると、「アウトサイド・イン」には4つのパターンがあることが分かった。

【SDGsアウトサイド・イン ビジネス事例】
・[ロート製薬 山田邦雄会長] 社内起業家が守る人と社会の「健康」 
2016年に「薬に頼らない製薬会社へ」を掲げたロート製薬。同社は、農・食事業、微細藻類の培養など、課題解決型の事業を次々に手掛けている。一貫しているのは、「健康」へのこだわりだ。その真意を山田邦雄会長に聞いた。

・[島津製作所] 回診用X線装置、コロナ禍最前線へ 
島津製作所の回診用X線撮影装置はベッド脇、手術室、ICU(集中治療室)など、必要な場所に移動して撮影し、その場で画像を確認できる。機動性と小回りの良さで被災地やコロナ医療の現場で活躍し、患者や医療従事者の負担軽減に貢献している。

・[クラダシ] 食品ロス削減の「連携ハブ」を担う 
クラダシ(東京・品川)は「日本でもっとも食品ロスを削減」をビジョンに、社会貢献型ショッピングサイトを運営。賞味期限が近づいた食品を最大97%オフで販売し、収益の一部を社会活動に寄付する。こども食堂を支援する実証実験もスタートさせた。

・サブスク×EC、「廃棄ゼロ」実現へ 
サブスクリプションとECサイトを掛け合わすことで「廃棄ゼロ」を目指すプラットフォーマーが増えてきた。サブスク元年の2019年から3年が過ぎ、市場規模は1兆円を超えようとしている。アウトサイド・インを戦略に顧客の開拓を狙う。

・[ウォータースタンド] 給水スポット広げ、脱ペット30億本 
ウォータースタンド(さいたま市)は、水道直結ウォーターサーバーのレンタル事業を行う。これを給水スポットとして広げ「マイボトルを持ち歩く文化」を根付かせ、2030年までに日本の使い捨てペットボトル約30億本の削減を目指す。

・[米 国] LA発デニムが持続可能性を追求 
年間930立方㍍の水を使用し、約50万㌧ものマイクロファイバーを海洋に排出するアパレル業界は、世界2位の「環境汚染産業」とされている。なかでも、デニムの環境負荷が高く、米ロサンゼルス(LA)生まれのサステナブルなデニムブランドが注目を集めている。

・[フランス] 捨てられた牡蠣殻、靴や化粧品にも 
フランスの大西洋海岸には、牡蠣をはじめ貝殻が大量に打ち上げられる。生牡蠣を出すレストランは、廃棄された殻が可燃ゴミとして扱う。それらを廃棄せず、スニーカーや化粧品などほかの製品にアップサイクルする動きが始まった。

●サステナブル経営 トップインタビュー

・渡邊 功[東急電鉄 社長]
日本の鉄道で「再エネ100%」一番乗り
東急電鉄は2022年4月1日、鉄道運行に使用する電力を100%再生可能エネルギー由来に切り替えた。日本の鉄道会社としては初だ。渡邊功社長は、コロナ禍で経営が苦しい今こそ「鉄道の復権」をかけて脱炭素に舵を切ったという。

・秋山 佳子[ヤマト運輸 執行役員(サステナビリティ推進部長)] 
50年に脱炭素化、グリーン物流へ
運輸業界最大手のヤマトグループ/ヤマト運輸は「2050年までにCO2自社排出量実質ゼロ」を打ち出し、サステナブル経営を進めている。環境ビジョン「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」を掲げ、30年までにEV2万台を導入するほか、再生可能エネルギーの割合を7割に高める。

・ジュネジャ・レカ・ラジュ[亀田製菓会長CEO]
柿の種に頼らない課題解決企業へ
「亀田の柿の種」「ハッピーターン」などのヒット商品で知られる亀田製菓が、ベジミート、アレルギー対応、防災備蓄など、社会課題に対応する食品企業への脱皮を目指している。指揮を取るのは。インド出身で、2022年6月に会長CEOに就任したジュネジャ・レカ・ラジュ氏だ。

●第二特集 :独「脱炭素」貫く、水素・メタンも緑(グリーン)化
ウクライナ戦争でロシアからの天然ガス輸入を止め、脱石炭も迫られるドイツが、新たな「脱炭素」施策を採り始めた。再エネ電力比率は45%に達したが、昼間の余剰電力と送電能力不足も顕在化している。その解決策として有望視されるのが、再エネによるグリーン水素の製造と、グリーンメタンの合成だ。「P2G」(パワー・トゥ・ガス)と呼ばれる新しい潮流を追った。

●第三特集:サステナの道標 認証/マーク一覧
サステナビリティは「非財務領域」であり、数値化や進捗の管理が難しい。環境、人権、ジェンダー、ダイバーシティ、働き方改革など領域も幅広い。このため、官庁や国内外NGOなどの「認証」「マーク」を取得する企業が増えている。その背景も含めてまとめた。


3 from editor in chief
alternative eyes   森 摂 
脱炭素は「きれいごと」なのか

4 social design gallery
1億人を超えた世界の避難民

6 オルト・キーワード  もり ひろし
CSRD/グリーンフレーション

9 art
高橋さとみの切り絵ワールド──お題を頂戴いたします

social business around the world
11  [ニュージーランド] フンコロガシが土壌汚染を救う
13  [日本] 嚥下食カフェで「食のバリアフリー」

