MOSTLY CLASSIC(モーストリー・クラシック) 発売日・バックナンバー

全218件中 46 〜 60 件を表示
「第九は問う」
 2022年の暮れ、ベートーヴェンの交響曲第9番の演奏は、私たちの胸に特別迫るこ
とでしょう。世界の平和を根底から揺るがしたロシアのウクライナ侵攻は、世界史に
刻まれる歴史的事件です。
 第九と並ぶ大作、「ミサ・ソレムニス」にもベートーヴェンは平和の願いを込めま
した。ベートーヴェンの音楽が現代に伝えるものをあらためて考えます。

目次1
目次2
【連載】「音楽に寄せて」 中村孝義
【特集】佐渡裕インタビュー
世界史の中の第九 小宮正安
シラーの「歓喜に寄す」 平野昭
合唱指揮者、三澤洋史の語る第九の世界
  天上の世界とつながり、派遣されて平和を創る
バス 妻屋秀和は語る
ソプラノ 小林沙羅は語る
楽器から見た第九の魅力
  読響・岡田全弘(ティンパニ)、読響・石川滋(コントラバス)、
  N響・森田格(ファゴット)
初演はどうだったか 萩谷由喜子
第九と日本人 江藤光紀
ドイツ、チェコ、日本で…
  「特別な時」の「特別な思い」を込めた第九 池田卓夫
変遷を重ねてきた第九演奏 岡本稔
祝祭イベントから「音楽会」へ 12月の公演 柴田克彦
ジャン・チャクムルが語る
  リストの「編曲」の世界 訳:椿紅子
【特別記事】ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィル
  12月に東京オペラシティでハイドン、ベートーヴェンプロ  片桐卓也
【特別記事】山田和樹がシューベルトの全交響曲をいずみホールで演奏 中村孝義 堀朋平
【特別記事】アーティスティック・リーダー広上淳一の指揮でOEK躍動 広上淳一は語る
【特別記事】鈴木秀美指揮山形響がイッサーリス迎え定期 岩野裕一
【特別記事】藤田真央 止まらぬ快進撃
【特別記事】来日直前インタビュー 《ファルスタッフ》主演のカターナ 香原斗志
【特別記事】登場人物3人で歌劇《トスカ》 Hakuju Hall企画
【特別記事】東京ジュニアオーケストラソサエティが25周年記念定演
STAGE
小山実稚恵 ピアノ
【連載】小山実稚恵のピアノと私   おしゃべりと語りとしぐさ
【連載】押しはしないが押されてばかり  シュラ場の制作者 その① 青島広志
宮本文昭の気軽に話そう  今月のお客様 酒井茜さん ピアノ
特別企画 PPT、角野隼斗とアデスの協奏曲を日本初演 江藤光紀
World Music Scene 海外音楽情報
WMS ベルリン
WMS パリ
WMS パルマ
WMS ロンドン
WMS ニューヨーク
【連載】行きたい街角、聴きたい音楽 加藤浩子
東西南北 
グールドが生誕90年・没後40年 カナダ大使館で回顧イベント
【連載】コンサートマスター名鑑  神奈川フィルハーモニー管弦楽団 石田泰尚
【特別企画記事】生誕100年の名指揮者スウィトナー
シュターツカペレ・ベルリンやN響との名演今に 寺西基之
モーツァルトの神髄伝える 國土潤一
ヴァイグレ スウィトナーの記憶胸に指揮 平末広
N響奏者が語る名演の記憶

【新連載】知れば知るほどオペラの世界  プッチーニ 《トスカ》 香原斗志
外山雄三の「オーケストラと暮らして70年」
マンスリー・ベルリン・フィル
   95歳で客演したヘルベルト・ブロムシュテット。過去の名演をデジタル・ホールで聴く
ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルクのウィーン・フィル便り
東条碩夫の「音楽巡礼記」  9・10月
巨匠「名盤」列伝  ロリン・マゼール 山崎浩太郎
許光俊の「名曲のツボ」 ショーソン 詩曲
【連載】いけたく本舗─私が出会った演奏家たち  フリードリヒ・グルダ 池田卓夫
【連載】音楽から見たロシア   幻の作品 マリーナ・チュルチェワ
Book
Art 「日本の中のマネ」展
Movie 「あちらにいる鬼」
Theater 「世襲戦隊カゾクマン」
Ballet 新国立劇場バレエ団「ジゼル」(新制作
CD&DVD ジャンル別に新譜をCheck!
公演レビュー
【連載】音は語る 藤盛一朗
私のお薦めコンサート 飯田有抄/澤谷夏樹/平末広/清宮美稚子
【連載】私の夢のコンサート 西原稔
ニュース・アトランダム
海外公演ここが聴きどころ
Concert Selection
FM&TV INFORMATION
バックナンバーのご案内
HOTEL’S INFO
読者プレゼント
読者アンケート
読者の声
次号予告 編集後記
 この秋は、新国立劇場で新制作「ジュリオ・チェーザレ」「ボリス・ゴドゥノフ」が上演されるなど、オペラの話題作が目白押しです。モーストリーの11月号特集は「オペラを楽しむ」。各作品の深い解説や、日本内外の注目の歌手、指揮者の紹介など多彩な記事をカラフルな写真とともにお届けします。
 大型インタビューは、新国立劇場芸術監督(オペラ部門)の大野和士。7月の話題公演「ペレアスとメリザンド」、自らタクトをとる「ボリス・ゴドゥノフ」のことなど精力的に語っています。大野ファンにはリハーサルの表情も魅力です。
 セイジ・オザワ松本フェスティバルで上演された「フィガロの結婚」にもフォーカスしました。表紙は、その「フィガロの結婚」。舞台に接した方には、誌面で感動を振り返っていただくこともできるでしょう。



目次1
目次2
【連載】音楽に寄せて
【特集】大野和士インタビュー
オペラは楽しい
ザルツブルク音楽祭
変動目立つ名門歌劇場
今、輝く旬の歌手たち
オペラの指揮で輝くマエストロたち
森谷真理、大西宇宙が語るオペラの魅力
オペラを楽しめる国内の劇場
元気な関西オペラ界
音楽史の中のオペラ
時代と対峙し、変化を促す芸術
この秋話題の3作
オペラの必須要素
特別記事 セイジ・オザワ松本フェスティバル
特別記事 フェスタサマーミューザ
特別記事 ポペルカ 東響定期に鮮烈デビュー
MC Information
【連載】小山実稚恵のピアノと私
【連載】押しはしないが押されてばかり
【連載】宮本文昭の気軽に話そう
BIGが語る クリスチャン・ツィメルマン
Stage 鈴木理恵子&若林顕
Stage 林美智子&上原彩子
Stage 会田莉凡
Stage 小林壱成
特別企画 「真夏の夜の夢」PPT公演
【連載】行きたい街角、聴きたい音楽
WMS バイロイト
WMS イースト・サセックス
WMS パリ
WMS マチェラータ
WMS サンタフェ
【連載】ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルクのウィーン・フィル便り
東西南北
オーケストラ新聞
【連載】コンサートマスター名鑑
【連載】外山雄三の「オーケストラと暮らして70年」
【連載】マンスリー・ベルリン・フィル
【連載】音楽プロデューサー 中野雄の音楽人間模様
【連載】巨匠「名盤」列伝 
【連載】鍵盤の血脈 井口基成
【連載】許光俊の「名曲のツボ」
【連載】いけたく本舗─私が出会った演奏家たち
【連載】音楽から見たロシア 
【連載】東条碩夫の「音楽巡礼記」
Book
Art
Movie
Theater
Ballet
CD&DVD ジャンル別に新譜をCheck!
公演 Reviews
【連載】音は語る
私の夢のコンサート
私のお薦めコンサート
News at random
海外公演ここが聴きどころ
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裏表紙
1,080円
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クラシック音楽をもっと楽しむための月刊情報誌
クラッシック音楽の楽しさを、より立体的に、より多角的に伝える新しいスタイルのナビゲーション・マガジンです。MOSTLY CLASSIC(モーストリークラシック)は過去の巨匠達の偉業だけでなく、小澤征爾氏やアルド・チッコリーニ氏など、世界的アーティストの最新情報ををお届け。ソリスト達の生の意見が聞ける楽器や作曲者の特集も濃密な内容。クラシックに対する知識と聞く楽しみを教えてくれる初心者にもやさしい専門誌です。





