薬局 発売日・バックナンバー

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2,200円
特集:「つながる」記録術 -診療・調剤報酬算定&患者サポートに備える!-

≪特集の目次≫

■特集にあたって モノからヒトへの時代に求められる「つながる」記録(吉村 知哲)

■記憶より記録 立ち上がれ! 令和の薬剤師(田﨑 嘉一)

■情報を次につなげろ(藤田 千佳 ほか)

■業務効率をアップする「記録」の書き方講座(喜田 昌記 ほか)

■要点チェック! 記録を算定要件とする診療・調剤報酬(松田 浩明)

■カルテを書く技術から学ぶ「つながる」記録のコツ(上村 克徳)

■私の「つながる」記録術
・治療方針の見直しにつながった「薬剤管理指導記録」の書き方・残し方(古屋 宏章)
・患者ケア方針の見直しにつながった「薬剤管理指導記録」の書き方・残し方(神田 将哉)
・リスク評価につながった「薬剤管理指導記録」の書き方・残し方(船越 晴喜)
・入院から外来へつながった「持参薬鑑別報告書」の書き方(安福 平)
・シームレスな療養支援につながる「退院時指導記録」「薬剤管理サマリー」の書き方(仲谷 彰規 ほか)
・地域ネットワークの活性化を目指した「入退院時指導記録」の共有(佐藤 裕司)
・疑義照会につながった「薬歴」の書き方・残し方(大野 朋子)
・業務改善につながった「薬歴」の書き方・残し方(米良 真理)
・インシデント回避につながった「トレーシングレポート」の書き方(越智 英治)
・処方変更につながった「トレーシングレポート」の書き方 ―介護者の薬識不足への介入―(船見 正範)
・肺がん患者における「お薬手帳コメント」の書き方(中根 茂喜)
・多職種連携につながった「居宅療養管理指導報告書」の書き方・使い方(大森 智史)
・スムーズな受診につながった医師への「紹介状」の書き方(髙島 英滋)
・最適な処方支援につながった「プレアボイド」の書き方(森 卓之)
・研究報告につながった「インシデントレポート」の書き方 ―病院での事例―(百 賢二)
・業務改善につながった「インシデントレポート」の書き方 ―保険薬局での事例―(村田 勇人)
・安全性情報の構築につながった「医薬品安全性情報報告書」の書き方(越塚 宏美)
・薬の適正使用につながった掲示物・配布物の作り方(船戸 元子)
・市民の健康意識向上につなげる研究の記録の取り方(坂口 眞弓)
・自己研鑽につながったSNSの使い方(児島 悠史)

≪シリーズ≫

■えびさんぽ
 血圧はしっかり下げた方が良いですか?
 (青島 周一)

■医薬品適正使用・育薬 フラッシュニュース
 ・上気道感染の咳にはハチミツが薬より効果的
 ・Z drugで認知症患者の脳卒中リスクが上昇
 (佐藤 宏樹 澤田 康文)

■くすりのかたち外伝 わかる! 使える! まいにち薬会話〈第1回〉
 「休薬期間は,1週間です」
 (浅井 考介 柴田 奈央)

■現場で働く薬剤師のための 臨床薬学研究のオモテ・ウラ 〈第1回〉
 テーマ選びのオモテ・ウラ① ~臨床研究力を発揮する~
 (大井 一弥)

■Gebaita?! 薬剤師の語ログ〈第1回〉
 検査値という『どうぐ』を使えていますか? ~薬局のお仕事RPG編~
 (大森 智史)

■腫瘍薬学ハイライト
 がん悪液質とアナモレリン
 (川西 正祐)

■喫茶よりみち 薬剤師の知っ得リテラシー〈Scene #01〉
「緊急事態」ってなんだっけ… ~身近な政策にまつわる情報はどこにある?~
 (井出 和希)

■薬剤師力の型 ―新たな思考と行動プランを手に入れろ!〈壱ノ型〉
 環境要因も考慮し,患者状態を把握せよ!
 (島田 泉)

■臨床薬物動態のPITFALL -その常識,ウソ? ホント?-
 肝臓で代謝阻害を有する薬物を併用・中止した場合の薬物血中濃度はどうなる
 (花井 雄貴)

■薬剤師が三ツ星シェフ-業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ-
 病態別栄養編③ 心不全
 (東 敬一朗)

≪書評≫

 オウムと731と新型コロナ -時代の証人がみたバイオテロの真相-
 (小島 眞)

≪巻頭言≫

-モノからヒトへの時代に求められる「つながる」記録-

厚生労働省が示した「患者のための薬局ビジョン」により,薬剤師業務は薬という「モノ」中心から「ヒト」中心に変換が求められ,対人業務をより充実させる方向で動き出している.「ヒト」とは,患者はもちろん,薬剤師同士,医師や看護師をはじめとした医療スタッフも対象となる.ヒトとヒトがつながるには会話,表情,文書などがあり,つながった証拠として「記録」を残すことになる.薬剤師の記録においては,病院であれば薬剤管理指導記録が,保険薬局であれば薬剤服用歴があり,その他にも,退院時薬剤情報管理指導,お薬手帳への記載,施設間情報連絡書,症例報告,トレーシングレポートなどがある.これらの記録は,患者の服薬管理・支援に必要不可欠である上,診療報酬や調剤報酬関連において非常に重要な役割を果たす.例えば,薬剤管理指導記録は,診療報酬の算定要件を満たす必要があると同時に,電子カルテ上で表示されるため医師や看護師などの他の職種に薬剤師の視点で薬物治療の評価をわかりやすく記載することで,「伝える」という役割も担っている.そのため,記載した内容が他の職種に情報共有され,しっかりと「伝わる」ことが求められる.伝わることで多職種と「つながる」ことになる.
では,「伝わる」「つながる」記録を書くにはどうすればいいか.それには,誰を対象とする記録なのか,求められている情報は何かを把握し,簡潔にわかりやすく記載することが必要となる.対象が患者であれば専門用語の使用にも気を遣わなければいけない.必要とされる情報を相手がわかるようにまとめることがポイントとなるであろう.さらに,記録を書く上で効率化も必要になってくる.限られた時間・範囲内で必要な情報を網羅することは容易ではない.しかし,最近の電子薬歴は,自動バックアップ機能や文書整理,テンプレートなどによる入力補助機能などがあり大変便利である.
対人業務が進展する薬剤師業務のなかで,患者や多職種とのかかわりはますます増えるであろう.意思疎通を図りコミュニケーションを築き上げる上でも,情報共有するための記録は大事な要素の一つとなる.そして,他者からの評価や信頼にもつながる.一方,自分を守る上でも記録が重要となる.「記録がすべてである」といわれるように,記録はヒトと関わった「証拠」となる.どんな薬剤指導をしたのか,その内容が記載されていなければ指導していないことになってしまう.記録はヒトとのつながりを「つながった証拠」として記録をしっかりと残せるか.ヒトとのつながりがよりいっそう増す時代に,記録として残すことがより求められる時代ともいえよう.伝えるべき人に伝わる記録,つなげるべき人につながる記録を残したいものである.
本特集では,「つながる」記録術というテーマで,実践で活躍されている方々から“私の記録術”を披露していただいた.本特集を読者のみなさまの日常的な薬剤業務および患者サポートに役立てていただければ幸いである.

吉村 知哲
大垣市民病院 薬剤部長
2,200円
特集:2021年なにあった? -くすり・ガイドライン・社会 etc…-

≪特集の目次≫

■はじめに ~2021年を振り返って~(石井 伊都子,大井 一弥,室井 延之,山浦 克典)

■診療ガイドラインの公開・改訂動向と最新知見の見どころ(青島 周一)

■Catch Up! 診療ガイドライン
 ガイドラインTOPICS
・消化器領域のガイドラインが続々改訂!①機能性消化管疾患(FD,IBS)(永原 章仁 ほか)
・消化器領域のガイドラインが続々改訂!②下部消化管疾患(IBD)(澁谷 智義)
・消化器領域のガイドラインが続々改訂!③肝疾患(藤永 幸久 ほか)
・関節リウマチ診療ガイドライン2020(河野 正孝 ほか)
・コラム フィルゴチニブ(ジセレカ®錠)(河野 正孝 ほか)
・小児呼吸器関連のガイドラインが改訂!(松本  翼 ほか)
・脳卒中のガイドラインが全面改訂!(伊藤 義彰)
・胃がん・肺がんのガイドライン,改訂!(岩井 美奈 ほか)
・混合性結合組織病(MCTD)診療ガイドライン2021が完成(田中 良哉)
・多職種が参加し日本版敗血症診療ガイドライン2020を作成!(原  直己)

■Catch Up! 新薬・新規効能・新剤形
TOPICS
・慢性心不全に新薬登場・効能追加 診療ガイドラインに反映(大西 勝也)
・新しい機序の腎性貧血治療薬「HIF―PH阻害薬」(常喜 信彦 ほか)
・痛みと向き合う薬物治療の新たなツールに!(長谷 一郎)
・がん悪液質を対象とする初の治療薬が登場!(田中 理美 ほか)
・片頭痛治療の新たなターゲット(辰元 宗人 ほか)
・増える! 乾癬治療の選択肢(藤田 英樹)
・4価HPVワクチン,男性にも適応承認,そして積極的勧奨再開へ向けて(稲葉 可奈子)
・手術患児の嘔気・嘔吐予防にオンダンセトロンが適応に(鈴木 康之 ほか)
新剤形News
・てんかん発作時に口腔内投与可能な治療薬が登場 ―ミダゾラム(ブコラム®)口腔用液―(浜野 晋一郎)
・GLP―1受容体作動薬の経口剤が登場! ―セマグルチド(リベルサス®)錠―(大西 由希子)
・コラム 新剤形News:フォーム(泡)で使える皮膚保湿剤?(﨑山 祥紀)

■What’s Up 2021
・薬剤師によるワクチン注射 大騒動も「見送り」結末の舞台裏(玉田 慎二)
・新型コロナウイルスとくすり(梅村 拓巳 ほか)
・ステイホームと地域保健 ―心身の“なんとなくだるい”は仕方ない?―(井齋 偉矢)
・患者の価値観や受診動向の変化,地域の保険薬局に求められること(赤瀬 朋秀)
・医薬品流通・供給問題(髙塩 健一)
・デジタル化(オンライン化)で薬剤師の業務はどう変わる?変わらない? ―添付文書の電子化―(髙橋 正明)