28 SUSTAINABLE★SELECTION 2022
持続可能な新星、業種を超え輝く 
株式会社オルタナと一般社団法人CSR経営者フォーラム(会長・徳江倫明)は、「サステナブル★セレクション」第5期★(一つ星)の公募を行い、その中から30件を選定しました。

columns
53 オルタナティブの風  田坂 広志
長寿と淘汰の時代のキャリア戦略
55 エゴからエコへ  田口 ランディ
農業はビジネスなのか

finance(新連載)
56 ESG情報開示最前線  ESG情報開示研究会
57 真のサステナビリティ投資とは  澤上 篤人
金融緩和、どこまでやるの
mobility
58 モビリティトピックス  島下 泰久
59 モビリティの未来  清水 和夫
社会課題起点、半世紀前から
agriculture
60 農業トピックス  オルタナ編集部
61 日本農業 「常識」と「非常識」の間  徳江 倫明
すべての人に「農業する権利」
forestry
62 林業トピックス  オルタナ編集部
63 「森を守れ」が森を殺す  田中 淳夫
林業は「分業」から「連携」へ
fishery
64 漁業トピックス  オルタナ編集部  
65 人と魚の明日のために  井田 徹治
深刻、漁業労働の人権侵害
fair trade
66 フェアトレードトピックス  潮崎 真惟子
67 フェアトレードシフト  潮崎 真惟子
「人権」厳罰化にどう向き合うか
fundraising
68 ファンドレイジングトピックス  宮下 真美
69 社会イノベーションとお金の新しい関係  鵜尾 雅隆
不確実性の時代で「確実なこと」
circular economy
70 廃棄物・静脈物流トピックス  エコスタッフ・ジャパン
71 論考・サーキュラーエコノミー  細田 衛士
リチウムイオン電池の功罪

73 欧州CSR最前線  下田屋 毅
国民の覚悟

74 CSRトピックス CSR48

76 SBL(サステナブル・ビジネス・リーグ)とは

77 バックナンバー

flash fiction
78 「こころざし」の譜 希代 準郎
ナースの「行商保健室」

80 次号予告&編集後記
●第一特集「戦争と平和と資本主義」
ロシアのウクライナ侵攻は、世界の民主主義と資本主義を大きく揺らがせた。グローバル企業の一部はロシア事業からの撤退をいち早く打ち出したが、ファンドには、ロシアや兵器産業への投資を続ける事例もある。ESGやSDGsの基本理念である「人と地球」を守れるか─。投資する側も企業も、その存在意義を問われている。

[保阪 正康] 民主主義の生育 根本から揺らぐ 

「健全な資本主義」は、「健全な民主主義」が前提だ。しかし、ロシアはウクライナに軍事侵攻し、民主主義の基盤を揺らがせた。昭和史を研究してきたノンフィクション作家の保阪正康さんは「民主主義の生育そのものが根本から問われている」という。

[小宮山 宏] 自律・分散・協調で新産業の創出を 

21世紀の社会は、「地球」「寿命」「知識」の3つの制約を抱えている。小宮山宏・三菱総合研究所理事長は、「これらの新しい制約を克服することは、新産業の創出にもつながる」と説き、日本の新しい資本主義の姿として「プラチナ社会」を提唱する。

[高岡 浩三] 産業の新陳代謝で「平和と成長」を 

元ネスレ日本社長の高岡浩三氏は経済学の権威フィリップ・コトラー氏と分断が加速するグローバル資本主義の問題点を議論していた。平和と経済成長を両立するには、産業の新陳代謝が効果的だと語る。

[澤上 篤人] 「資本家」なき暴走 パーパスを問え 

「さわかみ投信」の創業者・澤上篤人氏は地政学リスクを高め、所得格差を拡大させた背景には「資本家」不在で暴走する強欲資本主義があると指摘する。今こそ事業の存在意義を見直し、世の中に「問え」と言い切る。

[藻谷 浩介] 自然資本の利子で生活の持続性を 

国際情勢が不安定さを増すなかで、資本主義はどうあるべきか。『里山資本主義』の共著者で地域エコノミストの藻谷浩介氏は「循環再生」を軸にした「脱・成長」の資本主義を提唱する。

[佐藤暁子] 世界の「平和」 企業は守れるか 

ロシアのウクライナ侵攻を受け、平和というものがいかに脆く、意識的に、主体的に守っていかなくてはいけないか、多くの人が痛感しているのではないだろうか。ただし、これはウクライナだけで起きている出来事ではない。

[高村 ゆかり] 脱炭素戦略こそエネ自給のカギに 

国際政治が不安定さを増すなか、エネルギー自給型の炭素社会をつくることはレジリエントな社会づくりにつながる。高村ゆかり・東大教授はそのための重要戦略として、「分散化」と「内部化」を挙げた。

[大西 連] 「成長と分配」より「分配と成長」を 

「貧困を社会的に解決する」をミッションに活動してきた認定特定非営利活動法人自立生活サポートセンターもやい(東京・新宿)。大西連理事長は「政府が掲げる『新しい資本主義』に『新しさ』はなく、『成長』に偏っている。まずは低所得者層の底上げが必要だ」と強調する。

[大沢 真知子] 「新しい資本主義」 主役は働く個人に 

ワークライフバランスからワークライフシナジーへ。日本の労働市場を長く見つめてきた大沢真知子・日本女子大学名誉教授は、働く個人の気持ちに寄り添うことこそが「新しい資本主義」のカギになると説く。