目次1
目次2
【連載】音楽に寄せて
【特集】井上道義が語る大シンフォニーの世界
26歳マケラ、都響に客演
名演の秘密 奏者は語る
近代における交響曲の巨大化の謎
先駆けとしての「グレート」
ベルリオーズの「幻想交響曲」
交響曲に生涯をかけたブルックナー
ブルックナー 交響曲第4番、第7番“成功”の裏側
マーラー 夏季休暇に作曲小屋で創作
マーラー 交響曲第5番と第6番
リヒャルト・シュトラウスと「交響曲」
ショスタコーヴィチ 交響曲第4番と第7番
朝比奈隆のブルックナー
マーラー、ブルックナー 大シンフォニーお勧めの聴き方
名盤で深める
やはり生で聴きたい大シンフォニー
MC Information
【連載】小山実稚恵のピアノと私
【連載】押しはしないが押されてばかり
【連載】宮本文昭の気軽に話そう
【連載】行きたい街角、聴きたい音楽
パシフィックフィルハーモニア東京
BIGが語る 堤剛
Stage ロスチャイルド
パシフィック・ミュージック・フェスティバル 2022
オーケストラ・アンサンブル金沢 広上淳一の就任披露公演
シトコヴェツキーが札幌交響楽団に客演
ベルキンが東京音大で実践指導
WMS バイロイト
WMS サリー
WMS ヴェローナ
WMS サン=ドニ
WMS タングルウッド
【連載】ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルクのウィーン・フィル便り
東西南北
【連載】コンサートマスター名鑑
オーケストラ新聞
【連載】外山雄三の「オーケストラと暮らして70年」
【連載】マンスリー・ベルリン・フィル
【連載】音楽プロデューサー 中野雄の音楽人間模様
【連載】巨匠「名盤」列伝 
【連載】鍵盤の血脈 井口基成
【連載】許光俊の「名曲のツボ」
【連載】いけたく本舗─私が出会った演奏家たち
【連載】音楽から見たロシア 
【連載】東条碩夫の「音楽巡礼記」
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【連載】音は語る
私の夢のコンサート
私のお薦めコンサート
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 フランス音楽は、ドイツやイタリアの音楽とは異なる魅力を持っている。
 「フランス音楽を、イタリア音楽に匹敵するもう一方の音楽、と呼んでも決して間違いではないでしょう。なぜなら、この2つ、イタリアと フランスの音楽はそれぞれに独自の、独特のものを持っているように思われるからです」
 この言葉はドイツの音楽家マッテゾンが1713年に残したもの。フランス・バロック時代においてフランス音楽の個性は際立っていた。「実のところ、ドイツ・バロックの作曲家たちは常にイタリアとフランスから最先端の音楽を学び、それをスタート地点にして自分のたちの音楽を作ってきた」と音楽学の佐藤康太氏は記している。
 近代フランス音楽を特徴づける作曲家といえばフォーレ、ドビュッシー、ラヴェル。「サン=サーンスがドイツ音楽をわき目に見て、ソナタ形式の作品構成や動機の展開を模範としていったのに対して、彼らはそのくびきから解放されている」と指摘するのは桐朋学園大名誉教授の西原稔氏。
 クロード・ドビュッシー(1862~1918)は陶器店を営む庶民の家に生まれた。しかし、伯母のおかげでピアノを習い、パリ・コミューンの蜂起に加わった父が捕らえられ、牢獄で名ピアノ教師の息子と知り合ったことで、その母親にピアノを師事。才能を発揮し、パリ国立高等音楽院に入学した。1884年にはローマ賞を受賞する。
 代表作品の一つ、「牧神の午後への前奏曲」(1892年)は象徴派の詩人マラルメの詩にもとづく作品。「ドビュッシーは、まったく自然に移ろいゆく変化の相としてこの詩を音楽化した。奔放かつ緻密な和声法を駆使し、色彩的で感覚的な美しさを前面に出し、すべてが夢かうつつか分からない状態を作り上げたのだ」と音楽評論家の鈴木淳史氏。
 モーリス・ラヴェル(1875~1937)の父親はピアニストを目指したこともある技師。母親はバスク地方の生まれ。ラヴェルは生後3カ月でパリに移ったが、生涯バスク地方への思いを寄せている。14歳でパリ国立高等音楽院に入学。在学中に「亡き王女のためのパヴァーヌ」などを発表、注目された。
 ラヴェルとドビュッシーの作風は全く違う。「ラヴェルの音楽にはつねに『現在』という立ち位置が刻印されている」と鈴木氏。「ラ・ヴァルス」については「リズムがどんどん崩れ始め、頻繁な転調の中でテンポも乱れてくる。最後はワルツらしき怪物は暴走を始め、断ち切られるように終わる。現在のグロテスクな姿を強調することで、美しかった過去を偲ぶ」と解説する。項目はほかに◎ベルリオーズ、フランス・ロマン主義の精神そのもの◎フランス6人組◎サティ、異端の音楽家なのか◎エンマ・バルダックをめぐるフォーレ、ドビュッシー、ラヴェル◎ディアギレフとパリ、など。表紙は、ヴェルサイユ宮殿です。

◎宮本文昭の気軽に話そう 福川伸陽 ホルン
 NHK交響楽団のホルン首席奏者を務め、現在はフリーで活躍する福川伸陽(のぶあき)。ヴァイオリニスト、宮本笑里のデビュー15周年のアルバムでホルストの「木星」の収録に参加。古楽器のアンサンブル「レ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウ」のメンバーでモーツァルトやベートーヴェンの木管八重奏曲が入ったCDも今月リリース。10月にはヘンデルの「王宮の花火」を当時の楽器と編成で演奏する。「来年以降は、隅田川に船を浮かべて、『水上の音楽』ができたらいいなとみなで話しています」と福川は話している。

◎BIGが語る サー・サイモン・ラトル 指揮
 サイモン・ラトルが音楽監督を務めるロンドン交響楽団と9月から10月にかけて日本ツアーを行う。ラトルは来シーズンからバイエルン放送交響楽団の首席指揮者になるため、ロンドン響の音楽監督としては最後の来日。東京や札幌、川崎など8都市の公演で5つのプログラムを持ってくる。「今回は非常に幅のあるプログラムを持っていくことができてうれしく思っています。ツアーを行うときのプログラムつくりというのは本当にパズルのようなものです」とラトルは話す。東京公演では10月5日にブルックナーの交響曲第7番などを、6日にはシベリウスの交響曲第7番などを演奏する。

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして70年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎中丸美繪「鍵盤の血脈 井口基成」
など、おもしろい連載、記事が満載です。

 日本の人口の3分の2ほど、約8,000万人が住むドイツにはオペラを常に上演している劇場が80以上ある。日本のホールが基本的に貸しホールなのとは違い、座付きオーケストラ、専属歌手、合唱団、舞台装置関係などスタッフがそろっている劇場が80以上あるということだ。日本は、国を代表する新国立劇場でさえ専属のオーケストラはない。劇場の概念が根本的に違う。
 音楽評論家の江藤光紀氏が、ドイツの劇場・ホールの事情をリポートしている。「劇場大国ぶりは世界でも突出しており、無形文化遺産に登録しようという動きもあるほどだ。ドイツを旅行する際には、ぜひその土地の劇場にも足を踏み入れてほしい」と江藤氏。
 ウィーン・フィルはウィーン楽友協会のムジークフェライン、ベルリン・フィルはベルリンのフィルハーモニー、ロイヤル・コンセルトヘボウはアムステルダムのコンセルトヘボウと本拠地が決まっている。練習も本拠地のホールで行い、定期演奏会が行われる、オーケストラの音はホールで決まってくる。ホールとオーケストラは一体なのだ。
 残念ながら、日本のホールとオーケストラの関係は海外とは全く違う。東京のほとんどのオーケストラの定期演奏会、地方のオーケストラの東京公演は多くがサントリーホールで行われる。海外のオーケストラの来日公演も東京ではサントリーホールが一番多い。しかし、サントリーホールは日本のクラシック音楽の殿堂であって、特定のオーケストラの本拠地ではない。
 ニューヨーク・フィルのリンカーンセンターにある本拠地は、デイヴィッド・ゲフィン・ホールと呼ばれる。ホールの改修に1億ドルを提供したことで名前が付けられた。それ以前はエイヴリー・フィッシャー・ホールと呼ばれた。フィッシャーはニューヨーク・フィルに10億ドルもの多額な寄付をしている。
 ニューヨークで最も名前が知られているのはカーネギー・ホールだろう。製鉄業で莫大な富を築いたアンドリュー・カーネギーが建てた。1887年、後のニューヨーク・フィルの音楽監督ウォルター・ダムロッシュと、ヨーロッパに新婚旅行に行くカーネギーが船上で知り合い、ダムロッシュがワールドクラスのコンサート会場の必要性を訴えたことから実現した。ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」が初演されたのはここである。本拠としていたニューヨーク・フィルがリンカーンセンターに移り、解体が計画されたが、ヴァイオリニストのアイザック・スターンが中心となった運動によって、ニューヨーク市が買いあげ、この歴史的なホールは音楽の殿堂として現在も活用されている。
 特集はこのほか◎モーツァルトとカラヤンの聖地ザルツブルク◎ライプツィヒ・ゲヴァントハウス◎ドレスデン・ゼンパー・オーパーとシュターツカペレ・ドレスデン◎ワーグナーとバイロイト祝祭劇場◎パリ、ロンドン、北欧、南欧、ロシア、台湾のホール・劇場とオーケストラ◎往年の名録音会場を訪ねて、など。表紙は、ムジークフェラインで演奏するウィーン・フィルとフィルハーモニーで演奏するベルリン・フィルです。