■Exercise

≪シリーズ≫

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所 最終回
 Triple WhammyによるAKIを未然に防止せよ!
 (磯野 哲一郎)
■薬剤師が三ツ星シェフ -業務に活きる! 活かせる! 経静脈栄養のホントのところ-
 病態別栄養編② 肝硬変
 (東 敬一朗)
■臨床薬物動態のPITFALL -その常識,ウソ? ホント?-
 透析患者は透析中の薬物除去率を考慮して投与量調節を行えばよい
 (花井 雄貴 大橋 隼人)

≪書評≫

■おうちでできる「菌力UP!」エクササイズ 入院編(注射剤)/外来編(経口剤)
 (北原 隆志)
■もう迷わない! 抗菌薬Navi 改訂3版
 (枦  秀樹)

≪巻頭言≫

はじめに 〜2021年を振りかえって〜


歩き続ける

スポーツが大好きな私にとって,2021年はオリンピック・パラリンピックでルンルンと過ごすつもりでした.試合観戦中はかなり盛り上がり,今時の若者は凄いなぁ〜と感嘆したものの,心がスパッと晴れません.それは,コロナ・コロナ・コロナだからです.コロナ病棟への対応,ワクチンの職域接種,ワクチン取り扱いの指導,学生実習の組み直し,部員のストレスへの対応,鎮静薬不足への対応,厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会への参加など,どれを取っても新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の広がりに端を発したものでした.コロナに関係ないことでは,複数の医薬品の供給停止や話題に上った再生医療等製品の使用開始,その上病院機能評価もありました.こうして怒涛の2021年を振り返った上で,本書の目次をみてみると,消化器領域,関節リウマチ,小児呼吸器関連,脳卒中,胃がん・肺がん,混合性結合組織病(MCTD),敗血症と重要なガイドラインが発出されていました.また,新薬・新規効能・新剤形の情報も取り上げられています.経済は停滞したようにみえますが,医療は確実に進んでいました.新規ガイドラインは有効性・安全性を担保し,新規薬剤は患者さんに新しい未来を届けます.2021年もこれまでと違わず,歩みを進めていることが再認識できました.良かったです.「継続は力なり」,何につけても少しでも歩んでいくことの大切さを実感し,新しい年を迎えましょう.

石井 伊都子
千葉大学医学部附属病院 教授・薬剤部長


8:2現象

2020年1月28日,日本政府は渡航歴のない日本人(男性)が新型コロナウイルスに感染したと発表した.その後約1年半経過したが,新型コロナウイルス感染症は,収束に至っていない.私の在住する三重県は,先日まで緊急事態宣言下にあったが,2021年10月現在,飲食店を含む事業者を対象とした時短営業等も解消されている.また私の勤務する鈴鹿医療科学大学では,学生が原則登校可となっている.これまでは,講義,演習,実習などオンラインの連続であったが,一気に対面へと移行している.このようなコロナ禍を回想すると,われわれの教育や研究環境は大きく変化した.大学とは,人知と社会の発展とともに先人が構築した研究の継続と教育を展開する場であることが大前提である.そのため,どんな状況でも学生に不利益を生じさせないように数々の工夫を施してきた.そのようななかで,現状を把握するために学生へのアンケートをくり返してきたが,一定の法則性のようなものが見いだされたので列挙する.それは,非対面と対面,レポート提出と未提出,試験の合格と不合格,感染症対策に対する意識の強弱,ワクチン接種の是非など……で8:2という現象が生じた.さて,どちらが8で2かについての解説は別の機会とする.

大井 一弥
鈴鹿医療科学大学薬学部 教授・薬学部長


デジタルトランスフォーメーションと不易流行

2010年4月30日,厚生労働省医政局より「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」が発出されました.この通知は病院薬剤師にとって大きな追い風となり,全国で病棟薬剤業務,プロトコルに基づく薬物治療管理(PBPM)など,院内のチーム医療が展開されてきました.そして,10年経った今,「病院完結型」から「地域完結型」医療への転換が加速度的に進んでいます.さらに,医療の中にもテクノロジー進化の流れが押し寄せ,電子処方箋,オンライン服薬指導の仕組みが一気に進んでいます.私たちは,時代に合わせて変化し,医療を支えていく必要があり,このような時にこそ「不易流行」が大切だと思います.
「不易」は,いつまでも変わらないこと.
「流行」は,その時々に応じて変化してゆくものを意味します.
私たちにとって「不易」は,ノウハウや創造性,さらに臨床的に意味のある違いを知る能力を有する薬剤師であり,まさにPharmacist-Scientistsの実践です.そして,「流行」として,医療の多様化に対応し,「院内のチーム医療」から「地域における多職種協働マネジメント」のなかで,薬剤師の役割を果たすための新しい薬・薬連携が求められています.今後のIoT化,デジタル化は新たな業務展開につながります.デジタルトランスフォーメーションへのファーストステージは10年後に活躍する薬剤師を目指し,「不易流行」について考える絶好のチャンスではないでしょうか.

室井 延之
神戸市立医療センター中央市民病院 薬剤部長


薬剤師の未来につながる大きな出来事

薬剤師にとって,コロナ禍での経験と薬機法改正の2点は2021年にかけての大きな出来事だと思う.
コロナ禍で明らかになったことの一つは,国民の徹底した感染対策により,インフルエンザの罹患者が消え,呼吸器感染症などの外来患者数が激減したことである.健康保険組合連合会(健保連)の分析では,感染対策が影響した急性の10疾患のレセプトを全国換算すると年間4,000億円もの外来医療費削減となった.これより国民のセルフケアによる医療費削減の伸びしろの大きさが判明したとともに,薬局薬剤師が今後注力すべき業務のポイントがはっきり見えたと言える.新型コロナワクチン接種の充填作業に全国の薬局薬剤師も加わることで,わが国が1日150万人超の接種を達成したことも画期的な出来事である.現在42ヵ国で薬局での予防接種が実施され,もしくはそれに向けた法改正が進められている.わが国でも八重樫牧人医師らによる薬剤師のワクチン接種実現を訴える署名活動が大きな話題となったが,実現しなかった.近い将来,法改正が実現し,薬局が疾病予防の拠点となることが期待される.
改正薬機法で患者フォローアップが義務化されたことは薬局薬剤師にとって大きな意味をもつと考える.これまで,薬局薬剤師の業務は表に見えないものが多いため国民に貢献度が認識されず,理不尽な批判にさらされ,悔しい思いをしてきた.薬剤師のフォローアップは患者からも高く評価され,薬剤師業務の見える化が期待できるため,薬剤師の未来を切り開く画期的な改正だと考える.

山浦 克典
慶應義塾大学 薬学部 教授
2,200円
特集:「がん治療継続」サポートの柱になる

≪特集の目次≫

■特集にあたって-治療継続の鍵は「協働」と「伴走」-(池末 裕明)

■巻頭カラーグラビア

■がん薬物療法の継続が困難になるさまざまなシーン(池末 裕明)

■がん患者の治療継続にむけての心理的サポート(秋月 伸哉)

■がん治療の継続中にみられる医療者のジレンマ(中田 亜希子)

■がん治療の継続をサポートする-薬剤師もできること・薬剤師だからできること
・ 高確率で起きる「Bad News」を伝える-①抗がん薬による副作用への対策・対応(岡村 優子 ほか)
・ 高確率で起きる「Bad News」を伝える-②審美的問題への対策・対応(野澤 桂子)
・ 医療従事者の健康を守る -抗がん薬の曝露対策-(中山 季昭)
・ 抗がん注射剤をベッドサイドでチェックする-血管外漏出への対応-(志村 裕介 ほか)
・ 有害事象に備える-①悪心・嘔吐の予防と重症化回避への対応(橋本 浩伸)
・ 有害事象に備える-②皮膚症状重症化回避への対応(佐藤 淳也)
・ 有害事象に備える-③免疫関連有害事象(irAE)のモニター・評価 (吉野 真樹)
・ 高齢者に対する抗がん薬の有害事象対策に対する取り組み (内山 将伸)
・ 外来がん薬物療法をサポートする -薬剤師外来のススメ-(川上 和宜)
・「はたらく」を支える -就労支援と副作用管理の留意点-(縄田 修一)
・ シームレスな薬物治療管理を実践する-工夫を重ねて構築する地域連携-(鬼窪 利英)

■より適切な選択へ導く「意思決定支援」を学ぶ
・ がん治療方針の意思決定支援プロセスと,共有意思決定(西 智弘)
・ 薬剤師が服薬説明を通してがん患者の意思決定支援を行う上で必要なポイント(東 加奈子)

■Exercise


■Report
漢方診療標準化プロジェクトへの取り組み(小田口 浩)


≪シリーズ≫

■毒舌妻と統計家 -臨床試験論文を読んでみる- 最終回
 メタアナリシス
 (今井 匠/井出 和希)
■臨床薬物動態のPITFALL -その常識,ウソ? ホント?-
 初回負荷投与を行うと定常状態への到達が早くなる
 (花井 雄貴/長谷川 千尋)
■薬剤師が三ツ星シェフ -業務に活きる! 活かせる! 経静脈栄養のホントのところ-
 病態別栄養編① 病態別栄養とは? &慢性腎臓病
 (東 敬一朗)
■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
 薬剤性不整脈を予防または早期に回避できる薬学的介入を目指そう
 (門村 将太)
■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~ 最終回
 天から一時的にお預かりしている「いのち」を大切にするために:「医療マンダラ」の最終回として
(中野 重行)