●第二特集 ウクライナ侵攻も自然エネ政策は不変
ロシアのウクライナ侵攻は、エネルギー安全保障の問題を改めて浮き彫りにした。これを機に、自然エネルギーへのシフトが進むとする一方で、原子力や化石燃料も必要だという声もある。世界と日本が取るべき選択肢とは。自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長に聞いた。

●トップインタビュー
永原 範昭[フィンエアー 日本支社長]航空も化石燃料を使わない時代へ

航空大手のフィンランド航空(フィンエアー)が、2045年までに「カーボンニュートラル」を表明した。燃料消費が少ない航空機エアバスA35Oを導入するほか、持続可能な燃料(SAF)への代替で実現を目指す。欧州では短距離便の廃止も進める。永原範昭・フィンエアー日本支社長に脱炭素戦略を聞いた。

マーティン・パーソン[ボルボ・カー・ジャパン 社長]「脱炭素」はWHYからHOWへ

ボルボは、2030年までに全世界で販売する乗用車をすべてEV化する。2040年には、製造も含めた全行程でカーボンニュートラルを目指す。HEVなどと両天秤を掛ける日本メーカーとは一線を画し、EV一本に舵を切った。その勝算を同社日本法人のマーティン・パーソン社長に聞いた。

セイコーエプソン[瀬木 達明 取締役常務執行役員/木村 勝己 部長]日本最速で「電力100%再エネ化」

セイコーエプソンは2021年11月、国内拠点で使用する電力の100%を再生可能エネルギーに切り替えた。国内の製造業としては最速だ。23年中には、全世界の拠点で100%切り替えを目指す。スピード感ある再エネシフトをどうやって可能にしたのか。担当の瀬木達明常務と、木村勝己部長に聞いた。

●第三特集 脱炭素目標は「2040年より前」に
パリ協定の「1.5度目標」を達成するために、「2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ」という標準目標を前倒しする企業の動きが出てきた。アストラゼネカが「2025年までに事業所での排出ゼロ、30年までにバリューチェーン全体でゼロ」という新目標を打ち出した。マイクロソフトや花王、NTTなども追走する。

●第四特集 「原発はクリーン」 実は高いハードル
欧州委員会は「EUタクソノミー」に原子力と天然ガスでの発電を含める方針を示し、夏までの法制化に動く。原発は温室効果ガスを排出しないが、使用済み核燃料の処分場の問題や、ロシアによるウクライナ原発の占拠など、リスクは大きい。原発は本当に「クリーン」なのか。

●コラム
オルタナティブの風  田坂 広志「戦略的反射神経」の時代

エゴからエコへ  田口 ランディ 教育の平等なくして民主主義なし

モビリティトピックス  島下 泰久

モビリティの未来  清水 和夫 自動車3原則の大転換期

農業トピックス  オルタナ編集部

日本農業 「常識」と「非常識」の間  徳江 倫明 従来の延長線上に未来はない

林業トピックス  オルタナ編集部

「森を守れ」が森を殺す  田中 淳夫 林業で誰が分配を担うのか

漁業トピックス  瀬戸内 千代

人と魚の明日のために  井田 徹治 「公正な移行」で構造転換を

フェアトレードトピックス  潮崎 真惟子

フェアトレードシフト  潮崎 真惟子 資本主義の「その先」と平和

ファンドレイジングトピックス  宮下 真美

社会イノベーションとお金の新しい関係  鵜尾 雅隆 寄付は平和を求める市民の「意思」

廃棄物・静脈物流トピックス  エコスタッフ・ジャパン

論考・サーキュラーエコノミー  細田 衛士 私益と公益の両立した経済を

欧州CSR最前線  下田屋 毅 ステークホルダーと資本主義

CSRトピックス CSR48

「こころざし」の譜 希代 準郎 兄のペイ・フォワード
●第一特集「サステナビリティ2022メガトレンド」
「サステナビリティ領域」が大変動期に入った。ESGのE(環境)では、「2030年に温室効果ガス46%削減」の政府目標が産業界を突き動かす。S(人権)の領域では、企業の「人権リスク」が至る所で噴出し始めた。G(ガバナンス)改革は待ったなしだ。2022年に何が起きるか、メガトレンドを追った。

・企業のパーパス(存在意義)、源流は日本にも
日本でも、企業がパーパス(存在意義)を定める動きが広がってきた。ESGの視点でも、消費者のから共感や信頼を得るためにも不可欠だ。パーパスは英語由来で、海外から輸入した概念と見られがちだが、実は日本の伝統企業の間でも脈々と受け継がれてきた。(法政大学人間環境学部教授・長谷川 直哉)

・パーパス トップの肉筆
環境事務次官 中井 徳太郎
病気の地球を治す─カーボンニュートラル

花王株式会社 執行役員(ESG部門統括) デイブ・マンツ
豊かな生活文化 実現するよきモノづくり

ヒルトン 日本地区運営責任者 ティモシー・ソーパー
「トラベル・ウィズ・パーパス」を胸に

大橋運輸株式会社 社長 鍋島 洋行
「企業の多様性が地域を豊かに」

株式会社中特ホールディングス 代表取締役 橋本 ふくみ
「生活環境革命で人々を幸せに」

・「国際統合報告」、一貫性へ大同団結
世界の非財務情報開示をリードしてきた国際統合報告評議会(IIRC)と米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)が2021年6月に統合し、価値創造財団(VRF)として発足した。そのVRFをも取り込む形で、国際財務報告基準(IFRS)の運営財団が2022年6月、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を発足させる。今回の基準統合で何が変わるのか。