◎宮本文昭の気軽に話そう 波多野睦美 メゾ・ソプラノ
 古楽の世界ばかりでなくピアソラなど現代の作曲家でも活躍している波多野睦美。「今はモダン、古楽と分けるのではなく、楽器と一体になっている人と一緒に演奏するのが好きですね」と話す。声楽では珍しく、イギリスに留学し勉強した。「もともと中学生の頃からビートルズとカーペンターズを毎日どっぷり聴いていて、英語の響きも好きでしたし、ビートルズの中でもフォークやインドっぽいものが好きで、そこからリュートソングやイギリスの古い曲にも興味を持っていたんです」と話す。

◎新連載「オーケストラ コンサートマスター名鑑」
 全国のオーケストラのコンサートマスターを取り上げる新連載。第1回は、4月から楽団名を変更して活発な活動を続けるパシフォックフィルハーモニア東京の執行(しぎょう)恒宏。コンサートマスターは、以前の東京ニューシティ管弦楽団時代から数えて12年目になる。「指揮者はお客様にどう伝えたいのか、理解しなくてはいけません。指揮者の所作や指揮棒で感じ取り、みんなに発信します。コンサートマスターの仕事は経験でしか得られません」

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
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 ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」とスメタナの連作交響詩「わが祖国」。いずれも世界で愛されている作品だが、1824年生まれのスメタナ、1841年生まれのドヴォルザークと作曲家2人は、いずれもボヘミア生まれ。チェコという風土で育ったことがこれらの傑作を生みだした。ほかにハンガリー、ポーランドといった東欧の作曲家とふるさとのかかわりを特集している。
 ドヴォルザークはプラハに近い村の肉屋兼宿屋の家に生まれた。聖歌隊で歌い、アマチュア楽団でヴァイオリンを弾くなどして音楽に親しんだ。12 歳の時にズロニツェの伯父の家に送られ、ここでドイツ語の師アントニン・リーマンから音楽理論を学ぶ。さらにプラハのオルガン学校に入学。幼い時から触れた民俗音楽の上に、クラシック音楽の古典的な様式などを学んだことが、ドヴォルザークの音楽の基礎を作った。
 ドヴォルザークは1892年、ニューヨークのナショナル音楽院の院長としてアメリカに渡る。翌93年、交響曲第9番「新世界より」を作曲した。アメリカの民俗音楽や黒人霊歌に通じる楽想が用いられているなど、新世界で受けた影響が反映されている。しかし、「この作品はアメリカの民俗音楽や新大陸の文化の要素を取り入れつつも、それらをチェコの音楽の特徴に重ね合わせ、チェコの民族色に満ちた音楽に仕立て上げられている」と音楽評論家の寺西基之氏。
 ドヴォルザークより17歳年上のスメタナは、モラヴィアに近い都市リトミシュルで、ビール製造業者の長男として生まれ、ヴァイオリンを愛奏する父親から音楽の手ほどきを受けた。スメタナはチェコ語が話せなかった。ドイツ語は公用語のひとつであり、貴族の館に出入りする醸造家の父親は、家でもドイツ語を話したからだ。しかし、1848年の「プラハ聖霊降臨祭蜂起」は、スメタナの愛国心にも火をともし、母国語を学び始めた。
 「わが祖国」は1874年から79 年にかけて作曲された。スメタナ1874年の夏に健康を損ない、それから3カ月ほどで完全に失聴。だから作曲家はこの作品の演奏を聴くことはできなかった。「スメタナはこの連作を通して、交響詩をナショナルな題材を表現するジャンルとして確立し、音楽的には循環形式風の手法を用いて曲の一体性を保つように工夫した。欧州辺縁国の国民楽派は以後、このスタイルに倣うようになる。その点でこの作品は、単なる聴き物を超えて、西洋音楽史に名前を刻む存在となった」と音楽評論家の澤谷夏樹氏はつづっている。項目は他に◎バルトーク・ベーラの「祖国」◎ヤナーチェクの創作人生◎ハンガリーのマルチ音楽家コダーイ◎ショパン、その祖国への思い◎東欧の国民楽派はなぜ生まれたのか◎東欧のユダヤ人とクラシック音楽、など。表紙は、ドヴォルザーク、スメタナ、バルトーク、ショパン、プラハを流れるヴルタヴァ川です。

◎宮本文昭の気軽に話そう 周防亮介 ヴァイオリン
 若手のヴァイオリニスト、周防亮介。京都府生まれで、7歳からヴァイオリンを習い始めた。先生のレッスンを受けるために、先生の家の近くに一家で引っ越しをしたというエピソードも語っている。まさに「孟母三遷」の故事のごとくである。中学1年からは小栗まち絵先生についた。東京音大に進学すると、小栗先生も同大の特任教授に就任。「小栗先生は技術的なことはもちろん、舞台への出て行き方、歩き方、お辞儀の仕方や衣装なども、生徒に合わせてプロデュースしてくださる」。ヴァイオリニストは先生との二人三脚で作られる。

◎新連載 行きたい街角、聴きたい音楽~世界の音楽都市を訪ねて~
 今月から音楽評論家、加藤浩子さんの新連載が始まった。第1回はニューヨークのオペラの殿堂、メトロポリタン歌劇場(MET)を取り上げている。「カーテンコールではまず例外なくスタンディングオベーション。けれどほぼ1回こっきりで、すぐ帰る。日本のように何度もカーテンコールが繰り返されることは珍しい」と、日本とは異なる聴衆の反応を伝えてくれるなど、面白い読み物に仕上がっている。コロナ禍でまだ自由に世界各地に出かけられない日々が続く。この連載を読んで、旅した気分を。

◎特別企画 サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン2022
 国内最大級の室内楽の祝典「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン2022」が6月4日(土)から19日(日)まで行われる。初夏の音楽祭としてすっかり年中行事となった。オープニングはチェリストである堤剛サントリーホール館長のプロデュース公演。ピアノの小菅優とクラリネットの吉田誠のトリオでブラームスとフォーレなどを。目玉企画の「ベートーヴェン・サイクル」はアトリウム弦楽四重奏団が登場する。6夜にわたり、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を演奏する。「フォルテピアノ・カレイドスコープ」にも注目。現在のピアノの前段階のフォルテピアノが3台登場し、デンハーグ五重奏団や渡邉順生らが出演する。12企画22公演と盛りだくさん。


このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
 ドイツの指揮者フルトヴェングラーが亡くなって70年近くたつのに、“新譜”のリリースが絶えることはない。新譜といっても新しい録音があるわけでないので、古いSPレコードのリマスターだったり、新たな放送音源が見つかってCD化されたりするのだ。指揮者でいえば、トスカニーニ、クレンペラーやクナッパーツブッシュ、ピアニストではコルトーやバックハウス、ソプラノ歌手のマリア・カラスの全盛期は1950年代なのに、今でも人気は衰えない。
 「往年の演奏家は、楽譜への忠実さを一歩において認識しつつ、その演奏家にしか成しえない自由な表現を披露してくれる。その演奏は聴く者に、音を聴く以上の感銘を与える。彼らの演奏を聴くと、本来、演奏とは何なのかを問いかけているように思われる」と桐朋学園大名誉教授の西原稔氏。
 なんといっても往年の名演奏家の中で一番人気はフルトヴェングラーだろう。1886年、ベルリンで考古学者の父のもとに生まれた。1906年にデビュー。22年、ニキシュの後任としてベルリン・フィルとライプチヒ・ゲヴァントハウス管の常任指揮者に就任した。ナチス政権と対立しながらもベルリン・フィルを振り続けたが、戦争末期、スイスに亡命。戦後、非ナチ化裁判で無罪判決を受け、ベルリン・フィルに復帰した。51年、バイロイト音楽祭の再開場記念演奏会でベートヴェンの第九を指揮。54年、68歳で亡くなった。
 指揮者・作曲家の徳岡直樹氏は「他では聴くことのできない強烈なインパクトが確かにある、と自信を持って言い切ることができる」とフルトヴェングラーの演奏を評する。徳岡氏があげたフルトヴェングラーの名盤にブラームスの交響曲第4番がある。1943年12月録音。これについて「この大戦中のブラームスは数種類残された同曲の録音の中でももっとも艶やかで、かつ壮絶なドラマの込められたド迫力の演奏」と感想を書いている。
 NHK交響楽団コンサートマスター、篠崎史紀さんはNHKーFMで「まろのSP日記」というSPレコードを紹介する番組を持っているほど、CDやLPでなくてSPを聴いている。1950年代にはLPに置き換わってしまったから、残っているのはそれ以前に活躍していた往年の名演奏家。「聴衆も、演奏だけではなく、コンサート会場で感じるその瞬間の空気や匂いまでをも記憶し、演奏家の真意を受け止められる時代だったのだと思います」と記している。項目は他に◎ベーム、セル、ムラヴィンスキー、チェリビダッケ、カラヤン◎シュナーベル、ルービンシュタイン、ケンプ、ホロヴィッツ◎クライスラー、ティボー、シゲティ、ハイフェッツ◎時代によって変遷する演奏◎未来の可能性と過去への想像力◎往年のピアニストと現代のピアニスト、など。
表紙は、ハイフェッツ、フルトヴェングラー、ベーム、カラヤン、ホロヴィッツ、ディースカウ、リヒテル、カラス、カザルスです。

◎宮本文昭の気軽に話そう 川田知子 ヴァイオリン
 東京フィルの首席ヴィオラ奏者、須田祥子とデュオCD「スターライト」をリリースしたばかり。ヴァイオリンとヴィオラの二重奏という珍しいCD。知らない曲ばかりかというとそうではない。シューベルトの歌曲「野ばら」や「魔王」なども入っている。須田とは15年ぐらいの付き合い。雰囲気が似ているので「本当の姉妹みたい」と言われることもある。4月末から宮崎国際音楽祭のコンサートに何本も出演する。20代の頃から出演し続けているなじみ深い音楽祭。3週間も滞在しているので、なじみの居酒屋が何軒もあるという。

◎WMSベルリン 沖澤のどかがベルリン・フィルを指揮
 ドイツのヴァルター・シュタインマイヤー大統領の主催で、ベルリン・フィルによるウクライナとの連帯を表明する「自由と平和のためのコンサート」が3月27日、ベルビュー宮殿で行われた。急病のキリル・ペトレンコに変わり、アシスタントの沖澤のどかが指揮をした。ウクライナからベルリンに避難した作曲家シルヴェストロフの「夕べのセレナード」などを指揮。またキーシンとベルリン・フィルのコンサートマスター、樫本大進、チェロのシンケヴィッチのピアノ・トリオでショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第2番よりを演奏した。

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
1,080円
980円
 イタリア北部クレモナで17世紀半ばから18世紀半ばにかけて作られたヴァイオリンは、名器が多い。ニコロ・アマティ、アントニオ・ストラディヴァリ、グァルネリ・デル・ジェズの3人の名工が作ったヴァイオリンは現在、非常に高い値段で取引される。彼らに続くヴァイオリンにガダニーニ、ベルゴンツィ、テストーレなどがある。さらに、カッパ、ブセットー、ゴフリラー、モンタニャーナ、ランドルフィー、ガリアーノ、チェルーティ、プレセンダなどのブランドがひしめいている。
 なぜクレモナで作られたヴァイオリンは名器なのか。形状、木材、ニスなどさまざまな理由があげられているが、いずれも決め手に欠ける。製造されて400年経つとよい音になる、という説もある。現代の科学的分析によっても分からない。「これは永遠の謎である。理由を断定的に書き記す文章があれば、それはフェイクと考えてよい」と音楽評論家の渡辺和彦氏。
 現在のオーケストラで使われる弦楽器は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの4種類。しかし、クレモナでヴァイオリン製作が盛んになる以前のバロック時代は、もっと多種多様な弦楽器が存在した。その一つがリュート。イングランドの女王エリザベス1世は音楽好きで、みずからリュートを弾いたといわれる。リュートはL字型のネックを持つが、その隣にまっすぐなネックを付けた大型リュート、テオルボがあり、ネック1本のキタローネも存在した。スペインでは小型のギターと言ってもよい、ビウエラが流行した。
 ヴィオール族では、脚(ガンバ)に挟んで弾く、ヴィオラ・ダ・ガンバがあり、バス・ヴィオル、トレブル・ヴィオル、テノール・ヴィオルなどと音域によって楽器があり、より低音のヴィオローネ、音域が広いヴィオラ・パスタルダという楽器もあった。ヴィオリンは中世のフィドルから発展したものと言われる。15世紀に流行したのはリラ・ダ・ブラッチョ。この楽器を得意としたのは画家のレオナルド・ダ・ヴィンチ。彼は音楽家の顔も持っていた。長く生き残った楽器にヴィオラ・ダモーレがある。ヴィヴァルディ、バッハばかりか、マイアーベアやプッチーニ、ヒンデミットらロマン派、20世紀の作曲家もこの楽器を使って作品を書いている。
 バロック時代に多種多様な弦楽器が存在することについて、音楽学の金澤正剛氏は「バロックという時代自体がさまざまと新しい可能性を追い求めた時代であったことと、多くの楽器が発展途上の段階であったことに由来しているものと思われる」と記している。
 現在に至るヴァイオリニストは、トスカナ派、ロンバルディア=ベネツィア派、フランコ・ベルギー派(マンハイム派)、ボヘミア派の大きく4つの流派に大別される。トスカナ派にはパブロ・デ・サラサーテ、ロンバルディア=ベネツィア派はアルカンジェロ・コレッリらを経てヨーゼフ・ヨアヒム、ヤッシャ・ハイフェッツ、現在のヴァディム・レーピン、樫本大進につながる。フランコ・ベルギー派は、ウジューヌ・イザイとその弟子のユーディ・メニューイン、アイザック・スターン、アルチュール・グリュミオーらがいる。項目は他に◎ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」◎バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」「無伴奏チェロ組曲」◎ヴィオラという楽器の特殊性◎活躍する日本の若手チェリストたち◎オーケストラにおける楽器の配置と変遷◎弦楽器と指揮者、など。表紙は、パガニーニが愛用したデル・ジェズ「イル・カンノーネ(大砲)」、スタラヂヴァリウス「レディー・ブラント」、クレモナの街です。

◎宮本文昭の気軽に話そう 中野翔太(p)
 クラシックのピアニストだが、5月27日(金)にHakuju Hallでジャズ・ピアニストの松永貴志とサクソフォンの田中拓也のトリオでコンサートを行う。ニューヨークのジュリアード音楽院に留学しているときに、老舗ジャズクラブ「ヴィレッジヴァンガード」で生まれて初めて生のジャズを聴いた。「今ここで音楽が生れてきたような空気感、自分でもやってみたいと思っていました」。一方、神奈川県立音楽堂の「新しい視点」シリーズでは、7月に実験的な現代音楽を演奏するなど、意欲的な活動を続けている。

◎東西南北 新国立劇場2022/23シーズンのラインアップ
 新国立劇場は3月1日、2022/23シーズンのラインアップを発表した。同劇場は今年、開場25周年を迎え、オペラ3公演、バレエと演劇各1公演の5公演が開場25周年記念公演になる。オペラのラインアップは10演目。「ジュリオ・チェーザレ」(新制作)、「ボリス・ゴドゥノフ」(新制作、開場25周年記念)、「ドン・ジョヴァンニ」、「タイホイザー」、「ファルスタッフ」、「ホフマン物語」、「アイーダ」(開場25周年記念)、「リゴレット」(新制作)、「サロメ」、「ラ・ボエーム」(開場25周年記念)。