≪巻頭言≫
特集にあたって -治療継続の鍵は「協働」と「伴走」-

優れた治療効果を有するがん薬物療法が開発され,がん治療は新たな時代に入った.細胞障害性抗がん薬や分子標的薬,ホルモン療法に加えて,免疫チェックポイント阻害薬の優れた効果が示され,広く用いられている.さらに,がんゲノム医療が日常臨床として行われるようになり,患者一人ひとりの遺伝子情報に基づき個々の患者にあった薬剤が選択されるなど,がん薬物療法はますます高度化,専門化している.これらの効果を最大に発揮するには,レジメンに基づいた治療を完遂または継続することが重要で,患者の予後に大きく影響する.だからこそ,最新のエビデンスや医薬品情報を理解し,新たな薬物治療に対応していくことに加えて,薬剤師として変わらないものの重要性を再認識し,その基本知識やスキルも同時に伸ばしていきたいと考える.
がん薬物療法において薬剤師は,レジメン管理に基づく抗がん薬調製,処方監査,服薬指導,副作用マネジメント,医薬品情報提供,処方支援などさまざまな役割を担っている.これらは患者・家族を中心としたチーム医療のなかで機能するものであり,医師,看護師,栄養士,理学療法士,医療ソーシャルワーカーなど多くの職種や医療施設との「協働」が不可欠である.また,がん患者の薬物療法を支えるには,幅広い薬物療法に関する深い知識と経験に加え,患者の心理状態や理解の状況,時期に応じた適切な情報を伝え,意思決定を支援するためのコミュニケーションスキルも重要である.がん患者の年齢は幅広く,それぞれの価値観も多様である.高齢者は人生の先輩であると同時に,高齢であるが故に臓器機能や身体機能の低下など,配慮すべき事項も多い.幅広い視点を理解し,患者と家族に「伴走」しながら,適切なタイミングで必要なサポートを行う.がん薬物療法継続を支える上で「協働」と「伴走」は,薬剤師をはじめさまざまな医療従事者の普遍的なあり方を示すものだろう.とはいえ,これらのさまざまな視点について,まとめて学べる機会は少ない.
本特集における執筆陣は,いずれも第一線でご活躍中のエキスパートの先生方で,さまざまな分野を専門とされている.本特集を読むことで薬剤師として理解しておくべきさまざまな考え方や,適切な情報に基づく確かな経験を学ぶことができ,われわれの視野はさらに広がるものと確信する.読者のみなさまと,各施設におけるチーム医療の取り組みがさらに発展し,多くの患者と家族のお役に立てていただければ幸いである.
2,200円
特集:ガイドラインで読む漢方薬

≪特集の目次≫

■特集にあたって(中島  淳)

■漢方エキス製剤を取り入れた診療の動向(元雄 良治)

■おさえておきたい漢方薬の基本情報(千福 貞博)

■各 論
・認知症患者×抑肝散(水上 勝義)
・頭痛×呉茱萸湯,釣藤散,葛根湯 ほか(來村 昌紀)
・神経障害性疼痛×牛車腎気丸,抑肝散(世良田 和幸)
・アレルギー性鼻炎×小青竜湯(大久保 公裕)
・咳嗽×麦門冬湯,小青竜湯(相良 博典)
・嗅覚障害×当帰芍薬散(三輪 高喜)
・上部消化管症状(食道炎)×六君子湯,半夏瀉心湯(眞部 紀明 ほか)
・機能性ディスペプシア(FD)×六君子湯,半夏厚朴湯(富永 和作)
・便秘×大建中湯,防風通聖散(中島  淳 ほか)
・過活動膀胱×牛車腎気丸(天野 俊康)
・失禁・頻尿×補中益気湯,牛車腎気丸(関口 由紀)
・更年期障害×当帰芍薬散,加味逍遙散,桂枝茯苓丸(髙松  潔 ほか)
・ 月経前症候群×当帰芍薬散,桂枝茯苓丸,加味逍遙散,抑肝散 ほか(寺内 公一)
・月経困難症×当帰芍薬散,加味逍遙散,桂枝茯苓丸,芍薬甘草湯 ほか(寺内 公一)
・痤瘡(ニキビ)×荊芥連翹湯,清上防風湯,十味敗毒湯(栁原 茂人)

■Exercise

≪シリーズ≫

■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
 プラセボ反応の発現に関与する生体側の要因:「自然治癒力」をどのように理解するか
 (中野 重行)
■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
 授乳中の精神神経用薬の使用について考える
 (宇野 千晶/中島  研)
■毒舌妻と統計家 -臨床試験論文を読んでみる- 第⑪回
 非劣性試験
 (今井  匠/井出 和希)
■薬剤師が三ツ星シェフ -業務に活きる! 活かせる! 経静脈栄養のホントのところ-
 番外編? -経静脈栄養の通り道- 経静脈栄養のルート管理について
 (東 敬一朗)
■臨床薬物動態のPITFALL -その常識,ウソ? ホント?-
 脂溶性薬物だから組織移行性が良い,水溶性薬物だから組織移行性が悪い
 (西  圭史 小松 完爾)

≪Report≫

■緩和ケアに関する薬剤師を対象とした卒後教育の有用性
 (内田 まやこ)

≪巻頭言≫

江戸時代にオランダ人が持ち込んだオランダの医学を蘭方と称することで,それまでの中国から伝来してきた医学を漢方とよぶことになった.その後,漢方はわが国の医療に長年浸透し多くの経験を積んできた.このような歴史的経緯から漢方薬の処方を希望する患者も多いのが日本の特徴であろう.しかしながら,多くの漢方薬は経験的にはその有効性が知られてはいるものの,科学的エビデンスの創出という点では西洋薬に後れを取っていた.ところが,近年まだまだエビデンスレベルは低いものの,それなりの臨床研究がさかんに行われるようになり,エビデンスの創出が熱心に行われ,ガイドラインなどで漢方薬を推奨する時代になってきた.また,これまで各医師が経験的に使っていた漢方薬であるが,医学教育で漢方医学の導入で当該分野の啓発が大幅に進んだ.さらにはわが国では漢方薬のエキス製剤の普及などで患者の利便性を加味した使用法も進んできた.昨今では各種疾患ごとに多数の診療ガイドラインが発刊されており,そのすべてに精通することは困難である.
そこで今回の特集は,日々の業務で多忙な薬剤師が最低これだけは押さえておきたい内容に絞って,最近のガイドラインで漢方薬の部分を横断的に抽出してどのような漢方薬が推奨されているか,またその実践的使い方,メリット・デメリットなどをコンパクトにまとめた.すでに漢方薬に精通した薬剤師でも,またこれから漢方を勉強してみたいという薬剤師にもこれだけは押さえておきたいガイドラインでの漢方薬の現状を網羅したものであり,有益なものと確信している.

横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授
中島  淳
2,200円
特集:見逃すと怖い「抗コリン作用」に備える

≪特集の目次≫

■特集にあたって-抗コリン作用のベネフィット・リスクのバランス-(亀井 浩行)

■もし副作用として「抗コリン作用」発現を見逃したら(宮崎 雅之)

■「基礎薬学」から振り返る 抗コリン作用を有するクスリのリスク
・「抗コリン作用を有する薬」いろいろ(波多野 正和 ほか)
・「副作用を予測する」-抗コリン作用を有する薬のかたち(浅井 考介 ほか)
・「副作用を回避する」-抗コリン作用活性の強さ(小瀬 英司)
・「相互作用を確認する」-抗コリン作用を有する薬剤が起こす可能性のある相互作用(加藤 隆児)

■抗コリン作用への患者フォローアップ
・「眠くなる」-眠気(中村 友喜)
・「お通じがない」-便秘(石原 正志)
・「尿が出ない」-尿閉(前立腺肥大症)(前堀 直美 ほか)
・「立ちくらみする」「足がつる」-熱中症(安藝 敬生 ほか)
・「口がネバネバする」「喉が渇く」-口渇(柏﨑 晴彦)
・「目が痛い」「頭が痛い」「吐き気を催す」-緑内障(名德 倫明)
・「ドキドキする」-動悸(町田 聖治 ほか)

■Exercise

≪シリーズ≫

■毒舌妻と統計家 -臨床試験論文を読んでみる- 第10回
臨床研究における,割合,率,比の違い
(今井  匠/井出 和希)
■臨床薬物動態のPITFALL -その常識,ウソ?ホント?-
バルプロ酸の有効治療域は50~100mg/Lで,
濃度測定値が105mg/Lだったので減量する
(西  圭史/小松 完爾)
■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
 プラセボ反応の発現に関与する生体側のメカニズム
(中野 重行)
■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
 がん専門薬剤師として臨床研究を行い情報発信する
(川上 和宜)

≪巻頭言≫

特集にあたって ―抗コリン作用のベネフィット・リスクのバランス―

抗コリン作用をもつ薬は,その作用点であるアセチルコリン受容体がさまざまな臓器において多彩な生理的機能の発現に関与していることから,種々の治療効果が期待されている.抗コリン薬が関与する作用には,鎮痙,消化管運動抑制,胃酸分泌抑制,膀胱平滑筋収縮抑制,気管支拡張などがあげられる.一方,抗コリン作用にはさまざまな副作用が問題となるケースも少なくない.抗コリン薬に共通してみられる副作用には,便秘,口渇,排尿困難,眼圧上昇,散瞳,傾眠,認知機能障害,せん妄などがあげられる.実臨床においては,これら抗コリン薬の好ましい効果と好ましくない効果,すなわち,ベネフィットとリスクを評価し,適正に使用することが重要である.ベネフィット・リスクのバランスに影響を及ぼすと考えられる項目をそれぞれ選定し,患者個々の病態・症状を見極めながら使用することが重要であり,決められた用法・用量を遵守し,目的とする症状が改善されることで,最大限のベネフィットを得ることができる.
抗コリン作用を薬効としない抗コリン作用をもつ薬にも注意すべきである.臨床的に特に問題となる薬剤にはヒスタミンH1およびH2受容体拮抗薬,三環系抗うつ薬,抗精神病薬,抗不整脈薬などがあげられる.また,一般用医薬品の多くは患者の判断で購入できるため,相互作用の観点からも考慮する必要がある.さらに,高齢者では副作用となりうる抗コリン作用の感受性が亢進していることから,リスク管理が重要となる.
抗コリン作用をもつ薬は医療用医薬品のみならず,一般用医薬品にまで及ぶこと,抗コリン性の副作用は末梢から中枢まで多岐にわたることや使用する患者の年齢や生活環境により,その発現の程度が変化することから,薬剤師は抗コリン作用によるベネフィット・リスクのバランスについて,常に注意を払う必要があり,抗コリン作用によるリスクを見逃すことがないよう,薬学的な対策・対応を講じることが重要である.本特集では,抗コリン作用を有する薬のリスクを基礎薬学から振り返るとともに,抗コリン作用における患者へのフォローアップの実践例について,第一線でご活躍中のエキスパートの先生方に解説をお願いした.本特集が読者のみなさまの日常的な処方監査,服薬指導などの業務にお役に立てれば幸いである.