・「炭素税」「排出量」、法制化は五里霧中
2020年10月の菅義偉首相(当時)による「2050年カーボンニュートラル」宣言を受けて、日本は脱炭素に向けて大きく舵を切った。その根幹政策は「炭素税」と「排出量取引」など「カーボンプライシング」だ。「温室効果ガス46%減」を掲げた「2030年」まであと9年しかないが、その行方は「五里霧中」だ。

・SDGsの実践でやる気が高まる
2015年9月の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)を採択してから6年が過ぎた。日本でもSDGsの認知度は高まったが、今後はSDGsとビジネスをどう連動させ、社会課題を解決できるかが問われる。SDGsの取り組みと社員の「やる気」に「正の相関」があるとの調査結果も出た。

・4月の「プラ新法」、本丸はリサイクル
プラスチックごみを削減し、回収やリサイクルを通して資源循環を促す「プラスチック新法」が、2022年4月に施行となる。海洋プラごみや気候変動問題に対応し、サーキュラーエコノミーへの移行を図る一歩として期待を集める一方で、専門家や環境NGOからは実効性を疑問視する声も出る。

・「生物多様性」、再び脚光の年
2022年は「生物多様性」の年になりそうだ。4─5月に中国の昆明で開く予定のCOP15では、野心的で具体的なグローバル生物多様性枠組(GBF)を採択する予定だ。TCFDの生物多様性版「TNED」の開発も始まった。(レスポンスアビリティ代表・足立 直樹)

・ビジネスと人権、舞台は国内へ
日本が移民受け入れに大きく舵を切ろうとしている。出入国在留管理庁は、外国人の在留資格「特定技能」について、2022年度に在留期限を無くす検討に入った。外国人労働者が増えると、サプライチェーン上で不当な労働条件や人権侵害などのリスクが増える可能性がある。

・「動物福祉」が企業リスクに
 「アニマルウェルフェア」(動物福祉)が企業リスクとして認知され始めた。世界各地で、採卵鶏のケージ飼いの段階的廃止が進み、世界2200社以上が「ケージフリー宣言」を行った。日本企業はどのように動物福祉に向き合えば良いのか。

●サステナビリティ経営 トップインタビュー

・スタニスラブ・ベセラ(P&Gジャパン 社長)
持続可能性にも「真実の瞬間」
P&Gは、サプライチェーン全体で「2040年までに温室効果ガス排出量ネットゼロ」と、他社より10年早い野心的な目標を掲げた。社内外でのイクオリティ(平等)の推進にも積極的だ。日本法人のスタニスラブ・ベセラ社長はサステナビリティ(持続可能性)をどうとらえるのか。

・松井透(三井物産 執行役員 エネルギー第一本部長兼エネルギーソリューション本部長)
脱炭素への移行透明性と責任で
脱炭素/カーボンニュートラルに向けて、世界で「脱石炭」が急速に加速している。電力の「安定供給」に取り組んできた三井物産はどう挑むのか。同社でエネルギー事業を総括する松井透・執行役員に戦略を聞いた。

・藤野英人( レオス・キャピタルワークス会長兼社長)
ESGマネーは「市民が動かす」
日本でもESG(サステナブル)投資が全体に占める割合が増え、世界全体でも運用資産の約3分の1がESG投資だ。一体、誰が投資家を動かしているのか。レオス・キャピタルワークスの藤野英人会長は、「突き詰めると市民」と言い切る。

●目次
3 from editor in chief
alternative eyes  森 摂
サステナブル経営の「三種の神器」

4 social design gallery
自由を求めて

9 art
高橋さとみの切り絵ワールド──お控えなすって

social business around the world
11 [ニュージーランド]
「使い捨てない」布製クラッカー

13 [米国]
ジェンダー問題、児童書で啓発

36 SUSTAINABLE★SELECTION 2021
アサヒ・UR(アーバンリサーチ)など10件に三ツ星

オルタナとCSR経営者フォーラムは11月5日、サステナブルな製品/サービス/ブランドを選定して推奨する「サステナブル・セレクション」の「★★★(三ツ星)」選考会を開いた。その結果、三ツ星に10件、二ツ星に4件が選ばれた。

columns
49 オルタナティブの風  田坂 広志
「新しい資本主義」とは何か
 
51 エゴからエコへ  田口 ランディ
「水俣曼荼羅」

finance
52 地域金融トピックス  オルタナ編集部
53 つなぐ金融  林 公則
これからの金融教育

mobility

54 モビリティトピックス  島下 泰久
55 モビリティの未来  清水 和夫
クルマの低炭素、「多様性」で挑め

agriculture
56 農業トピックス  オルタナ編集部
57 日本農業 「常識」と「非常識」の間  徳江 倫明
2030年の日本農業の行方

forestry
58 林業トピックス  オルタナ編集部
59 「森を守れ」が森を殺す  田中 淳夫
林業はSDGsに合致するか

fishery
60 漁業トピックス  瀬戸内 千代
61 人と魚の明日のために  井田 徹治
酸性化と高温のダブルパンチ

fair trade
62 フェアトレードトピックス 潮崎 真惟子
63 フェアトレードシフト  潮崎 真惟子
市場のゲームチェンジャーは小売業

fundraising
64 ファンドレイジングトピックス  宮下 真美
65 社会イノベーションとお金の新しい関係  鵜尾 雅隆
「財団」が持つ社会変革の可能性

circular economy
66 廃棄物・静脈物流トピックス  エコスタッフ・ジャパン
67 論考・サーキュラーエコノミー  細田 衛士
完全リサイクルはあり得ない