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
1,080円
980円
 オルガンの歴史は紀元前の古代ギリシャにさかのぼる。鍵盤楽器としては最も古い歴史を持つ。水圧を用いて空気を管に送り込んだ。その後のチェンバロやピアノとは音が鳴る仕組みが全く違う。さらにオルガンは中世に入ってキリスト教会と結びつき「楽器の王様」となった。
 オルガンはふいごで風箱に空気を送り込み、鍵盤を押すことで弁が開き、パイプが発音する。チェンバロやピアノの音は自然に減衰していくが、オルガンは弁を戻さない限り、音は持続する。そして演奏者は音によって決まっているパイプを選択するためストップを引っ張るレジストレーションを行う。
 大きなパイプオルガンは持ち運びができない。設置される教会や建物の形状に合わせて作られる。「1台として同じものがないのもオルガンの大きな特徴だ。オルガンは建物に付随する特殊な楽器である。ヨーロッパに現存する18世紀以前のオルガンを弾く場合には、ピッチや調律法が違うこともよくあること」とオルガニストの中田恵子。
 チェンバロは弦を弾いて音を出す楽器。14世紀末に誕生したと考えられている。それから18世紀後半にかけてヨーロッパ全体で使われた。しかし、国によって独特の形状であり材質が異なっている。1段鍵盤のイタリアンや2段鍵盤のフレミッシュ、イタリアでは糸杉が用いられ、フレミッシュではポプラの木が使われた。また華麗な絵や装飾がつけられ、美術品としての側面もあった。
 バロック音楽において不可欠な存在なのが通奏低音奏者。「独唱を支えるバスの旋律を記し、それを低音楽器(主にヴィオラ・ダ・ガンバ)が弾き、それをもとに鍵盤楽器(主にチェンバロ)などが即興で肉づけの伴奏を施す」と音楽学の金澤正剛氏。やがて伴奏の中心的役割を果たしていたチェンバロ奏者が指揮をとるようになった。チェンバロが中心に置かれ、周りを弦楽器などが取り囲む。モーツァルトもオペラ上演の際には、自らチェンバロを弾きながら指揮をした。
 モーツァルトの時代に鍵盤楽器はチェンバロからフォルテピアノへと変わっていった。モーツァルトより14年後の1770年に生まれたベートーヴェンは、生涯で約10種ものフォルテピアノを弾いたという。19世紀はピアノの開発競争が盛んに行われた時代だった。ベートーヴェンのピアノ・ソナタは32曲残されているが、その作曲史はピアノの発展史そのものだった。
 初期のピアノ・ソナタ第8番「悲愴」や第14番「月光」はアントン・ワルターの楽器で作曲された。中期の第21番「ヴァルトシュタイン」や第23番「熱情」はエラールの楽器に触発されて書かれた。そして第26番「告別」はシュトライヒャーのピアノから生まれた。ベートーヴェンが最後まで弾いていたのはイギリスのブロードウッドから1818年に贈られたフォルテピアノ。第29番「ワルトシュタイン」はシュトライヒャーとブロードウッドがあったからこそ作曲された傑作だ。項目は他に◎バッハのオルガン曲、チェンバロ曲◎バッハのオルガン曲のピアノ編曲小史◎ブルックナーの交響曲はなぜオルガンのような響きなのか◎チェンバロとオルガン音楽の20世紀◎ピアノと指揮者、など。表紙は、タスカンのチェンバロ、ヒルデブラントのオルガン、ショパンのピアノです。

◎宮本文昭の気軽に話そう 佐藤卓史 ピアノ
 2014年からシューベルトのピアノ曲全曲ツィクルスに取り組んでいるピアニスト、佐藤卓史。07年にはシューベルト国際コンクールで優勝している。シューベルトの魅力について「シューベルトは自分にとって特別な存在なんだと感じることがたくさんありました。同じことが繰り返されるので冗長だと言われたりしますが、彼の中にある種の必然性があるのを感じます」と話す。4月14日(木)に東京オペラシティで第16回シューベルトツィクルスの演奏会が行われる。

◎STAGE 野平一郎 作曲・ピアノ
 5月から6月にかけて開催される第8回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門審査委員長を務めるのが、作曲家でピアニストの野平一郎。今回のコンクール・ピアノ部門には史上最高の438人の申し込みがあった。ちなみに昨年のショパン国際ピアノ・コンクールで優勝したブルース・リウは2016年の仙台国際音楽コンクールの入賞者だ。野平委員長は「イマジネーション、ポテンシャルを持った人、クリエイティヴな資質を持った人を探していきたい。審査委員を驚かす人が出てきてほしい」と話していた。

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
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 ワーグナーのオペラは、オペラの中でも独自の魅力を放っている。特に「ニーベルングの指環」4部作は、その世界観と長大な長さもあいまって圧倒される。それは「ワーグナーは人間社会の普遍的な問題を提起している」(西原稔・桐朋学園大名誉教授)からだろう。
「ニーベルングの指環」4部作は、序夜「ラインの黄金」、第1日「ワルキューレ」、第2日「ジークフリート」、第3日「神々の黄昏」。「ラインの黄金」の上演時間は2時間半ほどだが、続く3本は4時間から5時間弱という長さ。
 ワーグナーは作曲だけではなく、台本もすべて自分で書いた稀有な作曲家。「指環」を書くにあたって主な素材にしたのは、ドイツ中世英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」と北欧神話の「ヴォルスンガ・サガ」。「ヴォルスンガ・サガ」はライン河の伝説が北欧に伝わったものが、北欧神話化され、まとめられたもの。
 「ワーグナーは、まずは2つの素材を粉々にしてから、新しいジークフリートの物語を作り上げた。しかも『ヴォルスンガ・サガ』では数行で済まされていたジークフリートとブリュンヒルデの愛を拡大させて、新しい独自の愛の物語を展開させた。さらにこの2人の『愛』を悪漢ハーゲンの『権力』と対立させ、4部作全体に『権力』と『愛』の対立を張り巡らせた。ここにワーグナーの独創性がある」と石川栄作・放送大学徳島学習センター所長。
 「ラインの黄金」は、ライン川の川底にある黄金の指環を3人の乙女が守っていた。指環を奪った小人族アルベリヒは地底で一大王国を作り上げる。神々の長ヴォータンはアルベリヒから世界を支配する指環を奪う。「ワルキューレ」は、フンディングの家に傷ついたジークムントが逃げ込む。夫の留守を預かるジークリンデはジークムントに強く惹かれる。「ノートゥング」と名付けられた剣を持って2人は逃亡する。「ジークフリート」では、ジークリンデが産み落としたジークフリートがアルベリヒの弟ミーメに育てられる。ジークフリートの力を利用して指環を取り返すことをもくろんでいる。父ヴォータンの命に逆らい眠りにつかされていたブリュンヒルデはジークフリートによって目覚める。「神々の黄昏」では、ジークフリートがギービヒ家のグンターを訪ねる。そこでジークフリートは過去を忘れる薬を飲まされてしまう。
 「指環」を上演するためにワーグナーが建てたのがバイロイト祝祭劇場、そこで毎年夏、行われているのがバイロイト音楽祭。ここはワグネリアンにとっては聖地である。1876年、「指環」の全曲初演をもってこけら落しされた。指揮はハンス・リヒター、舞台はヨーゼフ・ホフマンだった。ワーグナーは82年の「パルジファル」初演の翌年に亡くなり、未亡人コージマが後を引き継いだ。そして息子のジークフリート、その妻のヴィニフレートと繋がれ、現在はワーグナーから数えて4代目のカタリーナ・ワーグナーが芸術監督を務めている。項目はほかに◎「さまよえるオランダ人」「タンホイザー」「ローエングリン」「トリスタンとイゾルデ」「マイスタージンガー」◎卓越した芸術家を支えた妻コージマの生きかた◎バイエルン王国という存在、など。表紙は、ワーグナー、背景はバイロイト祝祭劇場です。