名城大学薬学部 病院薬学研究室 教授
亀井 浩行
2,200円
特集:脱水症 -体液管理の基礎と実践総まとめ-

≪特集の目次≫

■特集にあたって(谷口 英喜)

■体液生理と体液異常の基礎知識(服部 益治)

■脱水への気づきと身体・検査所見の診かた・考え方(三宅 康史)

■経口補水液・電解質輸液の特徴と補液戦略
・ 経口補水療法(谷口 英喜)
・ 輸液療法(谷口 英喜)

■徹底解説! 体液管理と薬物療法の実践ポイントQ&A
・ 熱中症に注意すべき患者背景・リスク因子は?(神田  潤)
・ 脱水症を栄養面からどう予防する? 脱水症を予防する食生活とは?(上島 順子)
・ 在宅高齢者における体液管理はどう行えばよい?(林  良典 ほか)
・ 術前の経口補水療法と輸液療法はどう行う?(佐々木 俊郎)
・ 糖尿病患者の体液管理で留意すべきことは?
  ケトアシドーシス・乳酸アシドーシスが起きたらどうすればよい?(川名 秀俊)
・ 統合失調症患者の体液管理で留意すべきことは?(花澤 朋樹 ほか)
・ がん化学療法中の体液管理で注意する点は? -嘔吐・下痢による脱水-(二村 昭彦)

■血管内脱水に留意すべき疾患の薬物療法と体液管理
・ うっ血性心不全(味岡 正純)
・ ネフローゼ症候群(濱田 千江子)
・ 肝性腹水・肝性脳症(中野  茂)

■Exercise

≪シリーズ≫

■フォーミュラリー道場 -医薬品の適正使用を目指して- 最終回
 地域フォーミュラリーの展望と課題
 (赤瀬 朋秀)

■薬剤師が三ツ星シェフ -業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ-
 経静脈栄養に用いる輸液製剤 -ビタミン剤,微量元素製剤-
 (東 敬一朗)

■毒舌妻と統計家 -臨床試験論文を読んでみる- 第9回
 クラスターランダム化
 (今井  匠/井出 和希)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
 せん妄予防に対する薬学的介入について考える
 (祖川 倫太郎)

■臨床薬物動態のPITFALL -その常識,ウソ? ホント?-
 バンコマイシンのトラフ値が9.0mg/Lと低かったので,1日投与量2.0gは変えずに,
 1日2回投与から1日4回投与にしてトラフ値上昇を提案した
 (西  圭史/花井 雄貴/馬淵  匠)

≪巻頭言≫

地球温暖化および社会の高齢化に伴い,私たちは社会環境を変化させ対応を重ねてきた.その一方,私たちの体は容易に変化させることはできないために,さまざまな弊害が生じている.特に,本誌特集で取り上げた「脱水症」は,病気療養中に限らず,運動や暑熱環境下,さらには日常生活のなかにおいても私たちがなりうる病態の一つである.
脱水症とは,体液の不足により起こる身体の不調と定義される.体液には,体温調節,体内に酸素と栄養素を運び込む,体内で生じた老廃物を運び出す,という3つのはたらきがある.これら3つの体液のはたらきにより人体のホメオスタシス(恒常性)が維持される.その結果として,私たちは体を正常に機能させ,運動や学習のパフォーマンスを維持することができる.体液が不足した脱水症では,ホメオスタシスが維持できなくなり,体調が崩れる.
おそらく,読者のみなさんのうち,自分が脱水症にかかった自覚がある人は少ないであろう.ところが,私たちは,日常生活のなかで脱水症に近い状態あるいは脱水症になっていることがある.例えば,睡眠中は水分が失われ続け飲水もしないので寝起きは脱水状態である.入浴中は汗をかいたり皮膚から水分が奪われたりするので脱水状態である.前夜にアルコールを多飲した翌朝も,アルコールにより水分が奪われた脱水状態である.これだけ,日常生活のなかで脱水症と相対しているにもかかわらず,脱水症を自覚せず,治療のために受診することも少ないのはなぜであろう.その理由は,脱水症科を称する医療従事者がいないことにあると筆者は考えている.脱水症科があれば,患者も脱水症になったから脱水症科を受診しようと考えるであろう.医療従事者が脱水症科を称しない理由は,すべての治療時に,初期治療として当たり前に脱水症に対する輸液療法が実施されているためと考えられる.一方で脱水症の概念を医療従事者以外において浸透させることで,さまざまな病気発病の予防につながると考える.
薬物治療における脱水症の存在は治療継続コンプライアンスおよび薬剤効果に不利に働く.脱水症においては,薬剤の血中濃度が高まり,副作用が強く出やすい状態となる(文献1).同様に,薬剤の毒性による腎障害のリスクが高まる(文献2).そして,薬物治療中に脱水症が起きると,食欲低下,悪心・嘔吐,下痢, 便秘, 倦怠感,および発熱などを生じて治療を中断せざるを得ない場合がある.さらには,これらの脱水症状が薬物の副作用とも類似しているために,治療現場に混乱を招くことになる(文献3).つまり治療中の体液動向をモニタリングし,変動が生じた場合にすぐに適切な対応をとることで,薬物治療のコンプライアンスが維持され,治療効果が高まり,副作用発現の頻度を低下させることができる.
本特集における執筆陣は,いずれも体液管理のエキスパートで,さまざまな分野を専門としている.本特集を読むことで,脱水症を身近に感じ,予防・治療および対応をしっかりと理解できるものと確信する.脱水症は病気治療中ばかりでなく日常生活のなかにもみられ,適切な対策で防ぐことができる病気でもある.本特集を読み終わり,薬剤師からも,脱水症対策の重要性を発信していただけることを期待したい.


引用文献
1)日本リウマチ学会編:関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2016年改訂版,羊土社,2016.
2)日本腎臓学会ほか編:がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016,ライフサイエンス出版,2016.
3)郷 真貴子ほか:医療薬学,44 : 280-287,2018.

済生会横浜市東部病院 患者支援センター センター長
谷口 英喜
2,200円
特集:片頭痛 -病態の理解と薬物療法の最前線-

≪特集の目次≫

■特集にあたって(橋本 洋一郎)

■片頭痛の診断・疫学と片頭痛が及ぼすインパクト(菊井 祥二 ほか)

■片頭痛の病態生理と治療薬の作用機序(柴田 護)

■片頭痛の予防・治療戦略! いつ・どの患者に・どの薬剤を・どう使う?!
・ 片頭痛の急性期療法(永田 栄一郎)
・ 片頭痛の予防療法(立岡 悠 ほか)

■小児,妊娠可能な女性/妊婦・授乳婦における片頭痛薬物療法の留意点
・ 小児片頭痛における薬物療法の留意点(山中 岳 ほか)
・妊娠可能な女性/妊婦・授乳婦における片頭痛薬物療法の留意点(五十嵐 久佳)

■片頭痛薬物療法の新たな潮流! 新薬の最新エビデンス
・ 抗CGRP抗体・抗CGRP受容体抗体(滝沢 翼 ほか)
・ CGRP受容体拮抗薬(gepant系薬)(古和 久典)
・ セロトニン5―HT1F受容体アゴニスト(ditan系薬)(松森 保彦)

■併存症のある片頭痛へのアプローチ
・ てんかん×片頭痛(森  仁)
・ 睡眠障害×片頭痛(鈴木 圭輔)
・ うつ病×片頭痛(村﨑 舞耶 ほか)
・ 脳梗塞(既往を含む)×片頭痛(橋本 洋一郎 ほか)
・ 月経異常×片頭痛(牧田 和也)

■片頭痛に対する漢方薬の使い時・使い方(來村 昌紀)

■片頭痛マネジメントにおける“ワザ”と“知恵”
・ 片頭痛における頭痛ダイアリー活用術(工藤 雅子)
・ 片頭痛患者における 薬物有害事象・相互作用のチェックポイント(山室 蕗子 ほか)

■Exercise

≪シリーズ≫

■臨床薬物動態のPITFALL ―その常識,ウソ? ホント?―
定常状態は平衡状態のことであり,薬物濃度は血中と組織で等しくなる?
 (浜田 幸宏/海老原 文哉/塩見 真理)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
 レンサ球菌菌血症を研究せよ!
 (望月 敬浩/倉井 華子)

■薬剤師が三ツ星シェフ ?業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ?
 経静脈栄養に用いる輸液製剤 ―脱水の種類と用いるべき製剤―
 (東 敬一朗)

■フォーミュラリー道場 ―医薬品の適正使用を目指して―
 フォーミュラリーがもたらす経済効果
 (赤瀬 朋秀)

■毒舌妻と統計家 ―臨床試験論文を読んでみる― 第?回
 ランダム化臨床試験の限界
 (今井 匠/井出 和希)

■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
 プラセボ反応に関与する要因:自分の病気についての「意味づけ」と「物語づくり」
 (中野 重行)

≪巻頭言≫
特集にあたって

2021年新薬登場
2000年のスマトリプタン皮下注の発売を皮切りにトリプタン製剤が次々に登場し,2000年代に片頭痛診療が大きく変貌した.トリプタン製剤で片頭痛発作をうまく頓挫できるようになったが,トリプタン製剤のみでは問題は解決できず,患者に
「痛み止めはその場をしのいでいるだけです.しっかり生活習慣を修正して,必要に応じて予防薬をうまく活用しましょう」と言ってきた.
20年以上経過しても,片頭痛発作で生活に支障がある患者は数多くおり,さらに数十年にわたって片頭痛に苦しんでいる患者もいる.目の前にいる片頭痛患者に2剤,3剤と予防薬を併用しても片頭痛をコントロールできないことも多い.このようななかで,抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide : CGRP)抗体や抗CGRP受容体抗体の臨床試験で,劇的に片頭痛が改善する患者を数多く経験することになった.
2020年は東京オリンピック・パラリンピックの年と期待していたが,新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の年となり,熊本の疫病退散の妖怪「アマビエ」(1846年肥後国の不知火海に出現)が脚光を浴びることになった.また『鬼滅の刃』(集英社)がブレイクした.このような世情のなかで片頭痛治療薬は,どのように変わってゆくのだろうか.表1に私が調べ得た片頭痛の新薬開発状況を示す.治験した抗CGRP抗体・受容体抗体3剤が2021年に登場予定である.また経口剤であるditan系薬剤やgepant系薬剤の開発も進んでいる.2021年は片頭痛診療の新たな展開が期待できそうである.