69 欧州CSR最前線  下田屋 毅
レストランの持続可能性とは

70 CSRトピックス  CSR48 
総監督のつぶやき CSR48・太田 康子
「MINAMATA」を観て思う

72 SBLの紹介

73 バックナンバー

flash fiction
74 「こころざし」の譜  希代 準郎
天国と地獄

76 次号予告&編集後記

(敬称略)

今号の表紙
国連「気候変動に関する政府間パネル」は2021年8月、異常気象と温暖化の相関を調べた報告書を発表した。温暖化対策が不十分な場合、南極の氷床が溶け、2300年までに海洋に崩落する可能性があり、海面は15m上昇すると分析した。
写真:清水 誠司/アフロ
オルタナ66号(2021年9月30日発売)

●第一特集
自動車ジャーナリスト・清水 和夫 責任編集
「2035年のモビリティ」

EUをはじめ世界各地でガソリン車規制が相次いで発表され、自動車の電動化が加速している。だが、最終ゴールである気候変動の抑制に対し、選ぶべき手段は電動化だけで良いのだろうか。「2035年のモビリティ」を提案する。

・[対談]清水和夫×島下泰久
イーロン・マスクの大義と計算
高級電気自動車、蓄電ビジネス、宇宙開発──。話題に事欠かないイーロン・マスクは一体何を考えているのか。本誌連載中の二人が話し合った。

・希少金属と人権、クルマの未来に影
EVシフトが進むほど、コバルトやリチウム、アルミニウムなど鉱物資源が必要になる。主産地はアフリカや南米など途上国が多い。「児童労働」や土地収奪、環境汚染が問題視されるなか、自動車業界は原材料の見直しや、人権リスクを評価するプロジェクトを開始した。

・テスラが電力会社になる日
米テスラが電力の小売り販売に乗り出す。2021年8月末、テキサス州の当局に電気小売り販売の免許を申請した。CNNやブルームバーグなど複数のメディアが報じた。テスラはEV生産だけでなくソーラー発電、蓄電池の販売から電力小売りまでの「垂直統合」を目指す。

・中国の一帯一路、EVも鉱物も運ぶ
中国の「一帯一路」広域経済圏構想では、すでに欧州、アジア・オセアニア、アフリカ、中南米など130カ国以上が政府間協定を結んだ。アフリカだけで40カ国に上る。そしてEVに不可欠なレアメタルも、「一帯一路」に多く存在する。好むと好まざるに関わらず、2035年、一帯一路の陸海運でEVやその原材料が行きかう日が朧気に浮かび上がる。

●第二特集
ガバナンス、伝統企業ほど弱い
「ESG(環境・社会・ガバナンス)経営」や「ESG投資」が叫ばれているにもかかわらず、企業が「ガバナンス危機」に陥る事例は後を絶たない。古い経営体質が残る伝統的な企業ほど、ガバナンス改革に手が回っていない。何が邪魔をしているのか。

●第三特集
プラスチックニュートラルは持続可能か
脱炭素や「海洋プラスチックごみ問題」が世界的な課題になる中、「プラスチックニュートラル」という新しい概念が出てきた。米国リパーパス・グローバル社(ニューヨーク州)などの認証団体も生まれ、すでに認証を発行し始めた。しかしプラスチックをどう値付けするか、統一したルールや国際基準はない。なにより、プラスチックはCO2と違って「劣化」するため、クレジットに向かないという根本問題がある。

●サステナビリティ経営 トップインタビュー
・サンジェイ・サチュデヴァ(ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング 社長)
企業の存在意義、事業成長を加速
ユニリーバは、「売上高を2倍、環境負荷を半分にする」という「サステナブル・リビング・プラン」の期間を終え、2021年1月に新たな戦略「ユニリーバ・コンパス」を打ち出した。成長と持続可能性の両立を目指す同社日本法人のサンジェイ・サチュデヴァ社長に聞いた。

・田川 丈二(日産自動車 専務執行役員 チーフサステナビリティオフィサー)
脱炭素に向き合い、ピンチを機会に
世界の自動車メーカーが一斉にEV化に進む中で、国産勢も「脱炭素」に向けて大きく舵を切った。日産自動車は世界的な脱炭素の枠組み「SBT」にも復帰し、カーボンニュートラルに向けてさまざまな施策を打つ。田川丈二・専務執行役員CSOは、「ゴーン事件以降の当社ガバナンスは大きく変わった」とも強調した。

・豊田 治彦(積水ハウス 常務執行役員兼ESG経営推進本部長)
ガバナンス改革、役員は4階層に
積水ハウスがESG経営を進めている。環境面では、ソーラーパネルで電力を自給する省エネ住宅の販売比率を91%に高めた。ガバナンス改革では、社外取締役の増員に続いて、執行役員を「委任型」「雇用型」に分け、取締役、業務役員と合わせて4階層とし、責任を明確化。その狙いを聞いた。

・乾 正博( シン・エナジー 社長)
地域の活性化は再エネづくりから
日本にとって、「2050年カーボンニュートラル」の目標達成以上に重要なのが「エネルギーの地産地消」だ。日本のエネルギー自給率はわずか11.8%で、約20兆円もの国富が海外に流出する。再エネのエンジニアリング会社シン・エナジー(神戸市)は、再エネを通じて地域経済を活性化したいと意気込む。