◎2022年注目の来日演奏家
 新型コロナのオミクロン株の感染拡大で、昨年12月から外国人アーティストが来日できない事態が続いている。毎年恒例の「注目の来日演奏家」だが、早くコロナ禍が収まり、予定されている演奏家が来日できることを願っている。
 オーケストラで注目したいのは若手指揮者とメジャー級の組み合わせ。マティアス・ロウヴァリ&フィルハーモニア管(3月)、ラハフ・シャニ&イスラエル・フィル(4月)、クラウス・マケラ&パリ管(10月)。ソリストはコロナ禍の中でも来日してくれ、日本の聴衆を楽しませてくれた。ピアノはルドルフ・ブッフビンダー(2月)、アンヌ・ケフェレック(4月)、キット・アームストロング(6月)、エフゲニ・ボジャノフ(7月)らが来日予定。
 ヴァイオリニスト、チェリストも多彩なアーティストが公演する。フランスの人気ヴァイオリニスト、ゴーティエ・カプソン(4月)、おなじみのベテランのチェリスト、ミッシャ・マイスキー(5月)、秋はアリーナ・イブラギモヴァ(9月)、イツァーク・パールマン(10月)パトツィア・コパチンスカヤ(同)、ヴィクトリア・ムローヴァ(11月)など聴きたい演奏家が目白押し。
 オペラでは、イタリア・シチリアのパレルモ・マッシモ劇場が6月に「シモン・ボッカネグラ」と「ラ・ボエーム」を公演する。アメリカのメトロポリタン歌劇場管は「ワルキューレ」「トロイアの人々」などのオペラの抜粋を上演する(同)。

◎宮本文昭の気軽に話そう ゲスト ハルキさん(活動弁士)
 無声映画に語りをいれる活動弁士。映画草創期に活躍した。やがて映画に音がついたトーキー映画が生まれ、弁士の活躍の場はなくなった。しかし、現在も活動弁士は存在し、映画を楽しむことができる。その一人がハルキさん。日本の活動弁士は、義太夫や浄瑠璃など語りの文化を持っているため独自の発展をし、今日まで続いている。「100年前の映画でも楽しく見られるということを知ってほしいという気持ちがあります」とハルキさんは話す。

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
―など、おもしろい連載、記事が満載です。


 イタリア・オペラの代名詞、ヴェルディとプッチーニの生涯と作品などを中心にイタリア・オペラの魅力を探っている。
 ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)は「音楽とドラマが人間の感情表現において一体化する方向に、オペラのベクトルを向けた」とオペラ評論家の香原斗志氏。生涯にオペラ26作を作曲した。処女作は「ファッチォ伯爵オベルト」(1839年)。3作目の「ナブッコ」(1842)で成功を収める。
 ヴェルディ中期には多くの傑作が生まれた。「リゴレット」(1851)は「足を踏み入れた『心理オペラ』の世界で、いまだなかった次元の心理描写を達成した」と音楽評論家、國土潤一氏。「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」(1853)は、高級娼婦ヴィオレッタと青年貴族アルフレードの恋、そしてヴィオレッタの悲劇を描く。世界でもっともよく上演されるオペラの一つだ。1幕でアルフレートが歌いだし、後に合唱となる「乾杯の歌」、2幕でアルフレートの父ジェルモンが息子を諭す「プロヴァンスの海と陸」など、単独で親しまれているアリアも人気。後期の「アイーダ」(1871年)は古代エジプトが舞台。スペクタクルで祝祭的な雰囲気があり、野外オペラでもよく上演される。エジプトとエチオピアの2つの国に引き裂かれた男女の悲恋を描いている。
 ジャコモ・プッチーニ(1858-1924)は音楽家の家系に生まれた。父は5歳のときに亡くなり、苦労してミラノ音楽院で学んだ。「マノン・レスコー」(1893)が大成功し、オペラ作曲家の道を確実とした。日本人にもっともなじみの深いのは「蝶々夫人」(1904)だろう。長崎を舞台に、没落士族の娘・蝶々さんとアメリカの海軍士官ピンカートンの結婚、そして蝶々さんの悲劇を描く。プッチーニの音楽の中に「越後獅子」「さくらさくら」「君が代」「お江戸日本橋」など日本の音楽が8曲も使われている。プッチーニは日本に来たことはなく、当時のイタリア特命全権公使夫人、大山久子から資料を提供されたらしい。
 最後のオペラとなった「トゥーランドット」(1926)は中国が舞台。やはり中国の音楽素材を使っている。トゥーランドット姫に求婚する者は、姫の出す3つの謎を解かなければならない。解けなければ斬首されてしまう。王子カラフがその謎に挑戦する。カラフの歌う「誰も寝てはならぬ」が有名だ。第3幕後半は未完に終わり、アルファーノが補筆し完成させた。「トゥーランドット」を含めプッチーニは生涯に12作品を残した。項目はほかに◎ロッシーニ◎ショパンが愛したベッリーニ◎ヴェリズモ・オペラ◎イタリア、魅惑の劇場めぐり◎イタリア・オペラの旬の歌手、などです。表紙は、ヴェルディ、プッチーニ、背景はミラノ・スカラ座です。

◎2021年回顧ベスト・コンサート編、ベストCD&DVD編
 ベスト・コンサート編だが、今年は外国のオーケストラがコロナのための入国規制でほとんど来日できず、指揮者だけ外国人というのが多い。ヴェンツァーゴ指揮読売日響、チョン・ミョンフン指揮東京フィル、ミンコフスキ指揮オーケストラ・アンサンブル金沢、ラザレフ指揮日本フィルなどが挙がっている。ソリストはファウスト、アンデルジェフスキー、レーゼル、ツィメルマンら。新国立劇場の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は高評価だった。
 ベストCD&DVD編だが、コロナ禍の中でも収穫の多い年だった。輸入盤を含めると膨大な数になるため、12人の評者が重なってベストCDに挙げたものはほとんどない。その中でシフがエイジ・オブ・エンライトゥメント管を弾き振りしたブラームスのピアノ協奏曲第1番&第2番、ショパン・コンクール4位の小林愛実のショパン「24の前奏曲」はそれぞれ2人があげていた。また、クレンペラーなど過去の録音も目立った。
 また、今年亡くなった主な音楽家を掲載している。昨年暮れからの1年間を見ると、イヴリー・ギトリス(98歳)、岡村喬生(89歳)、ヘルムート・ヴィンシャーマン(100歳)、辻久子(95歳)、伊藤京子(94歳)などと高齢化社会を反映してか長寿をまっとうした方が目立った。

◎宮本文昭の気軽に話そう ゲスト 嘉屋翔太 ピアノ
 11月に行われたフランツ・リスト国際ピアノ・コンクールで1位なしの2位に入賞したピアニスト、嘉屋翔太は東京音楽大学に在学中。ラフマニノフについて「バッハみたいな対位法の達人なので、奇跡的なくらい全部の音に意味があって装飾がないんです。本当に緻密そのものなので、指が足りないんじゃないかっていうくらい書いてあって別格なんです」と話している。

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
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 ベートーヴェンは交響曲を9曲残した。このうち交響曲第5番と第6番は1808年12月22日、アン・デア・ウィーン劇場で同時に初演された。現在の5番は6番、6番は5番として発表されている。新作の交響曲2曲を一緒に演奏するばかりか、この日のプログラムは現在では考えられないほど長い。
 まず第1部は、田園交響曲(当時の第5番、現在の第6番)、アリア「ああ、裏切り者」、ミサ曲ハ長調より「グローリア」、ピアノ協奏曲第4番。第2部は、大交響曲(当時の第6番、現在の第5番)、ミサ曲ハ長調より「サンクトゥス」、ベートーヴェンのピアノの即興演奏、合唱幻想曲で、今のコンサート2つ分。それぞれのトリはピアノ協奏曲とピアノ独奏が入る合唱幻想曲。現在はプログラムの最後に置かれる交響曲はメーンの演目ではなかった。
 特集では「フルトヴェングラーとベートーヴェン」について取り上げている。フルトヴェングラーにとってベートーヴェンはもっとも重要な作曲家だった。フルトヴェングラーは1886年、考古学者・美術史家の父アドルフのもとに生まれた。1898年、ギムナジウムを退学し、2人の家庭教師に学んだ。哲学と芸術はヴァルター・リーツラー、考古学者のルートヴィヒ・クルティウス。音楽の専門教育はベルリン国立歌劇場首席指揮者を務めたマックス・フォン・シリングらに師事している。1922年、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ベルリン・フィルの常任指揮者に就任した。
 音楽評論家の岡本稔氏は「フルトヴェングラーの演奏について語るとき、『精神性』とともにしばしば用いられるのが『官能性』とそこからもたらされる『陶酔』である。ベートーヴェンの演奏でも顕著にみられる。音楽がもたらす陶酔感がクライマックスで圧倒的な効果をもたらすのはこの音楽家に親しんだ人ならば誰もが経験している」とつづっている。
 1951年7月29日、中止されていたバイロイト音楽祭が、フルトヴェングラーの指揮する第九によって再開した。この「バイロイトの第九」の録音はEMIなどから発売されているが、リハーサル演奏などを編集したものではないか、などの謎が語られてきた。今年12月、スウェーデン放送が所有するライヴ音源が初めてCD化され、リリースされる。長年、悩ませてきた謎が解けると、ファンは発売を待ちわびている。項目はほかに◎交響曲第1番以前と第9番以降◎「オリーヴ山上のキリスト」と「プロメテウスの創造物」◎ベートーヴェン交響曲全集の歴史◎朝比奈隆のベートーヴェン演奏◎日本人ピアニストのベートーヴェン演奏、など。表紙は、フーゴー・ハーゲン作のベートーヴェンの胸像です。