片頭痛の疾病負担
世界で一番疾病負担の大きい領域は神経疾患であり,そのなかでの第1位が脳卒中,第2位が片頭痛である.片頭痛で命をなくすことはないが,頭痛発作のために学校や会社を休んだり(アブセンティズム),勉強や仕事の効率が極端に低下したり(プレゼンティズム)して,患者本人がつらいのみならず,社会的損失も大きい.
片頭痛は摩訶不思議な病気で,頭が痛くて寝込むだけではなく,悪心・嘔吐,車酔い(小学生のころ発症),腹痛(腹部片頭痛),めまい,光過敏・音過敏・臭過敏,両眼/単眼の閃輝暗点・半盲(両眼)・一過性黒内障(単眼)などの視野異常,一過性の失語・感覚障害・片麻痺,変形視・小視症・大視症(不思議の国のアリス症候群)を伴ったり,卵円孔開存の併存,体位性頻脈症候群,可逆性脳血管攣縮症候群,脳梗塞,脳動脈解離,心筋梗塞などをまれに併発したりする.
片頭痛患者は雨が降るのがわかる方が多いし(2日前からわかるという人もいる),フィリピン沖に台風ができると頭が痛くなるという患者が熊本には結構いる.

新たな片頭痛治療の実際
図1に2021年の片頭痛の治療戦略を示す.生活習慣の修正を行い,頭痛発作時の頓挫薬,予防薬をバランスよく使い,頭痛体操などの非薬物療法も活用する.薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)からの離脱も重要である.脳梗塞や心筋梗塞の既往のある患者ではトリプタン製剤が使えないため,積極的に予防療法を行って軽減して,通常の痛み止めを使うしかない.ditan系薬剤が登場すれば脳梗塞既往のある患者には使える(米国では禁忌なし).
片頭痛患者の初診時にはA4判2枚の資料を使って説明するが,情報量が多いため,図2に示した片頭痛患者の生活習慣修正の5つのポイントとして,①「いらいらしない」,②「ほっとしすぎない」,③「寝不足・寝過ぎを避ける」,④「肩の凝らない生活」,⑤「痛み止めは必要な分だけ」を伝えている.
抗CGRP抗体のガルカネズマブ(エムガルティ?)が登場し,最適使用推進ガイドラインが作成されており,これに従って使用している.表2に一部を抜粋して示す1).高価な薬剤であることが欠点であろう.費用対効果も考えながら活用しなければならない.
本特集では片頭痛治療の新たな時代を迎えた2021年以降の片頭痛治療について,頭痛診療のトップランナーの方々に解説いただく.

引用文献
1)厚生労働省:最適使用推進ガイドライン ガルカネズマブ(遺伝子組換え)薬生薬審発0420第1号(令和 3年4月20日).


熊本市民病院 脳神経内科 科長・首席診療部長
橋本 洋一郎
2,200円
特集:下部尿路症状

≪特集の目次≫

■特集にあたって(髙橋 悟)

■下部尿路症状の「基礎」を徹底理解!
❶ わが国における下部尿路症状診療の現状と課題(横山 修)
❷ 排尿機能の解剖生理と薬の作用メカニズム (大城 琢磨 ほか)
❸ 下部尿路症状の評価と診断手順(髙橋 悟)

■下部尿路症状の原因疾患に対する治療戦略!
 治療薬の選び方と使い方
❶ 過活動膀胱(山西 友典 ほか)
❷ 前立腺肥大症(後藤 百万)
❸ 尿失禁(三井 貴彦)
❹ 神経因性膀胱/神経因性下部尿路機能障害(関戸 哲利)
❺ 夜間頻尿(赤井畑 秀則 ほか)
❻ 夜尿症(権田 裕亮 ほか)

■合併症・併存症をもつ下部尿路症状患者のマネジメント
❶ 高血圧・心不全(大石 充)
❷ 脳血管障害・認知症(三木 さやか ほか)
❸ フレイル・サルコペニア(吉田 正貴 ほか)
❹ 糖尿病(市原 浩司 ほか)

■下部尿路症状における薬学的管理の実践ポイント(川地 雄基 ほか)

■Exercise

≪シリーズ≫

■薬剤師が三ツ星シェフ 〜業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ〜
 経静脈栄養に用いる輸液製剤―電解質輸液―
(東 敬一朗)

■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~プラセボ反応に関与する要因〜受容と共感を伴う傾聴〜
(中野 重行)

■フォーミュラリー道場 ―医薬品の適正使用を目指して―薬剤別フォーミュラリー⑦
 腎性貧血治療薬(腎不全保存期)
(澤田 雄太/佐藤 光/金井 紀仁/安藤 正純)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
 CKD患者へのST合剤を極めろ!
(森住 誠)

■毒舌妻と統計家 ―臨床試験論文を読んでみる― 第❼回
 新型コロナウイルス感染症のワクチンができるまで(後編)
(今井 匠/井出 和希)

■臨床薬物動態のPITFALL ―その常識,ウソ? ホント?―
 消失半減期と投与間隔にかかわらず,5回投与すると定常状態に達するので,5回目の投与直前のトラフ濃度を採血する
(浜田 幸宏/丸山 拓実/長谷川 千尋)

≪巻頭言≫

男女ともに加齢によりさまざまな下部尿路症状(lower urinary tract symptoms ; LUTS)が出現する.例えば尿意切迫感のために頻尿,切迫性尿失禁を認める病態を過活動膀胱といい,40歳以上の男女の12.4%に認められる.しかし下部尿路の解剖学的性差は大きく,男性では過活動膀胱に加えて前立腺肥大症による排尿症状(尿の出の悪さ)も多い.前立腺肥大症とは本来,組織学的な状態を示すものである.しかし実際は「50歳以上の男性の下部尿路症状(male LUTS)を呈する状態であり,その病因として神経疾患などの明らかな他の原因を認めない状態を大まかに指すもの」と考えられる.第一選択薬であるα1遮断薬とホスホジエステラーゼ5阻害薬は排尿症状のみならず,過活動膀胱のような蓄尿症状にも有効である.さらにこれらの薬剤とβ3作動薬または抗コリン薬の併用で排尿症状の増悪を回避しながら,より積極的に過活動膀胱を治療できる.一方,前立腺体積が大きい症例は肥大の進行につれて将来尿閉や手術が必要になるリスクが高いが,5α還元酵素阻害薬によりそのリスクが約1/3に減少する.また2019年に夜間多尿による夜間頻尿の男性患者に対してデスモプレシンが保険適用となった.副作用の低ナトリウム血症に注意を要するが,夜間頻尿は男女ともに最も有症状率が高い下部尿路症状であり,新しい薬物療法への期待は大きい.
一方,女性では過活動膀胱に加えて骨盤底の緩みによる腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱に伴う排尿障害も多い.また子宮がん手術後の神経因性膀胱も少なくない.過活動膀胱の第一選択薬は抗コリン薬またはβ3作動薬であり,後者は口内乾燥などの副作用が少なく,高齢者における認知機能への影響の懸念がない長所を有する.難治性過活動膀胱にはボトックス®(A型ボツリヌス毒素)膀胱壁内注入療法が行われる.一方現在,腹圧性尿失禁に対する有効な薬剤は少なく,行動療法が無効な症例ではプロリン製テープを使用した尿道スリング手術が推奨される.
超高齢社会となったわが国では,脳血管障害や腰部脊柱管狭窄による神経因性膀胱が増加しており,薬物療法は症状に応じて上記薬剤を選択して行うが,より有効性の高い新薬の開発が期待される.また高齢者では,高血圧・心不全,脳血管障害・認知症,フレイル・サルコペニア,糖尿病などの合併症・併存疾患を有することが多く,下部尿路症状あるいはその治療と密接に関連するので注意が必要である.
今回ご執筆いただいた先生方は,これらの下部尿路症状の診療・研究における精鋭揃いである.この場をお借りして厚くお礼申し上げる.本特集が少しでもみなさまのお役に立ち,一人でも多くの患者が快適な生活を送れるようになれたなら,望外の喜びである.

髙橋 悟
日本大学医学部 泌尿器科学系 主任教授/
日本大学医学部附属板橋病院 院長
2,200円
特集:病院から地域へつなぐロービジョンケア

≪特集の目次≫

■特集にあたって(室井 延之)

■ロービジョンケアの心構え(山田 千佳子 ほか)

■ロービジョンの基礎知識(仲泊 聡)

■ロービジョンの原因となる眼疾患の治療戦略とロービジョンケア
・緑内障および他の神経疾患(横田 聡)
・糖尿病網膜症(安藤 伸朗)
・加齢黄斑変性(平見 恭彦)
・網膜色素変性(斉之平 真弓)
・変性近視(高橋 綾子 ほか)

■再生医療とロービジョンケア(栗本 康夫)

■ロービジョン患者における薬剤管理・患者支援の実践ポイント
・ロービジョン患者から見える薬剤管理(大江 泰)
・緑内障に注意を要する医薬品と代替薬の提案(田中 郁壮)
・点眼剤の基礎知識(宮坂 萌菜)
・ロービジョン患者支援のための点眼剤デバイス開発(柴谷 直樹)
・ロービジョン患者に対する自己注射用製剤の管理と支援(西村 博之)

■ロービジョン患者に対する地域連携
・病院から地域につなぐロービジョンケアと薬剤師の役割(室井 延之)
・緑内障薬剤師外来の開設および取り組み(平野 達也)

■視覚補助具とICT機器の選び方と使い方(山本 翠)