●目次

3 from editor in chief
alternative eye  森 摂
モビリティとサステナビリティ

4 social design gallery
混迷のアフガン、女子教育に危機

9 art
高橋さとみの切り絵ワールド──それぞれの道のり

social business around the world
11 [ドイツ]
独発「色付き液体」、正しい手洗い学ぶ

13 [日本]
カカオ農家の危機、ITで生産支援

36 SUSTAINABLE★SELECTION
オルタナ編集部が推奨するサステナブル★セレクション2021 第4期

オルタナ編集部が定めた審査基準をもとに選んだ「サステナブル★セレクション 第4期」が決定しました。合格した13件(2つ星1件、1つ星12件)を紹介します。

 サステナブルセレクション(オルタナ/一般社団法人CSR経営者フォーラム共催)は、サステナブル(持続可能)な手法で開発された製品/サービス/ブランドを選定して、ご紹介する仕組みです。「★」は製品/サービス/ブランドそのもの、「★★」の応募は任意で、組織としてサステナブル経営を推進しているかどうかをオルタナ編集部が選定します。
 最高位の「★★★」は毎年10月に開かれる審査委員会で決定します。「★」の募集は年4回実施します。

columns
49 オルタナティブの風  田坂 広志
「神の技術」がもたらすもの
 
51 エゴからエコへ  田口 ランディ
エヴァ的世界の日本人

finance
52 地域金融トピックス  オルタナ編集部(山口 勉)
53 つなぐ金融  林 公則
有機種苗を支える「種苗基金」

agriculture
54 農業トピックス  越道 京子
55 日本農業 「常識」と「非常識」の間  徳江 倫明
「新生産様式」に転換できるか

forestry
56 林業トピックス  オルタナ編集部
57 「森を守れ」が森を殺す  田中 淳夫
新型トラックから考える輸送費

fishery
58 漁業トピックス  瀬戸内 千代
59 人と魚の明日のために  井田 徹治
IUU漁船漁獲物が日本に

fair trade
60 フェアトレードトピックス 潮崎 真惟子
61 フェアトレードシフト  潮崎 真惟子
フェアトレード市場規模は131億円に

fundraising
62 ファンドレイジングトピックス  宮下 真美
63 社会イノベーションとお金の新しい関係  鵜尾 雅隆
オリパラに見る、スポーツと寄付

circular economy
64 廃棄物・静脈物流トピックス  エコスタッフ・ジャパン
65 論考・サーキュラーエコノミー  細田 衛士
「需要」を無視したCEは成り立たない

69 欧州CSR最前線  下田屋 毅
バングラデシュの新国際協定

70 CSRトピックス  CSR48 
総監督のつぶやき CSR48・太田 康子
「インクルーシブな社会へ」

72 SBLの紹介

73 バックナンバー

flash fiction
74 「こころざし」の譜  希代 準郎
タクシードライバーの五輪物語

76 次号予告&編集後記

●今号の表紙
フランスのロワール川流域に広がるロワール渓谷にある田舎道。ロワール渓谷はアンボワーズ、アンジェ、トゥールなどの歴史上の重要都市がいくつも点在する。アンボワーズ城など名城(シャトー)もあることから「フランスの庭園」の異名を取る。 写真:アフロ
オルタナ65号(2021年6月30日発売)

●第一特集「ビジネスと民主主義 ESGの『S』が問われる」
企業と社会の関係性が大きく変わり始めた。人種差別や人権問題で、企業は明確なスタンスの開示と行動変容を、社会から求められるようになった。ビジネスは「健全な民主主義」が前提であり、企業はESG(環境・社会・ガバナンス)のうち、特に「S」領域においての対応強化が必須だ。

・新疆(しんきょう)ウイグル問題 「沈黙というリスク、人権侵害への加担」
中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害が明るみになってきた。豪シンクタンクは2020年3月に報告書を発表し、日本企業14社を含む82社のサプライチェーン上で強制労働が行われていると指摘。日本企業はどのように受け止めたら良いのか。

・[フランス]富の集中に危機感、民衆運動で抵抗
フランスでも、政権を握ったエリートが富裕層と結び付いて、富の集中を生んでいる。その状況下で出てきた黄色いベスト運動と環境保護運動が、「気候市民会議」創設の糸口を作った。市民によって提案された法案の一部は、今夏可決される予定だ。

●サステナビリティ経営 トップインタビュー
・「顧客にも社会にもベストホテルへ」徳丸 淳(帝国ホテル 代表取締役常務(SDGs推進担当))
いまだ新型コロナウイルス収束の見通しが立たないなか、帝国ホテルは2021年2月、「サービスアパートメント」を立ち上げるなど、事業の立て直しを図る。背景には「時代の変化のなかで、社会の要請に応えていくことが、企業の成長につながる」という信念があった。

・「CO2だけでなく食品ロスもゼロに」今田 勝之(ローソン取締役 専務執行役員(CSO補佐))
日本でも「脱炭素」の流れが加速するなか、ローソンはCO2排出だけでなく、食品ロスも「2050年ゼロ」を掲げた。その過程ではAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)なども駆使する。今田勝之・専務執行役員(CSO補佐)に目標達成への手応えを聞いた。

・「脱プラ推進は『共感』がカギ」水口 貴文( スターバックス コーヒー ジャパンCEO)
世界に33000店以上、国内でも1600店を展開するスターバックスが環境対応を進めている。最大テーマはプラスチックごみの削減だ。マイストローなど環境配慮型の飲用スタイルへの移行を促すが、そのカギは「共感」にあるという。