◎宮本文昭の気軽に話そう ゲスト 成田達輝 ヴァイオリン
 ロン=ティボー国際コンクールやエリザベート王妃国際音楽コンクールなどで入賞した若手ヴァイオリニストの成田達輝。母親が小学校の教師をしており、当時最先端の英才教育に興味があり、ヴァイオリンを始めた。最近、子供がうまれ、「音楽というのは人生そのものなんじゃないかということです。友人から『子供を通して自分の小さいころを追体験している』と言われ、『それって人生の再現部に来ているってことかな』と思いました」と話している。

◎第18回ショパン国際ピアノ・コンクール視聴録
 第18回ショパン国際ピアノ・コンクールが10月、ショパンの故郷ポーランドの首都ワルシャワで行われた。コロナ禍のため1年延期されての実施だった。今回も日本人の参加者は多く、3次予選に5人、本選に2人残った。通常、本選は6,7人で争われるが、今回は12人と多く、異例のコンクールになった。結果は反田恭平が2位、小林愛実が4位(いずれも2人入賞のうちの1人)だった。音楽評論家の高久暁氏がレポートをしている。「独自な展開を見せる日本のピアノ文化の受け皿としてショパン・コンクールが機能したのであれば、それはショパン・コンクールと日本のピアノ文化の双方にとって極めて喜ばしい出来事であったに違いない」と記した。

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
 長命、人生を全うした音楽家はもちろん多いが、短命、夭折した作曲家のエピソードは強い印象を残す。35歳で亡くなったモーツァルト(1756-91)の最後の仕事は「レクイエム」。亡くなる直前、モーツァルトに「レクイエム」の作曲依頼が舞い込む。高額の前払い金を置いていった依頼者は名乗らず、匿名だった。後に、モーツァルトは死者の世界からの依頼で、自分のための「レクイエム」を書いた、という伝説が流布された。現在では、依頼主は判明、この話は否定されているが、夭折の作曲家にふさわしいエピソードとして信じられた。
 夭折したモーツァルトは神童でもあった。神童がそのまま成長し天才になった稀有な例と言える。父レオポルドはモーツァルトに英才教育を施したが、モーツァルトは父親を凌駕する才能を持っていた。3歳からチェンバロを弾き始め、5歳で作曲を行う。今でいえば小学校の入学前から父とともに、ヨーロッパ各地の宮廷などをめぐり、神童の演奏を披露した。13歳からは音楽教育を兼ねてイタリア巡業を行う。システィーナ礼拝堂の秘曲「ミゼレーレ」を一度聴いただけで譜面にしてしまったのはこの時だ。
 モーツァルトよりも短い生涯だったのはシューベルト(1797-1828)。わずか31年の人生だったが、「冬の旅」「水車小屋の娘」「魔王」などの歌曲、交響曲第8番「ザ・グレート」、「未完成」、弦楽四重奏曲など傑作を数多くのこし、31年間に600曲以上の作品を書いている。生前に演奏されなかった曲も少なくない。「ザ・グレート」はシューベルトの死後、家を訪ねたシューマンが、未整理の楽譜を発見、友人のメンデルスゾーンのもとへ送り、メンデルスゾーン指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管で1838年に初演された。
 天才は必ずしも夭折ではない。サン=サーンス(1835-1921)は、86歳まで生きた。当時としては非常に長命だろう。サン=サーンスはやはり神童だった。2歳半で伯母からピアノの手ほどきを受け、3歳でピアノ曲を作曲。10歳のときのパリ・デビュー演奏では、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番やモーツァルトのピアノ協奏曲第15番を演奏した。モーツァルトの協奏曲のカデンツァはサン=サーンスの自作だった。
 現役の指揮者・ピアニストではバレンボイムを挙げよう。先ごろ、誰よりも多い5度目のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集をリリースしたばかり。また、指揮者としては名門ベルリン州立歌劇場管弦楽団の音楽監督を務めている。バレンボイムは7歳でピアニストとしてデビュー、11歳の時、ザルツブルクにおいて最年少で指揮者マルケヴィッチのマスタークラスを受講した。そしてフルトヴェングラーに会い「バレンボイムは天才である」と言わしめた。項目はほかに◎メンデルスゾーン、ショパン◎ベッリーニ、ビゼー◎ガーシュウィン、ルクー◎瀧廉太郎、貴志康一◎才能に年齢は関係ないのか、など。表紙は、モーツァルト、シューベルト、メンデルスゾーン、ビゼー、リパッティ、ヌヴーです。

◎宮本文昭の気軽に話そう ゲスト 大萩康司 ギター
 若手人気ギタリストの大萩康司。昨年からのコロナ禍でコンサートの仕事は減ったが、録音は増え、CDをたくさんリリースした。チェロの宮田大、フルートの江戸聖一郎、オーボエの広田智之らと共演したCDが次々と発売された。ギターを始めたきっかけは母親。「小さいころ、小児喘息だったので、家の中でできる遊びをしていました。8歳のころ、母が昔やっていたクラシックギターを再開しました。すごく楽しそうに弾いていたので、『僕もやりたい』と言い、始めたのがきっかけです」と話す。

◎BIGが語る 清水和音 ピアノ
 デビュー40周年を迎えたピアニスト、清水和音。1981年にロン=ティボー国際コンクールで優勝したのは20歳のとき。これ以来ずっと第一線で活躍してきた。当時、日本で優勝した清水の人気は熱狂的だった。しかし、現在、コンクールで優勝しても次の仕事につながるとは限らない。「コンクールが増えすぎました。数が増えれば、皆が冷静に選ぶことになります。1980年代のコンクール1位は騒がれましたし、先駆者利益があったのです。今の若い人はかわいそうです」と話す。もちろん人気だけでは生き残れない。清水は若いときから実力も兼ね備えていた。

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
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 10月に第18回ショパン国際ピアノ・コンクールが行われます。コロナ禍のため1年延期されての開催です。1927年コンクール第1回の優勝者はソ連のレフ・オボーリン、戦後再開した1949年の第4回の優勝者はハリーナ・チェルニー=ステファンスカ、第6回(1960年)のマウリツィオ・ポリーニ、第7回(1965年)はマルタ・アルゲリッチ、第9回(1970年)はクリスチャン・ツィメルマンと、そうそうたるピアニストが名を連ねます。
 果たしてショパン国際ピアノ・コンクールなど世界のコンクールの優勝・入賞は必然なのでしょうか。飛びぬけた実力があれば優勝は当然なのでしょうか。ポリーニが優勝したとき、審査委員長を務めた巨匠アルトゥール・ルービンシュタインが「ここにいる我々審査員の誰よりもうまい」と話していますが、このポリーニのケースなどコンクール優勝は「必然」だったといえるでしょう。では1980年のショパン・コンクールで、イーヴォ・ポゴレリチは入賞さえできませんでした。しかし審査委員のアルゲリッチが「彼は天才」と認めたことで、1位のダン・タイ・ソン以上にポゴレリチに注目が集まりました。コンクールの結果はタイミングや運が左右することがあります。
 ピアノ協奏曲、練習曲集、24の前奏曲、アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、舟歌、マズルカ、ワルツ、バラード、夜想曲などショパンの名作を並べたらきりがありません。ピアノ協奏曲について音楽評論家の寺西基之氏は「ロマンティックな感情表現と民俗的語法に基づくポーランド精神の表出の融合という、生涯にわたるショパンの音楽的美質が、後年手がけなかった協奏曲様式のうちにみずみずしく息づいている」と記しています。
 ロマン派の時代に生きたショパンですが、作品は「古典派の根幹、形式美にこだわった」と音楽評論家の真嶋雄大氏。「ポーランドの民族舞曲に清新な風合いと自らの心象風景を投入したポロネーズやマズルカ、そしてワルツや舟歌、つまりショパンは決して形式をはみ出さず、壊さず、あくまで形式の範囲内での進取性を模索したのです」といいます。
 ショパンの作品を得意とする「ショパン弾き」は昔も今もたくさんいます。ショパンが弾ければ、他の作曲家の作品もうまいのでしょうか。先述したショパンには古典性が元にあるということは、ショパン以前の古典的な作曲家の作品も弾ける可能性が大きいのです。また後期ロマン派以降にもショパンは大きな影響を与えています。つまりショパンの作品は過去から未来までの多様性を宿しているということです。「ショパン演奏に秀でたピアニストがピアノ演奏のどんなレパートリーも弾きこなせる可能性や期待感を有しているのは当然」と音楽評論家の高久暁氏は書いています。項目は他に◎芸術の都パリのショパンとリスト◎ショパンのピアノ、プレイエルとエラール◎ショパン演奏の変遷と彼の作品を生かす奏法とは◎ショパンが苦手なピアニスト◎天才作曲家と対等の立場だったパートナーたち◎ショパン、シューマン、リストのピアノ作品の特徴と違い、など。
表紙は、ラジヴィウ公の邸宅で演奏するショパンです。