≪シリーズ≫

■薬剤師が三ツ星シェフ ~業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ~
経静脈栄養に用いる輸液製剤
―末梢静脈栄養用輸液製剤(アミノ酸製剤,脂肪乳剤)―
(東 敬一朗)

■毒舌妻と統計家 ―臨床試験論文を読んでみる― 第6回
新型コロナウイルス感染症のワクチンができるまで(前編)
(今井 匠/井出 和希)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
コルヒチンという名の妙薬
(門村 将太)

■フォーミュラリー道場 ―医薬品の適正使用を目指して―
薬剤別フォーミュラリー⑥
睡眠薬
(安藤 正純/金井 紀仁)

■臨床薬物動態のPITFALL ―その常識,ウソ? ホント?―
薬物の分布容積が小さいから組織移行性が悪い
(浜田 幸宏/海老原 文哉/長谷川 千尋)

≪巻頭言≫

 『ロービジョンケア』という言葉について,薬剤師は,どのくらい知っているであろうか.薬剤師は,安全で効果的な薬物療法を提供するために,医薬品の特性を十分に理解した上で,患者の病態に応じた服薬指導や処方設計支援などを行い,患者のQOLの向上に努めている.一方で薬物治療へ参加したいというアドヒアランスが良好であるのにかかわらず,視覚障害により,うまく服薬や点眼できない患者は少なくない.
 ロービジョンは,完全に視力を失っておらず,視力や視野だけでなく羞明,複視,色覚異常などにより見えにくい状態であり,高齢化率の上昇と視覚障害の原因となりうる糖尿病や緑内障患者が増加するわが国においては,視覚障害・ロービジョンへの対応は喫緊の課題の一つと言える.
 ロービジョンケアとは,医療,教育,社会・福祉などのさまざまな面からの包括的な患者支援であり,現在,眼科医師,視能訓練士,看護師の連携によるロービジョンケアが進められているが,服薬・点眼支援における薬剤師の役割は大きいと考える.そして,医療が病院完結型から地域完結型へ変わる中で,保険薬局でもロービジョン患者へ対応する機会が増えており,患者の生活を考慮した薬剤師連携が求められている.
 本特集では,ロービジョンの基礎知識や原因疾患の治療戦略から具体的なロービジョンケアの方法や福祉施設への橋渡しについて学ぶために必要な情報をまとめた.これからロービジョンケアへ参加する薬剤師の入門者向けのテキストとして,さらに病院から保険薬局へロービジョンケアをつなぐ薬剤師連携を実践するためのツールとなることを願い,巻頭の言葉とする.

神戸市立医療センター中央市民病院 薬剤部長
/神戸市立神戸アイセンター病院 薬剤部長
室井 延之
次号予告
2,200円
特集:感染症とステロイド -感染リスクと感染症への効果を理解して使いこなす-

≪特集の目次≫

■特集にあたって(岩田 敏)

■ステロイドによる感染症の発症機序とリスク要因(上蓑 義典)

■ステロイド使用患者の感染症予防と早期発見のポイント(冲中 敬二)

■各種剤形のステロイド使用患者に感染症が生じたときのアプローチ
・ステロイド経口剤・注射剤(亀田 秀人)
・ステロイド吸入剤(宮下 修行 ほか)
・ステロイド軟膏剤・クリーム剤(塩原 哲夫)

■感染症に対するステロイド治療の考え方と使い方
・細菌性髄膜炎(宮入 烈)
・ニューモシスチス肺炎(小林 治 ほか)
・市中肺炎・ARDS(岡森 慧 ほか)
・敗血症(横山 泰昭 ほか)
・結核(永井 英明)
・ウイルス性肝炎・肝不全(安井 伸 ほか)
・HIV感染症(村松 崇 ほか)
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(保科 斉生 ほか)

≪シリーズ≫

■臨床薬物動態のPITFALL ―その常識,ウソ? ホント?―(新連載)
薬物の分布容積が大きければ消失半減期は長くなる?
(浜田 幸宏/海老原 文哉/長谷川 千尋)

■薬剤師が三ツ星シェフ ~業務に活きる! 活かせる! 経静脈栄養のホントのところ~
経静脈栄養に用いる輸液製剤
-高カロリー輸液用 糖・電解質液,高カロリー輸液用マルチバッグ製剤-
(東 敬一朗)

■毒舌妻と統計家 ―臨床試験論文を読んでみる― 第⑤回
カプランマイヤー曲線と患者の半分が回復するまでの時間
(今井 匠/井出 和希)

■フォーミュラリー道場 ―医薬品の適正使用を目指して―
薬剤別フォーミュラリー⑤
インスリン製剤(2型糖尿病)
(吾妻 隼斗/金井 紀仁/安藤 正純)

■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
プラセボ反応について想うこと
~ 発現メカニズムとしての「期待効果・暗示効果」と「条件づけ」を中心にして~
(中野 重行)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
妊娠中のマクロライド系抗菌薬は危険??
(宇野 千晶/中島 研)

≪巻頭言≫

 生体の免疫・炎症反応を抑制する副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド;以下ステロイド)は,米国の生化学者Kendallによって,ウシの副腎皮質から初めて抽出・精製された.この物質は後にコルチゾンと命名され,関節リウマチの治療に効果を発揮することが示された1).それ以来,ステロイドは炎症性疾患や自己免疫疾患をはじめとしたさまざまな疾患の治療薬として用いられてきた.
 ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する.ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は,細胞の核内へ移行し,炎症に関与する遺伝子の発現を調節するといわれている.その結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮されるが,反面長期に使用することにより,易感染性,糖尿病,高血圧,成長障害などの副作用が認められることはよく知られている.そのため,ステロイド治療を安易に行うことは避けられており,治療に際しては十分な副作用マネジメントが必要となる.一方で,易感染性という副作用があるにもかかわらず,微生物の感染に対する生体の過剰な反応をステロイドにより抑えることで,良好な転帰が得られる場合があることも事実であり,実際,感染症であってもステロイドの使用を考慮するべき症例が存在する.現在,世界規模の流行が問題になっている新型コロナウイルス感染症においても,肺炎の重症化に対してステロイドの投与が有効であることが証明され2),酸素需要のある症例に対する標準的な治療として使用されていることはよく知られているところである.
 感染症の病態に対して負と正の二面性をもつステロイドを適切に使用することは,感染症の実臨床の場において極めて重要であることから,今回ステロイドと感染症にスポットをあてた特集を企画させていただいた.本特集では,ステロイドの使用によって起きる感染症の副作用マネジメントと,感染症治療に対するステロイドの考え方・使い方について,第一線でご活躍中のわが国を代表する先生方に解説をお願いした.本特集が読者のみなさまの感染症診療のお役に立てば幸いである.

引用文献
1) Hench PS, et al : Ann Rheum Dis, 8 : 97-104, 1949.(PMID:18623812)
2) Horby P, et al : N Engl J Med, 384 : 693-704, 2021.(PMID:32678530)

国立がん研究センター中央病院 感染症部長/慶應義塾大学医学部 客員教授
岩田 敏
2,200円
特集:抗菌薬供給トラブル -もし入手困難になったら、そのときどうする-

≪特集の目次≫

■特集にあたって(浦上 宗治)

■抗菌薬供給不足のインパクト-セファゾリンショックの教訓-(浦上 宗治)

■抗菌薬供給不足が発生したとき,現場で何を考え,どう動くか(門村 将太)

■主要な抗菌薬が供給不足になったときに考慮する代替薬
・ベンジルペニシリン,アンピシリン,アモキシシリン(倉田 武徳 ほか)
・スルバクタム/アンピシリン,クラブラン酸/アモキシシリン(丹羽 隆)
・タゾバクタム/ピペラシリン(尾田 一貴)
・セファゾリン,セファレキシン(岡田 直人 ほか)
・セフトリアキソン,セフォタキシム(望月 敬浩)
・セフェピム,セフォゾプラン(酒井 義朗)
・セフメタゾール,フロモキセフ(枦 秀樹)
・メロペネム(塚本 仁)
・ミノサイクリン(片山 歳也)
・クラリスロマイシン,アジスロマイシン(茂見 茜里)
・レボフロキサシン(木村 丈司)
・ST合剤(橋口 亮)
・バンコマイシン(注射)(植田 貴史)
・ゲンタマイシン,トブラマイシン,アミカシン(藤居 賢)

≪シリーズ≫

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
処方を読み解き,薬剤師の視点をがん薬物療法に活かす!
(中島 寿久/川上 和宜)

■毒舌妻と統計家 —臨床試験論文を読んでみる— 第④回
介入と曝露,ピコとペコ
(今井 匠/井出 和希)

■フォーミュラリー道場 —医薬品の適正使用を目指して—
薬剤別フォーミュラリー④
尿酸生成抑制薬
(宮本 拓也/金井 紀仁/安藤 正純)

■医療マンダラ 〜思考と感性のセンスを磨く〜
「プラセボ反応(効果)」からみえてくる「治療学の本質」
〜なぜ,「プラセボ学」の道に心魅かれるようになったのか〜
(中野 重行)

≪巻頭言≫

 1928年,イギリス人医師のアレクサンダー・フレミングによって世界初の抗生物質・ペニシリンが発見された.黄色ブドウ球菌の培養で青カビをコンタミネーションしたことがきっかけとなったエピソードは有名な話である.ペニシリンは1942年になってベンジルペニシリン(ペニシリンG)として実用化され,今日も肺炎球菌やレンサ球菌感染症の第一選択薬であり続けている.
 製品寿命という点で抗菌薬は他の薬剤と本質的に異なっている.一般的には医薬品は優れた新薬によって淘汰されるが,抗菌薬は耐性菌の拡大によって臨床の位置づけを失う.これまでわれわれは耐性菌抑制に成功しさえすれば,抗菌薬は使用し続けることができると信じてきた.しかし,その思惑は見直す時が来ている.2019年2月のセファゾリン供給停止に端を発したセファゾリンショックは,耐性菌以外で初めてわれわれから理想の抗菌化学療法を困難にした.おそらくセファゾリンショックは偶然の産物ではない.エッセンシャルな抗菌薬の多くは,販売から何十年も経っている長期収載品ばかりで,資本主義経済にとって魅力的な市場ではないのかもしれない.事実,最も頻用されている抗菌薬の一つであるセファゾリン注射用1gの薬価は180.0円/瓶で,販売は先発品と後発品を合わせて6社しかない(令和3年2月1日時点).本来であれば,セファゾリンショックを教訓としてサステナブルな医薬品供給の仕組みが再構築されることが理想だが,これにはまだ時間が必要である.今や抗菌薬の安定供給は当たり前ではない.臨床の最前線で抗菌薬適正使用を実践するわれわれにとって,抗菌薬はいつ供給停止になっても不思議でないものであり,そして来るべき次の供給停止に備えるべきものである.抗菌薬は感染症治療だけでなく,外科手術,がん化学療法,免疫抑制薬を使用する治療などあらゆる医療を支えている.たとえ供給トラブルが起ころうとも抗菌化学療法の質を一定に維持し続けることは,感染症治療のみならずあらゆる医療にとって必要なことである.そして,教科書に記載されている第一選択薬が使えない時こそ真の抗菌薬適正使用の実力が試されるのである.
 本特集は抗菌薬供給停止の対応について臨床でエッセンシャルな薬剤を網羅した内容となっており,最前線で抗菌薬適正使用を実践しているオール薬剤師で執筆した.本特集が来るべき時の備えとなり,そして有事の際の拠り所となれば幸いである.