●第2特集 世界に逆行する日本農業
「有機」伸び悩み、ゲノム編集推進へ
日本の農業は今、存亡の危機にある。世界では「小規模家族農家」が見直され、有機農業が急成長する。一方で、日本では逆行した動きがある。農水省が打ち出した「みどりの食料システム戦略」は、「ゲノム編集」を中軸に据えるなど、世界の潮流に逆行している。

●第3特集 来年4月から新法──減プラ商品が続々
プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立し、22年から施行される予定だ。使い捨てストローやフォークなどを提供する事業者は、有料化などで、使用量を減らすことが義務付けられる。これから注目されそうな減プラにつながる製品を紹介する。

●第3特集 自治体SDGs認証──百花繚乱で混乱も
自治体による「SDGs認証」制度が増えている。企業のSDGsの取り組みを評価することで、金融機関からの支援を受けやすくなる「SDGs金融」を進める意味もある。だが、自治体によって基準にバラつきもあり、「統一した基準が必要」との声も出ている。

●目次

3 from editor in chief
alternative eye  森 摂
民主主義と資本主義の未来

4 social design gallery
元警官に有罪判決、喜びと安堵の声

9 art
高橋さとみの切り絵ワールド──太陽の一族

social business around the world
11 [スコットランド]
「生理の貧困」は、無償配布で解決

13 [米国]
パタゴニアと並ぶ環境推進ブランド

15 [日本]
がん当事者が開発、竹箸で食べやすく

columns
45 オルタナティブの風  田坂 広志
「合理的利他主義」の思想
 
47 エゴからエコへ  田口 ランディ
東洋医学を学ぶ

finance
48 地域金融トピックス  オルタナ編集部
49 つなぐ金融  林 公則
「スローマネー」、4つの原則とは

mobility
50 モビリティトピックス  島下 泰久
51 モビリティの未来  清水 和夫
温暖化対策、EV効果は26位

agriculture
52 農業トピックス  越道 京子
53 日本農業 「常識」と「非常識」の間  徳江 倫明
農水省の新戦略は自己変革か

forestry
54 林業トピックス  オルタナ編集部
55 「森を守れ」が森を殺す  田中 淳夫
ウッドショックが起きた裏側

fishery
56 漁業トピックス  瀬戸内 千代
57 人と魚の明日のために  井田 徹治
水産関連企業の活況は「虚構」

fair trade
58 フェアトレードトピックス 潮崎 真惟子
59 フェアトレードシフト  潮崎 真惟子
FTの知名度向上へ合従連衡

fundraising
60 ファンドレイジングトピックス  宮下 真美
61 社会イノベーションとお金の新しい関係  鵜尾 雅隆
富裕層に「社会貢献」のうねり

circular economy
62 廃棄物・静脈物流トピックス  エコスタッフ・ジャパン
63 論考・サーキュラーエコノミー  細田 衛士
「プラ資源循環法」とソフトロー

67 欧州CSR最前線  下田屋 毅
日本発コットン・イニシアチブ

68 CSRトピックス  CSR48 
総監督のつぶやき CSR48・太田 康子
「世界人権宣言に思う」

alterna S presents
70 オルタナSな若者たち オルタナ編集部
エシカルを就活の指標へ
株式会社Allesgood社長 勝見 仁泰

72 SBLの紹介

73 バックナンバー

flash fiction
74 「こころざし」の譜  希代 準郎
ある孤高の画家の肖像

76 次号予告&編集後記

●今号の表紙
中国北西部の新疆ウイグル自治区ハミの畑で綿(コットン)を摘む女性。新疆綿は中国で生産される綿のうち8割を占め、世界の綿生産量の2割に及ぶ。ウイグル自治区での人権侵害が明らかになり、新疆綿の取り扱いをやめる企業が増えている。
写真:新華社/アフロ
今号の表紙
スウェーデン南部の古都ルンドにある風車。1868年に建造され、1950年まで稼働していた。ルンドには北欧でも最も古い歴史を持つ1666年創立のルンド大学があり、町全体がキャンパスになっている学園都市。人口約12万人のうち4割が大学関係者だ。環境先進都市としても知られる。(写真:Niklas Morberg)

3 from editor in chief
alternative eye  森 摂
国境炭素税と「脱炭素ドミノ」

7 art
高橋さとみの切り絵ワールド──未来は 今つくられている

social business around the world
9 [フランス]
環境配慮マスクで海洋ゴミを削減へ

11 [インド]
伝統的な手仕事で女性の自立支援

13 [日本]
正しいコロナ情報、多言語で伝える

14 feature story
グリーンな脱炭素、グレーな脱炭素
石炭も原発もアンモニアも頼れない

2020年10月の菅首相「脱炭素宣言」以来、日本の産業界は「2050年カーボンニュートラル」に向けて大きく舵を切った。しかし実態は、環境負荷が低くはない「グレーな脱炭素」が混ざっている。特に問題なのは原発と「アンモニア発電」だ。CO2の回収・利用・貯留もコストが高い。何が本当の「グリーン」で、何がグレーな脱炭素なのか、仕分けした。

21 
大増税せずに炭素税は可能
町田 徹氏(経済ジャーナリスト、ラジオ番組キャスター、ノンフィクション作家)
現行の地球温暖化対策税は、欧州各国の炭素税に比べて数十分の1の税率にとどまる。エネルギーや税制に詳しいジャーナリスト、町田徹氏は「菅政権が『脱炭素』を宣言した以上は、本格的な炭素税を導入し、一本化することが必要だ」と主張する。