◎宮本文昭の気軽に話そう ゲスト 西脇義訓 指揮者・録音プロデューサー
 西脇義訓氏はフィリップスに勤務し、レコード会社エヌ・アンド・エフ社を創立した。録音プロデューサーを務める傍ら、自分が指揮するデア・リング東京オーケストラを立ち上げた。はじめ録音するだけのオーケストラだったが、演奏活動をするようになり、9月4日には埼玉・所沢で公演を行った。オーケストラの編成をばらばらにし、半円形に座らず、1列目にチェロ、2列目にヴィオラ、ヴァイオリンの隣にフルートなどと常識とはかけ離れた配置をし、前を向いて立って演奏する。「前を向いていることで『空間』を聴くことができます。皆が意識を集中して聴きながら、空間の遠くで音を合わせるようにするのです」と話す。

◎BIGが語る ヨーヨー・マ チェロ
 今年の第32回高松宮殿下記念世界文化賞・音楽部門の受賞者は、中国系アメリカ人の世界的チェリスト、ヨーヨー・マ。古典から現代曲まで広範なレパートリーを持ち、「リベルタンゴ」の録音は、日本でピアソラ・ブームを巻き起こした。現在は世界中で「バッハ・プロジェクト」を行っており、11月に沖縄で無伴奏チェロ組曲を演奏する予定。
 7歳のとき、ケネディ大統領の前で演奏しているが、そのときのことで覚えているのはコメディアンのダニー・ケイに会ったこと。「小さな私に目線を合わせてしゃがんで話しかけてくれたことです。それ以来、私はこの教訓を胸に刻み、友人や同僚にそのような敬意と優しさを求め、すべての行動においてそれを実践しようとしています」と話す。

このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。
今からちょうど60年前、1961年の世界の音楽地図はどのようなものだったろうか。第2次世界大戦から15年たち、3年後には東京オリンピックが開かれた。クラシック界は新旧の巨匠が入れ替わった時期だった。
 フルトヴェングラーが亡くなったのは1954年、同じ年にトスカニーニは引退し57年に死去した。変わって世界の「楽壇の帝王」に登りつめようとしていたのはカラヤンだった。55年にベルリン・フィルの終身首席指揮者兼芸術監督に就任、翌年にはウィーン国立歌劇場の芸術監督にもなった。63年には、当初、「カラヤンのサーカス小屋」と揶揄されたベルリン・フィルの本拠地フィルハーモニーが完成した。
 飛ぶ鳥を落とす勢いというのは彼のことを言うのだろう。ジェット機の操縦士がカラヤンに「どちらに飛びますか、マエストロ?」と尋ねると、「どこでも。世界が私を待っている」と答えたというジョークさえ生まれた。「あのころカラヤンは偶像だった。いまになるとはっきり見える。カラヤンが基準になっていた」と音楽評論家の堀内修氏は回想している。
 ドイツ文学の許光俊氏は1961年の世界へ時間旅行を試みた。まず訪ねたのがバイロイト音楽祭。このときにはまだヴィーラント・ワーグナー(1917-66)演出、ハンス・クナッパーツブッシュ(1888-1965)指揮の「パルジファル」が上演されていたからだ。これはワーグナーのオペラ上演史の中でもっとも有名なプロダクションなので、確かめてみたい。「ニーベルングの指環」の指揮はルドルフ・ケンペ(1910-76)で、「タンホイザー」と「さまよえるオランダ人」は、当時まだ40歳にもなっていなかったヴォルフガング・サヴァリッシュ(1923-2013)だった。
 そしてザルツブルク音楽祭。オープニングを飾ったのは早世したフェレンツ・フリッチャイ(1914-63)。モーツァルトの「イドメネオ」を指揮した。RIAS交響楽団首席指揮者などを務め、将来を大いに期待されながら50歳にならないうちに亡くなった。また最晩年のカール・シューリヒト(1880-1967)がウィーン・フィルと「英雄」などを演奏している。
 日本のクラシック界はどんなだったろう。1961年は、現在も音楽の殿堂であり続ける東京文化会館が開館した。当時、よくこのような広いロビーを作ったものだと感心する。この前川國男設計のモダニズム建築は、「戦後社会の1つの里程標と言っても過言ではない」(西原稔・桐朋学園大名誉教授)。
 現代につながるさまざまなオーケストラが誕生したのもこの時代。1956年に日本フィルと京都市交響楽団、61年に札幌交響楽団、62年に読売日本交響楽団、63年に広島交響楽団が設立された。項目はほかに◎60年を経て日本人の演奏レベルはどうなったか◎レコード・レーベルの「黄金の日々」◎1961年のマリア・カラス◎1961年のソ連の音楽界◎トップランナー、OZAWAはこうして生まれた◎本場のオペラに目覚めた1960年前後の日本人、など。表紙は、クレンペラー、東京文化会館、カラヤン、アルゲリッチ、カラスです。

◎宮本文昭の気軽に話そう  ゲスト 福井敬 テノール
 日本のトップ・テノールの1人、福井敬がゲスト。今春、「朝は薔薇色に輝き」と題したCDをリリースした。京都市交響楽団をバックに、「誰も寝てはならぬ」など名アリアが収められている。「オペラ・アリアのCDが欲しい」というファンがクラウドファンディングを立ち上げ、制作したもの。また9月から、コロナ禍の中でもクラシック音楽を聴いてもらおうと、「クラシック・キャラバン2021」が全国で行われ、ガラ・コンサート(9月14日〈水〉、愛知県芸術劇場、9月15日〈木〉、東京芸術劇場)に出演する。

◎BIGが語る 松本美和子 ソプラノ
 イタリアを拠点にヨーロッパ各地の劇場で活躍したソプラノ、松本美和子が、傘寿を迎える。その記念公演が11月7日(日)、紀尾井ホールで行われる。武蔵野音大からローマのサンタ・チェチーリア音楽院に留学、ジュネーヴ国際声楽コンクール2位などを受賞。ローマ、フェニーチェ、コヴェント・ガーデン、ベルリン、バイエルン、ウィーン、リセウなどで50曲以上の主役を歌っている。今も発声練習を怠らない現役歌手。記念公演ではさまざまな歌曲に、ライフワークとして歌い続けてきたプーランクの「人間の声」を披露する。
 
このほか
◎青島広志の「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
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商品情報・内容

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「MOSTLY CLASSIC」(モーストリー・クラシック)は毎月20日発売の月刊音楽情報誌です。バッハやモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなど作曲家の魅力をはじめ、交響曲や協奏曲、ピアノ曲など音楽のジャンル、また世界各地のオーケストラやホール、ヴァイオリンやピアノなどバラエティーに富んだテーマを毎号特集しています。またピアニスト、小山実稚恵さんや小菅優さんの連載など読み物もたくさん。ソリストの活動やオーケストラ事情など毎月新鮮な情報を掲載しています。知識が少し増えるとクラシックを聴く楽しみが倍加します。コアなファンからクラシックは少し敷居が高いと思われている初心者まで誰でも楽しめる雑誌です。

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■ 176号 (2011年11月20日発売)

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