佐賀大学医学部附属病院 感染制御部 病院助教
浦上 宗治
2,200円
特集:心不全の緩和ケア -チーム医療で求められる実践力を身につける-

≪特集の目次≫

■特集にあたって(高井 靖)

■心不全患者に対する緩和ケアの現状と課題(佐藤 幸人)

■心不全緩和ケアにおける意思決定支援と倫理的葛藤(鳥崎 哲平 ほか)

■心不全緩和ケアで求められるコミュニケーションスキル(高井 靖)

■心不全/心外併存症治療薬について考えたいこと・できること
・心不全患者の心外併存症と随伴症状(大石 醒悟)
・治療抵抗性心不全における治療薬見直しの勘所(柴田 龍宏)
・心不全および心外併存症治療薬の薬物有害事象と処方カスケード(高井 靖)
・心不全患者における服薬アドヒアランス悪化の要因と向上・維持に向けたアプローチ(芦川 直也)

■心不全の身体的・精神的苦痛に用いる薬剤の実践マネジメント
・オピオイド(寺崎 展幸)
・鎮痛薬・鎮痛補助薬(工藤 浩史)
・抗不安薬・抗うつ薬(原田 桂作)
・漢方薬(志方 敏幸)

■悩ましい症例にどう立ち向かうか?! 押さえておきたい勘所
・カテコラミン離脱困難(土岐 真路)
・食欲不振/悪液質(櫻下 弘志)
・体液貯留(梶間 勇樹)

■薬剤師に求められる役割は何か? どう実践するか?
・心不全チームにおける薬剤師の役割(前田 朱香)
・心臓リハビリと在宅に向けた地域連携における薬剤師の役割(吉国 健司)
・在宅ケアにおける薬剤師の役割(中村 薫 ほか)

≪シリーズ≫

■フォーミュラリー道場 -医薬品の適正使用を目指して-
フォーミュラリー導入による薬剤経済効果について
(宮﨑 美子/金井 紀仁/安藤 正純)

■薬剤師が三ツ星シェフ ?業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ?
経静脈栄養組成の立案に必要な情報
-これまでのおさらい-
(東 敬一朗)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
向精神薬服用患者に服薬指導を行うときの7つのルール
(坪内 清貴)

■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
すべての人々が兄弟となる!(Alle Menschen werden Bruder!)
~ベートーヴェン作曲の交響曲第9番「合唱付き」をめぐって想うこと~
(中野 重行)

■毒舌妻と統計家 -臨床試験論文を読んでみる- 第③回
ハザード比,信頼区間,統計学的に有意
(今井 匠/井出 和希)

≪巻頭言≫

 緩和ケアというとがんの終末期医療が一般的に想定される.しかし,世界保健機関(WHO)は,緩和ケアはがんだけでなく,生命を脅かすすべての疾患に対して考慮すべきものとし,身体的のみならず,心理・社会的な苦痛などの問題を早期に発見して,的確なアセスメントと対処を行うことによって,苦しみを予防し和らげ,QOLを改善することの必要性を提唱している.
 わが国の死因の第2位は心疾患であり,その内訳で最も多いのは心不全で約100万人とされている.2014年のWHOの研究によると,終末期に緩和ケアを必要とする疾患の第1位は38%で心血管疾患,第2位が31%でがんという結果が出ている.日本循環器学会/日本心不全学会『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』では,ステージD(治療抵抗性)の心不全患者の治療目標の一つに終末期ケアが明記された.そして,2018年の診療報酬改定では,緩和ケア診療加算の対象疾患に末期心不全が追加された.今後,心不全パンデミックという言葉が認知されているように,心不全患者は増加の一途であり,それに伴い,心不全緩和ケアも不可欠となる.2018年,厚生労働省の『循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方について』で,医師,看護師,薬剤師等の多職種連携が必要と強調し,心不全多職種緩和ケアチームとして協働していく方向性を示している.さらに,がん患者の緩和ケアにおいて使用される薬物療法を,心不全患者に対して使用する際には,適切な投与量の違い,また有効ではない薬物療法も存在するなどの相違点に留意し,相違点に対する科学的知見を集積する必要がある,と記載している.薬剤師に求められることは,チームの一員として,薬物療法の専門家として,薬学的視点からの助言である.
 また,心不全緩和ケアでは,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実施が重要である.ACPとは,患者の意思決定能力が低下する前に,患者が「どのように生きたいか」「どのようにすれば納得できる人生を全うできるか」を,あらかじめ患者やその家族と一緒に考えておくことである.薬剤師も患者や家族の考えを情報共有して服薬支援をしなければならない.
 循環器疾患の治療は,地域の診療所や中小病院が提供することも多く,地域を主体に考える必要性がある.再発や再入院を予防するためには,治療だけでなく,生活や食事,服薬支援などの患者教育,運動療法など,管理すべきポイントはさまざまある.そのため,医師,看護師,薬剤師,理学療法士,栄養士,医療ソーシャルワーカーなど多職種でチームを構成してお互いに連携をすることが不可欠である.特に,院内での緩和ケアチームと心不全チームの連携だけでなく,地域で連携する必要性もある.
 本特集では,心不全緩和ケアの基礎知識と実践ポイントについて,わが国を代表する第一線でご活躍の先生方にご解説をしていただいた.本特集を参考に,各施設でチーム医療の取り組みがさらに発展すれば幸いである.

三重ハートセンター 薬局 薬局長
高井 靖
2,200円
特集:Evidence Update 2021 -最新の薬物治療のエビデンスを付加的に利用する-

≪特集の目次≫

■特集にあたって(名郷 直樹)

■2020年論文ベストテン(名郷 直樹)

■新型コロナウイルス感染症(COVID—19)の注目論文(浦上 宗治)

■薬剤師介入の最新エビデンス(木村 丈司)

■エキスパートが注目する最新エビデンスをアップデート!
・降圧薬(小原 拓)
・抗不整脈薬(梶間 勇樹 ほか)
・心不全治療薬(高井 靖 ほか)
・抗血栓薬(福島 将友 ほか)
・気管支喘息治療薬(坂野 昌志)
・慢性閉塞性肺疾患治療薬(宮崎 雅之)
・消化性潰瘍治療薬(米田 博輝)
・糖尿病治療薬(青島 周一)
・脂質異常症治療薬(青島 周一)
・高尿酸血症治療薬(三星 知)
・慢性腎臓病治療薬(鈴木 大介)
・統合失調症治療薬(桑原 秀徳 ほか)
・抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬(桑原 秀徳 ほか)
・認知症治療薬(福士 元春)
・抗てんかん薬(山本 吉章)
・抗リウマチ薬(小林 俊介 ほか)
・骨粗鬆症治療薬(鈴木 諒)
・抗菌薬(門村 将太)
・抗ウイルス薬(矢倉 裕輝)
・抗真菌薬(武田 龍馬 ほか)
・ワクチン(福士 元春)
・鎮痛薬(神林 祐子)
・肺癌治療薬(内山 将伸)
・胃癌治療薬(岩井 美奈 ほか)
・大腸癌治療薬(山田 友奈美 ほか)
・前立腺癌治療薬(吾妻 慧一)
・膵臓癌治療薬(田内 淳子 ほか)
・乳癌治療薬(橋詰 淳哉 ほか)
・卵巣癌・子宮頸癌・子宮体癌治療薬(佐藤 淳也)
・血液腫瘍治療薬(小井土 啓一)
・がん支持療法(上田 源治 ほか)
・静脈経腸栄養(東 敬一朗)
・救急・集中治療(前田 幹広)

≪巻頭言≫

 今年もまた『Evidence Update』をお届けすることになりました.継続しているということは,それなりのニーズに応えているということでしょうか.
 情報は減ることなく,毎年積み重なっていきます.増えるばかりです.増えるばかりの情報の中から重要なものを厳選し,整理し,これまでの情報に付け加えて,よりよい医療を提供するための支援ツールとして,一定の評価を得ることができた結果であれば,そんなうれしいことはありません.ただそこで喜んでばかりいるわけにもいきません.本誌を手に取り,読み,実際の現場で利用する人たちが,徐々にでも増えていくことがさらなる目標です.
 そしてその先に,薬剤師の大部分が本誌を片手に日々の仕事をするところまで行ければ,そこが一つのゴールでしょう.この遠い目標に向かって,進んでいるかどうか,一度吟味が必要な時期かもしれません.本誌がどれほど売られ,どれほど読まれ,どれほど実際の臨床で利用されているか,調査に取り組む必要があるでしょう.来年のトピックには,そんな項目が付け加えられるようにしたいと思います.これを読んだ誰かが取り組んでくれるといいのですが,誰かやってくれないかな,そんな都合のいいことを考えています.
 しかし,そんな都合のいい考えこそが本誌のコンセプトであります.誰かこの1年に出版された論文を整理して,わかりやすくまとめて教えてくれないかな,そういうニーズに応えることこそが本誌の役割だからです.
 なるべく自分では大変な勉強をしたくない.しかし,ただ勉強したくないというだけでなく,最小限の勉強のために本誌を都合よく利用して,目の前の患者に最大限のエネルギーを注入しよう.そんな風に利用していただくのが本誌の正しい使い方です.
 ふと入った薬局に,『Evidence Update』を手にした薬剤師がいる,そんな妄想をしながら,今年もみなさんに『Evidence Update 2021』をお届けします.