22 [ノルウェー]
世界最速の脱炭素、新車の7割EVに
ノルウェーは世界よりも20年早い「2030年までにカーボンニュートラル(炭素中立)」を目指す。2025年に化石燃料車の新車販売ゼロを目標とするが、すでに新車の約7割はEVが占めている。なぜこれほどまでに環境意識が高いのか。

23 [米 国]
マスキー法の舞台、CA州が牽引役に
バイデン米大統領は就任早々、パリ協定の復帰を果たした。EV普及率一位のカリフォルニア州は、70年代にマスキー法で厳しい排ガス規制を打ち出し、「良い環境規制は企業を強くする」というポーター仮説の舞台でもある。

24 [フランス]
炭素税抜け道多く、市民の不満募る
フランスは2014年に炭素税を導入し、毎年税率を上げる予定だったが、2018年秋に「黄色いベスト運動」で槍玉に挙げられ、税率の引き上げは凍結された。エネルギー関連企業ではなく、国民に負担が行く仕組みが反感を買った。

25 [英 国]
再エネ、化石上回る 「風力大国」現実に
2020年11月に「グリーン産業革命」を宣言した英国は、2020年の再生可能エネルギーの発電量が初めて化石燃料の発電量を上回った。2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ化目標を掲げ、風力発電の主電源化を進める。

top interview
26
伊藤 順朗(セブン&アイ・ホールディングス 取締役常務執行役員)
50年に「実質ゼロ」、脱炭素は店舗から
セブン&アイ・ホールディングスが「脱炭素」に向けて大きく舵を切った。2020年には、「50年までにCO2排出量実質ゼロ」や事業活動の100%再エネ化を矢継ぎ早に打ち出した。10年来サステナビリティ戦略に携わる、伊藤順朗・取締役常務執行役員に話を聞いた。

28
溝内 良輔(キリンホールディングス 常務執行役員(CSV戦略担当))
脱炭素はチャンス、40年に再エネ100%
日本企業でいち早くCSV(共通価値の創造)を取り入れたキリンホールディングスが、脱炭素戦略を加速している。日本の飲料メーカーとして、いち早くSBTやTCFD、RE100などの国際イニシアティブに加わった。CSV戦略を統括する溝内良輔・常務執行役員が描く戦略を聞いた。

30
大塚 友美( トヨタ自動車 Deputy Chief Sustainability Officer)
自動車の量産から、「幸せの量産」へ
菅首相の「脱炭素宣言」以来、日本の自動車各社も「創業以来の大変革」に向けて大きく舵を切った。電動化やモビリティの在り方の変化は、自動車産業を根本から覆すとされる。最大手のトヨタ自動車は、どうけん引するのか。サステナビリティ戦略を統括する大塚友美氏に聞いた。

sustainable★selection
34 サステナブル★セレクション2021

columns
43 オルタナティブの風  田坂 広志
「ポジティビズム」の時代
 
45 エゴからエコへ  田口 ランディ
ミャンマーの民主化に応援を

finance
46 地域金融トピックス  オルタナ編集部
47 つなぐ金融  林 公則
自由な芸術には自由なお金を

mobility
48 モビリティトピックス  島下 泰久
49 モビリティの未来  清水 和夫
森氏発言は男性優位脱却へのよい機会

agriculture
50 農業トピックス  越道 京子
51 日本農業 「常識」と「非常識」の間  徳江 倫明
新型コロナと動物福祉の関係

forestry
52 林業トピックス  オルタナ編集部
53 「森を守れ」が森を殺す  田中 淳夫
再生可能エネルギーは再生可能か

fishery
54 漁業トピックス  瀬戸内 千代
55 人と魚の明日のために  井田 徹治
一歩前進、持続可能なシーフード

fair trade
56 フェアトレードトピックス 中島 佳織
57 フェアトレードシフト  中島 佳織
「フェアトレード」の根底に流れる価値観

fundraising
58 ファンドレイジングトピックス  宮下 真美
59 社会イノベーションとお金の新しい関係  鵜尾 雅隆
渋沢栄一とソーシャルセクターの未来

circular economy
60 廃棄物・静脈物流トピックス  エコスタッフ・ジャパン
61 論考・サーキュラーエコノミー  細田 衛士
循環経済と循環型社会はどこが違う

65 欧州CSR最前線  下田屋 毅
EUデュー・ディリ指令

66 CSRトピックス  CSR48 
総監督のつぶやき CSR48・太田 康子
「SDGsと就活」

alterna S presents
68 オルタナSな若者たち オルタナ編集部
CSVで離職率下げたい
鈴木 一平(リジョブ社長)

72 SBLの紹介

73 バックナンバー

flash fiction
74 「こころざし」の譜  希代 準郎
ミラーワールドの憂い

76 次号予告&編集後記






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オルタナの内容

  • 出版社:オルタナ
  • 発行間隔:季刊
  • 発売日:3,6,9,12月の末日
  • サイズ:A4
オルタナは環境や消費者の健康、CSR(企業の社会責任)に重点を置いたビジネス情報誌です
オルタナの誌名は英語の「alternative(もう一つの)」から採りました。環境とCSRの両方を前面に掲げている雑誌としては日本で唯一の存在です。重点取材分野は、環境/CSR/自然エネルギー/第一次産業/ソーシャル/エシカルなどです。環境や健康、CSR(企業の社会責任)など、新しい(オルタナティブな)ビジネスの価値観で動く企業を積極的に報道し、こうした企業と連携しコミュニティをつくり、相互交流を図ることで私たちの社会に新しいビジネスの価値観を広げていきます。

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