武蔵国分寺公園クリニック 院長
名郷 直樹
2,200円
特集:肝障害時の薬物療法 -肝機能を考慮したマネジメントの基礎と実践-

≪特集の目次≫

■特集にあたって(大野 能之)
■肝障害時の薬物動態の考え方(大野 能之)
■Child-Pugh分類と肝障害時の禁忌薬(佐村 優)
■薬物性肝障害の早期発見・対応の実践ポイント(荻上 尚樹 ほか)
■肝障害を合併する患者の薬物療法マネジメント
・糖尿病×肝障害(谷藤 亜希子)
・脂質異常症×肝障害(宮田 大資 ほか)
・血栓塞栓症×肝障害(白根 達彦)
・不整脈×肝障害(土岐 浩介)
・結核・非結核性抗酸菌症×肝障害(木村 丈司)
・真菌症×肝障害(松元 一明)
・うつ病・統合失調症×肝障害(築地 茉莉子)
・てんかん×肝障害(山本 吉章)
・がん×肝障害(小出 博義 ほか)
・疼痛×肝障害(内藤 隆文)

≪シリーズ≫

■薬剤師が三ツ星シェフ ?業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ〜
経静脈栄養組成の立案に必要な情報
-脂 肪-
(東 敬一朗)

■毒舌妻と統計家 —臨床試験論文を読んでみる— 第②回
盲検化・主要評価項目・ITT
(今井 匠/井出 和希)

■フォーミュラリー道場 —医薬品の適正使用を目指して—
薬剤別フォーミュラリー③
抗インフルエンザウイルス薬
(奈良部 修弘/金井 紀仁/安藤 正純)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
バクテロイデス菌血症を研究せよ!
(望月 敬浩/倉井 華子)

≪巻頭言≫

 肝臓は薬物の消失に関わる主要な臓器の一つである.したがって,疾患や薬物などにより肝臓が障害を受けて,その機能が低下すれば薬物の消失に影響を与えることは想像しやすい.しかし,薬物動態に影響を及ぼす肝臓関連の因子は薬物代謝酵素のみならず,肝血流,トランスポーター,血漿タンパクなどがあり,さらに肝障害は肝臓における消失過程だけでなく,消化管吸収や分布過程にも影響を及ぼしうるため,その影響は単純ではない.また,肝腎症候群などにより肝障害患者では腎機能障害を併発していることも少なくない.腎障害時では糸球体ろ過量やクレアチニンクリアランスが薬物の腎クリアランスとも相関することが多く,薬物投与設計にも活用しやすいが,肝障害時には薬物の肝クリアランスの指標となる精度の高い実用的な検査は現状ではないと考えられる.薬物の開発時には肝障害患者での薬物動態試験を行うことが望ましいが,倫理的な問題などもあり,必ずしも実施されるとは限らず,また実施されていたとしてもその例数は限られているなどの限界もあり,十分な情報量があるわけではない.さらに,肝障害が薬物動態に与える影響のみならず,肝障害による病態を含めて薬物療法の有効性や安全性に与える影響を考えることが重要である.すなわち,肝障害時の薬物療法においては,肝臓の機能・役割,肝障害の評価や影響,その薬物動態や薬物治療に与える影響を適切に理解することが必要である.
 そこで本特集号では,肝障害の合併患者に対していかに薬物療法を実践すればよいのかを考えるために,特に重要な点を項目立てして解説している.総論的な項目としては,肝障害時の薬物動態,Child-Pugh分類と禁忌薬,肝障害時の早期発見と対応について用意し,また各論として肝障害を合併する薬物療法マネジメントについて,疾病領域ごとに専門性の高い薬剤師の先生方に解説いただいた.総論,各論共に自分の理解を深めたい項目だけ目を通していただいてもよいし,いざ確認が必要なときの資料として保管していただくのも有用であると考える.本特集が,肝障害時の有効で安全な薬物療法を提供するための一助となれば幸いである.

東京大学医学部附属病院 薬剤部 副薬剤部長
大野 能之
2,200円
特集:免疫チェックポイント阻害薬 -押さえておきたい知識とスキル-

≪特集の目次≫

■特集にあたって(鈴木 賢一)

■免疫チェックポイント阻害薬の基礎知識(牧野 好倫)

■免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果と免疫関連有害事象のメカニズム(山口 央ほか)

■免疫チェックポイント阻害薬の薬物動態・薬力学特性とpersonalized therapyへの展開(濱田 哲暢)

■免疫チェックポイント阻害薬の相互作用(鈴木 賢一)

■免疫関連有害事象マネジメントの実践ポイントQ&A
・免疫関連有害事象を見逃さないためのモニタリングのポイントは?(土屋 雅美)
・免疫関連有害事象かどうかはどう判断すればよい?(東 加奈子)
・免疫関連有害事象にどう対応する?支持療法のポイントは?(吉野 真樹)
・免疫関連有害事象にチームとしてどう取り組めばよい?
—九州大学病院チームICIにおけるirAE対策の標準化の取り組みとその成果—(池田 宗彦ほか)
・免疫関連有害事象で投与中止した後のがん薬物療法はどう行う?(玉木 慎也)

■免疫チェックポイント阻害薬の医療技術評価(池田 俊也)

≪シリーズ≫

■毒舌妻と統計家 —臨床試験論文を読んでみる—(新連載)
ランダムに分ける
(今井 匠/井出 和希)

■フォーミュラリー道場 —医薬品の適正使用を目指して—
薬剤別フォーミュラリー②
赤血球造血刺激因子製剤(血液透析患者)
(佐藤 光/金井 紀仁/安藤 正純)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
抗凝固薬関連腎症を予防せよ!
(三星 知)

■医療マンダラ 〜思考と感性のセンスを磨く〜
「個人の自由/権利」と「集団の利益/安心」のバランス
〜新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が炙り出したもの〜
(中野 重行)

■薬剤師が三ツ星シェフ 〜業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ〜
経静脈栄養組成の立案に必要な情報
—アミノ酸 その②—
(東 敬一朗)

≪Report≫

服薬指導の充実とチーム医療推進に向けた実践例
(内田 まやこ)

≪巻頭言≫

 免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)は,従来の抗がん薬とまったく異なった作用機序を有しており,高い治療効果が得られる点が大きな特徴である.特に肺癌や悪性黒色腫,腎癌などでは臨床導入が進み,生存期間の延長にも大きく寄与している.ここ数年ICIを取り入れた,治療戦略上大きな意義をもついくつかの臨床試験が実施され,その良好な治療成績が相次いで報告されている.ICI同士の併用療法,ICIと抗がん薬の併用といった一次治療における治療成績のほか,化学療法と同時放射線治療後の維持療法としてのICIなど,これまでの二次・三次治療とは異なり,より早い段階でICIを導入した際の臨床効果が確認されている.
 一方,ICIによる副作用は免疫関連有害事象(immune-related adverse event:irAE)と定義され,国内のみならず米国臨床腫瘍学会(ASCO),欧州臨床腫瘍学会(ESMO),全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)などから,適切に管理するためのガイドラインが発刊されている.わが国では2016年に日本臨床腫瘍学会より『がん免疫療法ガイドライン』が発刊され,多くの医療者に活用され現在に至っている.ガイドラインではそれぞれのirAEに対してステロイドの使用が推奨されており,幸いにしてステロイドが奏効することも多く,症状が軽減し治療を再開できる例も見受けられる.また前述したように,ICIは二次・三次の単独療法から,front lineにおける併用療法での使用機会も増えており,今後も治療時期に限らずICIの使いどころは増える可能性が極めて高い.その他の抗がん薬との併用療法の問題として,以前より指摘されてはいるが,発現した副作用の原因がICIか併用された薬剤かによって,ステロイドでの対応か,あるいは従来の副作用対策が妥当かの判断が求められる点が挙げられる.その判断を誤ると症状の増悪につながる可能性もあり,医師や薬剤師,看護師などチームで情報を共有するとともに患者や患者家族への適切な情報提供や教育が重要である.
 なおガイドラインでは多くのirAEに対し重篤例にはステロイドパルス療法が,ステロイド不応例には免疫抑制薬の使用が推奨されている.しかし,ステロイドパルス療法後の漸減療法の期間や免疫抑制薬の使用のタイミング,あるいは症状消失後の治療再開のタイミングなどの情報は乏しく,現場の医療者の判断に委ねられることも少なくない.
 併用療法が実用化されることで懸念されるのは,ICIの薬物相互作用である.治療終了後に実施された抗がん薬の治療効果や副作用が,増強することを示唆したいくつかのデータが報告されている.そのため,併用薬や後治療で使用される抗がん薬に何らかの影響を与えている可能性は否定できない.治療効果のみならずirAEのリスクも高まるとなれば,次治療開始のタイミングには慎重にならざるを得ない.
 併用療法や放射線と絡めた治療法が臨床導入されるなど,ICIは今後も広く使用される傾向にある.複雑化するがん免疫薬物治療を適切にサポートするためには,ICIがもつ薬理作用上の特徴やirAEのメカニズムの理解は必須であろう.支持療法に関してはエビデンスが不十分な点も多いことから,最前線で治療をサポートしている薬剤師の視点から学ぶことは多い.また,ICIは高額なものが多く,質の高い薬物治療を探求するとともに,費用対効果の視点を加味した患者支援にも目を向けるべきである.
 本特集ではがん免疫療法に関する研究および日常診療の最前線に携わる医師をはじめ,チーム医療や支持療法マネジメントで活躍されている薬剤師,医療経済の専門家らにお力添えいただき,irAEの基本的な理解からトータルマネジメントに役立つ特集を企画した.本特集ががん免疫薬物治療に係るすべての医療者にとって,役立つ参考書となるよう心より祈念している.

星薬科大学 実務教育研究部門/薬学教育研究部門 教授
鈴木 賢一
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